説明

スリット式塗布装置

【課題】 スリット式塗布ノズルへの被塗布物の付着を抑制することのできるスリット式塗布装置を提供する。
【解決手段】 基台110と、スリット式塗布ノズル120とを備える。基台110には、基板130が載せられ、スリット式塗布ノズル120は、基台110の上方に設けられる。スリット式塗布ノズルの少なくとも一部の領域には薄膜121が形成され、被塗布物を塗布するときに、被塗布物とスリット式塗布ノズル120とが、薄膜121により隔離され、被塗布物が容易に付着しないようにして、清潔に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット式塗布装置に関し、特に一層または複数層のナノメートル薄膜を有するスリット式塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置は、消費市場において徐々に普及しており、パーソナルコンピュータおよび映像音声装置の標準装備となっている。平面表示装置の応用範囲の拡大とパネルサイズの大型化に伴い、平面表示装置の関連工程は、改良を行ってニーズに合致させる必要がある。
【0003】
従来技術では、スピンコーティング(spin coating)方式により、ガラス基板上へフォトレジストが塗布されているが、スピンコーティング方式でフォトレジストを塗布する場合、フォトレジスト材料の約90%が浪費された。一方、表示装置のパネルサイズの大型化に伴い、パネル塗布にはスピンコーティング方式を使用することができず、スリット式塗布装置が採用されている。
【0004】
図3は、従来のスリット式塗布装置を示す模式図である。図3に示すように、ガラス基板102は、基台100上に置かれる。スリット式塗布ノズル103は、基台100およびガラス基板102の上方に設置され、スリット式塗布ノズル103は、矢印A’で示す方向に移動する。同時に、フォトレジスト材料は、スリット式塗布ノズル103から矢印B’で示す方向に吐出される。そして、ガラス基板102上へフォトレジスト材料を平均的に塗布して、フォトレジスト層104を形成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フォトレジスト材料は、揮発性有機溶剤および互いに異なる色タイプを含有する高分子物質からなるため、スリット式塗布ノズル103から押し出されるときに、フォトレジストの一部が残留して、スリット式塗布ノズル103上に堆積される。そして、堆積したフォトレジストの一部がガラス基板102上に落ちてしまうことがある。
【0006】
図3および図4は、従来のスリット式塗布装置を示す。図4は、図3の矢印C’部分を示す拡大図である。図4は、フォトレジスト材料がスリット式塗布ノズル103の周囲に堆積して、フォトレジストの残渣105が形成され、ガラス基板に対して、小さい異物により大きい問題が発生するときの状態を示す。
【0007】
そのため、上述の欠点を防ぐことができるスリット式塗布装置を提供する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の欠点を防ぐために、薄膜を備えるスリット式塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した目的を達成することのできるスリット式塗布装置を提供する。このスリット式塗布装置は、基台と、スリット式塗布ノズルとを備えている。また、一層または複数層の薄膜により、スリット式塗布ノズルの内部または外部を被覆する。フォトレジスト材料がスリット式塗布ノズルから押し出されて、ガラス基板上へ均一に塗布されると、フォトレジスト材料が、スリット式塗布ノズル上へ容易に付着しなくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスリット式塗布装置は、ノズルの清掃および保護に便利で、ノズルの交換率を減らして、生産コストを効果的に下げることができる。そして、小さい異物により大きい問題が発生することを大幅に減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
以下に説明する本発明の実施例は、平面表示装置のカラーフィルタの製造工程に関するものである。そして、本発明は、スリットノズルコーティング工程装置、スピンコーティング工程装置、スリットノズルとスピンコーティングとを組合せた工程装置、インクジェット印刷工程装置など、ノズルまたはインクジェット印刷ヘッド構造装置などを含む平面表示装置の製造工程および装置全てに適用することもできる。しかし、適用範囲はこれだけに限定されるわけではない。
【0013】
図1は、本発明の実施例1であるスリット式塗布装置を示す模式図であり、図2は、スリット式塗布装置の一部を示す拡大図である。
【0014】
図1に示すように、本実施例は、基台110およびスリット式塗布ノズル120を備えている。ガラス基板130は、基台110上に設置され、一層または複数層のナノメートル薄膜121により、スリット式塗布ノズル120上を被覆する。スリット式塗布ノズル120は、矢印Aで示す方向に移動すると同時に、スリット式塗布ノズル120から、矢印Bで示す方向において、フォトレジスト材料がノズルダクト122から吐出される。そして、フォトレジスト材料を、ガラス基板130上へ平均的に塗布して、均一なフォトレジスト層140を形成する。
【0015】
図2は、図1のスリット式塗布ノズル120のC部分を示す拡大図である。図2に示すように、スリット式塗布ノズル120は、単層または複数層の薄膜であるナノメートル薄膜121を有する。1つの層の薄膜の厚さは、約100nm(10−9m)である。なお、薄膜の厚みは、約100nm以上であることが好ましい。
【0016】
ここで、薄膜の厚みを約100nmに設定すれば、薄膜を形成するためのコストを低減することができる。すなわち、薄膜を形成する材料が少なくなり、コストアップを抑制することができる。
【0017】
また、図2に示すように、スリット式塗布ノズル120を用いてフォトレジスト材料を塗布する工程において、フォトレジストの一部150がスリット式塗布ノズル120上に付着しないために、従来技術において発生していた問題は発生しない。
【0018】
スリット式塗布ノズル120を被覆するナノメートル薄膜121は、フォトレジストの一部150とスリット式塗布ノズル120とが直接に接触することを防ぎ、フォトレジストの一部150が堆積してスリット式塗布ノズル120上に付着することとを防ぐことができる。これにより、スリット式塗布ノズル120およびノズルダクト122を清潔に保つことができる。また、スリット式塗布ノズル120等に堆積したフォトレジストの一部がガラス基板の表面に落ちて、この小さい異物により大きな問題が発生するのを抑制することができる。
【0019】
また、ナノメートル薄膜121は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)などの金属または酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバなどの材料からなる。ただし、ナノメートル薄膜121の材料は、これらの材料だけに限定されるわけではない。
【0020】
ここで、ナノメートル薄膜121の材料として、上述した材料を用いることにより、スリット式塗布ノズル120に対するフォトレジスト材料の付着を効果的に抑制することができる。すなわち、フォトレジスト材料を塗布するときに、フォトレジスト材料とスリット式塗布ノズル120とがナノメートル薄膜121により隔離され、フォトレジスト材料がスリット式塗布ノズル120に容易に付着しないようにして清潔に保つことができる。
【0021】
図1や図2に示すように、スリット式塗布ノズル120を被覆するナノメートル薄膜121は、一層または複数層の薄膜を有する。ナノメートル薄膜121は、常圧化学気相成長(atmospheric pressure chemical vapor deposition:APCVD)、減圧化学気相成長(low pressure chemical vapor deposition:LPCVD)、プラズマ化学気相成長(plasma enhanced chemical vapor deposition:PECVD)またはスパッタリング(sputtering)などの工程により形成される。ただし、ナノメートル薄膜121の形成は、これらの工程だけに限定されるわけではない。
【0022】
上述した本発明の実施例から分かるように、本実施例のスリット式塗布装置において、スリット式塗布ノズル120のノズルダクト122が、一層または複数層のナノメートル薄膜により被覆されている。そのため、スリット式塗布ノズル120には、フォトレジストの一部150またはその他の異物が付着しにくくなる。また、本実施例は、従来の薄膜形成工程を使用することができるため、新しい工程を探すコストを節減することができる。
【0023】
本発明では実施例1を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術に熟知するものなら誰でも、本発明の主旨と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1であるスリット式塗布装置を示す模式図である。
【図2】実施例1のスリット式塗布装置の一部を示す拡大図である。
【図3】従来のスリット式塗布装置を示す模式図である。
【図4】従来のスリット式塗布装置の一部を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0025】
110:基台、120:スリット式塗布ノズル、121:ナノメートル薄膜、122:ノズルダクト、130:ガラス基板、140:フォトレジスト層、150:フォトレジストの残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が搭載される基台と、
該基台の上方に設けられ、前記基台上の基板に対して被塗布物を吐出するスリット式塗布ノズルとを有し、
前記スリット式塗布ノズルは、少なくとも一部の領域が薄膜で覆われていることを特徴とするスリット式塗布装置。
【請求項2】
前記薄膜は、膜厚が100nm以上であることを特徴とする請求項1に記載のスリット式塗布装置。
【請求項3】
前記スリット式塗布ノズルは、ノズルダクトをさらに備えており、前記スリット式塗布ノズルの先端または前記ノズルダクト内が、前記薄膜により被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のスリット式塗布装置。
【請求項4】
前記薄膜は、金、銀、白金、パラジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバのうち少なくとも1つで構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のスリット式塗布装置。
【請求項5】
前記薄膜は、常圧化学気相成長法、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法またはスパッタリング法を用いた塗布処理により形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のスリット式塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−190918(P2006−190918A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39063(P2005−39063)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(504150380)アライド マテリアル テクノロジー コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】