説明

スリーブ用ホルダ

【課題】鉄筋に対して嵌め込みやすく且つしっかりと固定することができるスリーブ用ホルダを提供する。
【解決手段】スリーブ用ホルダ10は合成樹脂製であり、針金51が巻かれることによって鉄筋2に固定される固定部材20と、スリーブ1と共に結束バンド61に巻き付けられる保持板30と、固定部材20と保持板30との間に介在する連結部材40とを備えている。固定部材20は狭持部21と鉄筋導入部22とを有している。狭持部21は、鉄筋2の軸方向に沿って延びると共に円弧状の横断面形状を有し、鉄筋2に嵌め込まれることによって鉄筋2を狭持する。鉄筋導入部22は、狭持部21の周方向の両端から末広がり状に広がる横断面形状を有している。狭持部21には、針金51の一部と鉄筋2とが接触するように針金51の一部が入り込む孔23が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート躯体を貫通し且つその内部に配管が挿通されるスリーブを、コンクリートを打設する際に鉄筋に固定するスリーブ用ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート内に鉄筋が埋設されてなる鉄筋コンクリート躯体は、建物の基礎等としてよく用いられている。建物の基礎を構成する鉄筋コンクリート躯体には、その内外を貫くように給水管や排水管等の配管を配設する必要がある。そのような配管をコンクリート打設時にコンクリート内に直接埋設することも可能である。しかし、その場合、施工後に配管を補修しようとすると、その都度コンクリートを壊さなければならなくなる。そこで、コンクリートを壊さなくても配管補修が可能なように、鉄筋コンクリート躯体を貫通するスリーブを予め配設しておき、そのスリーブの内部に配管を挿通させることにより、配管を設置することが行われている。
【0003】
鉄筋コンクリート躯体を貫通するスリーブは、以下のようにして施工される。すなわち、まず、鉄筋を組み立てる。次に、スリーブを鉄筋に固定する。その後、鉄筋の周りに型枠を配置し、型枠内にコンクリートを打設する。そして、コンクリートが十分に固まったことを確認してから、型枠を取り外す。これにより、スリーブが貫通された鉄筋コンクリート躯体が形成される。
【0004】
ところで、スリーブを鉄筋にしっかりと固定しないと、コンクリートを打設する際にスリーブが生コンクリートの流れに押されてしまい、スリーブの位置又は姿勢がずれてしまうおそれがある。そこで、スリーブを鉄筋に固定するために、専用のスリーブ用ホルダを用いることが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
特許文献1に開示されたスリーブホルダは、スリーブを保持する保持部材と、鉄筋に固定される固定部材と、保持部材と固定部材との間に介在する連結部材とを備えている。保持部材、固定部材及び連結部材は、いずれも合成樹脂からなっている。固定部材は、鉄筋の外周面に当接するように円弧状に形成された固定用当接部を有している。固定用当接部及び鉄筋に結束バンドが巻き付けられることによって、固定用当接部とスリーブとが固定される。
【0006】
特許文献2に開示されたスリーブ固定具は、鉄筋に嵌め込まれる断面略C字型の管状物と、その管状物にスリーブを固定する針金とから構成される。管状物は合成樹脂からなっている。管状物は、鉄筋を挟み込んだ状態でその両端が針金によって締め付けられる。これにより、管状物が鉄筋に固定される。
【0007】
特許文献3に開示されたスリーブ保持具は、鉄筋に固定されるクリップ部と、略C字状のスリーブ保持部と、クリップ部とスリーブ保持部とを連結する連結部とを備えている。クリップ部、スリーブ保持部及び連結部は、合成樹脂により一体成形されている。クリップ部は断面略C字状に形成され、鉄筋を挟み込むように形成されている。クリップ部の外周面には結束線が巻き付けられる。これにより、クリップ部が鉄筋に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−144823号公報
【特許文献2】特開2005−256579号公報(図1〜図3)
【特許文献3】特開2004−244986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示されたスリーブホルダでは、固定用当接部と鉄筋との接触面積が小さい。そのため、スリーブホルダが鉄筋に対してずれやすいという課題がある。
【0010】
これに対し、特許文献2に開示されたスリーブ固定具によれば、管状物は断面略C字状に形成されているので、管状物と鉄筋との接触面積を比較的大きく確保することができる。しかし、管状物は断面略C字状に形成されているため、鉄筋に嵌め込みにくいという課題がある。すなわち、上記スリーブ固定具には、作業性が悪いという課題がある。
【0011】
特許文献3に開示されたスリーブ保持具によれば、断面略C字状のクリップ部の開口縁部に、折返部が形成されている。これにより、クリップ部を鉄筋に容易に嵌め込むことができるようになっている。しかし、折返部があるために、クリップ部を鉄筋に固定するための結束線は鉄筋と接触せず、専らクリップ部の外周面に巻き付けられているだけである。そのため、クリップ部が鉄筋に対して滑ってしまい、スリーブ保持具を鉄筋にしっかりと固定できないおそれがある。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄筋に対して嵌め込みやすく且つしっかりと固定することができるスリーブ用ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るスリーブ用ホルダは、鉄筋コンクリート躯体を貫通し且つその内部に配管が挿通されるスリーブを、コンクリートを打設する際に鉄筋に固定するスリーブ用ホルダであって、前記鉄筋に嵌め込まれると共に、長尺部材が巻き付けられることによって前記鉄筋に固定される固定部材と、前記スリーブが取り付けられることによって前記スリーブを保持する保持部材と、前記固定部材と前記保持部材との間に介在する連結部材と、を備え、少なくとも前記固定部材は樹脂によって形成され、前記固定部材は、前記鉄筋の軸方向に沿って延びると共に円弧状の横断面形状を有し、前記鉄筋に嵌め込まれることによって前記鉄筋を狭持する狭持部と、前記狭持部の周方向の両端から末広がり状に広がる横断面形状を有する鉄筋導入部と、を備え、前記狭持部又は前記鉄筋導入部には、前記長尺部材の一部と前記鉄筋とが接触するように前記長尺部材の一部が入り込む孔が形成されているものである。
【0014】
なお、固定部材、保持部材、及び連結部材は、一体であってもよく、別体であってもよい。
【0015】
上記スリーブ用ホルダによれば、固定部材を鉄筋に押し込むと、鉄筋は鉄筋導入部上を滑ることにより、狭持部の内側に案内される。したがって、上記スリーブ用ホルダを鉄筋に容易に嵌め込むことができる。固定部材は長尺部材が巻き付けられることによって鉄筋に固定されるが、長尺部材の一部は、固定部材の孔を通して鉄筋に直接接触する。そのため、固定部材が鉄筋導入部を有しているにも拘わらず、長尺部材は固定部材及び鉄筋の双方に巻かれることになる。したがって、スリーブ用ホルダを鉄筋にしっかりと固定することができる。
【0016】
前記鉄筋には、軸方向の所定間隔毎に、径方向の外側に広がる膨出部が形成され、前記孔の前記鉄筋の軸方向に沿った方向の幅は、隣り合う膨出部の間の間隔よりも小さくてもよい。
【0017】
このことにより、長尺部材の一部、すなわち固定部材の孔内に位置する部分は、鉄筋の膨出部の間に位置することになる。そのため、長尺部材の鉄筋の軸方向に沿った方向の移動は、上記膨出部によって規制される。したがって、スリーブ用ホルダの位置ずれが抑制され、ひいてはスリーブの位置ずれが抑制されることになる。
【0018】
前記スリーブ用ホルダは、前記固定部材における前記孔よりも軸方向外側の部分と前記連結部材とに架け渡されたリブを備えていてもよい。
【0019】
このことにより、万が一、長尺部材が緩んで固定部材が長尺部材から抜けそうになったとしても、長尺部材がリブに引っ掛かることによって、固定部材の軸方向の移動は規制される。したがって、スリーブ用ホルダの位置ずれが抑制され、ひいてはスリーブの位置ずれが抑制されることになる。
【0020】
前記固定部材の前記孔は、前記狭持部における前記鉄筋導入部と反対側に形成されていてもよい。
【0021】
このことにより、鉄筋導入部の機能を何ら損なうことなく、長尺部材を固定部材及び鉄筋にしっかりと固定することができる。
【0022】
あるいは、前記固定部材の前記孔の少なくとも一部は、前記鉄筋導入部の先端から根元にわたって形成された凹状の溝によって形成されていてもよい。
【0023】
このことにより、鉄筋導入部の剛性を比較的低く抑えることができる。したがって、固定部材を鉄筋に嵌め込むことがより容易になる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、鉄筋に対して嵌め込みやすく且つしっかりと固定することができるスリーブ用ホルダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】スリーブ用ホルダを用いて鉄筋に固定されたスリーブの斜視図である。
【図2】スリーブが設けられた鉄筋コンクリート躯体の断面図である。
【図3】スリーブ及びスリーブ用ホルダの斜視図である。
【図4】スリーブ用ホルダの斜視図である。
【図5】スリーブ及びスリーブ用ホルダの断面図である。
【図6】スリーブ用ホルダの取付方法を説明する図である。
【図7】スリーブ用ホルダの取付方法を説明する図である。
【図8】スリーブ用ホルダの取付方法を説明する図である。
【図9】第2実施形態に係るスリーブ用ホルダの斜視図である。
【図10】第3実施形態に係るスリーブ用ホルダの斜視図である。
【図11】他の実施形態に係るスリーブ用ホルダの斜視図である。
【図12】他の実施形態に係るスリーブ及びスリーブ用ホルダの斜視図である。
【図13】他の実施形態に係るスリーブが設けられた鉄筋コンクリート躯体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態に係るスリーブ用ホルダ10は、コンクリートを打設する際にスリーブ1を鉄筋2に固定するものである。図2は、スリーブ1が配設された鉄筋コンクリート躯体4の断面図である。本実施形態に係る鉄筋コンクリート躯体4は、家屋の基礎を構成している。鉄筋コンクリート躯体4は、コンクリート3と、コンクリート3に埋設された鉄筋2とからなっている。スリーブ1は鉄筋コンクリート躯体4を貫通している。スリーブ1の内部には、例えば給水管や排水管等の配管(図示せず)が挿通される。本実施形態では、スリーブ1は曲管である。スリーブ1の一端1aは水平方向に延び、他端1bは斜め上方向に延びている。ただし、スリーブ1の形状は何ら限定されず、直管等であってもよい。スリーブ1は、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂からなっている。ただし、スリーブ1の材料は特に限定される訳ではない。
【0027】
図3に示すように、スリーブ用ホルダ10は、鉄筋2に固定される固定部材20と、スリーブ1が取り付けられる保持板30と、固定部材20と保持板30との間に介在する連結部材40とを備えている。これら固定部材20、保持板30、及び連結部材40は、ポリプロピレンやABS等の合成樹脂によって一体成形されている。ただし、固定部材20、保持板30、及び連結部材40は別体に形成され、互いに組み立てられていてもよい。なお、以下の説明では便宜上、スリーブ1の軸方向を前後方向とし、鉄筋2の軸方向を左右方向と称する。
【0028】
図4に示すように、固定部材20は、断面略C字状の狭持部21と、狭持部21の周方向の両端から末広がり状に広がる鉄筋導入部22とから構成されている。鉄筋導入部22は狭持部21から折り返されたような形状になっている。狭持部21及び鉄筋導入部22は左右方向に延びており、狭持部21は上側が開いた略筒状に形成されている。狭持部21の下側には、孔23が形成されている。図5に示すように、孔23は連結部材40の左側及び右側にそれぞれ形成されている。鉄筋2には、径方向の外側に広がる膨出部2aが設けられている。膨出部2aは環状に形成されている。膨出部2aは、鉄筋2の軸方向に所定間隔B毎に設けられている。孔23の左右方向の幅Aは、膨出部2aの間隔Bよりも小さくなっている。
【0029】
保持板30は、断面略円弧状に形成されている。図4に示すように、保持板30は、中央片31と舌片32とを有している。中央片31は連結部材40と連続している。舌片32は、中央片31におけるスリーブ1の周方向に沿った方向の両側に設けられている。中央片31と舌片32との間には、溝33が形成されている。本実施形態では、溝33は前後方向に延びる直線状に形成されている。溝33の肉厚は、中央片31及び舌片32の肉厚よりも小さくなっている。溝33は中央片31よりも断面二次モーメントが小さい部分である。そのため、舌片32は中央片31よりも撓み変形が容易に形成されている。保持板30は、溝33を境として撓み変形が容易である。
【0030】
連結部材40は、固定部材20と保持板30とを連結している。連結部材40は鉛直方向に延びており、固定部材20及び保持板30と直交する方向に延びている。連結部材40には、縦リブ41及び横リブ42が設けられている。連結部材40の下部には、保持板30の長手方向に延びる貫通孔43が形成されている。後述するように、この貫通孔43には結束バンド61(図3参照)が挿通される。連結部材40の下部と保持板30の中央片31との間には、略三角形状の補強リブ44,45が設けられている。補強リブ44は左右方向に延び、補強リブ45は前後方向に延びている。言い換えると、補強リブ44は保持板30の長手方向と平行な方向に延び、補強リブ45は補強リブ44と直交する方向に延びている。補強リブ44,45は、連結部材40の前側及び後側の左右両側にそれぞれ設けられている。
【0031】
固定部材20の左右両端部の下側と連結部材40の中途部とには、リブ46が架け渡されている。リブ46は、左右方向及び上下方向に対して斜めの方向に延びている。図5に示すように、固定部材20と連結部材40とリブ46とにより、正面視略直角三角形状の孔47が形成されている。
【0032】
図3及び図5に示すように、固定部材20は針金51によって鉄筋2に固定される。針金51は、上記孔47を通じて固定部材20に巻き付けられる。また、針金51は、その一部が固定部材20の孔23内に位置するように巻き付けられる(図5参照)。これにより、針金51の一部は、孔23を通じて鉄筋2に直接接触する。すなわち、針金51の一部は鉄筋2に直接巻き付けられる。針金51の他の部分は、固定部材20の狭持部21及び鉄筋導入部22に巻き付けられ、狭持部21が鉄筋2を狭持するように狭持部21を締め付ける。なお、図5に示すように、孔23は鉄筋2の隣り合う膨出部2a間に位置している。そのため、針金51も鉄筋2の膨出部2a間に位置している。
【0033】
図3に示すように、スリーブ1は、合成樹脂製の結束バンド61によって保持板30に固定される。結束バンド61は、帯状のバンド本体62と、係止部63とを備えている。係止部63は断面略矩形状の筒状体からなり、その内部に係止爪(図示せず)が設けられている。図示は省略するが、バンド本体62の内周面には、長手方向に所定間隔毎に係止爪が設けられている。バンド本体62の係止爪は、バンド本体62を引き締める方向(図5の実線矢印の方向)に移動するときには係止部63の係止爪に係止されないが、バンド本体62を弛める方向(図5の破線矢印の方向)に移動するときには係止部63の係止爪に係止されるようになっている。結束バンド61は、連結部材40の貫通孔43に挿通される。結束バンド61は、保持板30の表面とスリーブ1の外周面とに巻き付けられることにより、スリーブ1を保持板30に固定する。
【0034】
次に、スリーブ用ホルダ10を利用してスリーブ1を鉄筋2に固定する方法について説明する。まず、図6に示すように、スリーブ用ホルダ10を上下逆さまにして、固定部材20を鉄筋2に押し込む。すなわち、固定部材20の両鉄筋導入部22が鉄筋2の上方に位置するようにスリーブ用ホルダ10を位置決めし、そのまま下方に押し下げる。すると、鉄筋2が鉄筋導入部22の表面に接触する。スリーブ用ホルダ10を更に下方に押し下げると、鉄筋導入部22が鉄筋2によって押し広げられ、それに伴って狭持部21が押し広げられる。その結果、鉄筋2が狭持部21の内側に入り込む。スリーブ用ホルダ10は合成樹脂製であるので、鉄筋2が狭持部21の内側に入り込むと、両鉄筋導入部22が近づくように固定部材20は復元する。そして、固定部材20の弾性力により、鉄筋2は狭持部21によって狭持される。このように、スリーブ用ホルダ10を鉄筋2に向かって上方から押し下げるだけで、スリーブ用ホルダ10を鉄筋2に嵌め込むことができる。一般に、作業者にとって、上方から力を加える方が作業はしやすい。したがって、作業者はスリーブ用ホルダ10を鉄筋2に容易に嵌め込むことができる。
【0035】
次に、図7に示すように、スリーブ用ホルダ10を鉄筋2上で滑らせ、保持板30が下側に位置するように回転させる。なお、固定部材20は自らの弾性力によって鉄筋2を狭持しているだけなので、スリーブ用ホルダ10を回転させる作業は容易である。一方、固定部材20の狭持部21は断面略C字状に形成されているので、スリーブ用ホルダ10を回転させても、スリーブ用ホルダ10が鉄筋2から自然に落下することはない。
【0036】
次に、図8に示すように、結束バンド61を用いてスリーブ1を保持板30に固定する。なお、上述の通り、固定部材20の狭持部21が鉄筋2を狭持しているので、スリーブ用ホルダ10を下から支えていなくても、スリーブ1を固定する作業を行うことができる。具体的には、まず、スリーブ1を持ち上げ、スリーブ1の外周面を保持板30の裏面に当接させる。保持板30は撓み変形容易な舌片32を有しているので、スリーブ1の外周面を保持板30に当接させると、保持板30はスリーブ1の外周面に倣うように変形する。その結果、スリーブ1と保持板30との接触面積が大きくなる。この状態で、結束バンド61のバンド本体62を連結部材40の貫通孔43に通し、スリーブ1の外周面に沿って巻いたうえで、係止部63に挿通させる。そして、バンド本体62を引き締める。その結果、保持板30の表面及びスリーブ1の外周面に結束バンド61が巻き付けられ、スリーブ1は保持板30に保持される。
【0037】
次に、針金51を前方又は後方からスリーブ用ホルダ10の孔47に通し、固定部材20の孔23と同じ位置に位置付けたうえで、固定部材20及び鉄筋2に巻き付ける(図3及び図5参照)。なお、この際、孔23と鉄筋2の膨出部2aとが重なる位置にある場合には、それらが重ならない位置までスリーブ用ホルダ10を左方又は右方にずらすことが好ましい。これにより、針金51は両膨出部2aの間に位置付けられる。
【0038】
以上のようにして、スリーブ1は鉄筋2に固定される(図1参照)。その後は、鉄筋2の周りに図示しない型枠を配置し、その型枠内にコンクリートを打設する。すなわち、型枠内に生コンクリートを流し込む。この際、スリーブ1は生コンクリートの流れから力を受ける。しかし、スリーブ1はスリーブ用ホルダ10を介して鉄筋2にしっかりと固定されているので、スリーブ1の位置や姿勢のずれは抑制される。なお、図2に示すように、スリーブ用ホルダ10は鉄筋2と共に、コンクリート3内に埋設されることになる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るスリーブ用ホルダ10の固定部材20は、鉄筋2に嵌め込まれることによって鉄筋2を狭持する狭持部21と、狭持部21の周方向の両端から末広がり状に広がる鉄筋導入部22とを備えている。スリーブ用ホルダ10を鉄筋2に取り付ける際、固定部材20を鉄筋2に押し込むと、鉄筋導入部22は鉄筋2によって押し広げられ、鉄筋2を狭持部21の内側に案内する。したがって、固定部材20は鉄筋2との接触面積が大きいものであるにも拘わらず、鉄筋2に対して容易に嵌め込まれる。また、固定部材20には、固定部材20に巻き付けられる針金51の一部を鉄筋2に直接接触させる孔23が形成されている。したがって、固定部材20が鉄筋導入部22を有しているにも拘わらず、針金51を固定部材20及び鉄筋2の双方に巻き付けることができる。よって、本実施形態に係るスリーブ用ホルダ10によれば、鉄筋2に対して嵌め込みやすく、且つ鉄筋2にしっかりと固定することが可能である。
【0040】
前述したように、固定部材20の孔23の幅Aは、鉄筋2の膨出部2a間の間隔Bよりも小さい(図5参照)。そのため、固定部材20の孔23の位置に合わせて針金51を巻くことにより、針金51を隣り合う膨出部2aの間に位置付けることができる。ここで、針金51の一部は鉄筋2に直接接触している。したがって、コンクリート打設時に、スリーブ用ホルダ10が左右に移動しそうになっても、針金51の移動は膨出部2aによって阻止される。そのため、スリーブ用ホルダ10の位置ずれを抑制することができ、ひいてはスリーブ1の位置ずれを抑制することができる。
【0041】
スリーブ用ホルダ10は、固定部材20の左右の外側部分と連結部材40とに架け渡されたリブ46を備えており、固定部材20と連結部材40とリブ46とによって、孔47が形成されている。針金51は、孔47を通って固定部材20及び鉄筋2に巻き付けられる。そのため、万が一、針金51が緩んで固定部材20が針金51から抜けそうになっても、すなわち、固定部材20が左右方向に移動しそうになったとしても、針金51がリブ46に引っ掛かることによって、固定部材20の移動は抑制される。したがって、スリーブ用ホルダ10の位置ずれを抑制することができる。
【0042】
なお、固定部材20の孔23の位置は特に限定されないが、本実施形態では、孔23は狭持部21の下側に形成されている。すなわち、孔23は、狭持部21における鉄筋導入部22と反対側に形成されている。これにより、鉄筋導入部22の機能を何ら損なうことなく、針金51を固定部材20及び鉄筋2にしっかりと固定することができる。
【0043】
<第2実施形態>
図9に示すように、第2実施形態に係るスリーブ用ホルダ10は、固定部材20の鉄筋導入部22から狭持部21の一部にわたって孔25が形成されているものである。孔25は、各鉄筋導入部22の左右の両側にそれぞれ形成されている。孔25は、鉄筋導入部22の先端から根元にわたって形成された凹状の溝25aと、狭持部21に設けられた凹状の溝25bとによって形成されている。
【0044】
本実施形態においても、針金51の一部は孔25を通じて鉄筋2と直接接触する。そのため、針金51は、固定部材20及び鉄筋2の双方に巻き付けられる。したがって、固定部材20を鉄筋2にしっかりと固定することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、鉄筋導入部22に溝25aが形成されているので、鉄筋導入部22の剛性を比較的低く抑えることができる。したがって、固定部材20を鉄筋2に嵌め込むことがより容易になる。
【0046】
<第3実施形態>
図10に示すように、固定部材20の狭持部21の前側及び後側に孔26を設けるようにしてもよい。本実施形態に係るスリーブ用ホルダ10では、狭持部21の左右両側の前側及び後側に孔26が形成されており、合計4つの孔26が形成されている。
【0047】
本実施形態においても、針金51の一部は孔26を通じて鉄筋2と直接接触する。そのため、針金51は、固定部材20及び鉄筋2の双方に巻き付けられる。したがって、固定部材20を鉄筋2にしっかりと固定することができる。
【0048】
<その他の実施形態>
本発明は前述の実施形態に限らず、他に種々の形態で実施することができる。針金51を鉄筋2に接触させるための孔の位置、大きさ、個数等は、前記各実施形態のものに何ら限定されず、他に種々の変形例が可能である。
【0049】
前記各実施形態では、スリーブ用ホルダ10の保持板30には、溝33が形成されていた。しかし、溝33は必ずしも必要ではない。図11に示すように、溝33のない保持板30を用いてもよい。
【0050】
前記各実施形態では、スリーブ用ホルダ10の連結部材40に貫通孔43が設けられており、結束バンド61は貫通孔43を通じて保持板30に巻かれていた。しかし、保持板30の形状等によっては、貫通孔43を通るように結束バンド61を配置する必要は必ずしもない。また、連結部材40の貫通孔43を省略することも可能である。例えば、保持板30が前方又は後方に延長され、結束バンド61をその延長部分の表面に巻き付けるようにしてもよい。また、図12に示すように、保持板30が前方延長部35a及び後方延長部35bを有し、前方延長部35a及び後方延長部35bのそれぞれの表面に結束バンド61を巻き付けるようにしてもよい。図12に示すスリーブ用ホルダ10では、連結部材40には結束バンド61を通す貫通孔は形成されていない。
【0051】
前記実施形態では、スリーブ1は樹脂管であった。しかし、スリーブ1の種類は何ら限定されない。例えば、図13に示すように、スリーブは紙製のボイド管1Aであってもよい。ボイド管1Aは、鉄筋コンクリート躯体4内に埋設され、鉄筋コンクリート躯体4を貫通している。このボイド管1Aには、例えば給水管や排水管等の配管6等を挿通することができる。
【0052】
前記各実施形態において、固定部材20と鉄筋2とに巻き付けられる長尺部材は、針金51であった。しかし、長尺部材は針金51に限られない。長尺部材として、線状、紐状又は帯状の他の部材等を用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 スリーブ
2 鉄筋
2a 膨出部
4 鉄筋コンクリート躯体
10 スリーブ用ホルダ
20 固定部材
21 狭持部
22 鉄筋導入部
23 孔
30 保持板(保持部材)
40 連結部材
46 リブ
51 針金(長尺部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート躯体を貫通し且つその内部に配管が挿通されるスリーブを、コンクリートを打設する際に鉄筋に固定するスリーブ用ホルダであって、
前記鉄筋に嵌め込まれると共に、長尺部材が巻き付けられることによって前記鉄筋に固定される固定部材と、
前記スリーブが取り付けられることによって前記スリーブを保持する保持部材と、
前記固定部材と前記保持部材との間に介在する連結部材と、を備え、
少なくとも前記固定部材は樹脂によって形成され、
前記固定部材は、前記鉄筋の軸方向に沿って延びると共に円弧状の横断面形状を有し、前記鉄筋に嵌め込まれることによって前記鉄筋を狭持する狭持部と、前記狭持部の周方向の両端から末広がり状に広がる横断面形状を有する鉄筋導入部と、を備え、
前記狭持部又は前記鉄筋導入部には、前記長尺部材の一部と前記鉄筋とが接触するように前記長尺部材の一部が入り込む孔が形成されている、スリーブ用ホルダ。
【請求項2】
前記鉄筋には、軸方向の所定間隔毎に、径方向の外側に広がる膨出部が形成され、
前記孔の前記鉄筋の軸方向に沿った方向の幅は、隣り合う膨出部の間の間隔よりも小さい、請求項1に記載のスリーブ用ホルダ。
【請求項3】
前記固定部材における前記孔よりも軸方向外側の部分と前記連結部材とに架け渡されたリブを備えている、請求項1又は2に記載のスリーブ用ホルダ。
【請求項4】
前記孔は、前記狭持部における前記鉄筋導入部と反対側に形成されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載のスリーブ用ホルダ。
【請求項5】
前記孔の少なくとも一部は、前記鉄筋導入部の先端から根元にわたって形成された凹状の溝によって形成されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載のスリーブ用ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−256644(P2011−256644A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133258(P2010−133258)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】