説明

スルホオキシアルキルチオフェン化合物及びその製造法

下記式[1]で示されるスルホオキシアルキルチオフェン化合物、及び式[2]で示されるヒドロキシアルキルチオフェン化合物。これらにより、酸化重合できる有用なπ共役系導電性高分子モノマーを提供することが出来る。


(式中、Rは水素原子、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表し、nは1〜3の整数を表す。)


(式中、nは、前記と同じ。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子材料のモノマーに関し、より具体的には、スルホオキシアルキルチオフェン化合物及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スルホン酸基を有するπ共役系導電性高分子は多数知られており、例えば自己ドープ可能なポリチオフェンは一般に電子ビームリソグラフィーなどに応用されている(非特許文献1及び非特許文献2参照。)。
また、帯電防止用途等に用いられる水溶性自己ドープ型ポリチオフェンとしては、ポリ(3−チオフェン−β−ブタンスルホネート)、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホネート)が知られている(非特許文献1及び非特許文献3参照。)。
しかし、本発明のスルホオキシアルキルチオフェン化合物は未だ報告がない。
【0003】
なお、ヒドロキシアルキニルチオフェン化合物としては、式[7]で表される3−[4−(3−ヒドロキシ−プロパ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−プロパ−2−イン−1−オール(3,4HTPO)が知られている(特許文献1参照。)。
【0004】
【化1】

【0005】
【特許文献1】国際公開第01/19809号パンフレット(第21頁、第27頁及び第41−42頁)
【非特許文献1】「シンセティク・メタルズ(Synth. Met.)」、(オランダ)、エルゼビア・セコイア、1989年、第30巻、p.305−319
【非特許文献2】「ハンドブック・オブ・コンダクティング・ポリマー(Handbook of Conducting Polymers)」、第二版 改訂・増補、(米国)、マーセル・デッカーズ・インク、1998年、p.930
【非特許文献3】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J. Amer. Chem. Soc.)」、(米国)、米国化学会、、1987年、第109巻、p.1858−1859
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酸化重合可能なπ共役系導電性高分子モノマーである新規なスルホオキシアルキルチオフェン化合物及びその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記式[1]、[2]で示されるアルキルチオフェン化合物が、酸化重合できる有用なπ共役系導電性高分子モノマーとなり得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕式[1]で表される3,4−ビス(1−スルホオキシアルキル)チオフェン化合物、
【化2】

(式中、Rは水素原子、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表し、nは1〜3の整数を表す。)
〔2〕式[2]で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシアルキル)チオフェン化合物、
【化3】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
〔3〕式[3]で表される3,4−ビス(1−スルホオキシプロピル−3−イル)チオフェン化合物、
【化4】

(式中、Rは水素原子、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表す。)
〔4〕式[4]で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシプロピル−3−イル)チオフェン、
【化5】

〔5〕アルカリ金属原子がナトリウム又はカリウムであることを特徴とする〔1〕又は〔3〕のスルホオキシアルキニルチオフェン化合物、
〔6〕式[2]
【化6】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシアルキル)チオフェン化合物に三酸化硫黄化合物を反応させて、式[5]
【化7】

(式中、nは前記と同じ意味を表す。)
で表される3,4−ビス(1−スルホオキシアルキル)チオフェン化合物を得た後、アルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物と反応させることを特徴とする式[6]
【化8】

(式中、Mはアルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表し、nは前記と同じ意味を表す。)
で表される3,4−ビス(1−スルホオキシアルキル)チオフェン金属塩化合物の製造法、
〔7〕式[7]
【化9】

で表される3−[4−(3−ヒドロキシ−プロパ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−プロパ−2−イン−1−オール(3,4HTPOと略記する。)を還元することを特徴とする、式[4]
【化10】

で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシプロピル−3−イル)チオフェン(3,4BHTと略記する。)の製造法、
〔8〕アルカリ金属原子がナトリウム又はカリウムであることを特徴とする〔6〕のスルホオキシアルキニルチオフェン金属塩化合物の製造法、
〔9〕三酸化硫黄化合物が、三酸化硫黄、三酸化硫黄・1,4−ジオキサン錯体、三酸化硫黄・DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)錯体又は三酸化硫黄・ピリジン錯体であることを特徴とする〔6〕のスルホオキシアルキニルチオフェン金属塩化合物の製造法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、酸化重合できる有用なπ共役系導電性高分子モノマーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る上記式[1]で示される化合物において、nは1〜3の整数であるが、より好ましくは、nは1(すなわち、式[3]で示される化合物)である。
式[2]で示される化合物において、nは1〜3の整数であるが、より好ましくは、nは1(すなわち、式[4]で示される化合物)である。
本発明に係る式[6]で示されるスルホオキシアルキニルチオフェン金属塩化合物の製造法においても、nは1〜3の整数であるが、より好ましくは、nは1である。
【0011】
以下、前記式[1]、[2]、[5]、[6]において、nが1の場合を例にして説明する。
本発明化合物の製造法は、前述した様に次の3つの反応スキームで表される。
【0012】
【化11】

【0013】
【化12】

【0014】
【化13】

(上記3式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、Yは残基を表す。)
【0015】
以下順にスキーム(1)から述べる。
先ず原料である3,4HTPOの製造法は、国際公開第01/19809号パンフレットに記載された以下の反応スキームで表される。
【0016】
【化14】

(式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
【0017】
原料の3,4−ジハロゲノチオフェン(3,4DXT)としては、3,4−ジフルオロチオフェン、3,4−ジクロロチオフェン、3,4−ジブロモチオフェン及び3,4−ジヨードチオフェン等が挙げられ、反応性や経済性から3,4−ジブロモチオフェンが好ましい。
もう一方の原料は、プロパルギルアルコールであり、これらは市販品をそのまま使用することができる。
【0018】
触媒としては、Pd(Ph3P)4(2+1mol%)及びCuI(3+1.5mol%)と溶媒としてn−プロピルアミンを使用し加熱還流した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより3,4HTPOが得られる。
尚、国際公開第01/19809号パンフレットには、その中間体の3,4XTPOの記載はなかったが、本発明者は前記反応生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、3,4HTPOの他に3−(4−ハロゲノ−チオフェン−3−イル)−プロパ−2−イン−1−オール(3,4XTPO)を単離・構造解析し確認した。
【0019】
第1工程の3,4HTPO化合物(前記式[7])の3,4BHT化合物(前記式[4])への還元反応は、三重結合を単結合に変換する種々の一般的還元法が適用できる。
例えば、(1)金属および金属塩による還元、(2)金属水素化物による還元、(3)金属水素錯化合物による還元、(4)ジボランおよび置換ボランによる還元、(5)ヒドラジンによる還元、(6)ジイミド還元、(7)リン化合物による還元、(8)電解還元及び(9)接触還元等を挙げることができる。
【0020】
これらの中で、最も実用的方法は接触還元方法である。本発明で採用できる接触還元法は以下の通りである。触媒金属としては、周期律表第8族のパラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金、ニッケル、コバルト及び鉄、又は第1族の銅等が使用できる。これらの金属は単独で、又は他の元素と複合させた多元系で使用される。それらの使用形態は、各金属単身、ラネー型触媒、ケイソウ土、アルミナ、ゼオライト、炭素及びその他の担体に担持させた触媒及び錯体触媒等が挙げられる。
【0021】
具体的には、パラジウム−炭素、ルテニウム−炭素、ロジウム−炭素、白金−炭素、パラジウム−アルミナ、ルテニウム−アルミナ、ロジウム−アルミナ、白金−アルミナ、還元ニッケル、還元コバルト、ラネーニッケル、ラネーコバルト、ラネー銅、酸化銅、銅クロマト、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、クロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム及びヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものはパラジウム−炭素及びルテニウム−炭素等である。
【0022】
触媒の使用量は、5%金属担持触媒として基質に対し0.1〜30質量%が、特には、0.5〜20質量%が好ましい。溶媒は、メタノール、エタノール及びプロパノール等に代表されるアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等に代表されるエーテル類、並びに酢酸エチル及び酢酸プロピル等に代表されるエステル類等が使用できる。
その使用量は、原料に対し1〜50質量倍の範囲が、特には、3〜10質量倍の範囲が好ましい。水素圧は常圧から10MPa(100kg/cm2)の範囲が、特には、常圧から5MPa(50kg/cm2)の範囲が好ましい。反応温度は、0〜180℃の範囲が、特には、10〜150℃の範囲が好ましい。
【0023】
反応は、水素吸収量によって追跡することができ、理論水素量の吸収後サンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析して確認することができる。本反応は、回分式でも連続反応でも可能である。反応後は、濾過により触媒を除き、濃縮後、再結晶法又はカラムクロマトグラフィー法で精製することができる。
次に、3,4BHTのスルホン酸エステルである3,4BSTへのスルホン化剤としては、三酸化硫黄(SO3)化合物が用いられる。その形態としては、三酸化硫黄単身(そのもの)の他に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,4−ジオキサン及びピリジン等との錯体も用いることができる。その使用量は、原料のヒドロキシ基に対し1〜1.5モル当量が好ましい。
【0024】
溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等のアミド化合物、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン及び1,4−ジオキサン等のエーテル化合物が挙げられる。特には、DMFやDMAcが好ましい。その使用量は、基質に対して1〜10質量倍が好ましく、特には2〜5質量倍が好ましい。
【0025】
反応温度は、0〜150℃で可能であるが、特には10〜100℃が好ましい。
反応時間は、液体クロマトグラフィー等の反応液の分析結果から決定することができ、通常1〜5時間で終了する。
反応終了後は、濃縮により溶媒を留去後、残査にアセトンを加えて加温してから室温静置すると結晶が析出する。これを濾取し、乾燥すると目的の3,4−ビス(1−スルホオキシプロピル)チオフェン(3,4BST)が得られる。
【0026】
次にスキーム(3)の3,4BSTと金属化合物の反応によるスルホオキシプロピルチオフェン金属塩化合物の製造法について述べる。
金属化合物としては、周期律表のアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を表し、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等の水酸化物、炭酸塩及び有機酸塩等が挙げられる。
具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム及び酢酸カルシウム等が挙げられる。
【0027】
これらの中で特には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム等が好ましい。
これらの使用量は、基質のスルホン基に対して1〜2モル当量が好ましく、特には、1〜1.5モル当量が好ましい。
溶媒としては、基質と金属化合物を溶解する水の他に、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等のイミド化合物を単独又は水との混合溶媒として使用できる。その使用量は、基質に対して1〜10質量倍が好ましく、特には2〜5質量倍が好ましい。
【0028】
反応温度は、−20〜50℃で可能であるが、特には0〜40℃が好ましい。
反応時間は、液体クロマトグラフィー等の反応液の分析結果から決定することができ、通常0.5〜5時間で終了させることができる。
反応終了後は、濃縮により溶媒を留去後、残査にメタノールを加えて抽出して過剰金属化合物を除いた後濃縮し、その残査にエタノールを加えて晶析させると3,4−ビス(1−スルホオキシアルキル)チオフェン金属塩化合物(金属がナトリウムの場合は、3,4BSST)が得られる。
尚、スキーム(2)のスルホン化反応液をそのままスキーム(3)の金属塩化反応に供することもできる。
以上述べた本発明の反応及び精製は、回分式でも連続式でも可能である。また、反応は常圧下、加圧下のどちらでも行うことができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例で用いた分析法は以下の通りである。
【0030】
[1] [ガスクロマトグラフィー (GC)]
機種: Shimadzu GC-17A, Column : キャピラリカラム CBP1-W25-100 ( 25 m x 0.53 mm φx 1μm ), カラム温度: 100℃( 保持 2 min.)- 8℃/min. ( 昇温速度 )- 290℃( 保持10 min. ), 注入口温度 : 290 ℃, 検出器温度 : 290 ℃, キャリアガス : ヘリウム, 検出法 : FID 法.
[2] [質量分析 (MASS)]
機種: LX-1000 (JEOL Ltd.), 検出法: FAB 法.
[3] [1H NMR]
機種: INOVA500 (VARIAN Corp.), 測定溶媒: CDCl3
標準物質: tetramethylsilane (TMS).
[4] [13C NMR]
機種: INOVA500 (VARIAN Corp.), 測定溶媒: CDCl3
標準物質: CDCl3 (δ: 77.1 ppm).
[5][融点(mp.)]
測定機器: MP−J3 (ヤナコ機器開発研究所製)
[6] [液体クロマトグラフィー (LC)]
機種: Shimadzu LC-10A, Column : YMC-Pack ODS-AM(S-5μm, 120A, AM-303, AM12S05-2546WT ) ( 250 mm x 4.6 mm φ ), カラム温度: 40℃, 検出器波長 : UV 230 nm, 溶離液: H2O/CH3CN=1/2, 流速:0.5ml/min。
【0031】
[参考例1]
【化15】

【0032】
300mL 四つ口反応フラスコに3,4−ジブロモ−チオフェン(3,4DBT)25.0g(103mmol)とn−プロピルアミン100gを仕込み25℃で攪拌中に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム2.38g(2.06mmol)及び沃化銅0.588g(3.09mmol)を添加してから、プロパルギルアルコール17.3g(309mmol)を10分間かけて滴下した。そのまま25℃で1時間攪拌してから更に70℃の油浴(内温54℃)で7時間攪拌した。
続いてテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム1.19g(1.03mmol)及び沃化銅0.29g(1.10mmol)を添加してから、プロパルギルアルコール8.7g(155mmol)を滴下した。再び、70℃の油浴(内温57℃)で20時間攪拌した。
【0033】
反応終了後、濃縮し、その残査を酢酸エチルと水に溶解させ、不溶分をセライト濾過で除去した後、分液して得られた有機層を濃縮すると油状物37.5gが得られた。この油状物をガスクロマトグラフィーで分析の結果、新たなピークAが40.8面積%と新たなピークBが23.3面積%として出現した。これをシリカゲル140gを用いたカラムクロマトグラフィー(溶離液/酢酸エチル:n−ヘプタン=1:9〜1:5)で精製すると留分1の油状物16.0g(純度70.6%)(収率57%)と留分2の油状物4.56g(純度76.5%)(収率23.7%)が得られた。
【0034】
更に、留分1の油状物16.0g(純度70.6%)をシリカゲル140gを用いたカラムクロマトグラフィー(溶離液/酢酸エチル:n−ヘプタン=1:9〜1:5)で再精製すると、留分6の油状物10.3g(純度93.0%)(回収率84.7%)が得られた。この油状物は、下記の分析結果から3−(4−ブロモ−チオフェン−3−イル)−プロパ−2−イン−1−オール(3,4BTPO)であることを確認した。
[3,4BTPO]
1H NMR(CDCl3,δppm): 4.43(s, 2H), 7.13(d, J=3.36Hz, 1H), 7.36(d, J=3.67Hz, 1H).
13C NMR(CDCl3,δppm): 51.2564, 78.5646, 90.6355, 113.3275, 123.8113, 122.9033,127.1915.
【0035】
一方、留分2の油状物4.56g(純度76.5%)をシリカゲル40gを用いてカラムクロマトグラフィー(溶離液/酢酸エチル:n−ヘプタン=1:9〜1:5)で再精製すると、留分1の油状物1.0g(純度90.6%)が得られた。
この油状物は、下記の分析結果から3−[4−(3−ヒドロキシ−プロパ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−プロパ−2−イン−1−オール(3,4HTPO)であることを確認した。
[3,4HTPO]
MASS(FAB+, m/e(%)): 191([M-H]+, 3), 174(29), 146(62), 102(100).
1H NMR(CDCl3,δppm): 4.45(s, 4H), 7.31(s, 2H).
13C NMR(CDCl3,δppm): 50.9736(2C), 78.9914(2C), 89.8720(2C), 124.0855(2C), 128.3813(2C).
【0036】
[実施例1]
【化16】

【0037】
100mLハステロイ製オートクレーブに、3,4HTPO19.2g(0.10mol)、5%Pd/C(50.7%含水品)1.95g(5質量%)、及びエタノール100gを仕込み、窒素置換後、水素初圧5MPaで撹拌を開始した。さらに、攪拌を続けながら昇温し、120℃で6時間反応させた。室温まで冷却した後、濾過により触媒を除去してから濃縮・乾燥させると、ガスクロマトグラフィー分析で原料と異なるほぼ単一成分の結晶(室温で固化)20.0g(0.10mol)(収率100%)が得られた。
この結晶の構造は、下記の分析結果から3,4−ビス(1−ヒドロキシプロピル−3−イル)チオフェン(3,4BHT)であることを確認した。
【0038】
MASS(EI+, m/e(%)): 200(M+, 19), 182(14), 156(40), 111(100).
1H NMR(DMSO-d6,δppm): 1.69-1.75(m, 4H), 2.51(t, J=7.84Hz, 4H), 3.42-3.48(m, 4H), 4.51(t, J=5.00Hz, 2H), 7.05(s, 2H).
13C NMR(DMSO-d6,δppm): 24.6925, 32.5363, 60.3863, 120.2828, 141.3420(各2本分).
mp.(℃):45-46.
【0039】
[実施例2]
【化17】

【0040】
50mLガラス製四つ口反応フラスコに3,4−ビス(1−ヒドロキシプロピル−3−イル)チオフェン(3,4BHT)2.00g(10.0mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10gを仕込み、攪拌しながら10℃で三酸化硫黄・ピリジン錯体3.18g(20.0mmol)を分割添加した。徐々に20℃に戻してから、1時間攪拌した後、LC分析すると原料3,4BHTが消失し、新たなピークが出現した。
次に減圧濃縮後、アセトンを加えて加温後、15℃で一夜静置するとガム状固形物が析出していた。この固形物を濾取し乾燥することにより、ガム状物5.01gを得た。この生成物は下記の結果から3,4−ビス(1−スルホオキシプロピル−3−イル)チオフェン・二ピリジン塩(3,4BST・2Py)であることを確認した。
【0041】
MASS(FAB-, m/e(%)): 359(M-, 19), 279(100), 97(53).
1H NMR(DMSO-d6,δppm): 1.78(dt, J1=6.57Hz, J2=14.21Hz, 4H), 2.51(t, J=7.63Hz, 4H), 3.78(t, J=6.42Hz, 4H), 7.06(s, 2H), 8.10(dd, J1=6.45Hz, J2=7.67Hz, 4H), 8.62-8.66(m, 2H), 8.94(d, J=5.19Hz, 4H).
13C NMR(DMSO-d6,δppm): 24.5297, 29.0696, 120.6464, 127.3915, 140.7594, 142.0642(以上各2本分), 146.6423.
【0042】
[実施例3]
【化18】

【0043】
50mLガラス製四つ口反応フラスコに3,4−ビス(1−スルホオキシプロピル−3−イル)チオフェン・二ピリジン塩(3,4BST・2Py)3.60g(6.95mmol)とN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)18gを仕込み、20℃で攪拌下に重曹2.02g(24.0mmol)を添加した後、30分間攪拌を継続した。次に、減圧濃縮すると残渣が得られた。この残渣にメタノール50gを加え50℃に加温すると固形物が析出したので、これを氷冷してからセライト濾過した。濾液を濃縮乾燥すると固形物6.7gが得られた。この粗物にメタノールを加えて再溶解した後、濃縮してゲル状になったところで、エタノール20gを加えて50℃に加温後、氷冷してから濾過・エタノール洗浄し、更に乾燥するとLC分析で単一ピークの白色結晶2.29g(収率82.2%)が得られた。この結晶は、下記の結果から3,4−ビス(1−ナトリウムスルホオキシプロピル−3−イル)チオフェン(3,4BSST)であることを確認した。
【0044】
MASS(FAB-, m/e(%)): 403([M-H]-, 3), 381(100), 359(9), 279(25), 97(53).
1H NMR(DMSO-d6,δppm): 1.79(t, J=7.64Hz, 4H), 2.48-2.51(m, 4H), 3.75(t, J=6.57Hz, 4H), 7.09(s, 2H).
13C NMR(DMSO-d6,δppm): 24.5069, 29.0774, 65.1374, 120.6161, 140.7825(以上各2本分).
mp.(℃):215-216.
【0045】
本発明により、酸化重合できる有用なπ共役系導電性高分子モノマーを提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]
【化1】

(式中、Rは水素原子、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表し、nは1〜3の整数を表す。)
で表される3,4−ビス(1−スルホオキシアルキル)チオフェン化合物。
【請求項2】
式[2]
【化2】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシアルキル)チオフェン化合物。
【請求項3】
式[3]
【化3】

(式中、Rは水素原子、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表す。)
で表される3,4−ビス(1−スルホオキシプロピル−3−イル)チオフェン化合物。
【請求項4】
式[4]
【化4】

で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシプロピル−3−イル)チオフェン。
【請求項5】
アルカリ金属原子がナトリウム又はカリウムであることを特徴とする請求項1又は3記載のスルホオキシアルキニルチオフェン化合物。
【請求項6】
式[2]
【化5】

(式中、nは1〜3の整数を表す。)
で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシアルキル)チオフェン化合物に三酸化硫黄化合物を反応させて、式[5]
【化6】

(式中、nは前記と同じ意味を表す。)
で表される3,4−ビス(1−スルホオキシアルキル)チオフェン化合物を得た後、アルカリ金属化合物、又はアルカリ土類金属化合物と反応させることを特徴とする式[6]
【化7】

(式中、Mはアルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を表し、nは前記と同じ意味を表す。)
で表される3,4−ビス(1−スルホオキシアルキル)チオフェン金属塩化合物の製造法。
【請求項7】
式[7]
【化8】

で表される3−[4−(3−ヒドロキシ−プロパ−1−イニル)−チオフェン−3−イル]−プロパ−2−イン−1−オールを還元することを特徴とする、式[4]
【化9】

で表される3,4−ビス(1−ヒドロキシプロピル−3−イル)チオフェンの製造法。
【請求項8】
アルカリ金属原子がナトリウム又はカリウムであることを特徴とする請求項6記載のスルホオキシアルキニルチオフェン金属塩化合物の製造法。
【請求項9】
三酸化硫黄化合物が、三酸化硫黄、三酸化硫黄・1,4−ジオキサン錯体、三酸化硫黄・DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)錯体又は三酸化硫黄・ピリジン錯体であることを特徴とする請求項6記載のスルホオキシアルキニルチオフェン金属塩化合物の製造法。

【国際公開番号】WO2005/056545
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516073(P2005−516073)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017063
【国際出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】