説明

スルホニウム塩、高分子化合物、該高分子化合物を用いた化学増幅型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法

【課題】 適度な強度の酸を発生させ、かつ、発生酸の移動、拡散を適度に制御することが可能であり、また、基板との密着性を損なわない酸発生単位をベースポリマーに導入することができるスルホニウム塩、該スルホニウム塩を用いた高分子化合物、該高分子化合物をベースポリマーとして用いた化学増幅型レジスト組成物および、該化学増幅型レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される重合性アニオンを有するスルホニウム塩。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体やフォトマスクブランクス等の加工に使用する、紫外線、遠紫外線、電子線、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線などの高エネルギー線に感応する化学増幅レジスト組成物に関し、特に電子線、遠紫外線を始めとする高エネルギー線のビーム照射による露光工程に使用する化学増幅型レジスト組成物、特に化学増幅ポジ型レジスト組成物の調製に用いることができるスルホニウム塩、高分子化合物、該高分子化合物を用いた化学増幅型レジスト組成物、特には化学増幅ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路の高集積化に伴いより微細なパターン形成が求められ、0.2μm以下のパターンの加工ではもっぱら酸を触媒とした化学増幅型レジストが使用されている。また、この際の露光源として紫外線、遠紫外線、電子線などの高エネルギー線が用いられるが、特に超微細加工技術として利用されている電子線リソグラフィーは、半導体製造用のフォトマスクを作製する際のフォトマスクブランクの加工方法としても不可欠となっている。
【0003】
一般的に、電子線による描画は電子線ビームにより行われ、マスクを用いず、ポジ型の場合であればレジスト膜を残したい領域以外の部分を、微細面積の電子線ビームで順次照射していくという方法が採られる。そこで、加工面の微細に区切った全領域上を掃引していくという作業となるため、フォトマスクを用いる一括露光に比べ時間がかかり、スループットを落とさないためにはレジスト膜が高感度であることが求められる。また描画時間が長くかかるため、初期に描画された部分と後期に描画された部分の差が生じやすく、露光部分の真空中での経時安定性は重要な性能要求項目である。さらに、特に重要な用途であるフォトマスクブランクスの加工では、フォトマスク基板に成膜された酸化クロムを始めとするクロム化合物膜など、化学増幅型レジストのパターン形状に影響を与えやすい表面材料を持つものも有り、高解像性やエッチング後の形状を保つ為には基板の種類に依存せずレジスト膜のパターンプロファイルを矩形に保つ事も重要な性能の一つとなっている。
【0004】
ところで、上記のようなレジスト感度やパターンプロファイルの制御はレジスト組成物に使用する材料の選択や組み合わせ、プロセス条件等によって種々の改善がなされてきた。その改良の一つとして、化学増幅型レジストの解像性に重要な影響を与える酸の拡散の問題がある。フォトマスク加工では、上述のように得られるレジストパターンの形状が、露光後、露光後加熱までの時間に依存して変化しないことが求められているが、時間依存性変化の大きな原因は露光により発生した酸の拡散である。この酸の拡散の問題は、フォトマスク加工に限らず、一般のレジスト材料においても感度と解像性に大きな影響を与えることから多くの検討がされてきている。
【0005】
特に特許文献1で開示された、露光により発生するスルホン酸をレジスト組成物に使用する樹脂に結合させることにより拡散を抑制する方法は、塩基を用いて制御する方法とは異なるメカニズムによる制御方法として注目される。より微細なパターンの形成が求められるに従い、この方法を用いる改良が種々行われているが、特許文献2は、酸の強度の改良を図った例である。
【0006】
ところで、酸性側鎖を有する芳香族骨格を多量に有するポリマー、例えばポリヒドロキシスチレンは、KrFエキシマレーザー用レジスト材料として有用に用いられてきたが、波長200nm付近の光に対して大きな吸収を示すため、ArFエキシマレーザー用レジスト用の材料としては使用されなかった。しかし、ArFエキシマレーザーによる加工限界よりも小さなパターンを形成するための有力な技術である電子線レジスト用レジスト材料や、EUV(extreme ultraviolet)レジスト用材料としては、高いエッチング耐性が得られる点で重要な材料である。
【0007】
ポジ型の電子線用レジスト組成物や、EUV用レジスト組成物のベースポリマーとしては、高エネルギー線を照射することで光酸発生剤より発生した酸を触媒として、ベースポリマーが持つフェノール側鎖の酸性官能基をマスクしている酸分解性保護基を脱保護させて、アルカリ性現像液に可溶化する材料が主に用いられている。また、上記の酸分解性保護基として、三級アルキル基、t−ブトキシカルボニル基、アセタール基等が主として用いられてきた。ここでアセタール基のような脱保護に必要な活性化エネルギーが比較的小さい保護基を用いると、高感度のレジスト膜が得られるという利点があるものの、発生する酸の拡散の抑制が十分でないと、レジスト膜中の露光していない部分においても脱保護反応が起きてしまい、ラインエッジラフネス(LER)の劣化やパターン線幅の面内均一性(CDU)の低下を招くという問題があった。
【0008】
上述の特許文献1や特許文献2のような、露光により酸を発生する繰り返し単位をベースポリマーに結合させ酸拡散を抑える方法は、LERの小さなパターンを得るのに有効である。しかし、そのような繰り返し単位の構造によっては、露光により酸を発生する繰り返し単位を結合させたベースポリマーの有機溶剤に対する溶解性に問題が生じるケースもあった。また、フッ素化アルカンスルホン酸のようなpKaの高い酸を発生させる繰り返し単位と、アセタール基を有する繰り返し単位を備える樹脂を用いた場合には、LERの大きなパターンが形成される問題があった。すなわち、脱保護の活性化エネルギーが比較的低いアセタール基の脱保護には、フッ素化アルカンスルホン酸の酸強度が高すぎるため、酸の拡散を抑えたとしても未露光部に拡散した微量の酸により脱保護反応が進行してしまうからである。さらに、フッ素含有量が多いポリマーは基板への密着性を損なうため、パターン剥がれやパターン崩壊が起きやすいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−325497号公報
【特許文献2】特開2008−133448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、適度な強度の酸を発生させ、かつ基板との密着性を損なわない酸発生単位をベースポリマーに導入することができるスルホニウム塩、該スルホニウム塩を用いた高分子化合物、該高分子化合物をベースポリマーとして用いた化学増幅型レジスト組成物および、該化学増幅型レジスト組成物を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明によれば、下記一般式(1)で表されるスルホニウム塩を提供する。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを表す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。kは0又は1の整数を示す。)
【0012】
上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩は、適度な強度の酸を発生させ、かつ基板との密着性を損なわない酸発生単位を化学増幅型レジスト組成物のベースポリマーに導入することができるスルホニウム塩である。従って、このようなスルホニウム塩を繰り返し単位として導入した高分子化合物をベースポリマーとして含む化学増幅型レジスト組成物は、基板密着性に優れたレジスト膜を得ることができ、露光によりラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができるものとなる。
【0013】
また、本発明では、下記一般式(2)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(3)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。
【化2】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを表す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。kは0又は1の整数を示す。)
【化3】

(式中、qは0又は1を表す。rは0〜2の整数を表す。Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Bは単結合、又は、エーテル結合を含んでも良い炭素数1〜10のアルキレン基を示す。aは、a≦5+2r−bを満足する整数である。bは1〜3の整数である。)
【0014】
このように、上記一般式(2)で表される繰り返し単位、及び、分子中に極性を持つことによってポリマーに密着性を与える上記一般式(3)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物を含む化学増幅型レジスト組成物は、基板密着性に優れたレジスト膜を得ることができ、露光によりラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができるものとなる。また、このような高分子化合物は、有機溶剤に対する好ましい溶解性を得ることができるものであり、容易に塗布用組成物とすることが可能である。
【0015】
またこの場合、前記高分子化合物は、酸不安定基により保護され酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位として、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を更に含むものであることが好ましい。
【化4】

(式中、sは0又は1を表す。tは0〜2の整数を表す。R、Rは前述の通りである。Bは単結合、又は、エーテル結合を含んでも良い炭素数1〜10のアルキレン基を示す。cは、c≦5+2t−eを満足する整数である。dは0又は1であり、eは1〜3の整数である。Xはeが1の場合には酸不安定基を、eが2以上の場合には水素又は酸不安定基を表すが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【0016】
このように、酸不安定基により保護され酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位として、上記一般式(4)で表される繰り返し単位を更に含む高分子化合物であれば、特にポジ型レジスト組成物として有用なものとなる。
【0017】
またこの場合、前記高分子化合物は、更に、下記一般式(5)及び/又は(6)で示される繰り返し単位を含むものであることが好ましい。
【化5】

(式中、fは0〜6の整数であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。gは0〜4の整数であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0018】
このように、上記一般式(5)及び(6)のうち少なくとも1以上の繰り返し単位を更に含有することにより、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0019】
また、本発明では、ベースポリマーとして、前記高分子化合物を含むものであることを特徴とする化学増幅型レジスト組成物を提供する。
【0020】
上記本発明の高分子化合物は、有機溶剤に対して良好な溶解性を示すため、化学増幅型レジスト組成物、特にはポジ型化学増幅型レジスト組成物として有用である。また、ベースポリマーとして本発明の高分子化合物を含むものを用いれば、基板密着性に優れたレジスト膜が得られ、また、露光によりラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。
【0021】
また、本発明では、被加工基板上に前記化学増幅型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線をパターン照射する工程、アルカリ性現像液を用いて現像してレジストパターンを得る工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法を提供する。
【0022】
本発明のレジストパターン形成方法を用いれば、基板密着性に優れ、かつラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。
【0023】
この場合、前記高エネルギー線として、EUV又は電子線を用いることが好ましい。本発明の高分子化合物をベースポリマーとして含む化学増幅型レジスト組成物は、特に、レジスト膜が高感度であることが求められる電子線リソグラフィーやEUVリソグラフィーに適している。
【0024】
また、前記被加工基板の最表面は、クロムを含む材料からなるものとすることができる。また、前記被加工基板としてフォトマスクブランクを用いることができる。
【0025】
このように、本発明の化学増幅型レジスト組成物を用いれば、最表面がクロムを含む材料等の化学増幅型レジストのパターン形状に影響を与えやすい表面材料を持つ被加工基板(例えばフォトマスクブランク)を用いた場合であっても、基板密着性に優れたレジスト膜が得られ、露光によりラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスルホニウム塩を繰り返し単位として導入した高分子化合物は、容易に塗布用組成物とすることが可能であり、ベースポリマーとして化学増幅型レジスト組成物に用いた場合、微細加工技術、特に電子線、EUVリソグラフィー技術において、基板密着性が優れ、極めて高い解像性を有し、LERの小さいパターンを与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(3)〜(5)のような芳香環を含む繰り返し単位を主たる構成要素として含有する化学増幅型レジスト用ポリマーに、下記一般式(1)で示される重合性アニオンを有するスルホニウム塩を繰り返し単位(即ち繰り返し単位(2))として導入した場合、ポリマーの有機溶剤に対する好ましい溶解性と共に、パターン形成時にはレジスト膜中での酸拡散が抑制されたことによりLERの小さなパターンが得られ、パターン形成に際してパターン剥がれやパターン崩壊を起こしやすい材料を最表面に持つ被加工基板上でも、安定したパターン形成ができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0028】
即ち、本発明は、下記のスルホニウム塩、及び該スルホニウム塩を繰り返し単位として有する高分子化合物、該高分子化合物をベースポリマーとして含有する化学増幅型レジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
【0029】
以下、本発明について詳細に記述する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがあるが、その場合は一つの式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0030】
本発明では、下記一般式(1)で示される重合性アニオンを有するスルホニウム塩を提供する。
【化6】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを表す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。kは0又は1の整数を示す。)
【0031】
上記一般式(1)中、Bで示されるエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基として、具体的には下記のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【化7】

(式中、破線は結合手を示す。)
【0032】
上記一般式(1)中、Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示すが、具体的には下記のものを例示できる。
【化8】

【0033】
上記式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0034】
具体的には、置換若しくは非置換のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
置換若しくは非置換のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
置換若しくは非置換のオキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。
【0035】
置換若しくは非置換のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。
置換若しくは非置換のアラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。
置換若しくは非置換のアリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。
【0036】
また、R、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して硫黄原子と共に、環状構造を形成する場合には、下記式で示される基が挙げられる。
【化9】

【0037】
上記一般式(1)中のスルホニウムカチオンのより具体的な例としては、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。
より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(1)で示されるスルホニウム塩の好ましい具体例を下記に示す。
【化10】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0039】
【化11】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0040】
【化12】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0041】
【化13】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0042】
上記式(1)で表されるスルホニウム塩(単量体)を得るための方法について、下記スキームに例示するが、これに限定されるものではない。以下、式中で用いられる破線は結合手を示す。
【化14】

(式中、R〜R、X、A、B及びkは上記と同様である。Xはハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基又は下記一般式(15)
【化15】

(式中、R、A及びkは上記と同様である。)
で示される置換基を表す。Mはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び置換若しくは未置換のアンモニウムイオンのいずれかを示す。X3−はハライドイオン又はメチル硫酸イオンを示す。)
【0043】
なお、上記一般式(1)において、kが1の場合には、下記に示す別法を用いて上記反応式中の化合物(9)を得ることができる。
【化16】

(式中、X、R、及びAは上記と同様である。Xはハロゲン原子を示す。Xはハロゲン原子、水酸基又はアルコキシ基を示す。Ma+はリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン又は置換もしくは未置換のアンモニウムイオンを示す。)
【0044】
上記ステップ(i)は、ヒドロキシラクトン(7)とエステル化剤(8)との反応によりエステル(9)に導く工程である。なお、ヒドロキシラクトン(7)の合成法は、特開2000−159758号公報及び、特許第4539865号公報に詳述されている。
【0045】
この反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(8)としては、酸クロリド{式(8)において、Xが塩素原子の場合}、酸無水物{式(8)において、Xが一般式(15)で示される置換基の場合}又はカルボン酸{式(8)において、Xが水酸基の場合}が好ましい。
【0046】
エステル化剤として酸クロリド又は酸無水物を用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中、ヒドロキシラクトン化合物(7)と、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物等の対応する酸クロリド又は酸無水物、及びトリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基とを順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0047】
また、カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシラクトン(7)及びアクリル酸、メタクリル酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0048】
ステップ(ii)は、tert−ブチルエステル(9)のtert−ブチル基をギ酸により脱保護し、カルボン酸(10)を得る工程である。ギ酸を溶媒としてエステル(9)を溶解し、必要に応じ、冷却あるいは加熱しながら攪拌することでカルボン酸(10)を得ることができる。
【0049】
ステップ(iii)は、カルボン酸(10)を対応する酸塩化物(11)に導く工程である。反応は塩化メチレン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の溶媒中、二塩化オキサリルなどの塩素化剤を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
【0050】
ステップ(iv)は酸塩化物(11)とスルホアルコ−ル(12)の求核置換反応により、オニウム塩(13)を得る工程である。反応は常法に従って行うことができ、溶媒中、酸塩化物(11)、スルホアルコール(12)、及び塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却又は加熱して行うのがよい。
反応に用いることができる溶媒として、水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、反応条件により適宜選択して用いればよく、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
また、上記ステップ(iv)で示される反応に用いることができる塩基として、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類等が挙げられる。これらの塩基は、1種単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
ステップ(v)は、オニウム塩(13)とスルホニウム塩(14)とのイオン交換反応により、重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1)を得る工程である。オニウム塩(13)はステップ(iv)の反応を行った後に、通常の水系後処理を経て単離したものを用いても良いし、反応を停止した後に特に後処理をしていないものを用いても良い。
【0052】
単離したオニウム塩(13)を用いる場合は、オニウム塩(13)を水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等に溶解し、スルホニウム塩(14)と混合し、必要に応じ、冷却あるいは加熱することで反応混合物を得ることができる。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)により重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0053】
オニウム塩(13)を合成する反応を停止した後に、特に後処理をしていないものを用いる場合は、オニウム塩(13)の合成反応を停止した混合物に対してスルホニウム塩(14)を加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱することで重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1)を得ることができる。その際、必要に応じて水、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒等を加えてもよい。反応混合物から通常の水系後処理(aqueous work−up)により重合性アニオンを有するスルホニウム塩(1)を得ることができ、必要があれば蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の常法に従って精製することができる。
【0054】
ステップ(vi)及び(vii)は、上記一般式(1)においてkが1のとき、上記反応式中のエステル(19)を得る別法である。
【0055】
ステップ(vi)はヒドロキシラクトン(7)とエステル化剤(16)との反応により、ハロエステル(17)を得る反応である。反応は公知の方法により容易に進行するが、エステル化剤(16)としては、酸クロリド{式(16)においてXが塩素原子の場合}又はカルボン酸{式(16)においてXが水酸基の場合}が特に好ましい。
酸クロリドを用いる場合は、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシラクトン(7)、2−クロロ酢酸クロリド、3−クロロプロピオン酸クロリド等の対応する酸クロリド、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次または同時に加え、必要に応じ冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。
また、カルボン酸を用いる場合は、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、ヒドロキシラクトン(7)と2−クロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸等の対応するカルボン酸を酸触媒の存在下加熱し、必要に応じて生じる水を系外に除くなどして行うのがよい。
用いる酸触媒としては例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などの無機酸類、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)によりハロエステル(17)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0056】
ステップ(vii)はハロエステル(17)とカルボン酸塩化合物(18)との反応によりエステル(19)に導く反応である。
【0057】
ステップ(vii)における反応は、常法に従って行うことができる。カルボン酸塩化合物(18)としては、各種カルボン酸金属塩などの市販のカルボン酸塩化合物をそのまま用いてもよいし、メタクリル酸、アクリル酸等の対応するカルボン酸と塩基より反応系内でカルボン酸塩化合物を調製して用いてもよい。カルボン酸塩化合物(18)の使用量は、原料であるハロエステル(17)1モルに対し0.5〜10モル、特に1.0〜3.0モルとすることが好ましい。0.5モル未満の使用では原料が大量に残存するため収率が大幅に低下する場合があり、10モルを超える使用では使用原料費の増加、釜収率の低下などによりコスト面で不利となる場合がある。対応するカルボン酸と塩基より反応系内でカルボン酸塩化合物を調製する場合に用いることができる塩基としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化物類;炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩類;ナトリウムなどの金属類;水素化ナトリウムなどの金属水素化物;ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシドなどの金属アルコキシド類;ブチルリチウム、臭化エチルマグネシウム等の有機金属類;リチウムジイソプロピルアミド等の金属アミド類から選択して単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。塩基の使用量は、対応するカルボン酸1モルに対し0.2〜10モル、特に0.5〜2.0モルとすることが好ましい。0.2モル未満の使用では大量のカルボン酸が無駄になるためコスト面で不利になる場合があり、10モルを超える使用では副反応の増加により収率が大幅に低下する場合がある。反応時間はガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常0.5〜24時間程度である。反応混合物から通常の水系処理(aqueous work−up)によりエステル(19)を得ることができ、必要があれば蒸留、クロマトグラフィー、再結晶などの常法に従って精製することができる。
【0058】
本発明の上記一般式(1)で示すスルホニウム塩は、フッ素置換されていないスルホン酸のスルホニウム塩構造を有しており、かつラクトン構造を有している。そのため、化学増幅レジスト材料のベースポリマーの繰り返し単位として導入した場合、高エネルギー線照射により適度な強度の酸を発生させ、かつ、発生酸の移動、拡散を適度に制御することが可能であり、また、レジスト膜の高い基板密着性を付与することが期待できる。なお、このスルホニウム塩(単量体)は十分な脂溶性をもつ事から、その製造、取り扱いは容易である。
【0059】
なお、本発明の上記一般式(1)で示される重合性アニオンを有するスルホニウム塩の合成方法と同様な手法により、重合性アニオンを有するヨードニウム塩、アンモニウム塩等を合成することが可能であり、このようなオニウム塩は後述する本発明の高分子化合物や他のポリマーに導入し、化学増幅型レジスト組成物に適用することもできる。
【0060】
より具体的なヨードニウムカチオンとして、例えばジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニル)フェニルヨードニウムなどが挙げられ、アンモニウム塩としては例えばトリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウムなどの3級アンモニウム塩や、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩などが挙げられる。このような重合性アニオンを有するヨードニウム塩及びこれを繰り返し単位として有するポリマーは、光酸発生効果や熱酸発生効果を有するものとして用いることができ、重合性アニオンを有するアンモニウム塩及びこれを繰り返し単位として有するポリマーは熱酸発生剤として用いることができる。
【0061】
本発明では、レジスト組成物の調製に使用することができる高分子化合物として、上述した酸を発生するスルホニウム塩(単量体)を由来とする下記一般式(2)表される繰り返し単位、及び、分子中に極性を持つことによってポリマーに基板に対する密着性を与える単位である下記一般式(3)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。
【化17】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを表す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。kは0又は1の整数を示す。)
【化18】

(式中、qは0又は1を表す。rは0〜2の整数を表す。Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Bは単結合、又は、エーテル結合を含んでも良い炭素数1〜10のアルキレン基を示す。aは、a≦5+2r−bを満足する整数である。bは1〜3の整数である。)
尚、aは、a≦5+2r−bを満足する整数であり、Rの全てが水素原子の場合、a=5+2r−bとなり、Rの全てが炭素数1〜6のアルキル基の場合、0〜3の整数である。
【0062】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に示す。
【化19】

(式中、Rは上記と同様である。)
【化20】

(式中、Rは上記と同様である。)
【化21】

(式中、Rは上記と同様である。)
【化22】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0063】
本発明の高分子化合物は、露光により酸を発生する繰り返し単位として、ラクトン骨格を有していることにより、溶解に対する良好な溶解性を示すと共に、基板に対する密着性を損なわない。
【0064】
本発明の高分子化合物は、更に、分子中に極性を持つことによって高分子化合物に基板に対する密着性を与える単位として、上記一般式(3)で示される繰り返し単位が含有される。このような高分子化合物は、特にEB用やEUV用のレジスト組成物を調製するために有効である。
【0065】
上記一般式(3)で示される繰り返し単位のうち、リンカー(−CO−O−B−)のない繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン単位等に代表される水酸基が置換された芳香環に1位置換若しくは非置換のビニル基が結合されたモノマーに由来する単位であるが、好ましい具体例としては、3−ヒドロキシスチレン、4−ヒドロキシスチレンや、5−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン若しくは6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン等に由来する単位を挙げることができる。
【0066】
リンカー(−CO−O−B−)を有する場合の繰り返し単位は、(メタ)アクリル酸エステルに代表される、カルボニル基が置換したビニルモノマーに由来する単位である。
【0067】
リンカー(−CO−O−B−)を有する場合の上記一般式(3)で示される繰り返し単位の具体例を以下に示す。
【化23】

【0068】
上述の一般式(3)で示される、高分子化合物に密着性を与える単位は、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよく、本発明の高分子化合物の全繰り返し単位に対し30〜80モル%の範囲で導入される。但し、後述の本発明で使用するポリマーにより高いエッチング耐性を与える単位である一般式(5)及び/又は(6)を使用し、その単位が置換基としてフェノール性水酸基を有する場合には、その比率も加えて上記範囲内とされる。
【0069】
また、本発明の高分子化合物は、ポジ型レジストとして露光部がアルカリ性水溶液に溶解する特性を与えるため、酸不安定基により保護された酸性官能基を有する単位(酸不安定基により保護され酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位)が含まれることが好ましい。本発明の高分子化合物に含むことができる、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位の最も好ましいものとして、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化24】

(式中、sは0又は1を表す。tは0〜2の整数を表す。R、Rは前述の通りである。Bは単結合、又は、エーテル結合を含んでも良い炭素数1〜10のアルキレン基を示す。cは、c≦5+2t−eを満足する整数である。dは0又は1であり、eは1〜3の整数である。Xはeが1の場合には酸不安定基を、eが2以上の場合には水素又は酸不安定基を表すが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
尚、cは、c≦5+2t−eを満足する整数であり、Rの全てが水素原子の場合、c=5+2t−eとなり、Rの全てが炭素数1〜6のアルキル基の場合、0〜3の整数である。
【0070】
上記一般式(4)は、上記一般式(3)で示される単位の芳香環に置換したフェノール性水酸基の少なくとも1つを酸不安定基で保護したもの、あるいは、フェノール性水酸基がカルボキシル基に置換され、カルボン酸が酸不安定基で保護されたものであり、酸不安定基としては、既に公知の多数の化学増幅型レジスト材料で用いられてきた、酸によって脱離して酸性基を与えるものを、基本的にはいずれも使用することができる。
【0071】
上記のフェノール性水酸基、カルボキシル基のいずれの場合にも、特に酸不安定基の選択として、3級アルキル基による保護は、レジスト膜厚を10〜100nmといった薄膜で、例えば45nm以下の線幅を持つような微細パターンを形成した場合にも、エッジラフネス(パターンの端部が不整形状になる現象)が小さなパターンを与えるため好ましい。更に、その際使用される3級アルキル基としては、得られた重合用のモノマーを蒸留によって得るために、炭素数4〜18のものであることが好ましい。また、該3級アルキル基の3級炭素が有するアルキル置換基としては、炭素数1〜15の、一部エーテル結合やカルボニル基のような酸素含有官能基を含んでいてもよい、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を挙げることができ、3級炭素の置換アルキル基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0072】
好ましいアルキル置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、7−オキサノルボルナン−2−イル基、シクロペンチル基、2−テトラヒドロフリル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、3−オキソ−1−シクロヘキシル基を挙げることができ、また、3級アルキル基として具体的には、t−ブチル基、t−ペンチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−アダマンチル−1−メチルエチル基、1−メチル−1−(2−ノルボルニル)エチル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、1−メチル−1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)エチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−プロピルシクロペンチル基、1−シクロペンチルシクロペンチル基、1−シクロヘキシルシクロペンチル基、1−(2−テトラヒドロフリル)シクロペンチル基、1−(7−オキサノルボルナン−2−イル)シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−シクロペンチルシクロヘキシル基、1−シクロヘキシルシクロヘキシル基、2−メチル−2−ノルボニル基、2−エチル−2−ノルボニル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、3−メチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、3−エチル−3−テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]ドデシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−3−オキソ−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−(テトラヒドロフラン−2−イル)エチル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−2−アダマンチル基、5−ヒドロキシ−2−エチル−2−アダマンチル基を例示できるが、これらに限定されない。
【0073】
また、下記一般式(20)
【化25】

(式中、Rは水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を表し、Yは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
で示されるアセタール基は酸不安定基としてよく利用され、比較的パターンと基板の界面が矩形であるパターンを安定して与える酸不安定基として有用な選択肢である。特に、より高い解像性を得るためには炭素数7〜30の多環式アルキル基が含まれることが好ましい。またYが多環式アルキル基を含む場合、該多環式環構造を構成する2級炭素とアセタール酸素との間で結合を形成していることが好ましい。なぜなら、環構造の3級炭素上で結合している場合、ポリマーが不安定な化合物となり、レジスト材料として保存安定性に欠け、解像力も劣化することがあるためである。逆にYが炭素数1以上の直鎖状のアルキル基を介在した1級炭素上で結合した場合、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が低下し、現像後のレジストパターンがベークにより形状不良を起こすことがある。
【0074】
なお、式(20)の具体例としては、下記のものを例示することができる。
【化26】

(式中、Rは上記と同様である。)
【0075】
なお、Rは水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であるが、酸に対する分解性基の感度の設計に応じて適宜選択される。例えば比較的高い安定性を確保した上で強い酸で分解するという設計であれば水素原子が選択され、比較的高い反応性を用いてpH変化に対して高感度化という設計であれば直鎖状のアルキル基が選択される。レジスト材料に配合する酸発生剤や塩基性化合物との組み合わせにもよるが、上述のような末端に比較的大きなアルキル基が置換され、分解による溶解性変化が大きく設計されている場合には、Rとしてアセタール炭素との結合を持つ炭素が2級炭素であるものが好ましい。2級炭素によってアセタール炭素と結合するRの例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等を挙げることができる。
【0076】
その他の酸不安定基の選択としては、フェノール性水酸基に、(−CHCOO−3級アルキル基)を結合させるという選択を行うこともできる。この場合に使用する3級アルキル基は、上述のフェノール性水酸基の保護に用いる3級アルキル基と同じものを使用することができる。
【0077】
上述の一般式(4)で示され、酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位は、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよく、高分子化合物の全繰り返し単位に対し、5〜45モル%の範囲で導入されることが好ましい。
【0078】
また、本発明の高分子化合物は、更に、ポリマーの主要構成単位として、下記一般式(5)及び/又は(6)で示される繰り返し単位を含むものとすることができる。
【化27】

(式中、fは0〜6の整数であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。gは0〜4の整数であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0079】
これらの繰り返し単位(上記一般式(5)及び一般式(6)で示される繰り返し単位のうち少なくとも1以上)を構成成分として使用した場合には、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチングやパターン検査の際の電子線照射耐性を高めるという効果を得ることができる。
【0080】
上記一般式(5)及び一般式(6)で示される、主鎖に環構造を与え、エッチング耐性を向上させる単位は、1種のみでも、複数種を組み合わせて使用してもよく、エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには高分子化合物を構成する全モノマー単位に対して5モル%以上の導入が好ましい。また、一般式(5)や(6)で示される単位が、一般式(5)や(6)が有する官能基の作用によって、極性を持ち基板への密着性を与える単位であるか、置換基が上述の酸不安定基により保護され、酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位である場合の導入量は、上述のそれぞれの好ましい範囲に合算され、官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合には、30モル%以下であることが好ましい。官能基を持たない場合や、官能基がそのいずれでもない場合の導入量が30モル%以下であれば、現像欠陥が発生する恐れがないために好ましい。
【0081】
本発明の高分子化合物を化学増幅型レジスト組成物のベースポリマーとして使用する場合、上記高分子化合物は、好ましくは、露光により酸を発生する繰り返し単位として上記一般式(2)の繰り返し単位が高分子化合物中の全モノマー単位に対して好ましくは0.1〜15モル%、より好ましくは1〜10モル%である。一般式(2)の繰り返し単位が0.1%以上であれば、基板への密着性が損なわれたり、露光により発生する酸が少なすぎることによりパターンが得られない恐れがないために好ましい。また、一般式(2)の繰り返し単位が15%以下であれば、ポリマーの溶剤溶解性が低下してレジスト組成物を調製できない恐れがないために好ましい。
【0082】
また、本発明の化学増幅型レジスト組成物に使用される上記高分子化合物は、好ましくは、主要構成単位として上記一般式(2)及び(3)、更に導入可能な(4)〜(6)の単位が高分子化合物を構成する全モノマー単位の60モル%以上を占めることによって本発明の化学増幅型レジスト組成物の特性が確実に得られ、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは85モル%以上である。
また、全構成単位が(2)〜(6)より選ばれた繰り返し単位である高分子化合物である場合は、高いエッチング耐性と解像性の両立に優れる。(2)〜(6)以外の繰り返し単位としては、特許文献2にも示されたような、常用される酸不安定基で保護された(メタ)アクリル酸エステル単位や、ラクトン構造等の密着性基を持つ(メタ)アクリル酸エステル単位を使用してもよい。これらのその他の繰り返し単位によってレジスト膜の特性の微調整を行ってもよいが、これらの単位を含まなくてもよい。
【0083】
本発明の高分子化合物は、公知の方法によって、それぞれの単量体を必要に応じて保護、脱保護反応を組み合わせ、共重合を行って得ることができる。共重合反応は特に限定されるものではないが、好ましくはラジカル重合、アニオン重合である。これらの方法については国際公開第2006/121096号パンフレット、特開2008−102383号公報、特開2008−304590号公報、特開2004−115630号公報を参考にすることができる。
【0084】
上記の化学増幅型レジスト組成物に使用されるベースポリマーとしての上記高分子化合物の好ましい分子量は、一般的な方法としてポリスチレンを標準サンプルとしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー:GPCによって測定した場合、重量平均分子量が2,000〜50,000であることが好ましく、更に好ましくは3,000〜20,000である。重量平均分子量が2,000以上であれば、従来知られているように、パターンの頭が丸くなって解像力が低下すると共に、ラインエッジラフネスが劣化するといった現象が生じる恐れがない。一方、分子量が必要以上に大きくなった場合、解像するパターンにもよるが、ラインエッジラフネスが増大する傾向を示すため、50,000以下、特にパターン線幅が100nm以下のパターンを形成する場合には、分子量を20,000以下に制御することが好ましい。
【0085】
GPC測定に一般的に用いられるのはテトラヒドロフラン(THF)溶媒であるが、本発明においてはTHFに溶解しない場合もあり、そのときはジメチルホルムアミド(DMF)に100mM(mol/l)以下の臭化リチウムを添加した溶媒で測定することができる。
【0086】
更に、上記本発明の化学増幅型レジスト組成物に用いる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.0、特に1.0〜1.8と狭分散であることが好ましい。このように狭分散の場合には、現像後、パターン上に異物が生じたり、パターンの形状が悪化することがない。
【0087】
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、後述の溶剤を加えることによって基本的なレジスト性能が得られるが、必要に応じ、塩基性化合物、酸発生剤、その他のポリマー、界面活性剤等を加えることもできる。
【0088】
塩基性化合物は、発生酸単位がポリマーに結合されていない化学増幅型レジスト材料では事実上必須構成成分であるが、本発明のレジスト組成物においても、高解像性を得るため、あるいは適正感度に調整を行うために、塩基性化合物を添加することが好ましい。その添加量は、上記ポリマー100質量部に対し、0.01〜5質量部、特に0.05〜3質量部が好ましい。また、用いることができる塩基性化合物は多数が知られており(特許文献1、特許文献2、特開2000−159758号公報、特開2007−182488号公報、国際公開第2006/121096号パンフレット)、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等が知られている。これらの具体例は特許文献2に多数例示されているが、基本的にはこれらの全てを使用することができ、また2つ以上の塩基性化合物を選択し、混合して使用することもできる。
【0089】
特に好ましく配合される塩基性化合物としては、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン−N−オキサイド、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体などが挙げられる。
【0090】
また、パターン形成時に、ポジ型のパターンが基板界面で溶解しにくくなる現象、いわゆる裾引き形状になり易い基板上、これはクロム系化合物による表面を持つ基板もそうであるが、このような基板上でパターンを形成する場合、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物(アミン及びアミンオキシドの窒素原子が芳香環の環構造に含まれるものを除く)を用いると、パターン形状の改善を図ることができる。
【0091】
上述のカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物は、下記一般式(21)〜(23)で示される少なくともカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物が好ましいが、これに限られるものではない。
【化28】

(式中、R11、R12はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基のいずれかである。またR11とR12が結合してこれらが結合する窒素原子と共に環構造を形成してもよい。R13は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数2〜11のアシルオキシアルキル基、炭素数1〜11のアルキルチオアルキル基、又はハロゲン基のいずれかである。R14は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。R15は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、但し、アルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R16は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又は炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【0092】
上記の炭素数6〜20のアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ナフタセニル基、フルオレニル基を、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカヒドロナフタレニル基を、炭素数7〜20のアラルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラセニルメチル基を、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基としては具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基を、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基として具体的には、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、プロポキシメチル基、2−プロポキシエチル基、ブトキシメチル基、2−ブトキシエチル基、アミロキシメチル基、2−アミロキシエチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、2−シクロヘキシルオキシエチル基、シクロペンチルオキシメチル基、2−シクロペンチルオキシエチル基及びそのアルキル部の異性体を、炭素数2〜11のアシルオキシアルキル基として具体的には、ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ブチリルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基を、炭素数1〜11のアルキルチオアルキル基として具体的には、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、イソプロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、イソブチルチオメチル基、t−ブチルチオメチル基、t−アミルチオメチル基、デシルチオメチル基、シクロヘキシルチオメチル基を、それぞれ例示できるが、これらに限定されない。
【0093】
一般式(21)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミン化合物を以下に具体的に例示するが、これらに限定されない。
【0094】
即ち、o−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、m−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジプロピルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジペンチルアミノ安息香酸、p−ジヘキシルアミノ安息香酸、p−ジエタノールアミノ安息香酸、p−ジイソプロパノールアミノ安息香酸、p−ジメタノールアミノ安息香酸、2−メチル−4−ジエチルアミノ安息香酸、2−メトキシ−4−ジエチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ−2−ナフタレン酸、3−ジエチルアミノ−2−ナフタレン酸、2−ジメチルアミノ−5−ブロモ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−クロロ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヨード安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、4−ジメチルアミノフェニル酢酸、4−ジメチルアミノフェニルプロピオン酸、4−ジメチルアミノフェニル酪酸、4−ジメチルアミノフェニルリンゴ酸、4−ジメチルアミノフェニルピルビン酸、4−ジメチルアミノフェニル乳酸、2−(4−ジメチルアミノフェニル)安息香酸、2−(4−(ジブチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸等が挙げられる。
【0095】
一般式(22)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミンオキシド化合物は上記の具体的に例示されたアミン化合物を酸化したものであるが、これらに限定されない。
【0096】
一般式(23)で示されるカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素に共有結合する水素原子を含有しないアミン化合物を以下に具体的に例示するが、これらに限定されない。
【0097】
即ち、1−ピペリジンプロピオン酸、1−ピペリジン酪酸、1−ピペリジンリンゴ酸、1−ピペリジンピルビン酸、1−ピペリジン乳酸等が挙げられる。
【0098】
一般式(22)で示されるアミンオキシド化合物は、特開2008−102383号公報で開示された方法により容易に合成することが可能である。また、アミンオキシド化合物の具体例についても上記の特開2008−102383号公報に詳述されている。
【0099】
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、使用するポリマー(高分子化合物)の持つ上述の一般式(2)で示される繰り返し単位により、高エネルギー線が照射された際に酸が発生し、かつ発生した酸はポリマーに結合されることで拡散が制御されるという特性があるため、基本的にはその他の酸発生剤を加える必要はない。しかし、補助的に感度を上げたい場合や、ラフネスの改善等を目的として、その他の酸発生剤を少量添加してもよい。但し、過剰な添加を行った場合には本発明のポリマーに結合された酸発生剤を用いることによる効果が失われる可能性があるため、その他の酸発生剤の添加量は、組成物中の上記ポリマーに繰り返し単位として含まれる上記一般式(2)の構造に基づくモル当量を超えないことが好ましく、より好ましくは上記一般式(2)の構造に基づくモル当量の2分の1以下である。
【0100】
上記本発明の高分子化合物とは別に添加するその他の酸発生剤は、調製を行いたいレジスト組成物の物性に応じて適宜公知の酸発生剤(国際公開第2006/121096号パンフレット、特開2008−102383号公報、特開2008−304590号公報、特開2004−115630号公報にも多くの例が挙げられている)を参考にして選択される。
その配合量は、上記高分子化合物100質量部に対し、15質量部以上の添加は本発明のポリマーに結合された酸発生剤による効果を損なうため、15質量部未満、より好ましくは10質量部以下が好ましい。特に、分子量の小さなスルホン酸、例えば炭素数が6以下のスルホン酸を発生する酸発生剤の場合には、5質量部以下とすることが好ましい。
【0101】
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、上述の一般式(2)及び一般式(3)で示される単位を含有し、好ましくは更に(4)〜(6)から選ばれる単位を含有する高分子化合物を単一種又は複数種混合して用いることができる他に、上記一般式(2)の単位とは異なる構造を有する酸発生能のある単位を持つポリマーや、上記一般式(2)のような酸発生単位を持たないが、酸によってアルカリ可溶性に変化するポリマー、あるいは酸との反応とは無関係にアルカリ可溶性であるポリマーを含有させてもよい。特許文献2にも開示されている通り、その他の樹脂の例として、i)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ii)ノルボルネン誘導体−無水マレイン酸の共重合体、iii)開環メタセシス重合体の水素添加物、iv)ビニルエーテル−無水マレイン酸−(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、v)ポリヒドロキシスチレン誘導体などを挙げることができるが、これらは実際には公知の化学増幅ポジ型レジスト用ポリマーであり、上記酸によってアルカリ可溶性に変化するポリマーである。また、パターン形状等の改善や、現像時残渣の発生を制御するため、アルカリ可溶性ポリマーを添加してもよいが、このような目的に使用するポリマーとしては、既に多数公知の化学増幅ネガ型レジスト材料に使用するポリマーを挙げることができる。更に、特開2008−304590号公報に開示されているようなフッ素を含有するポリマーを添加することもできる。
【0102】
本発明の高分子化合物と、その他のポリマーとを混合して使用する場合の配合比率は、本発明の高分子化合物の配合比は30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。本発明の高分子化合物の配合比が30質量%以上であると、現像時に欠陥が発生する恐れがないために好ましい。しかし、配合時に、配合されるポリマーの全繰り返し単位中の芳香環骨格を有する単位の割合が60モル%以下にならないよう配合されることが好ましい。なお、上記その他のポリマーは1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種のポリマーを用いることにより、化学増幅型レジスト組成物の性能を調整することができる。
【0103】
本発明の化学増幅型レジスト組成物には、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を用いる場合、国際公開第2006/121096号パンフレット、特開2008−102383号公報、特開2008−304590号公報、特開2004−115630号公報、特開2005−8766号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。
【0104】
なお、界面活性剤の添加量としては、化学増幅型レジスト組成物中のベースポリマー100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下であり、0.01質量部以上とすることが好ましい。
【0105】
本発明の化学増幅型レジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。一般論としては、集積回路製造用の基板(Si、SiO、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi等)等の被加工基板上にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05〜2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜140℃、1〜5分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0106】
次いで目的のパターンを形成するためのマスクを用い、あるいはビーム露光により、遠紫外線、エキシマレーザー、X線、電子線等の高エネルギー線又を露光量1〜200mJ/cm、好ましくは10〜100mJ/cmとなるようにパターン照射する。尚、本発明の化学増幅型レジスト組成物はEUV又は電子線によるパターン照射の場合に、特に有効である。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジストの間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0107】
次いで、ホットプレート上で、60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜140℃、1〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0108】
なお、本発明のレジスト組成物は、特に高いエッチング耐性を持ち、かつ露光後、露光後加熱までの時間が延長された場合にもパターン線幅の変化が小さいことが要求される条件で使用される際に有用である。また、被加工基板として、レジストパターンの密着性が取り難いことからパターン剥がれやパターン崩壊を起こし易い材料を表面に持つ基板への適用に特に有用であり、金属クロムや酸素、窒素、炭素の1以上の軽元素を含有するクロム化合物をスパッタリング成膜した基板上、特にはフォトマスクブランク上でのパターン形成に有用である。
【実施例】
【0109】
以下、合成実施例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、共重合組成比はモル比であり、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0110】
(合成実施例1)
本発明の重合性アニオンを有するスルホニウム塩PM−1〜PM−6を以下に示す処方で合成した。なお、合成した本発明のスルホニウム塩(PM−1〜PM−6)の構造、及び比較例で使用するPM−7のスルホニウム塩の構造は、後述の表2に示した。
【化29】

【0111】
(合成実施例1−1) PM−1の合成
(合成実施例1−1−1)
メタクリル酸7−ターシャリーブトキシカルボニル−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル(25)の合成
6−ヒドロキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸ターシャリーブチル(24)226.8g及びトリエチルアミン135.2gをアセトニトリル900mlに溶解した。20℃以下にて、メタクリル酸クロリド121.1gを滴下した。室温で3時間撹拌した後、水を300gを加え、通常の後処理操作を行った。酢酸エチルより再結晶を行い、目的物202.2gを得た(収率70%)。
【0112】
(合成実施例1−1−2)
6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸(26)の合成
(合成実施例1−1−1)で得たメタクリル酸エステル(25)202.2gをギ酸810gに溶解し、25℃にて16時間撹拌した。ギ酸を減圧下で留去し酢酸エチルから再結晶を行い、目的物135.1gを得た(収率81%)。
【0113】
(合成実施例1−1−3)
メタクリル酸7−クロロカルボニル−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−6−イル(27)の合成
(合成実施例1−1−2)で得たカルボン酸(26)18.0gをトルエン135mlに懸濁させ、80℃で二塩化オキサリル10.3gを滴下した。4時間撹拌した後、トルエンを減圧下で留去し、目的物を得た。得られた酸塩化物はこれ以上の精製はせずに、次の反応に用いた。
【0114】
(合成実施例1−1−4)
2’−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PM−1)の合成
CHCN40gとHO36gの混合溶媒に2−ヒドロキシエタンスルホン酸ナトリウム(28)16.8g、トリエチルアミン8.2g、4−ジメチルアミノピリジン0.042gを溶解し、(合成実施例1−1−3)で得た酸塩化物(27)をCHCN40gに溶かした溶液を20℃以下で滴下しオニウム塩(29)を得た。25℃で2時間撹拌した後、CHCl40g、トリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液166gを加え、30分撹拌した。有機層を分液後、水層をCHClで抽出し、あわせた有機層をHOで3回洗浄した。溶媒を減圧下で留去し、目的物(PM−1)を22.0g得た(3段階収率51%)。
【0115】
(合成実施例1−2) PM−2の合成
THF300g、HO250g、4−フェノールスルホン酸ナトリウム58.8g、25%水酸化ナトリウム水溶液48.0gを溶解し、25℃で(合成実施例1−1−3)で得られた酸塩化物(27)79.9gのTHF溶液を滴下した。25℃で2時間撹拌した後、CHCl500g、トリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液742gを加え、30分撹拌した。有機層を分液後、水層をCHClで抽出し、あわせた有機層をHOで3回洗浄した。溶媒を減圧下で留去し、目的物(PM−2)を119.2g得た(3段階収率58%)。
【0116】
(合成実施例1−3) PM−3の合成
(合成実施例1−1)中の(合成実施例1−1−1)で、6−ヒドロキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸ターシャリーブチル(24)の代わりに6−ヒドロキシ−2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸ターシャリーブチル38.5gを用いた以外は、(合成実施例1−1)と同様の手順で合成を行い、2’−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PM−3)を34.5g得た(5段階収率36%)。
【0117】
(合成実施例1−4) PM−4の合成
(合成実施例1−1)中の(合成実施例1−1−1)で6−ヒドロキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸ターシャリーブチル(24)の代わりに6−ヒドロキシ−2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボン酸ターシャリーブチル29.9gを用い、(合成実施例1−1−3)まで同様に合成を行い酸塩化物を合成した。これを用いて(合成実施例1−2)と同様の手順で合成を行い、4−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソ−4−オキサヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)ベンゼンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PM−4)を32.9g得た(5段階収率41%)。
【0118】
(合成実施例1−5) PM−5の合成
(合成実施例1−2)で、トリフェニルスルホニウムクロリドの水溶液の代わりに、10−フェニルフェノキサチイニウムヨージドを用いた以外は、(合成実施例1−2)と同様の手順で合成を行い、4’−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)ベンゼンスルホン酸10−フェニルフェノキサチイニウム(PM−5)を31.0g得た(3段階収率57%)。
【0119】
(合成実施例1−6) PM−6の合成
(合成実施例1−5)で、10−フェニルフェノキサチイニウムヨージドの代わりに、9−フェニルジベンゾチオフェニウムクロリドの水溶液を用いた以外は、(合成実施例1−5)と同様の手順で合成を行い、4’−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)ベンゼンスルホン酸9−フェニルジベンゾチオフェニウム(PM−6)を32.0g得た3段階収率56%)。
【0120】
(合成実施例2)
本発明の高分子化合物を以下の処方で合成した。合成した各ポリマーの組成比は表1に、繰り返し単位の構造は、表2〜表5に示した。
【0121】
(ポリマー合成例2−1) ポリマー1の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに168.8gの4−(1−エトキシエトキシスチレン)、15.3gのアセナフチレン、16.0gの2’−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PM−1)、19.4gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)=V−601、303gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、106gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま20時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液にメタノール100g、シュウ酸1.2gを加えて40℃で5時間撹拌し、脱保護反応を行った。トリエチルアミンにて中和処理した後に、反応液を濃縮し、アセトン400gに再度溶解後、2000gのHOに滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をHO400gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマーを得た。得られたポリマーに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル31.8gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、下記に示すポリマー1を得た。収量は118gであった。
【0122】
【化30】

【0123】
(ポリマー合成例2−2) ポリマー2の合成
ポリマー合成例2−1における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、2−メチル−1−プロペニル)−8−(トリシクロ[5,2,1,02,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−1と同様の手順で合成を行い、ポリマー2を得た。
【0124】
(ポリマー合成例2−3) ポリマー3の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに166.7gの4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、16.3gのアセナフチレン、17.0gの2’−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PM−1)、20.7gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)=V−601、303gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、106gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、4000gのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン200gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマーを得た。得られたポリマーに(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテル33.8gを酸性条件下反応させて、中和、分液処理、晶出工程を経て、ポリマー3を得た。収量は183gであった。
【0125】
(ポリマー合成例2−4) ポリマー4の合成
ポリマー合成例2−3における(2−メチル−1−プロペニル)メチルエーテルを、2−メチル−1−プロペニル)−8−(トリシクロ[5,2,1,02,6]デカニルエーテルに代えた以外はポリマー合成例2−3と同様の手順で合成を行い、ポリマー4を得た。
【0126】
(ポリマー合成例2−5〜28、比較合成例2−1〜4)ポリマー5〜28、比較ポリマー1〜4の合成
ヒドロキシスチレンユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−1又は2−2と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。また、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートユニットを含むポリマーの場合は、各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−3又は2−4と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。
【0127】
(ポリマー合成例2−29)ポリマー29の合成
窒素雰囲気とした滴下用シリンダーに44.2gの4−ヒドロキシフェニルメタクリレート、48.3gのメタクリル酸5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−2−イル、16.0gのメタクリル酸1−メトキシ−2−メチル−1−プロピル、41.5gの2‘−(6−メタクリロイルオキシ−2−オキソヘキサヒドロ−3,5−メタノ−2H−シクロペンタ[b]フラン−7−カルボニルオキシ)エタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム(PM−1)、11.1gのジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)=V−601、209gのメチルエチルケトンをとり、単量体溶液を調製した。窒素雰囲気とした別の重合用フラスコに、69.6gのメチルエチルケトンをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、上記単量体溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま4時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、4000gのヘキサン/ジイソプロピルエーテル溶液に滴下し、析出した共重合体を濾別した。共重合体をヘキサン200gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末固体状のポリマーを得た。
【0128】
(ポリマー合成例2−30、比較合成例2−5)ポリマー30、比較ポリマー5の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、ポリマー合成例2−29と同様の手順により、表1に示した樹脂を製造した。
表1中、各単位の構造を表2〜5に示す。なお、下記表1において、導入比はモル比を示す。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
【表3】

【0132】
【表4】

【0133】
【表5】

【0134】
ポジ型レジスト材料の調製
上記で合成したポリマー(ポリマー1〜30、比較ポリマー1〜5)、塩基性化合物(下記式で示されるBase−1)を表6に示す組成で有機溶剤中に溶解してレジスト材料を調合し、更に各組成物を0.2μmサイズのフィルターもしくは0.02μmサイズのナイロン又はUPEフィルターで濾過することにより、ポジ型レジスト材料の溶液をそれぞれ調製した。
【化31】

【0135】
表6中の有機溶剤は、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EL(乳酸エチル)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、CyH(シクロヘキサノン)である。また、各組成物には、界面活性剤としてPF−636(OMNOVA SOLUTIONS製)を0.075質量部添加した。
【0136】
【表6】

【0137】
電子ビーム描画評価(実施例1〜28、比較例1〜4)
上記調製したポジ型レジスト材料(実施例1〜28、比較例1〜4)をACT−M(東京エレクトロン(株)製)152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるマスクブランク上にスピンコーティングし、ホットプレート上で100℃で600秒間プリベークして60nmのレジスト膜を作製した。得られたレジスト膜の膜厚測定は、光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81箇所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0138】
更に、電子線露光装置((株)ニューフレアテクノロジー製、EBM−5000plus、加速電圧50keV)を用いて露光し、100℃で600秒間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で現像を行うと、ポジ型のパターンを得ることができた。更に得られたレジストパターンを次のように評価した。
【0139】
作製したパターン付きマスクブランクを上空SEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、200nmの1:1のラインアンドスペースを1:1で解像する露光量を最適露光量(μC/cm)とし、200nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における最小寸法を解像度(限界解像性)とし、100nmLSのエッジラフネスをSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。密着性に関しては、上空SEMにて上空観察を行ったときに、目視にて剥がれを判定した。EB描画における本発明のレジスト材料及び比較用のレジスト材料の評価結果を表7に示す。
【0140】
【表7】

【0141】
EUV露光評価(実施例29〜30、比較例5)
上記調製したポジ型レジスト材料(実施例29〜30、比較例5)をヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理した直径4インチのSi基板上にスピンコートし、ホットプレート上で105℃で60秒間プリベークして50nmのレジスト膜を作製した。これに、NA0.3、ダイポール照明でEUV露光を行った。
【0142】
露光後直ちにホットプレート上で60秒間ポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行い2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
【0143】
得られたレジストパターンを次のように評価した。35nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力(限界解像性)とし、35nmLSのエッジラフネス(LER)をSEMで測定した。パターン形状については、矩形か否かを目視にて判定した。密着性に関しては、上空SEMにて上空観察を行ったときに、目視にて剥がれを判定した。EUV描画における本発明のレジスト材料及び比較用のレジスト材料の評価結果を表8に示す。
【0144】
【表8】

【0145】
上記表7、8の結果を説明する。上記一般式(2)及び(3)で示される単位を有するポリマーを用いたレジスト組成物(実施例1〜28、あるいは、実施例29、30)は、いずれも良好な解像性を示し、ラインエッジラフネスも良好な値を示した。パターン形状も矩形を示し、基板への密着性も良好であった。一方、比較例1〜4、あるいは、比較例5の、露光時にフッ素化アルカンスルホン酸を発生させる繰り返し単位を有するポリマーを用いたレジスト組成物は、パターン形状が悪化し、パターンが基板から剥がれてしまう現象も確認された。また、これらの現象に伴い、解像性とラインエッジラフネスは実施例と比べて悪い結果となった。これらは、フッ素化アルカンスルホン酸を発生させる繰り返し単位中に含まれるフッ素原子が撥水性を有するために、基板への密着性を低下させてしまったことが原因と考えられる。
【0146】
以上説明したことから明らかなように、本発明のレジスト組成物を用いれば、基板密着性に優れたレジスト膜が得られ、また、露光によりラインエッジラフネスが小さいパターンを形成することができる。これを用いたパターン形成方法は半導体素子製造、特にフォトマスクブランクスの加工におけるフォトリソグラフィーに有用である。
【0147】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスルホニウム塩。
【化1】

(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを表す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。kは0又は1の整数を示す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(3)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化2】


(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、及びオキソアルキル基のいずれか、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基、及びアリールオキソアルキル基のいずれかを示すか、あるいはR、R及びRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。XはO又はCHを表す。Aは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基を示す。Bはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数6〜18のアリーレン基を表す。kは0又は1の整数を示す。)
【化3】

(式中、qは0又は1を表す。rは0〜2の整数を表す。Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかを表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。Bは単結合、又は、エーテル結合を含んでも良い炭素数1〜10のアルキレン基を示す。aは、a≦5+2r−bを満足する整数である。bは1〜3の整数である。)
【請求項3】
前記高分子化合物は、酸不安定基により保護され酸の作用によりアルカリ可溶性となる単位として、下記一般式(4)で表される繰り返し単位を更に含むものであることを特徴とする請求項2に記載の高分子化合物。
【化4】

(式中、sは0又は1を表す。tは0〜2の整数を表す。R、Rは前述の通りである。Bは単結合、又は、エーテル結合を含んでも良い炭素数1〜10のアルキレン基を示す。cは、c≦5+2t−eを満足する整数である。dは0又は1であり、eは1〜3の整数である。Xはeが1の場合には酸不安定基を、eが2以上の場合には水素又は酸不安定基を表すが、少なくとも1つは酸不安定基である。)
【請求項4】
前記高分子化合物は、更に、下記一般式(5)及び/又は(6)で示される繰り返し単位を含むものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の高分子化合物。
【化5】

(式中、fは0〜6の整数であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。gは0〜4の整数であり、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン置換されていても良い炭素数1〜6のアルキル基又は1級若しくは2級アルコキシ基、及びハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキルカルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【請求項5】
ベースポリマーとして、請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の高分子化合物を含むものであることを特徴とする化学増幅型レジスト組成物。
【請求項6】
被加工基板上に請求項5に記載の化学増幅型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線をパターン照射する工程、アルカリ性現像液を用いて現像してレジストパターンを得る工程を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。
【請求項7】
前記高エネルギー線として、EUV又は電子線を用いることを特徴とする請求項6に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項8】
前記被加工基板の最表面は、クロムを含む材料からなることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項9】
前記被加工基板としてフォトマスクブランクを用いることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載のレジストパターン形成方法。






【公開番号】特開2012−246265(P2012−246265A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120454(P2011−120454)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】