説明

スリット装置及びこれを用いた磁気テープの製造方法

【課題】ウエブの裁断位置近傍における走行の安定性に優れ、スリット品質を向上させることができるスリット装置及びこれを用いた磁気テープの製造方法を提供する。
【解決手段】ウエブ15を裁断するスリット装置1であって、ウエブ15を搬送する駆動ローラ32と、ウエブ15を裁断するカッター30と、ウエブ15を駆動ローラ32に当接させる当接手段33、34とを備えており、ウエブ15は、当接手段33、34により、第1の当接位置38及び第2の当接位置39において、1つの駆動ローラ32に当接し、ウエブ15の搬送経路において、ウエブの裁断位置37は、第1の当接位置38と第2の当接位置39との間にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ等のウエブを裁断するスリット装置及びこれを用いた磁気テープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムやテープを必要な幅に裁断する装置として、裁断装置やスリット装置と呼ばれる装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
裁断装置やスリット装置は、ウエブの原反が巻回された送出部からウエブが引き出され、この引き出されたウエブはカッターにより必要な幅に裁断され、巻取部に巻き取られることになる。
【0004】
図5に、従来のスリット装置の一例の構成図を示している。本図に示したスリット装置100は、磁気テープ用のスリット装置である。送出部101から送り出された磁気テープ102は、テンションアーム103にて適宜の張力に制御されつつ複数のガイドローラ104−108に案内され、第1駆動ローラ109とニップローラ110に狭圧支持され駆動・搬送される。
【0005】
この後、磁気テープ102はガイドローラ111を経て、カッター112の上刃113と下刃114とにより裁断される。裁断後の磁気テープ102a、102bは、それぞれガイドローラ115を経て、第2駆動ローラ117とニップローラ118に狭圧支持され駆動・搬送され、ガイドローラ119を経て、巻取部120により巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−278728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような従来のスリット装置では、裁断前の磁気テープ102や裁断後の磁気テープ102a、102bの走行振動が、カッター112の裁断位置近傍に伝わると、磁気テープのスリット品質に影響を与えることになる。具体的には、裁断位置近傍における磁気テープの走行振動は、磁気テープのスリット幅の幅変動や、テープの裁断端(エッジ)が波状に変形するウェービングの原因になる。
【0008】
さらに、第1駆動ローラ109と第2駆動ローラ117とが独立していると、それぞれの駆動ローラごとに独立した制御を行うので、駆動ローラ同士を完全に連動させるのは難しく、例えば上流側と下流側とでウエブ又はテープを引っ張り合ってしまったり、逆に緩み合ったり、互いに張力が干渉し合うことも起こり得る。このことも、磁気テープのスリット幅の幅変動や、テープの裁断端(エッジ)が波状に変形するウェービングの原因になる。
【0009】
本発明は前記のような従来の問題を解決するものであり、ウエブの裁断位置近傍における走行の安定性に優れ、スリット品質を向上させることができるスリット装置及びこれを用いた磁気テープの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明のスリット装置は、ウエブを裁断するスリット装置であって、前記ウエブを搬送する駆動ローラと、前記ウエブを裁断するカッターと、前記ウエブを前記駆動ローラに当接させる当接手段とを備えており、前記ウエブは、前記当接手段により、第1の当接位置及び第2の当接位置において、前記1つの駆動ローラに当接し、前記ウエブの搬送経路において、前記ウエブの裁断位置は、前記第1の当接位置と前記第2の当接位置との間にあることを特徴とする。
【0011】
本発明の磁気テープの製造方法は、前記本発明のスリット装置を用いた磁気テープの製造方法であって、前記磁気テープの原反を前記スリット装置により複数の前記磁気テープに裁断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウエブの裁断位置近傍における走行の安定性に優れ、スリット品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスリット装置1の構成図。
【図2】(a)図はカッター30の要部斜視図、(b)図はカッター30により磁気テープ15が裁断される様子を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態2に係るスリット装置2の構成図。
【図4】本発明の実施の形態3に係るスリット装置3の構成図。
【図5】従来のスリット装置の一例の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、カッターによる裁断位置に対し上流側及び下流側におけるウエブの走行振動は、それぞれ第1の当接位置、第2の当接位置で断絶することができる。さらに、ウエブは第1の当接位置と第2の当接位置とにおいて共通の1つの駆動ローラに当接している。このため、独立した駆動ローラ同士の連動の調整が不要となり、独立した駆動ローラ同士の不完全な連動によりウエブの張力が干渉し合うことも防止できる。
【0015】
このことにより、ウエブの搬送経路において、第1の当接位置と第2の当接位置との間は、裁断前後のウエブのいずれについても、走行振動や張力の干渉が抑えられていることになる。一方、ウエブの搬送経路において、ウエブの裁断位置は第1の当接位置と第2の当接位置との間にある。したがって、ウエブの裁断位置においては、走行振動や張力の干渉が抑えられ、整然と走行するウエブを裁断することが可能となり、スリット品質を向上させることができる。すなわち、ウエブのスリット幅の幅変動や、ウエブの裁断端(エッジ)が波状に変形するウェービングを抑えることができる。
【0016】
前記本発明のスリット装置においては、前記カッターは、一対の回転刃を備えており、前記一対の回転刃の一方が、前記駆動ローラを兼ねていることが好ましい。この構成によれば、第1の当接位置と第2の当接位置との間のウエブの搬送経路を短くすることができ、裁断位置近傍におけるウエブの走行振動の抑制により有利になる。
【0017】
また、前記第1の当接位置と前記第2の当接位置との間において、前記ウエブは、前記駆動ローラに面状に当接していることが好ましい。この構成によっても、裁断位置近傍におけるウエブの走行振動の抑制により有利になる。
【0018】
また、前記当接手段は、ローラであることが好ましい。
【0019】
また、前記当接手段は、前記駆動ローラに設けた吸引手段であることが好ましい。
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るスリット装置1の構成図を示している。スリット装置1は、磁気テープ用のスリット装置の例を示しており、裁断対象のウエブが磁気テープである。
【0022】
スリット装置1は、原反である磁気テープ15を送り出すための送出部20と、磁気テープ15を裁断するカッター30と、裁断した磁気テープを巻き取るための巻取部50とを備えている。
【0023】
送出部20とカッター30との間の搬送経路上には、ガイドローラ4−8が配置されている。同様に、カッター30と巻取部50との間には、ガイドローラ9、10が配置されている。これらのガイドローラ4−10は、送出部20から巻取部50までの間の磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bの搬送経路を案内する役割を果たすものである。
【0024】
カッター30は、上刃31と駆動ローラ32とを備えている。駆動ローラ32には、下刃36(図2(a))が一体に形成されている。磁気テープ15は、駆動ローラ32とニップローラ33との間、及び駆動ローラ32とニップローラ34との間に挟まれている。このことにより、磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bは、駆動ローラ32に支持され、駆動ローラ32の回転により搬送されることになる。
【0025】
カッター30と巻取部50との間には、裁断後の磁気テープ15a、15bのそれぞれに対応させた駆動ローラ40を配置している。磁気テープ15a、15bは、それぞれ駆動ローラ40とニップローラ41との間に挟まれている。このことにより、磁気テープ15a、15bは、駆動ローラ40に支持され、駆動ローラ40の回転により搬送されることになる。
【0026】
前記のように、スリット装置1は、駆動ローラ32及び駆動ローラ40を備えたことにより、送出部20から送り出された裁断前の磁気テープ15は、矢印a、b方向に搬送され、裁断後の磁気テープ15a、15bは、矢印c方向に搬送され、巻取部50に巻き取られることになる。
【0027】
以下、送出部20から送り出された磁気テープ15が巻取部50に巻き取られるまでの過程を、搬送経路に沿って説明する。送出部20から送り出された磁気テープ15は、複数のガイドローラ4−8に案内され矢印a、b方向に搬送されながら、カッター30の位置にまで至る。複数のガイドローラ4−8のうちガイドローラ5は、テンションアーム16に接続されている。テンションアーム16の移動により、ガイドローラ5の位置を移動させて、磁気テープ15の張力が制御されることになる。
【0028】
カッター30に到達した磁気テープ15は、上刃31と駆動ローラ32との間を通過し裁断されることになる。図2(a)はカッター30の要部斜視図を示している。円板状の上刃31は、シャフト35と一体になっている。駆動ローラ32には、溝状の下刃36が一体になっている。磁気テープ15は、上刃31と下刃36との間を通過して裁断されることになる。
【0029】
図2(b)は、カッター30により磁気テープ15が裁断される様子を示す斜視図である。磁気テープ15は、駆動ローラ32により搬送されつつ、上刃31の位置で磁気テープ15aと磁気テープ15bとに裁断されている。
【0030】
図1に示したように、裁断後の磁気テープ15a、15bは、それぞれ駆動ローラ40により搬送され、ローラ9、10により案内されながら、巻取部50に巻き取られる。
【0031】
ここで、スリット装置1において、カッター30の裁断位置37近傍において、磁気テープに走行振動や張力の干渉が生じていると、磁気テープのスリット品質に影響を与えることになる。具体的には、磁気テープの走行振動や張力の干渉は、磁気テープのスリット幅の幅変動や、テープの裁断端(エッジ)が波状に変形するウェービングの原因になる。裁断位置37近傍における磁気テープの走行振動は、裁断位置37に対し上流側(送出部20側)における磁気テープ15の走行振動によるものと、裁断位置37に対し下流側(巻取部50側)における磁気テープ15a、15bの走行振動によるものとがある。また、磁気テープの張力の干渉は、それぞれ独立した駆動ローラ間において生じ易くなる。
【0032】
本実施の形態は、裁断位置37に対し上流側において、磁気テープ15を駆動ローラ32と当接手段であるニップローラ33とで挟み、裁断位置37に対し下流側において、裁断後の磁気テープ15a、15bを駆動ローラ32と当接手段であるニップローラ33とで挟んでいる。このことにより、裁断位置37近傍における走行振動を低減させ、スリット品質を向上させるようにしている。
【0033】
さらに、第1の当接位置38及び第2の当接位置39が、共通の1つの駆動ローラ32上にあるようにして、裁断位置37近傍における張力の干渉を低減させ、スリット品質を向上させるようにしている。
【0034】
このことについて、以下図1、2を参照しながら説明する。図1に示したように、磁気テープ15は、当接手段であるニップローラ33により、第1の当接位置38において、駆動ローラ32に当接している。このことにより、送出部20から駆動ローラ32までの搬送に伴う磁気テープ15の走行振動は、第1の当接位置38で断絶することができる。
【0035】
さらに、裁断後の磁気テープ15a、15bは、当接手段であるニップローラ34により、第2の当接位置39において、駆動ローラ32に当接している。このことにより、駆動ローラ32から巻取部50までの搬送に伴う磁気テープ15a、15bの走行振動は、第2の当接位置39で断絶することができる。
【0036】
このことにより、磁気テープの搬送経路において、第1の当接位置38と第2の当接位置39との間は、裁断前の磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bのいずれについても、走行振動が抑えられていることになる。
【0037】
さらに、第1の当接位置38及び第2の当接位置39は、共通の1つの駆動ローラ32上にある。このため、本実施の形態の構成は、第1の当接位置38と第2の当接位置39とが、それぞれ独立した駆動ローラ上にある構成と比べると、独立した駆動ローラ同士の連動の調整が不要となり、独立した駆動ローラ同士の不完全な連動により磁気テープの張力が干渉し合うことも防止できる。
【0038】
このことにより、磁気テープの搬送経路において、第1の当接位置38と第2の当接位置39との間は、裁断前の磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bのいずれについても、張力の干渉が抑えられていることになる。
【0039】
一方、磁気テープの搬送経路において、裁断位置37は第1の当接位置38と第2の当接位置39との間にある。したがって、裁断位置37においては、走行振動や張力の干渉が抑えられ、整然と走行する磁気テープ15を裁断することが可能となり、スリット品質を向上させることができる。すなわち、磁気テープのスリット幅の幅変動や、テープの裁断端(エッジ)が波状に変形するウェービングを抑えることができる。
【0040】
また、本実施の形態では、前記の通り、駆動ローラ32がカッター30の下刃を兼ねているので、第1の当接位置38と第2の当接位置39との間の距離を短くできる。さらに、第1の当接位置38と第2の当接位置39との間において、磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bを駆動ローラ32に面状に当接させることができる。これらの構成によっても、走行振動の抑制を図ることができ、スリット品質の向上により有利になる。
【0041】
なお、ニップローラ34は裁断後のテープ1本ごとに当接するような構造でもよい。
【0042】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係るスリット装置2の構成図を示している。スリット装置2は、実施の形態1と同様に磁気テープ用のスリット装置の例を示しており、裁断対象のウエブが磁気テープである。実施の形態1と同一構成の部分は、同一符号を付して説明は省略し、以下、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0043】
カッター30aは、上刃31と下刃ローラ32aとを備えている。前記実施の形態1の図1の構成では、駆動ローラ32がカッター30の下刃を兼ねているのに対し、図3に示した実施の形態2の構成では、下刃ローラ32aとは別個に、専用の駆動ローラ60を備えている。
【0044】
送出部20から送り出された原反である磁気テープ15は、ガイドローラ4−8、11を経て駆動ローラ60に至る。磁気テープ15はさらにガイドローラ12、13を経て、カッター30aに至る。カッター30aの構成は、図2に示したカッター30から、ニップローラ33、34を取り外した構成に相当する。
【0045】
磁気テープ15は、カッター30aの上刃31と下刃ローラ32aとの間を通過して裁断され、裁断された磁気テープ15a、15bは、再び駆動ローラ60に至ることになる。したがって、駆動ローラ60は、裁断前の磁気テープ15と裁断後の磁気テープ15a、15bとの間に挟まれていることになる。
【0046】
具体的には、磁気テープ15は、当接手段であるニップローラ61により、第1の当接位置63において、駆動ローラ60に当接している。このことにより、送出部20から駆動ローラ60までの搬送に伴う磁気テープ15の走行振動は、第1の当接位置63で断絶することができる。
【0047】
さらに、裁断後の磁気テープ15a又は15bは、当接手段であるニップローラ62により、第2の当接位置64において、駆動ローラ60に当接している。このことにより、駆動ローラ60から巻取部50までの搬送に伴う磁気テープ15a、15bの走行振動は、第2の当接位置72で断絶することができる。
【0048】
すなわち、実施の形態1と同様に、磁気テープの搬送経路において、第1の当接位置63と第2の当接位置64との間は、裁断前の磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bのいずれについても、走行振動が抑えられていることになる。
【0049】
さらに、第1の当接位置63及び第2の当接位置64は、共通の1つの駆動ローラ60上にある。このため、実施の形態1と同様に、磁気テープの搬送経路において、第1の当接位置63と第2の当接位置64との間は、裁断前の磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bのいずれについても、張力の干渉が抑えられていることになる。
【0050】
一方、磁気テープの搬送経路において、裁断位置37は第1の当接位置63と第2の当接位置64との間にある。したがって、裁断位置37においては、走行振動や張力の干渉が抑えられ、整然と走行する磁気テープ15を裁断することが可能となり、スリット品質を向上させることができる。
【0051】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3に係るスリット装置3の構成図を示している。スリット装置3は、実施の形態1、2と同様に磁気テープ用のスリット装置の例を示しており、裁断対象のウエブが磁気テープである。
【0052】
図4に示したスリット装置3は、図3に示したスリット装置2の駆動ローラ60及び一対のニップローラ61、62を、駆動ローラ70に置き換えたものである。実施の形態2と同一構成の部分は、同一符号を付して説明は省略し、以下、実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
【0053】
図3に示した実施の形態2に係るスリット装置2では、磁気テープを駆動ローラ60に当接させる当接手段がニップローラ61、62である。これに対し、図4に示した実施の形態3に係るスリット装置3では、磁気テープを駆動ローラ70に当接させる当接手段は駆動ローラ70に設けた吸引手段である。
【0054】
駆動ローラ70はサクションローラであり、吸引手段の一部を構成しており、中空の駆動ローラ70の外周面に貫通孔が形成されている。駆動ローラ70に接続された吸引装置による吸引により、駆動ローラ70の外周面の貫通孔から駆動ローラ70の外部の空気が駆動ローラ70の内部に吸引されることになる。このことにより、駆動ローラ70の外周面上を走行する磁気テープは、駆動ローラ70の外周面に当接することになる。
【0055】
図4では、磁気テープ15は、第1の当接位置71において、矢印d方向に吸引され駆動ローラ70に当接している。このことにより、送出部20から駆動ローラ70までの搬送に伴う磁気テープ15の走行振動は、第1の当接位置71で断絶することができる。
【0056】
さらに、裁断後の磁気テープ15a又は15bは、第2の当接位置72において、矢印e方向に吸引され駆動ローラ70に当接している。このことにより、駆動ローラ70から巻取部50までの搬送に伴う磁気テープ15a、15bの走行振動は、第2の当接位置72で断絶することができる。
【0057】
すなわち、実施の形態2と同様に、磁気テープの搬送経路において、第1の当接位置71と第2の当接位置72との間は、裁断前の磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bのいずれについても、走行振動が抑えられていることになる。
【0058】
さらに、第1の当接位置71及び第2の当接位置72は、共通の1つの駆動ローラ70上にある。このため、実施の形態2と同様に、磁気テープの搬送経路において、第1の当接位置71と第2の当接位置72との間は、裁断前の磁気テープ15及び裁断後の磁気テープ15a、15bのいずれについても、張力の干渉が抑えられていることになる。
【0059】
一方、磁気テープの搬送経路において、裁断位置37は第1の当接位置71と第2の当接位置72との間にある。したがって、裁断位置37においては、走行振動や張力の干渉が抑えられ、整然と走行する磁気テープ15を裁断することが可能となり、スリット品質を向上させることができる。
【0060】
なお、実施の形態3は、図3に示した駆動ローラ60及び一対のニップローラ61、62を、駆動ローラ70に置き換えた例で説明したが、図1に示した駆動ローラ32及び一対のニップローラ33、34を、吸引手段を設けた駆動ローラ70に置き換えてもよい。
【0061】
また、前記各実施の形態において、ガイドローラの配置、個数は一例であり、適宜変更すればよい。また、回転可能なガイドローラに代えて、ウエブの案内面を備えた固定ガイドを用いてもよい。
【0062】
例えば、ガイドローラ8から第1の当接位置の間に、さらにテンション制御手段等を設けていると、第1の当接位置におけるウエブの走行振動の抑制が効率よく行えて好ましい。
【0063】
また、スリット装置の裁断対象のウエブが磁気テープの例で説明したが、裁断対象は他のフィルムやテープであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように本発明によれば、ウエブの裁断位置近傍における走行の安定性に優れ、スリット品質を向上させることができるので、本発明は、例えば磁気テープのスリット装置として有用である。
【符号の説明】
【0065】
1,2,3 スリット装置
15 磁気テープ
15a,15b 裁断後の磁気テープ
30,30a カッター
31 上刃
32,60,70 駆動ローラ
32a 下刃ローラ
33,34,61,62 ニップローラ(当接手段)
36 下刃
38,63,71 第1の当接位置
39,64,72 第2の当接位置
37 裁断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを裁断するスリット装置であって、
前記ウエブを搬送する駆動ローラと、
前記ウエブを裁断するカッターと、
前記ウエブを前記駆動ローラに当接させる当接手段とを備えており、
前記ウエブは、前記当接手段により、第1の当接位置及び第2の当接位置において、前記1つの駆動ローラに当接し、
前記ウエブの搬送経路において、前記ウエブの裁断位置は、前記第1の当接位置と前記第2の当接位置との間にあることを特徴とするスリット装置。
【請求項2】
前記カッターは、一対の回転刃を備えており、前記一対の回転刃の一方が、前記駆動ローラを兼ねている請求項1に記載のスリット装置。
【請求項3】
前記第1の当接位置と前記第2の当接位置との間において、前記ウエブは、前記駆動ローラに面状に当接している請求項1又は2に記載のスリット装置。
【請求項4】
前記当接手段は、ローラである請求項1から3のいずれかに記載のスリット装置。
【請求項5】
前記当接手段は、前記駆動ローラに設けた吸引手段である請求項1から4のいずれかに記載のスリット装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のスリット装置を用いた磁気テープの製造方法であって、前記磁気テープの原反を前記スリット装置により複数の前記磁気テープに裁断することを特徴とする磁気テープの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−148035(P2011−148035A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10969(P2010−10969)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】