説明

スルホニウム塩、レジスト材料及びパターン形成方法

【解決手段】一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩。


(Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【効果】本スルホニウム塩は、親水性の高いフェノール性水酸基やエチレングリコール鎖を有しており、特定アニオンと組み合て用いた場合には液浸水への溶出も少なく、またパターン依存性が少なく、化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤として非常に有用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(1)水酸基又はエチレングリコール鎖を有するナフチルスルホニウムカチオンと特定アニオンのスルホニウム塩、(2)そのスルホニウム塩を含有するレジスト材料、及び(3)そのレジスト材料を用いたパターン形成方法に関する。なお、本発明において、高エネルギー線とは、紫外線、遠紫外線、電子線、EUV、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線を含むものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、次世代の微細加工技術として遠紫外線リソグラフィー及び真空紫外線リソグラフィーが有望視されている。中でもArFエキシマレーザー光を光源としたフォトリソグラフィーは0.13μm以下の超微細加工に不可欠な技術である。
【0003】
ArFリソグラフィーは130nmノードのデバイス製作から部分的に使われ始め、90nmノードデバイスからはメインのリソグラフィー技術となった。次の45nmノードのリソグラフィー技術として、当初F2レーザーを用いた157nmリソグラフィーが有望視されたが、諸問題による開発遅延が指摘されたため、投影レンズとウエハーの間に水、エチレングリコール、グリセリン等の空気より屈折率の高い液体を挿入することによって、投影レンズの開口数(NA)を1.0以上に設計でき、高解像度を達成することができるArF液浸リソグラフィーが急浮上し(例えば、非特許文献1:Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587(2004)参照)、実用段階にある。この液浸リソグラフィーのためには水に溶出しにくいレジスト材料が求められる。
【0004】
ArFリソグラフィーでは、精密かつ高価な光学系材料の劣化を防ぐために、少ない露光量で十分な解像性を発揮できる感度の高いレジスト材料が求められており、実現する方策としては、その各成分として波長193nmにおいて高透明なものを選択するのが最も一般的である。例えばベース樹脂については、ポリアクリル酸及びその誘導体、ノルボルネン−無水マレイン酸交互重合体、ポリノルボルネン及び開環メタセシス重合体、開環メタセシス重合体水素添加物等が提案されており、樹脂単体の透明性を上げるという点ではある程度の成果を得ている。
【0005】
また、光酸発生剤も種々の検討がなされてきた。ArF化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤としては、レジスト材料中での安定性に優れるトリフェニルスルホニウム塩が一般的に使われている(特許文献1:特開2009−7327号公報)。しかしながら、ArF露光波長(193nm)での吸収が大きく、レジスト膜での透過率を下げてしまい、解像性が低い場合があるという欠点がある。そこで、高感度、高解像性を目的として4−アルコキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムカチオン等が開発されており(特許文献2:特許第3632410号公報)、複数の酸不安定基を有する樹脂等の組み合わせのレジスト組成物(特許文献3:特許第3995575号公報)も開示されているが、このナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムは求核置換反応等を受け易いアルキルスルホニウム塩構造に起因するレジスト溶液中での安定性の低さや密集パターンと孤立パターンにおける線幅、パターン形状差が問題となっている。特にダークエリア、ブライトエリアでのパターン形状差が問題となっている。ダークエリアとは、例えば10本のラインアンドスペースパターンの両側がバルクパターンの遮光エリア(ポジ型レジストの場合)であり、ブライトエリアとは、例えば10本のラインアンドスペースパターンの両側が広大なスペース部の透過エリア(ポジ型レジストの場合)である。ラインアンドスペースパターン10本中の中央部の光学条件はダークエリア、ブライトエリア共に同等ながら、ダークエリアとブライトエリアのパターン差があり、問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−7327号公報
【特許文献2】特許第3632410号公報
【特許文献3】特許第3995575号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of photopolymer Science and Technology Vol.17, No.4, p587(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ArFエキシマレーザー光、EUV等の高エネルギー線を光源としたフォトリソグラフィーにおいて、光酸発生剤として用いられて解像性に優れ、粗密依存性の低いレジストパターンを形成することができるスルホニウム塩、そのスルホニウム塩を含有するレジスト材料及びそのレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1a)又は(1b)で示される水酸基又はエチレングリコール鎖を有するナフチルスルホニウムカチオンと特定アニオンのスルホニウム塩を光酸発生剤として用いたレジスト材料が、レジスト膜の解像性に優れ、精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のスルホニウム塩、レジスト材料及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩。
【化1】


(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
請求項2:
請求項1記載の式(1b)で示されるスルホニウム塩において、nが1であることを特徴とするスルホニウム塩。
請求項3:
請求項1又は2記載のスルホニウム塩を含むことを特徴とする化学増幅型レジスト材料。
請求項4:
請求項1又は2記載のスルホニウム塩を含むことを特徴とする化学増幅ポジ型レジスト材料。
請求項5:
請求項3又は4記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項6:
請求項3又は4記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な保護膜を塗布する工程と、当該基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0011】
本発明のレジスト材料は、液浸リソグラフィーに適用することも可能である。液浸リソグラフィーは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に液浸媒体を挿入して露光する。ArF液浸リソグラフィーにおいては、液浸媒体として主に純水が用いられる。NAが1.0以上の投影レンズと組み合わせることによって、ArFリソグラフィーを65nmノード以降まで延命させるための重要な技術であり、開発が加速されている。
【0012】
また、本発明のレジスト材料は、種々のシュリンク方法によって現像後のパターン寸法を縮小することができる。例えば、サーマルフロー、RELACS、SAFIRE、WASOOMなど既知の方法によりホールサイズをシュリンクすることができる。特にポリマーTgが低い水素化ROMPポリマー(シクロオレフィン開環メタセシス重合体水素添加物)などをブレンドした場合、サーマルフローによりホールサイズを効果的に縮小することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスルホニウム塩は、通常のスルホニウム塩と異なり、親水性の高いフェノール性水酸基やエチレングリコール鎖を有しており、特定アニオンと組み合わせた本発明のスルホニウム塩をレジスト材料に用いた場合には液浸水への溶出も少なく、またパターン依存性(ダークブライト差)が少なく、化学増幅型レジスト材料の光酸発生剤として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】合成例2の[PAG−1]の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図2】合成例2の[PAG−1]の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図3】合成例4の[PAG−2]の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図4】合成例4の[PAG−2]の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図5】合成例5の[PAG−3]の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図6】合成例5の[PAG−3]の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図7】合成例6の[PAG−4]の1H−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【図8】合成例6の[PAG−4]の19F−NMR/DMSO−d6を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、第1に下記一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩を提供する。
【化2】


(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【0016】
以下、一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩を詳述する。
上記式(1a)及び(1b)中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示し、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の極性基を含むものも好ましく用いられる。具体的には以下のものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
【化3】


(式中、破線は結合手を示す。)
【0018】
nは1〜4の整数を示す。nの数が多いほど親水性が増すが、結晶化が困難になる場合が多く、好ましくは1である。
【0019】
上記一般式(1a)のスルホニウムカチオンの合成方法は公知であり、メタノール中で1−ナフトールとテトラメチレンスルホキシドの塩化水素ガスによる反応で合成することができる。一般式(1b)のスルホニウム塩の合成も公知の方法で合成できる。n=1の場合、具体的には2−メトキシエチルクロリドと1−ナフトールを塩基性条件下反応させ、1−(2−メトキシエトキシ)ナフタレンを合成する。次いでこれとテトラメチレンスルホキシドを五酸化二燐/メタンスルホン酸溶液中でスルホニウムカチオンを合成する。nが2〜4の場合にも対応する置換アルキルハライド等を用いることで合成できる。
一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩のアニオンは、特開2009−7327号公報や特開2009−91350号公報を参考に合成できる。
上記カチオンとアニオンのイオン交換反応はジクロロメタン、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル等の有機溶剤単独又は水を併用することで行うことができる。
【0020】
本発明では、第2に上記一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩を光酸発生剤として含有することを特徴とする化学増幅型レジスト材料を提供する。
ここで、本発明のレジスト材料は、
(A)上記光酸発生剤(即ち、式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩)、
(B)有機溶剤、
(C)酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化するベース樹脂、
必要により
(D)クエンチャー、
更に必要により
(S)水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤、
更に必要により
(E)上記光酸発生剤以外の光酸発生剤、
更に必要により
(F)有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール、
更に必要により
(G)重量平均分子量3,000以下の溶解阻止剤
を含有することを特徴とする化学増幅ポジ型レジスト材料、
あるいは
(A)上記光酸発生剤(即ち、式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩)、
(B)有機溶剤、
(C’)アルカリ可溶性樹脂であって、架橋剤によってアルカリ難溶となるベース樹脂、
(H)酸によって架橋する架橋剤、
必要により
(D)クエンチャー、
更に必要により
(S)水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤、
更に必要により
(E)上記光酸発生剤以外の光酸発生剤
を含有することを特徴とする化学増幅ネガ型レジスト材料である。
【0021】
本発明の(A)成分の光酸発生剤は上述の通りであるが、その配合量は、レジスト材料中のベース樹脂100部(質量部、以下同じ)に対し0.1〜40部、特に1〜20部である。
【0022】
本発明で使用される(B)成分の有機溶剤、(C)酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化するベース樹脂、(D)クエンチャー、(S)水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤、(E)上記光酸発生剤以外の光酸発生剤、(F)有機酸誘導体及び/又はフッ素置換アルコール、(G)重量平均分子量3,000以下の溶解阻止剤、(C’)アルカリ可溶性樹脂であって、架橋剤によってアルカリ難溶となるベース樹脂、(H)酸によって架橋する架橋剤などの詳細については、特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報等の記載に詳しい。
【0023】
(B)成分の有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテル、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、4−ブチロラクトン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0024】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100部に対して200〜5,000部、特に400〜3,000部が好適である。
【0025】
(C)成分のベース樹脂は、上記特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報に記載のものを用いることができる。酸不安定基としては、上記公報に記載の酸不安定基定義の(L3)又は(L4)を用いることが好ましい。樹脂としてはポリメタクリレートを用いることが好ましく、ベース樹脂は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0026】
更に述べると、本発明で使用される(C)成分又は(C’)成分のベース樹脂は、KrFエキシマレーザーレジスト材料用としては、ポリヒドロキシスチレン(PHS)及びヒドロキシスチレンとスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、その他重合性オレフィン化合物などとの共重合体、ArFエキシマレーザーレジスト材料用としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、シクロオレフィンと無水マレイン酸との交互共重合系及び更にビニルエーテル類又は(メタ)アクリル酸エステルを含む共重合系、ポリノルボルネン系、シクロオレフィン開環メタセシス重合系、シクロオレフィン開環メタセシス重合体水素添加物等が挙げられ、F2エキシマレーザーレジスト材料用として上記KrF、ArF用ポリマーのフッ素置換体等が挙げられるが、これらの重合系ポリマーに限定されることはない。ベース樹脂は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ポジ型レジスト材料の場合、フェノールあるいはカルボキシル基、あるいはフッ素化アルキルアルコールの水酸基を酸不安定基で置換することによって、未露光部の溶解速度を下げる場合が一般的である。
【0027】
この場合、本発明で使用される(C)成分は、下記一般式(C1)で示される酸不安定基以外に下記一般式(C2)〜(C4)で示される繰り返し単位のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
【0028】
【化4】


(式中、RC01は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を示す。RC02及びRC03はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を示す。XAは酸不安定基を示す。YLはラクトン構造を有する置換基を示す。ZAは水素原子、炭素数1〜15のフルオロアルキル基、又は炭素数1〜15のフルオロアルコール含有置換基を示す。)
【0029】
上記一般式(C1)で示される繰り返し単位を含有する重合体は、酸の作用で分解してカルボン酸を発生し、アルカリ可溶性となる重合体を与える。酸不安定基XAとしては種々用いることができるが、具体的には下記一般式(L1)〜(L4)で示される基、炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等を挙げることができる。
【0030】
【化5】

【0031】
ここで、破線は結合手を示す(以下、同様)。
また、式(L1)において、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。RL03は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができる。RL01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはRL01、RL02、RL03のうち環形成に関与する基はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0032】
式(L2)において、RL04は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(L1)で示される基を示す。yは0〜6の整数である。
【0033】
式(L3)において、RL05は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。mは0又は1、nは0、1、2、3のいずれかであり、2m+n=2又は3を満足する数である。
【0034】
式(L4)において、RL06は炭素数1〜8の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。RL07〜RL16はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の1価の炭化水素基を示す。RL07〜RL16はそれらの2個が互いに結合してそれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよく(例えば、RL07とRL08、RL07とRL09、RL08とRL10、RL09とRL10、RL11とRL12、RL13とRL14等)、その場合にはその結合に関与するものは炭素数1〜15の2価の炭化水素基を示し、具体的には上記1価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL07〜RL16は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい(例えば、RL07とRL09、RL09とRL15、RL13とRL15等)。
【0035】
(D)成分のクエンチャーは、光酸発生剤より発生する酸などがレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適しており、このようなクエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。
【0036】
このようなクエンチャーとしては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が好適に用いられる。
【0037】
この場合、求核性の高い化合物や塩基性の強すぎる化合物は本発明のスルホニウム塩と反応するため、不適である。好ましくは一級あるいは二級アミンをtBOC(tert−ブトキシカルボニル)保護化した化合物が挙げられる。また、特開2007−298569号公報、特開2010−20204号公報などに記載の化合物も好ましく用いることができる。
【0038】
なお、これらクエンチャーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は、ベース樹脂100部に対し0.001〜8部、特に0.01〜4部が好ましい。配合量が0.001部より少ないと配合効果がなく、8部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。
【0039】
(E)成分の光酸発生剤を添加する場合は、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでもかまわない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、N−スルホニルオキシジカルボキシイミド、オキシム−O−アリ−ルスルホネート型酸発生剤等があり、上述の特開2009−7327号公報に記載の化合物や特開2009−269953号公報に記載の(F−1)又は特開2010−215608号公報に記載の(C)−1と同様に下記の(F)で定義された化合物などを用いることができる。
【0040】
【化6】

【0041】
ここで、式中、R405、R406、R407はそれぞれ独立に水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基、特にアルキル基又はアルコキシ基を示し、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基として具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、エチルシクロペンチル基、ブチルシクロペンチル基、エチルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、エチルアダマンチル基、ブチルアダマンチル基、及びこれらの基の任意の炭素−炭素結合間に−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)NH−等のヘテロ原子団が挿入された基や、任意の水素原子が−OH、−NH2、−CHO、−CO2H等の官能基に置換された基を例示することができる。R408はヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。
【0042】
なお、本化合物の安定性を損ねる可能性があるため、トリフェニルスルホニウム=4−トルエンスルホネートやトリフェニルスルホニウム=10−カンファースルホネート等のフッ素置換されていないアルカンスルホン酸やアリールスルホン酸を使用することは不適である。好ましくは特開2009−269953号公報に記載の(F−1)で定義される化合物並びにイミドスルホネート、オキシムスルホネートなどの非オニウム塩系光酸発生剤である。
【0043】
本発明の化学増幅型レジスト材料における(E)成分として添加する光酸発生剤の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲であればいずれでもよいが、レジスト材料中のベース樹脂100部に対し0〜40部、特に0.1〜40部、好ましくは0.1〜20部である。(E)成分の光酸発生剤の割合が多すぎる場合には、解像性の劣化や、現像/レジスト膜剥離時の異物の問題が起きる可能性がある。上記(E)成分の光酸発生剤は、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。更に、露光波長における透過率が低い光酸発生剤を用い、その添加量でレジスト膜中の透過率を制御することもできる。
【0044】
また、本発明のレジスト材料に、酸により分解し酸を発生する化合物(酸増殖化合物)を添加してもよい。これらの化合物については特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報を参照できる。
本発明のレジスト材料における酸増殖化合物の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100部に対し2部以下、好ましくは1部以下である。添加量が多すぎる場合は拡散の制御が難しく、解像性の劣化、パターン形状の劣化が起こる。
【0045】
(F)成分である有機酸誘導体、(G)成分の酸の作用によりアルカリ現像液への溶解性が変化する重量平均分子量3,000以下の化合物(溶解阻止剤)の添加は任意であるが、上記各成分と同様に特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報に記載の化合物を参照できる。
【0046】
また、ネガ型レジスト材料用の(C’)成分のベース樹脂並びに(H)成分、酸の作用により架橋構造を形成する酸架橋剤についても、上記各成分と同様に特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報に記載の化合物を参照できる。
【0047】
本発明の化学増幅型レジスト材料中には界面活性剤(S)成分を添加することができ、これも特開2009−269953号公報又は特開2010−215608号公報に記載の(E)定義成分を参照することができる。また、特開2008−122932号公報、特開2010−134012号公報、特開2010−107695号公報、特開2009−276363号公報、特開2009−192784号公報、特開2009−191151号公報、特開2009−98638号公報も参照でき、通常の界面活性剤並びにアルカリ可溶型界面活性剤を用いることができる。
【0048】
上記高分子型の界面活性剤の添加量は、レジスト材料のベース樹脂100部に対して0.001〜20部、好ましくは0.01〜10部の範囲である。これらは特開2007−297590号公報に詳しい。
【0049】
本発明では、第3に上述したレジスト材料を用いたパターン形成方法を提供する。
本発明のレジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を露光量1〜200mJ/cm2、好ましくは10〜100mJ/cm2となるように照射する。あるいは、パターン形成のためのマスクを介さずに電子線を直接描画する。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法(液浸露光法)を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。なお、本発明のレジスト材料は、特に高エネルギー線の中でも250〜190nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。また、上記範囲が上限又は下限から外れる場合は、目的のパターンを得ることができない場合がある。
【0050】
上述した水に不溶な保護膜はレジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1種類はレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1種類はアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去と共に保護膜を除去するアルカリ可溶型である。
後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。
上述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
また、パターン形成方法の手段として、フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤などの抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【実施例】
【0051】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0052】
[合成例1]4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリドの合成
1−ナフトール10g(0.069モル)、テトラメチレンスルホキシド7.2g(0.069モル)をメタノール50gに溶解させ、−16℃に冷却した。20℃を超えない温度で塩化水素の過剰量をフィードした。窒素をバブリングして過剰量の塩化水素ガスを追い出した後に反応液を濃縮し、水及びジイソプロピルエーテルを加えて水層を分取した。4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリド水溶液を得た。これは、これ以上の単離操作をせず、水溶液のまま次の反応に用いた。
【0053】
[合成例2]4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート(PAG−1)の合成
特開2009−7327号公報に記載の処方に準じて合成した1,1−ジフルオロ−2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム(0.02モル相当)と合成例1にて調製した4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリド水溶液(0.03モル相当)を混合し、ジクロロメタン200gを用いて抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去することで結晶が析出した。この結晶−ジクロロメタン溶液混合物を濾過し、ジイソプロピルエーテルで洗浄後、乾燥して目的物を得た(白色結晶6.4g、収率57%)。
【化7】

【0054】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図1及び図2に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1
3085、2906、2851、1738、1586、1572、1518、1453、1373、1355、1324、1278、1219、1154、1131、1103、1076、1013、987、976、942、756、634
【0055】
[合成例3]1−(2−メトキシエトキシ)−ナフタレンの合成
1−ナフトール50.0g(0.0347モル)、2−メトキシエチルクロリド34.4g(0.0364モル)、水酸化ナトリウム14.6g(0.0364モル)、ヨウ化ナトリウム2.6g(0.017モル)をエタノール100gに溶解させ、80℃で8時間加熱撹拌を行った。冷却後に水100gとトルエン200gを加えて有機層を分取し、5質量%水酸化ナトリウム水溶液100gで5回洗浄した。次いで水100gで4回洗浄した後に有機層を濃縮し、油状物45gを得た。これを減圧蒸留し(110℃/13Pa)、目的物を41g得た(収率58%)。
【0056】
[合成例4]4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−テトラヒドロチオフェニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート(PAG−2)の合成
合成例3の1−(2−メトキシエトキシ)−ナフタレン8.1g(0.04モル)を東京化成社製五酸化二燐−メタンスルホン酸溶液16gに分散させ、テトラメチレンスルホキシド4.1g(0.04モル)を滴下混合した。室温で一晩熟成を行い、水100gとジイソプロピルエーテル30gを加えて水層を分取した。水層を再度ジイソプロピルエーテル30gで洗浄し、この水溶液に特開2009−7327号公報に記載の処方に準じて合成した1,1−ジフルオロ−2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム(0.02モル相当)、ジクロロメタン−メチルイソブチルケトン混合溶剤を用いて抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去した後にイソプロピルエーテルを加えて結晶化させ、濾過、乾燥して目的物を得た(白色結晶9.1g、収率81%)。
【化8】

【0057】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図3及び図4に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1
2906、2849、1783、1508、1377、1326、1262、1247、1226、1209、1191、1127、1087、965、943、829、755、637
【0058】
[合成例5]4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウム 2−(5−オキソアダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロパンスルホネート(PAG−3)の合成
特開2009−7327号公報に記載の処方に準じて合成したベンジルトリメチルアンモニウム 1,1−ジフルオロ−2−(5−オキソアダマンタン−1−カルボニルオキシ)エタンスルホネート(0.01モル)と合成例1にて調製した4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウムクロリド水溶液(0.02モル相当)を混合し、ジクロロメタン100gを用いて抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去することで結晶が析出した。この結晶−ジクロロメタン溶液混合物を濾過し、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルエーテルで洗浄後、乾燥して目的物を得た(白色結晶2.5g、収率41%)。
【化9】

【0059】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図5及び図6に示す。なお、1H−NMRにおいて残溶剤(ジクロロメタン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルエーテル)が観測されている。後述するレジスト評価においては純度93.3wt%として純度換算した添加量にて評価を行った。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1
3071、2935、1716、1571、1370、1352、1279、1230、1209、1082、1061、1014、983、945,824、761、639
【0060】
[合成例6]4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−テトラヒドロチオフェニウム 2−(4−(デヒドロコリロキシ)ブタノイルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート(PAG−4)の合成
合成例4と同様に4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−テトラヒドロチオフェニウム水溶液(0.01モル相当)を調製した。これに特開2009−7327号公報に記載の処方に準じて合成したベンジルトリメチルアンモニウム=2−(4−(デヒドロコリロキシ)ブタノイルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート(0.008モル相当)、ジクロロメタン50gを用いて抽出を行った。有機層を水洗し、溶剤を減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマト(溶出液ジクロロメタン−メタノール)を用いて精製を施した。精製物をジクロロメタン−メチルイソブチルケトン溶液に溶解させ、水洗浄し、溶剤を減圧留去した後、イソプロピルエーテルを加えて結晶化させ、濾過、乾燥して目的物を得た(白色結晶4.3g、収率66%)。
【化10】

【0061】
得られた目的物のスペクトルデータを下記に示す。核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,19F−NMR/DMSO−d6)の結果を図7及び図8に示す。なお、1H−NMRにおいて微量の残溶剤(ジイソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトン)が観測されている。
赤外吸収スペクトル(IR(KBr);cm-1
2965、1721、1704、1588、1571、1509、1427、1384、1321、1250、1235、1160、1130、1088、1031、989、950、764、644
【0062】
本発明のレジスト材料に用いる高分子化合物を以下に示す処方で合成した。
[合成例7]ポリマー1の合成
窒素雰囲気としたフラスコに50.6gのメタクリル酸=1−(1−メチルエチル)シクロペンチル、23.1gのメタクリル酸=2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル、26.3gのメタクリル酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、1.19gのV−601(和光純薬工業(株)製)、1.51gの2−メルカプトエタノール、175gのPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)をとり、単量体−重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコに58.3gのPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)をとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体−重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌した1.6kgのメタノールに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をメタノール0.6kgで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して83.3gの白色粉末状の共重合体を得た。共重合体を13C−NMRで分析したところ、共重合組成比は上記の単量体順で46.4/22.2/31.4モル%であった。GPC(溶剤:テトラヒドロフラン)にて分析したところ、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は6,100であった。
【0063】
【化11】

【0064】
[実施例1〜6及び比較例1〜4]
上記合成例で示した光酸発生剤とポリマー1をベース樹脂として使用し、クエンチャーを表1に示す組成で下記界面活性剤A(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解してレジスト材料を調合し、更にレジスト材料を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト液をそれぞれ調製した。
【0065】
なお、表1において、溶剤及びクエンチャー、比較例で用いた光酸発生剤、アルカリ可溶型界面活性剤(SF)は下記の通りである。
P−01:ポリマー1
PAG−1、PAG−2、PAG−3、PAG−4:上述の通り
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
GBL:γ−ブチロラクトン
BASE−1:N−tBOC化2−フェニルベンズイミダゾール
PAG−X:
トリフェニルスルホニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
PAG−Y:
4−ブトキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウム 2−(アダマンタン−1−カルボニルオキシ)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
PAG−Z1:
4−(2−メトキシエトキシ)ナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウム トリフルオロメタンスルホネート
PAG−Z2:
4−ヒドロキシナフチル−1−テトラヒドロチオフェニウム ノナフルオロ−1−ブタンスルホネート
SF−1:
下記ポリマー11(特開2008−122932号公報に記載の化合物)
ポリ(メタクリル酸=3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1,1−ジメチル−2−トリフルオロメチルプロピル・メタクリル酸=1,1,1−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−6−メチル−2−トリフルオロメチルヘプタ−4−イル)
重量平均分子量(Mw)=7,300、分散度(Mw/Mn)=1.86
【化12】


界面活性剤A:
3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(構造式を以下に示す。)
【化13】

【0066】
【表1】

【0067】
レジスト材料の解像性及びダークパターンプロファイルの評価:ArF露光
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学工業(株)製、ARC−29A)を塗布し、200℃で60秒間ベークして作製した反射防止膜(100nm膜厚)基板上にレジスト溶液をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、120nm膜厚のレジスト膜を作製した。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S610C、NA=1.30、二重極、Crマスク)を用いて水により液浸露光し、80℃で60秒間ベーク(PEB)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で60秒間現像を行った。
【0068】
レジスト材料の評価は、40nmのグループのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とした。この評価に用いたのはダークエリアのラインアンドスペースパターンである(10本のラインアンドスペースパターンの両側がバルクパターンで遮光されている)。上記最適露光量におけるダークエリア並びにブライトエリア(10本のラインアンドスペースパターンの両側が広大なスペース部の透過エリアである)におけるパターン形状を電子顕微鏡にて観察し、評価した。
ダークエリアパターン形状の評価基準は、以下のものとした。
矩形:
ライン側壁が垂直であり、ボトム(基板付近)からトップまで寸法変化が少なく良好。
テーパー:
ライン側壁に傾斜があり、ボトムからトップまで徐々に寸法が減少し、不適。
Tトップ:
ライントップ付近で寸法が大きくなり、不適。
トップラウンディング:
ライントップ付近が丸みを帯び寸法が小さくなり、不適。
また上記Eopにおけるブライトエリアのラインアンドスペースパターンの線幅を測定し、Dark/Bright biasとした。数値が小さいほどダークエリア、ブライトエリアでの寸法差が小さく良好なことを示す。
各レジスト材料の評価結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2の結果より、本発明のレジスト材料が既存の光酸発生剤に比べ光酸発生剤として十分機能し、かつダークエリアのパターン形状が良好であり、ダークエリアとブライトエリアの寸法差が小さいことが確認された。
以上の通り、本発明の光酸発生剤を用いたレジスト材料は解像性、特にダーク部のラインアンドスペースパターン形状に優れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1a)又は(1b)で示されるスルホニウム塩。
【化1】


(式中、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数7〜30の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示し、nは1〜4の整数を示す。)
【請求項2】
請求項1記載の式(1b)で示されるスルホニウム塩において、nが1であることを特徴とするスルホニウム塩。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスルホニウム塩を含むことを特徴とする化学増幅型レジスト材料。
【請求項4】
請求項1又は2記載のスルホニウム塩を含むことを特徴とする化学増幅ポジ型レジスト材料。
【請求項5】
請求項3又は4記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後フォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項3又は4記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、水に不溶でアルカリ現像液に可溶な保護膜を塗布する工程と、当該基板と投影レンズの間に水を挿入しフォトマスクを介して高エネルギー線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−153644(P2012−153644A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14016(P2011−14016)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】