説明

スルホポリエステルからの水分散性多成分繊維

少なくとも25℃のTgを有するスルホポリエステルから誘導された水分散性繊維を開示する。この繊維には、単独のスルホポリエステル又はスルホポリエステルと水分散性又は水非分散性ポリマーとのブレンドが含まれていてもよい。また、少なくとも57℃のTgを有する水分散性スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを含む多成分繊維も開示する。この多成分繊維は、マイクロデニール繊維を製造するために使用することができる。繊維状物品を、水分散性繊維、多成分繊維及びマイクロデニール繊維から製造することができる。この繊維状物品は、水分散性及びマイクロデニール不織布、布帛及び多層物品、例えばワイプ、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、パンティライナー、生理用ナプキン、包帯及び手術用包帯を含む。また、水分散性繊維、不織布及びマイクロデニールウェブのための方法を開示する。この繊維及び繊維状物品は、フラッシュ性パーソナルケア及びクリーニング製品、使い捨て保護外衣及び積層バインダーにおける更なる応用を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホポリエステルからなる水分散性繊維及び繊維状物品に関する。本発明は、更に、スルホポリエステルからなる多成分繊維(multicomponent fiber)並びにそれから製造されたマイクロデニール繊維及び繊維状物品に関する。本発明は、また、水分散性で、多成分で、マイクロデニールの繊維のための方法及びそれから製造された不織布に関する。この繊維及び繊維状物品は、フラッシュ可能な(又は水流性)(flushable)パーソナルケア製品及び医療製品に於ける応用を有する。
【背景技術】
【0002】
繊維、溶融ブローウェブ及びその他の溶融紡糸繊維状物品は、ポリ(プロピレン)、ポリアミド及びポリエステルのような熱可塑性ポリマーから製造されてきた。これらの繊維及び繊維状物品の一つの一般的な応用は、不織布、特に、パーソナルケア製品、例えばワイプ(wipe)、女性用衛生製品、ベビー用おむつ、成人用失禁ブリーフ、病院/手術及びその他の医療用使い捨て用品、保護用布帛及び層、ジオテキスタイル(geotextile)、工業用ワイプ及びフィルター媒体にある。残念ながら、従来の熱可塑性ポリマーから製造されたパーソナルケア製品は、処理することが困難で、通常埋め立て地に置かれている。一つの見込みのある処理の代替方法は、これらの製品又はそれらの成分を「フラッシュ性(flushable)」にする、即ち、公共下水設備に適合性にすることである。水分散性又は水溶解性材料の使用は、また、パーソナルケア製品のリサイクル性及び再生利用を改良する。パーソナルケア製品で現在使用されている種々の熱可塑性ポリマーは、固有的に水分散性又は水溶解性ではなく、従って、容易に崩壊し、そして下水設備で処理できるか又は容易にリサイクルできる物品を作らない。
【0003】
フラッシュ性パーソナルケア製品の望ましいことは、種々の程度の水感応性を有する、繊維、不織布及びその他の繊維状物品についての要求になった。これらの要求に取り組むための種々のアプローチは、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9に記載されている。しかしながら、これらのアプローチは、多数の欠点を有し、湿潤及び乾燥条件下で、引張強度、吸収性、可撓性及び布帛団結性のような性能特性の満足できるバランスを有していない。
【0004】
例えば、典型的な不織技術は、強い団結性及びその他の望ましい特性を有するウェブを形成するために、樹脂結合接着剤で処理された繊維の多方向堆積をベースにしている。しかしながら、得られるアセンブリは、一般的に、水感応性(water responsibility)に劣り、そしてフラッシュ可能な応用のためには適していない。バインダーの存在は、また、最終製品に於ける望ましくない特性、例えば減少したシート濡れ性、増加した剛性、粘着性及びより高い製造コストになるであろう。また、使用の間に適切な湿潤強度を示し、なおも処理の際に迅速に分散するバインダーを製造することは困難である。従って、これらのバインダーを使用する不織アセンブリは、環境条件下でゆっくり崩壊するか又は体液の存在下で適切なものよりも低い湿潤強度特性を有する。この問題に取り組むために、pH及びイオン感受性水分散性バインダー、例えば添加された塩と共に又は塩無しで、アクリル酸又はメタクリル酸を含有するラテックスが公知であり、例えば特許文献1に記載されている。しかしながら、公共下水設備及び住宅汚水処理システムに於けるイオン濃度及びpHレベルは、地理的場所の間で広範囲に変化し得、バインダーが溶解性になるか又は分散するためには十分ではない。この場合に、繊維状物品は処理後に崩壊せず、そして排水管若しくは下水側溝を詰まらせ得る。
【0005】
水分散性成分及び熱可塑性水非分散性成分を含有する多成分繊維が、例えば特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14及び特許文献15に記載されている。例えば、これらの多成分繊維は、造形された又は設計された横断面、例えば海島型、シースコア型、横並び型又は分割されたパイ型形状を有する二成分繊維であってよい。この多成分繊維を水又は希アルカリ性溶液に付し、そこで、水分散性成分を溶解除去して、分離したとき極めて小さい繊度の独立繊維である、水非分散性成分を後に残すことができる。しかしながら、良好な水分散性を有するポリマーは、しばしば、得られる多成分繊維に粘着性を与え、これによって繊維を、特に熱い湿潤条件下で、数日後に巻き取り又は貯蔵中に、一緒に粘着、ブロック又は融着させる。融着を防止するために、しばしば、脂肪酸又は油系仕上げ剤が、繊維の表面に適用される。更に、時々、例えば、特許文献16に記載されているように、大きい比率の顔料又は充填剤が、繊維の融着を防止するために水分散性ポリマーに添加される。このような油仕上げ剤、顔料及び充填剤は、追加の加工工程を必要とし、最終繊維に望ましくない特性を与え得る。多くの水分散性ポリマーは、また、それらの除去のためにアルカリ性溶液を必要とし、アルカリ性溶液は、繊維の他のポリマー成分の劣化、例えばインヘレント粘度、靱性及び溶融強度の低下を起こすおそれがある。更に、幾つかの水分散性ポリマーは、ハイドロ絡合(又は水力絡合)(hydroentanglement)の間に水に対する曝露に耐えることができず、従って、不織ウェブ及び布帛の製造のためには適していない。
【0006】
その代わりに、水分散性成分は、不織ウェブに於ける熱可塑性繊維のための結合剤として機能し得る。水に対して曝露したとき、繊維−繊維結合は壊れて、不織布がその団結性を失い、そして個々の繊維に崩壊する。しかしながら、これらの不織ウェブの熱可塑性繊維成分は、水分散性ではなく、水性媒体中に存在したままであり、従って、結局は、自治体の廃水処理プラントから除去しなくてはならない。ハイドロ絡合は、非常に低レベル(5重量%未満)の、繊維を一緒に保持するための添加されたバインダー無しに又はこれと共に、崩壊性不織布を製造するために使用することができる。これらの布帛は処理の際に崩壊し得るが、これらは、しばしば、水溶性又は水分散性ではなく、そして下水溝システム内で絡み合い及び閉塞になり得る繊維を利用する。任意の添加された水分散性バインダーは、また、ハイドロ絡合によって最小の影響を受けなくてはならず、ゼリー状堆積又は架橋を形成してはならず、それによって布帛取扱い又は下水関連問題に寄与しなくてはならない。
【0007】
僅かに水溶性又は水分散性ポリマーが入手できるが、一般的に、溶融ブロー繊維形成操作又は溶融紡糸に適用できない。ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクリル酸のようなポリマーは、適当な溶融粘度が得られる点よりも低い温度で起こる熱分解の結果として、溶融加工できない。高分子量ポリエチレンオキシドは、適当な熱安定性を有するが、ポリマー界面で高い粘度溶液を与え、遅い崩壊速度になるであろう。水分散性スルホポリエステルが、例えば、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22及び特許文献23に記載されている。しかしながら、典型的なスルホポリエステルは、低分子量の熱可塑性樹脂であり、これは、脆く、そして破壊又は砕けない材料のロールを得るための巻取操作に耐えるための可撓性を欠いている。スルホポリエステルは、また、フィルム又は繊維への加工の間に粘着又は融着を示すことができ、これは、回避するために、油仕上げ剤又は大量の顔料若しくは充填剤の使用を必要とする。低分子量ポリエチレンオキシド(更に一般的にポリエチレングリコールとして知られている)は、また繊維応用のための必要な物理的特性を有しない、弱い/脆いポリマーである。公知の水溶性ポリマーから溶液技術によって繊維を形成することは取り得るみちであるが、溶媒、特に水を除去することの追加の複雑性は、製造コストを増加させる。
【0008】
従って、水分の存在下で、特に人体液に曝露した際に、適切な引張強度、吸収性、可撓性及び布帛団結性を示す、水分散性繊維及びそれから製造された繊維状物品についてのニーズが存在する。更に、繊維状物品は、バインダーを必要とせず、そして住宅又は自治体下水設備中に完全に分散又は溶解することを要求される。潜在的な用途には、これらに限定されないが、溶融ブローウェブ、スパンボンド布帛、ハイドロ絡合布帛、乾式不織布、二成分繊維成分、接着促進層、セルロース用バインダー、フラッシュ性不織布及びフィルム、溶解性バインダー繊維、保護層並びに水中に放出又は溶解すべき活性成分用の担体が含まれる。また、紡糸運転の間にフィラメントの過剰の粘着又は融着を示さず、中性又は僅かに酸性pHで熱水によって容易に除去され、そして不織布を製造するためのハイドロ絡合方法のために適している、水分散性成分を有する多成分繊維についてのニーズが存在する。他の押出可能な溶融紡糸繊維状材料も可能である。
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,548,592号明細書
【特許文献2】米国特許第6,552,162号明細書
【特許文献3】米国特許第5,281,306号明細書
【特許文献4】米国特許第5,292,581号明細書
【特許文献5】米国特許第5,935,880号明細書
【特許文献6】米国特許第5,509,913号明細書
【特許文献7】米国特許出願第09/775,312号明細書
【特許文献8】米国特許出願第09/752,017号明細書
【特許文献9】PCT国際公開第WO01/66666A2号明細書
【特許文献10】米国特許第5,916,678号明細書
【特許文献11】米国特許第5,405,698号明細書
【特許文献12】米国特許第4,966,808号明細書
【特許文献13】米国特許第5,525,282号明細書
【特許文献14】米国特許第5,366,804号明細書
【特許文献15】米国特許第5,486,418号明細書
【特許文献16】米国特許第6,171,685号明細書
【特許文献17】米国特許第5,543,488号明細書
【特許文献18】米国特許第5,853,701号明細書
【特許文献19】米国特許第4,304,901号明細書
【特許文献20】米国特許第6,211,309号明細書
【特許文献21】米国特許第5,570,605号明細書
【特許文献22】米国特許第6,428,900号明細書
【特許文献23】米国特許第3,779,993号明細書
【発明の開示】
【0010】
本発明者らは、意外にも、可撓性水分散性繊維をスルホポリエステルから製造できることを見出した。従って、本発明は、
(A)少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルであって、このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又は2種以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
からなる、
(B)任意的な、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー並びに
(C)任意的な、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、このブレンドは非混和性のブレンドである)、
を含んでなる水分散性繊維であって、この繊維には、繊維の全重量基準で、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含まれている水分散性繊維を提供する。
【0011】
本発明の繊維は、水中に迅速に分散又は溶解し、溶融ブロー又は溶融紡糸によって製造することができる一成分繊維であってよい。この繊維は、単一のスルホポリエステル又はスルホポリエステルと水分散性若しくは水非分散性のポリマーとのブレンドから製造することができる。従って、本発明の繊維には、任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマーが含有されていてよい。更に、この繊維には、任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマーが含有されていてよい(但し、このブレンドは非混和性のブレンドである)。本発明には、また、本発明の水分散性繊維を含む繊維状物品が含まれる。従って、本発明の繊維は、種々の繊維状物品、例えばヤーン、溶融ブローウェブ、スパンボンドウェブ及び不織布(これらは、次いで、水分散性又はフラッシュ性である)を製造するために使用することができる。本発明のステープル繊維は、また、紙、不織ウェブ及び織物ヤーン内で、天然又は合成繊維とブレンドすることができる。
【0012】
本発明の他の面は、
(A)少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルであって、
(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなるスルホポリエステル、
(B)任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた第一の水分散性ポリマー並びに
(C)任意的に、ブレンドを形成するためにスルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、このブレンドは非混和性ブレンドである)、
を含んでなる水分散性繊維であって、この繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている水分散性繊維である。
【0013】
本発明の水分散性繊維状物品には、パーソナルケア製品、例えばワイプ、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、トレーニングパンツ、生理用ナプキン、包帯、創傷ケア及び手術用包帯が含まれる。水分散性であることに加えて、本発明の繊維状物品は、フラッシュ性である、即ち、住宅及び自治体下水設備で廃棄するために適合しており、適している。
【0014】
本発明は、また、水分散性スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む多成分繊維を提供する。この繊維は、水非分散性ポリマーが、非分散性セグメントのためのバインダー又はカプセル化マトリックスとして作用する、介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されているセグメントとして存在するように設計された形状を有する。従って、本発明の他の面は、
A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルであって、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなるスルホポリエステル、並びに
B)スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなる複数のセグメント(但し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含んでなる、造形された断面を有する多成分繊維であって、この繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている多成分繊維である。
【0015】
このスルホポリエステルは、巻き取り及び長期間貯蔵の間の、繊維の粘着及び融着を大きく減少する、少なくとも57℃のガラス転移温度を有する。このスルホポリエステルは、多成分繊維を水と接触させることによって除去して、水非分散性セグメントをマイクロデニール繊維として後に残すことができる。従って、本発明は、また、マイクロデニール繊維のための方法であって、
A.少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなり、(ここで、この繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、お互いから実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)並びに
B.この多成分繊維を水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0016】
この水非分散性ポリマーは、DIN規格54900によって求めたときに、生物崩壊性であり及び/又はASTM規格方法D6340−98によって求めたときに、生物分解性であってよい。この多成分繊維は、また、繊維状物品、例えばヤーン、布帛、溶融ブローウェブ、スパンボンドウェブ又は不織布を製造するために使用することができ、そして繊維状物品は、繊維の1個又はそれ以上の層からなっていてよい。次いで、多成分繊維を有する繊維状物品を水と接触させて、マイクロデニール繊維を含有する繊維状物品を製造することができる。従って、本発明の他の面は、マイクロデニール繊維ウェブのための方法であって、
A.少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなり、ここで、多成分繊維は、水非分散性ポリマーからなる複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、
B.工程Aの多成分繊維を重ね、そして集めて、不織ウェブを形成し、そして
C.この不織ウェブを水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる方法である。
【0017】
本発明は、また、水分散性不織布のための方法であって、
I.水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し、(ここで、このポリマー組成物は、
(A)少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル、このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる
(B)任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー;並びに
(C)任意的に、ブレンドを形成するためにスルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、このブレンドは非混和性ブレンドである)、
を含んでなり、ポリマー組成物には、ポリマー組成物の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている、
II.フィラメントを溶融紡糸し、そして
III.工程IIのフィラメントを重ね、そして集めて、不織ウェブを形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0018】
従って、本発明は、水分散性スルホポリエステルを溶融紡糸し、そして不織ウェブを形成することによる、水分散性不織布のための新規で安価な方法を提供する。この不織布は、平らな布帛又は三次元形状の形態であってよく、そして前記のパーソナルケア物品のような種々の繊維状物品の中に含有させることができ又は水分散性及び/若しくはフラッシュ性保護外衣、例えば手術ガウン並びに化学的及びバイオハザードの清掃及び研究所作業のための保護衣類の製造のために使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、水分の存在下で、特に人体液に曝露した際に、引張強度、吸収性、可撓性及び布帛団結性を示す、水分散性繊維及び繊維状物品を提供する。本発明の繊維及び繊維状物品は、加工の間の繊維の粘着又は融着を防止するための、油、ワックス若しくは脂肪酸仕上げ剤の存在又は大量(典型的に10重量%以上)の顔料若しくは充填剤の使用を必要としない。更に、本発明の新規な繊維から製造された繊維状物品は、バインダーを必要とせず、そして家庭又は公共下水設備の中に容易に分散又は溶解する。一般的な態様に於いて、本発明は、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルを含む水分散性繊維であって、このスルホポリエステルが、(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)からなる繊維を提供する。本発明の繊維には、任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー及び任意的に、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、このブレンドは非混和性のブレンドである)が含有されていてよい。本発明の繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている。本発明には、また、これらの繊維からなる繊維状物品が含まれ、そしてパーソナルケア製品、例えばワイプ、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、成人失禁ブリーフ、トレーニングパンツ、生理用ナプキン、包帯及び手術用包帯が含まれてよい。この繊維状物品は、1個又はそれ以上の繊維の吸収層を有してよい。
【0020】
本発明の繊維は、一成分繊維、二成分繊維又は多成分繊維であってよい。例えば本発明の繊維は、単一のスルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドを溶融紡糸することによって製造することができ、そして造形された断面を有するステープル、モノフィラメント及びマルチフィラメント繊維を含む。更に、本発明は、スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、別々に、造形された又は設計された横断形状、例えば「海島型」、シース−コア型、横並び型又は分割されたパイ型形状を有する紡糸口金に通して押し出すことによって製造することができる、例えば特許文献10に記載されているような多成分繊維を提供する。このスルホポリエステルは、後で、界面層又はパイセグメントを溶解することによって除去し、そして水非分散性ポリマー(群)の、より小さいフィラメント又はマイクロデニール繊維を残すことができる。例えば、スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを、そこでポリマーが分割された紡糸口金プレートの中に導入されるポリマー分配システムに供給することができる。ポリマーは、繊維紡糸口金への分離した経路に従い、そして2個の同心円形穴からなり、そうしてシース−コア型繊維を与える紡糸口金穴又は直径に沿って複数の部分に分割されて、横並び型を有する繊維を与える円形紡糸口金穴で一緒にされる。その代わりに、非混和性で水分散性のスルホポリエステル及び水非分散性のポリマーを、複数の放射状溝を有し、分割されたパイ型断面を有する多成分繊維を製造する紡糸口金の中に別々に導入することができる。典型的に、スルホポリエステルは、シースコア型形状の「シース」成分を形成する。複数のセグメントを有する繊維断面に於いて、水非分散性のセグメントは、典型的に、スルホポリエステルによってお互いから実質的に分離されている。その代わりに、多成分繊維は、スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを別々の押出機内で溶融し、そしてポリマー流を、海島型形状断面を有する繊維を与えるために、小さい薄い管又はセグメントの形で複数の分布流路を有する1個の紡糸口金の中に向けることによって形成することができる。このような紡糸口金の例は、特許文献14に記載されている。本発明に於いて、典型的に、スルホポリエステルは「海」成分を形成し、そして水非分散性ポリマーは「島」成分を形成する。
【0021】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体例に於いて記載した数値は、できるだけ正確に報告している。しかしながら、任意の数値は、固有的に、それらのそれぞれの試験測定値に於いて見出される標準偏差から必然的に得られる一定の誤差を含む。
【0022】
本発明の一成分繊維及び繊維状物品は、水分散性であり、そして典型的に室温で完全に分散する。それらの分散性又は不織繊維若しくは多成分繊維からの除去速度を加速するために、より高い水温度を使用することができる。一成分繊維及び一成分繊維から製造された繊維状物品に関して本明細書で使用する用語「水分散性」は、用語「水消散性」、「水崩壊性」、「水溶解性」、「水散逸性」、「水溶性」、「水除去性」、「ハイドロソリュブル」及び「ハイドロディスパージブル」と同義語であることを意図し、繊維又は繊維状物品が、水の作用によって、その中に又はそれを通して分散又は溶解されることを意味するものである。用語「分散した」、「分散性」、「消散する」又は「消散性」は、60℃の温度で、5日以内の時間内に、繊維又は繊維状物品の緩やかな懸濁液又はスラリーを形成するために十分な量の脱イオン水(例えば、100:1 水:繊維重量)を使用して、例えば、濾過又は蒸発によって水を除去した際に、認識できるフィラメントが媒体から回収できないように、繊維又は繊維状物品が、媒体をより多く又はより少なく通して分布されている複数の非干渉性片又は粒子に、溶解、崩壊又は分離していることを意味する。従って、本明細書で使用する「水分散性」は、繊維アセンブリが水中に単純に壊れて、水の除去によって回収することができる、水中の繊維のスラリーを作る、絡み合っている又は結合しているが別種の水不溶性又は非分散性の繊維のアセンブリの単純な崩壊を含むものではない。本発明の関連で、これらの用語の全ては、本明細書に記載したスルホポリエステルへの、水又は水と水混和性共溶媒との混合物の活性を指す。このような水混和性共溶媒の例には、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、エステル等が含まれる。この専門用語について、スルホポリエステルが溶解して真の溶液を形成する条件並びにスルホポリエステルが水性媒体中に分散する条件を含めることが意図される。しばしば、スルホポリエステル組成物の統計的性質のために、単一のスルホポリエステルサンプルを水性媒体中に置くと、可溶性画分及び分散した画分を有することが可能である。
【0023】
同様に、多成分繊維又は繊維状物品の一成分としてのスルホポリエステルを参照して本明細書で使用する用語「水分散性」は、また用語「水消散性」、「水崩壊性」、「水溶解性」、「水散逸性」、「水溶性」、「水除去性」、「ハイドロソリュブル」及び「ハイドロディスパージブル」と同義語であることが意図し、スルホポリエステル成分が、多成分繊維から十分に除去され、そして水の作用によって分散又は溶解されて、その中に含まれている水非分散性繊維の解放及び分離が可能であることを意味するものである。用語「分散した」、「分散性」、「消散する」又は「消散性」は、60℃の温度で、5日以内の時間内に、繊維又は繊維状物品の緩やかな懸濁液又はスラリーを形成するために十分な量の脱イオン水(例えば、100:1 水:繊維重量)を使用して、スルホポリエステル成分が、多成分繊維から溶解、崩壊又は分離して、水非分散性セグメントから複数のマイクロデニール繊維を後に残すことを意味する。
【0024】
本発明の水分散性繊維は、ポリエステル、又は更に詳しくは、ジカルボン酸モノマー残基、スルホモノマー残基、ジオールモノマー残基及び繰り返し単位を含むスルホポリエステルから製造される。スルホモノマーは、ジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸であってよい。従って、本明細書で使用する用語「モノマー残基」は、ジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸の残基を意味する。本明細書で使用する「繰り返し単位」は、カルボニルオキシ基によって結合された2個のモノマー残基を有する有機構造を意味する。本発明のスルホポリエステルには、実質的に等モル割合の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)が含有され、これらは、繰り返し単位の全モルが100モル%に等しいように、実質的に等しい割合で反応する。従って、本開示に於いて与えられるモルパーセントは、酸残基の全モル数、ジオール残基の全モル数又は繰り返し単位の全モル数を基準にすることができる。例えば全繰り返し単位基準で、ジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸であってよいスルホモノマー30モル%を含有するスルホポリエステルは、スルホポリエステルが、100モル%の繰り返し単位の全量中に30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。従って、各100モルの繰り返し単位の中に30モルのスルホモノマーが存在する。同様に、全酸残基基準で30モル%のジカルボン酸スルホモノマーを含有するスルホポリエステルは、スルホポリエステルが、100モル%の酸残基の全量中に30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。従って、後者の場合に、各100モルの酸残基の中に30モルのスルホモノマーが存在する。
【0025】
本明細書に記載されたスルホポリエステルは、フェノール/テトラクロロエタン溶媒の60/40重量部溶液中で、25℃で、100mLの溶媒中の0.5gのスルホポリエステルの濃度で測定した、少なくとも0.1dL/g、好ましくは0.2〜0.3dL/g、最も好ましくは0.3dL/gよりも大きい、インヘレント粘度(以下、「Ih.V.」と略記する)を有する。本明細書で使用する用語「ポリエステル」は、「ホモポリエステル」及び「コポリエステル」の両方を包含し、そして二官能性カルボン酸と二官能性ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーを意味する。本明細書で使用する用語「スルホポリエステル」は、スルホモノマーを含有する任意のポリエステルを意味する。典型的に、二官能性カルボン酸はジカルボン酸であり、そして二官能性ヒドロキシル化合物は、二価アルコール、例えばグリコール及びジオールである。その代わりに、二官能性カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸、例えばp−ヒドロキシ安息香酸であってよく、そして二官能性ヒドロキシル化合物は、2個のヒドロキシ置換基を有する芳香族核、例えばヒドロキノンであってよい。本明細書で使用する用語「残基」は、対応するモノマーを含む重縮合反応によってポリマーの中に含有される任意の有機構造を意味する。従って、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー又はその関連する酸ハライド、エステル、塩、無水物又はこれらの混合物から誘導することができる。従って、本明細書で使用する用語「ジカルボン酸」は、ジカルボン酸及び高分子量ポリエステルを製造するためのジオールとの重縮合工程に於いて有用である、その関連する酸ハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物又はこれらの混合物を任意ジカルボン酸の任意の誘導体を含むことを意図される。
【0026】
本発明のスルホポリエステルは、1種又はそれ以上のジカルボン酸残基を含む。スルホモノマーの種類及び濃度に依存して、ジカルボン酸残基は、60〜100モル%の酸残基からなっていてよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は、60モル%〜95モル%及び70モル%〜95モル%である。使用することができるジカルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又はこれらの酸の2種若しくはそれ以上の混合物が含まれる。従って、適当なジカルボン酸には、これらに限定されないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4′−オキシジ安息香酸、4,4′−スルホニルジ安息香酸及びイソフタル酸が含まれる。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はジエステルを使用する場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルであり、イソフタル酸及びテレフタル酸の残基が特に好ましい。ジカルボン酸メチルエステルが最も好ましい態様であるが、より高級のアルキルエステル、例えばエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等を含むことも許容される。更に、芳香族エステル、特にフェニルエステルも使用することができる。
【0027】
スルホポリエステルには、全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)が含まれる。スルホモノマー残基の濃度範囲の追加の例は、全繰り返し単位基準で、4〜35モル%、8〜30モル%及び8〜25モル%である。このスルホモノマーは、スルホネート基を含有するジカルボン酸若しくはそのエステル、スルホネート基を含有するジオール又はスルホネート基を含有するヒドロキシ酸であってよい。用語「スルホネート」は、構造「−SO3M」(式中、Mはスルホネート塩のカチオンである)を有するスルホン酸の塩を指す。スルホネート塩のカチオンは、Li+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等のような金属イオンであってよい。その代わりに、スルホネート塩のカチオンは、例えば特許文献19に記載されているような窒素系塩基のような非金属であってよい。窒素系カチオンは、脂肪族化合物、シクロ脂肪族化合物又は芳香族化合物であってよい窒素含有塩基から誘導される。このような窒素含有塩基の例には、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン及びピペリジンが含まれる。窒素系スルホネート塩を含有するモノマーは、典型的に、溶融物でポリマーを製造するために必要な条件で熱的に安定ではないので、窒素系スルホネート塩基を含有するスルホポリエステルを製造するための本発明の方法は、必要な量の、そのアルカリ金属塩の形でのスルホネート基を含有するポリマーを、水中に分散、消散又は溶解させ、次いでアルカリ金属カチオンを窒素系カチオンで交換することである。
【0028】
スルホネート塩のカチオンとして一価のアルカリ金属イオンを使用するとき、得られるスルホポリエステルは、ポリマー中のスルホモノマーの含有量、水の温度、スルホポリエステルの表面積/厚さ等に依存する分散速度で、水中に完全に分散可能である。二価の金属イオンを使用するとき、得られるスルホポリエステルは、冷水により容易に分散されないが、熱水により一層容易に分散される。単一のポリマー組成物中に1種より多い対イオンを使用することが可能であり、そして得られる製造物品の水応答性(water-responsibility)を合わせる又は微調整するための手段を提供することができる。スルホモノマー残基の例には、スルホネート塩基が芳香族酸核、例えばベンゼン、ナフタレン、ジフェニル、オキシジフェニル、スルホニルジフェニル及びメチレンジフェニル又はシクロ脂肪族環、例えばシクロヘキシル、シクロペンチル、シクロブチル、シクロヘプチル及びシクロオクチルに結合しているモノマー残基が含まれる。本発明に於いて使用することができるスルホモノマー残基の他の例は、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸又はこれらの組合せの金属スルホネート塩である。使用することができるスルホモノマーの他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸及びそのエステルである。スルホモノマー残基が、5−ソジオスルホイソフタル酸からである場合、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、酸残基の全モル数基準で、4〜35モル%、8〜30モル%及び8〜25モル%である。
【0029】
スルホポリエステルの製造で使用されるスルホモノマーは、公知の化合物であり、そして当前記技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。例えばスルホネート基が芳香族環に結合しているスルホモノマーは、芳香族化合物を発煙硫酸によってスルホン化して対応するスルホン酸を得、続いて金属酸化物又は塩基、例えば酢酸ナトリウムと反応させて、スルホネート塩を製造することによって製造することができる。種々のスルホモノマーの製造方法は、例えば特許文献23、米国特許第3,018,272号明細書及び米国特許第3,528,947号明細書に記載されている。
【0030】
ポリマーが分散された形であるとき、例えばナトリウムスルホネート塩及びナトリウムを、亜鉛のような異なったイオンで置き換えるためのイオン交換方法を使用して、ポリエステルを製造することも可能である。この種のイオン交換手順は、ナトリウム塩が、通常、ポリマー反応剤溶融相中で一層可溶性である限りに於いて、二価の塩を有するポリマーを製造するよりも一般的に優れている。
【0031】
スルホポリエステルには、脂肪族、シクロ脂肪族及びアラルキルグリコールを含んでよい、1種又はそれ以上のジオール残基が含有されている。シクロ脂肪族ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、それらの純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス及びトランス異性体の混合物として存在してよい。本明細書で使用する用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義語であり、そして全ての二価アルコールを意味する。ジオールの例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオール又はこれらのグリコールの1種又はそれ以上の組合せが含まれる。
【0032】
ジオール残基には、全ジオール残基基準で25モル%〜100モル%の、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)の残基が含有されていてよい。例えば式中、nが2〜6である、低分子量ポリエチレングリコールの限定されない例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールである。これらの低分子量グリコールの中で、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが最も好ましい。式中、nが7〜500である、より高い分子量のポリエチレングリコール(本明細書に於いて「PEG」と略記する)には、ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)(以前は、ユニオン・カーバイド社(Union Carbide))の製品である、名称カーボワックス(CARBOWAX)(登録商標)で公知である市販製品が含まれる。典型的に、PEGは、他のジオール、例えばジエチレングリコール又はエチレングリコールと組合せて使用される。6よりも大きくから500までの範囲であるnの値に基づいて、分子量は、300よりも大きくから22,000g/モルの範囲であってよい。分子量とモル%とは互いに逆比例し、特に、指定された親水性度を達成するために、分子量を増加させると、モル%は下がるであろう。例えば1000の分子量を有するPEGは全ジオールの10モル%以下を構成し、一方、10,000の分子量を有するPEGは、典型的に、全ジオールの1モル%よりも少ないレベルで含有されることを考えるのが前記概念の例示である。
【0033】
ある種の二量体、三量体及び四量体ジオールは、プロセス条件を変化させることによって制御できる副反応のために、その場(in situ)で形成させることができる。例えば変化する量のジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールは、重縮合反応を酸性条件下で実施するとき容易に起こる、酸触媒作用脱水反応から、エチレングリコールから生成させることができる。これらの副反応を遅延させるために、当業者に公知である緩衝液の存在を反応混合物に加えることができる。しかしながら、緩衝液を省き、そして二量化、三量化及び四量化反応を進行させる場合に、追加の組成許容範囲が可能である。
【0034】
本発明のスルホポリエステルには、全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)が含有されていてよい。分岐モノマーの限定されない例は、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール(threitol)、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリト酸無水物、ピロメリト酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸又はこれらの組合せである。分岐モノマー濃度範囲の更なる例は、0〜20モル%及び0〜10モル%である。分岐モノマーの存在は、これらに限定されないが、レオロジー、溶解度及び引張特性を合わせる能力を含む、本発明のスルホポリエステルへの多数の可能性のある利点になり得る。例えば、一定の分子量で、線状類似体に比較した分岐スルホポリエステルは、また、重合後架橋反応を容易にすることができる、より高い濃度の末端基を有するである。しかしながら、分岐剤の高い濃度で、スルホポリエステルはゲル化する傾向がある。
【0035】
本発明の繊維のために使用されるスルホポリエステルは、当業者に公知である標準的技術、例えば示差走査熱量法(「DSC」)を使用して、乾燥ポリマーで測定したとき、少なくとも25℃のガラス転移温度(本明細書に於いて、「Tg」と略記する)を有する。本発明のスルホポリエステルのTg測定は、「乾燥ポリマー」、即ち外来の又は吸収された水が、ポリマーを200℃の温度に加熱し、そしてサンプルを室温にまで戻すことによって駆逐されるポリマーサンプルを使用して実施する。典型的には、スルホポリエステルを、DSC装置内で、サンプルを水蒸発温度よりも高い温度まで加熱する第一熱走査を行い、サンプルをこの温度でポリマー中に吸収された水の蒸発が完結する(大きく広い吸熱によって示される)まで保持し、サンプルを室温にまで冷却し、次いでTg測定値を得るための第二熱走査を行うことによって乾燥させる。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgが可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は、30℃、48℃、55℃、65℃、70℃、75℃、85℃及び90℃である。
【0036】
本発明の新規な繊維は、前記のスルホポリエステルから本質的になっていてよいか又はなっていてよい。しかしながら、他の態様に於いて、本発明のスルホポリエステルは、単一のポリエステルであってよいか又は得られる繊維の特性を変性するために1種又はそれ以上の補足的ポリマーとブレンドされていてよい。この補足的ポリマーは、応用に依存して水分散性であってよく又は水分散性でなくてよく、そしてスルホポリエステルと混和性であってよく又は非混和性であってよい。補足的ポリマーが水非分散性である場合、スルホポリエステルとのブレンドが非混和性であることが好ましい。本明細書で使用する用語「混和性」は、ブレンドが、単一組成依存性Tgによって示されるように、単一の均一な無定形相を有することを意味することを意図する。例えば第二のポリマーと混和性である第一のポリマーは、例えば特許文献20に示されているように、第二のポリマーを「可塑化する」ために使用することができる。反対に、本明細書で使用する用語「非混和性」は、少なくとも2個のランダムに混合された相を示し、そして1個より多いTgを示すブレンドを示す。幾つかのポリマーは、スルホポリエステルと非混和性であり、そしてなお相溶性である。混和性及び非混和性ポリマーブレンドの更なる一般的説明及びこれらのキャラクタリゼーションのための種々の分析技術は、「ポリマーブレンド(Polymer Blend)」、第1巻及び第2巻、D.R.Paul及びC.B.Bucknall編、2000年、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)に記載されている。
【0037】
スルホポリエステルとブレンドすることができる水分散性ポリマーの限定されない例は、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、イソプロピルセルロース、メチルエーテル澱粉、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリエチルオキサゾリン、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリビニルメチルオキサゾリドン、水分散性スルホポリエステル、ポリビニルメチルオキサゾリジモン、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)及びエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーである。スルホポリエステルとブレンドすることができる水非分散性であるポリマーの例には、これらに限定されないが、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンのホモ−及びコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、及びポリアミド、例えばナイロン−6、ポリラクチド、カプロラクトン、イースター・バイオ(Eastar Bio)(登録商標)(ポリ(テトラメチレンアジペート−共−テレフタレート)、イーストマン・ケミカル社(Eastman Chemical Company)の製品)、ポリカーボネート、ポリウレタン並びにポリ塩化ビニルが含まれる。
【0038】
本発明に従って、スルホポリエステルの1種より多いブレンドを、得られる繊維又は繊維状物品、例えば不織布又はウェブの最終使用特性に合わせるために使用することができる。1種又はそれ以上のスルホポリエステルのブレンドは、水分散性一成分繊維について少なくとも25℃のTg及び多成分繊維について少なくとも57℃のTgを有する。従って、ブレンドは、また、不織物の製造を容易にするために、スルホポリエステルの加工特性を変えるために役立てることができる。他の例に於いて、ポリプロピレンとスルホポリエステルとの非混和性ブレンドは、真の溶解性が要求されないとき、水中で崩壊しそして完全に分散する一般的な不織ウェブを与えるであろう。この後者の例に於いて、望ましい性能は、スルホポリエステルが製品の実際の使用の間に関与しないか又はスルホポリエステルは追い払われ、製品の最終形態が利用される前に除去されるが、ポリプロピレンの物理的特性を維持することに関する。
【0039】
スルホポリエステル及び補足ポリマーは、回分法、半連続法又は連続法でブレンドすることができる。小規模の回分は、当業者に公知である任意の強力混合装置、例えばバンバリーミキサー内で容易に製造し、その後繊維に溶融紡糸することができる。成分は、また、適切な溶媒中の溶液中でブレンドすることができる。溶融ブレンド法には、スルホポリエステル及び補足ポリマーを、ポリマーを溶融するために十分な温度でブレンドすることが含まれる。このブレンドは更なる使用のために冷却し、そしてペレット化することができ又は溶融ブレンドは、この溶融したブレンドから繊維形状に直接溶融紡糸することができる。本明細書で使用する用語「溶融」には、これらに限定されないが、ポリエステルを単に軟化させることが含まれる。ポリマー技術分野に於いて一般的に知られている溶融混合方法について、「ポリマーの混合及び配合(Mixing and Compounding of Polymers)」(I.Manas-Zloczower及びZ.Tadmor編、Carl Hanser Verlag Publisher、1994年、ニューヨーク、N.Y.)を参照。
【0040】
本発明は、また、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルからなる水分散性繊維であって、このスルホポリエステルが、(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)からなる繊維を提供する。前記のように、この繊維には、スルホポリエステルとブレンドされた第一水分散性ポリマー及び任意に、ブレンドが非混和性ブレンドであるように、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマーが含有されていてよい。本発明の繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている。第一水分散性ポリマーは、前記した通りである。このスルホポリエステルは、少なくとも25℃のガラス転移温度を有していなくてはならないが、例えば35℃、48℃、55℃、65℃、70℃、75℃、85℃及び90℃のTgを有していてよい。このスルホポリエステルには、他の濃度、例えば60〜95モル%及び75〜95モル%のイソフタル酸残基が含有されていてよい。イソフタル酸残基濃度範囲の更なる例は、70〜85モル%、85〜95モル%及び90〜95モル%である。このスルホポリエステルは、また、25〜95モル%のジエチレングリコールの残基からなっていてよい。ジエチレングリコール残基濃度範囲の更なる例は、50〜95モル%、70〜95モル%及び75〜95モル%である。このスルホポリエステルには、また、エチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノール(本明細書に於いて「CHDM」と略記する)の残基が含有されていてよい。CHDM残基の典型的な濃度範囲は、10〜75モル%、25〜65モル%及び40〜60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は、10〜75モル%、25〜65モル%及び40〜60モル%である。他の態様に於いて、スルホポリエステルは、75〜96モル%のイソフタル酸の残基及び25〜95モル%のジエチレングリコールの残基からなる。
【0041】
本発明のスルホポリエステルは、適切なジカルボン酸、エステル、無水物又は塩、スルホモノマー及び適切なジオール又はジオール混合物から、典型的な重縮合反応条件を使用して容易に製造される。これらは、運転の連続、半連続及び回分モードによって製造することができ、そして種々の反応器型式を利用することができる。適当な反応器型式の例には、これらに限定されないが、攪拌槽、連続式攪拌槽、スラリー、管型、ワイプド−フィルム(wiped-film)、流下薄膜又は押出反応器が含まれる。本明細書で使用する用語「連続」は、遮断されない方式で同時に、反応剤が導入され、そして生成物が取り出されるプロセスを意味する。「連続」によって、プロセスが、運転に於いて実質的に又は完全に連続であり、「回分」プロセスと対比されるべきであることが意味される。「連続」は、如何なる方法に於いても、例えば、スタートアップ、反応器保全又は計画的運転停止期間のために、プロセスの連続性に於ける正常な遮断を禁じることを意味しない。本明細書で使用する用語「回分」プロセスは、全ての反応剤を反応器に添加し、次いで予定された反応のコースに従って処理し、その間に材料を反応器の中に供給せず又は反応器から取り出さないプロセスを意味する。用語「半連続」は、反応剤の幾らかをプロセスの開始時に装入し、そして残りの反応剤を、反応が進行するとき連続的に供給するプロセスを意味する。その代わりに、半連続プロセスには、また、1種又はそれ以上の生成物を反応が進行するとき連続的に取り出す以外は、全ての反応剤をプロセスの開始時に添加する回分プロセスと同様のプロセスを含むことができる。このプロセスは、スルホポリエステルは、高い温度で長すぎる期間反応器内に滞留すると、外観が損なわれ得るので、経済的理由のためにそしてポリマーの優れた着色を作るために、連続プロセスとして有利に運転される。
【0042】
本発明のスルホポリエステルは、当業者に公知の手順によって製造される。スルホモノマーは、最もしばしば、それからポリマーが製造される反応混合物に直接添加されるが、例えば米国特許第3,018,272号明細書、米国特許第3,075,952号明細書及び米国特許第3,033,822号明細書に記載されているような他の方法が公知であり、また使用することができる。スルホモノマー、ジオール成分及びジカルボン酸成分の反応は、一般的なポリエステル重合条件を使用して実施することができる。例えばエステル交換反応の手段により、即ちジカルボン酸成分のエステル形から、スルホポリエステルを製造するとき、反応方法は2段階からなっていてよい。第一段階に於いて、ジオール成分とジカルボン酸成分、例えばイソフタル酸ジメチルとを、高い温度、典型的に150℃〜250℃で0.5〜8時間0.0kPaゲージ〜414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ、「psig」)の範囲内の圧力で反応させる。好ましくは、エステル交換反応のための温度は、180℃〜230℃の範囲で、1〜4時間であり、その間、好ましい圧力は、103kPaゲージ(15psig)〜276kPaゲージ(40psig)の範囲である。その後、反応生成物をより高い温度下で、減圧下で加熱して、ジオール(これは、これらの条件下で容易に揮発し、そしてシステムから除去される)を除去してスルホポリエステルを生成させる。この第二段階又は重縮合段階を、より高い真空及び一般的に230℃〜350℃、好ましくは250℃〜310℃、最も好ましくは260℃〜290℃の範囲内である温度下で0.1〜6時間又は好ましくは0.2〜2時間、インヘレント粘度によって決定されるとき所望の重合度を有するポリマーが得られるまで続ける。この重縮合段階は、53kPa(400トール)〜0.013kPa(0.1トール)の範囲である減圧下で実施することができる。適切な熱移動及び反応混合物の表面再生を確保するために、両方の段階で、攪拌又は適切な条件が使用される。両方の段階の反応は、適切な触媒、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキルスズ化合物、金属酸化物などによって、容易に実施される。米国特許第5,290,631号明細書に記載されているものと類似の三段階製造手順を、特に酸及びエステルの混合モノマー供給物を使用するとき、使用することができる。
【0043】
エステル交換反応機構によるジオール成分とジカルボン酸成分との反応が、完結まで駆動されることを確保するために、1モルのジカルボン酸成分に対して、1.05〜2.5モルのジオール成分を使用することが好ましい。しかしながら、当業者は、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比が、一般的に、その中で反応プロセスが起こる反応器の設計によって決定されることを理解するであろう。
【0044】
直接エステル化により、即ちジカルボン酸成分の酸形から、スルホポリエステルを製造する際に、スルホポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸の混合物を、ジオール成分又はジオール成分の混合物と反応させることによって製造される。この反応は、7kPaゲージ(1psig)〜1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPaゲージ(100psig)よりも低い圧力で実施され、1.4〜10の平均重合度を有する低分子量、直鎖又は分枝鎖スルホポリエステル生成物を製造する。直接エステル化反応の間に使用される温度は、典型的に180℃〜280℃の範囲、更に好ましくは220℃〜270℃の範囲である。次いで、この低分子量ポリマーを、重縮合反応によって重合させることができる。
【0045】
本発明の水分散性及び多成分繊維並びに繊維状物品には、また、それらの最終用途に有害な影響を与えない、その他の一般的な添加物及び成分が含有されていてよい。例えば、充填剤、表面摩擦改良剤、光及び熱安定剤、押出助剤、耐電防止剤、着色剤、染料、顔料、蛍光増白剤、抗菌剤、偽造防止マーカー、疎水性及び親水性増強剤、粘度改良剤、滑剤、強化材、接着促進剤等のような添加剤を使用することができる。本発明の繊維及び繊維状物品は、加工の間の繊維の粘着又は融着を防止するための、例えば顔料、充填剤、油、ワックス又は脂肪酸仕上げ剤のような添加物の存在を必要としない。本明細書で使用する用語「粘着又は融着」は、繊維又は繊維状物品が、繊維を、その意図する目的のために加工又は使用することができないように、一緒に粘着するか又は塊に融着することを意味すると理解される。粘着及び融着は、繊維若しくは繊維状物品の加工の間に又は数日若しくは数週間に亘って貯蔵する間に起こり得、熱い湿潤条件下で悪化する。本発明の一つの態様に於いて、繊維及び繊維状物品には、繊維又は繊維状物品の全重量基準で10重量%よりも少ないこのような粘着防止添加剤が含有される。例えば、繊維及び繊維状物品には、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されていてよい。他の例に於いて、繊維及び繊維状物品には、繊維の全重量基準で、9重量%よりも少ない、5重量%よりも少ない、3重量%よりも少ない、1重量%よりも少ない、そして0重量%の顔料又は充填剤が含有されていてよい。場合によってはトナーと呼ばれる着色剤を、スルホポリエステルに、所望の中性色相及び/又は光沢を与えるために添加することができる。着色した繊維を望むとき、ジオールモノマーとジカルボン酸モノマーとの反応の間に、顔料又は着色剤を、スルホポリエステル反応混合物中に含有させることができ又はこれらを予備形成したスルホポリエステルと溶融ブレンドすることができる。着色剤を含有させる好ましい方法は、反応性基を有する熱的に安定な有機着色化合物を有する着色剤を使用して、着色剤を共重合させ、そしてスルホポリエステルの中に含有させて、その色相を改良することである。例えば、これらに限定されないが、青及び赤置換アントラキノンを含む、反応性ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を有する染料のような着色剤を、ポリマー鎖の中に共重合させることができる。染料を着色剤として使用するとき、これらは、エステル交換反応又は直接エステル化反応の後で、コポリエステル反応プロセスに添加することができる。
【0046】
本発明の目的のために、用語「繊維」は、織布又は不織布のような二次元又は三次元物品に形成することができる高アスペクト比のポリマー物体を指す。本発明の関連で、用語「繊維」は、「繊維群」と同義語で、1本又はそれ以上の繊維を意味することを意図する。本発明の繊維は、一成分繊維、二成分繊維又は多成分繊維であってよい。本明細書で使用する用語「一成分繊維」は、単一のスルホポリエステル、1種又はそれ以上のスルホポリエステルのブレンド又は1種又はそれ以上のスルホポリエステルと1種又はそれ以上の追加のポリマーとのブレンドを溶融紡糸することによって製造された繊維を意味することを意図し、ステープル、モノフィラメント及びマルチフィラメント繊維を含む。「一成分」は、用語「モノ成分」と同義語であり、そして「二構成物質」又は「多構成物質」繊維を含み、そしてブレンドとして同じ押出機から押し出された少なくとも2種のポリマーから形成された繊維を指す。一成分又は二構成物質繊維は、繊維の断面領域を横断して比較的一定で配置された別個のゾーンに整列された種々のポリマー成分を有さず、そしてこの種々のポリマーは、通常、繊維の全長に沿って連続しておらず、その代わりに、通常、ランダムに始まり且つ終わるフィブリル又はプロトフィブリルを形成する。従って、用語「一成分」は、少量の添加剤が、着色、帯電防止特性、潤滑、親水性等のために添加されているであろう1種のポリマー又は1種又はそれ以上のポリマーのブレンドから形成された繊維を排除することを意図しない。反対に、本明細書で使用する用語「多成分繊維」は、2種又はそれ以上の繊維形成ポリマーを別個の押出機内で溶融し、そして得られる複数のポリマー流を、複数の分配流路を有する1個の紡糸口金に向け、一緒に紡糸して1本の繊維を形成することによって製造された繊維を意味することを意図する。多成分繊維は、また、ときには、コンジュゲート繊維又は二成分繊維と呼ばれる。ポリマーは、コンジュゲート繊維の断面を横断して実質的に一定で配置された別個のゾーンに整列され、そしてコンジュゲート繊維の長さに沿って連続的に伸びている。このような多成分繊維の形状は、例えば、1種のポリマーが他のポリマーによって取り囲まれているシース/コア型配置であってよく又は横並び型配置、パイ型配置若しくは「海島型」配置であってよい。例えば、多成分繊維は、スルホポリエステルと1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーとを、別々に、造形された又は設計された横断形状、例えば、「海島型」又は分割されたパイ型形状を有する紡糸口金に通して押し出すことによって製造することができる。一成分繊維は、典型的に、造形された又は丸い断面を有する、ステープル、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維である。殆どの繊維形はヒートセットされる。この繊維には、前記のような種々の酸化防止剤、顔料及び添加剤が含まれてよい。
【0047】
モノフィラメント繊維は、一般的に、サイズが15〜8000デニール/フィラメント(本明細書に於いて「d/f」と略記する)の範囲内である。本発明の新規な繊維は、典型的には、40〜5000の範囲内のd/f値を有する。モノフィラメントは、一成分繊維又は多成分繊維の形であってよい。本発明のマルチフィラメント繊維は、好ましくは、サイズが、溶融ブローウェブについて1.5マイクロメートルから、ステープルファイバーについて0.5〜50d/f、そしてモノフィラメント繊維について5000d/f以下の範囲である。マルチフィラメント繊維は、また、捲縮された又は捲縮されていないヤーン及びトウとして使用することができる。溶融ブローウェブ及び溶融紡糸布帛に於いて使用される繊維は、マイクロデニールサイズで製造することができる。本明細書で使用する用語「マイクロデニール」は、1d/f以下のd/f値を意味することを意図する。例えば本発明のマイクロデニール繊維は、典型的には、1以下、0.5以下又は0.1以下のd/f値を有する。静電紡糸によって、ナノ繊維を製造することができる。
【0048】
前記のように、スルホポリエステルは、また、造形された断面を有する二成分及び多成分繊維の製造のために有利である。本発明者らは、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル又はスルホポリエステルのブレンドが、紡糸及び引き取りの間の繊維の粘着及び融着を防止するために、多成分繊維について特に有用であることを見出した。
【0049】
即ち、本発明は
A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル、このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
からなる、並びに
B)スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなる複数のセグメント(但し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
からなる、造形された断面を有する多成分繊維であって、この繊維は、海島型又は分割されたパイ型断面を有し、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含有する多成分繊維を提供する。ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー及び分岐モノマー残基は、本発明の他の態様について前記した通りである。多成分繊維について、スルホポリエステルは少なくとも57℃のTgを有することが有利である。本発明の多成分繊維のスルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドによって示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。更に、少なくとも57℃のTgを有するスルホポリエステルを得るために、1種又はそれ以上のスルホポリエステルのブレンドを、所望のTgを有するスルホポリエステルブレンドを得るために比率を変化させて使用することができる。スルホポリエステルブレンドのTgは、スルホポリエステル成分のTgの重量平均を使用することによって計算することができる。例えば48℃のTgを有するスルホポリエステルを、65℃のTgを有する他のスルホポリエステルと、25:75重量:重量比でブレンドして、約61℃のTgを有するスルホポリエステルブレンドを得ることができる。
【0050】
この多成分繊維は、セグメントが、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている、スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなる複数のセグメントを含む。本明細書で使用する用語「実質的に分離されている」は、セグメントが、互いに引き離されていて、スルホポリエステルを除去した際に、セグメントが個々の繊維を形成することが可能であることを意味するように意図される。例えば、セグメントは、例えば分割されたパイ型形状に於けるようにお互いに触れているが、衝撃により又はスルホポリエステルを除去したとき、切り離すことができる。
【0051】
本発明の多成分繊維中のスルホポリエステルの水非分散性ポリマー成分に対する重量比は、一般的に、60:40〜2:98の範囲内又は別の例に於いて、50:50〜5:95の範囲内である。典型的に、スルホポリエステルは、多成分繊維の全重量の50重量%又はそれ以下を含む。
【0052】
多成分繊維のセグメントは、1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなっていてよい。多成分繊維のセグメントに使用することができる水非分散性ポリマーの例には、これらに限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルが含まれる。例えば、水非分散性ポリマーは、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート等であってよい。他の例に於いて、水非分散性ポリマーは、DIN規格54900によって求めたときに、生物崩壊性であり及び/又はASTM規格方法D6340−98によって求めたときに、生物分解性である。生物分解性ポリエステル及びポリエステルブレンドの例は、米国特許第5,599,858号明細書、米国特許第5,580,911号明細書、米国特許第5,446,079号明細書及び米国特許第5,559,171号明細書に開示されている。本発明の水非分散性ポリマーを参照して本明細書で使用する用語「生物分解性」は、ポリマーが、環境影響下で、例えば堆肥環境中で、例えばASTM規格方法D6340−98、標題「水性又は堆肥環境中で放射線標識プラスチック材料の好気的生物分解を決定するための規格試験方法」によって定義されたような適切で明示的時間間隔で分解することを意味する。本発明の水非分散性ポリマーは、また、ポリマーが、例えば、DIN規格54900によって定義されたような堆肥環境中で、容易に断片化することを意味する「生物崩壊性」であってよい。例えば、生物分解性ポリマーは、最初は、熱、水、空気、微生物及び他の因子の作用によって環境中で分子量が減少する。この分子量の減少は、物理的特性(靱性)の低下になり、そしてしばしば繊維破壊になる。ポリマーの分子量が十分に低いと、モノマー及びオリゴマーは次いで、微生物によって同化される。好気的環境中で、これらのモノマー又はオリゴマーは、最終的に、CO2、H2O及び新しい細胞バイオマスにまで酸化される。嫌気的環境中で、モノマー又はオリゴマーは、最終的に、CO2、H2O、アセテート、メタン及び細胞バイオマスに転化される。
【0053】
例えば、水非分散性ポリマーは、脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書に於いて「AAPE」と略記する)であってよい。本明細書で使用する用語「脂肪族−芳香族ポリエステル」は、脂肪族又はシクロ脂肪族のジカルボン酸又はジオールと、芳香族のジカルボン酸又はジオールからの残基の混合物からなるポリエステルを意味する。本発明のジカルボン酸及びジオールモノマーに関して、本明細書で使用する用語「非芳香族」はモノマーのカルボキシル又はヒドロキシル基が、芳香族核によって結合されていないことを意味する。例えばアジピン酸は、その主鎖、即ちカルボン酸基を連結する炭素原子の鎖中に芳香族核を含有しておらず、従って「非芳香族」である。反対に、用語「芳香族」は、例えばテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸のように、ジカルボン酸又はジオールが、主鎖中に芳香族核を含有していることを意味する。従って、「非芳香族」は脂肪族及びシクロ脂肪族構造、例えば、主鎖として、飽和若しくは現実にパラフィン、不飽和、即ち非芳香族炭素−炭素二重結合を含む又はアセチレン性、即ち炭素−炭素三重結合を含むであってよい、構成炭素原子の直鎖、分枝鎖又は環式配置を含有する、ジオール及びジカルボン酸の両方を含むことを意図する。従って、本発明の説明及び特許請求の範囲に関連して、非芳香族は、線状及び分枝状鎖構造(本明細書に於いて「脂肪族」と言う)並びに環式構造(本明細書に於いて「脂環式」又は「シクロ脂肪族」と言う)を含むことを意図する。しかしながら、用語「非芳香族」は、脂肪族又はシクロ脂肪族のジオール又はジカルボン酸の主鎖に結合していてよい任意の芳香族置換基を排除することを意図しない。本発明に於いて、二官能性カルボン酸は、典型的に、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸又は芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸である。二官能性ヒドロキシル化合物は、シクロ脂肪族ジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、線状若しくは分枝状脂肪族ジオール、例えば1,4−ブタンジオール又は芳香族ジオール、例えばヒドロキノンであってよい。
【0054】
AAPEは、炭素数2〜8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数4〜12のシクロ脂肪族ジオールから選択された、1種又はそれ以上の置換された又は置換されていない、線状又は分枝状ジオールの残基からなるジオール残基からなる、線状若しくは分枝状ランダムコポリエステル及び/又は鎖延長したコポリエステルであってよい。置換されたジオールは、典型的に、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立に選択された、1〜4個の置換基を含む。使用することができるジオールの例には、これらに限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが含まれ、好ましいジオールは、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択された1種又はそれ以上のジオールを含む。AAPEは、また、二酸残基の全モル基準で35〜99モル%の、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数5〜10のシクロ脂肪族酸から選択された、1種又はそれ以上の置換された又は非置換の、線状又は分枝状の非芳香族ジカルボン酸の残基を含有する二酸残基を含む。置換された非芳香族ジカルボン酸には、典型的に、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選択された、1〜4個の置換基が含まれる。非芳香族二酸の限定されない例には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸が含まれる。非芳香族ジカルボン酸に加えて、AAPEは、二酸残基の全モル基準で1〜65モル%の、炭素数6〜10の1種又はそれ以上の置換された又は非置換の芳香族ジカルボン酸の残基からなる。置換された芳香族ジカルボン酸を使用する場合に、これらには、典型的に、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選択された、1〜4個の置換基が含まれるであろう。本発明のAAPEに於いて使用することができる芳香族ジカルボン酸の限定されない例は、テレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸の塩及び2,6−ナフタレンジカルボン酸である。更に好ましくは、非芳香族ジカルボン酸はアジピン酸からなり、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸からなり、そしてジオールは1,4−ブタンジオールを含む。
【0055】
本発明のAAPEのための他の可能性のある組成物は、下記のジオール及びジカルボン酸(又はジエステルのような、そのポリエステル形成性等価物)から、ジカルボン酸成分100モル%及びジオール成分100モル%基準で下記のモルパーセントで製造されたものである。
【0056】
(1)グルタル酸(30〜75%)、テレフタル酸(25〜70%)、1,4−ブタンジオール(90〜100%)及び変性ジオール(0〜10%);
(2)コハク酸(30〜95%)、テレフタル酸(5〜70%)、1,4−ブタンジオール(90〜100%)及び変性ジオール(0〜10%)並びに
(3)アジピン酸(30〜75%)、テレフタル酸(25〜70%)、1,4−ブタンジオール(90〜100%)及び変性ジオール(0〜10%)。
【0057】
この変性ジオールは、好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びネオペンチルグリコールから選択される。最も好ましいAAPEは、50〜60モル%のアジピン酸残基、40〜50モル%のテレフタル酸残基及び少なくとも95モル%の1,4−ブタンジオール残基からなる、線状の、分岐した又は鎖延長したコポリエステルである。なお更に好ましくは、アジピン酸残基は55〜60モル%を構成し、テレフタル酸残基は40〜45モル%を構成し、そしてジオール残基は95モル%の1,4−ブタンジオールからなる。このような組成物は、テネシー州キングスポートのイーストマン・ケミカル社からイースター・バイオ(登録商標)コポリエステル及びBASF社からエコフレックス(ECOFLEX)(登録商標)で市販されている。
【0058】
好ましいAAPEの追加の具体例には、(a)50モル%のグルタル酸残基、50モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基、(b)60モル%のグルタル酸残基、40モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基又は(c)40モル%のグルタル酸残基、60モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレングルタレート−共−テレフタレート);(a)85モル%のコハク酸残基、15モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基又は(b)70モル%のコハク酸残基、30モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレンスクシネート−共−テレフタレート);70モル%のコハク酸残基、30モル%のテレフタル酸残基及び100モル%のエチレングリコール残基を含有するポリ(エチレンスクシネート−共−テレフタレート)並びに(a)85モル%のアジピン酸残基、15モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基又は(b)55モル%のアジピン酸残基、45モル%のテレフタル酸残基及び100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレンアジペート−共−テレフタレート)が含まれる。
【0059】
AAPEは、好ましくは、10〜1,000個の繰り返し単位、好ましくは15〜600個の繰り返し単位を含む。AAPEは、25℃の温度で、フェノール/テトラクロロエタンの60/40重量溶液100mL中の0.5グラムのコポリエステルの濃度を使用して測定したとき、0.4〜2.0dL/g、更に好ましくは0.7〜1.6dL/gのインヘレント粘度を有していてよい。
【0060】
AAPEには、任意的に、分岐剤の残基が含まれていてよい。分岐剤についてのモルパーセント範囲は、(分岐剤にカルボキシル基又はヒドロキシル基が含有されているかどうかに依存して)二酸又はジオール残基の全モル基準で、0〜2モル%、好ましくは0.1〜1モル%、最も好ましくは0.1〜0.5モル%である。分岐剤は、好ましくは50〜5000、更に好ましくは92〜3000の重量平均分子量及び3〜6の官能度を有する。例えば、分岐剤は、3〜6個のヒドロキシル基を有するポリオールのエステル化した残基、3個若しくは4個のカルボキシル基(又はエステル形成性等価基)を有するポリカルボン酸又は3〜6個のヒドロキシル基及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸であってよい。更に、AAPEは、反応押出の間の過酸化物の添加により分岐させることができる。
【0061】
水非分散性ポリマーのそれぞれのセグメントは、細度に於いて他のものから異なっていてよく、当業者に公知の任意の造形された又は設計された断面形状に配列されていてよい。例えばスルホポリエステル及び水非分散性ポリマーは、例えば横並び型、「海島型」、分割されたパイ型、他の分離可能なシース/コア型又は当業者に公知の他の形状のような設計された形状を有する二成分繊維を製造するために使用することができる。他の多成分形状も可能である。続いてサイド、「海」又は「パイ」の一部を除去することによって、非常に微細な繊維になり得る。二成分繊維の製造方法も、当業者に公知である。二成分繊維に於いて、本発明のスルホポリエステル繊維は、10〜90重量%の量で存在することができ、一般的にシース/コア型繊維のシース部分に使用される。他の成分は、広範囲の他のポリマー材料、例えばポリ(エポチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、ポリラクチド等々並びにポリオレフィン、セルロースエステル及びポリアミドからであってよい。典型的に、水不溶性又は水非分散性ポリマーを使用するとき、得られる二成分又は多成分繊維は、完全には水分散性ではない。熱収縮に於いて顕著な差異を有する横並び型組合せを、螺旋型捲縮の発生のために利用することができる。捲縮を望む場合、鋸歯又はスタッファーボックス捲縮が、多くの応用のために一般的に適している。第二ポリマー成分がシース/コア型形状のコア中に存在する場合、このようなコアを任意に安定化させることができる。
【0062】
スルホポリエステルは、多成分繊維から他の水分散性ポリマーを除去するために時々必要とされる苛性含有溶液に比較して、それらが、分散するために中性又は僅かに酸性である(即ち、「軟」水)ことのみを必要とするので、「海島型」又は「分割されたパイ型」断面を有する繊維のために特に有用である。
【0063】
即ち本発明の他の面は、
A)少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルであって、
(i)全酸残基基準で、50〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で、4〜30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、
(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含むスルホポリエステル、並びに
B)スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーからなる複数のセグメント(但し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されている)、
を含む多成分繊維であって、この繊維は、海島型又は分割されたパイ型断面を有し、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含有する多成分繊維である。
【0064】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、分岐モノマー残基及び水非分散性ポリマーは、前記した通りである。多成分繊維について、スルホポリエステルは少なくとも57℃のTgを有することが有利である。スルホポリエステルは、単一のスルホポリエステル又は1種又はそれ以上のスルホポリエステルポリマーのブレンドであってよい。スルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドによって示すことができるガラス転移温度の別の例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。例えばスルホポリエステルは、75〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基及び25〜95モル%のジエチレングリコールの残基からなっていてよい。前記のように、水非分散性ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルである。更に、水非分散性ポリマーは生物分解性又は生物崩壊性であってよい。例えば水非分散性ポリマーは前記のような脂肪族−芳香族ポリエステルであってよい。
【0065】
本発明の新規な多成分繊維は、当業者に公知の多数の方法によって製造することができる。即ち、本発明は、造形された断面を有する多成分繊維のための方法であって、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、繊維に紡糸することを含んでなる方法を提供する。このスルホポリエステルは、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基(但し、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含み、繊維は、水非分散性ポリマーを含んでなる複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そして繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている。例えば、多成分繊維は、スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、別個の押出機内で溶融し、そして個々のポリマー流を、水非分散性ポリマー成分が、介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている小さいセグメント又は薄いストランドを形成するように、複数の分布流路を有する1個の紡糸口金又は押出ダイの中に向けることによって、製造することができる。このような繊維の断面は、例えば分割されたパイ型配置又は海島型配置であってよい。他の例に於いて、スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーは、紡糸口金オリフィスに別々に供給され、次いで、水非分散性ポリマーが、スルホポリエステル「シース」ポリマーによって実質的に取り囲まれている「コア」を形成している、シース−コア形状で押し出される。このような同心繊維の場合に、「コア」ポリマーを供給するオリフィスは、紡糸オリフィス出口の中心にあり、そしてコアポリマー流体の流動条件は、紡糸するときの両成分の同心性を維持するように厳密に制御される。紡糸口金オリフィスの一部変更によって、繊維断面内で得るべきコア及び/又はシースの異なった形状が可能になる。更に他の例に於いて、横並び断面又は形状を有する多成分繊維を、水分散性スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを、別々にオリフィスを通して押し出し、そして別々のポリマー流を実質的に同じ速度で集中させて、紡糸口金の前面の下で一緒にした流として横並びで合体させることによって又は(2)この2種のポリマー流を別々に、紡糸口金の表面で集中しているオリフィスを通して、実質的に同じ速度で供給して、紡糸口金の表面で一緒にした流として横並びで合体させることによって製造することができる。両方の場合に、合体の点でのそれぞれのポリマー流の速度は、その計量ポンプ速度、オリフィスの数及びオリフィスのサイズによって決定される。
【0066】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、分岐用モノマー残基及び水非分散性ポリマーは、前記した通りである。スルホポリエステルは少なくとも60℃のガラス転移温度を有する。スルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドによって示すことができるガラス転移温度の別の例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。一つの例に於いて、スルホポリエステルは、全酸残基基準で、50〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基及び全酸残基基準で4〜30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基並びに全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)からなっていてよい。他の例に於いて、スルホポリエステルは、全酸残基基準で、75〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基及び25〜95モル%のジエチレングリコールの残基を含んでいてよい。前記のように、水非分散性ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルである。更に、水非分散性ポリマーは、生物分解性又は生物崩壊性であってよい。例えば水非分散性ポリマーは、前記のような脂肪族−芳香族ポリエステルであってよい。造形された断面の例には、これらに限定されないが、海島型、横並び型、シース−コア型又は分割されたパイ型形状が含まれる。
【0067】
典型的に、紡糸口金を出る際に、繊維は空気の交差流で急冷され、そこで繊維は固化する。この段階で、種々の仕上げ剤及びサイズを繊維に適用することができる。冷却された繊維は、典型的に、続いて延伸され、そして巻き取りスプールに巻き付けられる。乳化剤、耐電防止剤、抗菌剤、消泡剤、滑剤、熱安定剤、UV安定剤等のような他の添加物を、仕上げ物の中に有効量で含有させることができる。
【0068】
任意に、延伸された繊維を加工し、そして巻き付けてかさ高連続フィラメントを形成することができる。この一工程技術は、当前記技術分野で紡糸−延伸−加工(spin-draw-texturing)として知られている。他の態様には、扁平フィラメント(加工無し)ヤーン又はカットステープル繊維(捲縮されているか又は捲縮されていない)が含まれる。
【0069】
スルホポリエステルは、後で、界面層又はパイセグメントを溶解することによって除去し、そして水非分散性ポリマー(群)の、より小さいフィラメント又はマイクロデニール繊維を残すことができる。従って、本発明は、マイクロデニール繊維のための方法であって、
A.少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し、(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなり、この繊維は、水非分散性ポリマーを含んでなる複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、そして
B.前記多成分繊維を水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0070】
典型的には、多成分繊維を、水と、25℃〜100℃、好ましくは50〜80℃の温度で10〜600秒間接触させ、それによってスルホポリエステルを消散又は溶解させる。スルホポリエステルを除去した後、残留する微小繊維は、典型的には、1d/f又はそれ以下、典型的には0.5d/f又はそれ以下、更に典型的に0.1d/f又はそれ以下の平均繊度を有する。これらの残留する微小繊維の典型的な応用には、人造皮革、スエード、ワイプ及びフィルター媒体が含まれる。スルホポリエステルのイオン的性質は、また、体液のような食塩水媒体中の有利に劣った「溶解度」になる。このような特性は、衛生汚水設備でフラッシュ性であるか又は他の方法で処理される、パーソナルケア製品及び清浄用ワイプに於いて望ましい。選択されたスルホポリエステルは、また、染浴中の分散剤として及びランドリーサイクルの間の汚れ再堆積防止剤として利用されてきた。
【0071】
本発明には、また、前記の水分散性繊維、多成分繊維又はマイクロデニール繊維を含んでなる繊維状物品が含まれる。用語「繊維状物品」は、繊維を有する又は繊維に似ている任意の物品を意味すると理解される。繊維状物品の限定されない例には、マルチフィラメント繊維、ヤーン、コード、テープ、布帛、溶融ブローウェブ、スパンボンドウェブ、サーモボンドウェブ、ハイドロ絡合ウェブ、不織ウェブ及び布帛並びにこれらの組合せ、1個又はそれ以上の繊維の層を有する品目、例えば多層不織布、ラミネート及びこのような繊維からのコンポジット、ガーゼ、包帯、おむつ、トレーニングパンツ、タンポン、手術用ガウン及びマスク、女性用ナプキン等が含まれる。更に、繊維状物品には、種々の個人用衛生及びクリーニング製品のための交換インサートが含まれてよい。本発明の繊維状物品は、水分散性であるか又は非水分散性の他の材料に、結合する、積層する、取り付けることができ又はこの他の材料と一緒に使用することができる。繊維状物品、例えば不織布層を、可撓性プラスチックフィルム又は水非分散性材料、例えばポリエチレンのバッキングに結合することができる。例えば、このようなアセンブリは、使い捨ておむつの一成分として使用することができる。更に、繊維状物品は、他の支持体の上に繊維をオーバーブローして、設計された溶融ブロー、スパンボンド、フィルム又は膜構造の高度に調和された組合せを形成することから得ることができる。
【0072】
本発明の繊維状物品には、不織布及びウェブが含まれる。不織布は、織り又は編み操作無しに、繊維状ウェブから直接製造された布帛として定義される。例えば、本発明の多成分繊維は、編み、織り、ニードルパンチ及びハイドロ絡合のような任意の公知の布帛形成方法によって布帛に形成することができる。得られた布帛又はウェブは、多成分繊維を分離させるために十分な力を加えることにより又はウェブを水と接触させて、スルホポリエステルを除去して、後に残りのマイクロデニール繊維を残すことにより、マイクロデニール繊維ウェブに転換させることができる。従って、本発明は、マイクロデニール繊維ウェブのための方法であって、
A.少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及びスルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し、(このスルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又は2種以上の残基、
(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含み、ここで、多成分繊維は、水非分散性ポリマーを含んでなる複数のセグメントを有し、このセグメントは、セグメントの間に介在するスルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そしてこの繊維には、繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、
B.工程Aの多成分繊維を重ね、そして集めて、不織ウェブを形成し、そして
C.この不織ウェブを水と接触させてスルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる方法を提供する。
【0073】
前記不織アセンブリは、1)ウェブ又はマット内の機械的繊維凝集及び絡み合い、2)バインダー繊維の使用、ある種のポリマー及びポリマーブレンドの熱可塑性特性を利用することを含む、種々の繊維の融着技術、3)結合樹脂、例えばデンプン、カゼイン、セルロース誘導体又は合成樹脂、例えばアクリルラテックス若しくはウレタンの使用、4)粉末接着バインダー又は5)これらの組合せによって、一緒に保持される。この繊維は、しばしば、ランダム方式で堆積されるが、一方向に配向させ、続いて上記の方法の一つを使用して結合することが可能である。
【0074】
本発明の繊維状物品は、更に、1個又はそれ以上の、水分散性繊維、多成分繊維又はマイクロデニール繊維の層からなっていてもよい。この繊維層は、1個又はそれ以上の不織布層、緩やかに結合したオーバーラッピング繊維の層又はこれらの組合せであってよい。更に、この繊維状物品には、パーソナル及び健康ケア製品、例えばこれらに限定されないが、子供ケア製品、例えばベビー用おむつ、子供トレーニングパンツ、成人ケア製品、例えば成人おむつ及び成人失禁パッド、女性ケア製品、例えば女性用ナプキン、パンティライナー及びタンポン、ワイプ、繊維含有クリーニング製品、医療及び手術ケア製品、例えば医療用拭き取り具、ティッシュ、ガーゼ、検査ベッドカバー、手術マスク、ガウン、包帯、創傷包帯、布帛、エラストマー性ヤーン、ワイプ、テープ、他の保護バリヤー並びに包装材料が含まれてよい。繊維状物品は、液体を吸収するために使用することができ又は種々の液体組成物で予め湿らせておき、そしてこれらの組成物を表面に配布するために使用することができる。液体組成物の限定されない例には、洗剤、湿潤剤、クリーニング剤、スキンケア製品、例えば化粧品、軟膏、薬物、皮膚緩和薬及び香水が含まれる。繊維状物品には、また、吸収性を改良するための又は配布ビヒクルとしての種々の粉末及び粒子が含有されていてよい。粉末及び粒子の例には、これらに限定されないが、タルク、デンプン、種々の水吸収性、水分散性又は水膨潤性ポリマー、例えば超吸収性ポリマー、スルホポリエステル及びポリ(ビニルアルコール)、シリカ、顔料並びにマイクロカプセルが含まれる。具体的な応用のために必要であるとき、添加剤が存在してもよいが、必須ではない。添加剤の例には、これらに限定されないが、酸化安定剤、UV吸収剤、着色剤、顔料、不透明化剤(艶消し剤)、光学増白剤、充填剤、核生成剤、可塑剤、粘度調節剤、表面改良剤、抗菌剤、消毒剤、常温流れ抑制剤、分岐剤及び触媒が含まれる。
【0075】
水分散性であることに加えて、上記の繊維状物品は水流れ性である。本明細書で使用する用語「フラッシュ性」は、一般的なトイレで水で流すことができ、そしてトイレ又は汚水システムで障害又は閉塞を起こすことなく、公共汚水システム又は住宅汚水処理システムの中に導入することができることを意味する。
【0076】
繊維状物品は、更に、第二の水分散性ポリマーを含んでなる水分散性フィルムからなっていてよい。第二の水分散性ポリマーは、本発明の繊維及び繊維状物品で使用される前記の水分散性ポリマーと同じか又はこれとは異なっていてよい。一つの態様に於いて、例えば、第二の水分散性ポリマーは、(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又は2種以上の残基、(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基、(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも15モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、(iv)全繰り返し単位基準で0〜20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)からなる、追加のスルホポリエステルであってよい。追加のスルホポリエステルは、得られる繊維状物品の特性を修正するために、前記のような1種又はそれ以上の補足的ポリマーとブレンドすることができる。この補足的ポリマーは、応用に依存して水分散性であってよく又はそうでなくてよい。この補足的ポリマーは、追加のスルホポリエステルと混和性であってよく又は非混和性であってよい。
【0077】
追加のスルホポリエステルには、他の濃度、例えば60〜95モル%及び75〜95モル%のイソフタル酸残基が含有されていてよい。イソフタル酸残基濃度範囲の別の例は、70〜85モル%、85〜95モル%及び90〜95モル%である。追加のスルホポリエステルは、また、25〜95モル%のジエチレングリコールの残基からなっていてよい。ジエチレングリコール残基濃度範囲の別の例には、50〜95モル%、70〜95モル%及び75〜95モル%が含まれる。追加のスルホポリエステルには、また、エチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基が含まれてよい。CHDM残基の典型的な濃度範囲は、10〜75モル%、25〜65モル%及び40〜60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は、10〜75モル%、25〜65モル%及び40〜60モル%である。他の態様に於いて、追加のスルホポリエステルは、75〜96モル%のイソフタル酸の残基及び25〜95モル%のジエチレングリコールの残基を含む。
【0078】
本発明に従って、繊維状物品のスルホポリエステルフィルム成分は、単層フィルム又は多層フィルムとして製造することができる。単層フィルムは、一般的な流延技術によって製造することができる。多層フィルムは、一般的な積層方法などによって製造することができる。このフィルムは、任意の便利な厚さのものであってよいが、全厚さは通常、2〜50ミルである。
【0079】
フィルム含有繊維状物品には、1個又はそれ以上の、前記のような水分散性繊維の層が含まれていてよい。この繊維層は、1個又はそれ以上の不織布層、緩く結合したオーバーラッピング繊維の1層又はこれらの組合せであってよい。更に、フィルム含有繊維状物品には、前記のようなパーソナル及び健康ケア製品が含まれる。
【0080】
前記のように、繊維状物品には、また、吸収性を改良するための又は配布ビヒクルとしての種々の粉末及び粒子が含有されていてよい。従って、一つの態様に於いて、本発明の繊維状物品には、本明細書に前記した水分散性ポリマー成分と同じか又はこれとは異なっていてよい第三の水分散性ポリマーを含んでなる粉末が含まれいる。粉末及び粒子の他の例には、これらに限定されないが、タルク、デンプン、種々の水吸収性、水分散性又は水膨潤性ポリマー、例えばポリ(アクリロニトリル)、スルホポリエステル及びポリ(ビニルアルコール)、シリカ、顔料並びにマイクロカプセルが含まれる。
【0081】
本発明の新規な繊維及び繊維状物品は、前記の応用に加えて、多くの可能性のある用途を有する。一つの新規な応用には、平らな、湾曲した又は造形した表面の上にフィルム又は不織布を溶融ブローして、保護層を得ることが含まれる。一つのこのような層は、輸送の間に耐久性の装置に表面保護を与える。到着地で、装置を設備の中に置く前に、スルホポリエステルの外側層を洗浄除去することができる。この一般的応用概念の別の態様には、幾つかの再使用可能な又は限定使用衣類若しくはカバーのための一時的バリヤー層を与えるためのパーソナル保護が含まれる。軍隊のために、活性炭及び化学吸収剤を、コレクターの直前の減衰フィラメントパターンの上にスプレーして、溶融ブローマトリックスを露出された表面上にその全部を固定することができる。化学吸収剤は、他の層への溶融ブローによって前兆が現れるとき、先行操作領域内で交換することができる。
【0082】
スルホポリエステルに固有の主な利点は、イオン性部分(即ち、塩)を添加することによるフロキュレーション又は沈殿により、水性分散液からポリマーを除去又は回収するための容易な能力である。他の方法、例えばpH調節、非溶媒の添加、凍結等を使用することもできる。従って、外衣保護衣類のような繊維状物品は、成功裡の保護バリヤー使用の後でポリマーが危険な廃棄物にされた場合でも、潜在的に、焼却のような許容されたプロトコルを使用する処理のために、遙かに小さい体積で安全に取り扱うことができる。
【0083】
溶解されない又は乾燥したスルホポリエステルはこれらに限定されないが、毛羽パルプ、綿、アクリル、レーヨン、ライオセル(lyocell)、PLA(ポリラクチド)、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、コポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ステンレススチール、アルミニウム、処理したポリオレフィン、PAN(ポリアクリロニトリル)及びポリカーボネートを含む、多数の支持体に対する強い接着結合を形成することが知られている。従って、本発明の不織布は、熱、高周波(RF)、マイクロ波及び超音波方法のような公知の技術によって結合することができる積層接着剤又はバインダーとして使用することができる。RF活性化を可能にするためのスルホポリエステルの適応は、多数の最近の特許に開示されている。従って、本発明の新規な不織布は、接着特性に加えて、二重又は多重機能性を有する。例えば、本発明の不織布が、最終アセンブリの水応答性接着剤及び流体管理成分の両方として機能する、使い捨てベビー用おむつを得ることができる。
【0084】
本発明は、水分散性繊維のための方法であって、(I)水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し(ここでこのポリマー組成物は、(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する枝分かれモノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含んでなり、ポリマー組成物には、ポリマー組成物の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤が含有されている)、そして(II)フィラメントを溶融紡糸することからなる方法を提供する。前記のように、水分散性ポリマーを、任意的に、スルホポリエステルとブレンドすることができる。更に、水非分散性ポリマーを、任意に、スルホポリエステルとブレンドして、ブレンドが非混和性ブレンドであるようなブレンドを形成することができる。本明細書で使用する用語「流動点」は、ポリマー組成物の粘度が、紡糸口金又は押出ダイを通過する押出又は加工の他の形態を許容する温度を意味する。ジカルボン酸残基は、スルホモノマーの種類及び濃度に依存して酸残基の60〜100モル%からなっていてよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は、60〜95モル%及び70〜95モル%である。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はジエステルが使用される場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルであり、イソフタル酸及びテレフタル酸の残基が特に好ましい。
【0085】
スルホモノマーは、スルホネート基を含有するジカルボン酸若しくはそのエステル、スルホネート基を含有するジオール又はスルホネート基を含有するヒドロキシ酸であってよい。スルホモノマー残基についての濃度範囲の追加の例は、全繰り返し単位基準で、4〜25モル%、4〜20モル%、4〜15モル%及び4〜10モル%である。スルホネート塩のカチオンは、金属イオン、例えばLi+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等であってよい。その代わりに、スルホネート塩のカチオンは、前記のように窒素系塩基のような非金属であってよい。本発明の方法に於いて使用することができるスルホモノマー残基の例は、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホネート塩又はこれらの組合せである。使用することができるスルホモノマーの他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸又はそのエステルである。スルホモノマー残基が5−ソジオスルホイソフタル酸からである場合、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、全酸残基基準で、4〜35モル%、8〜30モル%及び10〜25モル%である。
【0086】
本発明のスルホポリエステルには、脂肪族、シクロ脂肪族及びアラルキルグリコールを含んでよい1種又はそれ以上のジオールが含まれる。シクロ脂肪族ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、それらの純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス及びトランス異性体の混合物として存在してよい。低分子量ポリエチレングリコール(例えば、式中nが2〜6である)の限定されない例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールである。これらの低分子量グリコールの内、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが最も好ましい。スルホポリエステルには、任意的に分岐モノマーが含有されていてよい。分岐モノマーの例は、前記の通りである。分岐モノマー濃度範囲の別の例は、0〜20モル%及び0〜10モル%である。本発明の新規な方法のスルホポリエステルは、少なくとも25℃のTgを有する。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の別の例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgが可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は、30℃、48℃、55℃、65℃、70℃、75℃、85℃及び90℃である。
【0087】
水分散性繊維は、溶融ブロー方法によって製造される。ポリマーは押出機内で溶融され、そしてダイを通して押し出される。ダイを出た押出物は、熱い高速空気によって極細直径にまで急速に細くされる。繊維の配向、冷却速度、ガラス転移温度(Tg)及び結晶化速度は、これらが、細くなる間のポリマーの粘度及び加工特性に影響を与えるので重要である。このフィラメントは、再生可能な表面、例えば移動ベルト、円筒形ドラム、回転するマンドレル等の上に集められる。ペレットの予備乾燥(必要な場合)、押出機ゾーン温度、溶融温度、スクリュー設計、押出量、空気温度、空気流(速度)、ダイ空気ギャップ及びセットバック(set back)、ノーズチップホールサイズ、ダイ温度、ダイ−コレクター(DCP)距離、急冷環境、コレクター速度及び後処理は、製品特性、例えばフィラメント直径、坪量、ウェブ厚さ、細孔サイズ、柔軟度及び収縮に影響を与える全ての要因である。また、高速度空気を、大きい絡み合いになる幾らかランダムな方式でフィラメントを移動させるために使用することができる。移動ベルトが台の下を通過する場合、不織布を、フィラメントのオーバーラッピングレイダウン(over-lapping laydown)、機械的凝集及び熱結合の組合せによって製造することができる。スパンボンド又はバッキング層のような他の支持体の上へのオーバーブローも可能である。フィラメントを回転するマンドレルに引き取る場合、円筒形製品が形成される。水分散性繊維レイダウンも、スパンボンド方法によって製造することができる。
【0088】
従って、本発明は、更に、水分散性不織布のための方法であって、(A)水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し、(ここで、このポリマー組成物は、(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、(iv)全繰り返し単位基準で0〜25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、この官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含み、ここでスルホポリエステルは少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有し、前記ポリマー組成物の合計重量基準で、10重量%より少ない量の顔料又は充填剤を含む)、(B)フィラメントを溶融紡糸し、そして(C)工程Bのフィラメントを重ね、そして集めて不織ウェブを形成することを含んでなる水分散性、不織布のための方法を提供する。前述の如く、水分散性ポリマーは、任意的に、スルホポリエステルとブレンドすることができる。更に、水非分散性ポリマーを、任意的に、スルホポリエステルとブレンドして、ブレンドが非混和性ブレンドであるようなブレンドを形成することができる。ジカルボン酸、スルホモノマー及び分岐モノマー残基は、前記の通りである。スルホポリエステルは、少なくとも25℃のTgを有する。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の別の例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgが可能ではあるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は、30℃、48℃、55℃、65℃、70℃、75℃、85℃及び90℃である。本発明を下記の実施例によって更に例示する。
【実施例】
【0089】
全てのペレットサンプルを、真空下で室温で少なくとも12時間予備乾燥させた。表IIIに示す分散時間は、不織布サンプルの完全な分散又は溶解についてのものである。表II及び表IIIで使用した略語「CE」は「比較例」を意味する。
【0090】
実施例1
76モル%のイソフタル酸、24モル%のソジオスルホイソフタル酸、76モル%のジエチレングリコール及び24モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有し、0.29のIh.V.及び48℃のTgを有するスルホポリエステルを、公称6−インチダイ(ノーズピースに於いて30穴/インチ)を通して、表Iに示す条件を使用して、円筒形コレクターの上に溶融ブローした。インターリーフィング(interleafing)紙は必要なかった。ロール巻き付け操作の間に粘着しない、軟質の取扱い可能な可撓性ウェブを得た。その物理的特性を表IIに示す。この不織布の小片(1インチ×3インチ)は、表IIIのデータによって示されるように、僅かな攪拌で室温(RT)の水及び50℃の水の両方中に容易に分散した。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
実施例2
89モル%のイソフタル酸、11モル%のソジオスルホイソフタル酸、72モル%のジエチレングリコール及び28モル%のエチレングリコールを含有し、0.4のIh.V.及び35℃のTgを有するスルホポリエステルを、6−インチダイを通して、表Iに示すものと同様の条件を使用して溶融ブローした。ロール巻き付け操作の間に粘着しない、軟質の取扱い可能な可撓性ウェブを得た。物理的特性を表IIに示す。この不織布の小片(1インチ×2インチ)は、表IIIのデータによって示されるように、50℃及び80℃で容易にそして完全に分散し、RT(23℃)で、この布帛は完全に分散するために、より長い時間を必要とした。
【0095】
実施例1及び2の組成物は、他の不織支持体の上にオーバーブローできることが見出された。一般的なウェブコレクターの代わりに使用される造形された又は輪郭を合わせた形状を凝縮及び包むことも可能である。従って、ウェブの円形「粗紡」又はプラグ形を得ることも可能である。
【0096】
比較例1〜3
89モル%のイソフタル酸、11モル%のソジオスルホイソフタル酸、72モル%のジエチレングリコール及び28モル%のエチレングリコールを含有し、0.4のIh.V.及び35℃のTgを有するスルホポリエステルのペレットを、ポリプロピレン(ベイセル(Basell)PF008)ペレットと、
75PP:25スルホポリエステル(比較例1)
50PP:50スルホポリエステル(比較例2)
25PP:75スルホポリエステル(比較例3)
の二成分比(重量%)で一緒にした。
【0097】
このPPは、800のMFR(メルトフローレート)を有していた。溶融ブロー操作を、24インチ幅ダイを取り付けたライン上で実施して、表IIに示す物理的特性を有する取扱い可能で軟質で可撓性であるが非粘着のウェブを得た。不織布の小片(1インチ×4インチ)は、表IIIに報告したように容易に崩壊した。しかしながら、不溶性ポリプロピレン成分のために、繊維の何れも完全に水分散性ではなかった。
【0098】
実施例3
実施例2で製造した不織布の円形片(4インチ直径)を、2枚の綿布のシートの間の接着層として使用した。ハンニフィン(Hannifin)溶融プレスを使用して、35psigの圧力を200℃で30秒間適用することによって、2枚の綿のシートを一緒に融着した。得られたアセンブリは、異常に強い結合強度を示した。この綿支持体は、接着又は結合破壊の前に、切れ切れに裂けた。また、他のセルロース系材料及びPETポリエステル支持体で、同様の結果が得られた。また、超音波結合技術によって、強い結合が作られた。
【0099】
比較例4
1200MFRを有するPP(エクソン(Exxon)3356G)を、24インチダイを使用して溶融ブローして、粘着せず、ロールから容易にほどかれた可撓性不織布を得た。小片(1インチ×4インチ)は、水中にRT又は50℃で15分間浸漬したとき、水に対して如何なる応答も示さなかった(即ち、崩壊又は坪量に於ける損失無し)。
【0100】
実施例4
82モル%のイソフタル酸、18モル%のソジオスルホイソフタル酸、54モル%のジエチレングリコール及び46モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有し、55℃のTgを有するスルホポリエステルの一成分繊維を、ラブ・ステープル紡糸ライン上で245℃(473°F)の溶融温度で溶融紡糸した。紡糸したままのデニールは、約8d/fであった。巻き取りチューブ上で幾らかの粘着があったが、10本フィラメントストランドは、攪拌しない脱塩水中で82℃及び5〜6のpHで、10〜19秒以内に容易に溶解した。
【0101】
実施例5
82モル%のイソフタル酸、18モル%のソジオスルホイソフタル酸、54モル%のジエチレングリコール及び46モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有するスルホポリエステル(55℃のTg)並びに91モル%のイソフタル酸、9モル%のソジオスルホイソフタル酸、25モル%のジエチレングリコール及び75モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを含有するスルホポリエステル(65℃のTg)のブレンド(75:25)から得られた一成分繊維を、それぞれ、ラブ・ステープル紡糸ライン上で溶融紡糸した。このブレンドは、成分スルホポリエステルのTgの重量平均を得ることによって計算したとき、57℃のTgを有する。10本フィラメントストランドは、巻き取りチューブ上で如何なる粘着も示さず、攪拌しない脱塩水中で82℃及び5〜6のpHで、20〜43秒以内に容易に溶解した。
【0102】
実施例6
実施例5に記載したブレンドを、PETと共に共紡糸して、二成分海島型繊維を得た。スルホポリエステル「海」が、80重量%のPET「島」を含む繊維の20重量%である形状が得られた。この紡績糸伸びは、紡糸した直後で190%であった。この紡績糸を、紡糸後1週間でボビンから満足に解き、加工したとき、粘着は起こらなかった。次の操作で、紡績糸を88℃の軟水浴中に通すことによって「海」を溶解し、微細なPETフィラメントのみを残した。
【0103】
実施例7
この予想実施例は、本発明の多成分及びマイクロデニール繊維の、特殊紙の製造への可能性のある応用を示す。実施例5に記載したブレンドを、PETと共に共紡糸して、二成分海島型繊維を得る。この繊維は、約35重量%のスルホポリエステル「海」成分及び約65重量%のPET「島」を含む。捲縮しない繊維を、1/8インチ長さに切断する。シミュレートした製紙に於いて、これらの短く切断した二成分繊維を、リファイニング操作に添加する。スルホポリエステル「海」は、攪拌した水性スラリー中に除去され、それによってマイクロデニールPET繊維をミックスの中に放出する。匹敵する重量で、マイクロデニールPET繊維(「島」)が、太いPET繊維の添加よりも、紙引張強度を増加させるために一層有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)全繰り返し単位基準で、0〜25モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含む少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル;
(B)任意的な、前記スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー;並びに
(C)任意的な、前記スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、前記ブレンドは非混和性ブレンドである);
を含んでなり、繊維の全重量基準で、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含む水分散性繊維。
【請求項2】
前記ジカルボン酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4′−オキシジ安息香酸、4,4′−スルホニルジ安息香酸、イソフタル酸及びこれらの組合せから選択され;前記スルホモノマーがスルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸又はこれらの組合せの金属スルホネート塩であり;前記ジオール残基がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオール及びこれらの組合せから選択され;そして前記分岐モノマーが1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリト酸無水物、ピロメリト酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸又はこれらの組合せである請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記スルホポリエステルが、全酸残基基準で、50〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、全酸残基基準で、4〜30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;及び、全繰り返し単位基準で、0〜20モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含む請求項2に記載の繊維。
【請求項4】
前記スルホポリエステルとブレンドされた第一の水分散性ポリマーを含む請求項3に記載の繊維。
【請求項5】
非混和性ブレンドを形成するためにブレンドされた水非分散性ポリマーを含む請求項3に記載の繊維。
【請求項6】
前記スルホポリエステルが、全酸残基基準で、75〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基及び、全ジオール残基基準で、25〜95モル%のジエチレングリコールの残基を含み、そして前記繊維がステープル、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維であり、造形された断面を有する請求項3に記載の繊維。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維を含んでなる繊維状物品。
【請求項8】
前記物品がヤーン、布帛、溶融ブローウェブ、スパンボンドウェブ、不織布及びこれらの組合せから選択される請求項7に記載の繊維状物品。
【請求項9】
前記物品が1個又はそれ以上の繊維の層を含む請求項7に記載の繊維状物品。
【請求項10】
前記物品が、フラッシュ可能であり、そしてワイプ、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、繊維含有クリーニング製品、積層バインダー、生理用ナプキン、パンティライナー、タンポン、トレーニングパンツ、失禁製品、包帯又は手術用包帯である請求項9に記載の繊維状物品。
【請求項11】
第二の水分散性ポリマーを含んでなる水分散性フィルムを更に含む請求項7に記載の繊維状物品。
【請求項12】
前記第二の水分散性ポリマーが
(i)全酸残基基準で、50〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)全酸残基基準で、4〜30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で、少なくとも15モル%は、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)全繰り返し単位基準で、0〜20モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含んでなる追加のスルホポリエステル
を含む請求項11に記載の繊維状物品。
【請求項13】
第三の水分散性ポリマーを含んでなる粉末を更に含む請求項12に記載の繊維状物品。
【請求項14】
I.(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)全繰り返し単位基準で、0〜25モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含む少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル、
(B)任意的な、前記スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー;並びに
(C)任意的な、前記スルホポリエステルとブレンドされて、非混和性のブレンドを形成する水非分散性ポリマー;
を含んでなり、ポリマー組成物の全重量基準で、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含む水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し;そして
II.フィラメントを溶融紡糸する
ことを含んでなる水分散性繊維のための方法。
【請求項15】
I.(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上の金属スルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも20モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)全繰り返し単位基準で、0〜25モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含む少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル;
(B)任意的な、前記スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー;並びに
(C)任意的な、前記スルホポリエステルとブレンドされて、非混和性のブレンドを形成する水非分散性ポリマー
を含んでなり、ポリマー組成物の全重量基準で、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含む;水分散性ポリマー組成物を、その流動点よりも高い温度に加熱し;
II.フィラメントを溶融紡糸し;そして
III.工程IIの前記フィラメントを重ね、そして集めて、不織ウェブを形成する
ことを含んでなる水分散性不織布のための方法。
【請求項16】
A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で4〜40モル%の、芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)全繰り返し単位基準で、0〜25モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含む少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル;並びに
B)前記スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含んでなる複数のセグメントであって、それらのセグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されているセグメント
を含んでなり、繊維の全重量基準で、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含む造形された断面を有する多成分繊維。
【請求項17】
前記ジカルボン酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4′−オキシジ安息香酸、4,4′−スルホニルジ安息香酸、イソフタル酸及びこれらの組合せから選択され、前記スルホモノマーが、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホネート塩又はこれらの組合せであり、前記ジオール残基が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオール及びこれらの組合せから選択され、そして前記分岐モノマーが、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリト酸無水物、ピロメリト酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸又はこれらの組合せである請求項16に記載の繊維。
【請求項18】
前記水非分散性ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル及びこれらの組合せから選択される請求項17に記載の繊維。
【請求項19】
前記水非分散性ポリマーが、DIN規格54900によって測定したときに、生物崩壊性であり、又はASTM規格方法D6340−98によって測定したときに、生物分解性である請求項17に記載の繊維。
【請求項20】
前記スルホポリエステルが、全酸残基基準で、50〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、全酸残基基準で、4〜30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基及び、全繰り返し単位基準で、0〜20モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含んでなり、そして前記造形された断面が海島型又は分割されたパイ型である請求項16に記載の繊維。
【請求項21】
前記水非分散性ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル及びこれらの組合せから選択される請求項20に記載の繊維。
【請求項22】
前記水非分散性ポリマーが、DIN規格54900によって測定したときに、生物崩壊性であり、又はASTM規格方法D6340−98によって測定したときに、生物分解性である請求項21に記載の繊維。
【請求項23】
請求項21又は22の何れか1項に記載の繊維を含んでなる繊維状物品。
【請求項24】
前記物品がヤーン、布帛、溶融ブローウェブ、スパンボンドウェブ、サーモボンドウェブ、ハイドロ絡合ウェブ、不織布及びこれらの組合せから選択される請求項23に記載の繊維状物品。
【請求項25】
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基、
(ii)全繰り返し単位基準で、4〜40モル%の芳香族又はシクロ脂肪族環に結合している2個の官能基及び1個又はそれ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)並びに
(iv)全繰り返し単位基準で、0〜25モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)
を含んでなる少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、繊維に紡糸し(前記繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、前記セグメントは前記セグメントの間に介在する前記スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そして前記繊維が、前記繊維の全重量基準で、10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含む)造形された断面を有する多成分繊維のための方法。
【請求項26】
前記スルホポリエステルが、全酸残基基準で、50〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、全酸残基基準で、4〜30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基及び全繰り返し単位基準で、0〜20モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含んでなり、そして前記造形された断面が海島型又は分割されたパイ型である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
A.(i)全酸残基基準で、50〜96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基、
(ii)全酸残基基準で、4〜30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基、
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(但し、全ジオール残基基準で、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは、2〜500の範囲内の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、並びに
(iv)全繰り返し単位基準で、0〜20モル%の3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(但し、前記官能基は、ヒドロキシル、カルボキシル又はこれらの組合せである)を含んでなる)
少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーとを、多成分繊維に紡糸し(ここで、前記繊維は、前記水非分散性ポリマーを含んでなる複数のセグメントを有し、前記セグメントは、前記セグメントの間に介在する前記スルホポリエステルによって、互いに実質的に分離されており、そして前記繊維は、前記繊維の全重量基準で10重量%よりも少ない顔料又は充填剤を含む);そして
B.前記多成分繊維を水と接触させて前記スルホポリエステルを除去し、それによってマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなるマイクロデニール繊維のための方法。
【請求項28】
請求項27に記載のマイクロデニール繊維を含んでなる繊維状物品。
【請求項29】
A.少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルとは非混和性である1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、多成分繊維に紡糸し(但し、前記スルホポリエステルは、
(i)全酸残基基準で50〜96モル%の、イソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)全酸残基基準で4〜30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基;
マイクロデニール繊維ウェブのための方法。

【公表番号】特表2006−528282(P2006−528282A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517231(P2006−517231)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018682
【国際公開番号】WO2004/113598
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】