説明

スルホネート官能コーティング及び方法

スルホネート官能コーティングの層でコーティングされた基材を有するコーティングされた物品、並びにその製造方法及び使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
指紋を容易に落とすことが可能な表面を有する物品は、様々な用途、特にコンピュータースクリーン、携帯電話などの表面に非常に望ましい。このような製品で用いられる現在利用可能なコーティング組成物は、指紋を容易に除去できる表面を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本開示は、スルホネート官能コーティングで表面をコーティングされた基材を有するコーティングされた物品を目的とする。好ましくは、かかるコーティングは、スルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。本開示はまた、コーティングされた基材の製造(すなわち基材表面の処理)方法、及びコーティングされた基材からの指紋の除去方法などの方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
重要なことには、本明細書で記載するようにその上にスルホネート官能コーティングを有する基材において、指紋として付着している実質的に全ての皮脂の除去に要するのは、優しく拭うという簡単な動作であるが、好ましい実施形態では、水(例えば、室温の水道水)及び/又は水蒸気(例えば、ヒトの息)、並びに拭い取り(例えば、ティッシュ、ペーパータオル、布を用いて数回まで優しく往復する)を、指紋として付着している実質的に全ての皮脂の除去に要する。
【0004】
一実施形態では、基材表面の処理方法が提供される。この方法は、下塗りコーティング組成物を基材表面に塗布し、その上に−OH基を有する下塗りされた表面を形成する工程と、その上に−OH基を有する下塗りされた表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を有する双性イオン性化合物を含む工程と、を含む。この方法は、スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、シロキサン結合を介して下塗りコーティングに結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む、スルホネート官能コーティングを形成する工程を更に含み、この乾燥したスルホネート官能コーティングから、水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより指紋の除去が可能である。
【0005】
一実施形態では、基材表面の処理方法が提供される。この方法は、下塗りコーティング組成物を基材表面に塗布し、ナノ粒子を含む下塗りされた表面を形成する工程と、下塗りされた表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を有する非双性イオン性化合物を含む工程と、を含む。この方法は、スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、シロキサン結合を介して下塗りコーティングに結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む、スルホネート官能コーティングを形成する工程を更に含み、この乾燥したスルホネート官能コーティングから、水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより指紋の除去が可能である。
【0006】
特定の実施形態では、下塗りコーティング組成物を基材表面に塗布する工程は、基材表面をナノ粒子含有コーティング組成物と接触させる工程を含む。このナノ粒子含有コーティング組成物は、5未満のpHを有し、40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子を含む水性分散液と、≦3.5のpKaを有する酸と、を含む。方法は、ナノ粒子含有コーティング組成物を乾燥させ、基材表面上にシリカナノ粒子下塗りコーティングを提供する工程を更に含む。特定の実施形態では、必要に応じて、ナノ粒子含有コーティング組成物はテトラアルコキシシランを更に含む。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、指紋の除去性を改善するための金属又は有機高分子表面を含む基材の処理方法を提供する。この方法は、金属又は有機高分子表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を有する双性イオン性化合物を含む工程と、スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、スルホネート官能コーティングを形成する工程と、を含む。スルホネート官能コーティングは、シロキサン結合を介して基材表面に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、指紋の除去性を改善するための金属又は有機高分子表面を含む基材の処理方法を提供する。この方法は、金属又は有機高分子表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を有する非双性イオン性化合物を含む工程と、スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させスルホネート官能コーティングを形成する工程と、を含む。スルホネート官能コーティングは、シロキサン結合を介して基材表面に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。
【0009】
有利には、拭い取りにより、好ましくは水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより、乾燥したスルホネート官能コーティングから指紋の除去が可能である。例えば、水/息による水分で表面が飽和されると、単に優しく拭い取ることにより、スルホネート官能表面から指紋が容易に除去される。
【0010】
本開示はまた、本開示の方法で製造される親水性物品も提供する。
【0011】
具体的には、一実施形態では、基材表面と、基材表面上に配置される下塗りコーティングと、シロキサン結合を介して下塗りコーティングに結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品が提供される。
【0012】
別の実施形態では、基材表面と、基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤と、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品が提供される。このナノ粒子含有下塗剤は、40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子の粒塊を含み、かかる粒塊は、シリカナノ粒子の三次元多孔質ネットワークを含み、シリカナノ粒子は隣接するシリカナノ粒子に結合している。
【0013】
別の実施形態では、基材表面と、基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤と、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能コーティングと、を含むコーティングされた物品が提供される。このナノ粒子含有下塗剤は、40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子及び50ナノメートルを超える平均粒径を有するシリカナノ粒子の粒塊を含み、かかる粒塊は、シリカナノ粒子の三次元多孔質ネットワークを含み、シリカナノ粒子は隣接するシリカナノ粒子に結合している。
【0014】
別の実施形態では、基材表面と、基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤と、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能非双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品が提供される。このナノ粒子含有下塗剤は、40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子の粒塊を含み、かかる粒塊は、シリカナノ粒子の三次元多孔質ネットワークを含み、シリカナノ粒子は隣接するシリカナノ粒子に結合している。
【0015】
コーティングされた物品の特定の実施形態では、基材表面は、金属表面、セラミック表面、有機高分子表面、又はこれらの組み合わせを含む。コーティングされた物品の特定の実施形態では、基材表面は、金属表面、有機高分子表面、又はこれらの組み合わせを含む。
【0016】
コーティングされた物品の特定の実施形態では、スルホネート官能コーティングは、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。
【0017】
コーティングされた物品の特定の実施形態では、ナノ粒子含有下塗りコーティングの厚さは、100オングストローム(Å)〜10,000Åである。コーティングされた物品の特定の実施形態では、スルホネート官能コーティングの厚さは10マイクロメートル以下であり、多くの場合厚さは1マイクロメートル以下である。
【0018】
本開示はまた、表面からの指紋の除去方法も提供する。
【0019】
表面からの指紋の除去における一実施形態では、この方法は、基材表面と、シロキサン結合を介して基材表面に結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品を受け取る工程と、指紋を拭い取ることによりスルホネート官能表面から指紋を除去する工程と、を含む。
【0020】
表面からの指紋の除去における一実施形態では、この方法は、基材表面上に配置される下塗剤(好ましくはナノ粒子含有下塗剤)を含む基材表面と、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品を受け取る工程と、指紋を拭い取ることによりスルホネート官能表面から指紋を除去する工程と、を含む。
【0021】
驚くべきことに、双性イオンの正電荷が四級アンモニウム部分に由来するとき、スルホネート官能双性イオン性化合物は、類似するカルボキシレート官能双性イオン性化合物よりもずっと容易に指紋を除去することが見出されている。
【0022】
表面からの指紋の除去における一実施形態では、この方法は、基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤を含む基材表面と、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能非双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品を受け取る工程と、指紋を拭い取ることによりスルホネート官能表面から指紋を除去する工程と、を含む。
【0023】
幾つかの実施形態では、スルホネート官能表面から指紋を除去する方法は、指紋に水及び/又は水蒸気を適用する工程と、拭い取る工程と、を含む。
【0024】
別の実施形態では、本開示は、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む双性イオン性化合物と、アルコール及び/又は水と、テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせと、を含む、コーティング組成物を提供する。
【0025】
別の実施形態では、本開示は、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む非双性イオン性化合物と、アルコール及び/又は水と、テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせと、を含む、コーティング組成物を提供する。
【0026】
定義
用語「含む」及びその変化形は、これらの用語が説明文及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0027】
「好ましい」及び「好ましくは」なる語は、特定の状況下で、特定の効果をもたらしうる本開示の実施形態のことを指す。しかしながら、同じ、又は他の状況下において他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0028】
本明細書で使用する時、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。
【0029】
本明細書で使用する時、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられている。用語「及び/又は」は、挙げられた要素の1つ若しくは全て、又は挙げられた要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0030】
本明細書で使用する時、全ての数字は、用語「約」、及び好ましくは用語「正確に」によって修飾されると見なされる。本発明の広い範囲に記載される数値範囲及びパラメーターが近似値であるにも関わらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、あらゆる数値はそれらの試験測定値における標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本来的に含むものである。
【0031】
また、本明細書における端点による数の範囲の記載には、その範囲に含まれる全ての数が含まれる(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などが含まれる)。
【0032】
用語「の範囲」又は「の範囲内」(及び類似の記載)は、その記載された範囲の終点を含む。
【0033】
本明細書に開示される別の要素又は実施形態のグループは、限定する意味に解釈してはならない。各グループのメンバーを、個別に、又はグループの他のメンバー若しくはグループ中で見出される他の要素との任意の組み合わせで言及し、主張することができる。利便性及び/又は特許性の理由で、グループの1つ又は複数のメンバーを、グループに含めるかグループから削除することができると予想される。任意のこのような含有又は削除が起こるとき、明細書は、修正されたグループを含み、それにより、添付の「特許請求の範囲」で使用される全てのマーカッシュグループの記載を満たすと見なされる。
【0034】
ある基が本明細書で記載した式中に2回以上存在するとき、各基は特に記載しようとしまいと、「独立に」選択される。例えば、式中に2つ以上のY基が存在するとき、各Y基は独立に選択される。更に、これらの基の中に含まれるサブグループも独立に選択される。例えば、各Y基がRを含むとき、各Rも独立に選択される。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「有機基」は、脂肪族基、環状基又は脂肪族基と環状基との組み合わせ(例えば、アルカリル及びアラルキル基)として分類される、炭化水素基(酸素、窒素、硫黄及びケイ素のような、炭素及び水素以外の任意元素を含む)を意味する。本開示に関して、有機基は、指紋が拭き取られる表面の形成の邪魔をしないものである。用語「脂肪族基」は、飽和若しくは不飽和である直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル、アルケニル及びアルキニル基を包含するのに使用される。用語「アルキル基」は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシル等を含む、飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。用語「アルキレン基」は二価のアルキル基である。用語「アルケニル基」は、ビニル基のような、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。用語「アルキニル基」は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の、直鎖又は分枝鎖炭化水素基を表す。用語「環状基」は、脂環式基、芳香族基、又は複素環式基として分類される閉じた環状炭化水素基を表す。用語「脂環式基」は、脂肪族基の特性と類似する特性を有する環状炭化水素基を意味する。用語「芳香族基」又は「アリール基」は、モノ−又は多核芳香族炭化水素基を表す。用語「複素環式基」は、環の1つ以上の原子が炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、硫黄等)である閉じた環状炭化水素を表す。同じであっても異なってもよい基は、「独立して」何かであると称される。
【0036】
本開示の複合体の有機基上において、置換が予想される。本出願を通して使用される特定の専門用語の議論及び詳細説明を単純化する手段として、用語「基」及び「部分」は、置換され得る又は置換されていてもよい化学種と、置換され得ない又は置換されていなくてもよい化学種とを区別するために使用される。したがって、用語「基」を化学置換基を説明するために使用するとき、説明される化学物質は、非置換基、並びに例えば鎖中(アルコキシ基中のように)に、例えばO、N、Si又はS原子を有する基、及びカルボニル基又は他の従来の置換を含む。用語「部分」を化学化合物又は置換基を説明するために使用するとき、非置換化学物質だけを包含することを意図する。例えば、語句「アルキル基」は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル等のような純開環飽和炭化水素アルキル置換基だけではなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ等のような、当該技術分野において既知である置換基を更に有するアルキル置換基も含むことを意図する。したがって、「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、スルホアルキル等を含む。他方、語句「アルキル部」は、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル等のような純開環飽和炭化水素アルキル置換基のみの包含に限定される。
【0037】
用語「一次粒径」は、凝集していない1個のシリカ粒子の平均径のことを指す。
【0038】
本明細書で使用するとき「親水性」は、水溶液により湿潤される表面を指すために用いられ、層が水溶液を吸収するかどうかを表さない。水又は水溶液の液滴が50°未満の静的水接触角を示す表面を「親水性」と呼ぶ。疎水性基材は、50°以上の水接触角を有する。
【0039】
本明細書で使用するとき、「スルホネート官能化合物の少なくとも単層」は、表面又は基材の表面上の下塗剤に(シロキサン結合を介して)共有結合される、単層又はそれより厚い分子の層を含み、かかる分子はスルホネート官能化合物由来である。スルホネート官能化合物が各分子の二量体、三量体、又はその他オリゴマーを含む場合、「少なくとも単層」は、このような二量体、三量体、若しくはその他オリゴマー、又はかかるオリゴマーとモノマーとの混合物の単層を含む。
【0040】
本開示の上述の「課題を解決するための手段」は、開示された各実施形態又は本発明の全ての実施を記載しようと意図していない。以下の説明により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願のいくつかの箇所で、実施例の一覧として説明を提供するが、実施例は種々の組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態による、下塗剤及びその上のスルホネート官能コーティングがコーティングされた表面を有する基材を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、スルホネート官能コーティングの層で表面をコーティングされた基材を有するコーティングされた物品を目的とする。好ましくは、かかるコーティングは、スルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。
【0043】
重要なことには、好ましくは、最初に水及び/又は水蒸気(例えば息による)を指紋に適用した後の拭い取りにより、本開示のスルホネート官能コーティングから指紋を容易に除去することができる。典型的には、本開示の方法は、水(例えば室温の水道水)及び/又は水蒸気(例えば、ヒトの息)を単に適用し、かつ拭い取ることによる、スルホネート官能表面から指紋(これは、指紋として付着している実質的に全ての皮脂を意味する)を除去する工程を含む。本明細書において「拭い取り」は、典型的には手により、例えば、ティッシュ、ペーパータオル、又は布を用いて、高い圧をかけずに(例えば、通常は350グラム以下)、1回以上の往復又は摩擦(典型的には、ほんの数回を必要とする)で優しく拭い取ることを意味する。
【0044】
具体的には、一実施形態では、基材表面と、基材表面上に配置される下塗剤(好ましくはナノ粒子含有下塗剤)と、下塗りされた表面上に配置されるスルホネート官能コーティングと、を含むコーティングされた物品が提供される。例えば、図1を参照されたい。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態による、下塗りコーティング14及びその上のスルホネート官能コーティング16がコーティングされた表面12を有する基材10を示す。スルホネート官能コーティングは、好ましくは単層厚さで適用されるが、10マイクロメートルの厚さであってよい。下塗りコーティングは、好ましくは100オングストローム(Å)〜10,000Åの厚さ範囲内であり、多くは500Å〜2500Åの厚さである。
【0046】
シロキサン(Si−O−Si)結合は、直接基材表面に対しても、又はその上の下塗りコーティングに対しても、スルホネート官能基を表面に化学的に結合するのに用いられる。好ましくは、各表面のスルホネート基に対して3つのシロキサン結合の存在により、1つ又は2つのシロキサン結合が形成される場合よりも、化学結合が比較的安定する。
【0047】
1つの特定の実施形態では、コーティングされた物品は、基材表面と、基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤と、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能コーティングと、を含む。このナノ粒子含有下塗剤は、40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子の粒塊を含み、かかる粒塊は、シリカナノ粒子の三次元多孔質ネットワークを含み、シリカナノ粒子は隣接するシリカナノ粒子に結合している。
【0048】
一実施形態では、基材表面の処理方法が提供される。この方法は、下塗りコーティング組成物を基材表面に塗布し、その上に−OH基を有する下塗りされた表面を形成する工程と、その上に−OH基を有する下塗りされた表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を有する有機化合物を含む工程と、を含む。この方法は、スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、シロキサン結合を介して下塗りコーティングに結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む、スルホネート官能コーティングを形成する工程を更に含み、この乾燥したスルホネート官能コーティングから、拭い取りにより、又は好ましくは水及び/若しくは水蒸気(例えば息による)を適用し拭い取りを伴うことにより、指紋の除去が可能である。特定の実施形態では、スルホネート官能有機化合物は双性イオン性化合物であり、特定の実施形態では、非双性イオン性化合物である。
【0049】
本開示のスルホネート官能コーティング組成物は、例えば、金属表面、有機高分子表面、又はこれらの組み合わせなどの様々な基材表面上で用いることができる。この方法は、金属又は有機高分子表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を有する有機化合物を含む工程と、スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させスルホネート官能コーティングを形成する工程と、を含む。スルホネート官能コーティングは、シロキサン結合を介して基材表面に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。特定の実施形態では、スルホネート官能有機化合物は双性イオン性化合物であり、特定の実施形態では、非双性イオン性化合物である。
【0050】
有利には、拭い取りにより、好ましくは水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより、乾燥したスルホネート官能コーティングから指紋の除去が可能である。例えば、水/息による水分で表面が飽和されると、単に優しく拭い取ることにより、スルホネート官能表面から指紋が容易に除去される。
【0051】
したがって、本開示の方法を用いて、広範な基材の表面上に親水性物品を製造することができ、これにより「指紋が拭き取られる表面」が提供される。このような表面とは、布、ペーパータオル、ティッシュなどで優しく拭い取るという単純な動作で、指紋として付着している実質的に全ての皮脂を落とすことができる、その上にスルホネート官能コーティングを有するものである。好ましくは、このような「指紋が拭き取られる表面」は、拭い取りにより、又は好ましくは水(例えば室温の水道水)及び/若しくは水蒸気(例えばヒトの息)を適用して拭い取ることにより(例えば、ティッシュ、ペーパータオル、布を数回まで優しく往復させる)、指紋として付着している実質的に全ての皮脂を落とすことができるものである。
【0052】
コーティングされた物品の特定の実施形態では、スルホネート官能コーティングは、シロキサン結合を介して基材表面に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。コーティングされた物品の特定の実施形態では、スルホネート官能コーティングは、シロキサン結合を介して下塗剤に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。コーティングされた物品の特定の実施形態では、スルホネート官能コーティングは、シロキサン結合を介してナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む。本開示はまた、本開示の方法で製造される親水性物品も提供する。
【0053】
本開示はまた、表面からの指紋の除去方法も提供する。
【0054】
一般に、このような方法は、基材表面上に配置される下塗剤(例えばナノ粒子含有下塗剤)を任意に含む基材表面と、シロキサン結合を介して基材表面又は下塗剤に結合されるスルホネート官能コーティングと、を含むコーティングされた物品を受け取る工程と、指紋を拭い取ることによりスルホネート官能表面から指紋を除去する工程と、を含む。好ましくは、スルホネート官能表面から指紋を除去する方法は、指紋に水及び/又は水蒸気を適用する工程と、拭い取る工程と、を含む。
【0055】
別の実施形態では、本開示は、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む有機化合物(特定の実施形態では双性イオン性化合物、特定の実施形態では非双性イオン性化合物)と、アルコール及び/又は水と、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ(例えばシリカナノ粒子などのシリカ粒子)、又はこれらの組み合わせとを含む、コーティング組成物を提供する。
【0056】
スルホネート官能コーティング
スルホネート官能コーティングをスルホネート官能化合物から調製できる。これらの化合物は、基材表面に結合するためにアルコキシシラン官能基及び/又はシラノール官能基を有する。これらはまた、基材表面を親水性にするためにスルホネート基(SO)も含む。
【0057】
特定の実施形態では、スルホネート含有化合物は双性イオン性であり、特定の実施形態では、非双性イオン性である。
【0058】
例として、米国特許第4,152,165号(Langagerら)及び同第4,338,377号(Beckら)に開示されるものなどの非双性イオン性スルホネート−有機シラノール化合物が挙げられる。
【0059】
特定の実施形態では、本開示の溶液及び組成物中で用いられる非双性イオン性スルホネート−有機シラノール化合物は、次式(I)を有する。
[(MO)(Q)Si(XCHSO3−n]Y2/nr+r (I)
式中、
各Qは、ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、及び1〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ基から独立に選択され、
Mは、水素、アルカリ金属、及び平均分子量150未満かつpKa 11超の強有機塩基の有機カチオンから選択され、
Xは有機連結基であり、
Yは、水素、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウムなど)、平均分子量200未満かつpKa 11未満のプロトン化弱塩基(例えば、4−アミノピリジン、2−メトキシエチルアミン、ベンジルアミン、2,4−ジメチルイミダゾール、3−[2−エトキシ(2−エトキシエトキシ)]プロピルアミン)の有機カチオン、アルカリ金属、及び平均分子量150未満かつpKa 11超の強有機塩基(例えば、N(CHN(CHCH)の有機カチオンから選択され、ただしYが水素、アルカリ土類金属、及びかかるプロトン化弱塩基の有機カチオンのとき、Mは水素であり、
rはYの価数に等しく、
nは1又は2である。
【0060】
好ましくは、式(I)の非双性イオン性化合物はアルコキシシラン化合物である(例えば、Qが1〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ基)。
【0061】
これら式(I)の化合物中の酸素の重量パーセントは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%である。最も好ましくは45%〜55%の範囲内である。これらの化合物中のケイ素の重量パーセントは15%以下である。これらのパーセントはそれぞれ、水を含まない酸性型の化合物の重量に基づく。
【0062】
式(I)の有機連結基Xは、好ましくは、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキル置換シクロアルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、ヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基、モノオキサ骨格置換を有する二価の炭化水素基、モノチア骨格置換を有する二価の炭化水素基、モノオキソ−チア骨格置換を有する二価の炭化水素基、ジオキソ−チア骨格置換を有する二価の炭化水素基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基、及び置換アルキルアリーレン基から選択される。最も好ましくは、Xは、アルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、及びヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基から選択される。
【0063】
式(I)の非双性イオン性化合物の好適な例は、米国特許第4,152,165号(Langagerら)及び同第4,338,377号(Beckら)に記載されており、例えば以下のものが挙げられる。
(HO)Si−CHCHCH−O−CH−CH(OH)−CHSO
(HO)Si−CHCH(OH)−CHSO
(HO)Si−CHCHCHSO
(HO)Si−C−CHCHSO
(HO)Si−[CHCHSO
(HO)−Si(CH−CHCHSO
(NaO)(HO)Si−CHCHCH−O−CH−CH(OH)−CHSONa、及び
(HO)Si−CHCHSO
【0064】
双性イオン性スルホネート官能化合物の例として、米国特許第5,936,703号(Miyazakiら)、並びに国際公開第2007/146680号及び同第2009/119690号に開示されるものが挙げられる。
【0065】
特定の実施形態では、本開示の溶液及び組成物中で用いられる双性イオン性スルホネート−有機シラノール化合物は、次式(II)を有する。
(RO)−Si(R−W−N(R)(R)−(CH−SO (II)
式中、
各Rは独立に水素、メチル基、又はエチル基であり、
各Rは独立にメチル基又はエチル基であり、
各R及びRは独立に、飽和又は不飽和、直鎖状、分子状、又は環状有機基であり、これらは互いに、任意に基Wの原子と結合して環を形成してよく、
Wは有機連結基であり、
p及びmは1〜3の整数であり、
qは0又は1であり、
p+qは3である。
【0066】
式(II)の有機連結基Wは、好ましくは飽和又は不飽和、直鎖状、分子状、又は環状有機基から選択される。連結基Wは好ましくはアルキレン基であり、カルボニル基、ウレタン基、尿素基、酸素、窒素、及び硫黄などのヘテロ原子、並びにこれらの組み合わせを含んでよい。好適な連結基Wの例として、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキル置換シクロアルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、ヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基、モノオキサ骨格置換を有する二価の炭化水素基、モノチア骨格置換を有する二価の炭化水素基、モノオキソ−チア骨格置換を有する二価の炭化水素基、ジオキソ−チア骨格置換を有する二価の炭化水素基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基、及び置換アルキルアリーレン基が挙げられる。
【0067】
式(II)の双性イオン性化合物の好適な例は、米国特許第5,936,703号(Miyazakiら)並びに国際公開第2007/146680号及び同第2009/119690号に記載されており、次の双性イオン性官能基(−W−N(R)(R)−(CH−SO)が挙げられる。
【化1】

【0068】
特定の実施形態では、本開示の溶液及び組成物中で用いられるスルホネート−有機シラノール化合物は、次式(III)を有する。
(RO)−Si(R−CHCHCH−N(CH−(CH−SO(III)
式中、
各Rは独立に水素、メチル基、又はエチル基であり、
各Rは独立にメチル基又はエチル基であり、
p及びmは1〜3の整数であり、
qは0又は1であり、
p+qは3である。
【0069】
式(III)の双性イオン性化合物の好適な例は、米国特許第5,936,703号(Miyazakiら)に記載されており、例えば以下のものが挙げられる。
(CHO)Si−CHCHCH−N(CH−CHCHCH−SO、及び
(CHCHO)Si(CH)−CHCHCH−N(CH−CHCHCH−SO
【0070】
実施例の項で例示する標準的手技を用いて製造可能な好適な双性イオン性化合物のその他の例として、以下のものが挙げられる。
【化2】

【0071】
本開示のコーティング組成物及びコーティングの調製に用いる好適なスルホネート官能化合物の好ましい例は、実施例の項に記載される。
【0072】
スルホネート官能コーティング組成物は、典型的にはスルホネート官能化合物を、コーティング組成物の総重量に基づき少なくとも0.1重量%、多くの場合少なくとも1重量%の量で含む。スルホネート官能コーティング組成物は、典型的にはスルホネート官能化合物を、コーティング組成物の総重量に基づき20重量%以下、多くの場合5重量%以下の量で含む。一般に単層コーティングの厚さには、相対的に希釈されたコーティング組成物が用いられる。別の方法としては、相対的に濃縮されたコーティング組成物を用いて、その後すすいでよい。
【0073】
スルホネート官能コーティング組成物は、好ましくはアルコール、水、又はヒドロアルコール性溶液(すなわちアルコール及び/又は水)を含む。典型的には、かかるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノールなどの低級アルコール(例えば、C〜Cのアルコール、より典型的にはC〜Cのアルコール)である。好ましくは、スルホネート官能コーティング組成物は水溶液である。本明細書で用いられるとき、用語「水溶液」は水を含有する溶液を意味する。このような溶液は、水を唯一の溶媒として使用してよく、又はアルコールとアセトンなど、水と有機溶媒の組み合わせを使用してもよい。また、凍結融解安定性を向上するために、親水処理用組成物に有機溶媒を含めてもよい。典型的には、溶媒は、組成物の最大50重量%、好ましくは組成物の5〜50重量%の範囲の量で存在する。
【0074】
スルホネート官能コーティング組成物は、酸性、塩基性、又は中性であってよい。コーティングの耐久性能は、pHの影響を受け得る。例えば、スルホネート官能双性イオン性化合物を含有するコーティング組成物は、好ましくは中性である。
【0075】
スルホネート官能コーティング組成物は、様々な粘度で提供されてよい。したがって、例えば粘度は、水様の低いものから、ペースト様の高いものまで可変であり得る。また、ゲル形態で提供されてもよい。更に、様々なその他の成分を組成物に組み込んでもよい。
【0076】
したがって、例えば、従来の界面活性剤、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性界面活性剤を用いることができる。洗剤及び湿潤剤もまた使用できる。典型的には、以下に下塗剤組成物について記載するもののような、アニオン性界面活性剤、洗剤、及び湿潤剤も、本開示のスルホネート官能コーティング組成物に有用である。
【0077】
特定の実施形態では、スルホネート官能コーティング組成物は、耐久性の向上をもたらし得るテトラアルコキシシラン(例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS))、そのオリゴマー、例えばアルキルポリシリケート(例えば、ポリ(ジエトキシシロキサン))、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ(例えば、シリカ粒子)、又はこれらの組み合わせを更に含む。幾つかの実施形態では、コーティング組成物に含まれるこのようなカップリング剤の量は、コーティングの反射防止又は防曇特性が消滅するのを防ぐために、限定されるべきである。カップリング剤の最適量は、実験的に決定され、カップリング剤の性質、分子量、及び屈折率に依存する。カップリング剤は、存在するとき、典型的には、コーティング組成物の0.1〜20重量パーセント、より好ましくはコーティング組成物の約1〜15重量パーセントの濃度で組成物に添加される。
【0078】
スルホネート官能コーティング組成物は、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー、又はディップコーティング技術等の従来の技術を用いて物品上にコーティングされることが好ましい。好ましい方法としては、バー及びロールコーティング、又は厚さを調整するためにエアナイフコーティングが挙げられる。
【0079】
本開示のスルホネート官能コーティングは、好ましくは単層厚さで適用される。典型的には、スルホネート官能コーティングの厚さは、Gaertner Scientific Corp型番L115C等の楕円偏光計を用いて測定したとき、10マイクロメートル以下、好ましくは1マイクロメートル以下である。
【0080】
本開示のスルホネート官能コーティングは、必要に応じて基材の両面にコーティングされてよい。別の方法としては、本開示のコーティングは、基材の片側にコーティングされ得る。一旦コーティングされると、スルホネート官能物品は典型的には再循環オーブン内にて20℃〜150℃の温度で乾燥される。不活性ガスを循環させてよい。乾燥プロセスを加速させるために更に温度を上げてよいが、基材への損傷を避けるために注意を払わなければならない。
【0081】
スルホネート官能コーティング組成物は、これを用いてコーティングした表面に防曇特性を提供する。防曇特性は、コーティングされた基材の透明性を著しく低下させる傾向がある水滴の形成に耐性を有するコーティングの傾向により示される。例えば、人間の呼吸から生じる水蒸気は、水滴としてではなく、薄い均一な水フィルムの形態でコーティングされた基材上で凝結する傾向がある。かかる均一なフィルムは、基材の清澄性又は透明性をそれほど低下させない。
【0082】
下塗りコーティング
本開示の特定の実施形態では、基材表面上に下塗りコーティングが形成される。かかる下塗りコーティングは、基材表面上に−OH基を提供する。好ましくは、このような下塗りコーティングは、基材表面上にコーティングされ、乾燥されるナノ粒子含有コーティング組成物から形成される。
【0083】
その他の下塗剤組成物又はプロセスを用いて−OH基を提供してよい。かかる組成物の例としては、テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ(例えば、シリカ粒子)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、本開示に記載される表面は、従来の蒸着、つまり気相堆積プロセスにより表面改質され、米国特許第4,338,377号に記載されるSiO又はSiOの薄層下塗剤を形成することができる。基材の表面改質には、アルコキシシランの蒸着、つまり気相堆積も含まれ得る。以下の議論においてはナノ粒子含有下塗りコーティングに注目するが、記載される様々な特徴(例えば、コーティング厚さ)は、他の下塗りコーティングに応用される。
【0084】
特定の実施形態では、ナノ粒子含有下塗りコーティング組成物は、5未満のpHを有し、40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子を含む水性分散液と、≦3.5のpKa(好ましくは<2.5、最も好ましくは1未満)を有する酸と、を含む。
【0085】
別の実施形態では、ナノ粒子含有下塗りコーティング組成物は、二峰性分布を有するシリカナノ粒子を含む。
【0086】
これらの酸性化シリカナノ粒子下塗りコーティング組成物は、有機溶媒又は界面活性剤のいずれも用いることなしに、疎水性有機及び無機基材上に直接コーティングすることができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリカーボネート(PC)等の疎水性表面上におけるこれらの無機ナノ粒子水性分散物の湿潤特性は、分散物のpHと酸のpKaとの関数である。下塗りコーティング組成物は、pH=2〜3のHCl、更には幾つかの実施形態では2〜5のHClで酸性化されると、疎水性有機基材をコーティング可能である。対照的に、中性又は塩基性pHでは、下塗りコーティング組成物は有機基材上でビーズ状になる。
【0087】
水性媒質中の無機シリカゾルは、当該技術分野において周知であり、市販されている。水又は水−アルコール溶液中のシリカゾルは、LUDOX(E.I.duPont de Nemours and Co.,Inc.(Wilmington,DE)製造)、NYACOL(Nyacol Co.(Ashland,MA)より入手可能)又はNALCO(Ondea Nalco Chemical Co.(Oak Brook,IL)製造)などの商標名で市販されている。有用なシリカゾルの1つとして、平均粒径が5ナノメートル、pH 10.5、及び固形分が15重量%のシリカゾルとして販売されるNALCO 2326がある。他の市販のシリカナノ粒子としては、NALCO Chemical Co.から市販されている「NALCO 1115」及び「NALCO 1130」、Remet Corp.から市販されている「Remasol SP30」、E.I.Du Pont de Nemours Co.,Inc.から市販されている「LUDOX SM」、並びにNissan Chemical Co.から入手可能なSnowtex ST−OUP、Snowtex ST−UP、Snowtex ST−PS−Sが挙げられる。
【0088】
非水性シリカゾル(シリカオルガノゾルとも呼ばれる)を使用することも可能であり、これは液相が有機溶媒又は水性有機溶媒であるシリカゾル分散液である。本開示の実施においては、シリカゾルはその液相が典型的には水性溶媒又は水性有機溶媒であるように選択される。しかし、ナトリウム安定化シリカナノ粒子は、エタノール等の有機溶媒で希釈する前に先ず酸性化すべきであることが分かっている。酸性化に先立って希釈を行うと均一性が低い、又は不均一なコーティングを生じる場合がある。アンモニウム安定化シリカナノ粒子は、一般的に、いずれの順序で希釈及び酸性化してもよい。
【0089】
下塗りコーティング組成物は、それぞれpKa(HO)が≦3.5、好ましくは<2.5、最も好ましくは1未満の酸又は酸の組み合わせを含有する。有用な酸としては、有機酸及び無機酸の両方が挙げられ、シュウ酸、クエン酸、HSO、HPO、CFCOH、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、及びCHSOOHを例示することができる。最も好ましい酸としては、HCl、HNO、HSO、及びHPOが挙げられる。特定の実施形態では、有機及び無機酸の混合物が与えられることが望ましい。幾つかの実施形態では、≦3.5(好ましくは<2.5、最も好ましくは1未満)のpKaを有する酸と、任意に>0のpKaを有する少量の他の酸とを含む酸の混合物を用いてよい。酢酸等の>4のpKaを有する弱酸は、透過率、洗浄性、及び/又は耐久性の望ましい特性を有する均一なコーティングを提供しないことが見出されている。具体的には、酢酸等の弱酸を含む下塗りコーティング組成物は、典型的には、基材の表面上でビーズ状になる。
【0090】
下塗りコーティング組成物は、一般的に、5未満、好ましくは4未満、最も好ましくは3未満のpHをもたらすのに十分な酸を含有する。幾つかの実施形態では、コーティング組成物のpHは、pHを5未満に低下させた後、pH 5〜6に調整し得ることが見出されている。これにより、pH感受性の高い基材をコーティングすることが可能になる。
【0091】
テトラアルコキシカップリング剤、特にテトラアルコキシシラン、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)、及びテトラアルコキシシランのオリゴマー形態、例えばアルキルポリシリケート(例えば、ポリ(ジエトキシシロキサン))も、シリカナノ粒子間の結合を改善するために有用である場合がある。コーティング組成物に含まれるカップリング剤の量は、コーティングの反射防止又は防曇特性が消滅するのを防ぐために、限定されるべきである。カップリング剤の最適量は、実験的に決定され、カップリング剤の性質、分子量、及び屈折率に依存する。カップリング剤は、存在するとき、典型的には、シリカナノ粒子の0.1〜50重量パーセント(wt%)、より好ましくはシリカナノ粒子の1〜15重量パーセントの濃度で組成物に添加される。
【0092】
下塗りされた物品は、シリカナノ粒子粒塊の連続ネットワークを有する基材表面を含む。
【0093】
一実施形態では、この粒子は、40ナノメートル以下、好ましくは20ナノメートル以下、より好ましくは10ナノメートル以下の平均一次粒径を有することが好ましい。20ナノメートル以下等のより小さなナノ粒子は、一般的に、酸性化されると、テトラアルコキシシラン、界面活性剤、又は有機溶媒等の添加剤の必要なしに、優れた下塗りコーティングを提供する。更に、ナノ粒子が有する表面積は、一般に150m/グラムを超え、好ましくは200m/グラムを超え、より好ましくは400m/グラムを超える。粒子は好ましくは、狭い粒径分布、すなわち2.0以下、好ましくは1.5以下の多分散性(すなわち粒径分布)を有する。必要に応じて、選択された基材上における組成物の被覆性を有害に低下させることのない量で、より大きなシリカ粒子を添加してもよい。
【0094】
別の実施形態では、粒子は、40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子、及び50ナノメートル超の平均粒径を有するシリカナノ粒子により、少なくとも二峰性の分布を有することが好ましい。シリカナノ粒子は、最大500ナノメートルの平均粒径を有してよい。一実施形態では、シリカナノ粒子の二峰性分布は、2ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の第1の分布と20ナノメートル〜500ナノメートルの範囲の第2の分布、2ナノメートル〜20ナノメートルの範囲の第1の分布と30ナノメートル〜500ナノメートルの範囲の第2の分布、又は更に5ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の第1の分布と20ナノメートル〜100ナノメートルの範囲の第2の分布を有する。別の態様では、幾つかの実施形態において、第1の分布のナノ粒子対第2の分布のナノ粒子の重量比は、1:99〜99:1、10:90〜90:10、20:80〜80:20、又は更に30:70〜70:30の範囲内である。一実施形態では、第1の分布のナノ粒子対第2の分布のナノ粒子の重量比は、1:99〜99:1の範囲内である。
【0095】
本開示に記載されるナノシリカは、球状であっても非球状であってもよい。シリカナノ粒子は、表面改質されていないことが好ましい。
【0096】
平均粒径は、透過型電子顕微鏡によって測定することができる。本明細書で使用するとき、「連続」という用語は、ゲル状ネットワークが適用される領域に実質的に不連続又はギャップを有することなく基材の表面を被覆することを指す。「ネットワーク」という用語は、共に結合して多孔質三次元ネットワークを形成するナノ粒子の凝集又は集塊を指す。本明細書で使用するとき、粒塊という用語は、国際公開第2009/140482号の図1に示されて説明されているような、ナノ粒子が共に結合している(つまり焼結している)ことを指す。用語「一次粒径」は、凝集していない1個のシリカ粒子の平均径のことを指す。
【0097】
用語「多孔質」は、ナノ粒子が連続コーティングを形成するとき、シリカナノ粒子間に空隙が存在することを示す。単層下塗りコーティングでは、光学的に透明な基材を通過する空気中の光透過率を最大化し、基材による反射を最小化するために、コーティングの屈折率は、基材の屈折率の平方根にできる限り近いべきであり、コーティングの厚さは、入射光線の光学波長の約4分の1(1/4)であるべきであることが知られている。コーティング中の空隙は、屈折率(RI)が空気の屈折率(RI=1)から金属酸化物ナノ粒子の屈折率(例えばシリカの場合RI=1.44)に突然変化した場合、シリカナノ粒子間に多様なサブ波長の隙間をもたらす。多孔性を調整することにより、基材の屈折率の平方根に非常に近い、算出された屈折率を有する下塗りコーティング(米国特許第4,816,333号(Langeら)に示される)を作製することができる。最適屈折率を有する下塗りコーティングを利用することにより、入射光線の光学波長の約4分の1に等しいコーティング厚さで、コーティングされた基材を通過する透過率の割合は最大化され、反射は最小化される。
【0098】
好ましくは、ネットワークは、乾燥したとき、25〜45体積パーセント、より好ましくは30〜40体積パーセントの多孔性を有する。幾つかの実施形態では、多孔性はより高くてよい。多孔性は、W.L.Bragg,A.B.Pippard,Acta Crystallographica,volume 6,page 865(1953)などに公表されている手順に従って、コーティングの屈折率から算出できる。シリカナノ粒子では、この多孔性は、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリ(メチルメタクリレート)基材の屈折率の平方根におおよそ等しい、1.2〜1.4、好ましくは1.25〜1.36の屈折率を有するコーティングを提供する。例えば、1.25〜1.36の屈折率を有する多孔質シリカナノ粒子下塗りコーティングは、厚さ1000〜2000Åのポリエチレンテレフタレート基材(RI=1.64)上にコーティングされるとき、反射防止性が高い表面を提供することができる。反射防止性よりもむしろ、好ましくない微粒子除去用の簡易洗浄など、用途に依存して、下塗りコーティング層の厚さをより厚く、例えば、数マイクロメートル又はミルの厚さにしてもよい。機械的特性は、コーティング厚さが増加したとき改善されると予測することができる。
【0099】
水性系から疎水性基材上に下塗剤組成物を均一にコーティングするために、基材の表面エネルギーを増加させる及び/又はコーティング組成物の表面張力を低下させることが望ましい場合がある。表面エネルギーは、コロナ放電又は火炎処理法を用いて、コーティングする前に基材表面を酸化させることにより増加させることができる。これらの方法はまた、コーティングの基材への接着を高めることもできる。物品の表面エネルギーを増加させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の薄いコーティング等の下塗剤の使用が挙げられる。あるいは、コーティン組成物の表面張力は、低級アルコール(C〜C)の添加により低下させることができる。しかし、場合によっては、所望の特性についてコーティングの親水性を高めるために、かつ確実に水性又はヒドロアルコール性溶液から物品を均一にコーティングするために、典型的には界面活性剤である湿潤剤を下塗剤組成物に添加することが有益である場合もある。
【0100】
本明細書で使用するとき「界面活性剤」という用語は、コーティング溶液の表面張力を低下させることができる、同一分子に親水性(極性)及び疎水性(非極性)領域を含む分子を表す。有用な界面活性剤として、米国特許第6,040,053号(Scholzら)に開示されるものが挙げられる。
【0101】
シリカナノ粒子の典型的な濃度では(例えば総コーティング組成物に対して0.2〜15重量パーセント)、コーティングの反射防止特性を保つために、大部分の界面活性剤はコーティング組成物の0.1重量パーセント未満、好ましくは0.003〜0.05重量パーセントで含まれる。幾つかの界面活性剤では、防曇特性を得るのに必要な濃度を超える濃度で、むらのあるコーティングが生じることに留意すべきである。
【0102】
下塗りコーティング組成物中のアニオン性界面活性剤は、添加されるとき、得られるコーティングの均一性を高めることが好ましい。有用なアニオン性界面活性剤としては、(1)C〜C20のアルキル、アルキルアリール、及び/若しくはアルケニル基などの少なくとも1つの疎水性部分、(2)サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ポリオキシエチレンサルフェート、ポリオキシエチレンスルホネート、ポリオキシエチレンホスフェートなどの少なくとも1つのアニオン性基、並びに/又は(3)これらのアニオン性基の塩であって、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、三級アミノ塩などを含むもの、を含む分子構造を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。有用なアニオン性界面活性剤の代表的な市販例としては、Henkel Inc.(Wilmington,DE)から商標名TEXAPON L−100として、又はStepan Chemical Co(Northfield,IL)から商標名POLYSTEP B−3として入手可能なラウリル硫酸ナトリウム;Stepan Chemical Co.(Northfield,IL)から商標名POLYSTEP B−12として入手可能なラウリルエーテル硫酸ナトリウム;Henkel Inc.(Wilmington,DE)から商標名STANDAPOL Aとして入手可能なラウリル硫酸アンモニウム;及びRhone−Poulenc,Inc.(Cranberry,NJ)から商標名SIPONATE DS−10として入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0103】
下塗りコーティング組成物が界面活性剤を含まない場合、又は高いコーティング均一性が望ましい場合には、防曇特性が長持ちしないものなどの別の湿潤剤を添加すると、水性又は水性アルコール溶液からの物品の均一なコーティングを確実に行ううえで効果的である場合がある。有用な湿潤剤の例としては、ポリエトキシレート化アルキルアルコール(例えば「Brij(商標)30」及び「Brij(商標)35」(ICI Americas,Inc.から市販)、並びに「Tergitol(商標)TMN−6(商標)Specialty Surfactant」(Union Carbide Chemical and Plastics Co.から市販)、ポリエトキシレート化アルキルフェノール(例えば「Triton(商標)X−100」(Union Carbide Chemical and Plastics Co.製)、「Iconol(商標)NP−70」(BASF Corp.製))、及び、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(「Tetronic(商標)1502ブロックコポリマー界面活性剤」「Tetronic(商標)908ブロックコポリマー界面活性剤」及び「Pluronic(商標)F38ブロックコポリマー界面活性剤」(全てBASF,Corp.から市販))が挙げられる。当然のことながら、添加される湿潤剤はいずれも、コーティングの反射防止又は防曇特性(これらの特性が望まれる場合)を損なわない濃度で含めなければならない。シリカナノ粒子の量によるが、一般的に湿潤剤はコーティング組成物の0.1重量パーセント未満、好ましくはコーティング組成物の0.003〜0.05重量パーセントの量で用いられる。コーティングされた物品を水ですすぐ又は水中に浸漬することが、過剰な界面活性剤又は湿潤剤を除去するために望ましい場合がある。
【0104】
下塗りコーティング組成物は、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー、又はディップコーティング技術等の従来の技術を用いて物品上にコーティングされることが好ましい。好ましい方法としては、バー及びロールコーティング、又は厚さを調整するためにエアナイフコーティングが挙げられる。均一コーティング及びフィルムの湿潤性を確実にするために、コロナ放電又は火炎処理を使用して、コーティング前に基材表面を酸化させることが望ましいことがある。物品の表面エネルギーを増加させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)など下塗剤の使用が挙げられる。
【0105】
本開示の下塗りコーティングは、コーティングにおける可視干渉色の変化を避けるために、200Å未満、より好ましくは100Å未満で変動する均一な平均厚さで適用されることが好ましい。最適な平均乾燥コーティング厚さは、具体的な下塗りコーティング組成物に依存するが、一般的にコーティングの平均厚さは、Gaertner Scientific Corp型番L115C等の楕円偏光計を用いて測定したとき、100Å〜10,000Å、好ましくは500〜2500Å、より好ましくは750〜2000Å、更により好ましくは1000〜1500Åである。この範囲を上回る及び下回る場合、コーティングの反射防止特性が著しく低下する場合がある。しかし、平均コーティング厚さは均一であることが好ましいが、実際のコーティング厚さはコーティング上のある特定の点から別の点までで大幅に変動し得ることに留意すべきである。かかる厚さの変動は、視覚的に区別できる領域で相関するとき、コーティングの広帯域の反射防止特性をもたらすことにより実際は有益である場合もある。
【0106】
本開示の下塗りコーティングは、必要に応じて基材の両面にコーティングされてよい。別の方法としては、本開示のコーティングは、基材の片側にコーティングされ得る。
【0107】
一旦コーティングされると、下塗りされた物品は典型的には再循環オーブン内にて20℃〜150℃の温度で乾燥される。不活性ガスを循環させてよい。乾燥プロセスを加速させるために更に温度を上げてよいが、基材への損傷を避けるために注意を払わなければならない。無機基材に対して、硬化温度は200℃超であってよい。下塗りコーティング組成物を基材に適用し乾燥させた後、コーティングは、好ましくは60〜95重量パーセント(より好ましくは70〜92重量パーセント)のシリカナノ粒子(典型的には集塊している)、0.1〜20重量パーセント(より好ましくは10〜25重量パーセント)のテトラアルコキシシラン、及び所望により0〜5重量パーセント(より好ましくは0.5〜2重量パーセント)の界面活性剤、及び所望により最大5重量パーセント(好ましくは0.1〜2重量パーセント)の湿潤剤を含む。
【0108】
本開示の下塗りコーティング組成物が基材に適用され反射防止特性をもたらすとき、コーティングされた基材の光透過率を増加させることによりグレアは減少する。好ましくは、下塗りされた基材は、550nm(例えば、人間の眼がピーク光学反応を示す波長)において、コーティングされていない基材と比べたとき、少なくとも3パーセントポイント、最大10パーセントポイント、又はそれ以上の垂直入射光線の透過率の増加を示す。透過率パーセントは、光の入射角及び波長に依存し、「Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」という表題のASTM試験方法D1003−92を用いて決定される。好ましくは、コーティングされた基材は、550nmの光を用いて未コーティングの基材と比較するとき、3パーセント超、より好ましくは5パーセント超、最も好ましくは8パーセント超の透過率パーセントの上昇を示す。所望の用途が著しく「軸外」(すなわち非垂直)視野又は不所望の反射に関与するとき、視感度の増加は、特に反射が視野内の物体の輝度に近づくか、又はそれ超える場合更に大きくなる場合がある。
【0109】
反射防止コーティングが必要とされないとき、下塗りコーティング厚さは1〜10マイクロメートルであってよい。
【0110】
幾つかの実施形態では、下塗りコーティング組成物自体は、基材及び下層のグラフィック表示を引っ掻き、摩耗、及び溶媒等から引き起こされる損傷から保護する丈夫な摩耗耐性層を提供する。
【0111】
多くの実施形態では、本開示の下塗りコーティング組成物は、保存安定性であり、例えば、ゲルを形成せず、不透明にならず、又は著しく劣化しない。更に、多くの実施形態では、下塗りされた物品は耐久性があり、かつ摩耗耐性がある。
【0112】
コーティングされた物品
幾つかの実施形態では、本開示の物品は、透明から不透明の、ポリマー、ガラス、セラミック、又は金属の、平坦、曲線状、又は複雑な形状を有し、好ましくは集塊シリカナノ粒子の連続ネットワークがその上に形成されている、本質的にいずれの構成であってもよい基材、好ましくは下塗りされた表面を有する基材を含む。
【0113】
本開示の好ましい下塗りコーティング組成物及びスルホネート官能コーティング組成物は、基材に親水性をもたらす。また、これら両組成物は、これらによりコーティングされた基材に防曇特性を付与するにも有用である。更に、特定の実施形態において、これら両組成物は、これらによりコーティングされた基材に反射防止性を付与することができる。
【0114】
ポリマー基材には、ポリマーシート、フィルム、又は成形材料が含まれる。高い透過性が望ましい特定の実施形態では、基材は透明である。透明なる用語は、可視スペクトル(波長400〜700nm)の入射光線の少なくとも85%を透過することを意味する。透明な基材は、着色されていても無色のものでもよい。
【0115】
高い親水性が望ましい他の実施形態では、基材は最初は疎水性であってもよい。本組成物は、様々な基板に様々なコーティング法によって塗布することができる。本明細書で使用するとき「親水性」は、水溶液により湿潤される表面を指すために用いられ、層が水溶液を吸収するかどうかを表さない。水又は水溶液の液滴が50°未満の静的水接触角を示す表面を「親水性」と呼ぶ。疎水性基材は、50°以上の水接触角を有する。
【0116】
本開示のコーティング組成物を塗布し得る基材は、好ましくは可視光に透明又は半透明である。好ましい基材は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホモエポキシポリマー、ポリジアミンとのエポキシ付加ポリマー、ポリジチオール、ポリエチレンコポリマー、フッ素化表面、セルロースエステル、例えばアセテート及びブチラート、ガラス、セラミック、有機及び無機複合材料等から作製され、ブレンド及び積層体を含む。
【0117】
他の実施形態では、基材は透明である必要はない。組成物は、グラフィックス及び標識で用いられる可撓性フィルム等の容易に洗浄可能な表面を提供する。PETなどのポリエステル、又はPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)及びPVC(ポリ塩化ビニル)などのポリオレフィンから形成される可撓性フィルムが特に好ましい。基材は、基材樹脂をフィルムに押出ししてから、押出ししたフィルムを場合により一軸又は二軸配向させるなどの従来のフィルム製造方法を用いてフィルムに形成することができる。基材と下塗りコーティングとの間の接着を改善するために、例えば、化学処理、空気又は窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎又は化学放射線を用いて基材を処理することができる。必要に応じて、任意の結合層を基材と下塗りコーティング組成物との間に適用して、層間接着を高めることもできる。基材の他方の側にも上記に述べた処理を行って、基材と接着剤との接着性を高めることができる。基材には、当該技術分野では周知の単語又は記号などのグラフィックを付与することができる。
【0118】
更に別の実施形態では、基材はアルミニウム又はステンレス鋼などの金属であってよく、又は金属表面(例えば、蒸着金属)を有してよい。
【0119】
典型的には、基材は、フィルム、シート、パネル、又は板状の材料であり、コンピューターの筐体、携帯電話の筐体、コンピュータースクリーン、携帯電話のスクリーン、眼科用レンズ、建築用ガラス、装飾ガラスフレーム、自動車の窓及びフロントガラス、並びに、手術用マスク及び顔面防護器具などの保護メガネの部品であってよい。所望により、コーティングは、物品の一部のみを覆うことができ、例えば、顔面防護器具の目に直接隣接する部分のみをコーティングし得る。基材は平板であっても、湾曲していても、所定の形状に形成されてもよい。コーティングされる物品はブロー成形、鋳造、押出し成形、又は射出成形によって製造することができる。
【0120】
本開示の反射防止、防曇組成物でコーティングされる使い捨て手術用顔面マスク及び顔面防護器具等の物品は、好ましくは、防曇特性を低下させ得る環境曝露及び混入を減少する単回使用パッケージ中で保存される。再利用可能な物品は、好ましくは、使用されないとき環境曝露から製品を保護する又は完全に封止するパッケージと併用される。パッケージを形成するために用いられる材料は、非汚染性材料から構成されるべきである。特定の材料は、防曇特性を部分的に又は全て消失させ得ることが見出されている。理論に縛られるものではないが、可塑剤、触媒、及び他の老化の際に揮発し得る低分子量物質を含有する材料は、コーティングに吸収され、防曇特性を低下させると現在考えられている。
【0121】
したがって、本開示は、反射防止及び防曇特性を有する、手術用マスク及び顔面防護器具などの保護メガネ、並びに眼科用レンズ、窓及びフロントガラスを提供する。更に、指紋が拭き取られる表面を有する携帯電話及びコンピューターの構成要素が提供される。
【0122】
理想的には、スルホネート官能コーティングは、簡便な指紋の除去(すなわち指紋が拭き取られる表面)をもたらす。重要なことには、特定の実施形態において、指紋として付着している実質的に全ての皮脂の除去に要するのは、優しく拭うという簡単な動作であるが、好ましい実施形態では、水(例えば、室温の水道水)及び/又は水蒸気(例えば、ヒトの息)、並びに拭い取り(例えば、ティッシュ、ペーパータオル、布を用いて数回まで優しく往復する)を、指紋として付着している実質的に全ての皮脂の除去に要する。
【実施例】
【0123】
本発明の様々な実施形態の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した「特許請求の範囲」の範囲に限定するものではない。
【0124】
本明細書の実施例及びその他の部分における全ての部、百分率、比などは特に記載がない限り、重量基準である。使用される溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0125】
材料
ポリカーボネート(PC)基材は、Sabic Innovative Plastics(Pittsfield,MA)から入手可能な「Lexan(商標)101」から調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)基材は、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な「Scothpar(商標)」から調製し、従来の方法を用いてフラッシュランプ処理をした。
アルミニウム(Al)基材は、McMaster−Carr(Robbinsville,NJ)から入手可能な18ゲージのアルミニウム5052から調製した。
ステンレス鋼(SS)基材は、McMaster−Carr(Robbinsville,NJ)から入手可能な26ゲージの304ステンレス鋼から調製した。
フロートガラス板はCardinal Glass(Eden Prairie,MN)から入手した。
人工皮脂はWFK−Testgewebe GmbH(Germany)から入手した。
「Polystep(商標)A−18」(直鎖αオレフィンスルホン酸ナトリウム)はStepan Company(Northfield,IL)から入手した。
「Biosoft(商標)D−40」(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)はStepan Company(Northfield,IL)から入手した。
NALCO 8691は、固形分13.3%(公称固形分13パーセント)の水性コロイド状の球状シリカ分散体であり、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)からNALCO 8691として入手可能。
NALCO 2326は、固形分16.2%(公称固形分16パーセント)の水性コロイド状の球状シリカ分散体であり、NALCO Chemical Company(Naperville,IL)からNALCO 2326として入手可能。
Nissan Snowtex ST−OUPは、固形分15.8%(公称固形分16パーセント)の水性コロイド状の非球状シリカ分散体であり、Nissan Chemical Company(Houston,TX)からSnowtex ST−OUPとして入手可能。
NPS1:2.5重量%の[Nalco 8691:Polystep A−18(99:1w/w)]水溶液で、1.5MのHNOでpH=2まで酸性化したもの。
NPS2:5重量%の[Nalco 8691:Polystep A−18(99:1w/w)]水溶液で、1.5MのHNOでpH=2まで酸性化したもの。
NPS3:2重量%の[Nalco 2326:Nissan ST−OUP:Biosoft(商標)D−40(59.6:39.4:1w/w)]水溶液で、1.5MのHNOでpH=3まで酸性化したもの。
メタノールはVWR International(West Chester,PA)から入手した。
テトラヒドロフラン(THF)はVWR International(West Chester,PA)から入手した。
ジエチルエーテルはVWR International(West Chester,PA)から入手した。
ジクロロメタンはVWR International(West Chester,PA)から入手した。
1,3−プロパンスルトンはAldrich Chemical(St.Louis,MO)から入手した。
1,4−ブタンスルトンはAldrich Chemical(St.Louis,MO)から入手した。
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランはGelest(Morrisville,PA)から入手した。
2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシランはGelest(Morrisville,PA)から入手した。
3−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩はAldrich Chemical(St.Louis,MO)から入手した。
3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシランはGelest(Morrisville,PA)から入手した。
7−ブロモヘプチルトリメトキシシランはGelest(Morrisville,PA)から入手した。
ジメチルアミン(2M、メタノール溶液)はAlfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手した。
3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートはAldrich Chemical(St.Louis,MO)から入手した。
N,N−ジメチルエチレンジアミンはAldrich Chemical(St.Louis,MO)から入手した。
1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2−プロパノールはAldrich Chemical(St.Louis,MO)から入手した。
2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノールはTCI America(Portland,OR)から入手した。
Lithisil(商標)25(ケイ酸リチウム)はPQ Corporation(Valley Forge,PA)から入手した。
【0126】
特に記載がない限り、本明細書の実施例及びその他の部分における全ての部、百分率、比などは重量基準である。
【0127】
調製例1
【化3】


コーティング溶液の調製
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(3.0グラム(g)、14.5ミリモル(mmol))をねじぶた付き容器に加え、その後無水THF(10g)を加えた。この混合物に、1,3−プロパンスルトン(1.8g、14.5mmol)を40分間かけて加えた。合わせた反応混合物を65℃まで加温し、14時間混合した。蒸発により溶媒を反応混合物から除去し、固体を1重量%までメタノールで希釈した。
【0128】
調製例2
【化4】


コーティング溶液の調製
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(3.0g、14.5mmol)をねじぶた付き容器に加え、その後DI水(5.0g)を加えた。この混合物に、1,3−プロパンスルトン(1.8g、14.5mmol)を15分間かけて加えた。合わせた反応混合物を65℃まで加温し、14時間混合した。この反応混合物を水で2重量%まで希釈し、最終コーティング溶液を得た。
【0129】
調製例3
【化5】


コーティング溶液の調製
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(49.7g、239mmol)をねじぶた付き容器に加え、その後脱イオン(DI)水(82.2g)及び1,4−ブタンスルトン(32.6g、239mmol)を加えた。合わせた反応混合物を75℃まで加温し、14時間混合した。この反応混合物を水で2重量%まで希釈し、最終コーティング溶液を得た。
【0130】
調製例4
【化6】


コーティング溶液の調製
2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン(2.0g、7.0mmol)をねじぶた付き容器に加え、その後DI水(5.0g)を加えた。この混合物に、1,3−プロパンスルトン(0.9g、7.0mmol)を15分間かけて加えた。合わせた反応混合物を65℃まで加温し、14時間混合した。この反応混合物を水で2重量%まで希釈し、最終コーティング溶液を得た。
【0131】
調製例5
【化7】


コーティング溶液の調製
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(5.0g、24.1mmol)をねじぶた付き容器に加え、その後DI水(9.7g)、その後3−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩(4.7g、24.1mmol)を加えた。合わせた反応混合物を65℃まで加温し、14時間混合した。この反応混合物を水で2重量%まで希釈し、最終コーティング溶液を得た。
【0132】
調製例6
【化8】


コーティング溶液の調製
3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(3.0g、14.5mmol)をねじぶた付き容器に加え、その後無水THF(10g)を加えた。この混合物に、1,3−プロパンスルトン(1.8g、14.5mmol)を15分間かけて加えた。合わせた反応混合物を65℃まで加温し、14時間混合した。蒸発により溶媒を反応混合物から除去し、固体を1重量%までメタノールで希釈した。溶媒としてTHFの代わりに水を用いたとき、指紋洗浄性能が低下した。
【0133】
調製例7
【化9】


コーティング溶液の調製
7−ブロモヘプチルトリメトキシシラン(5.0g、16.7mmol)をジメチルアミン(2.0M、メタノール溶液、20ミリリットル(mL))と共にねじぶた付きバイアル瓶に加え、75℃まで14時間加熱した。蒸発により反応混合物を濃縮した後、ジエチルエーテルを添加し、混合物を濾過して濃縮し、7−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシランを得た。ねじぶた付きバイアル瓶に、7−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(1.0g、3.8mmol)及び無水THF(3.0g)を投入した。反応槽に、1,3−プロパンスルトン(0.5g、3.8mmol)を10分間かけて加えた。合わせた反応混合物を75℃まで7.5時間加熱した。溶媒を反応混合物から除去し、固体を1重量%までメタノールで希釈した。溶媒としてTHFの代わりに水を用いたとき、指紋洗浄性能が低下した。
【0134】
調製例8
【化10】


コーティング溶液の調製
ねじぶた付きバイアル瓶に、N,N−ジメチルエチレンジアミン(0.85g、9.6mmol)及び無水THF(9mL)を投入した。反応槽に、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(2.60g、10.6mmol)を5分間かけて加えた。反応物を室温で2時間混合した後、1,3−プロパンスルトン(1.30g、10.6mmol)を加えた。反応物を室温で12時間混合させ、固体を混合物から濾別し、乾燥させた。コーティング用に、この固体を加温したメタノール中に溶解(1%)した。
【0135】
調製例9
【化11】


コーティング溶液の調製
ねじぶた付きバイアル瓶に2−(2−ジメチルアミノエトキシ)エタノール(1.3g、9.6mmol)及び3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(2.50g、10.1mmol)を投入し、続いて60℃まで14時間加温した。反応混合物を室温まで冷却し、THF(5mL)及び1,3−プロパンスルトン(1.30g、10.6mmol)を加えた。反応物を60℃で8時間混合させ、固体を混合物から濾別し、乾燥させた。コーティング用に、この固体を加温したメタノール中に溶解(1%)した。
【0136】
調製例10
【化12】


コーティング溶液の調製
ねじぶた付きバイアル瓶に1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2−プロパノール(1.4g、9.6mmol)及び3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(2.50g、10.1mmol)を投入し、続いて60℃まで14時間加温した。反応混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタン(5mL)及び1,3−プロパンスルトン(2.80g、23.0mmol)を加えた。反応物を60℃で8時間混合させ、固体を混合物から濾別し、乾燥させた。コーティング用に、この固体を水中に溶解(2%)した。
【0137】
調製例11
【化13】


コーティング溶液の調製
米国特許第4,338,377号に記載されるように調製例11を調製し、2重量%に希釈した。
【0138】
調製例12
【化14】


コーティング溶液の調製
米国特許第4,338,377号に記載されるように調製例12を調製し、2重量%に希釈した。
【0139】
調製例13
調製例11の2%溶液をNaOH(1.0M)でpH=7まで中和して、調製例13のコーティング溶液を調製した。
【0140】
調製例14
2.5重量%の[Lithisil(商標)25のケイ酸リチウム:調製例3の化合物(50:50w/w)]水溶液として、調製例14のコーティング溶液を調製した。
【0141】
調製例15
2.5重量%の[Lithisil(商標)25のケイ酸リチウム:調製例11の化合物(50:50w/w)]水溶液として、調製例15のコーティング溶液を調製した。
【0142】
調製例16
2.5重量%の[Lithisil(商標)25のケイ酸リチウム:調製例12の化合物(50:50w/w)]水溶液として、調製例16のコーティング溶液を調製した。
【0143】
調製例17
20重量%の[Lithisil(商標)25のケイ酸リチウム:調製例3の化合物(50:50w/w)]水溶液として、調製例17のコーティング溶液を調製した。
【0144】
実施例1
実施例1では、Kimwipe(商標)テッシュペーパー(Kimberly Clark(Roswell,GA)から入手)を用いて、調製例1〜12に記載するように調製したコーティング溶液で7.6cm×12.7cmの一組のガラス板をコーティングした。コーティング前に、Alconox(商標)洗剤(Alconox,Inc.(White Plains,NJ)から入手)を用いてガラス板を洗浄した。コーティングされたガラス板(すなわちサンプル)を室温で乾燥させ、150℃で20分間加熱した。サンプルを室温まで冷却した後、DI水(600mL/分)で30秒間すすいだ。サンプルを圧縮空気流で乾燥させた。人工皮脂を用いて、コーティングされた表面に人工指紋を適用し、室温で10分間超放置した。Kimberly−Clark(商標)L−30 Wypall(商標)タオル(Kimberly Clark(Roswell,GA)から入手)で覆った2.5cmのボタンを備えた、Taber(商標)直線式摩耗試験機(liner abrader)(Taber Industries(North Tonawanda,NY)から入手)を用いて、総負荷量350gを適用して、コーティングされた表面からの指紋の除去しやすさを検査した。指紋除去試験を開始するために、各サンプルに4秒間息を吹きかけ、サンプル表面に水分を生じさせた。吹きかけ完了と同時に摩耗試験機を作動し、1サイクル(1サイクルとは、前方に拭き取り1回と、続く後方への拭き取り1回からなる)で指紋を拭き取らせた。試験完了後、新しいタオルを次のサンプルの拭い取り用に取り付けた。続いて、サンプルを目視検査し、評価した。評価の「合格」は指紋がほとんど除去されていたことを意味し、評価の「不合格」は指紋が残っていた及び/又は塗りつけられていたことを意味する。表1に、調製例1〜12のコーティング溶液で作製したガラス板上のコーティング、並びに未コーティングガラス板対照について、指紋除去試験のデータをまとめる。
【0145】
【表1】

【0146】
実施例2〜3及び比較例A
実施例2及び3では、数枚のステンレス鋼クーポンをアセトンで洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。続いて、このクーポンを、18ミリメートル/分(mm/分)の速度でNPS1溶液に浸漬し、コーティング溶液中に20秒間保持し、かつ18mm/分の速度で取り出すことにより、シリカナノ粒子をディップコーティングした。サンプルを室温で乾燥させ、次に150℃で10分間加熱した。シリカナノ粒子コーティングの形成に用いたものと同じ方法で、引き続いてサンプルを調製例3のコーティング溶液(実施例2について)又は調製例11のコーティング溶液(実施例3について)中に浸漬した。サンプルを室温で乾燥させ、150℃ 10分間の最終熱処理を行った。比較例Aでは、ステンレス鋼クーポンをアセトンで洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させたが、コーティングは行わなかった。
【0147】
実施例4〜5及び比較例B
実施例4及び5では、数枚のアルミニウムクーポンをアセトンで洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。次に、HSOの4重量%溶液にクーポンを30分間沈めた。サンプルをDI水ですすぎ、窒素流で乾燥させた。続いて、このクーポンを、18mm/分の速度でNPS1溶液に浸漬し、コーティング溶液中に20秒間保持し、かつ18mm/分の速度で取り出すことにより、シリカナノ粒子をディップコーティングした。サンプルを室温で乾燥させ、次に150℃で10分間加熱した。シリカナノ粒子コーティングの形成に用いたものと同じ方法で、引き続いてサンプルを調製例3のコーティング溶液(実施例4について)又は調製例11のコーティング溶液(実施例5について)中に浸漬した。サンプルを室温で乾燥させ、150℃ 10分間の最終熱処理を行った。比較例Bでは、アルミニウムクーポンをアセトンで洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させたが、更なる処理、つまりコーティングは行わなかった。
【0148】
実施例6〜7及び比較例C
実施例6及び7では、NPS1溶液及びメイヤーロッド(#6)を用い、かつコーティングされたフィルムを室温で乾燥させて150℃で15分間熱処理を行うことにより、数枚のPETフィルムをシリカナノ粒子でコーティングした。シリカナノ粒子コーティングの形成に用いたものと同じ方法で、引き続いてサンプルを調製例3のコーティング溶液(実施例6について)又は調製例11のコーティング溶液(実施例7について)でコーティングした。コーティングされたフィルムを室温で乾燥させ、150℃ 10分間の最終熱処理を行った。比較例Cでは、PETフィルムをコーティングしなかった。
【0149】
実施例8〜9及び比較例D
実施例8及び9では、NPS2溶液及びメイヤーロッド(#6)を用い、かつコーティングされたフィルムを室温で乾燥させて150℃で15分間熱処理を行うことにより、数枚のPCプレートをシリカナノ粒子でコーティングした。シリカナノ粒子コーティングの形成に用いたものと同じ方法で、引き続いてサンプルを調製例3のコーティング溶液(実施例8について)又は調製例13のコーティング溶液(実施例9について)でコーティングした。コーティングされたPCプレートを室温で乾燥させ、150℃ 10分間の最終熱処理を行った。比較例Cでは、PCプレートをコーティングしなかった。
【0150】
(指紋の)洗浄性、並びに(指紋の)簡便洗浄性の維持に関するコーティングの耐久性について、実施例2〜9及び比較例A〜Dのサンプルを検査した。試験では、顔面の皮脂を用いて、実施例2〜9及び比較例A〜Dによるサンプルのコーティングされた表面に顔面の皮脂による指紋を適用し、サンプルを室温で5分間未満の時間放置した。続いてサンプルに息を吹きかけ、その直後に、顔用テッシュペーパー(Kimberly Clark(Roswell,GA)のSurpass(商標)Facial Tissue)でサンプルを拭き取った。指紋の除去は目視で検査した。指紋が除去されていなかった場合、そのサンプルについて更なる試験は行わなかった。指紋の除去に成功した場合、続いてこれらのサンプルについて、表面をDI水ですすぎ、水が連続フィルム(すなわち親水性コーティング)を形成したかを目視で確認することにより、更に検査した。水が連続フィルムを形成した場合、続いてこれらのサンプルについて、上記実施例1に記載の試験方法を用いてコーティングの耐久性を更に検査した。各試験サイクルの後、サンプル上に顔面の皮脂による指紋を再度適用し、試験を繰り返した。実施例2〜9のサンプルそれぞれについて、指紋の除去に成功した合計サイクル数を決定し、以下の表2に示す。比較例A〜Dについては、指紋は容易に除去されなかったため、サイクル数はゼロであった。
【0151】
【表2】

【0152】
実施例10〜12及び比較E
実施例10〜12では、NPS3溶液及びメイヤーロッド(#6)を用い、かつコーティングされたフィルムを室温で乾燥させて150℃で15分間熱処理を行うことにより、数枚のPETフィルムをシリカナノ粒子でコーティングした。シリカナノ粒子コーティングの形成に用いたものと同じ方法で、引き続いてサンプルを調製例14のコーティング溶液(実施例10について)、調製例15のコーティング溶液(実施例11について)、又は調製例16のコーティング溶液(実施例12について)でコーティングした。コーティングされたPETフィルムを室温で乾燥させ、150℃ 10分間の最終熱処理を行った。比較例Eでは、PETフィルムをコーティングしなかった。
【0153】
実施例10〜12のサンプルを(指紋の)洗浄性について検査した。試験では、顔面の皮脂を用いて、実施例10〜12によるサンプルのコーティングされた表面に顔面の皮脂による指紋を適用し、サンプルを室温で5分間未満の時間放置した。続いてサンプルに息を吹きかけ、その直後に、顔用テッシュペーパー(Kimberly Clark(Roswell,GA)のSurpass(商標)Facial Tissue)でサンプルを拭き取った。指紋の除去は目視で検査した。指紋の除去に成功した場合、続いてこれらのサンプルについて、表面をDI水ですすぎ、水が連続フィルム(すなわち親水性コーティング)を形成したかを目視で確認することにより、更に検査した。評価の「合格」は指紋がほとんど除去されていたことを意味し、評価の「不合格」は指紋が残っていた及び/又は塗りつけられていたことを意味する。
【0154】
【表3】

【0155】
実施例13
実施例13では、Kimwipe(商標)テッシュペーパー(Kimberly Clark(Roswell,GA)から入手)を用いて、調製例17に記載するように調製したコーティング溶液で一組のステンレス鋼板をコーティングした。コーティング前に、Alconox(商標)洗剤(Alconox,Inc.(White Plains,NJ)から入手)を用いてステンレス鋼板を洗浄した。コーティングされたステンレス鋼板(すなわちサンプル)を室温で乾燥させ、150℃で30分間加熱した。
【0156】
(指紋の)洗浄性、並びに(指紋の)簡便洗浄性の維持に関するコーティングの耐久性について、実施例13のサンプルを検査した。試験では、顔面の皮脂を用いて、実施例13によるサンプルのコーティングされた表面に顔面の皮脂による指紋を適用し、サンプルを室温で5分間未満の時間放置した。続いてサンプルに息を吹きかけ、その直後に、顔用テッシュペーパー(Kimberly Clark(Roswell,GA)のSurpass(商標)Facial Tissue)でサンプルを拭き取った。指紋の除去は目視で検査した。指紋が除去されていなかった場合、そのサンプルについて更なる試験は行わなかった。指紋の除去に成功した場合、続いてこのサンプルについて、表面をDI水ですすぎ、水が連続フィルム(すなわち親水性コーティング)を形成したかを目視で確認することにより、更に検査した。水が連続フィルムを形成した場合、続いてこのサンプルについて、上記実施例1に記載の試験方法を用いてコーティングの耐久性を更に検査した。各試験サイクルの後、サンプル上に顔面の皮脂による指紋を再度適用し、試験を繰り返した。実施例13のサンプルでは、20サイクル超について、指紋の除去に成功した。
【0157】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照することによって組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面の処理方法であって、
下塗りコーティング組成物を前記基材表面に塗布し、その上に−OH基を有する下塗りされた表面を形成する工程と、
その上に−OH基を有する前記下塗りされた表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、該スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む双性イオン性化合物を含む、工程と、
前記スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、シロキサン結合を介して前記下塗りコーティングに結合される前記スルホネート官能双性イオン性化合物の少なくとも単層を含むスルホネート官能コーティングを形成する工程と、を含み、
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから拭い取りにより指紋の除去が可能である、
方法。
【請求項2】
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから、水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより、指紋の除去が可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スルホネート官能コーティング組成物がアルコール及び/又は水を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記スルホネート官能コーティング組成物が、テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スルホネート官能コーティング組成物がテトラアルコキシシラン又はケイ酸リチウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基材表面が、金属表面、セラミック表面、有機高分子表面、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記双性イオン性化合物が式(II)のものであって、
(RO)−Si(R−W−N(R)(R)−(CH−SO
(II)
式中、
各Rは独立に水素、メチル基、又はエチル基であり、
各Rは独立にメチル基又はエチル基であり、
各R及びRは独立に、飽和又は不飽和、直鎖状、分子状、又は環状有機基であり、これらは互いに、任意に基Wの原子と結合して環を形成してよく、
Wは有機連結基であり、
p及びmは1〜3の整数であり、
qは0又は1であり、
p+qは3である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
スルホネート官能基を含む前記双性イオン性化合物がアルコキシシラン化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
下塗りコーティング組成物を前記基材表面に塗布する工程が、
前記基材表面をナノ粒子含有コーティング組成物と接触させる工程であって、該ナノ粒子含有コーティング組成物が、
40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子と、
≦3.5のpKaを有する酸と、を含む、5未満のpHを有する水性分散液を含む、工程と、
前記ナノ粒子含有コーティング組成物を乾燥させ前記基材表面上にシリカナノ粒子下塗りコーティングを提供する工程と、を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子含有コーティング組成物中の前記シリカナノ粒子の濃度が0.1重量%〜20重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸が、シュウ酸、クエン酸、HPO、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、CHSOOH、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記シリカナノ粒子が20ナノメートル以下の平均粒径を有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子含有コーティング組成物がテトラアルコキシシランを更に含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子含有コーティング組成物のpHが3未満である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
指紋の除去性を改善するための金属又は有機高分子表面を含む基材の処理方法であって、
前記金属又は有機高分子表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、該スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む双性イオン性化合物を含む、工程と、
前記スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、シロキサン結合を介して前記基材表面に結合される前記スルホネート官能双性イオン性化合物の少なくとも単層を含むスルホネート官能コーティングを形成する工程と、を含み、
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから拭い取りにより指紋の除去が可能である、方法。
【請求項16】
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから、水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより、指紋の除去が可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スルホネート官能コーティング組成物がアルコール及び/又は水を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記スルホネート官能コーティング組成物が、テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記スルホネート官能コーティング組成物がテトラアルコキシシラン又はケイ酸リチウムを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記双性イオン性化合物が式(II)のものであって、
(RO)−Si(R−W−N(R)(R)−(CH−SO
(II)
式中、
各Rは独立に水素、メチル基、又はエチル基であり、
各Rは独立にメチル基又はエチル基であり、
各R及びRは独立に、飽和又は不飽和、直鎖状、分子状、又は環状有機基であり、これらは互いに、任意に基Wの原子と結合して環を形成してよく、
Wは有機連結基であり、
p及びmは1〜3の整数であり、
qは0又は1であり、
p+qは3である、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
スルホネート官能基を含む前記双性イオン性化合物がアルコキシシラン化合物である、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法により製造された、親水性物品。
【請求項23】
基材表面と、該基材表面上に配置される下塗りコーティングと、シロキサン結合を介して前記下塗りコーティングに結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含む、コーティングされた物品。
【請求項24】
基材表面と、該基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤と、シロキサン結合を介して前記ナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含み、前記ナノ粒子含有下塗剤が40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子の粒塊を含み、前記粒塊がシリカナノ粒子の三次元多孔質ネットワークを含み、前記シリカナノ粒子が隣接するシリカナノ粒子に結合している、コーティングされた物品。
【請求項25】
前記基材表面が、金属表面、セラミック表面、有機高分子表面、又はこれらの組み合わせを含む、請求項23又は24に記載のコーティングされた物品。
【請求項26】
前記下塗りコーティングの厚さが100Å〜10,000Åである、請求項23〜25のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項27】
前記スルホネート官能コーティングの厚さが10マイクロメートル以下である、請求項23〜26のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項28】
前記スルホネート官能コーティングの厚さが1マイクロメートル以下である、請求項27に記載のコーティングされた物品。
【請求項29】
表面の洗浄方法であって、
前記スルホネート官能コーティング上に指紋を有する、請求項22〜28及び69〜75のいずれか一項に記載のコーティングされた物品のスルホネート官能コーティングを拭う工程と、
前記指紋を除去する工程と、を含む、方法。
【請求項30】
前記指紋に水及び/又は水蒸気を適用する工程と、拭き取りにより前記指紋を除去する工程と、を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
表面からの指紋の除去方法であって、
基材表面と、シロキサン結合を介して前記基材表面に結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品を受け取る工程と、
指紋を拭い取る工程を含む、前記スルホネート官能表面から指紋を除去する工程と、を含む、方法。
【請求項32】
表面からの指紋の除去方法であって、
基材表面上に配置される下塗剤を含む基材表面と、シロキサン結合を介して前記下塗剤に結合されるスルホネート官能双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品を受け取る工程と、
指紋を拭い取る工程を含む、前記スルホネート官能表面から指紋を除去する工程と、を含む、方法。
【請求項33】
前記下塗剤がナノ粒子含有下塗剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記スルホネート官能表面から指紋を除去する工程が、前記指紋に水及び/又は水蒸気を適用する工程と、拭い取る工程と、を含む、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む双性イオン性化合物と、
アルコール及び/又は水と、
テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせと、を含む、コーティング組成物。
【請求項36】
基材表面の処理方法であって、
下塗りコーティング組成物を前記基材表面に塗布し、シリカナノ粒子を含む下塗りされた表面を形成する工程と、
該下塗りされた表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、前記スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む非双性イオン性化合物を含む、工程と、
前記スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、シロキサン結合を介して前記下塗りコーティングに結合される該スルホネート官能非双性イオン性化合物の少なくとも単層を含むスルホネート官能コーティングを形成する工程と、を含み、
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから拭い取りにより指紋の除去が可能である、
方法。
【請求項37】
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから、水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより、指紋の除去が可能である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記スルホネート官能コーティング組成物がアルコール及び/又は水を含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記スルホネート官能コーティング組成物が、テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項36〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記スルホネート官能コーティング組成物がテトラアルコキシシラン、シリカ、又はケイ酸リチウムを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記基材表面が、金属表面、セラミック表面、有機高分子表面、又はこれらの組み合わせを含む、請求項36〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記非双性イオン性化合物が式(I)のものであって、
[(MO)(Q)Si(XCHSO3−n]Y2/nr+r
(I)
式中、
各Qは、ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、及び1〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ基から独立に選択され、
Mは、水素、アルカリ金属、及び平均分子量150未満かつpKa 11超の強有機塩基の有機カチオンから選択され、
Xは有機連結基であり、
Yは、水素、アルカリ土類金属、平均分子量200未満かつpKa 11未満のプロトン化弱塩基の有機カチオン、アルカリ金属、及び平均分子量150未満かつpKa 11超の強有機塩基の有機カチオンから選択され、ただしYが水素、アルカリ土類金属、及び前記プロトン化弱塩基の有機カチオンから選択されるとき、Mは水素であり、
rはYの価数に等しく、
nは1又は2である、請求項36〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
スルホネート官能基を含む前記非双性イオン性化合物がアルコキシシラン化合物である、請求項36〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
下塗りコーティング組成物を前記基材表面に塗布する工程が、
前記基材表面をナノ粒子含有コーティング組成物と接触させる工程であって、該ナノ粒子含有コーティング組成物が、
40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子と、
≦3.5のpKaを有する酸と、を含む、5未満のpHを有する水性分散液を含む、工程と、
前記ナノ粒子含有コーティング組成物を乾燥させ前記基材表面上にシリカナノ粒子下塗りコーティングを提供する工程と、を含む、請求項36〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ナノ粒子含有コーティング組成物中の前記シリカナノ粒子の濃度が0.1重量%〜20重量%である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記酸が、シュウ酸、クエン酸、HPO、HCl、HBr、HI、HBrO、HNO、HClO、HSO、CHSOH、CFSOH、CFCOH、CHSOOH、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記ナノ粒子含有コーティング組成物がテトラアルコキシシランを更に含む、請求項44〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ナノ粒子含有コーティング組成物のpHが3未満である、請求項44〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記シリカナノ粒子が20ナノメートル以下の平均粒径を有する、請求項36〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
指紋の除去性を改善するための金属又は有機高分子表面を含む基材の処理方法であって、
前記金属又は有機高分子表面をスルホネート官能コーティング組成物と接触させる工程であって、該スルホネート官能コーティング組成物が、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む非双性イオン性化合物を含む、工程と、
前記スルホネート官能コーティング組成物を乾燥させ、シロキサン結合を介して前記基材表面に結合される前記スルホネート官能非双性イオン性化合物の少なくとも単層を含むスルホネート官能コーティングを形成する工程と、を含み、
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから拭い取りにより指紋の除去が可能である、方法。
【請求項51】
前記乾燥したスルホネート官能コーティングから、水及び/又は水蒸気、並びに拭い取りにより、指紋の除去が可能である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記スルホネート官能コーティング組成物がアルコール及び/又は水を含む、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記スルホネート官能コーティング組成物が、テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項50〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記スルホネート官能コーティング組成物がテトラアルコキシシラン、シリカ、又はケイ酸リチウムを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記非双性イオン性化合物が式(I)のものであって、
[(MO)(Q)Si(XCHSO3−n]Y2/nr+r
(I)
式中、
各Qは、ヒドロキシル、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、及び1〜4個の炭素原子を含有するアルコキシ基から独立に選択され、
Mは、水素、アルカリ金属、及び平均分子量150未満かつpKa 11超の強有機塩基の有機カチオンから選択され、
Xは有機連結基であり、
Yは、水素、アルカリ土類金属、平均分子量200未満かつpKa 11未満のプロトン化弱塩基の有機カチオン、アルカリ金属、及び平均分子量150未満かつpKa 11超の強有機塩基の有機カチオンから選択され、ただしYが水素、アルカリ土類金属、及び前記プロトン化弱塩基の有機カチオンから選択されるとき、Mは水素であり、
rはYの価数に等しく、
nは1又は2である、請求項50〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
スルホネート官能基を含む前記非双性イオン性化合物がアルコキシシラン化合物である、請求項50〜54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
請求項36〜56のいずれか一項に記載の方法により製造された、親水性物品。
【請求項58】
基材表面と、該基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤と、シロキサン結合を介して前記ナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能非双性イオン性コーティングと、を含み、前記ナノ粒子含有下塗剤が40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子の粒塊を含み、前記粒塊がシリカナノ粒子の三次元多孔質ネットワークを含み、前記シリカナノ粒子が隣接するシリカナノ粒子に結合している、コーティングされた物品。
【請求項59】
前記基材表面が、金属表面、セラミック表面、有機高分子表面、又はこれらの組み合わせを含む、請求項58に記載のコーティングされた物品。
【請求項60】
前記スルホネート官能コーティングが、シロキサン結合を介して前記ナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能化合物の少なくとも単層を含む、請求項58又は59に記載のコーティングされた物品。
【請求項61】
前記ナノ粒子含有下塗剤の厚さが100Å〜10,000Åである、請求項58〜60のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項62】
前記スルホネート官能コーティングの厚さが10マイクロメートル以下である、請求項58〜61のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項63】
前記スルホネート官能コーティングの厚さが1マイクロメートル以下である、請求項62に記載のコーティングされた物品。
【請求項64】
表面の洗浄方法であって、
前記スルホネート官能コーティング上に指紋を有する、請求項57〜63のいずれか一項に記載のコーティングされた物品のスルホネート官能コーティングを拭う工程と、
前記指紋を除去する工程と、を含む、方法。
【請求項65】
前記指紋に水及び/又は水蒸気を適用する工程と、拭き取りにより前記指紋を除去する工程と、を更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
表面からの指紋の除去方法であって、
基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤を含む基材表面と、シロキサン結合を介して前記下塗剤に結合されるスルホネート官能非双性イオン性コーティングと、を含むコーティングされた物品を受け取る工程と、
指紋を拭い取る工程を含む、前記スルホネート官能表面から指紋を除去する工程と、を含む、方法。
【請求項67】
前記スルホネート官能表面から指紋を除去する工程が、前記指紋に水及び/又は水蒸気を適用する工程と、拭い取る工程と、を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む非双性イオン性化合物と、
アルコール及び/又は水と、
テトラアルコキシシラン、そのオリゴマー、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、シリカ、又はこれらの組み合わせと、を含む、コーティング組成物。
【請求項69】
基材表面と、該基材表面上に配置されるナノ粒子含有下塗剤と、シロキサン結合を介して前記ナノ粒子含有下塗剤に結合されるスルホネート官能コーティングと、を含み、前記ナノ粒子含有下塗剤が40ナノメートル以下の平均粒径を有するシリカナノ粒子の粒塊と、50ナノメートル超の平均粒径を有するシリカナノ粒子と、を含み、前記粒塊がシリカナノ粒子の三次元多孔質ネットワークを含み、前記シリカナノ粒子が隣接するシリカナノ粒子に結合している、コーティングされた物品。
【請求項70】
前記シリカナノ粒子が最大500ナノメートルの平均粒径を有する、請求項69に記載のコーティングされた物品。
【請求項71】
前記シリカナノ粒子が二峰性分布を有する、請求項69に記載のコーティングされた物品。
【請求項72】
シリカナノ粒子の前記二峰性分布が、2ナノメートル〜15ナノメートルの範囲の第1の分布と20ナノメートル〜500ナノメートルの範囲の第2の分布を有する、請求項71に記載のコーティングされた物品。
【請求項73】
前記第1の分布のナノ粒子対第2の分布のナノ粒子の重量比が1:99〜99:1の範囲内である、請求項72に記載のコーティングされた物品。
【請求項74】
前記スルホネート官能コーティングが、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む双性イオン性化合物を含む、請求項69〜73のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。
【請求項75】
前記スルホネート官能コーティングが、スルホネート官能基、並びにアルコキシシラン基及び/又はシラノール官能基を含む非双性イオン性化合物を含む、請求項69〜73のいずれか一項に記載のコーティングされた物品。

【図1】
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【公表番号】特表2013−514875(P2013−514875A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544861(P2012−544861)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060915
【国際公開番号】WO2011/084661
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】