説明

スリッパーシール

【目的】 高圧用のピストン等のシール及びシール溝の幅を狭くすること。
【構成】 ピストン12のスリッパーシール装着溝15の幅に対応する幅のシールリング14をポリアミド樹脂で形成し、そのシールリングに少なくとも一方の端面と外周面とに跨がり且つ前記スリッパーシール装着溝内に達する切り欠き状の圧力導入溝17を設け、前記シールリングの内側の前記スリッパーシール装着溝内に合成ゴム製のバックリング13をシール溝側面との間に僅かな余裕をもたせて収容してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、流体圧シリンダのピストン部、ロッド部のシールに使用されるスリッパーシールに関し、特に、350kg/cm2を越える高圧下で使用できるスリッパーシールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の高圧用(400kg/cm2程度)のピストン用スリッパーシールは、図2に示すようなものが市販されている。同図において1はシリンダ、2はピストンであり、スリッパーシールとして、それぞれがリング状に形成された内周部分を構成するニトリルゴム製のバックリング3、外周部分を構成するブロンズ入り4ふっ化エチレン樹脂(フッ素樹脂中にブロンズの粉末を分散させたもの)製のシールリング4、ポリアミド樹脂製のバックアップリング5、5からなるものが、ピストン2に設けたシール溝7に収容されている。6はシリンダ1とピストン2との間に必要な隙間で通常0.5mm程度とされている。また、シール溝7の溝幅はこの場合16mmであり、ピストンの直径の相違によってあまり変わらない。例えば直径100〜150mmで同じ16mmである。
【0003】また、この程度の高圧のピストンシールの用途としては、例えば、最近使用される油圧が高くなってきた建設機械のショベルの駆動に用いられる油圧シリンダがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記スリッパーシールは、高圧に対応するためにバックアップリング5、5を設けたものである。このバックアップリングを省略した構成にすると、シールリング4が高圧によってシリンダ1とピストン2の間の隙間6にはみ出して損傷してしまうから、使用できない。従ってシール溝7の幅をこれ以上小さくすることは困難である。ピストン等のシール溝の幅を狭くすることができると、少しではあるがそれだけピストン及びシリンダの長さを短くできる点で有利である。また、従来のバックアップリング5、5を設けた構成のスリッパーシールは、部品点数が多く、バックリング3の形状がやや複雑になり、それだけコスト高になることを免れ得ない。
【0005】本発明は、形状を複雑にすることなく、前述のような高圧用のスリッパーシール及びシール溝の幅を狭くすることができるピストン等のスリッパーシールを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の手段は、略矩形断面のポリアミド樹脂製のシールリングと、そのシールリングに摺動面側へ向かう弾性押圧力を付与する略矩形断面の合成ゴム製のバックリングとからなる。シールリングには少なくとも一方の端面と摺動面側周面とに跨がり且つ前記スリッパーシール装着溝内に達する切り欠き状の圧力導入溝を設けるのがよい。
【0007】
【作用】前記手段によれば、例えば、スリッパーシールをピストンに用い、シリンダ内のピストンの片側に高圧の油圧が作用したとき、その油圧はシールリングに作用するとともにバックリングの側面に導入され、バックリングを側面から押圧し、反対側の溝側面、溝底面及びシールリング内周面に押しつけて変形させ、その変形によりシール作用する。この時ポリアミド樹脂製のシールリングが低圧側のシリンダ内周面とピストンの隙間にはみ出すようなことはない。
【0008】
【実施例】本発明の一実施例を図1を用いて説明する。図において、11は内径100mmのシリンダ、12はピストンであり、ピストン12にはスリッパーシール装着溝15を設けてあり、この溝15にシールリング14とバックリング13からなるスリッパーシールを装着してある。
【0009】スリッパーシール装着溝15は、幅8.1mm、深さ10.3mmである。シールリング14は、ポリアミド樹脂製で、幅が8mm、厚さが3mmで外周面と端面とのなす角部は面取りを施してあり、端面と外周面とにまたがって圧力導入溝17を設けてある。圧力導入溝17は、一方の端面に周方向に180°離れて、つまり対称位置に2個、他方の端面には反対側の面のものと周方向に90°位置を異ならせて2個、夫々設けてある。圧力導入溝17の形状は特に限定されないが、例えば幅1mm、深さ0.5mm程度とし、外周面に達する切り欠き状に端面に設け、スリッパーシール装着溝15内には達するが、シールリング14の内周面までには達しないように設けてある。この溝17がシールリング14の内周面に達しない構成は圧力導入とバックリングの保護を両立させる。この溝17の長さはシールリングの半径方向寸法の50〜90%を目安に設ける。材質のポリアミド樹脂は、硬度がロックウエルRスケールで123、弾性率が30×103 kg/cm2のものである。
【0010】バックリング13は、ニトリルゴム製で、幅が7.9mm、厚さが8mmである。このバックリング13は、取り外してある状態で内径をスリッパーシール装着溝15の溝底径よりも小さく形成してあり、外径をシールリング14の内径よりも小さく形成してあり、シール溝15に装着した状態では溝底に押圧接触しており、またシールリング14の内周面にも押圧接触している。そして、シールリング14の外径もシリンダ内径より少し(1mm)大きく形成してあり、シリンダ11内では内周面に押圧接触している。要するにいずれも締め代があって径方向に押圧接触している。
【0011】このように構成されたピストンのスリッパーシールは、実用試験において使用油圧が500kg/cm2で全く支障がなかった。また上記実施例の他にもシリンダ内径が130mm、145mmのものに対しても実施例と同様なシール幅のものを製作して実用試験を行ったところ、使用油圧が500kg/cm2で全く支障がなかった。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、従来の高圧用のスリッパーシールのシールリングの両側のバックアップリングを省略できるので、従来よりもシール及びシール溝の幅を半分にすることができ、その分ピストン及びシリンダの長さを短くすることができ、更にバックリングの形状を単純化できてコスト低減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示し、(a)はシリンダ軸線方向に沿った断面の部分拡大図、(b)は同実施例のスリッパーシールを軸線方向に見た部分正面図である。
【図2】従来のピストンの高圧用スリッパーシールを示す軸線に沿った断面の部分拡大図である。
【符号の説明】
11 シリンダ
12 ピストン
13 バックリング
14 シールリング
15 スリッパーシール装着溝
17 圧力導入溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 略矩形断面のポリアミド樹脂製のシールリングと、そのシールリングに摺動面側へ向かう弾性押圧力を付与する略矩形断面の合成ゴム製のバックリングとからなるスリッパーシール。
【請求項2】 スリッパーシール装着溝の幅に対応する幅のシールリングをポリアミド樹脂で形成し、そのシールリングに少なくとも一方の端面と摺動面側周面とに跨がり且つ前記スリッパーシール装着溝内に達する切り欠き状の圧力導入溝を設け、前記スリッパーシール装着溝の溝底と前記シールリングとの間に合成ゴム製のバックリングをスリッパーシール装着溝側面との間に僅かな余裕をもたせて収容してなることを特徴とするスリッパーシール。

【図1】
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【図2】
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