説明

スリーブ被覆部材の製造方法

【課題】しわの発生を防止あるいは抑制するようにして耐久性のあるスリーブ被覆部材を歩留まりよく製造できるスリーブ被覆部材の製造方法を提供する。
【解決手段】 金型12内に、基体14と、その外側に、予め弾性変形領域を超え塑性変形領域まで軸方向に張力を加えて延伸され、その延伸状態から張力が解除され放置されて、伸びの緩和が生じている状態の樹脂スリーブ16とをほぼ同軸に配置する。その後、基体14と樹脂スリーブ16との間に、弾性材料前駆体18を注入する。そして、樹脂スリーブ16の伸びの緩和が実質終了する時間内に、弾性材料前駆体18を所定硬度に硬化させるようにする。スリーブ被覆部材は、いわゆる熱定着ローラあるいは熱定着ベルトを構成するもので、最外層に樹脂スリーブ16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子複写機、レーザプリンタ等の定着部で、基体の内外部に熱源を有する定着装置に適用されるローラ又はベルトのスリーブ被覆部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機やプリンタのフルカラー化が進む中で、熱定着部に用いるスリーブ被覆部材にシリコーンゴムを中心とする弾性体を構造の一部に持つものが用いられる機会が増えている。
【0003】
さらには、クイックスタートや高速化の進展に対応するため、スリーブ被覆部材に過大な熱ストレスが与えられる傾向が顕著である。このため、長時間使用中での劣化の進行により、スリーブ被覆部材の表面にしわが発生し、画像の質が低下するか、通紙困難となり、これが原因として寿命が尽きる確率が増えている。
【0004】
上記のしわは、大別して、軸方向に生じる縦じわと、周方向に生じる横じわがある。なお、縦じわと横じわが同時に発生した場合は、斜めのしわとして観察される。いずれにしても、それぞれのしわ発生の予防対策を講じる必要がある。
縦じわの発生を防止あるいは遅延させるには、製品径よりも小さい外径のフッ素樹脂スリーブを採用し、液状ゴムの注入圧力により製品径まで膨らませるか、加熱により径方向に自己収縮する性質を持たせるか、又はそれらを組み合わせる手段がある。
【0005】
横じわの発生を防止あるいは遅延させるには、フッ素樹脂スリーブを予め延伸しておくか、加熱により軸方向に自己収縮する性質を持たせるか、又はそれらを組み合わせる手段がある。
【特許文献1】特開平11−58552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、従来のスリーブ被覆部材の製造方法には、次のような解決すべき課題があった。
自己収縮する性質を持たせたチューブは、その収縮率の管理が難しく、結果的にコストアップにつながる結果となる。横じわの発生を防止あるいは遅延させるために、フッ素樹脂スリーブを予め延伸しておく手段は、製品の品質のばらつきが大きく、歩留まりを悪くする結果となる。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、しわの発生を防止あるいは抑制するようにして耐久性のあるスリーブ被覆部材を歩留まりよく製造できるスリーブ被覆部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
金型内に、基体と、その外側に、予め弾性変形領域を超え塑性変形領域まで軸方向に張力を加えて延伸され、その延伸状態から張力が解除され放置されて、伸びの緩和が生じている状態の樹脂スリーブとをほぼ同軸に配置し、上記基体及び上記樹脂スリーブの間に、弾性材料前駆体を注入し、上記弾性材料前駆体を、所定硬度に硬化させるようにすることを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。
【0009】
スリーブ被覆部材は、熱定着ローラあるいは熱定着ベルトを構成するもので、基体の外側に、弾性材料及び樹脂スリーブが設けられてなるものである。
スリーブ被覆部材が熱定着ローラに適用される場合は、基体はパイプ状の金属からなる芯軸である。スリーブ被覆部材が熱定着ベルトに適用される場合は、基体は芳香族ポリイミド等の成型樹脂からなるスリーブである。
樹脂スリーブが予め弾性変形領域を超え塑性変形領域まで軸方向に張力を加えて延伸され、その延伸状態から張力が解除され放置されて、伸びの緩和が生じている状態で弾性材料が硬化することから、樹脂スリーブが弾性材料により収縮が押さえられる。従って、構成1によれば、樹脂スリーブのしわ発生が防止あるいは抑制される。
【0010】
〈構成2〉
金型内に、基体と、その外側に、予め弾性変形領域を超え塑性変形領域まで軸方向に張力を加えて延伸され、その延伸状態から張力が解除され放置されて、伸びの緩和が生じている状態の樹脂スリーブとをほぼ同軸に配置し、上記基体及び上記樹脂スリーブの間に、弾性材料前駆体を注入し、上記弾性材料前駆体を、上記樹脂スリーブの伸びの緩和が実質終了する時間内に、所定硬度に硬化させるようにすることを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。
【0011】
樹脂スリーブの伸びの緩和が実質終了する時間内とは、樹脂スリーブを軸方向に延伸した後、延伸を解除して放置しているときに樹脂スリーブが収縮するが、その収縮が実質的に終了するまでの時間を称している。樹脂スリーブが完全に収縮する前の状態で弾性材料が硬化することから、樹脂スリーブが弾性材料により収縮が押さえられ、いわゆる突っ張った状態となる。従って、構成2によれば、樹脂スリーブのしわ発生が防止あるいは抑制され、耐久性のあるスリーブ被覆部材を歩留まりよく製造できる。
【0012】
〈構成3〉
構成1又は2記載のスリーブ被覆部材の製造方法において、上記基体は、鉄、ステンレス、アルミニウム、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミドの内の一種により形成されたものであり、上記樹脂スリーブは押出成型可能なフッ素樹脂により形成されたものであり、上記弾性材料前駆体は付加反応型の液状シリコーンゴムにより形成されたものであることを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。
【0013】
構成1又は2のスリーブ被覆部材が熱定着ローラに適用される場合は、基体はパイプ状の鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属からなる芯軸である。構成1又は2のスリーブ被覆部材が熱定着ベルトに適用される場合は、基体は芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等からなるスリーブである。構成1又は2の発明は、上記いずれかの基体の外側に設けられる弾性材料と樹脂スリーブとの成型に係わるものである。
【0014】
〈構成4〉
構成1又は2記載のスリーブ被覆部材の製造方法において、上記樹脂スリーブと上記基体との間に上記弾性材料前駆体を注入する前に、上記基体外面及び上記樹脂スリーブ内面に接着剤を塗布することを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。
【0015】
各層の接着をより強固にしてしわ発生をさらに起こり難くする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のスリーブ被覆部材の製造方法を説明する。
スリーブ被覆部材は、内外部に加熱源を持つ熱定着機に使用される熱定着ローラあるいは熱定着ベルトを構成するものである。
【0017】
図1には熱定着ローラに適用されるスリーブ被覆部材の製造方法を示している。
図1に示すように、成形されるローラの外径と同じ内径を有する円筒形の金型12内に、パイプ状芯軸(基体)14と、予め後述する処理を施した樹脂スリーブ16とをほぼ同軸に配置する。このとき、必要に応じて、芯軸14の外面と樹脂スリーブ16の内面に接着剤を塗布乾燥する。
【0018】
そして、芯軸14と樹脂スリーブ16の間に、液状シリコーンゴム等の弾性材料前駆体を注入した後、後述する条件の下で硬化して所定の弾性材料18とする。芯軸14は、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属からなり、樹脂スリーブ16は、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等の成形樹脂からなるものである。
【0019】
なお、図1の符号20、21は、円筒状金型12の両端開口を閉塞する栓体をそれぞれ示している。一方の栓体21には弾性材料前駆体を注入する注入孔22が設けられている。他方の栓体20には弾性材料前駆体を注入した際に内部空気を外気に放出するための逃げ孔23が設けられている。
【0020】
また、樹脂スリーブ16は、金型12内に配置される前には、予め、その弾性変形領域を超え塑性変形領域まで軸方向に延伸され、その延伸状態で張力が解除され放置されているが、伸びの緩和が生じている状態のものである。
金型12内の弾性材料前駆体18は、所定硬度に硬化されるが、樹脂スリーブ16の伸びの緩和が実質終了する時間内に所定硬度に硬化されることが好ましい。
【0021】
樹脂スリーブ16の伸びの緩和が実質終了する時間内とは、樹脂スリーブ16を軸方向に張力を加えて延伸した後、延伸状態で張力を解除して放置しているときに樹脂スリーブ16が収縮するが、その収縮が実質的に終了するまでの時間を称している。
樹脂スリーブ16は、完全に収縮する前の状態で弾性材料が硬化することから、樹脂スリーブ16に内在している収縮力が弾性材料により押さえられるため、いわゆる突っ張った状態となっている。
【0022】
図2は、樹脂スリーブ16に軸方向に張力を加えて延伸したときの伸びを示している。図2において、実線の矢印30〜33は、積極的に伸張する作業中のヒステリシスの様相を示している。点線の矢印35〜37は、張力が解除され放置中の樹脂スリーブの伸びの緩和を示している。ここで、伸びの緩和とは、樹脂スリーブが軸方向に延伸された後に張力解除され放置されたときに、ある程度のところまで収縮する状態をいう。
【0023】
図3は、外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置により軸方向に30%延伸し、延伸装置から取り外した後、放置しているときの緩和時間と延伸量との関係を示している。図3に示すように、放置後3時間位で延伸量が10%以下になる。
【0024】
ある程度の緩和が進んでも加熱すれば、さらに収縮する傾向を示すが、緩和が進んだ樹脂スリーブは、その収縮量も小さくなり、本発明の目的であるしわ発生対策になり得ない。スリーブ被覆部材を使用しているとき、樹脂スリーブにしわが発生してくれば、画像の質の低下や通紙困難な状況となることから耐久性あるいは寿命が限界といわれることになる。このことから、品質的にしわ対策不適となる放置時間を、伸びの緩和が実質終了する時間ということができる。伸びの緩和は樹脂スリーブの材料、形状、環境等によりその傾向が異なり、特定することは困難である。
【0025】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0026】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0027】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め、内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で30%延伸し、延伸装置から取り外した後、内面に接着剤を塗布乾燥したPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0028】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0029】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0030】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
【実施例2】
【0031】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0032】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め、内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で20%延伸し、延伸装置から取り外した後、内面に接着剤を塗布乾燥したPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0033】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0034】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0035】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例1とは、上記(1)の、PFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で20%延伸したことが相違し、他は同じ。)
【実施例3】
【0036】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0037】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め、内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で10%延伸し、延伸装置から取り外した後、内面に接着剤を塗布乾燥したPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0038】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0039】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0040】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例1とは、上記(1)の、PFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で10%延伸したことが相違し、他は同じ。)
【実施例4】
【0041】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0042】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め、内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で30%延伸し、延伸装置から取り外した後、内面に接着剤を塗布乾燥したPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0043】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0044】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。この時点でPFAスリーブ延伸後1時間が経過していた。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0045】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例1とは、上記(3)の、この時点でPFAスリーブ延伸後1時間が経過していたことが相違し、他は同じ。)
【実施例5】
【0046】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0047】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で30%延伸し、延伸装置から取り外した後、内面に接着剤を塗布乾燥したPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0048】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0049】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。この時点でPFAスリーブ延伸後3時間が経過していた。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0050】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
【0051】
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例4とは、上記(3)の、PFAスリーブ延伸後の経過時間を3時間としたことが相違し、他は同じ。)
【比較例1】
【0052】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0053】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め、内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0054】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0055】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0056】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例1とは、上記(1)の、PFAスリーブの延伸作業を省略したことが相違し、他は同じ。)
【比較例2】
【0057】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0058】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0059】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0060】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0061】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
【0062】
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例4とは、上記(1)の、PFAスリーブの延伸作業を省略したことが相違し、他は同じ。)
【比較例3】
【0063】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0064】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め、内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で30%延伸し、延伸装置から取り外した後、内面に接着剤を塗布乾燥したPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0065】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0066】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。この時点でPFAスリーブ延伸後8時間が経過していた。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0067】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
【0068】
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例4とは、上記(3)の、シリコーンゴムの注型作業を、PFAスリーブの延伸作業後8時間経過時点としたことが相違し、他は同じ。)
【比較例4】
【0069】
下記(1)〜(5)の工程で、外径40mmのフッ素樹脂スリーブ被覆シリコーンゴムローラを得た。
【0070】
(1)外径36mm、肉厚2mm、胴部長さ320mmのアルミニウム製の中空芯軸(基体)と、
予め、内面がエッチングされた外径39mm、肉厚50μmのPFAスリーブを、延伸装置に取付けて軸方向に引張り速度10mm/秒で30%延伸し、延伸装置から取り外した後、内面に接着剤を塗布乾燥したPFAスリーブと、
硬度10°(durometer−A)の付加反応型液状シリコーンゴムと、
接着剤#101(信越化学工業株式会社製)と、
円筒金型(内径40.2mm)とを用意した。
【0071】
(2)中空芯軸の胴部表面をアルミナ粉を用いてショットブラストし、ブラスト粉を洗浄剤で除去した後、接着剤#101を5g塗布し、30分室温で放置後、150℃、30分の条件で乾燥し、芯軸上の接着剤を乾燥させた。
【0072】
(3)上記(2)で述べたように処理した中空芯軸を、室温まで冷却した後、予め、内面にPFAスリーブを配置した円筒金型内にほぼ同軸に配置し、付加反応型液状シリコーンゴムを、芯軸とPFAスリーブとの間に注入あるいは射出した。液状シリコーンゴムの逆流を防止する逆止弁を働かせた状態で150℃に保たれた恒温槽内に格納した。この時点でPFAスリーブ延伸後24時間が経過していた。恒温槽内に1時間放置し、シリコーンゴムを硬化させた。
【0073】
(4)金型を恒温槽より取り出し、水冷した後、成型されたローラを金型より取り出し、端部を仕上げて所定形状のローラとした。
【0074】
(5)このローラを、200℃、4時間の条件でポストキュアし、外径40.0mmの最終製品を得た。
(実施例4とは、上記(3)の、シリコーンゴムの注型作業を、PFAスリーブの延伸作業後24時間経過時点としたことが相違し、他は同じ。)
【0075】
上記の最終製品のローラを、下記の加速試験により比較評価した。
各々のローラを熱定着機に組込み、芯軸の温度が300℃、ローラ表面が180℃を保つように、内部加熱と表面冷却を行い、ローラ間荷重80kg、ローラ周速360mm/secの加速条件で空回転試験を行い、ローラ外面にしわが発生するまでの時間を計測した。
【0076】
その結果、
実施例1と実施例2の各ローラは、100時間経過した時点でもしわの発生が見られなかった。
実施例3の各ローラは、60時間経過した時点でしわの発生が見られた。
比較例1のローラは、ポストキュア終了時点で横じわの発生が見られた。
なお、基体をポリイミドのようなフレキシブルなシームレス円筒フィルムに代えても同様な傾向と効果が確認された。
【0077】
また、実施例4と実施例5の各ローラは、100時間経過した時点でもしわの発生が見られなかった。
比較例2のローラは、ポストキュア終了時点で横じわの発生が見られた。
比較例3のローラは15時間経過した時点で、横じわの発生が見られた。
比較例4のローラは2時間経過した時点で、横じわの発生が見られた。
なお、基体をポリイミドのようなフレキシブルなシームレス円筒フィルムに代えても同様な傾向と効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係わるスリーブ被覆部材の製造方法の説明図である。
【図2】樹脂スリーブに張力を加えたときの伸びの緩和を示す線図である。
【図3】樹脂スリーブを延伸した後、放置しているときの緩和時間と延伸量との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0079】
12 金型
14 基体
16 樹脂スリーブ
18 弾性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に、基体と、その外側に、予め弾性変形領域を超え塑性変形領域まで軸方向に張力を加えて延伸され、その延伸状態から張力が解除され放置されて、伸びの緩和が生じている状態の樹脂スリーブとをほぼ同軸に配置し、
前記基体及び前記樹脂スリーブの間に、弾性材料前駆体を注入し、
前記弾性材料前駆体を、所定硬度に硬化させるようにすることを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。
【請求項2】
金型内に、基体と、その外側に、予め弾性変形領域を超え塑性変形領域まで軸方向に張力を加えて延伸され、その延伸状態から張力が解除され放置されて、伸びの緩和が生じている状態の樹脂スリーブとをほぼ同軸に配置し、
前記基体及び前記樹脂スリーブの間に、弾性材料前駆体を注入し、
前記弾性材料前駆体を、前記樹脂スリーブの伸びの緩和が実質終了する時間内に、所定硬度に硬化させるようにすることを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスリーブ被覆部材の製造方法において、
前記基体は、鉄、ステンレス、アルミニウム、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミドの内の一種により形成されたものであり、前記樹脂スリーブは押出成型可能なフッ素樹脂により形成されたものであり、前記弾性材料前駆体は付加反応型の液状シリコーンゴムにより形成されたものであることを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のスリーブ被覆部材の製造方法において、
前記樹脂スリーブと前記基体との間に前記弾性材料前駆体を注入する前に、前記基体外面及び前記樹脂スリーブ内面に接着剤を塗布することを特徴とするスリーブ被覆部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−58809(P2006−58809A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243261(P2004−243261)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】