説明

スルフィニルベンズイミダゾール化合物またはその塩の製造方法

【課題】本発明の目的は、化合物(1)またはその塩の工業的な規模での製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】式
【化1】


(式中、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味する。)で表される化合物(1)またはその塩の製造方法であって、
(a)式
【化2】


(式中、X1は脱離基を意味し、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(3T)と、式
【化3】


で表される(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノールまたはその水和物とを反応させ、式
【化4】


(式中、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(2T)を生成させる工程と、
(b)前記式(2T)で表される化合物を、酸化剤と反応させる工程と、
を含む製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃酸分泌抑制剤として有用なベンズイミダゾール化合物またはその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍は、酸、ペプシンなどの攻撃因子と、粘液、血流などの防御因子とのバランスが崩れ、自己消化を引き起こす結果、発生すると考えられている。
【0003】
消化性潰瘍の治療は、内科的に実施するのが原則であり、種々の薬物療法が試みられている。特に最近、胃壁細胞に存在し、胃酸分泌の最終過程を司る酵素であるH+、K+-ATPaseを特異的に阻害し、酸分泌を抑え、結果、自己消化を防止する薬剤、例えば、オメプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール等が開発され、臨床で用いられている。
【0004】
これらの薬剤も、優れた治療効果を有するが、より胃酸分泌抑制作用の持続性に富み、より安全で、適度な物理化学的安定性を有する薬剤がさらに求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願時において、2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(以下、化合物(1)という)またはその塩が、優れた胃酸分泌抑制作用(特に胃酸分泌抑制作用の持続性に富み、胃内pHを長時間高く維持でき)を示すこと、また逆流性食道炎、症候性逆流性食道炎、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の治療または予防剤として有用であることは開示されていない。
したがって、2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールおよびその塩の製造方法ついても開示されていない。
【0006】
本発明は、本出願時に未開示であり、かつ優れた胃酸分泌抑制作用を有する化合物として有用な化合物(1)またはその塩の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、精力的に研究を重ねた結果、化合物(1)またその塩の有用な製造方法を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は
[1] 式
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味する。)で表される化合物(1)またはその塩の製造方法であって、
(a)式
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、X1は脱離基を意味し、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(3T)と、式
【0012】
【化3】

【0013】
で表される(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノールまたはその水和物とを反応させ、式
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(2T)を生成させる工程と、
(b)前記式(2T)で表される化合物を、酸化剤と反応させる工程と、
を含む製造方法;
[2] 式
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味する。)で表される化合物(1)またはその塩の製造方法であって、
(c)式
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子または水酸基の保護基を意味し、またはR10およびR11は一緒になってメチレン基(当該メチレン基は、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、1または2個のメトキシ基を有していてもよいフェニル基およびトリクロロメチル基から選ばれる1または2個の基を有していてもよい。)、カルボニル基、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基または1,1−シクロヘキシレン基を意味し(但し、R10およびR11が一緒になって2,2−プロピレン基である場合を除く)、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(3U)を脱保護反応し(ただし、R10およびR11がともに水素原子である場合には、脱保護反応は不要である)、次いで、アセタール化試薬と反応し、式
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(2T)を生成させる工程と、
(b)前記式(2T)で表される化合物を、酸化剤と反応させる工程と、
を含む製造方法;
[3] 式
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、Zは式−S−または式−SO−を意味し、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味する。)で表される化合物(1Z)またはもしくはその塩の製造方法であって、

【0024】
【化9】

【0025】
(式中、X1は脱離基を意味し、Z、R1およびR3は、上記と同意義である。)で表される化合物(2Z)と、式
【0026】
【化10】

【0027】
で表される(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノールまたはその水和物を反応させる、製造方法;
[4] 式
【0028】
【化11】

【0029】
(式中、Z、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(1Z)またはもしくはその塩の製造方法であって、

【0030】
【化12】

【0031】
(式中、Zは式−S−または式−SO−を意味し、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子または水酸基の保護基を意味し、またはR10およびR11は一緒になってメチレン基(当該メチレン基は、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、1または2個のメトキシ基を有していてもよいフェニル基およびトリクロロメチル基から選ばれる1または2個の基を有していてもよい。)、カルボニル基、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基または1,1−シクロヘキシレン基を意味する(但し、R10およびR11が一緒になって2,2−プロピレン基である場合を除く)で表される化合物(3Z)を脱保護反応し(ただし、R10およびR11がともに水素原子である場合には、脱保護反応は不要である)、次いで、アセタール化試薬と反応させる、製造方法;
を提供する。
【0032】
以下に、本明細書において記載する用語、記号等の意義を説明し、本発明を詳細に説明する。
【0033】
本明細書中において、化合物(1)の塩とは、ベンズイミダゾール骨格における、1または3位のNH基において塩を形成する。
その「塩」は、薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、無機塩基塩または有機塩基塩等が挙げられ、好適には無機塩基塩である。
無機塩基塩の好ましい例としては、例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩等が挙げられる。
【0034】
本明細書中においては、化合物(1)の構造式が便宜上一定の異性体を表すことがあるが、化合物(1)の構造上生ずる総ての光学異性体および異性体混合物を含み、便宜上の式の記載に限定されるものではなく、いずれか一方の異性体でも混合物でもよい。従って、化合物(1)には、光学活性体およびラセミ体が存在することがありうるが、本明細書においては限定されず、いずれもが含まれる。
【0035】
本明細書におけるR1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味するが、好適にはR1およびR3はメチル基である。
本明細書におけるR10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子または水酸基の保護基を意味し、またはR10およびR11は一緒になってメチレン基(当該メチレン基は、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、1または2個のメトキシ基を有していてもよいフェニル基およびトリクロロメチル基から選ばれる1または2個の基を有していてもよい。)、カルボニル基、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基または1,1−シクロヘキシレン基を意味するが(但し、R10およびR11が一緒になって2,2−プロピレン基である場合を除く)、好適にはR10およびR11は、R10およびR11が一緒になった1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基および1,1−シクロヘキシレン基である。
本明細書におけるZは、式−S−または式−SO−を意味するが、好適には式−S−である。
【0036】
本明細書におけるX1は、脱離基を意味し、具体的には例えば、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシのようなスルホニルオキシ基、塩素、臭素、よう素のようなハロゲン基またはアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、プロピオニルオキシのようなアシルオキシ基、ベンゼンスルホニルのようなスルホニル基、ニトロ基などを意味するが、好適には塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはニトロ基であり、より好適には塩素原子である。
【0037】
本明細書におけるアセタール化試薬は、イソプロピリデン ケタール(−CH(CH32−)を合成するための試薬を意味し、具体的には例えば、(1)アセトン、(2)式(CH32C(OR1X2(式中、R1XはC1−C6アルキル基またはトリメチルシリル基を意味する。)で表される化合物、(3)式(CH3)C(OR1X)=CH2(式中、R1XはC1−C6アルキル基またはトリメチルシリル基を意味する。)で表される化合物などであり、好適にはアセトン、2,2−ジエトキシプロパンおよび2−メトキシプロペンである。
【0038】
本明細書における酸化剤は、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過ヨウ素酸ナトリウム、過酢酸、過安息香酸、3−クロロ過安息香酸、尿素過酸化水素付加化合物((NH2)2CO・H2O2)等が挙げられ、好適には、3−クロロ過安息香酸またはクメンヒドロペルオキシドであり、より好適にはクメンヒドロペルオキシドである。
【0039】
本明細書における水酸基の保護基は、水酸基の保護基として用いられている基であるならば特に制限はないが、具体的には例えば、C1−C6アシル基(アシル基など)、テトラヒドロピラニル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ベンジル基(当該ベンジル基は、メトキシ基またはニトロ基などの置換基を有していてもよい)などである。
【0040】
本明細書における脱保護反応とは、R10およびR11が共に脱離し、水素原子に変換するために一般的に用いられている反応条件であれば特に制限されないが、好適には(1)酸存在下、(2)塩基存在下、(3)フッ素試薬存在下(テトラブチルアンモニウムフルオリドなど)または(4)還元試薬存在下であり、R10およびR11に適宜対応した、有機合成反応において一般に用いられている脱離の反応条件(保護基を脱離させるための反応条件)を用いることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る製造方法によれば、本出願時に未開示であり、かつ優れた胃酸分泌抑制作用を有する化合物として有用な化合物(1)またはその塩を工業的な規模での製造に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下の説明では、本発明によるエーテル化反応もしくはアセタール化反応を含めた、化合物(1)またはその塩の製造方法について説明する。化合物(1)またはその塩は、下記P法、Q法により製造することができる。
【0043】
【化13】

【0044】
上記において、R1およびR3は、前述と同意義を示し、X2は脱離基を示す。
X2の脱離基としては、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシのようなスルホニルオキシ基、塩素、臭素、よう素のようなハロゲン基またはアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、プロピオニルオキシのようなアシルオキシ基が挙げられ、好適には、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、塩素またはアセチルオキシ基である。
X1は、脱離基を意味し、具体的には例えば、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシのようなスルホニルオキシ基、塩素、臭素、よう素のようなハロゲン基またはアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、プロピオニルオキシのようなアシルオキシ基、ベンゼンスルホニルのようなスルホニル基、ニトロ基などを意味するが、好適には塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはニトロ基であり、より好適には塩素原子である。
以下、P法の各工程について説明する。
【0045】
(第P1工程)脱離基導入またはハロゲン化
(1)脱離基導入反応
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下、化合物(7T)と脱離基導入剤を反応し、化合物(6T)またはその塩を製造する工程である。
【0046】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、ベンゾトリフルオリドのような芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、ピリジンまたはこれらの混合溶剤等が挙げられ、好適には、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類またはエーテル類と芳香族炭化水素類の混合溶剤であり、最も好適には、ジクロロメタン、テトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランとトルエンの混合溶剤である。
【0047】
使用される脱離基導入剤としては、例えば、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、N−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)のようなスルホニル化剤等が挙げられ、好適には、メタンスルホニルクロリドまたはp−トルエンスルホニルクロリドであり、最も好適にはメタンスルホニルクロリドである。
【0048】
使用される塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンのような3級アルキルアミン類、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好適には、トリエチルアミンまたは水酸化ナトリウムであり、最も好適にはトリエチルアミンである。
【0049】
反応温度は、出発原料、溶剤、脱離基導入剤、塩基により異なるが、通常、−50℃ないし100℃であり、好適には、−20℃ないし40℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、脱離基導入剤、塩基、反応温度により異なるが、通常、15分ないし12時間であり、好適には、30分ないし2時間である。
なお、本工程の化合物は、特に単離することなく、そのまま次の工程に使用することもできる。
【0050】
(2)ハロゲン化反応(塩素化反応を代表として)
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下または非存在下、化合物(7T)に塩素化剤を反応し、化合物(6T)を製造する工程である。
【0051】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、ベンゾトリフルオリドのような芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、等が挙げられ、好適には、ハロゲン化炭化水素類または芳香族炭化水素類であり、最も好適には、ジクロロメタン、クロロホルムまたはトルエンである。使用される塩素化剤としては、例えば、メタンスルホニルクロリド、シュウ酸クロリド、塩化チオニル、オキシ塩化りん、三塩化りん、五塩化りん、塩酸、等が挙げられ、好適には、塩化チオニル、塩酸である。使用される塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンのような3級アルキルアミン類、ピリジン等が挙げられ、好適には、トリエチルアミンである。
【0052】
反応温度は、出発原料、溶剤、塩素化剤により異なるが、通常、−20ないし30℃であり、好適には、0ないし10℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、塩素化剤、反応温度により異なるが、通常、10分ないし6時間であり、好適には、10分ないし2時間である。
なお、本工程の化合物は、特に単離することなく、そのまま次の工程に使用することもできる。
【0053】
臭素化する場合には、臭素/赤りん、三臭化りん、五臭化りん等の試薬を使用し、また、よう素化する場合には、よう素/赤りん等の試薬を使用することができる。またP1工程で合成した化合物中の脱離基に対して、臭化ナトリウムあるいはよう化ナトリウム等の試 薬を作用させることによりそれぞれ臭化物、よう化物を得ることができる。
【0054】
(第P2工程)チオエーテル化
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下または非存在下、化合物(5T)と、化合物(6T)またはその塩(特に塩酸塩)とを反応し、化合物(3T)を製造する工程である。
【0055】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、イソブタノ−ル、t−ブタノ−ル、イソアミルアルコ−ル、ジエチレングリコール、グリセリン、オクタノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブのようなアルコール類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合溶剤等が挙げられ、好適には、ジクロロメタン、アルコール類、エーテル類またはエーテル類とトルエンの混合溶剤であり、最も好適には、メタノール、テトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランとトルエンの混合溶剤である。
【0056】
使用される塩基としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基類、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジン、4−ピロリジノピリジン、ピコリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルピリジン、キノリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)のような有機塩基類が挙げられ、好適には、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基類またはトリエチルアミンであり、最も好適には、水酸化ナトリウムまたはトリエチルアミンである。
【0057】
反応温度は、出発原料、溶剤、塩基によって異なるが、通常、0ないし100℃であり、好適には、10ないし50℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、塩基、反応温度によって異なるが、通常、30分ないし3日である。
【0058】
(第P5工程)エーテル基導入反応
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下、化合物(3T)と、下記式で表されるアルコール
【0059】
【化14】

【0060】
(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノールまたはその水和物など)とを反応し、化合物(2T)を製造する工程である。
【0061】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、石油エーテルのような脂肪族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルピロリドンのようなアミド類、ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合溶剤等が挙げられ、好適には、ジメチルスルホキシド、エーテル類またはアミド類であり、最も好適には、ジメチルスルホキシドである。
【0062】
使用される塩基としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩類、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドのような金属アルコキシド類、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物類、アルカリ金属により調製されるアルカリ金属アルコキシド類、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等が挙げられ、好適には、金属アルコキシドまたはアルカリ金属水素化物であり、最も好適には、カリウム−t−ブトキシドまたは水素化ナトリウムである。
【0063】
反応温度は、出発原料、溶剤、塩基によって異なるが、通常、0ないし160℃であり、好適には、20ないし140℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、塩基、反応温度によって異なるが、通常、15分ないし96時間であり、好適には、30分ないし72時間である。
【0064】
(第P6工程)酸化反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、化合物(2T)に酸化剤を反応し、化合物(1)を製造する工程である。
【0065】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、イソアミルアルコール、ジエチレングリコール、グリセリン、オクタノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブのようなアルコール類、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、アセトニトリルのようなニトリル類等が挙げられ、好適には、芳香族炭化水素類、アルコール類、ハロゲン化炭化水素またはこれらの溶剤の混合溶剤であり、最も好適には、トルエン、トルエンおよびメタノールの混合溶剤またはジクロロメタンである。
【0066】
使用される酸化剤としては、例えば、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過ヨウ素酸ナトリウム、過酢酸、過安息香酸、3−クロロ過安息香酸、尿素過酸化水素付加化合物((NH2)2CO・H2O2)等が挙げられ、好適には、3−クロロ過安息香酸またはクメンヒドロペルオキシドである。
なお、不斉酸化には、以下に挙げられる文献等に記載された方法で実施し得る: WO96/02535公報、WO2001/83473公報、WO2004/087702公報、WO2004/052881公報、WO2004/052882公報、Adv. Synth. Catal. 2005, 347, 19-31.、Chem. Rev. 2003, 103, 3651-3705.、Tetrahedron Lett. 2004, 45, 9249-9252.、Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 4225-4228.またはTetrahedron Asymmetry 2003, 14, 407-410。
【0067】
より具体的には、化合物(2T)と酸化剤とを、不斉誘導剤または不斉誘導触媒の存在下、反応させることにより実施する。
酸化剤としては、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ウレアヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等の過酸化物を使用することができ、特に、不斉誘導剤または不斉誘導触媒が、チタニウム、ジルコニウムまたはハフニウムを含む場合には、クメンヒドロキシペルオキシドを使用し、バナジウムを含む場合には、過酸化水素水を使用する。
酸化剤の使用量は、化合物(2T)に対し、過剰であればよいが、好適には、1.01ないし10モル当量である。特に、不斉誘導剤または不斉誘導触媒が、チタニウムを含む場合には1.05当量、ジルコニウムやハフニウムを含む場合には1.2当量、バナジウムを含む場合には1.1当量を、通常、使用する。
【0068】
上記の不斉誘導剤または不斉誘導触媒としては、
(1)光学活性なジオールとチタニウム(IV)アルコキシドおよび水またはアルコール類の錯体等の光学活性チタニウム複合体、
(2)光学活性なジオールとジルコニウム(IV)アルコキシドの錯体(水はあっても無くてもよい)等の光学活性ジルコニウム複合体、
(3)光学活性なジオールとハフニウム(IV)アルコキシドの錯体等の光学活性ハフニウム複合体、
(4)光学活性なシッフ塩基とバナジルアセチルアセトンの錯体等の光学活性バナジウム複合体、
(5)光学活性なシッフ塩基と鉄(III)アセチルアセチルアセトナートの錯体等の光学活性鉄複合体、
(6)光学活性なシッフ塩基とマンガン(III)の光学活性マンガン複合体(例えば、サレン-マンガン錯体等)、
(7)光学活性キンコナアルカロイドとタングステン(III)による光学活性タングステン複合体等を挙げることができる。
【0069】
上記の光学活性なジオールとしては、
(1)(+)または(−)−酒石酸ジメチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジイソプロピル、酒石酸ジブチル等の酒石酸エステル類、酒石酸テトラメチルジアミド等の酒石酸アミド類のようなアルキルジオール類、
(2)(R)または(S)−ビナフトールのような芳香族ジオール類等を挙げることができる。
上記の光学活性なシッフ塩基としては、(S)−(−)−2−(3,5−ジ−tert−ブチルサリチリデンアミノ)−3,3−ジメチル−1−ブタノール、(1R,2S)−1−[(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジリデン)アミノ]インダン−2−オール等の置換サリチルアルデヒド由来のシッフ塩基、サレン型シッフ塩基等が挙げることができる。
【0070】
不斉酸化を行う場合、必要に応じ、塩基を添加することができる。使用する塩基としては、反応を阻害するものでなければ、無機塩基塩、有機塩基等、特に限定はないが、好適には、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンのような三級アミン類であり、最も好適には、ジイロプロピルエチルアミンである。塩基は、化合物(2T)に対して、通常、0.1ないし1当量である。
なお、バナジウムを含む不斉誘導剤または不斉誘導触媒を使用する場合には、通常、塩基は使用しない。
【0071】
不斉酸化を行う場合に使用する溶媒としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類を挙げることができ、特に、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムを含む不斉誘導剤または不斉誘導触媒を使用する場合には、トルエンまたはtert−ブチルメチルエーテルが好適であり、バナジウムを含む不斉誘導剤または不斉誘導触媒を使用する場合には、アセトニトリルまたはジクロロメタンが好適である。また、チタニウムを含む不斉誘導触媒を使用する場合には水の添加が有効であり、溶媒、反応剤(酸化剤は除く)、基質に含まれる水分含量も含めての水添加が化合物(2T)に対して好適には0.1ないし0.33当量であり、最も好適には0.13ないし0.25当量である。また水分量をコントロールにモレキュラーシーブス3Aを使用することもできる。
【0072】
チタニウム(IV)アルコキシドおよびアルコール類の錯体を合成する場合、用いるアルコール類としてはイソプロパノールが有効であり、イソプロパノールはチタニウムに対して1.2当量を、通常使用する。
【0073】
反応温度は、出発原料、溶剤、酸化剤によって異なるが、通常、−100ないし100℃であり、好適には、−70ないし70℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、酸化剤、反応温度によって異なるが、通常、15分ないし72時間であり、好適には、30分ないし24時間である。
【0074】
また、上記で得られた化合物は、常法により、塩にすることができる。例えば、溶剤の非存在下または存在下、化合物(1)に塩基を反応する。溶剤としては、アセトニトリル、メタノールまたはエタノールのようなアルコール類、水またはこれらの溶剤の混合溶剤、好適にはエタノールおよび水の混合溶剤を使用し、塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類、水酸化マグネシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ペントキシド、マグネシウムメトキシドのようなアルコキシド類、好適には、水酸化ナトリウムを水溶液として使用する。反応温度は、通常、−50ないし50℃であり、好適には、10ないし40℃である。反応時間は、通常、1分ないし2時間であり、好適には、1分ないし1時間である。
また、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩は溶剤の非存在下あるいは存在下、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛のような金属塩化物あるいは金属硫酸塩化合物との塩交換反応により対応するバリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩のような金属塩にすることができる。
また、化合物(1)は化合物(2T)の酸化反応後、単離操作を経ずに塩化反応に供し金属塩として得ることができる。
【0075】
(第P3工程)酸化反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、化合物(3T)に酸化剤を反応し、化合物(4T)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第P6工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0076】
(第P4工程)エーテル基導入反応
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下、化合物(4T)と、アルコール((2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノールまたはその水和物など)とを反応し、化合物(1)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第P5工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0077】
上記P法における中間体である、化合物(5T)および化合物(7T)は、市販のものを使用するか、または、市販のものから、当業者が通常行う方法により容易に製造することができる。また、特に化合物(7T)は、以下に述べるV法によって製造することもできる。
【0078】
【化15】

【0079】
【化16】

【0080】
上記において、R1、R3、R10およびR11は、前述と同意義を示し、X2は脱離基を示す。
X2の脱離基としては、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシのようなスルホニルオキシ基、塩素、臭素、よう素のようなハロゲン基またはアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、プロピオニルオキシのようなアシルオキシ基が挙げられ、好適には、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、塩素またはアセチルオキシ基である。
【0081】
以下、Q法の各工程について説明する。
【0082】
(第Q1工程)脱離基導入またはハロゲン化反応
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下、化合物(7U)と脱離基導入剤(例えば塩素化剤)を反応し、化合物(6U)またはその塩を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第P1工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0083】
(第Q2工程)チオエーテル化
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下または非存在下、化合物(5T)と、化合物(6U)またはその塩(特に塩酸塩)とを反応し、化合物(3U)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第P2工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0084】
(第Q3工程)酸化反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、化合物(3U)に酸化剤を反応し、化合物(4U)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第P6工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0085】
(第Q5工程)アセタール架け替え反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、化合物(3U)中のR10、R11を脱離後、アセタール化反応により化合物(2T)を製造する工程、または化合物(3U)中のR10、R11を脱離と同時に、アセタール化反応により化合物(2T)を製造する工程である。
化合物(3U)中のR10、R11を脱離させ、化合物(3U(2))を生成(保護基脱保護工程)後、次いで化合物(3U(2))から化合物(2T)を製造(アセタール化工程)しても、化合物(3U)中のR10、R11を脱離させるとほぼ同時に、アセタール化反応を行い、化合物(2T)を製造してもよい。
【0086】
(第Q5工程)(1)保護基脱保護工程
化合物(3U)中のR10、R11を脱離させ、化合物(3U(2))を得る工程である。
当該保護基脱保護工程は、R10、R11に適した、一般的な脱保護の反応条件にて実施することができる。
例えば、R10、R11が一緒になってメチレン基(当該メチレン基は、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、1または2個のメトキシ基を有していてもよいフェニル基およびトリクロロメチル基から選ばれる1または2個の基を有していてもよい。)、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基または1,1−シクロヘキシレン基の場合、テトラヒドロピラニル基などの場合には、酸存在下で反応することにより、化合物(3U)から化合物(3U(2))を得ることができる。
【0087】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、メタノール、テトラヒドロフランまたはこれらの混合溶剤等が挙げられ、好適には、メタノールである。
使用される酸としては、例えば、塩酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられ、好適には、塩酸である。
反応温度は、出発原料、溶剤により異なるが、通常、0℃ないし100℃であり、好適には、10℃ないし50℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、反応温度により異なるが、通常、30分ないし3日間である。
【0088】
R10またはR11がメトキシ基またはニトロ基などの置換基を有してもよいベンジル基等の場合には、還元剤と反応することにより、R10、R11が脱保護された、化合物(3U(2))を得ることができる。
R10またはR11がC1−C6アシル基(アシル基など)等の場合には、塩基存在下に反応することにより、R10、R11が脱保護された、化合物(3U(2))を得ることができる。
R10またはR11がトリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等の場合には、フッ素試薬存在下(テトラブチルアンモニウムフルオリドなど)に反応することにより、R10、R11が脱保護された、化合物(3U(2))を得ることができる。
【0089】
このように、化合物(3U)中のR10およびR11を脱離(脱保護)するために、R10およびR11に適宜対応した、有機合成反応において一般に用いられている脱離の反応条件(保護基を脱離させるための反応条件)を用いることができる。(Protective Groups In Organic Synthesis Third Edition. John Wiley & Sons, Inc. 1999年)
なお、本工程の化合物は、特に単離することなく、そのまま次の工程に使用することもできる。
【0090】
(第Q5工程)(2)アセタール化工程
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、酸存在下または非存在下、化合物(3U(2))にアセタール化試薬を反応し、化合物(2T)を製造する工程である。
当該アセタール化工程は、一般的なアセタール化反応条件(特にジオール化合物のアセタール保護反応の条件)にて実施することができる。
【0091】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類またはこれらの混合溶剤等が挙げられ、好適には、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミドであり、最も好適には、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0092】
使用される酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、塩化鉄(III)等が挙げられ、好適には、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、塩化鉄(III)であり、最も好適には塩化鉄(III)である。
【0093】
使用されるアセタール化試薬としては、イソプロピリデンケタール(−CH(CH32−)を合成するための試薬を意味し、具体的には例えば、(1)アセトン、(2)式(CH32C(OR1X2(式中、R1XはC1−C6アルキル基またはトリメチルシリル基を意味する。)で表される化合物、(3)式(CH3)C(OR1X)=CH2(式中、R1XはC1−6アルキル基またはトリメチルシリル基を意味する。)で表される化合物などであり、好適にはアセトン、2,2−ジエトキシプロパンおよび2−メトキシプロペンである。
【0094】
反応温度は、出発原料、溶剤により異なるが、通常、0℃ないし150℃であり、好適には、10℃ないし120℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、反応温度により異なるが、通常、30分ないし3日間である。
なお、本工程の化合物は、特に単離することなく、そのまま次の工程に使用することもできる。
【0095】
上記、保護基脱保護工程の条件、アセタール化工程の条件を参考にし、化合物(3U)中のR10、R11を脱離させるとほぼ同時に、アセタール化反応を行ない、化合物(2T)を製造することもできる。
【0096】
(第Q4工程)アセタール架け替え反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、化合物(4U)中のR10、R11を脱離後、アセタール化反応により化合物(1T)を製造する工程、または化合物(4U)中のR10、R11を脱離と同時に、アセタール化反応により化合物(1T)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第Q5工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0097】
(第Q6工程)酸化反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、化合物(2T)に酸化剤を反応し、化合物(1T)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第P6工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0098】
上記Q法における中間体である、化合物(5T)は、市販のものを使用するか、または、市販のものから、当業者が通常行う方法により容易に製造することができる。また、化合物(7U)は、以下に述べるV法によって製造することもできる。
【0099】
【化17】

【0100】
上記において、R1、R3、R10およびR11は、前述と同意義を示し、X1は、脱離基を意味し、具体的には例えば、メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシのようなスルホニルオキシ基、塩素、臭素、よう素のようなハロゲン基またはアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、プロピオニルオキシのようなアシルオキシ基、ベンゼンスルホニルのようなスルホニル基、ニトロ基などを意味するが、好適には塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはニトロ基であり、より好適には塩素原子である。
以下、V法の各工程について説明する。
【0101】
(第V1工程)ハロゲン化反応(塩素化反応を代表として)
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、化合物(1V)に塩素化剤を反応し、化合物(2V)を製造する工程である。
【0102】
本工程では通常溶媒を使用せず塩素化剤中で反応をさせることが望ましいが、溶媒を使用する場合、使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類が挙げられる。
【0103】
使用される塩素化剤としては、例えば、塩化アセチル、シュウ酸クロリド、塩化チオニル、オキシ塩化りん、三塩化りん、五塩化りん等が挙げられ、好適には、塩化アセチルである。
【0104】
反応温度は、出発原料、溶剤、塩素化剤により異なるが、通常、−50ないし30℃であり、好適には、−30ないし10℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、塩素化剤、反応温度により異なるが、通常、30分ないし8時間であり、好適には、1ないし5時間である。
【0105】
臭素化する場合には、臭化アセチル、臭化水素、臭素/赤りん、三臭化りん、五臭化りん等の試薬を使用し、また、よう素化する場合には、よう素/赤りん等の試薬を使用するかまたは臭素化後によう化ナトリウムなどの試薬を作用することができる。
【0106】
(第V2工程)エーテル基導入反応
本工程は、溶剤の非存在下または不活性溶剤中、塩基の存在下、化合物(2V)と、式(3V)で表されるアルコールとを反応し、化合物(4V)を製造する工程である。
【0107】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、石油エーテルのような脂肪族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルピロリドンのようなアミド類、ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合溶剤等が挙げられ、好適には、ジメチルスルホキシド、エーテル類またはアミド類であり、最も好適には、ジメチルスルホキシドである。
【0108】
使用される塩基としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩類、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドのような金属アルコキシド類、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物類、アルカリ金属により調製されるアルカリ金属アルコキシド類、n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等が挙げられ、好適には、アルカリ金属水素化物であり、最も好適には、水素化ナトリウムである。
【0109】
反応温度は、出発原料、溶剤、塩基によって異なるが、通常、0ないし100℃であり、好適には10ないし100℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、塩基、反応温度によって異なるが、通常、15分ないし48時間であり、好適には、30分ないし12時間である。
【0110】
(第V3工程)酢酸エステルへの転位
本工程は、溶剤の非存在下、塩基の存在下または非存在下、化合物(2V)に無水酢酸を反応し、化合物(7T)の酢酸エステル体を製造する。
【0111】
使用される塩基としては、例えば、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンのような3級アルキルアミン類、ピリジン等が挙げられ、好適には、トリエチルアミンである。
【0112】
反応温度は、出発原料、溶剤により異なるが、通常、20ないし150℃であり、好適には、塩基の存在下では20ないし60℃であり、塩基の非存在下では50ないし100℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、反応温度により異なるが、通常、10分ないし6時間であり、好適には、30分ないし5時間である。
反応後、通常、無水酢酸を留去して得られる残渣をそのまま次の工程に使用することもできる。また酢酸エステル体から上記P法P2工程を行い、化合物(3T)を得ることも可能である。
【0113】
(第V4工程)加水分解反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、上記V4工程で得られる化合物に塩基を反応し、化合物(7T)を製造する工程である。
【0114】
使用される溶剤としては、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限はないが、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、イソアミルアルコール、ジエチレングリコール、グリセリン、オクタノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブのようなアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン、石油エーテルのような脂肪族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのようなアミド類またはこれらの混合溶剤等が挙げられ、好適には、アルコール類またはアルコール類と水の混合溶剤であり、最も好適には、メタノールおよび水の混合溶剤である。
【0115】
使用される塩基としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドのような金属アルコキシド類;またはアンモニア水、濃アンモニア−メタノールのようなアンモニア類等が挙げられ、好適には、アルカリ金属水酸化物類であり、最も好適には、水酸化ナトリウムである。
【0116】
反応温度は、出発原料、溶剤、塩基により異なるが、通常、0ないし60℃であり、好適には、10ないし40℃である。
反応時間は、出発原料、溶剤、塩基、反応温度により異なるが、通常、10分ないし6時間である。
【0117】
(第V5工程)酢酸エステルへの転位
本工程は、溶剤の非存在下、塩基の存在下または非存在下、化合物(4V)に無水酢酸を反応し、化合物(7U)の酢酸エステル体を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第V3工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0118】
(第V6工程)加水分解反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、上記V5工程で得られる化合物に塩基を反応し、化合物(7T)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第V4工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0119】
(第V7工程)アセタール架け替え反応
本工程は、溶剤の非存在下または存在下、化合物(7U)中のR10、R11を脱離後、アセタール化反応により化合物(6V)を製造する工程、または化合物(7U)中のR10、R11を脱離と同時に、アセタール化反応により化合物(6V)を製造する工程である。本工程の反応条件としては、上記(第Q5工程)と同様な条件、操作方法が適用できる。
【0120】
上記各方法、各工程の反応終了後、各工程の目的化合物は常法に従い、反応混合物から採取することができる。
【0121】
化合物(1)またはその塩を医薬として使用する場合、通常、化合物(1)またはその塩と適当な添加剤とを混和し、製剤化したものを使用する。ただし、化合物(1)またはその塩を原体のまま医薬として使用することを否定するものではない。
【0122】
上記添加剤としては、一般に医薬に使用される、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、吸収促進剤等を挙げることができ、所望により、これらを適宜組み合わせて使用することもできる。
【実施例】
【0123】
以下では、実施例等を示し、本発明をより具体的に説明するが、これらの記載は例示的なものであって、本発明は、如何なる場合も、これらに限定されるものではない。実施例中の化学構造式において、*が付与されている原子は不斉原子を示す。
【0124】
シクロブタノン(Avocado)
2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(Aldrich)
p−トルエンスルホン酸一水和物(東京化成工業)
水酸化カリウム(和光純薬工業)
無水酢酸(関東化学)
5N水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)
メタンスルホニルクロリド(東京化成工業)
トリエチルアミン(関東化学)
2−メルカプトベンズイミダゾール(東京化成工業)
水酸化ナトリウム(和光純薬工業)
2N塩酸(和光純薬工業)
2,2−ジエトキシプロパン(東京化成工業)
塩化鉄(III)(和光純薬工業)
アセトン(和光純薬工業)
3−クロロ過安息香酸(東京化成工業)
1N水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業)
【0125】
[製造例]
(1)(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノール
【0126】
【化18】

【0127】
2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(4.09g,38.5mmol)、アセトン(130ml,1768mmol)、および70%過塩素酸(1.37g,9.55mmol)の混合物を室温にて21時間攪拌した。濃アンモニア水にて反応混合物をpH=9に調整した後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:100g, 溶出溶媒:ヘプタン、ヘプタン/酢酸エチル=1/3)により精製し、標記化合物(4.83g, 収率:85.8%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.29(3H,s), 1.30(3H,s), 1.64−1.74(1H,m), 3.35−3.41(2H,m), 3.61(2H,dd,J=7,12Hz), 3.82(2H,dd,J=4,12Hz), 4.54(1H,t,J=5Hz).
【0128】
(2)2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド
【0129】
【化19】

【0130】
酢酸(1.43kg,23.83mol)に2,3,5−トリメチルピリジン(1.43kg,11.80mol)を15分間かけて加えた。15分後、35%過酸化水素水(1.38kg,14.2mol)を30分間かけて滴下した後に、90から95℃で終夜攪拌した。反応液に亜硫酸ナトリウム(220g)を投入した。反応混合液を、炭酸ナトリウム(2.5kg)と水(12L)の混合物に投入し、クロロホルムで抽出した(3.0Lx4)。得られた有機層を結晶が析出するまで濃縮し、析出物にn−へキサン(2.5L)を加え、氷冷下で一晩攪拌した。得られた結晶を濾過し、目的物を1.53kg得た。
【0131】
(3)4―ニトロ−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド
【0132】
【化20】

【0133】
98%硫酸(4.93kg,49.3mol)に2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド(1.38kg,10.1mol)を投入した。97%硝酸(1.44kg)を50分間かけて滴下した後に、85℃で4時間加熱した。反応液を、炭酸水素アンモニウム(10.6kg)と水(9.0L)の混合物に投入し、酢酸エチルで抽出した(3.0Lx3)。得られた有機層を濃縮し、終夜真空乾燥し、目的物を1.50kg得た。
【0134】
(4)4−クロロ−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド
【0135】
【化21】

【0136】
4―ニトロ−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド(850g,4.67mol)に水(400g)と36%濃塩酸(1.69kg)を加え、70℃に加熱した。N,N-ジメチルホルムアミド(115mL)を加え、100℃に加熱した。反応終了後に20℃まで冷却し、炭酸カリウム(1.40kg)と水(7L)の混合物中に投入し、クロロホルムで抽出し(1.0Lx3)、硫酸ナトリウムで乾燥後に濃縮した。得られた粗体をジイソプロピルエーテル(500mL)とn-へキサン(1.0L)の混合液中で2時間攪拌した後に、吸引濾過を行った。得られた湿体を終夜真空乾燥し、目的物を666.4g得た。
【0137】
(5)4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イルメトキシ)−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド
【0138】
【化22】

【0139】
4−クロロ−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド(840g)、(2,2―ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノール(688g)およびトルエン(2.52L)の混合物を、水分を除去しながら加熱還流した。共沸脱水を続けながら、水酸化カリウム(0.58kg)を3時間45分間かけて投入し、さらに2.5時間共沸脱水を続けた。反応系を30℃以下に冷却し、酢酸エチル(2.5L)と17%食塩水(3.5L)を加えて一晩静置した。酢酸エチル層を分取し、水層を酢酸エチルで抽出した(1.0Lx3)。合わせた酢酸エチル層をセライトで濾過後、減圧濃縮し、目的物を1.20kg得た。
【0140】
(6)[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノール 1水和物
【0141】
【化23】

【0142】
50℃〜60℃に加熱した4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イルメトキシ)−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド(1.20kg)と酢酸ナトリウム(0.18kg)の混合物に、無水酢酸(1.10kg)を1.5時間かけて滴下した。0.5時間経過後に、80℃にて4.5時間加熱し、内温30℃以下に冷却し放置した後に、減圧濃縮を行った。得られた残渣をメタノール(1.0L)に溶解し、48%水酸化ナトリウム水溶液(0.71kg)と冷水(2.85L)の混合物に1時間かけて加えた。室温にて5時間45分間攪拌した後に、減圧濃縮した。濃縮残渣に水(3.0L)を加え、トルエンで抽出し(2.3Lx4)、合わせたトルエン層を水(1.2L)で洗浄した。得られた有機層をセライト濾過した後に濃縮した。得られた残渣に、室温でジイソプロピルエーテル(1.15L)を加え、さらに温水(45℃,74mL)を加えた。結晶析出を確認後25℃で1時間攪拌し、ヘプタン(3.6L)を投入し、一晩攪拌を続けた。さらに氷冷下で5時間攪拌した後に濾過を行い、黄色結晶を得た。得られた黄色結晶にジイソプロピルエーテル(3.5L)を加え、50℃にて溶解した。不溶物を濾過で除去した後に、徐冷を行い、5℃にて終夜熟成した。得られた結晶を濾過し、ヘプタン(0.5L)にて洗浄し、風乾を行い、目的物を0.69kg得た。
【0143】
(7)2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール
【0144】
【化24】

【0145】
[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノール 1水和物(690g)にトルエンを加えて共沸脱水を行った(2.1Lx5,1.75Lx1)。得られた濃縮物にトルエン(393mL)を加え、[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノールのトルエン溶液を921g得た。
窒素雰囲気下、[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノールのトルエン溶液(845.7g, 含有率61.7%, 含量521.8g,1.855mol)、テトラヒドロフラン(2609mL)、トルエン(669mL)、トリエチルアミン(375.3g,3.709mol)を順次投入し、ドライアイス/エタノールで冷却下撹拌した。冷却開始後30分後からメタンスルホニルクロリド(254.9g,2.226mol)を42分間で滴下した。滴下終了後、氷水浴で冷却下撹拌した。約1.5時間後に2−メルカプトベンズイミダゾール(334.28g,2.226mol)のテトラヒドロフラン(3653mL)溶液を2分間で投入し、室温で約18時間撹拌を続けた。
反応液にトルエン(3653mL)を投入した後に、20%w/w水酸化ナトリウム水溶液(1852.4g)を投入し、さらにH2O(2322mL)を加え、抽出と分液を行った。有機層を20%w/w塩化アンモニウム水溶液(4174g)で2回洗浄、さらにH2O(4147mL)で洗浄した。
得られた有機層を減圧濃縮(40℃)し、茶褐色油状物を得た(2.40kg,トルエン1446mL,テトラヒドロフラン168mL含有, 1H−NMRスペクトルから算出)。
得られた茶褐色油状物を晶析容器へ移し、トルエン(119mL)で洗い込み、室温で撹拌した。10分後、tert−ブチルメチルエーテル(134mL)を投入し、室温撹拌を継続した。20分後、さらにtert−ブチルメチルエーテル(127mL)を投入し、室温撹拌を継続した。30分後、さらにtert−ブチルメチルエーテル(266mL)を20分間で滴下し、室温撹拌を継続した。1分後、さらにtert−ブチルメチルエーテル(522mL)を滴下していたところ、8分後に結晶析出を確認、計1時間20分かけて滴下を終了した。40分間室温撹拌した後、ヘプタン(2348mL)を1時間17分かけて滴下し、室温で終夜撹拌した。
ヘプタンを滴下して約15.5時間後、析出した結晶を吸引濾取し、トルエン/tert−ブチルメチルエーテル/ヘプタン(587mL/391mL/587mL)でリンスした後、吸引乾燥した。得られた湿体結晶を通風乾燥(50℃)し、目的物を得た。
収量:619.0g、含有率:96.5%、含有量:597.3g、収率:77.8%(含有量ベース)、HPLC純度:98.0%
【0146】
<HPLC分析条件(反応チェック、HPLC純度測定、および定量)>
Column:YMC-Pack Pro C18 AS-302(5μm,4.6mmx150mm I.D.)
Eluent:A solution(MeCN/20mMAcONH4aq.=100/900(v/v)), B solution (MeCN/20mMAcONH4aq.=800/200(v/v))
Flow rate:1.0mL/min
Detection:UV 254nm
Oven temp.:25℃
Sample temp.:25℃
Gradient condition(time/B solution conc.):0.01min/0%→25min/100%→30min/100%→30.01min/0%→40min/stop
RT=18.4 min
【0147】
(8)粗製2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体のナトリウム塩
【0148】
【化25】

【0149】
窒素雰囲気下、2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール(580.3g, 含有率96.5%, 含量560.0g,1.354 mol)、トルエン(3864mL)、H2O(2.81g,0.156 mol)を順次投入し、60℃で加熱下撹拌した。6分後、この懸濁液へL−(+)−酒石酸ジエチル(122.9g,0.596mol)を投入し、トルエン(560mL)で洗い込んだ。30分後、溶解を確認した。8分後、チタン(IV)テトライソプロポキシド(77.0g,0.271mol)を投入し、トルエン(56mL)で洗い込み、同温で約1時間加熱撹拌した。8℃冷却に変更し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(56.01g,0.742 mol)を投入、トルエン(280mL)で洗い込んだ。10分後、クメンヒドロペルオキシド(259.2g,1.422mol)のトルエン(840mL)溶液を47分間で滴下し、8℃で約18.5時間後攪拌した。冷却した30%w/wチオ硫酸ナトリウム水溶液(2240g)を投入し、12分間攪拌し、水層を廃棄した。有機層に4%w/w水酸化ナトリウム水溶液(2240g)を投入し、攪拌、静置後、水層を分取し、2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体の水酸化ナトリウム水抽出液を茶黄色懸濁液として得た。トルエン(7840mL)に2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体−水酸化ナトリウム水抽出液(2.98kg)を投入、撹拌した。この混合物へ、攪拌下に20%w/w酢酸水溶液(400mL)、8%NaOH水溶液(50mL)、20%w/w酢酸水溶液(8mL)を順次投入しpH8.64に調整し、静置、分液、水層を廃棄した。有機層を5%w/w食塩水溶液(2240g)で洗浄、分液し、2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体のトルエン抽出液(7.31kg, 2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体 含有量567.7g,1.322 mol)を茶黄色溶液として得た。
得られたトルエン抽出液に、室温で撹拌しながら28.3%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液(245.6g,1.286mol)を1分間で投入した。次いで、この溶液に、tert−ブチルメチルエーテル(1120mL)を3分間で滴下、室温で撹拌、6分後に結晶析出を確認、そのまま約30分間撹拌した。さらに、tert−ブチルメチルエーテル(7840mL)を2時間40分間かけて滴下し、室温で終夜撹拌を継続した。
Tert−ブチルメチルエーテルを滴下して約13時間後に、析出した結晶を吸引濾取、トルエン/tert−ブチルメチルエーテル(1047mL/1193mL)でリンスした後、吸引乾燥を15分間行った。得られた湿体結晶を減圧乾燥(40℃)し、目的物を得た。
収量:546.8g、含有率:101.7%、含有量:546.8g(含有率100%として)、収率:90.9%(収量ベース)、HPLC純度:98.2%、鏡像体過剰率:100% ee
【0150】
<HPLC分析条件(反応チェック、HPLC純度測定、および定量)>
Column:YMC-Pack Pro C18 AS-302(5μm,4.6mmx150mm I.D.)
Eluent:A solution(MeCN/20mM AcONH4aq.=100/900(v/v)), B solution(MeCN/20mMAcONH4aq.=800/200(v/v))
Flow rate:1.0 mL/min
Detection:UV 254nm
Oven temp.:25℃
Sample temp.:25℃
Gradient condition(time/B solution conc.):0.01min/0%→25min/100%→30min/100%→30.01min/0%→40min/stop
RT=14.1min
【0151】
<HPLC分析条件(鏡像体過剰率)>
Column:DAICEL CHIRALPAK IA(4.6mmx250mm I.D.)
Eluent:EtOH/MTBE=150/850(v/v)
Flow rate:1.0 mL/min
Detection:UV 284nm
Oven temp.:25℃
Sample temp.:25℃
【0152】
(9)精製2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体のナトリウム塩
【0153】
【化26】

【0154】
粗製2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体のナトリウム塩(536.8g,1.189mol)にエタノール(1074mL)を加え、室温で溶解させ、さらにtert−ブチルメチルエーテル(1074mL)を投入した。得られた溶液を、Hyflo Super-Cel bed[107.4g,エタノール/tert−ブチルメチルエーテル(1074mL/1074mL)、tert−ブチルメチルエーテル(537mL)で順次洗浄したもの]で吸引濾過し、エタノール/tert−ブチルメチルエーテル(215mL/215mL)でリンスした。
得られた濾液を晶析容器へ移し、エタノール/tert−ブチルメチルエーテル(54mL/54mL)で洗い込んだ後、室温で撹拌を開始した。tert−ブチルメチルエーテル(1610mL)を6分間で滴下し、室温撹拌を継続した。11分後、tert−ブチルメチルエーテル(268mL)を2分間で滴下し、撹拌継続、1分後に結晶析出を確認した。そのまま31分間室温撹拌した後、tert−ブチルメチルエーテル(268mL)を9分間で滴下した。8分間室温撹拌後、さらにtert−ブチルメチルエーテル(8589mL)を1時間10分かけて滴下し、室温で撹拌を続けた。
Tert−ブチルメチルエーテルを滴下終了してから約22時間後に、窒素を吹きつけながら、析出した結晶を吸引濾取、エタノール/tert−ブチルメチルエーテル(107mL/966mL)、tert−ブチルメチルエーテル(1074mL)で順次洗浄し、8分間吸引乾燥した。得られた湿体結晶(584.54g)のうち、531.10gを、減圧乾燥(50℃)し、目的物を得た。
収量:419.6g、HPLC純度:99.4%
【0155】
<HPLC分析条件(HPLC純度測定、および定量)>
Column:YMC-Pack Pro C18 AS-302(5μm,4.6mmx150mm I.D.)
Eluent:A solution(MeCN/20mM AcONH4aq.=100/900(v/v)), B solution(MeCN/20mM AcONH4aq.=800/200(v/v))
Flow rate:1.0 mL/min
Detection:UV 254nm
Oven temp.:25℃
Sample temp.:25℃
Gradient condition(time/B solution conc.):0.01min/0%→25min/100%→30min/100%→30.01min/0%→40min/stop
RT=14.1min
【0156】
[実施例]
【0157】
(実施例1)2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール ナトリウム塩
【0158】
【化27】

【0159】
(1a)5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメタノール
【0160】
【化28】

【0161】
ディーン−スタークおよび冷却管を装着したナスフラスコ中、シクロブタノン(3.3g,47.1mmol)、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール(5g,47.1mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(450mg,2.37mmol)、ベンゼン(50ml)を混合し、還流下6時間撹拌した後、一晩室温で放置した。反応混合物にトリエチルアミン(2ml)を加えた後、反応液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,溶出溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=1/1−1/3 gradient)により精製し、標記化合物(5.56g,67.1% yield)を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.56−1.66(2H,m), 1.66−1.76(1H,m), 2.05−2.15(4H,m), 3.33(2H,dd,J=5,6Hz), 3.50(2H,dd,J=8,12Hz), 3.76(2H,dd,J=4,12Hz), 4.54(1H,t,J=5Hz).
【0162】
(1b)4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド
【0163】
【化29】

【0164】
ディーン−スタークおよび冷却管を装着したナスフラスコ中、4−クロロ−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド(5.48g,31.9mmol)、5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメタノール(5.56g,35.1mmol)およびトルエン(20ml)の混合物に、水酸化カリウム(3.94g,70.2mmol)を加えた。この反応混合物を加熱還流下、水を抜きながら6時間撹拌した後、一晩室温で放置した。反応混合物に酢酸エチルを加え、そこへNHシリカゲルを加えて濃縮乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル)により精製し標記化合物(4.42g,47.2% yield)を黄色粘性物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.58−1.68(2H,m), 2.07−2.20(5H,m), 2.11(3H,s), 2.14(3H,s), 2.29(3H,s), 3.73(2H,dd,J=6,12Hz), 3.77(2H,d,J=7Hz), 3.93(2H,dd,J=4,12Hz), 8.04(1H,s).
【0165】
(1c)[4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチルアセテート
【0166】
【化30】

【0167】
上記(1b)で得た4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド(3.22g,11mmol)と無水酢酸(30ml)との混合物を85℃にて1時間撹拌した。反応混合物を、真空ポンプを用いて濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,溶出溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=1/1−0/1 gradient)により精製し、標記化合物(2.95g,80.0% yield)を黄色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.58−1.69(2H,m), 2.03(3H,s), 2.06−2.23(5H,m), 2.16(3H,s), 2.18(3H,s), 3.74(2H,dd,J=6,11Hz), 3.83(2H,d,J=7Hz), 3.94(2H,dd,J=4,11Hz), 5.09(2H,s), 8.17(1H,s).
【0168】
(1d)[4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノール
【0169】
【化31】

【0170】
上記(1c)で得た[4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチルアセテート(1.75g,5.22mmol)とメタノール(15ml)の混合物に、5N水酸化ナトリウム水溶液(10ml)を加えた後、室温下2時間撹拌した。この反応混合物に、溶液のpHが約10になるように飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加えた後、濃縮した。得られた残渣に酢酸エチルを加え、十分撹拌後有機層を分取した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することにより、標記化合物(1.54g, quantitative yield)を黄色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.58−1.68(2H,m), 2.07−2.21(5H,m), 2.17(6H,s), 3.74(2H,dd,J=6,12Hz), 3.81(2H,d,J=7Hz), 3.94(2H,dd,J=4,12Hz), 4.49(2H,d,J=5Hz), 4.95(1H,t,J=5Hz), 8.14(1H,s).
【0171】
(1e)2−[[[4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール
【0172】
【化32】

【0173】
上記(1d)で得た[4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノール(297mg,1.01mmol)とテトラヒドロフラン(7ml)の混合物に、トリエチルアミン(0.29ml,2.08mmol)を加えた。この反応混合物を氷浴で冷却下、メタンスルホニルクロリド(0.12ml,1.55mmol)を滴下し、氷浴で冷却下30分間撹拌した。反応混合物に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルを加え、十分撹拌した後、有機層を分取した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後濃縮し、さらに真空ポンプで溶媒を留去した。得られた残渣にエタノール(7ml)を加え、2−メルカプトベンズイミダゾール(152mg,1.01mmol)、水酸化ナトリウム(162mg,4.04mmol)を順次加えて、室温下15時間撹拌した。反応混合物を濃縮した後、NHシリカゲルを加え濃縮乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,溶出溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=1/1−0/1 gradient)により精製し、標記化合物(370mg,86.1% yield)を白色泡状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.58−1.69(2H,m), 2.07−2.20(5H,m), 2.17(3H,s), 2.26(3H,s), 3.74(2H,dd,J=6,12Hz), 3.82(2H,d,J=7Hz), 3.93(2H,dd,J=4,12Hz), 4.66(2H,s), 7.07−7.14(2H,m), 7.39−7.47(2H,m), 8.16(1H,s).
【0174】
(1f)2−[[[2−[(1H−ベンズイミダゾール−2−イルチオ)メチル]−3,5−ジメチルピリジン−4−イル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール
【0175】
【化33】

【0176】
上記(1e)で得た2−[[[4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール(80mg,0.188mmol)とメタノール(0.5ml)の混合物に、2N塩酸(0.5ml)を加えて室温下1.5時間撹拌した。反応混合物に2N水酸化ナトリウム水溶液(0.5ml)を加え、約30分間撹拌した。混合物中の析出物をろ取し、析出物を水で洗浄した。得られた析出物にメタノールを加えて溶媒留去(減圧、約40℃)後、さらに真空ポンプで溶媒留去することにより、標記化合物(50mg,71.2% yield)を白色固体として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.93−2.03(1H,m), 2.18(3H,s), 2.27(3H,s), 3.50−3.61(4H,m), 3.82(2H,d,J=6Hz), 4.53(2H,brs), 4.66(2H,s), 7.07−7.14(2H,m), 7.38−7.48(2H,m), 8.14(1H,s).
【0177】
(1g)2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール
【0178】
【化34】

【0179】
(方法1)
2−[[[2−[(1H−ベンズイミダゾール−2−イルチオ)メチル]−3,5−ジメチルピリジン−4−イル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール(100mg,0.268mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)の混合物に、2,2−ジエトキシプロパン(0.09ml,0.565mmol)を加え、120℃で2時間撹拌した。反応混合物に水と酢酸エチルを加えて、十分撹拌した後有機層を分取した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,溶出溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=1/1−0/1 gradient)により精製し、標記化合物(48mg, 含有率95%,41.1% yield)を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.31(3H,s), 1.34(3H,s), 2.03−2.13(1H,m), 2.18(3H,s), 2.26(3H,s), 3.79(2H,dd,J=6,12Hz), 3.85(2H,d,J=7Hz), 3.99(2H,dd,J=4,12Hz), 4.67(2H,s), 7.06−7.13(2H,m), 7.39−7.47(2H,m), 8.16(1H,s).
【0180】
(方法2)
2−[[[2−[(1H−ベンズイミダゾール−2−イルチオ)メチル]−3,5−ジメチルピリジン−4−イル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール(300mg,0.803mmol)とアセトン(12ml)の混合物を、氷浴で冷却下、塩化鉄(III)(130mg,0.803mmol)を
加え、氷浴で冷却下4時間撹拌した。反応混合物に、さらに塩化鉄(III)(130mg,0.80
3mmol)を加えた後、室温下で18時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム、酢酸エチルを加え、十分撹拌した後、有機層を抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,溶出溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=1/1−0/1 gradient)により精製し、標記化合物(180mg,54.2% yield)を薄黄色泡状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)測定から(方法1)で得られた化合物と同じ化合物であることを確認した。
【0181】
(1h)2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール
【0182】
【化35】

【0183】
2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール(424mg,1.03mmol)、トルエン(20ml)およびメタノール(2ml)の混合物に、窒素雰囲気下、−65℃にて3−クロロ過安息香酸(246mg, 含量65%として0.927mmol)、トルエン(1ml)およびメタノール(1ml)の混合物を5分かけて滴下し、その混合物を−65℃にて45分間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、酢酸エチルを加え、十分撹拌した後、有機層を分取した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル:20g, 溶出溶媒:ジクロロメタン、ジクロロメタン/メタノール=10/1)により精製した。残渣にジエチルエーテルを加えた。混合物中に生じた析出物を濾取し、析出物をジエチルエーテルにて洗浄し、標記化合物(274mg, 収率:61.9%)を白色固形物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.32(3H,s), 1.36(3H,s), 2.02−2.13(1H,m), 2.16(3H,s), 2.20(3H,s), 3.74−3.84(4H,m), 4.00(2H,dd,J=4,12Hz), 4.70(1H,d,J=14Hz), 4.79(1H,d,J=14Hz), 7.26−7.33(2H,m), 7.60−7.70(2H,m), 8.18(1H,s).
【0184】
(1i)2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール ナトリウム塩
【0185】
【化36】

【0186】
上記(1h)で得た2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(274mg,0.638mmol)とエタノール(10ml)の混合物に1N水酸化ナトリウム水溶液(635μl,濃度1.004Mとして0.638mmol)を室温にて加え、その混合物を濃縮した。残渣にエタノールを加えた後、溶媒留去し、さらにもう1度、残渣にエタノールを加えた後、溶媒留去した。残渣にジエチルエーテルを加え、超音波にてソニケーションした後、濃縮し、標記化合物(260mg, 収率:90.3%)を白色固形物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.33(3H,s), 1.36(3H,s), 2.03−2.14(1H,m), 2.20(3H,s), 2.21(3H,s), 3.76−3.87(4H,m), 4.00(2H,dd,J=4,11Hz), 4.39(1H,d,J=13Hz), 4.75(1H,d,J=13Hz), 6.81−6.91(2H,m), 7.40−7.48(2H,m), 8.23(1H,s).
【0187】
(1j)2−[[[2−(ヒドロキシメチル)−3,5−ジメチルピリジン−4−イル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール
【0188】
【化37】

【0189】
上記(1d)で得た[4−(5,9−ジオキサスピロ[3.5]ノナ−7−イルメトキシ)−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノール(200mg,0.682mmol)とメタノール(2ml)の混合物に、2N塩酸(2ml)を加えて室温下50分間撹拌した。反応混合物に、液性がほぼ中性になるように2N水酸化ナトリウム水溶液を加えた。その混合物にメタノールを加えた後、溶媒留去(減圧、約40℃)し、さらにもう1度残渣にメタノールを加えた後、溶媒留去(減圧、約40℃)した。得られた残渣にメタノールを加え、次いでNHシリカゲルを加えて濃縮乾固した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル,酢酸エチル/メタノール=1/0−4/1 gradient)により精製し、標記化合物(135mg,82% yield)を白色固体として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.91−2.03(1H,m), 2.17(6H,s), 3.56(4H,dd,J=5,6Hz), 3.81(2H,d,J=6Hz), 4.49(2H,d,J=5Hz), 4.52(2H,t,J=5Hz), 4.94(1H,t,J=5Hz), 8.13(1H,s).
【0190】
(1k)[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノール
【0191】
【化38】

【0192】
上記(1j)で得た2−[[[2−(ヒドロキシメチル)−3,5−ジメチルピリジン−4−イル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール(118mg,0.489mmol)とアセトン(5ml)の混合物に、塩化鉄(III)(238mg,1.47mmol)を加え50℃で2時間撹拌した。
反応混合物を氷浴で冷却し、酢酸エチル(10ml)、2N NaOH水溶液(5ml)を加えて15分間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、その後セライトを酢酸エチルで洗浄した。合わせたろ液を十分撹拌後、有機層を分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(NHシリカゲル,溶出溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=1/1−0/1)により精製し、標記化合物(39mg,28.3% yield)を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.31(3H,s), 1.35(3H,s), 2.03−2.13(1H,m), 2.18(6H,s), 3.80(2H,dd,J=6,12Hz), 3.84(2H,d,J=7Hz), 4.00(2H,dd,J=4,12Hz), 4.49(2H,d,J=5Hz), 4.96(1H,t,J=5Hz), 8.14(1H,s).
【0193】
(1l)2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール
【0194】
【化39】

【0195】
[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メタノール(504mg,1.79mmol)、トリエチルアミン(500μl,3.58mmol)およびテトラヒドロフラン(15ml)の混合物に、窒素雰囲気下、1℃から3℃にて、メタンスルホニルクロリド(208μl,2.69mmol)を15分かけて滴下し、その混合物を1℃から3℃にて1時間25分攪拌した。反応混合物に2−メルカプトベンズイミダゾール(271mg,1.8mmol)を加え、64時間20分攪拌した。反応混合物に酢酸エチルおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、十分撹拌した後、有機層を分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:30g, 溶出溶媒:ヘプタン/酢酸エチル=42/58、22/78、酢酸エチル)により精製し、標記化合物(442mg, 収率:59.7%)を無色泡状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.33(3H,s), 1.36(3H,s), 2.05−2.16(1H,m), 2.20(3H,s), 2.28(3H,s), 3.81(2H,dd,J=6,12Hz), 3.87(2H,d,J=7Hz), 4.02(2H,dd,J=4,12Hz), 4.69(2H,s), 7.09−7.16(2H,m), 7.41−7.50(2H,m), 8.18(1H,s).
【0196】
(実施例2)2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール
【0197】
【化40】

【0198】
(2a)2−[[[4−クロロ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール
【0199】
【化41】

【0200】
4−クロロ−2,3,5−トリメチルピリジン 1−オキシド(6.34g,36.9mmol)、リチウムクロリド(3.13g,73.8mmol)とトルエン(60ml)の混合物に、氷冷攪拌下、メタンスルホニルクロリド(8.57ml,111mmol)を0℃から3℃(内温)にて加えた。反応混合物を室温にて13時間20分攪拌した後、10時間加熱還流し、次いで室温にて、さらに40日と10時間放置した。反応混合物に、氷冷下飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下して加えた。反応混合物に酢酸エチルを加え、十分撹拌した後、有機層を分取した。水層に酢酸エチルを加え十分撹拌した後、有機層を分取した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、シリカゲルパッドを通してろ過した後、減圧濃縮した。得られた残渣に、2−メルカプトベンズイミダゾール(5.54g,36.9mmol)、メタノールおよびテトラヒドロフラン(50ml/50ml)の混合物、トリエチルアミン(5.14ml,36.9mmol)を順次0℃にて加えた。反応混合物を4時間室温攪拌した後、減圧濃縮した。残渣にメタノール(50ml)を加え攪拌した後、混合物中の析出物を濾取し、析出物をメタノール(30ml)にて2回洗浄後乾燥することにより、標記化合物(4.2g, 収率37.5%)を白色固体として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;2.29(3H,s), 2.44(3H,s), 4.78−4.88(2H,brs), 7.16−7.31(2H,m), 7.46−7.58(2H,m), 8.28(1H,s).
【0201】
(2b)2−[[[4−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ]−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール
【0202】
【化42】

【0203】
上記(1a)にて得た2−[[[4−クロロ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]チオ]−1H−ベンズイミダゾール(110mg,0.342mmol)、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノール(100mg,0.684mmol)、カリウム t−ブトキシド(92.1mg,0.821mmol)およびジメチルスルホキシド(0.6ml)の混合物を60℃(外温)にて2時間攪拌し、さらに90℃(外温)にて67時間攪拌した。反応混合物に酢酸エチル(5ml)および水(1ml)を加えた。十分撹拌した後、有機層を分取した。有機層を無水硫酸マグネシウム乾燥、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶出溶媒:AcOEt/Heptane=1/1−1/0)にて精製し、標記化合物(36mg,収率25.5%)を無色油状物として得た。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm;1.31(3H,s), 1.34(3H,s), 2.03−2.14(1H,m), 2.18 (3H,s), 2.26(3H,s), 3.79(2H,dd,J=6,12Hz), 3.85(2H,d,J=7Hz), 4.00(2H,dd,J=4,12Hz), 4.67(2H,s), 7.07−7.14(2H,m), 7.39−7.48(2H,m), 8.16(1H,s).
【0204】
(試験例1)慢性胃瘻管装着犬における胃酸分泌抑制効果
(1)方法
慢性胃瘻管を装着した大型犬(体重約14〜19kg)を用い、実施例化合物の胃酸分泌抑制作用及び胃酸分泌抑制作用持続を検討した。実験は2日間にわたって実施した。第1日目はヒスタミン(50または75μg/kg/h)を3時間静脈内持続投与した条件下で20分毎に胃液を回収した。ヒスタミン投与開始1時間後、0.5%メチルセルロース溶液に懸濁または溶解した実施例化合物を0.1ml/kgの容量で十二指腸内に留置したカテーテルを介して投与した。その後2時間にわたり実施例化合物の胃酸分泌抑制作用を検討した。第2日目(実施例化合物投与24時間後)はヒスタミンを2時間静脈内持続投与した条件下で、20分毎に胃液を回収し胃酸分泌抑制作用持続を検討した。胃液量を測定後、0.5mlの胃液をサンプリングし、0.04mol/lの水酸化ナトリウム溶液でpH7.0まで中和滴定し酸濃度を測定した。胃液量に酸濃度を乗じ胃酸排出量を求めた。胃酸分泌抑制作用は第1日目の胃酸分泌抑制率(%)で評価した。以下に示す式より胃酸分泌抑制作用(%)を求めた。例数2以上の場合、全ての例数の平均値を求め示した。
胃酸分泌抑制作用(%)=(A-B)/A×100
[A]:ヒスタミン投与開始40分後から1時間後までの20分間の胃酸排出量
[B]:実施例化合物投与1時間40分後から2時間後までの20分間の胃酸排出量
胃酸分泌抑制作用持続は第2日目の胃酸分泌抑制率(%)で評価した。以下に示す式より胃酸分泌抑制作用持続(%)を求めた。
胃酸分泌抑制作用持続(%)=(C-D)/C×100
[C]:第1日目のヒスタミン投与開始から1時間後までの総胃酸排出量
[D]:第2日目のヒスタミン投与開始から1時間後までの総胃酸排出量
【0205】
(2)結果
表1は、慢性胃瘻管装着犬における胃酸分泌抑制効果の結果を示す。
【0206】
【表1】

化合物X:2−[[[4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシ−3,5−ジメチルピリジン−2−イル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールの保持時間の短い光学異性体のナトリウム塩
【0207】
表1に示す結果から、上記化合物Xは、良好な胃酸分泌抑制作用と胃酸分泌抑制持続を有することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明に係る製造方法によれば、本発明は、本出願時に未開示であり、かつ優れた胃酸分泌抑制作用を有する化合物として有用な化合物(1)またはその塩の工業的な規模での製造に適用させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味する。)で表される化合物(1)またはその塩の製造方法であって、
(a)式
【化2】

(式中、X1は脱離基を意味し、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(3T)と、式
【化3】

で表される(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノールまたはその水和物とを反応させ、式
【化4】

(式中、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(2T)を生成させる工程と、
(b)前記式(2T)で表される化合物を、酸化剤と反応させる工程と、
を含む製造方法。
【請求項2】

【化5】

(式中、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味する。)で表される化合物(1)またはその塩の製造方法であって、
(c)式
【化6】

(式中、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子または水酸基の保護基を意味し、またはR10およびR11は一緒になってメチレン基(当該メチレン基は、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、1または2個のメトキシ基を有していてもよいフェニル基およびトリクロロメチル基から選ばれる1または2個の基を有していてもよい。)、カルボニル基、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基または1,1−シクロヘキシレン基を意味し(但し、R10およびR11が一緒になって2,2−プロピレン基である場合を除く)、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(3U)を脱保護反応し、次いで、アセタール化試薬と反応し、式
【化7】

(式中、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(2T)を生成させる工程と、
(b)前記式(2T)で表される化合物を、酸化剤と反応させる工程と、
を含む製造方法。
【請求項3】

【化8】

(式中、Zは式−S−または式−SO−を意味し、R1およびR3は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を意味する。)で表される化合物(1Z)またはその塩の製造方法であって、

【化9】

(式中、X1は脱離基を意味し、Z、R1およびR3は、上記と同意義である。)で表される化合物(2Z)と、式
【化10】

で表される(2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−5−イル)メタノールまたはその水和物を反応させる、製造方法。
【請求項4】

【化11】

(式中、Z、R1およびR3は上記と同意義である。)で表される化合物(1Z)またはその塩の製造方法であって、

【化12】

(式中、Zは式−S−または式−SO−を意味し、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子または水酸基の保護基を意味し、またはR10およびR11は一緒になってメチレン基(当該メチレン基は、C1−C6アルキル基、C1−C6アルコキシ基、1または2個のメトキシ基を有していてもよいフェニル基およびトリクロロメチル基から選ばれる1または2個の基を有していてもよい。)、カルボニル基、1,1−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,1−シクロペンチレン基または1,1−シクロヘキシレン基を意味する(但し、R10およびR11が一緒になって2,2−プロピレン基である場合を除く)で表される化合物(3Z)を脱保護反応し、次いで、アセタール化試薬と反応させる、製造方法。

【公開番号】特開2009−196894(P2009−196894A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2006−279581(P2006−279581)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】