説明

スリップ防止材及びこれを用いた容器

【課題】容易に使用でき、スリップが防止されうるスリップ防止材1の提供。
【解決手段】本発明に係るスリップ防止材1は、ベース層3と、その上側の粘着性層5と、下側の粘着性層7とを備えている。好ましくは、ベース層の上側の粘着性層5は親水性であり、ベース層の下側の粘着性層7は疎水性である。このスリップ防止材1は、テープ状又は短冊状に形成されている。本発明に係るキャップ付き容器は、キャップと、本体に付着されているスリップ防止材とを備えている。本発明に係る紙パックは、本体と、スリップ防止材とを備えており、上記スリップ防止材が本体に付着されている。スリップ防止材1は、フタ付きビン容器のフタに付着されて使用してもよい。スリップ防止材1は、手で把持される鉛筆やスプーンに巻かれて使用してもよいし、衣服の掛けられるハンガーに巻かれて使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行が可能であり、容易に使用でき、スリップが防止されうるスリップ防止材に関する。より詳細には、びんのキャップの開栓、紙パックの開口、えんぴつやスプーン等の滑り止め、ハンガーに掛けられる衣類の滑り止め等に用いうるスリップ防止材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲み物類は、ガラスビン又はPETボトルに入れられて多種多様のものが販売されている。これらのほとんどのものは、プラスチックのキャップで密封されている。このプラスチック製のキャップは、清涼飲料水、ドリンク剤等の飲み物に限らず、しょうゆ、みりん、ケチャップ等の料理用の材料から芳香剤、洗剤その他日常生活のあらゆる場面に使われている。牛乳、ジュース類、酒類等は、紙パックの包装形態で販売されているものが多い。
【0003】
キャップ付き容器又は紙パックは、自動量産に適しており、コスト削減の面から製造者が採用しやすい。これらの容器は、コンビニエントストア、スーパーマーケット及び自動販売機を通じて消費者により身近に利用されている。購買者の需要の多様化と相まって、これらの種類及び量は、ますます増えている。
【0004】
キャップの開封に要する力は、製造技術の面から、所定の範囲内に設定されているだろう。この封切り力が小さく設定され、容易に開封する場合には、流通経路上での取り扱い中に予期せぬ開封事故が生じる恐れがある。これが防止されるため、キャップの開封にはある程度の回転抵抗が与えられる。種々のキャップ付き容器の間でも開封のしやすさに差がある。通常の人でもキャップの開封にかなり力を要する場合もある。個人差もあるが、プラスチック製のキャップを開放するのにかなり手間どる人が増えている。
【0005】
一方、人口構成は、高齢層が顕著に増加している。消費財の購買層も高齢化している。キャップ付き容器入りの商品を購入する購買層も高齢化してきた。高齢者は、一般に若いときに比べると握力が低くなっている。高齢者の中には、この力に対しても開けにくい場合がある。高齢者の指先は、保水性が低くなっており、プラスチック類に対して滑りやすい場合もある。高齢者に限らず、リハビリ中の人等も同様の開封しにくさに直面するケースがある。
【0006】
日常、開封しにくいときには、革バンド、布、ゴムバンド等のキャップに巻き付けられる身近にあるものが把持力を補助するために用いられる。しかし、革や布では、手が滑りやすい場合がある。ゴムバンドでは力がよく伝わらない場合がある。キャップの開封補助具として、硬質プラスチック製又は金属製の輪状で内周に開栓方向に角度がついた爪を持つもの(特開2003−300597公報)がある。この開栓具は、キャップのサイズが異なると一定の効果が得られない。他には樹脂製の把手部と把持部とを備えており、把持部が摩擦材を有してC状に開口しているもの(登録実用新案第3037435号公報)がある。これら提案されている開栓具は、必要なときに手元になければならないので、常時携行される必要がある。これらの器具は、かさばること及び携行バッグ等から取り出すことが煩わしい難点がある。
【0007】
紙パックの開け口は、ワンタッチで開口できるように折りたたまれ接着されている。この接着部分を開封するには、接着を剥離させる力が必要になる。紙パックの中には、接着強度のバラツキによるためか、力がある人によっても開口しにくいものがある。このケースでは、開け口の接着が無理に剥がされるために開口部も乱れた形状になることが多い。通常の紙パックの場合でも、上記キャップの場合と同様に、力の弱い人には開封しにくいことが多い。
【0008】
力の弱い人は、把持されている鉛筆が指先をスリップし、十分に字が書けない場合がある。さらに、力の弱い人は、把持されているスプーンが指先をスリップし、十分に食事ができない場合がある。
【0009】
日常生活では、人と物との間で発生するスリップ以外に、物と物との間で発生するスリップが原因で、本来の目的が達成されない場合がある。衣服の整理に、ハンガーが使用される。衣服の中には人肌との接触感が重視され、滑りやすい素材が用いられる場合がある。衣服を着用する人の志向は様々であり、衣服のデザインも多種多様となっている。ハンガーに掛けられることが意識されて、衣服のデザインがなされることはまずない。ハンガーについても、素材としてプラスチックが適用され、その表面が滑りやすくなっている場合がある。ハンガーに掛けられている衣服が滑って、ハンガーから落ち、本来の目的である衣服の整理が達成できない場合がある。
【特許文献1】特開2003−300597公報
【特許文献2】登録実用新案第3037435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、携行可能で、容器の開封が困難なとき、把持されている物が指先をスリップするとき又は物が滑り落ちるときに、容易に使用でき、スリップが防止され、把持力が補助されうるスリップ防止材の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスリップ防止材は、ベース層の上側及び下側のそれぞれに粘着性層を備えている。
【0012】
好ましくは、上記ベース層の上側の粘着性層が親水性であり、上記ベース層の下側の粘着性層が疎水性である。そして、このそれぞれの粘着性層の表面が離型性フィルムで被覆されている。
【0013】
好ましくは、スリップ防止材は、テープ状又は短冊状に形成されている。
【0014】
本発明に係るキャップ付き容器は、キャップと、ベース層、このベース層の上側の粘着性層及びこのベース層の下側の粘着性層を備え、本体に付着されているスリップ防止材とを備えている。
【0015】
好ましくは、上記容器が上記本体を被覆する被覆フィルムをさらに備えている。上記スリップ防止材が上記被覆フィルムを介して本体に付着されている。そして、このスリップ防止材の上側の粘着性層の表面が離型性フィルムで被覆されており、上記スリップ防止材が本体から取り外し可能に構成されている。
【0016】
本発明に係る紙パックは、本体と、ベース層、このベース層の上側の粘着性層及びこのベース層の下側の粘着性層を備えるスリップ防止材とを備えており、上記スリップ防止材が本体に付着されている。
【0017】
好ましくは、上記容器が上記本体を被覆する被覆フィルムをさらに備えており、上記スリップ防止材が上記被覆フィルムを介して本体に付着されている。そして、このスリップ防止材の上側の粘着性層の表面が離型フィルムで被覆されており、上記スリップ防止材が本体から取り外し可能に構成されている。
【発明の効果】
【0018】
スリップ防止材の粘着性層によって、スリップが防止される。その結果、力の弱い人でも、容器の開封が容易になる。鉛筆やスプーンが把持されている指先のスリップが、防止できる。衣服のハンガーからの滑り落ちが、防止されうる。このスリップ防止材は、テープ状又は短冊状に形成されるので、かさばらない。このスリップ防止材は、ポケット等、どこにでも多数入れることができる。このスリップ防止材の携行は、容易である。スリップ防止材はスリップの防止が必要とされるときに、いつでも容易に使用できる。本発明のキャップ付き容器には、スリップ防止材が予め付着されている。このスリップ防止材は、取り外しが容易である。このキャップ付き容器は、スリップ防止材が携行される必要がない。容器の開封が困難なとき、この付着されているスリップ防止材が取り外されて利用できる。本発明の紙パックもスリップ防止材が付着されているので、注ぎ口部の接着が強力な場合でも、容易に開封できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るスリップ防止材1が示された平面図である。図1(b)は、図1のB−B線に沿った部分拡大断面図である。このスリップ防止材1は把持力補助材として機能する。このスリップ防止材1は、ベース層3と、その上側の粘着性層5と、その下側の粘着性層7とを備えたスリップ防止材本体を備えている。この図1のスリップ防止材1は、上記上側の粘着性層5を被覆する上側離型フィルム9及び上記下側の粘着性層7を被覆する下側離型フィルム11を備えている。
【0021】
このスリップ防止材1は、上側の粘着性層5及び下側の粘着性層7は離型フィルム9、11で被覆されているので、携帯にも便利である。このスリップ防止材1が用いられる際に、上記両離型フィルム9、11は剥がされる。下側の粘着性層7が開封しようとする容器のキャップの周表面又は紙パックの口部に巻き付けるように貼着される。このスリップ防止材1の上側の粘着性層5は、開けようとする人の手で直接把持される。この上側の粘着性層5からスリップ防止材1が握られて開封方向に力が加えられる。
【0022】
ベース層3の材質は、指により加えられる回転剪断力程度の力に対して破れなければ、特に制限はない。和紙、クラフト紙等の紙、織布、不織布等の布及び各種合成樹脂フィルムが用いられうる。ベース層3が紙である場合、紙基材としては、普通紙、コート紙、アート紙、パルプにマニラ麻、化繊等を混ぜたものが例示される。ベース層が布である場合、布の材料繊維としては、綿、レーヨン、ポリエステル、アセテートが例示される。用いられるベース層は、ある程度の形状保持性を備えている方が好ましい。布や紙で皺が生じやすく過度に柔軟なものは、粘着剤との組み合わせにより使用可能である場合があるが、汎用性が低い。
【0023】
薄くても強度と形状保持性とが高いという面から、ベース層3に合成樹脂フィルムがより好適に用いられる。ベース層3に用いられる樹脂フィルムの材質に特に制限はない。用いられる樹脂ベース層3の基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド共重合体等のアミド系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等のウレタン系樹脂及びポリフルオロカーボン系樹脂が例示される。このベース層3用の樹脂の重合度は、貼付剤の基材に通常使用されている重合度のものが好ましい。なかでも、入手性及びコスト等の面から、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエステルが好ましい。
【0024】
樹脂ベース層3の厚さは、通常5μm以上300μm以下が好ましい。上記範囲より厚さが薄い場合は、剥離する際にベース層3が切れたり剥がしにくい場合がある。ベース層3の厚さが薄すぎると、形状保持性が低くなり粘着性層の形成作業性も悪くなる。この観点から厚さは、10μm以上であることがより好ましい。より好ましくは、20μm以上である。上記範囲よりも厚いと、ボトル等のキャップや紙パックの折りたたまれた接着口部に貼り付けにくくなる。この観点からベース層3の厚さは、250μm以下であることがより好ましい。さらには、ベース層3の厚さが200μmであることが好ましい。ベース層3の厚さは150μm以下であることが特に好ましい。
【0025】
ベース層3の形状は、特に制限はないが、キャップ又は紙パックの口部の周囲に貼着するのに便利なテープ状又は短冊状であることが好ましい。用いられる場合の長さは、3cm以上20cm以下程度である。短すぎると十分なスリップ防止効果が得られない面から、長さは5cm以上がより好ましい。さらには8cm以上である。長さが長すぎると、携帯等、取り扱い性が悪くなる観点から、長さは、15cm以下がより好ましい。さらに好ましくは13cm以下である。
【0026】
ベース層3の巾は、5mm以上30mm以下が好ましい。この巾が小さすぎるとスリップ防止効果が不足する。この観点からベース層の巾は、10mm以上であることがより好ましい。さらには、12mm以上である。巾が大きすぎると取り扱い性が悪くなる面から、巾は20mm以下がより好ましい。より好ましくは18mm以下である。このスリップ防止材1は、テープ状又は短冊状に形成され、複数の短冊状に詰め合わされた袋入り、環状芯にテープ状に巻かれたもの等の流通形態が採用されうる。
【0027】
上側の粘着性層5及び下側の粘着性層7は、剥離可能な粘着力を備えており、いわゆる再粘着性を備える。上記粘着性層5、7には、主材として粘着剤が用いられる。粘着剤を構成する基材としては、ゴム系ポリマー又は合成樹脂が用いられる。そのなかでも粘着剤用の樹脂として、ポリオレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂が主として用いられる。ポリオレフィン樹脂では、樹脂中に粘着付与剤が加えられたものが用いられる。この粘着付与剤としては、ミネラルオイル、ポリブテン、ポリイソブチレン、液状ポリアクリレート、ラノリン等の可塑剤オイル、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂等の粘着付与樹脂が知られている。
【0028】
粘着剤に好適な基材ポリマーとしては、アクリル系樹脂が主に用いられる。アクリル系樹脂が用いられる粘着剤としては、アクリル系樹脂と他の樹脂との共重合体、アクリル系共重合体のゲル化架橋体、架橋されたアクリル系重合体粒子のエマルジョン等が例示される。上記共重合体としては、例えば、アクリル酸アルキルエステル系モノマーを主成分とする重合体と、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリロニトリル等のいずれかを主成分とする重合体とのブロック共重合体が知られている。ゲル化架橋体としては、アクリル酸アルキルエステル単量体とカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体とのアクリル系樹脂共重合体が、カルボキシル基と反応する官能基を有する架橋剤によりゲル化されたものがある。その他、表層部と内部とが架橋されたアクリル系樹脂粒子を含有する合成樹脂エマルジョンを主剤とするものがある。
【0029】
上側の粘着性層5及び下側の粘着性層7ともに同じ粘着剤が用いられてもよい。しかし、より好ましくは、下側の粘着性層7は疎水性を備えており、上側の粘着性層5が親水性を備えている。通常は、飲み物等を開封するときに、スリップ防止材1がキャップ又は紙パック口部に貼着される。しかし、場合によっては、貼着した未開封容器が開封されるまで時間が経過することがある。この場合、冷えた容器では、キャップ等にも結露する。また、冷却又は加温のため、冷水又は湯に容器が漬け置きされることがある。
【0030】
下側の粘着性層7が疎水性であれば、このような場合にも、スリップ防止材1が水により膨潤して剥離する恐れがない。下側の粘着性層7の疎水性は、用いられる樹脂及び加えられる添加剤に親水性の樹脂又は基の割合が小さくされることにより得られる。疎水性粘着剤は、通常、イソヘキサン、アセトン等の有機溶剤に溶解されて用いられる。この粘着剤は、チューブ入り又はスプレー缶入りの形態で市販されている。下側の粘着性層7の疎水性粘着剤として、これらのものが使用できる。
【0031】
上側の粘着性層5は、人の手により直接把持される。このときに、上側の粘着性層5が親水性を備えている方が、この粘着性層が手になじみやすく、より滑りにくくなる。上側の粘着性層5は、粘着性があっても手に粘着剤が付着しないことが望ましい。手に粘着剤が付着しなければ、べたついた不快感が残らないからである。この含水粘着剤層に使用される好ましい材質としては、架橋性の親水性樹脂がある。例えば、ポリアクリル酸の高分子化合物やポリアクリル酸を主基剤し含水系樹脂が含まれるものがよく用いられる。この上側の粘着性層5の主材は、前述のアクリル酸系の粘着剤の重合体又は架橋体の場合と基本的には異ならなが、含まれる親水性の基の割合が大きい。
【0032】
例えば、親水性粘着剤として、ポリアクリル酸とポリアクリル酸塩との金属架橋体が含まれるものが知られている。具体的には、粘着性及び接触感の面からポリアクリル酸又はポリアクリル酸塩の重量平均分子量が1万以上500万以下程度であることが好ましい。これらの異なる平均分子量を有するポリアクリル酸及びその塩を2種以上組み合わせると、さらに良好な粘着力と使用感を得ることができる。なお、通常のアクリル酸を重合して得られた重合体のほか、アクリル酸重合体を一部架橋したものも好適に使用し得る。
【0033】
ポリアクリル酸塩としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸の一価金属塩、ポリアクリル酸モノエタノールアミン等のポリアクリル酸のアミン塩、ポリアクリル酸のアンモニウム塩等が用いられる。粘着剤の使用感向上のため、上記基材にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体が添加されてもよい。その他では、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基を有するアクリル系粘着剤中にエポキシ基を有するポリマー粒状物が分散されてなるもの等が親水性粘着剤として用いられる。市販されている親水性粘着性材料として、具体的には、アクリル樹脂からなるユタカメイク社の商品名「液体ゴム」が使用感がよい面から好適に用いられうる。
【0034】
上側の粘着性層が指にべたつき感をもたらす場合には、オリーブオイル、その他の油類がこの粘着性層に直接又は離型フィルムを介して適量塗布されることにより、使用感が調節されてもよい。上記の上側の粘着性層5及び下側の粘着性層7は、ベース層3に、前述の粘着剤が塗布されることにより形成される。粘着剤の塗布は、粘着剤の特性に応じて塗布方法が選択される。一般に粘着剤の塗布は、ローラー、ドクターブレード等による展べ塗り、吹きつけ、浸漬等、公知の塗布方法でなされうる。
【0035】
上側粘着性層5及び下側粘着性層7が保護されるようにスリップ防止材1が離型フィルム9、11を備えることが好ましい。離型フィルム9、11は、粘着性層が被覆され、かつ必要なときに剥離できる限り材質に特に制限はない。離型フィルム9、11は、通常、上記ベース層3と同様の材質が用いられる。離型フィルム9、11の厚みは、上記ベース層3の厚みよりも薄くてもよい。離型フィルム9、11の形状保持性及び厚みそれぞれの許容範囲は、ベース層3に求められるより広い。セロファン、油紙等も含められ、上記ベース層3よりも広範な範囲の材質が選択できる。
【0036】
図2(a)は、本発明のキャップ付き容器19が示された斜視図である。図2(b)は、図2(a)のB−B線に沿った部分拡大断面図である。この容器19は、本体21と、キャップ23と、スリップ防止材25とを備えている。スリップ防止材25は、ベース層26、このベース層26の上側の粘着性層27及びこのベース層の下側の粘着性層29を備えている。このスリップ防止材25は、本体21に付着されている。このスリップ防止材25のベース層26、このベース層26の上側の粘着性層27及びこのベース層26の下側の粘着性層29の各々の構成は、上記図1のスリップ防止材1の場合と同様である。
【0037】
上記容器19は、上記本体21を被覆する被覆フィルム31をさらに備えている。流通に供される容器には、通常商標等を印刷した被覆フィルム31を備えている。この被覆フィルム上には、通常リサイクルのため被覆フィルムを剥がすのに用いられる切り取りミシン目Mが設けられている。上記スリップ防止材25は、この被覆フィルム31を介して本体21に付着されていることが製造しやすい点からより好ましい。この図2(b)の例では、このスリップ防止材25の上側の粘着性層27の表面が上側離型フィルム35で被覆されている。このスリップ防止材25の下側の粘着性層29の表面が下側離型フィルム37で被覆されている。下側の粘着性層29は下側離型フィルム37を介して被覆フィルム31の上に位置している。上記上側離型フィルム35の上側にさらにこのスリップ防止材25全体を被覆する保護層39を備えている。
【0038】
この、保護層39は、あらかじめ切り取りできるミシン目41が入れられている。スリップ防止材25が用いられるまでの流通又は保管されている間は、スリップ防止材25は、保護層39の内側で容器本体21に付着されている。スリップ防止材25が用いられる際には、上記ミシン目41が切り取られ上記スリップ防止材25が本体21から取り外される。上記保護層39の材質も、前述の図1における上記ベース層3の材質と同様のものが用いられうる。本体から取り外されたスリップ防止材25は下側の粘着性層29が開封しようとする容器のキャップ23の周表面に巻き付けるように貼着される。このスリップ防止材25の上側の粘着性層27が開けようとする人の手で直接把持される。握られたスリップ防止材25を介して開封方向に力が加えられる。
【0039】
図3(a)は、本発明の他の実施形態に係るキャップ付き容器45が示された部分拡大断面図である。この容器45も、上記図2の容器19と同様に、キャップと、ベース層47、このベース層47の上側の粘着性層49及びこのベース層47の下側の粘着性層51を備えるスリップ防止材53とを備えている。この図3(a)は、図2の本体21と同様の本体55を有し、図2の場合と同様の位置の断面が示されている。このスリップ防止材53も上記図2(b)と同様に被覆フィルム57を介して本体55に付着されている。
【0040】
このスリップ防止材53は、上側の粘着性層49及び下側の粘着性層51のそれぞれの表面を被覆する離型フィルムを備えていない。このスリップ防止材53は、本体55の被覆フィルム57に直接付着されている。そして、このスリップ防止材53の上側の粘着性層49の表面は直接、保護層59に被覆されている。上記保護層59には、スリップ防止材53を取り外しできるようにミシン目61が設けられている。開封のためスリップ防止材53が用いられるときには、ミシン目61からスリップ防止材53が本体から取り外され、上記図2の場合と同様にしてキャップ付き容器が開封される。
【0041】
図3(b)は、本発明の他の実施形態に係るキャップ付き容器63が示された部分拡大断面図である。この容器63も、上記図2の容器19と同様に、キャップと、ベース層65、このベース層65の上側の粘着性層67及びこのベース層65の下側の粘着性層69を備えるスリップ防止材71とを備えている。この断面図も上記図3(a)と同様の位置におけるスリップ防止材71が取り付けられている様子が示されている。このスリップ防止材71は、本体73に直接付着されている。スリップ防止材71の下側の粘着性層69が本体73に貼着され上側の粘着性層67の表面が被覆フィルム75に被覆されている。言い換えれば、本体の被覆フィルム75がスリップ防止材71の保護層を兼ねている。
【0042】
図示されていないが、スリップ防止材71が被覆フィルム75の間に挟まれて付着されることができる。この場合は、本体の周長よりも長い周長を有する被覆フィルム75が用いられる。本体73の周長よりも余分に長い分だけ、被覆フィルム75の重なり部分が形成される。この場合は、下側の粘着性層69がこの重なり部分の下側の被覆フィルム75の上に付着され、上側の粘着性層67が重なり部分の上側の被覆フィルム75の下に付着される。
【0043】
上記いずれの場合も、上記被覆フィルム75には、スリップ防止材71を取り外しできるようにミシン目79が設けられる。このミシン目79は、リサイクル用の切り取りミシン目Mとしても用いられうる。キャップ付き容器63が開封されるときは、このミシン目79からスリップ防止材71が本体から取り外され、同時に被覆フィルム75が取り外される。そして、上記図2のと同様にしてキャップ付き容器63が開封される。
【0044】
図4は、本発明の紙パック83が開封される様子が示された斜視図である。この紙パック83は、本体85と、スリップ防止材87とを備えている。スリップ防止材87は、ベース層、このベース層の上側の粘着性層及びこのベース層の下側の粘着性層を備えている。このスリップ防止材87の構成は、上記図1のスリップ防止材1と同様である。このスリップ防止材87は本体85に付着されている。この容器が本体85を被覆する印刷等が施された被覆フィルムをさらに備えているときは、このスリップ防止材87が被覆フィルムを介して本体85に付着されてもよい。この場合、このスリップ防止材87の上側の粘着性層の表面が離型フィルム88で被覆されており、このスリップ防止材87が本体85から取り外し可能に構成されていることが好ましい。スリップ防止材87がこの紙パック83に取り付けられる形態は、上記図3で説明した形態と同様に種々の形態が用いられうる。この紙パック83に取り付けられるスリップ防止材87は、二本一組で取り付けられることが開封操作の面から好ましい。
【0045】
このスリップ防止材87は、紙パック83の上端部に設けられている折りたたみ接着された口部89の周辺に貼着される。紙パック83の折りたたみ部91は、通常、この部分が開くように引っ張られることにより上端の口部89が剥離される。この口部89が引き出されることにより注ぎ口が形成される。この口部89の接着が力の弱い人には強すぎる場合がある。この場合に、図5に示されているようにスリップ防止材87が接着されている口部89の周りに貼着される。上側離型フィルム88がある場合は、これを外して上側の粘着性層90を露出させる。この上側の粘着性層90に指をかけて折りたたみ部を引っ張ると接着が外れやすい。
【0046】
上記の各実施形態において、容器に取り付けられたスリップ防止材が取り出されるための構成としては、ミシン目に限らない。例えば、スリップ防止材がフィルムで形成された袋のなかに入れられた状態で、被覆フィルムを介して又はこれを介さず本体に接着されてもよい。この場合、スリップ防止材が用いられるときに、上記袋が本体から剥ぎ取られ、破られてスリップ防止材が取り出される。
【0047】
図5は、図1のスリップ防止材1が使用されているフタ付き容器92が示された斜視図である。フタ付き容器92は、フタ93と容器94で構成されている。このフタ93にスリップ防止材1が、付着されている。スリップ防止材1は、テープ状に形成されている。このスリップ防止材1の下側の粘着性層7が、フタ93に付着している。上側の粘着性層5は、直接手に触れる。この粘着性層5、7によって、スリップが防止され、フタ93の開封が、容易になる。スリップ防止材1がこのフタ付き容器92に取り付けられる形態は、上記図2及び図3で説明した形態と同様に種々の形態が用いられうる。さらに、複数の短冊状に詰め合わされ袋入りとなった状態又は、環状芯にテープ状に巻かれた状態で携行されていたスリップ防止材1が用いられても良い。
【0048】
スリップ防止材1は、容器の開封用に用いられるだけではない。図6(a)は、図1のスリップ防止材1が、鉛筆95に巻かれている状況が示された平面図である。図6(b)は、図1のスリップ防止材1が、スプーン96の柄に巻かれている状況が示された斜視図である。スリップ防止材1の巻かれている部分が把持されていれば、その粘着性層によって、鉛筆95又はスプーン96が把持されている指先のスリップが防止されうる。
【0049】
スリップは、人の手と物との間だけに発生するものではない。物と物との間においても、スリップは発生する。日用品の使用において、スリップによって本来の使用目的が達成されない場合がある。図7は、図1のスリップ防止材1がハンガー97に巻かれている状況が示された正面図である。スリップ防止材1にある下側の粘着性層7が、ハンガー97に付着されている。上側の粘着性層5は、ハンガー97に掛けられている衣服と接触する。衣服は、ハンガー97から滑り落ちなくなる。スリップ防止材1は、衣服とハンガー97が接触する位置に巻かれていればよい。このスリップ防止材1は、テープ状に形成されているので、使用者は、自由にハンガー97の最適な位置にスリップ防止材1を巻くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のスリップ防止材は、容器の開封が困難なとき、把持されている物が指先をスリップするとき又は物が滑り落ちるときに用いられる。このスリップ防止材は、容易に使用でき、スリップを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るスリップ防止材が示された平面図であり、図1(b)は図1(a)のB−B線に沿った部分拡大断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明のキャップ付き容器が示された斜視図であり、図2(b)は図2(a)のB−B線に沿った部分断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の他の実施形態に係るキャップ付き容器が示された部分断面図である。図3(b)は、さらに他の実施形態に係るキャップ付き容器が示された部分断面図である
【図4】図4は、本発明の紙パックが開封される様子が示された斜視図である。
【図5】図5は、図1のスリップ防止材が使用されているフタ付き容器が示された斜視図である。
【図6】図6(a)は、図1のスリップ防止材が鉛筆に巻かれている状況が示された平面図であり、図6(b)は、図1のスリップ防止材がスプーンの柄に巻かれている状況が示された斜視図である。
【図7】図7は、図1のスリップ防止材がハンガーに巻かれている状況が示された正面図である。
【符号の説明】
【0052】
1、25、53、71、87・・・スリップ防止材
3、26、47、65・・・ベース層
5、27、49、67、90・・・上側粘着層
7、29、51、69・・・下側粘着層
9、35、69、88・・・上側離型フィルム
11、37・・・下側離型フィルム
13、33・・・離型フィルム
19、45、63・・・キャップ付き容器
21、55、73、85・・・本体
23・・・キャップ
31、57、75・・・被覆フィルム
39、59、77・・・保護層
41、61、79・・・ミシン目
83・・・紙パック
89・・・口部
91・・・折りたたみ部
92・・・フタ付き容器
93・・・フタ
94・・・容器
95・・・鉛筆
96・・・スプーン
97・・・ハンガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層の上側及び下側のそれぞれに粘着性層を備えるスリップ防止材。
【請求項2】
上記ベース層の上側の粘着性層が親水性であり、
上記ベース層の下側の粘着性層が疎水性であり、
このそれぞれの粘着性層の表面が離型性フィルムで被覆されている
請求項1に記載のスリップ防止材。
【請求項3】
テープ状又は短冊状に形成されている請求項1又は2に記載のスリップ防止材。
【請求項4】
本体と、
キャップと、
ベース層、このベース層の上側の粘着性層及びこのベース層の下側の粘着性層を備え、本体に付着されているスリップ防止材と
を備えたキャップ付き容器。
【請求項5】
上記容器が上記本体を被覆する被覆フィルムをさらに備えており、
上記スリップ防止材が上記被覆フィルムを介して本体に付着されており、
このスリップ防止材の上側の粘着性層の表面が離型性フィルムで被覆されており、
上記スリップ防止材が本体から取り外し可能に構成されている請求項4に記載のキャップ付き容器。
【請求項6】
本体と、
ベース層、このベース層の上側の粘着性層及びこのベース層の下側の粘着性層を備える
スリップ防止材とを備えており、上記スリップ防止材が本体に付着されている紙パック。
【請求項7】
上記容器が上記本体を被覆する被覆フィルムをさらに備えており、
上記スリップ防止材が上記被覆フィルムを介して本体に付着されており、
このスリップ防止材の上側の粘着性層の表面が離型フィルムで被覆されており、
上記スリップ防止材が本体から取り外し可能に構成されている請求項6に記載の紙パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−44213(P2006−44213A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279218(P2004−279218)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(593138687)
【Fターム(参考)】