説明

スルホポリエステルに由来する多成分繊維及びマイクロデニール繊維の製造方法

【課題】スルホポリエステルから柔軟で、特にヒトの体液へ暴露時に適正な引張強度、吸収性、柔軟性及び布結着性を示す水分散性繊維を製造する。
【解決手段】スルホポリエステルと水非分散性ポリマーとのブレンドに由来する多成分繊維の製造方法並びにこの多成分繊維(紡糸時デニールが約6未満であり、前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む)を比較的速い速度(例えば約2000m/分以上の速度)で延伸し、水と接触させてスルホポリエステルを除去することによってマイクロデニール繊維を製造する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホポリエステルを含む水分散性繊維及び繊維製品の製造方法に関する。本発明は、更に、スルホポリエステルを含む多成分繊維の製造方法並びにそれから製造されたマイクロデニール繊維及び繊維製品の製造方法に関する。本発明は、また、水分散性、多成分及びマイクロデニール繊維の製造方法並びにそれらから製造された不織布の製造方法に関する。これらの繊維及び繊維製品は、水に流せる(flushable)パーソナルケア製品及び医療品に利用できる。
【背景技術】
【0002】
繊維、メルトブローン(melt blown)ウェブ及び他の溶融紡糸繊維製品は、ポリ(プロピレン)、ポリアミド及びポリエステルのような熱可塑性ポリマーから製造されている。これらの繊維及び繊維製品の一般的な用途の1つは、不織布、特にパーソナルケア製品、例えばワイプ、女性用生理用品、乳幼児用おむつ、成人用失禁ブリーフ、病院/外科用及び他の医療用使い捨て製品、保護布及び層、ジオテキスタイル、工業用ワイプ並びに濾材である。残念ながら、従来の熱可塑性ポリマーから製造されたパーソナルケア製品は、廃棄処分が困難であり、通常は廃棄物埋立地に投棄される。1つの有望な代替廃棄法は、「水に流せる(flushable)」、即ち、公共下水道に適合するこれらの製品又はそれらの成分を製造することである。水分散性又は水溶性材料の使用は、パーソナル製品のリサイクル性及び再利用を改善する。パーソナルケア製品中に現在使用されている種々の熱可塑性ポリマーは本質的には水分散性又は水溶性ではないので、それらからは、崩壊し易く且つ公共下水道への廃棄及び容易なリサイクルの可能な物品は製造されない。
【0003】
水に流せるパーソナルケア製品が望ましいことから、種々の度合いの水応答性を有する繊維、不織布及び他の繊維製品に対する要求が生まれた。これらの要求に対処するための種々のアプローチが、例えば特許文献1〜9に記載されている。しかし、これらのアプローチには多くの欠点があり、これらのアプローチでは、湿潤又は乾燥の両条件下における引張強度、吸収性、柔軟性及び布の結着性のような性能特性の満足できるバランスを有する、繊維又は不織布のような繊維製品が得られない。
【0004】
例えば、典型的な不織布技術は、樹脂結合用の接着剤で処理された繊維の多方向堆積に基づく、強い結着性及び他の望ましい性質を有するウェブの形成である。しかし、得られるアセンブリは一般に水応答性が弱く、水に流す用途には適当でない。結合剤の存在は、またに、最終製品に、低下したシート湿潤性、増加した剛性、粘着性及び比較的高い製造コストのような不所望な性質をもたらすおそれがある。また、使用中には適正な湿潤強度を示すが、廃棄時に素早く分散する結合剤を製造することは困難である。従って、これらの結合剤を用いた不織布アセンブリは、周囲条件下で崩壊が遅いか、或いは体液の存在下で適正な湿潤強度特性を有するといえないおそれがある。この問題に対処するために、塩が添加された又は添加されていないアクリル酸又はメタクリル酸を含む格子のようなpH及びイオン感受性水分散性結合剤が知られ、例えば特許文献10に記載されている。公共下水道及び住宅汚水処理システム中のイオン濃度及びpHレベルは地理的な位置で大きく異なる可能性があり、結合剤の溶解及び分散には充分でない場合がある。この場合には、繊維製品は廃棄後に崩壊せず、排水管又は下水取付管(sewer lateral)を詰まらせるおそれがある。
【0005】
水分散性成分及び熱可塑性水非分散性成分を含む多成分繊維が、例えば特許文献11〜16に記載されている。例えば、これらの多成分繊維は、例えば海島(islands-in-the-sea)、シースコア(sheath core)、並列又はセグメント化パイ立体配置のような付形(shaped)又は工学的(engineered)横断面を有する二成分繊維(bicomponent fiber)であることができる。多成分繊維は、水又は希アルカリ溶液に暴露することができ、その場合には水分散性成分が溶解除去されて、水非分散性成分が極めて小さい繊度の分離した独立繊維として残される。しかし、良好な水分散性を有するポリマーは、得られる多成分繊維に粘着性を与える場合が多く、その結果として、多成分繊維は、巻取り又は貯蔵の間に数日後に、特に高温多湿条件下でくっつき合い、粘着し又は融着する。融着を防ぐために、脂肪酸又は油性仕上げ剤が繊維の表面に適用されることが多い。更に、場合によっては、例えば特許文献17に記載されたようにして、大きい比率の顔料又は充填剤を水分散性ポリマーに添加して、繊維の融着を防ぐ。このような油仕上げ剤(oil finishes)、顔料及び充填剤は更なる処理工程を必要とし、最終繊維に不所望な性質を与える可能性がある。多くの水分散性ポリマーは、また、繊維の他のポリマー成分の劣化、例えばインヘレント粘度、強力(tenacity)及び溶融強度の低下をもたらす可能性のあるアルカリ溶液を、それらの除去のために必要とする。更に、一部の水分散性ポリマーは、水流交絡処理時(hydroentanglement)の水への暴露に耐えられないので、不織ウェブ及び不織布の製造には適さない。
【0006】
或いは、水分散性成分は不織ウェブ中の熱可塑性繊維の結合剤として作用することができる。水への暴露時には、繊維−繊維結合が壊れ、その結果、不織ウェブがその結着性を失い、個々の繊維に分解する。しかし、これらの不織ウェブの熱可塑性繊維成分は水分散性でなく、水性媒体中に依然として存在し、従って、都市下水処理プラントから除去しなければならない。水流交絡処理を使用して、繊維を団結させるための極めて低レベル(<5重量%)の結合剤を添加して又は結合剤を添加せずに、崩壊可能な不織布を製造できる。これらの布は廃棄時に崩壊可能であるが、水溶性又は水分解性でない繊維を用いることが多く、下水道内で絡み合い及び目詰まりを生じるおそれがある。添加される全ての水分散性結合剤はいずれも、また、水流交絡処理によって受ける影響が最低限でなければならず、ゲル状の沈着を形成することも架橋することもあってはならず、従って布の取扱い又は下水道に関連する問題の一因となってはならない。
【0007】
いくつかの水溶性又は分散性ポリマーが入手可能であるが、それらは一般的にメルトブローン(melt blown)繊維形成操作又は溶融紡糸全般には適用できない。ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクリル酸のようなポリマーは、適当な溶融粘度が達成される点未満の温度において起こる熱分解の結果として、溶融加工可能でない。高分子量のポリエチレンオキシドは適当な熱安定性を有することができるが、ポリマー界面において高粘度溶液を生成し、その結果、崩壊速度が遅くなるであろう。水分散性スルホポリエステルは、例えば特許文献17〜24に記載されている。しかし、典型的なスルホポリエステルは、脆い低分子量熱可塑性樹脂であり、破壊も崩壊もしない材料のロールを生成する、巻き取り操作に耐える柔軟性を欠く。油仕上げ剤又は多量の顔料若しくは充填剤の使用を回避する必要がある場合、スルホポリエステルは、また、フィルム又は繊維へ加工の間に粘着又は融着を示すおそれがある。低分子量ポリエチレンオキシド(より一般的にはポリエチレングリコールとして知られる)は、繊維用途に必要とされる物理的性質も有さない弱い/脆いポリマーである。溶液法による既知の水溶性ポリマーからの繊維の形成は代替方法であるが、溶剤、特に水の除去の複雑さが加わって、製造コストが増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,548,592号
【特許文献2】米国特許第6,552,162号
【特許文献3】米国特許第5,281,306号
【特許文献4】米国特許5,292,581号
【特許文献5】米国特許5,935,880号
【特許文献6】米国特許5,509,913号
【特許文献7】米国特許出願第09/775,312号
【特許文献8】米国特許出願第09/752,017号
【特許文献9】PCT国際出願公開公報第WO01/66666 A2号
【特許文献10】米国特許第6,548,592 B1号
【特許文献11】米国特許第5,916,678号
【特許文献12】米国特許第5,405,698号
【特許文献13】米国特許第4,966,808号
【特許文献14】米国特許第5,525,282号
【特許文献15】米国特許第5,366,804号
【特許文献16】米国特許第5,486,418号
【特許文献17】米国特許第6,171,685号
【特許文献18】米国特許第5,543,488号
【特許文献19】米国特許第5,853,701号
【特許文献20】米国特許第4,304,901号
【特許文献21】米国特許第6,211,309号
【特許文献22】米国特許第5,570,605号
【特許文献23】米国特許第6,428,900号
【特許文献24】米国特許第3,779,993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、水分の存在下において、特にヒトの体液への暴露時に適正な引張強度、吸収性、柔軟性並びに布結着性を示す、水分散性繊維及びそれから製造される繊維製品に対するニーズがある。更に、結合剤を必要とせず且つ住居又は都市の下水道に完全に分散又は溶解する繊維製品が必要とされている。可能な用途としては、メルトブローンウェブ、スパンボンド布、水流交絡処理(hydroentangled)布帛、乾式不織布、二成分繊維(bicomponent fiber)成分、接着促進層、セルロース樹脂用結合剤、水に流せる不織布及びフィルム、溶解可能なバインダー繊維、保護層並びに活性成分を水中に放出又は溶解させるための担体が挙げられるが、これらに限定するものではない。また、紡糸操作中にフィラメントの過剰な粘着又は融着を示さず、中性又はわずかに酸性のpHにおいて熱水によって除去し易く、且つ不織布を製造するための水流交絡処理法に適する水分散性成分を有する多成分繊維に対するニーズがある。他の押出可能な繊維材料及び溶融紡糸繊維材料も可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、意外にも、スルホポリエステルから柔軟な水分散性繊維を製造できることを発見した。即ち、本発明は、
(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含んでなる、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル;
(B)場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー;更に
(C)場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、ブレンドは非混和性ブレンドである)
を含んでなる水分散性繊維であって、前記繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む水分散性繊維を提供する。
【0011】
本発明の繊維は、水中に容易に分散又は溶解する単成分繊維であることができ、メルトブロー又は溶融紡糸によって製造できる。この繊維は、単一のスルホポリエステル又はスルホポリエステルと水分散性若しくは水非分散性ポリマーとのブレンドから製造できる。従って、本発明の繊維は、場合によっては、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマーを含むことができる。更に、本発明の繊維は、場合によっては、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマーを含むことができ、但しその場合には、ブレンドは非混和性ブレンドである。本発明は、また、本発明の水分散性繊維を含んでなる繊維製品を含む。従って、本発明の繊維は、水分散性であるか又は水に流すことができる糸、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ及び不織布のような種々の繊維製品の製造に使用できる。本発明の短繊維(staple fiber)は、また、紙、不織ウェブ及び織物糸中の天然又は合成繊維とブレンドすることができる。
【0012】
本発明の別の態様は、
(A)(i)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含んでなる、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル;
(B)場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされた第1水分散性ポリマー;更に
(C)場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされてブレンドを形成する水非分散性ポリマー(但し、ブレンドは非混和性ブレンドである)
を含んでなる水分散性繊維であって、前記繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む水分散性繊維である。本発明の水分散性繊維製品は、例えばワイプ(wipes)、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、トレーニングパンツ、生理用ナプキン、包帯(バンデージ)、創傷ケア及び外科用包帯(サージカルドレッシング)のようなパーソナルケア製品を含む。水分散性であることに加えて、本発明の繊維製品は水に流せる、即ち住居及び都市の下水道システムへの廃棄に適合し、適当である。
【0013】
本発明は、また、水分散性スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む多成分繊維を提供する。繊維は、水非分散性ポリマーが、水非分散性セグメントのための封入マトリックス又は結合剤として働く介在スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されたセグメントとして存在するような工学的形状(engineered geometry)を有する。従って、本発明の別の態様は、
(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含んでなる、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル;更に
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のセグメント(ここで前記複数のセグメントは、セグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含んでなる、付形断面(shaped cross section)を有する多成分繊維であって、繊維の総重量に基づき10重量%未満の顔料又は充填剤を含むものである。
【0014】
前記スルホポリエステルは、巻取り及び長期貯蔵の間の繊維の粘着及び融着を大幅に減少させる少なくとも57℃のガラス転移温度を有する。前記スルホポリエステルは、多成分繊維を水と接触させることによって除去でき、水非分散性セグメントがマイクロデニール繊維として残される。従って、本発明は、また、
(A)(i)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルと前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記繊維は水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントはセグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており、前記繊維は、繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む);そして
(B)前記多成分繊維を水と接触させてスルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法を提供する。
【0015】
前記水非分散性ポリマーは、DIN Standard 54900によって測定された場合に、生崩壊性(biodisintegrable)であり且つ/又はASTM Standard Method,D6340−98によって測定された場合に生分解性(biodegradable)であることができる。前記多成分繊維は、また、1層又はそれ以上の繊維層を含むことができる、糸、布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ又は不織布のような、繊維製品の製造に使用できる。多成分繊維を含む繊維製品は、更には、水と接触させて、マイクロデニール繊維を含む繊維製品を生成できる。
【0016】
従って、本発明の別の実施態様は、
(A)(i)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルと前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントはセグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており、前記繊維は、繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む);
(B)工程Aの多成分繊維を重ね合わせ且つ集めて不織ウェブを形成し;そして
(C)前記不織ウェブを水と接触させてスルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法である。
【0017】
本発明は、また、
(A)(i)(a)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(b)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上の金属スルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(c)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも20モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);
(d)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル;
(ii)場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー;更に
(iii)場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、ブレンドは非混和性ブレンドである)
を含む水分散性ポリマー組成物を、その流動点より高い温度まで加熱し(ここで前記ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む);
(B)フィラメントを溶融紡糸し;そして
(C)工程Bのフィラメントを重ね合わせ且つ集めて、不織ウェブを形成する
ことを含んでなる、水分散性不織布の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の別の態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル;及び
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(ここで前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含んでなる多成分繊維であって、前記繊維が約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニール(as-spun denier)を有し;前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;且つ前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む多成分繊維が提供される。
【0019】
本発明の別の態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル;及び
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含んでなり、少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸(melt drawn)することができる、異形断面を有する多成分押出物が提供される。
【0020】
本発明の別の態様において、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを紡糸することを含んでなる、異形断面を有する多成分繊維の製造方法であって、前記多成分繊維が、水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し且つ前記複数のドメインがドメイン間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記多成分繊維が約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度において測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;且つ前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む製造方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様において、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し且つ前記複数のドメインがドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);そして前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を生成することを含んでなる、付形断面を有する多成分繊維の製造方法が提供される。
【0022】
別の態様において、本発明は、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記多成分繊維は約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);そして
(B)前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、前記水非分散性ポリマーのマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法を提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し;そして
(C)前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、前記水非分散性ポリマーのマイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の更に別の態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記多成分繊維は約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);
(B)工程(A)の多成分繊維を集めて不織布ウェブを形成し;そして
(C)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0025】
本発明の更に別の態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し;
(C)工程(B)の多成分繊維を集めて、不織ウェブを形成し;そして
(D)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0026】
このように、本発明は、水分散性スルホポリエステルの溶融紡糸及び不織ウェブの形成による、水分散性不織布の新規で安価な製造方法を提供する。この不織布は、平布(flat fabric)の形態又は三次元形状であることができ、前述のパーソナルケア製品のような種々の繊維製品中に組み入れることができ、又は例えば手術着及びケミカル及びバイオハザードクリーンアップ並びに実験室作業用の保護服のような、水分散性の及び/若しくは水に流すことができる保護アウターウェア(outerware)の製造に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、水分の存在下において、特にヒトの体液への暴露時に引張強度、吸収性、柔軟性及び布結着性を示す水分散性繊維及び繊維製品を提供する。本発明の繊維及び繊維製品は、加工時の繊維の粘着又は融着を防ぐための、油、ワックス又は脂肪酸仕上げ剤の存在も、多量の(典型的には10重量%又はそれ以上の)顔料又は充填剤の使用も必要としない。更に、本発明の新規繊維から製造した繊維製品は結合剤を必要とせず、家庭又は公共下水道システム中で容易に分散又は溶解する。
【0028】
一般的な実施態様において、本発明は、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(C)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含んでなる、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルを含んでなる水分散性繊維を提供する。本発明の繊維は、場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされた水分散性ポリマー、及び場合によっては、前記スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(但し、その場合にはブレンドは非混和性ブレンドである)を含むことができる。本発明の繊維は、前記繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む。本発明は、また、これらの繊維を含んでなる繊維製品を含み、ワイプ、ガーゼ、ティッシュ、おむつ、成人用失禁ブリーフ、トレーニングパンツ、生理用ナプキン、包帯(bandage)及び外科用包帯(surgical dressing)のようなパーソナルケア製品を含む。これらの繊維製品は、繊維の吸収層を1つ又はそれ以上含むことができる。
【0029】
本発明の繊維は、単成分繊維、二成分繊維又は多成分繊維であることができる。例えば、本発明の繊維は、単一のスルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドの溶融紡糸によって製造でき、付形断面を有する短繊維、モノフィラメント繊維及びマルチフィラメント繊維を含む。更に、本発明は、スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを、例えば「海島(islands-in-the-sea)」、シースコア(sheath-core)、並行式(side-by-side)又はセグメント化パイ(segmented pie)立体配置のような付形又は工学的形状を有する紡糸口金を通して、別々に押出することによって製造できる、例えば特許文献11に記載されたような多成分繊維を提供する。スルホポリエステルは後で、界面層又はパイセグメントを溶解させ且つ水非分散性ポリマーのマイクロデニール繊維又は比較的小さいフィラメントを残すことによって除去できる。水非分散性ポリマーのこれらの繊維は、スルホポリエステルの除去前の多成分繊維よりもはるかに小さい繊度(fiber size)を有する。例えば、スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを、ポリマーをセグメント紡糸口金板に導入するポリマー分散系に供給することができる。ポリマーは、分離した路をたどって繊維紡糸口金まで進み、2つの同心円孔を含む(従って、シースコア型繊維を生じる)紡糸口金孔又は直径に沿って複数の部分に分割された(並行型の繊維を生じる)円形紡糸口金孔において合せられる。別法として、非混和性の水分散性スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを、複数の放射状流路を有する紡糸口金に別々に導入して、セグメント化パイ断面を有する多成分繊維を生成することができる。典型的には、スルホポリエステルは、シースコア構造の「シース」成分を形成するであろう。複数のセグメントを有する繊維断面においては、水非分散性セグメントは、典型的には、スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている。別法として、多成分繊維は、スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを別々の押出機中で溶融させ、そしてそれらのポリマー流を、細くて薄いチューブ又はセグメントの形態の複数の分配流路を有する1つの紡糸口金に向けて送り出して、「海島」形断面を有する繊維を生成することによって、形成できる。このような紡糸口金の一例は、特許文献15に記載されている。本発明においては、典型的には、スルホポリエステルは「海」成分を形成し、水非分散性ポリマーは「島」成分を形成するであろう。
【0030】
特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用する、成分の量、分子量のような性質、反応条件などを表す全ての数値は、いずれの場合も、用語「約」によって修飾されているものと解するものとする。従って、そうでないことが示されない限り、以下の明細書及び添付した「特許請求の範囲」中に示した数値パラメーターは、本発明が得ようとする目的の性質によって異なり得る近似値である。最低限でも、各数値パラメーターの解釈は少なくとも、報告した有効数字を考慮して、通常の丸めを適用することによって、行うべきである。更に、この開示及び「特許請求の範囲」に記載した範囲は、端点だけでなく、全範囲を具体的に含むものとする。例えば、0〜10と記載した範囲は、0と10の間の全ての整数、例えば1、2、3、4など、0と10の間の全ての分数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113など並びに端点0及び10を開示するものとする。更に、「C1〜C5炭化水素」のような化学置換基と関連する範囲は、C1及びC5炭化水素だけでなく、C2、C3及びC4炭化水素を具体的に含み且つ開示するものとする。
【0031】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメーターが近似値であるとしても、具体例に示した数値は、可能な限り正確に報告してある。しかし、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値の標準偏差から必然的に生じる若干の誤差を本質的に含む。
【0032】
本発明の単成分繊維及び繊維製品は水分散性であり、典型的には、室温で完全に分散する。それらの分散性又は不織繊維又は多成分繊維からのそれらの除去速度を促進するためには、より高い水温を用いることができる。単成分繊維及び単成分繊維から製造された繊維製品に関して本明細書中で使用する用語「水分散性」は、用語「水散逸性」、「水崩壊性」、「水溶解性」、「水消散性(water-dispellable)」、「水溶性」、「水除去性(water-removable)」、「ヒドロ溶解性(hydrosoluble)」及び「ヒドロ分散性」と同義であるものとし、繊維又は繊維製品が水の作用によって水中に又は水を通して分散又は溶解されることを意味するものとする。用語「分散された」、「分散性」、「散逸する」又は「散逸性」は、約60℃の温度において5日以下の期間内で繊維又は繊維製品の遊離懸濁液又はスラリーを形成するのに充分な量の脱イオン水(例えば水:繊維100:1(重量に基づく))を用いたときに、繊維及び繊維製品が溶解し、崩壊し又は分離して、程度の差はあるが媒体全体に分布した多数のインコーヒレント断片又は粒子となり、その結果、水の除去(例えば濾過又は蒸発による)時に認識可能なフィラメントが回収され得ないことを意味する。従って、本明細書中で使用する「水分散性」は、絡み合わされているか又は結合されているが、そうでなければ水不溶性又は非分散性である繊維のアセンブリが水中で単にバラバラになって、水の除去によって回収され得るであろう水中繊維スラリーを生成する単純な崩壊を含むものではない。本発明との関連において、これらの用語は全て、水又は水と水混和性補助溶剤との混合物の、本明細書中に記載したスルホポリエステルに対する活性を意味する。このような水混和性補助溶剤の例としては、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、エステルなどが挙げられる。この用語は、スルホポリエステルが溶解されて真溶液を形成した状態及びスルホポリエステルが水性媒体内に分散された状態を含むものとする。多くの場合、スルホポリエステル組成物の統計的性質により、単一のスルホポリエステルサンプルを水性媒体中に入れた場合には溶解フラクション及び分散フラクションを得ることが可能である。
【0033】
同様に、多成分繊維又は繊維製品の一成分としてのスルホポリエステルに関して本明細書中で使用する用語「水分散性」も、用語「水散逸性」、「水崩壊性」、「水溶解性」、「水消散性」、「水溶性」、「水除去性」、「ヒドロ溶解性」及び「ヒドロ分散性」と同義であるものとし、スルホポリエステル成分が水の作用によって充分に多成分繊維から除去され且つ分散又は溶解されて、多成分繊維又は繊維製品に含まれる水非分散性繊維の放出及び分離が可能になることを意味するものとする。用語「分散された」、「分散性」、「散逸する」又は「散逸性」は、約60℃の温度において5日以下の期間内で繊維又は繊維製品の遊離懸濁液又はスラリーを形成するのに充分な量の脱イオン水(例えば水:繊維100:1(重量に基づく))を用いたときに、スルホポリエステル成分が溶解し、崩壊し、又は多成分繊維から分離し、水非分散性セグメントからの多数のマイクロデニール繊維が後に残されることを意味する。
【0034】
用語「セグメント」又は「ドメイン」又は「ゾーン」は、多成分繊維の付形断面を記載するのに用いる場合には、水非分散性ポリマーを含む断面内の領域を意味し、これらのドメイン又はセグメントはセグメント又はドメイン間に介在する水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている。本明細書中で使用する用語「実質的に隔離されている」は、セグメント又はドメインが互いに引き離されており、スルホポリエステルの除去時にセグメント又はドメインが個々の繊維を形成できることを意味する。セグメント又はドメイン又はゾーンは、同様なサイズ及び形状を有することもできるし、或いは異なるサイズ及び形状を有することもできる。この場合もやはり、セグメント又はドメイン又はゾーンは、任意の構造で配列されることができる。これらのセグメント又はドメイン又はゾーンは、多成分押出物又は繊維の長さに沿って「実質的に連続的」である。用語「実質的に連続的」は、多成分繊維の少なくとも10cmの長さに沿って連続的であることを意味する。
【0035】
本明細書の開示に示すように、多成分繊維の付形断面は、例えばシースコア、海島、セグメント化パイ、中空セグメント化パイ、偏心(off-centered)セグメント化パイなどの形態であることができる。
【0036】
本発明の水分散性繊維はポリエステル、又はより具体的には、ジカルボン酸モノマー残基、スルホモノマー残基、ジオールモノマー残基及び反復単位を含むスルホポリエステルから製造する。スルホモノマーはジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸であることができる。従って、本明細書中で使用する用語「モノマー残基」は、ジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸の残基を意味する。本明細書中で使用する用語「反復単位」は、カルボニルオキシ基を介して結合された2個のモノマー残基を有する有機構造を意味する。本発明のスルホポリエステルは、実質的に等しい比率で反応する実質的に等しいモル比の酸残基(100モル%)及びジオール残基(100モル%)を含むので、反復単位の総モルは100モル%に等しい。従って、本発明の開示中に示されるモル百分率は、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル又は反復単位の総モルに基づく場合がある。例えばジカルボン酸、ジオール又はヒドロキシカルボン酸であることができるスルホモノマーを、総反復単位に基づき、30モル%含むスルホポリエステルは、スルホポリエステルが合計100モル%の反復単位のうちスルホモノマーを30モル%含むことを意味する。従って、反復単位100モルについてスルホモノマー残基が30モル存在する。同様に、ジカルボン酸スルホモノマーを、総酸残基に基づき、30モル%含むスルホポリエステルは、スルホポリエステルが合計100モル%の酸残基のうち、スルホモノマーを30モル%含むことを意味する。従って、後者の場合には、酸残基100モルについてスルホモノマー残基が30モル存在する。
【0037】
本明細書中に記載したスルホポリエステルは、フェノール/テトラクロロエタン溶剤の60/40重量部溶液中で25℃において溶剤100mL中スルホポリエステル約0.5gの濃度で測定した場合に、少なくとも約0.1dL/g、好ましくは約0.2〜0.3dL/g、最も好ましくは約0.3dL/gより大きいインヘレント粘度(以下、「Ih.V.」と略する)を有する。本明細書中で使用する用語「ポリエステル」は、「ホモポリエステル」及び「コポリエステル」の両者を包含し、二官能価カルボン酸と二官能価ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造された合成ポリマーを意味する。本明細書中で使用する用語「スルホポリエステル」は、スルホモノマーを含む任意のポリエステルを意味する。典型的には、二官能価カルボン酸がジカルボン酸であり且つ二官能価ヒドロキシル化合物が二価アルコール、例えばグリコール及びジオールである。或いは、二官能価カルボン酸がヒドロキシカルボン酸、例えばp−ヒドロキシ安息香酸であることができ且つ二官能価ヒドロキシル化合物が2個のヒドロキシ置換基を有する芳香核、例えばヒドロキノンであることができる。本明細書中で使用する用語「残基(residue)」は、対応するモノマーを含む重縮合反応によってポリマー中に組み入れられる任意の有機構造を意味する。従って、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマー又はその関連酸ハライド、エステル、塩、無水物又はそれらの混合物に由来することができる。従って、本明細書中で使用する用語「ジカルボン酸」は、ジオールとの重縮合反応において高分子量ポリエステルを生成するのに有用なジカルボン酸並びにその関連酸ハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物又はそれらの混合物を含むジカルボン酸の任意の誘導体を含むものとする。
【0038】
本発明のスルホポリエステルは、1種又はそれ以上のジカルボン酸残基を含む。スルホモノマーの型及び濃度に応じて、ジカルボン酸残基は約60〜約100モル%の酸残基を含むことができる。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は約60〜約95モル%及び約70〜約95モル%である。使用できるジカルボン酸の例としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又はこれらの酸の2種若しくはそれ以上の混合物が挙げられる。従って、適当なジカルボン酸としては、コハク酸;グルタル酸;アジピン酸;アゼライン酸;セバシン酸;フマル酸;マレイン酸;イタコン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;ジグリコール酸;2,5−ノルボルナンジカルボン酸;フタル酸;テレフタル酸;1,4−ナフタレンジカルボン酸;2,5−ナフタレンジカルボン酸;ジフェン酸;4,4’−オキシジ安息香酸;4,4’−スルホニルジ安息香酸;及びイソフタル酸が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましいジカルボン酸残基はイソフタル酸、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、又はジエステルを使用する場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルであり、イソフタル酸及びテレフタル酸の残基が特に好ましい。ジカルボン酸メチルエステルが最も好ましい実施態様であるが、これより高級のアルキルのエステル、例えばエチル、プロピル、イソプロピル、ブチルエステルなども許容され得る。更に、芳香族エステル、特にフェニルエステルも使用できる。
【0039】
スルホポリエステルは、総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含み、前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである。スルホモノマー残基の濃度範囲の更なる例は、総反復単位に基づき、約4〜約35モル%、約8〜約30モル%及び約8〜約25モル%である。スルホモノマーは、スルホネート基を含むジカルボン酸又はそのエステル、スルホネート基を含むジオール又はスルホネート基を含むヒドロキシ酸であることができる。用語「スルホネート」は、構造−SO3M[式中、Mはスルホン酸塩の陽イオンである]を有するスルホン酸の塩を意味する。スルホン酸塩の陽イオンは、Li+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++などのような金属イオンであることができる。或いは、スルホン酸塩の陽イオンは、例えば特許文献20に記載された窒素含有塩基のような非金属のイオンであることもできる。窒素系陽イオンは、脂肪族、脂環式又は芳香族化合物であることができる窒素含有塩基に由来する。このような窒素含有塩基の例としては、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン及びピペリジンが挙げられる。窒素系スルホン酸塩を含むモノマーは、典型的には、ポリマーをメルトの形態で生成させるのに必要な条件においては熱安定性ではないので、窒素系スルホン酸塩基を含むスルホポリエステルを製造するための本発明の方法は、必要量のスルホネート基を含むポリマーを水中にそのアルカリ金属塩の形態で分散させ、散逸させ又は溶解させ、次いでそのアルカリ金属陽イオンを窒素系陽イオンと交換するものである。
【0040】
一価アルカリ金属イオンをスルホン酸塩の陽イオンとして用いる場合には、得られるスルホポリエステルは水中に完全に分散性であり、分散速度は、ポリマー中のスルホモノマー含量、その水の温度、スルホポリエステルの表面積/厚さなどによって決まる。二価金属イオンを用いる場合には、得られるスルホポリエステルは冷水では容易に分散されず、熱水でより容易に分散される。単一のポリマー組成物内への1つより多い対イオンの使用が可能であり、得られる製造品の水応答性を特化又は微調整する手段を提供することができる。スルホモノマー残基の例としては、スルホン酸塩基が、例えばベンゼン;ナフタレン;ジフェニル;オキシジフェニル;スルホニルジフェニル;及びメチレンジフェニルのような芳香族酸核、又は例えばシクロヘキシル;シクロペンチル;シクロブチル;シクロヘプチル;及びシクロオクチルのような脂肪族環に結合したモノマー残基が挙げられる。本発明において使用できるスルホモノマー残基の他の例は、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホン酸塩又はそれらの組合せである。使用できるスルホモノマーの他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸及びそのエステルである。スルホモノマー残基が5−ソジオスルホイソフタル酸に由来する場合には、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、酸残基の総モルに基づき、約4〜約35モル%、約8〜30モル%及び約8〜25モル%である。
【0041】
スルホポリエステルの製造に使用するスルホモノマーは既知の化合物であり、当業界でよく知られた方法を用いて製造できる。例えば、スルホネート基が芳香環に結合したスルホモノマーは、芳香族化合物を発煙硫酸(oleum)によってスルホン化して対応するスルホン酸を生成させた後、金属酸化物又は塩基、例えば酢酸ナトリウムと反応させてスルホン酸塩を製造することよって、製造できる。種々のスルホモノマーの製造方法は、例えば特許文献24;米国特許第3,018,272号;及び第3,528,947号に記載されている。
【0042】
また、ポリマーが分散された形態である場合には、例えばスルホン酸ナトリウム塩と、ナトリウムを亜鉛のような異なるイオンで置換するイオン交換法を用いてポリエステルを製造することも可能である。この型のイオン交換方法は一般に、ナトリウム塩が通常はポリマー反応体溶融相により溶解性である限り、二価の塩を用いたポリマーの製造よりも優れている。
【0043】
スルホポリエステルは、脂肪族、脂環式及びアルアルキルグリコールを含むことができる1種又はそれ以上のジオール残基を含む。脂環式ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体とトランス異性体との混合物として存在できる。ここで使用する用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義であり、任意の二価アルコールを意味する。ジオールの例としては、エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;ポリエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール;チオジエタノール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;p−キシリレンジオール又はこれらのグリコールの1種若しくはそれ以上の組合せが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0044】
ジオール残基は、総ジオール残基に基づき、約25〜約100モル%の、構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)の残基を含むことができる。例えばnが2〜6である、比較的低分子量のポリエチレングリコールの非限定的例はジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールである。これらの比較的低分子量のグリコールのうち、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが最も好ましい。nが7〜約500である、比較的高分子量のポリエチレングリコール(本明細書中では「PEG」と略する)としては、CARBOWAX(登録商標)の名称で知られる市販製品、Dow Chemical Company(以前はUnion Carbide)の製品が挙げられる。典型的には、PEG類は、例えばジエチレングリコール又はエチレングリコールのような他のジオールと組合せて使用する。6超〜500の範囲のnの値に基づいた場合、分子量は300g/モル超〜約22,000g/モルの範囲であることができる。分子量とモル%は互いに反比例し;具体的には、分子量が増加するにつれて、指定された親水度を達成するためのモル%は低下するであろう。例えば、分子量1000のPEGは総ジオールの10モル%以下を構成することができるが、分子量10,000のPEGは典型的には総ジオールの1モル%未満のレベルで混和されるであろうことを考慮することは、この概念の一例である。
【0045】
若干の二量体、三量体及び四量体ジオールが、プロセス条件を変えることによってコントロールされ得る副反応によってその場で(in situ)形成される場合がある。例えば、重縮合反応を酸性条件下で実施する場合に起こりやすい酸触媒脱水反応によって、エチレングリコールから種々の量のジエチレン、トリエチレン及びテトラエチレングリコールが形成される可能性がある。これらの副反応を遅延させるために、当業者によく知られた緩衝液の存在を反応混合物に加えることができる。しかし、緩衝液が用いられず且つ二量化、三量化及び四量化反応が進行させられる場合には、別の組成許容範囲が可能である。
【0046】
本発明のスルホポリエステルは、総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)を含むことができる。分岐モノマーの非限定的例は、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸又はそれらの組合せである。分岐モノマー濃度範囲の更なる例は、0〜約20モル%及び0〜約10モル%である。分岐モノマーの存在は、本発明のスルホポリエステルに多くの実現可能な利益をもたらし、例えばレオロジー特性、溶解特性及び引張特性を特化できる。例えば、分子量が一定の場合には、分岐スルホポリエステルは、線状類似体に比較して、後重合架橋反応を促進できる末端基の濃度がより大きい。しかし、分岐剤の濃度が高い場合には、スルホポリエステルはゲル化する傾向がある可能性がある。
【0047】
本発明の繊維に使用するスルホポリエステルは、当業者によく知られた、示差走査熱量測定法(DSC)のような、標準的方法を用いて乾燥ポリマーについて測定した場合に、少なくとも25℃のガラス転移温度(本明細書中では「Tg」と略する)を有する。本発明のスルホポリエステルのTg測定は、「乾燥ポリマー」、即ち、ポリマーを約200℃の温度まで加熱し且つサンプルを室温に戻すことによって付随的な又は吸収された水を飛ばしたポリマーサンプルを用いて実施する。典型的には、スルホポリエステルの乾燥をDSC装置中で、水の気化温度より高い温度までサンプルを加熱する第1熱走査を実施し、ポリマー中に吸収された水の気化が完了する(大きく、幅広い吸熱によって示される)まで前記サンプルを同温度に保持し、前記サンプルを室温まで冷却し、次いで第2熱走査を実施することによって、行って、Tg測定値を得る。スルホポリエステルが示すガラス転移温度の更なる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃である。
【0048】
本発明の新規繊維は、前述のスルホポリエステルで構成されるか又は本質的に構成されることができる。しかし、別の実施態様においては、本発明のスルホポリエステルは単一のポリエステルであることもできるし、或いは得られる繊維の性質を改良するために1種又はそれ以上の補充ポリマーとブレンドすることもできる。補充ポリマーは、用途に応じて水分散性であってもなくてもよく、スルホポリエステルと混和性でも非混和性でもよい。補充ポリマーが水非分散性である場合には、スルホポリエステルとのブレンドは非混和性であるのが好ましい。本明細書中で使用する用語「混和性」は、ブレンドが、単一の組成依存的Tgによって示される単一の均一な非晶相を有することを意味するものとする。例えば、第2ポリマーと混和性の第1ポリマーは、例えば特許文献21に示されるように、第2ポリマーを「可塑化する」のに使用できる。一方、本明細書中で使用する用語「非混和性」は、少なくとも2つのランダムに混合された相を示し且つ1つより多いTgを示すブレンドを意味する。一部のポリマーはスルホポリエステルと非混和性であるが、相容性である場合がある。混和性及び非混和性ポリマーブレンド並びにそれらの特性決定のための種々の分析技術についての更なる概要は、Polymer Blends Volumes 1 and 2,Edited by D.R.Paul and C.B.Bucknall,2000,John Wiley & Sons,Inc.に記載されている。
【0049】
スルホポリエステルとブレンドできる水分散性ポリマーの非限定的例は、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、イソプロピルセルロース、メチルエーテル澱粉、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリエチルオキサゾリン、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリビニルメチルオキサゾリドン、水分散性スルホポリエステル、ポリビニルメチルオキサゾリジモン、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)及びエチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーである。スルホポリエステルとブレンドできる水非分散性ポリマーの例としては、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレンのホモポリマー及びコポリマー;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ブチレンテレフタレート);並びにポリアミド、例えばナイロン−6;ポリラクチド;カプロラクトン;Eastman Chemical Companyの製品であるEaster Bio(登録商標)(ポリ(テトラメチレンアジペート−コ−テレフタレート);ポリカーボネート;ポリウレタン;並びにポリ塩化ビニルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0050】
本発明によれば、1種より多いスルホポリエステルのブレンドを使用して、得られる繊維又繊維製品、例えば不織布又はウェブの最終用途特性を特化することができる。1種又はそれ以上のスルホポリエステルのブレンドは、水分散性単成分繊維の場合には少なくとも25℃及び多成分繊維の場合には少なくとも57℃のTgを有するであろう。従って、ブレンディングは、不織布の二次加工を容易にするためにスルホポリエステルの加工特性を変えるのにも活用できる。別の例において、ポリプロピレン及びスルホポリエステルの非混和性ブレンドは、真溶解性が必要ない限りでは、バラバラになり且つ水中に完全に分散する従来の不織ウェブを提供することできる。この後者の例においては、望ましい性能はポリプロピレンの物理的性質の維持に関連し、製品の実際の使用時にはスルホポリエステルはスペクテーターにすぎないか、或いはスルホポリエステルは逃散性(fugitive)であって、最終形態の製品の使用前に除去される。
【0051】
スルホポリエステル及び補充ポリマーは回分法、半回分法又は連続法でブレンドできる。小規模バッチは、繊維の溶融紡糸前に、当業者によく知られた任意の強力混合装置、例えばBanburyミキサー中で容易に製造できる。成分は、適切な溶剤中に溶解してブレンドすることもできる。溶融ブレンド法は、ポリマーを溶融させるのに充分な温度でスルホポリエステル及び補充ポリマーをブレンドすることを含む。ブレンドは冷却し且つ更なる使用のためにペレット化することもできるし、或いは溶融ブレンドを、溶融されたブレンドの形態から繊維の形態に直接溶融紡糸することもできる。ここで使用する用語「溶融」は、ポリエステルの単なる軟化を含むが、これに限定するものではない。ポリマー業界で一般に知られた溶融混合法に関しては、Mixing and Compounding of Polymers(I.Manas-Zloczower & Z.Tadmor editors,Carl Hanser Verlag Publisher,1994,New York,N.Y.)を参照されたい。
【0052】
本発明は、また、
(A)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(B)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(C)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含んでなる少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステルを含む水分散性繊維を提供する。前述のように、繊維は、場合によっては、スルホポリエステルとブレンドされた第1水分散性ポリマー;及び場合によっては、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性ポリマー(従って、ブレンドは非混和性ブレンドである)を含むことができる。本発明の繊維は、繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む。前記の第1水分散性ポリマーは前述の通りである。スルホポリエステルは少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有する必要があるが、例えば約35℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃のTgを有することもできる。スルホポリエステルは他の濃度の、例えば約60〜約95モル%及び約75〜約95モル%のイソフタル酸残基を含むことができる。イソフタル酸残基濃度範囲の更なる例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%及び約90〜約95モル%である。スルホポリエステルは、約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含むこともできる。ジエチレングリコール残基濃度範囲の更なる例としては、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%及び約75〜約95モル%が挙げられる。スルホポリエステルは、エチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノール(ここでは「CHDM」と略する)の残基を含むこともできる。CHDM残基の典型的な濃度範囲は約10〜75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は約10〜約75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。別の実施態様において、スルホポリエステルは約75〜約96モル%のイソフタル酸残基及び約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基を含む。
【0053】
本発明のスルホポリエステルは、適切なジカルボン酸、エステル、無水物又は塩、スルホモノマー及び適切なジオール又はジオール混合物から、典型的な重縮合反応条件を用いて容易に製造できる。これらは連続、半連続及び回分運転モードで製造でき、種々の反応器型を使用できる。適当な反応器型の例としては、撹拌槽型反応器、連続撹拌槽型反応器、スラリー反応器、管型反応器、ワイプトフィルム反応器、流下膜式反応器又は押出反応器が挙げられるが、これらに限定するものではない。ここで使用する用語「連続」は、反応体の導入と生成物の取り出しを中断なしに同時に行う方法を意味する。「連続」は、方法が実質基又は完全に連続的に実施され且つ「回分」法とは異なるものであることを意味する。「連続」は、例えば始動、反応器メインテナンス又は定期シャットダウン期間による、方法の連続性の正常な中断を禁止することを意味しない。ここで使用する用語「回分」法は、全ての反応体を反応器に加えてから、所定の反応過程に従って処理し、その間に反応器中への材料の供給又は除去を行わない方法を意味する。用語「半連続」は、一部の反応体を方法の最初に装入し且つ残りの反応体を、反応の進行につれて連続的に供給する方法を意味する。別法として、半連続法は、反応の進行につれて1種又はそれ以上の生成物を連続的に除去する以外は、方法の最初に反応体を全て加える回分法と同様な方法を含むこともできる。この方法は、経済的な理由から、また、高温の反応器中に過度に長時間滞留させる場合には、スルホポリエステルの外観が劣化するおそれがあるので、ポリマーの優れた色合いを生じるために、連続法として運転するのが有利である。
【0054】
本発明のスルホポリエステルは、当業者に知られた方法によって製造する。スルホモノマーは、ほとんど場合、ポリマーを製造する反応混合物に直接添加するが、他の方法も知られ、また、使用できる(例えば、米国特許第3,018,272号、第3,075,952号及び第3,033,822号に記載)。スルホモノマー、ジオール成分及びジカルボン酸成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて実施できる。例えば、エステル交換反応によって、即ちエステル型のジカルボン酸成分からスルホポリエステルを製造する場合には、反応方法は2工程を含むことができる。第1工程において、ジオール成分とジカルボン酸成分、例えばイソフタル酸ジメチルを高温で、典型的には約150〜約250℃において約0.0kPaゲージ〜約414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ,psig)の範囲の圧力で約0.5〜約8時間反応させる。好ましくは、エステル交換反応の温度は約1〜約4時間の間、約180〜約230℃の範囲であり、好ましい圧力は約103kPaゲージ(15psig)〜約276kPaゲージ(40psig)の範囲である。その後、反応生成物をより高温下において減圧下で加熱して、ジオールを取り除きながらスルホポリエステルを形成する。ジオールは、これらの条件下では揮発し易く、系から除去される。この第2工程又は重縮合工程は、より高真空下で、一般には約230〜350℃、好ましくは約250〜約310℃、最も好ましくは約260〜約290℃の温度において約0.1〜約6時間、又は好ましくは、約0.2〜約2時間、インヘレント粘度によって測定した場合に所望の重合度を有するポリマー得られるまで、続ける。重縮合工程は、約53kPa(400トル)〜約0.013kPa(0.1トル)の範囲の減圧下で実施できる。反応混合物の適正な熱伝達及び表面更新を保証するために、両段階において撹拌又は適切な条件を使用する。両段階の反応は、適切な触媒、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキル錫化合物、金属酸化物などによって促進する。米国特許第5,290,631号に記載されたのと同様な3段製造法も、酸とエステルとの混合モノマー供給材料を用いる場合には特に、使用できる。
【0055】
エステル交換反応メカニズムによるジオール成分とジカルボン酸成分の反応を確実に完了させるためには、ジカルボン酸成分1モルに対してジオール成分約1.05〜約2.5モルを用いるのが好ましい。しかし、当業者ならば、ジオール成分対ジカルボン酸成分の比が一般に、反応プロセスを行う反応器の設計によって決定されることがわかるであろう。
【0056】
直接エステル化による、即ち酸型のジカルボン酸成分からのスルホポリエステルの製造においては、スルホポリエステルは、ジカルボン酸又はジカルボン酸混合物とジオール成分又はジオール成分の混合物とを反応させることによって製造する。反応は約7kPaゲージ(1psig)〜約1379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満の圧力において実施して、平均重合度が約1.4〜約10の低分子量線状又は分岐スルホポリエステルを生成する。直接エステル化反応の間に使用する温度は、典型的には、約180〜約280℃、より好ましくは約220〜約270℃の範囲である。この低分子量ポリマーは次に重縮合反応によって重合させることができる。
【0057】
本発明の水分散性及び多成分繊維並びに繊維製品は、それらの最終用途に悪影響を与えない他の従来の添加剤及び成分を含むこともできる。例えば充填剤、表面摩擦調整剤、光及び熱安定剤、押出助剤、帯電防止剤、着色剤、染料、顔料、螢光増白剤、抗菌剤、偽造防止マーカー、疎水性及び親水性増強剤、粘度調整剤、スリップ剤、強化剤、接着促進剤などのような添加剤を使用できる。
【0058】
本発明の繊維及び繊維製品は、加工時の繊維の粘着又は融着を防ぐのに、例えば顔料、充填剤、油、ワックス又は脂肪酸仕上げ剤のような添加剤の存在を必要としない。ここで使用する用語「粘着又は融着」は、繊維又は繊維製品がくっつき合うか又は融合して塊になることよって、繊維を加工することもその本来の目的に使用することもできないことを意味するものと解釈する。粘着及び融着は、繊維若しくは繊維製品の加工の間又は数日間若しくは数週間にわたる貯蔵の間に起こる可能性があり、高温多湿条件下では悪化する。
【0059】
本発明の一実施態様において、繊維及び繊維製品は、繊維又は繊維製品の総重量に基づき、10重量%未満の、このような粘着防止剤を含むであろう。例えば、繊維及び繊維製品は10重量%未満の顔料又は充填剤を含むことができる。他の例においては、繊維及び繊維製品は、繊維の総重量に基づき、9重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満及び0重量%の顔料又は充填剤を含むことができる。スルホポリエステルに望ましいニュートラルな色相及び/又は明度を与えるために、トナーと称することもある着色剤を添加することができる。有色繊維が望ましい場合には、顔料又は着色剤を、ジオールモノマーとジカルボン酸モノマーとの反応の間に、スルホポリエステル反応混合物中に組み込むこともできるし、或いは予備成形されたスルホポリエステルと溶融ブレンドすることもできる。着色剤を組み込む好ましい方法は、反応性基を有する熱安定性有機着色化合物を含む着色剤の使用であり、それによって、スルホポリエステル中に着色剤が共重合及び混和されて、その色合いが改善される。例えば反応性ヒドロキシル及び/又はカルボキシル基を有する染料のような着色剤、例えば青色及び赤色置換アントラキノン(これらに限定するものではないが)をポリマー鎖中に共重合させることができる。染料を着色剤として使用する場合には、エステル交換又は直接エステル化反応後にコポリエステル反応プロセスに加えることができる。
【0060】
本発明においては、用語「繊維」は、織布又は不織布のような二次元又は三次元製品の形態にすることができる、高アスペクト比のポリマー体を意味する。本発明との関連において、単数の「繊維」は複数の「繊維」と同義であり、1つ又はそれ以上の繊維を意味するものとする。本発明の繊維は単成分繊維、二成分繊維又は多成分繊維であることができる。本明細書中で使用する用語「単成分繊維」は、単一スルホポリエステル、1種若しくはそれ以上のスルホポリエステルのブレンド又は1種若しくはそれ以上のスルホポリエステルと1種又はそれ以上の追加ポリマーとのブレンドを溶融紡糸することによって製造された繊維を意味し、短繊維、モノフィラメント繊維及びマルチフィラメント繊維を含む。「単成分(unicomponent)」は、用語「一成分(monocomponent)」と同義であるものとし、「二構成要素(biconstituent)」繊維又は「多構成要素(multiconstituent)」繊維を含み、ブレンドとして同一押出機から押出された少なくとも2種のポリマーから形成された繊維を意味する。単成分又は二構成要素(biconstituent)繊維は、繊維の断面積の全体にわたって、比較的一定に配置された別個のゾーン中に配列された種々の成分を有さず、種々のポリマーは繊維の全長に沿って通常は連続的でなく、代わりに通常は、ランダムに始まって終わるフィブリル又はプロトフィブリルを形成する。従って、用語「単成分」は、着色、帯電防止性、減摩、親水性などのために少量の添加剤を添加することができるポリマー又は1種若しくはそれ以上のポリマーのブレンドから形成された繊維を除外するものではない。
【0061】
一方、ここで使用する用語「多成分繊維」は、2種又はそれ以上の繊維形成性ポリマーを別々の押出機中で溶融させ、得られた複数のポリマー流を、複数の分配流路を有する1つの紡糸口金に向けて送り出すことによって製造されるが、一緒に紡糸されて1つの繊維を形成する繊維を意味するものとする。多成分繊維は、場合によっては、コンジュゲート繊維又は二成分繊維とも称する。ポリマーは、コンジュゲート繊維の断面全体にわたって、実質的に一定に配置された別個のセグメント又はゾーン中に配列され、コンジュゲート繊維の長さに沿って連続的に伸びる。このような多成分繊維の構造は、例えば芯鞘配列(1つのポリマーが別のポリマーで囲まれる)であることもできるし、或いは並列配列、パイ配列又は「海島」配列であることもできる。例えば、多成分繊維は、「海島」又はセグメント化パイ立体配置のような付形又は工学的断面形状を有する紡糸口金を通して、スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを別々に押出することによって、製造できる。単成分繊維は、典型的には、異形又は円形断面を有する短繊維、モノフィラメント繊維及びマルチフィラメント繊維である。ほとんどの繊維形態はヒートセットさせる。繊維は、前述のような種々の酸化防止剤、顔料及び添加剤を含むことができる。
【0062】
モノフィラメント繊維のサイズは、一般に、約15〜約8000デニール/フィラメント(ここでは「d/f」と略する)の範囲である。本発明の新規繊維は、典型的には、約40〜約5000の範囲のd/f値を有するであろう。モノフィラメントは単成分又は多成分繊維の形態であることができる。本発明のマルチフィラメント繊維のサイズは、メルトブローンウェブの場合には約1.5μm以上、短繊維の場合には約0.5〜約50d/f及びモノフィラメント繊維の場合には約5000d/f以下であるのが好ましいであろう。マルチフィラメント繊維はけん縮又は非けん縮糸及びトウとして使用できる。メルトブローンウェブ及び溶融紡糸布に使用する繊維はマイクロデニールサイズで製造できる。ここで使用する用語「マイクロデニール」は、1d/f又はそれ以下のd/f値を意味するものとする。例えば、本発明のマイクロデニール繊維は、典型的には、1若しくはそれ以下、0.5若しくはそれ以下、又は0.1若しくはそれ以下のd/f値を有する。ナノファイバーもまた、静電紡糸によって製造できる。
【0063】
前述のように、スルホポリエステルは、付形断面を有する二成分及び多成分繊維の製造にも有利である。本発明者らは、紡糸及び巻き取り時の粘着及び融着を防ぐには、多成分繊維の場合には、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有するスルホポリエステル又はスルホポリエステルのブレンドが特に有用であることを発見した。従って、本発明は、
(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又はシクロ脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含んでなる、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル;更に
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のセグメント(前記複数のセグメントは、セグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含んでなる、異形断面を有する多成分繊維であって、「海島」又はセグメント化パイ断面を有し且つ繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含むものを提供する。
【0064】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー及び分岐モノマー残基は、本発明の他の実施態様に関して前述した通りである。多成分繊維については、スルホポリエステルは少なくとも57℃のTgを有するのが有利である。本発明の多成分繊維のスルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドが示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。更に、少なくとも57℃のTgを有するスルホポリエステルを得るためには、1種又はそれ以上のスルホポリエステルのブレンドを種々の比率で用いて、望ましいTgを有するスルホポリエステルブレンドを得ることができる。スルホポリエステルブレンドのTgは、スルホポリエステル成分のTgの加重平均を用いることによって計算できる。例えば、Tgが48℃のスルホポリエステルを、Tgが65℃の別のスルホポリエステルとwt:wt比25:75でブレンドして、Tgが約61℃のスルホポリエステルブレンドを生成できる。
【0065】
本発明の別の実施態様において、多成分繊維の水分散性スルホポリエステル成分は、以下:
(A)多成分繊維が所望の低デニールに紡糸される、
(B)これらの多成分繊維中のスルホポリエステルが、その繊維から形成されたウェブの水流交洛処理中の除去に対して抵抗性であるが、水流交絡処理後には高温において効率的に除去される、
(C)多成分繊維がヒートセット可能であって、安定で強力な布帛を生成する
の少なくとも1つを可能にする性質を示す。特定の溶融粘度及びスルホモノマー残基レベルを有するスルホポリエステルを用いてこれらを促進すると、意外で、予期されない結果が達成される。
【0066】
従って、本発明のこの実施態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル;及び
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(ここで前記複数のドメインは、ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含んでなる、異形断面を有する多成分繊維であって、前記繊維が約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度において測定された場合に約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;且つ前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む多成分繊維が提供される。
【0067】
これらの多成分繊維に使用されるスルホポリエステルは、一般に約12,000ポアズ未満の溶融粘度を有する。スルホポリエステルの溶融粘度は、240℃及び1rad/秒の剪断速度において測定した場合に、好ましくは10,000ポアズ未満、より好ましくは6,000ポアズ未満、最も好ましくは4,000ポアズ未満である。別の態様において、スルホポリエステルは、240℃及び1rad/秒の剪断速度において測定した場合に、約1000〜12000ポアズ、より好ましくは2000〜6000ポアズ、最も好ましくは2500〜4000ポアズの溶融粘度を示す。粘度の測定前に、サンプルは真空オーブン中で60℃において2日間乾燥させる。溶融粘度は、レオメーターで、直径25mmの平行板形状を用いて1mmの間隙設定で測定する。動的周波数掃引は、1〜400rad/秒の歪速度範囲及び10%の歪振幅で実施する。次に、粘度を240℃において1rad/秒の歪速度で測定する。
【0068】
本発明のこの態様に従って使用するスルホポリエステルポリマー中のスルホモノマー残基レベルは、スルホポリエステル中に総二酸又はジオール残基の百分率として報告する場合に、一般に25モル%未満、好ましくは20モル%未満である。より好ましくは、このレベルは約4〜約20モル%、更に好ましくは約5〜約12モル%、最も好ましくは約7〜約10モル%である。本発明に使用するスルホモノマーは、好ましくは、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有し、この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである。ソジオスルホ−イソフタル酸モノマーが特に好ましい。
【0069】
前記スルホモノマーの他に、スルホポリエステルは好ましくは、1個又はそれ以上のジカルボン酸の残基、1個又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である)、及び総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基(この官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)を有する分岐モノマーの残基を含む。
【0070】
特に好ましい実施態様において、スルホポリエステルは約80〜96モル%のジカルボン酸残基、約4〜約20モル%のスルホモノマー残基及び100モル%のジオール残基を含む(合計モル%は200モル%、即ち二酸が100モル%及びジオール100モル%である)。より具体的には、スルホポリエステルのジカルボン酸部分は、約60〜80モル%のテレフタル酸、約0〜30モル%のイソフタル酸及び約4〜20モル%の5−ソジオスルホイソフタル酸(5−SSIPA)を含む。ジオール部分は約0〜50モル%のジエチレングリコール及び約50〜100モル%のエチレングリコールを含む。本発明のこの実施態様による配合物の例を次に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
多成分繊維の水非分散性成分は、ここに記載した任意の水非分散性ポリマーを含むことができる。繊維の紡糸も、ここに記載した任意の方法に従って行うことができる。しかし、本発明のこの態様に係る多成分繊維の改善されたレオロジー特性は、延伸速度(drawing speed)を増大する。スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成する場合には、多成分押出物は、本明細書に開示した任意の方法を用いて少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、更に好ましくは少なくとも約4000m/分、最も好ましくは少なくとも約4500m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を生成することができる。理論によって拘束するものではないが、これらの速度での多成分押出物の溶融延伸は、多成分繊維の水非分散性成分に少なくとも若干の配向結晶性(oriented crystallinity)をもたらす。この配向結晶性は、次の加工の間に多成分繊維から生成される不織材料の寸法安定性を増大させることができる。
【0073】
多成分押出物の別の利点は、6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有する多成分繊維に溶融延伸できることである。多成分繊維の繊度の他の範囲としては、4デニール/フィラメント未満及び2.5デニール/フィラメント未満の溶融時デニールが挙げられる。
【0074】
従って、本発明の別の実施態様において、付形断面を有する多成分押出物は、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル;及び
(B)スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(ここで前記複数のドメインは、ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含み、前記押出物は、少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸できる。
【0075】
多成分繊維は、スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーの複数のセグメント又はドメインを含み、前記セグメント又はドメインは、セグメント又はドメイン間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている。ここで使用する用語「実質的に隔離されている」は、セグメント又はドメインが互いに引き離されていて、スルホポリエステルの除去時にそれらが個々の繊維を形成できることを意味するものとする。例えばセグメント又はドメインは、例えばセグメントパイ構造において見られるように、接触し合っていることができるが、衝撃によって又はスルホポリエステルの除去時にバラバラに分裂させることができる。
【0076】
本発明の多成分繊維中における、スルホポリエステル対水非分散性ポリマー成分の重量比は一般に約60:40〜約2:98の範囲、又は別の例においては、約50:50〜約5:95の範囲である。典型的には、スルホポリエステルは多成分繊維の総重量の50重量%又はそれ以下を構成する。
【0077】
多成分繊維のセグメント又はドメインは1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含むことができる。多成分繊維のセグメントに使用できる水非分散性ポリマーの例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルが挙げられる。例えば、水非分散性ポリマーは、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレートなどのようなポリエステルであることができる。別の例において、水非分散性ポリマーは、DIN Standard 54900によって測定した場合には生崩壊性であり且つ/又はASTM Standard Method,D6340−98によって測定した場合には生分解性であることができる。生分解性ポリエステル及びポリエステルブレンドの例は、米国特許第5,599,858号;第5,580,911号;第5,446,079号;及び第5,559,171号に開示されている。本発明の水非分散性ポリマーに関してここで使用する用語「生分解性」は、ASTM Standard Method,D6340−98,”Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Materials in an Aqueous or Compost Environment”によって定義されたように、例えば堆肥化環境のような環境の影響下において、適切で実証できる時間幅で、ポリマーが分解されることを意味すると解釈する。本発明の水非分散性ポリマーは「生崩壊性」であることもできる。「生崩壊性」は、例えばDIN Standard 54900によって定義された堆肥化環境中でポリマーが容易に断片化されることを意味する。例えば、生分解性ポリマーは最初に、熱、水、空気、微生物及び他の要因の作用によって環境中で分子量が低下させられる。この分子量の低下は、物理的性質(強力)の低下を、多くの場合は繊維破断を引き起こす。ポリマーの分子量が充分低くなったら、モノマー及びオリゴマーが次に微生物によって同化される(assimilated)。好気的環境においては、これらのモノマー又はオリゴマーは最終的にCO2、H2O及び新しい細胞バイオマスに酸化される。嫌気的環境においては、モノマー又はオリゴマーは最終的にCO2、H2、アセテート、メタン及び細胞バイオマスに転化される。
【0078】
例えば水非分散性ポリマーは脂肪族−芳香族ポリエステル(ここでは「AAPE」と略する)であることができる。ここで使用する用語「脂肪族−芳香族ポリエステル」は脂肪族又は脂環式ジカルボン酸又はジオール及び芳香族ジカルボン酸又はジオールの残基の混合物を含むポリエステルを意味する。本発明のジカルボン酸及びジオールモノマーに関してここで使用する用語「非芳香族」はモノマーのカルボキシル又はヒドロキシル基が芳香核を介して結合していないことを意味する。例えばアジピン酸はその主鎖、即ち、カルボン酸基を接続する炭素原子の鎖中に芳香核を含まず、従って「非芳香族」である。一方、用語「芳香族」は、ジカルボン酸又はジオールが主鎖中に芳香核を含む、例えばテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であることを意味する。従って、「非芳香族」は、例えば、飽和しているか又はパラフィン系である、不飽和である、即ち非芳香族炭素−炭素二重結合を含んでいる、或いはアセチレン系である、即ち炭素−炭素三重結合を含んでいることができる構成炭素原子の直鎖、分岐鎖又は環状配列を主鎖として含むジオール及びジカルボン酸のような脂肪族構造及び脂環式構造を含むものである。従って、本発明の説明及び「特許請求の範囲」との関連において、非芳香族は、直鎖及び分岐鎖構造(ここでは「脂肪族」と称する)並びに環状構造(ここでは「脂環式」と称する)を含むものとする。しかし、用語「非芳香族」は、脂肪族又は脂環式ジオール又はジカルボン酸の主鎖に結合できる任意の芳香族置換基を除外するものではない。本発明において、二官能価カルボン酸は典型的には、例えばアジピン酸のような脂肪族ジカルボン酸又は例えばテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸である。二官能価ヒドロキシル化合物は、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールのような脂環式ジオール、例えば1,4−ブタンジオールのような直鎖若しくは分岐鎖脂肪族ジオール、又は例えばヒドロキノンのような芳香族ジオールであることができる。
【0079】
AAPEは、炭素数2〜約8の脂肪族ジオール、炭素数2〜8のポリアルキレンエーテルグリコール及び炭素数約4〜約12の脂環式ジオールから選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖ジオールの残基を含むジオール残基を含む直鎖若しくは分岐鎖ランダムコポリエステル及び/又は連鎖延長コポリエステルであることができる。置換ジオールは、典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから独立して選ばれた1〜約4個の置換基を含むものとする。使用できるジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2、2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールが挙げられ(これらに限定するものではないが)、好ましいジオールは、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれた1種又はそれ以上のジオールを含む。AAPEは、また、二酸残基の総モルに基づき、約35〜約99モル%の、炭素数2〜約12の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数約5〜約10の脂環式酸から選ばれた1種又はそれ以上の置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖非芳香族ジカルボン酸の残基を含む二酸残基を含む。置換非芳香族ジカルボン酸は、典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜約4個の置換基を含むものとする。非芳香族二酸の非限定的例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸が挙げられる。非芳香族ジカルボン酸の他に、AAPEは、二酸残基の総モルに基づき、約1〜約65モル%の炭素数6〜約10の1種又はそれ以上の置換又は未置換芳香族ジカルボン酸の残基を含む。置換芳香族ジカルボン酸を用いる場合には、それらは典型的には、ハロ、C6〜C10アリール及びC1〜C4アルコキシから選ばれた1〜約4個の置換基を含むものとする。本発明のAAPEに使用できる芳香族ジカルボン酸の非限定的例はテレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸の塩及び2,6−ナフタレンジカルボン酸である。より好ましくは、非芳香族ジカルボン酸はアジピン酸を含み、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、ジオールは1,4−ブタンジオールを含むものとする。
【0080】
本発明のAAPEの他の考えられる組成物は、二酸成分100モル%及びジオール成分100モル%に基づき、以下のモル百分率で以下のジオール及びジカルボン酸(又はジエステルのようなそれらのポリエステル形成性相当物):
(1)グルタル酸(約30〜約75%);テレフタル酸(約25〜約70%);1,4−ブタンジオール(約90〜100%);及び改質用ジオール(0〜約10%);
(2)コハク酸(約30〜約95%);テレフタル酸(約5〜約70%);1,4−ブタンジオール(約90〜100%);及び改質用ジオール(0〜約10%);並びに
(3)アジピン酸(約30〜約75%);テレフタル酸(約25〜約70%);1,、4−ブタンジオール(約90〜100%);及び改質用ジオール(0〜約10%)
から製造されたものである。
【0081】
改質用ジオールは好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びネオペンチルグリコールから選ばれる。最も好ましいAAPEは、アジピン酸残基約50〜約60モル%、テレフタル酸残基約40〜約50モル%及び1,4−ブタンジオール残基少なくとも95モル%を含む線状、分岐鎖又は連鎖延長コポリエステルである。更に好ましくは、アジピン酸残基が約55〜約60モル%を構成し、テレフタル酸残基が約40〜約45モル%を構成し、ジオール残基が約95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含む。このような組成物は、Eastman Chemical Company(Kingsoprt,TN)からEASTAR BIO(登録商標)コポリエステルとして、及びBASF CorporationからECOFLEX(登録商標)として市販されている。
【0082】
好ましいAAPEのその他の具体例としては、(a)グルタル酸残基50モル%、テレフタル酸残基50モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%、(b)グルタル酸残基60モル%、テレフタル酸残基40モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%又は(c)グルタル酸残基40モル%、テレフタル酸残基60モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレングルタレート−コ−テレフタレート);(a)コハク酸残基85モル%、テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%又は(b)コハク酸残基70モル%、テレフタル酸残基30モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレン−スクシネート−コ−テレフタレート);コハク酸残基70モル%、テレフタル酸残基30モル%及びエチレングリコール残基100モル%を含むポリ(エチレンスクシネート−コ−テレフタレート);並びに(a)アジピン酸残基85モル%、テレフタル酸残基15モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%又は(b)アジピン酸残基55モル%、テレフタル酸残基45モル%及び1,4−ブタンジオール残基100モル%を含むポリ(テトラメチレンジアジペート−コーテレフタレート)が挙げられる。
【0083】
AAPEは約10〜約1,000個、好ましくは約15〜約600個の反復単位を含むのが望ましい。AAPEは、フェノール/テトラクロロエタンの重量比60/40の溶液100ml中コポリエステル0.5gの濃度を用いて25℃の温度において測定した場合に、約0.4〜約2.0dL/g、又はより好ましくは約0.7〜約1.6dL/gのインヘレント粘度を有することができる。
【0084】
AAPEは場合によっては分岐剤の残基を含むことができる。分岐剤のモル百分率範囲は、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約0〜約2モル%、好ましくは約0.1〜約1モル%。最も好ましくは約0.1〜約0.5モル%である(分岐剤がカルボキシル基を含むか又はヒドロキシル基を含むかによって異なる)。分岐剤は、好ましくは約50〜約5000、より好ましくは約92〜約3000の重量平均分子量及び約3〜約6の官能価を有する。分岐剤は、例えば、3〜6個のヒドロキシル基を有するポリオール、3若しくは4個のカルボキシ基(又はエステル形成性相当基)を有するポリカルボン酸又は合計3〜6個のヒドロキシル及びカルボキシル基を有するヒドロキシ酸のエステル化残基であることができる。更に、AAPEは、反応性押出の間にペルオキシドの添加によって分岐させることができる。
【0085】
水非分散性ポリマーの各セグメントは、他とは繊度が異なることができ、当業者に知られた任意の付形又は工学的断面形状で配列することができる。例えば、スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーは、例えば並行式、「海島」、セグメント化パイ、他の分割可能構造、シースコア又は当業者に知られた他の構造のような工学的形状を有する二成分繊維の製造に使用できる。他の多成分構造も可能である。並行(side-by-side)の列(side)、「海」、又は「パイ」の一部分のその後の除去により、微細繊維を得ることができる。二成分繊維の製造方法は当業者によく知られている。二成分繊維において、本発明のスルホポリエステル繊維は約10〜約90重量%の量で存在でき、一般にシースコア繊維の鞘部分に使用する。他の成分は、例えばポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、ポリラクチドなど並びにポリオレフィン、セルロースエステル及びポリアミドのような、広範囲の他のポリマー材料に由来することができる。典型的には、水不溶性又は水非分散性ポリマーを用いる場合には、得られる二成分又は多成分繊維は完全には水分散性ではない。熱収縮率が著しく異なる並列の組合せは、スパイラルけん縮の形成に利用できる。けん縮が望ましい場合には、のこ歯(saw tooth)又はスタッファーボックスけん縮が一般に多くの用途に適する。第2のポリマー成分が芯鞘構造の芯に存在する場合には、このような芯は場合によっては安定化させることができる。
【0086】
スルホポリエステルは、多成分繊維から他の水分散性ポリマーを除去するのに場合によっては必要とされる苛性アルカリ含有溶液に比較して、分散に中性又はわずかに酸性(即ち、「軟」水)しか必要としないので、「海島」又は「セグメント化パイ」断面を有する繊維に特に有用である。従って、本発明の態様は、
(A)(i)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルと
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のセグメント(ここで前記複数のセグメントは、セグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含む多成分繊維であって、前記繊維が「海島」又はセグメント化パイ断面を有し且つ繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含むものである。ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、分岐モノマー残基及び水非分散性ポリマーは前述した通りである。多成分繊維の場合には、スルホポリエステルは少なくとも57℃のTgを有するのが有利である。スルホポリエステルは単一のスルホポリエステル又は1種若しくはそれ以上のスルホポリエステルポリマーのブレンドであることができる。スルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドが示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。例えばスルホポリエステルは約75〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基と約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含むことができる。前述のように、水非分散性ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルである。更に、水非分散性ポリマーは生崩壊性又は生分解性であることができる。例えば水非分散性ポリマーは前述のような脂肪族−芳香族ポリエステルであることができる。
【0087】
本発明の新規多成分繊維は、当業者に知られた多くの方法によって製造できる。従って、本発明は、
(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを紡糸して繊維の形態にする(ここで前記繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントはセグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており、前記繊維は、繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む)ことを含んでなる、付形断面を有する多成分繊維の製造方法を提供する。例えば多成分繊維の製造は、水非分散性ポリマー成分が介在スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離された小さいセグメント又は細いストランドを形成するように、スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを別々の押出機中で溶融させてから、個々のポリマー流を、複数の分配流路を有する1つの紡糸口金又は押出ダイに向けて送り出すことによって、行うことができる。このような繊維の断面は、例えばセグメント化パイ配列又は海島配列であることができる。別の例においては、スルホポリエステル及び1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを紡糸口金オリフィスに別々に供給し、次いで、水非分散性ポリマーがスルホポリエステル「シース」ポリマーで実質的に囲まれた「コア」を形成するシースコアの形態で押出する。このような同心繊維の場合は、「コア」ポリマーを供給するオリフィスは紡糸オリフィス出口の中心にあり、コアポリマー流体のフロー条件は、紡糸時に両成分の同心度を維持するように厳密に制御する。紡糸口金オリフィスの変更によって、繊維断面内にコア及び/又はシースの種々の形状を得ることができる。更に別の例において、水分散性スルホポリエステル及び水非分散性ポリマーをオリフィスを通して別々に同時押出し、そして別々のポリマー流を実質的に同じ速度で収束させて、紡糸口金の表面下において結合流として並列に融合させることによって;又は(2)紡糸口金の表面で収束する2つのポリマー流を、オリフィスを通して実質的に同じ速度で別々に供給して、紡糸口金の表面において結合流として並列に融合させることによって、並列断面又は構造を有する多成分繊維を製造できる。いずれの場合においても、各ポリマー流の融合点における速度は、計量型ポンプの速度、オリフィスの数及びオリフィスのサイズによって決まる。
【0088】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、分岐モノマー残基及び水非分散性ポリマーは前述の通りである。スルホポリエステルは少なくとも57℃のガラス転移温度を有する。スルホポリエステル又はスルホポリエステルブレンドが示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃及び少なくとも90℃である。一例において、スルホポリエステルは、総酸残基に基づき、約50〜約96モル%の1種又はそれ以上のイソフタル酸又はテレフタル酸の残基;及び総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;並びに総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)を含むことができる。別の例において、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%の1種又はそれ以上のイソフタル酸又はテレフタル酸の残基及び約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含むことができる。前述のように、水非分散性ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン及びポリ塩化ビニルである。更に、水非分散性ポリマーは生分解性又は生崩壊性であることができる。例えば、水非分散性ポリマーは、前述のような脂肪族−芳香族ポリエステルであることができる。付形断面の例としては、海島、並行式、シースコア又はセグメント化パイ立体配置が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0089】
本発明の別の実施態様において、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを紡糸して多成分繊維を生成することを含む、付形断面を有する多成分繊維の製造方法であって、多成分繊維が水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記ドメインが、ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含み;前記多成分繊維が約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有する方法が提供される。
【0090】
これらの多成分繊維に使用するスルホポリエステル及び水非分散性ポリマーについては本明細書の開示中に既に記載した。
【0091】
本発明の別の実施態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);そして
(B)前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成する
ことを含んでなる、付形断面を有する多成分繊維の製造方法が提供される。
【0092】
この方法が、多成分押出物を少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、最も好ましくは少なくとも4500m/分の速度で溶融延伸する工程を含むことも、本発明のこの実施態様の特徴である。
【0093】
典型的には、紡糸口金を出た時点で、繊維は空気の直交流によって急冷されて、繊維が凝固する。この段階で、種々の仕上げ剤及びサイズ剤を繊維に適用できる。冷却された繊維は、典型的には、その後に延伸し、巻き取りスプールに巻き上げる。乳化剤、帯電防止剤、抗菌剤、消泡剤、潤沢剤、熱安定剤、UV安定剤のような他の添加剤を、仕上剤中に有効量で添加できる。
【0094】
場合によっては、延伸した繊維をテキスチャード加工し(textured)、巻き上げて、かさばった連続繊維を形成することもできる。この一段法は、紡糸延伸テキスチャ−加工(spin-draw-texturing)として知られる。他の実施態様は、けん縮された又はけん縮されていない扁平フィラメント(非テキスチャード加工)糸又は切断短繊維を含む。
【0095】
スルホポリエステルは後から、界面層又はパイセグメントを溶解させ且つ水非分散性ポリマーの比較的短いフィラメント又はマイクロデニール繊維を残すことによって、除去することができる。従って、本発明は、
(A)(i)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記繊維は水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、前記複数のセグメントはセグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており、前記繊維は、繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む);そして
(B)前記多成分繊維を水と接触させてスルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法を提供する。
【0096】
典型的には、多成分繊維を約25〜約100℃、好ましくは約50〜約80℃の温度において約10〜約600秒間、水と接触させ、それによってスルホポリエステルを散逸又は溶解させる。スルホポリエステルの除去後、残りのマイクロファイバーは、典型的には、1d/f若しくはそれ以下、典型的には0.5d/f若しくはそれ以下、又はより典型的には0.1d/f若しくはそれ以下の平均繊度を有するであろう。これらの残りのマイクロファイバーの典型的な用途としては、合成皮革、スエード、ワイプ及び濾材が挙げられる。スルホポリエステルのイオン性は、また、体液のような生理的食塩水媒体への難「溶性」をもたらすので有利である。このような性質は、水に流すことができるか又は汚水排出系に廃棄されるパーソナルケア製品及びクリーニングワイプにおいて望ましい。選択されたスルホポリエステルは、染浴中で分散剤として及び洗濯サイクルにおいて再堆積防止剤としても利用されている。
【0097】
本発明の別の実施態様においては、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを紡糸して多成分繊維の形態にし(ここで前記多成分繊維は前記水非分散性スルホポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインは、ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記繊維は約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);そして前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成することを含んでなるマイクロデニール繊維の製造方法が提供される。
【0098】
本発明の別の実施態様においては、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し;そして
(C)前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法が提供される。
【0099】
多成分押出物の溶融延伸は、少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、最も好ましくは少なくとも4500m/分の速度で実施するのが好ましい。
【0100】
本発明に従って使用するのに適当なこのようなスルホモノマー及びスルホポリエステルは前述の通りである。
【0101】
本発明のこの態様に従って使用するのに好ましいスルホポリエステルは一般に、その後の水流交絡処理プロセス中における除去に対して抵抗性であるので、多成分繊維からスルホポリエステルを除去するのに使用する水は室温より高く、より好ましくは水は少なくとも約45℃、更に好ましくは少なくとも約60℃、最も好ましくは約80℃であるのが好ましい。
【0102】
本発明は、また、前述の水分散性繊維、多成分繊維又はマイクロデニール繊維を含む繊維製品を含む。用語「繊維製品」は、繊維を有する又は繊維に似ている任意の製品を意味すると解釈する。繊維製品の非限定的例としては、マルチフィラメント繊維、糸、コード、テープ、布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、熱融着ウェブ、水流交絡処理ウェブ、不織ウェブ及び不織布並びにそれらの組合せ;繊維の層を1層又はそれ以上有するもの、例えば多層不織布、ラミネート、並びにこのような繊維からの複合材料、ガーゼ、包帯、おむつ、トレイニングパンツ、タンポン、手術着及びマスク、生理用ナプキンなどが挙げられる。更に、繊維製品は、種々の個人衛生用品及び洗浄製品用の交換インサート(replacement insert)を含むことができる。本発明の繊維製品は、水分散性であることもないこともできる他の材料に結合する、貼り合わせる、取り付ける又はそれと併用することができる。繊維製品、例えば不織布層は、ポリエチレンのような水非分散性材料の裏打ち又は柔軟性プラスチックフィルムに結合させることができる。このようなアセンブリは、例えば使い捨ておむつの一成分として使用できるであろう。更に、繊維製品は、別の基材に繊維をオーバーブローして、かなり多くの種類の組合せの工学的メルトブローン、スパンボンド、フィルム又は膜構造を形成することによって得ることもできる。
【0103】
本発明の繊維製品は不織布及び不織ウェブを含む。不織布は、織り又は編み操作を行わずに繊維ウェブから直接製造される布と定義する。例えば、本発明の多成分繊維は、編み、織り、ニードルパンチ及び水流交絡処理のような任意の周知の布形成法によって、布の形態にすることができる。得られた布又はウェブは、充分な力を働かせて多成分繊維を分割させることによって、又はウェブを水と接触させてスルホポリエステルを除去して、残りのマイクロデニール繊維を後に残すことによって、マイクロデニール繊維に転化することができる。従って、本発明は、
(A)(i)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(ii)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を有する水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、前記セグメントはセグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており、前記繊維は、繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む);
(B)工程Aの多成分繊維を重ね合わせ且つ集めて不織ウェブを形成し;そして
(C)前記不織ウェブを水と接触させてスルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法を提供する。
【0104】
本発明の別の実施態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記繊維は約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);そして
(B)工程(A)の前記多成分繊維を集めて不織布ウェブを形成し;そして
(C)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0105】
本発明の更に別の実施態様において、
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を生成し;
(C)工程(B)の前記多成分繊維を集めて、不織ウェブを形成し;そして
(D)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0106】
本発明は、また、工程(C)の前に、不織ウェブの多成分繊維を水流交絡処理する工程を含むのが好ましい。また、水流交絡処理工程による多成分繊維中に含まれるスルホポリエステルの損失は約20重量%未満であるのが好ましく、より好ましくはこの損失は15重量%未満であり、最も好ましくは10重量%未満である。水流交絡処理の間におけるスルホポリエステルの損失を減らすという目標を助長するために、このプロセスの間に使用する水は、好ましくは約45℃未満、より好ましくは約35℃未満、最も好ましくは約30℃未満の温度を有する。水流交絡処理の間に使用する水は、多成分繊維からのスルホポリエステルの損失を最小限に抑えるために、可能な限り室温に近いことが好ましい。逆に、工程(C)におけるスルホポリエステルポリマーの除去は、好ましくは少なくとも約45℃、より好ましくは少なくとも約60℃、最も好ましくは少なくとも約80℃の温度を有する水を用いて実施する。
【0107】
水流交絡処理後であって工程(C)の前において、不織ウェブを少なくとも約100℃、より好ましくは少なくとも約120℃の温度に加熱することを含むヒートセット工程を不織ウェブに対して行うことができる。このヒートセット工程は、内部繊維応力を緩和し、寸法安定性繊維製品の製造に助ける。ヒートセット材料を、ヒートセット工程の間に加熱された温度まで再加熱する場合には、それはその元の表面積の約5%未満の表面積収縮を示すのが好ましい。より好ましくは、収縮は元の表面積の約2%未満、最も好ましくは約1%未満である。
【0108】
多成分繊維中に使用するスルホポリエステルは、本明細書中に記載したもののいずれかであることができるが、スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約6000ポアズ未満の溶融粘度を有し且つ、総反復単位に基づき、約12モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含むのが好ましい。これらの型のスルホポリエステルは本明細書中で前述したものである。
【0109】
更に、本発明の方法は、好ましくは、少なくとも2000m/分、より好ましくは約3000m/分、更に好ましくは少なくとも約4000m/分、最も好ましくは少なくとも約5000m/分の繊維速度で多成分繊維を延伸する工程を含む。
【0110】
不織アセンブリは、1)ウェブ又はマットにおける機械的繊維凝集力及び絡み合い;2)特定のポリマー及びポリマーブレンドの熱可塑性を用いる、バインダー繊維の使用を含む繊維の種々の融着技術;3)澱粉、カゼイン、セルロース誘導体又は合成樹脂(例えばアクリルラテックス若しくはウレタン)のような結合樹脂の使用;4)粉末接着性バインダー;又は5)それらの組合せによって団結させる。繊維はランダムに堆積されること多いが、一方向の延伸後に前記方法の1つを用いて結合を行うことも可能である。
【0111】
本発明の繊維製品は、1層又はそれ以上の水分散性繊維、多成分繊維又はマイクロデニール繊維を含むこともできる。繊維層は、1層又はそれ以上の不織布層、1層の緩く結合したオーバーラップ繊維又はそれらの組合せであることができる。更に、繊維製品は、小児用ケア製品、例えば乳幼児のおむつ;小児用トレイニングパンツ;成人用ケア製品、例えば成人用おむつ及び成人用失禁パッド;女性用ケア製品、例えば生理用ナプキン、パンツライナー及びタンポン;ワイプ;繊維含有洗浄製品;医療用及び外科用ケア製品、例えば医療用ワイプ、ティッシュ、ガーゼ、診察ベッドカバー、外科手術用マスク、ガウン、包帯(bandage)及び創傷被覆材;布;弾性糸、ワイプ、テープ、他の保護バリア、並びにパッキング材料のような(これらに限定するものではないが)パーソナルケア製品及びヘルスケア製品を含むことができる。繊維製品は、液体を吸収させるのに使用することもできるし、或いは種々の液体組成物によって予め湿らせ且つこれらの組成物を表面に送り出すのに使用することもできる。液体組成物の非限定的例としては、洗剤;湿潤剤;清浄剤;スキンケア製品、例えば化粧品、軟膏、医薬品、皮膚軟化剤及びフレグランスが挙げられる。繊維製品は、吸収性を改善するための又は送達ベヒクルとしての種々の粉末及び粒子を含むこともできる。粉末及び粒子の例としては、タルク、澱粉、種々の吸水性、水分散性又は水膨潤性ポリマー、例えば超吸収性ポリマー、スルホポリエステル及びポリ(ビニルアルコール)、シリカ、顔料並びにマイクロカプセルが挙げられるが、これらに限定するものではない。特定の用途には必要に応じて、添加剤が存在することもできるが、必要ではない。添加剤の例としては、酸化安定剤、UV吸収剤、着色剤、顔料、不透明化剤(艶消し剤)、光学増白剤、充填剤、成核剤、可塑剤、粘度調整剤、表面改質剤、抗菌剤、消毒剤、常温流れ阻害剤、分岐剤及び触媒が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0112】
水分散性である他に、前記繊維製品は水に流すことができる場合がある。本明細書中で使用する用語「水に流すことができる」は、通常のトイレにおいて流すことができ且つ都市下水又は住居汚水処理システム中に送り出すことができ、トイレ又は下水道に障害又は閉塞を生じないことを意味する。
【0113】
繊維製品は更に、第2水分散性ポリマーを含む水分散性フィルムを含むことができる。第2水分散性ポリマーは、本発明の繊維及び繊維製品に使用する前記水分散性ポリマーと同じであっても異なってもよい。一実施態様において、例えば、第2水分散性ポリマーは、
(A)総酸残基に基づき、約50〜約96モル%のイソフタル酸又はテレフタル酸の1種又はそれ以上の残基;
(B)総酸残基に基づき、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;
(C)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも15モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);
(D)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む追加スルホポリエステルであることができる。この追加スルホポリエステルは、前述の1種又はそれ以上の補充ポリマーとブレンドして、得られる繊維製品の性質を調整することができる。補充ポリマーは、用途に応じて、水分散性であることもできるし、水分散性でないこともできる。補充ポリマーは、追加スルホポリエステルと混和性であることも非混和性であることもできる。
【0114】
追加スルホポリエステルは、他の濃度の、例えば約60〜約95モル%及び約75〜約95モル%のイソフタル酸残基を含むことができる。イソフタル酸残基濃度範囲の更なる例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%及び約90〜約95モル%である。追加スルホポリエステルは、約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基を含むことができる。ジエチレングリコール残基濃度範囲の更なる例としては、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%及び約75〜約95モル%が挙げられる。追加スルホポリエステルは、エチレングリコール及び/又は1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含むこともできる。CHDM残基の典型的な濃度範囲は約10〜約75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%及び約40〜約60モル%である。別の実施態様において、追加スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸残基及び約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基を含む。
【0115】
本発明によれば、繊維製品のスルホポリエステルフィルム成分を、単層又は多層フィルムとして生成できる。単層フィルムは、従来の流延技術によって生成できる。多層フィルムは、従来のラミネーション法などによって生成できる。フィルムは任意の都合の良い厚さを有することができるが、全厚は通常、約2〜約50milであろう。
【0116】
フィルム含有繊維製品は、1層又はそれ以上の前述の水分散性繊維層を含むことができる。繊維層は、1層若しくはそれ以上の不織布層、1層の緩く結合したオーバーラップ繊維層又はそれらの組合せであることができる。更に、フィルム含有繊維製品は、前述のようなパーソナルケア製品及びヘルスケア製品を含むことができる。
【0117】
前述のように、繊維製品は、吸収性を改善するために又は送達ベヒクルとして種々の粉末又は粒子を含むこともできる。従って、一態様において、本発明の繊維製品は、本明細書中で前述した水分散性ポリマー成分と同じであるか又は異なることができる第3水分散性ポリマーを含む粉末を含む。粉末及び粒子の他の例としては、タルク、澱粉、種々の吸水性、水分散性又は水膨潤性ポリマー、例えばポリ(アクリロニトリル)、スルホポリエステル及びポリ(ビニルアルコール)、シリカ、顔料並びにマイクロカプセルが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0118】
本発明の新規繊維及び繊維製品は、前記用途の他に多くの潜在的用途を有する。1つの新規用途は、保護層を提供するためにフィルム又は不織布を平面、曲面又は付形表面にメルトブローすることを含む。このような層は、輸送中の耐久性装置に対する表面保護を与えるかもしれない。送り先では、装置の運転開始前に、スルホポリエステルの外層を洗い落とすことができるであろう。この一般的用途概念の更なる実施態様は、いくつかの再利用可能な又は限定的利用の衣類又はカバー類に一時的バリア層を提供するための身体保護(personal protection)製品を含むことができるであろう。軍用の場合には、活性炭及び化学吸収剤を、コレクター(collector)の直前において減衰フィラメントパターン(attenuating filament pattern)上に噴霧して、メルトブローンマトリックスを露出面上のこれらの要素(entity)にしっかりと固定することができるであろう。化学吸収剤は、別の層にメルトブローすることによって、前線の軍事作戦基地(forward operations area)において脅威の発生時に、変化させることさえできる。
【0119】
スルホポリエステルに特有の主な利点は、イオン部分(即ち塩)の添加によってポリマーを水性分散液からフロキュレーション又は沈殿によって容易に除去又は回収できることである。pH調整、非溶剤の添加、凍結(freezing)などのような他の方法も使用できる。従って、防護上着のような繊維製品は、防護バリアとして成功裡に使用された後に、ポリマーが有害廃棄物にされたとしても、焼却のような容認プロトコルを用いて、はるかに低容量で安全に廃棄処理することが場合によっては可能である。
【0120】
溶解されていないか又は乾燥されたスルホポリエステルは、多様な基材、例えばフラッフパルプ、綿、アクリル樹脂、レーヨン、リヨセル、PLA(ポリラクチド)、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(ポリメチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、コポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ステンレス鋼、アルミニウム、処理ポリオレフィン、PAN(ポリアクリロニトリル)及びポリカーボネート(これらに限定するものではないが)に強力な接着結合(adhesive bonds)を形成することが知られている。従って、本発明の不織布は、熱的方法、高周波(RF)法、マイクロ波法及び超音波法のような周知の方法よって結合させることができる貼り合わせ用接着剤又は結合剤として使用できる。RF活性化が可能になるようにスルホポリエステルを適合させることは、多くの最近の特許に開示されている。従って、本発明の新規不織布は、接着性の他に2つの機能又は更には多機能を有することができる。例えば、本発明の不織布は水応答性接着剤と最終アセンブリの流体管理成分の両者として作用する水使い捨ての乳幼児用おむつを得ることができるであろう。
【0121】
本発明は、また、
(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上の金属スルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);そして
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも20モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(iv)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む水分散性ポリマー組成物を、その流動点より高い温度まで加熱し(前記ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む);そして
(II)フィラメントを溶融紡糸する
ことを含んでなる、水分散性繊維の製造方法を提供する。前述のように、場合によっては、水分散性ポリマーを前記スルホポリエステルとブレンドすることができる。更に、場合によっては、水非分散性ポリマーを前記スルホポリエステルとブレンドしてブレンドを形成することができ、その場合にはブレンドは非混和性ブレンドである。ここで使用する「流動点」は、ポリマー組成物の粘度が押出又は紡糸口金若しくは押出ダイを経る他の型の加工を可能にする温度を意味する。ジカルボン酸残基は、スルホモノマーの型及び濃度に応じて、酸残基の約60〜約100モル%を構成することができる。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は、約60〜約95モル%及び約70〜約95モル%である。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、或いはジエステルを用いる場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルであり、イソフタル酸及びテレフタル酸の残基が特に好ましい。
【0122】
スルホモノマーは、スルホネート基を含むジカルボン酸若しくはそのエステル、スルホネート基を含むジオール又はスルホネート基を含むヒドロキシ酸であることができる。スルホモノマー残基の濃度範囲の更なる例は、総反復単位に基づき、約4〜約25モル%、約4〜約20モル%、約4〜約15モル%及び約4〜約10モル%である。スルホン酸塩の陽イオンは、Li+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++などのような金属イオンであることができる。或いは、スルホン酸塩の陽イオンは、前述のような窒素含有塩基のような非金属イオンであることができる。本発明の方法において使用できるスルホモノマー残基の例は、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホン酸塩又はそれらの組合せである。使用できるスルホモノマーの別の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸又はそのエステルである。スルホモノマー残基が5−ソジオスルホイソフタル酸に由来する場合には、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、総酸残基に基づき、約4〜約35モル%、約8〜約30モル%及び約10〜25モル%である。
【0123】
本発明のスルホポリエステルは、1種又はそれ以上のジオール残基を含み、ジオール残基は脂肪族、脂環式又はアルアルキルグリコールを含むことができる。脂環式ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールは、それらの純粋なシス若しくはトランス異性体として又はシス異性体とトランス異性体の混合物として存在できる。nが2〜6である比較的低分子量のポリエチレングリコールの非限定的例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールである。比較的低分子量のこれらのグリコールのうち、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコールが最も好ましい。スルホポリエステルは場合によっては分岐モノマーを含むことができる。分岐モノマーの例は前述の通りである。分岐モノマー濃度範囲の更なる例は0〜約20モル%及び0〜約10モル%である。本発明の新規方法のスルホポリエステルは、少なくとも25℃のTgを有する。スルホポリエステルが示すガラス転移温度の更なる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃である。
【0124】
水分散性繊維はメルトブロー法によって製造する。ポリマーを押出機中で溶融させ、強制的にダイに通す。ダイから出た押出物を、高温の高速空気によって超微細な直径まで急速に繊細化する(attenuated)。繊維の延伸、冷却速度、ガラス転移温度(Tg)及び結晶化速度は、繊細化時のポリマーの粘度及び加工特性に影響を及ぼすので、重要である。フィラメントを、更新可能な表面に、例えば移動ベルト、円筒形ドラム、回転マンドレルなどの上に集める。ペレットの予備乾燥(必要に応じて)、押出機ゾーンの温度、溶融温度、スクリューの設計、処理量(押出量)、空気温度、空気流(速度)、ダイのエアギャップ及びセットバック、ノーズ先端の孔寸法、ダイ温度、ダイ−コレクター(DCP)間隔、急冷環境、コレクター速度及び後処理は全て、フィラメント直径、基本重量、ウェブ厚さ、細孔径、軟度及び収縮率のような製品特性に影響を与える要因である。高速空気はまた、若干ランダムにフィラメントを移動させて、広範囲にわたる交錯をもたらすのに使用できる。ダイの下に移動ベルトを通す場合には、フィラメントの重なり合ったレイダウン、機械的凝集性及び熱接合の組合せによって、不織布を生成できる。スパンボンド又は裏打ち層のような別の基材へのオーバーブローも可能である。フィラメントを回転マンドレルに巻き取る場合には、円筒形の製品が形成される。水分散性繊維のレイダウンは、スパンボンド法によっても製造できる。
【0125】
従って、本発明は、
(A)(i)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総反復単位に基づき、約4〜約40モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上の金属スルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(iii)1種又はそれ以上のジオール残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも20モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);
(iv)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む水分散性ポリマー組成物(スルホポリエステルは少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を有する)を、その流動点より高い温度まで加熱し(前記ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む);
(B)フィラメントを溶融紡糸し;そして
(C)工程(B)のフィラメントを重ね合わせ且つ集めて、不織布を形成する
ことを含んでなる、水分散性不織布の製造方法を提供する。前述のように、場合によっては、水分散性ポリマーを前記スルホポリエステルとブレンドすることができる。更に、場合によっては、水非分散性ポリマーを前記スルホポリエステルとブレンドしてブレンドを形成でき、その場合にはブレンドは非混和性ブレンドである。ジカルボン酸、スルホモノマー及び分岐モノマー残基は前述の通りである。スルホポリエステルは少なくとも25℃のTgを有する。スルホポリエステルが示すガラス転移温度の更なる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃及び少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃及び約90℃である。本発明を更に以下の例によって説明する。
【実施例】
【0126】
全てのペレットサンプルは、室温において真空下で少なくとも12時間予備乾燥させた。表IIIに示した分散時間は、不織布サンプルを完全に分散又は溶解させる時間である。表II及びIIIにおいて使用する略語「CE」は、「比較例」を意味する。
【0127】
実施例1
イソフタル酸76モル%、ソジオスルホイソフタル酸24モル%、ジエチレングリコール76モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール24モル%を含む、Ih.Vが0.29及びTgが48℃のスルホポリエステルを、表Iに示した条件を用いて公称6インチのダイ(ノーズピース中において孔30個/インチ)を通して円筒形コレクター上にメルトブローした。差し込み紙(interleafing paper)は必要なかった。ロール巻き操作中に粘着しない、軟質で、取り扱い易く、柔軟なウェブが得られた。物理的性質を表IIに示す。表IIIのデータによって示されるように、不織布の小片(1”×3”)は、わずかに撹拌しながら室温(RT)及び50℃の水のいずれにも容易に分散された。
【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
実施例2
イソフタル酸89モル%、ソジオスルホイソフタル酸11モル%、ジエチレングリコール72モル%及びエチレングリコール28モル%を含む、Ih.Vが0.4及びTgが35℃のスルホポリエステルを、表Iと同様な条件を用いて6インチのダイを通してメルトブローした。ロール巻き操作中に粘着しない、軟質で、取り扱い易く、柔軟なウェブが得られた。物理的性質を表IIに示す。表IIIのデータによって示されるように、不織布の小片(1”×2”)は、50℃及び80℃においては容易に完全に分散されたが;RT(23℃)においては、不織布の完全な分散にはより長い時間が必要であった。
【0132】
例I及びIIの組成物は、他の不織布基材上にオーバーブローできることがわかった。また、濃縮し且つ従来のウェブコレクターの代わりに使用される造形型(shaped form)又は成形型(contoured form)に巻き付けることも可能である。従って、円形の「ロービング」又はプラグの形態のウェブを得ることも可能である。
【0133】
比較例1〜3
イソフタル酸89モル%、ソジオスルホイソフタル酸11モル%、ジエチレングリコール72モル%及びエチレングリコール28モル%を含む、Ih.Vが0.4及びTgが35℃のスルホポリエステルのペレットを、以下:
PP 75:スルホポリエステル 25(例3)
PP 50:スルホポリエステル 50(例4)
PP 25:スルホポリエステル 75(例5)
の2成分比(重量%)でポリプロピレン(Basell PF 008)ペレットと合した。PPは、MFR(メルトフローレート)が800であった。幅24インチのダイを装着したライン上でメルトブロー操作を行って、取り扱いやすい、軟質で、柔軟であるが、非粘着性のウェブを生成した。このウェブの物理的性質を表IIに示す。表IIIに報告するように、不織布の小片(1”×4”)は容易に崩壊した。しかし、不溶性ポリプロピレン成分のため、繊維はいずれも完全には水分散性でなかった。
【0134】
実施例3
実施例2において製造した不織布の円形試験片(直径4”)を、綿布の2枚のシートの間に接着層として用いた。Hannifinメルトプレスを用いて、200℃において35psigの圧力を30秒間適用することによって、綿の2枚のシートを融着させた。得られたアセンブリは、並外れて強力な結合強度を示した。綿基材は、接着破壊又は結合破壊の前にずだずだになった。同様な結果が、他のセルロース樹脂やPETポリエステル基材によっても得られた。強力な結合は、超音波接着法によっても得られた。
【0135】
比較例4
MFRが1200のPP(Exxon 3356G)を、24”のダイを用いてメルトブローして、粘着せず且つロールから容易に巻出される、柔軟な不織布を生成した。小片(1”×4”)は、RT又は50℃において15分間水中に浸漬した場合に、水に反応を示さなかった(即ち、崩壊も基本重量の減少もなかった)。
【0136】
実施例4
イソフタル酸82モル%、ソジオスルホイソフタル酸18モル%、ジエチレングリコール54モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール46モル%を含む、Tgが55℃のスルホポリエステルの単成分繊維を、実験室短繊維紡糸ライン上で245℃(473°F)の溶融温度で溶融紡糸した。紡糸時デニールは約8d/fであった。巻き取りチューブ上には若干の粘着が発生したが、10フィラメントストランドは、82℃でpHが5〜6の、撹拌していない脱イオン水中に10〜19秒以内に容易に溶解した。
【0137】
実施例5
イソフタル酸82モル%、ソジオスルホイソフタル酸18モル%、ジエチレングリコール54モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール46モル%を含むスルホポリエステル(Tg55℃)とイソフタル酸91モル%、ソジオスルホイソフタル酸9モル%、ジエチレングリコール25モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール75モル%を含むスルホポリエステル(Tg65℃)のブレンド(75:25)から得られた単成分繊維をそれぞれ、実験室短繊維紡糸ライン上で溶融紡糸した。ブレンドは、成分スルホポリエステルのTgの加重平均を取ることによって計算した場合に、Tgが57℃であった。10フィラメントストランドは、巻き取りチューブ上に粘着を示さず、82℃でpHが5〜6の、撹拌していない脱イオン水中に20〜43秒以内に容易に溶解した。
【0138】
実施例6
実施例5に記載したブレンドを、PETと同時紡糸して、二成分海島繊維を生成した。スルホポリエステルの「海」が、PETの「島」80重量%を含む繊維の20重量%である構造が得られた。紡績糸(spun yarn)の伸び率は、紡糸直後には190%であった。紡績糸はボビンから申し分なく巻出され且つ紡糸の1週間後に加工されたので、粘着は発生しなかった。その後の操作において、紡績糸を88℃の軟水浴に通すことによって、「海」が溶解され、微細なPETフィラメントのみが残された。
【0139】
実施例7
データの裏付けのないこの例は、本発明の多成分及びマイクロデニール繊維の、特殊紙の製造への適用可能性を説明する。実施例5に記載したブレンドをPETと同時紡糸して、二成分海島繊維を生成する。繊維は、約35重量%のスルホポリエステル「海」成分と約65重量%のPET「島」を含む。非けん縮繊維を長さ1/8インチに切断する。製紙のシミュレーションにおいて、短く切断したこれらの二成分繊維を精製操作に加える。スルホポリエステル「海」を撹拌水性スラリー中で除去し、それによってマイクロデニールPET繊維を配合物中に放出する。同等の重量において、マイクロデニールPET繊維(「島」)は、粗PET繊維の添加よりも、紙の引張強度の増加に有効である。
【0140】
比較例8
スパンボンドライン上で、ダイプレート中に合計2222個のダイ孔を有するHills,Inc.(Melbourne,FL)製の24”幅の二成分紡糸口金ダイを用いて、シー構造中に108アイランドを有する二成分繊維を製造した。2つの押出機をメルトポンプに接続し、メルトポンプを繊維スピンダイ中の両成分の入口に接続した。第1押出機(A)をEastman F61HC PETポリエステルの流れを計量供給する入口に接続して、アイランド−イン−ザ−シー繊維断面構造のアイランド中にアイランドドメインを形成した。押出ゾーンを、ダイに入るPETを285℃の温度で溶融させるように設定した。第2押出機(B)は、インヘレント粘度が約0.35で且つRheometric Dynamic Analyzer RDAII(Rheometrics Inc.Piscataway,New Jersey)レオメーター中で240℃及び剪断速度1rad/秒で測定された溶融粘度が約15,000ポアズ並びに240℃及び剪断速度100rad/秒で測定された溶融粘度が9,700ポアズである、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN)製のEastman AQ 55Sスルホポリエステルポリマーを加工した。溶融粘度測定の実施前に、サンプルを真空オーブン中で60℃において2日間乾燥させた。粘度試験は、直径25mmの平行板形状を1mmの間隙設定で用いて実施した。動的周波数掃引を、1〜400rad/秒の歪速度範囲及び10%の歪振幅で実施した。次いで、粘度を、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した。以後の例に使用するスルホポリエステル材料の粘度測定においては、この操作に従った。第2押出機を、AQ 55Sポリマーを溶融温度255℃で溶融させ且つ紡糸口金ダイに供給するように設定した。2つのポリマーを、0.6g/孔/分の処理速度で押出することよって二成分押出物に成形にした。二成分押出物中の容積比、PET対AQ 55Sを、60/40及び70/30の比となるように調整した。
【0141】
アスピレーター装置を用いて二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を生成した。アスピレーターチャンバーを通る空気の流れが、得られた繊維を引き下ろした。アスピレーターアセンブリを通って下方に流れる空気の量は、アスピレーターに入る空気の圧力によって制御した。この例において、二成分繊維押出物を溶融延伸するためにアスピレーター中で使用する空気の最大圧力は25psiであった。この値より高いと、二成分押出物に加えられる溶融延伸速度が二成分押出物の固有延性(inherent ductility)よりも大きくなるので、アスピレーターを通る空気流によって、この溶融延伸紡糸プロセスの間に押出物が破壊される。二成分繊維を、95g/m2(gsm)の布重量を有する不織ウェブにレイダウンした。この不織ウェブ中の二成分繊維の光学顕微鏡法による評価は、PETが繊維構造の中心に「アイランド」として存在するが、二成分繊維の外周のPETアイランドがほとんど融合して、望ましくない、PETポリマーのほとんど連続的なリングを繊維の周囲に形成することを示した。顕微鏡法から、不織ウェブ中の二成分繊維の直径が一般に、約2.5デニール/フィラメント(dpf)の平均繊維紡糸時デニール(as-spun denier)に相当する15〜19ミクロンであることがわかった。これは、約2160m/分の溶融紡糸繊維速度に相当する。紡糸時デニールは、溶融押出及び溶融延伸工程によって得られる繊維のデニール(長さ9000mの繊維重量(g))と定義する。二成分繊維の直径のばらつきは、繊維の紡糸延伸(spun-drawing)の不均一性を示した。
【0142】
不織ウェブサンプルを、強制空気オーブン中で120℃において5分間状態調整した。熱処理したウェブは著しい収縮を示し、不織ウェブの面積は、加熱前のウェブの初期面積のわずか約12%まで減少した。理論によって拘束するものではないが、繊維中に使用したAQ 55Sスルホポリエステルの高い分子量及び溶融粘度のために、二成分押出物は、繊維中のPETセグメントの歪み誘起結晶化をもたらすのに必要な程度まで溶融延伸することができなかった。全体的に見て、この特有のインヘレント粘度及び溶融粘度を有するAQ 55Sスルホポリエステルは、二成分押出物を望ましい細デニールまで均一に溶融延伸できなかったので、許容できなかった。
【0143】
実施例8
市販Eastman AQ55Sポリマーと同一化学組成を有するスルホポリエステルポリマーを製造した。しかし、分子量は、約0.25のインヘレント粘度によって特徴付けられる、より低い値まで制御した。このポリマーの溶融粘度は、240℃において剪断速度1rad/秒で測定した場合に、3300ポアズであった。
【0144】
実施例9
16セグメントのセグメント化パイ立体配置を有する二成分押出物を、スパンボンド装置上で幅24インチのダイプレート中に合計2222個のダイ孔を有する、Hills Inc.(Melbourne,FL)製の二成分紡糸口金ダイを用いて製造した。2つの押出機を用いて、2つのポリマーを溶融させ、この紡糸口金ダイに供給した。第1押出機(A)をEastman F61HC PETポリエステルメルトを供給する入口に接続して、セグメントパイ断面構造中のドメイン又はセグメントスライスを形成した。押出ゾーンを、紡糸口金ダイに入るPETを285℃の温度で溶融させるように設定した。第2押出機(B)は、実施例8のスルホポリエステルポリマーを溶融させ、供給した。第2押出機を、スルホポリエステルポリマーを溶融温度255℃で紡糸口金ダイ中に押出するように設定した。使用した紡糸口金ダイ及びスルホポリエステルポリマーの溶融粘度を除いて、この例において使用した操作は比較例8と同様であった。孔当たりの溶融処理量(溶融押出量)は0.6gm/分であった。二成分押出物中の容積比、PET対スルホポリエステルを、70/30に調整した。これは約70/30の重量比に相当する。
【0145】
比較例8に使用したのと同じアスピレーターを用いて、二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を生成した。最初は、アスピレーターへの流入空気を25psiに設定し、繊維は約2.0の紡糸時デニールを有し、二成分繊維は約14〜15ミクロンの均一な直径プロフィールを示した。アスピレーターへの空気を、溶融延伸時に溶融押出物を破壊することのなく使用できる45psiの最大圧力まで増加させた。45psiの空気を用いて、二成分押出物を約1.2の繊維紡糸時デニールまで溶融紡糸した。二成分繊維は、顕微鏡下で見た場合に11〜12ミクロンの直径を示した。溶融延伸プロセス中の速度は、約4500m/分と計算された。理論によって拘束するものではないが、溶融延伸速度がこの速度に近づくと、溶融延伸プロセスにおけるPETの歪み誘起結晶化が起こり始めると考えられる。前述のように、以後の加工において不織ウェブがより寸法安定性となるように、繊維の溶融延伸プロセスの間にPET繊維セグメントに若干の配向結晶性を形成するのが望ましい。
【0146】
45psiアスピレーター空気圧を用いて、二成分繊維を140g/m2(gsm)の重量を有する不織ウェブにレイダウンした。不織ウェブの収縮率を、材料を強制空気オーブン中で120℃において5分間状態調整することによって測定した。この例は、比較例8の繊維及び布に比較して、収縮率の著しい低下を示す。
【0147】
140gsmの布重量を有するこの不織ウェブを、種々の温度の、静止脱イオン水浴中に5分間浸漬した。浸漬した不織ウェブを乾燥させ、種々の温度の脱イオン水中への浸漬による減量%を測定し、表IVに示した。
【0148】
【表5】

【0149】
スルホポリエステルは、約25℃の温度の脱イオン水中に極めて容易に散逸した。不織ウェブ中の二成分繊維からのスルホリエステルの除去は、減量%よって示される。二成分繊維からのスルホポリエステルの広範囲に及ぶ又は完全な除去は、33℃又はそれ以上の温度において観察された。実施例8の本発明のスルホポリエステルを含むこれらの二成分繊維の不織ウェブの製造に水流交絡処理を用いる場合には、スルホポリエステルポリマーは、水温が周囲温度より高い場合には水流交絡処理用の水ジェットを用いることによって広範囲に又は完全に除去されると推測されるであろう。水流交絡処理工程の間にこれらの二成分繊維からスルホポリエステルポリマーがほとんど除去されないことが望ましい場合には、約25℃未満の低い水温を用いなければならない。
【0150】
実施例10
以下の二酸及びジオール組成:二酸組成(テレフタル酸71モル%、イソフタル酸20モル%及び5−(ソジオスルホ)イソフタル酸9モル%)及びジオール組成(エチレングリコール60モル%及びジエチレングリコール40モル%)を用いて、スルホポリエステルポリマーを製造した。スルホポリエステルは、真空下で高温ポリエステル化によって製造した。エステル化条件を制御して、インヘレント粘度が約0.31のスルホポリエステルを生成した。このスルホポリエステルの溶融粘度を測定すると、240℃及び剪断速度1rad/秒において約3000〜4000ポアズの範囲であった。
【0151】
実施例11
実施例10のスルホポリエステルポリマーを、実施例9に記載したのと同一操作に従って、二成分セグメントパイ繊維及び不織ウェブに紡糸した。第1押出機(A)はEastman F61HC PETポリエステルメルトを供給して、セグメントパイ構造中の比較的大きいセグメントスライスを形成した。押出ゾーンは、紡糸口金ダイに入るPETを285℃の温度で溶融させるように設定した。第2押出機(B)は、実施例10のスルホポリエステルポリマーを加工した。このスルホポリエステルポリマーは255℃の溶融温度で紡糸口金ダイに供給した。孔当たりの溶融処理量(押出量)は0.6gm/分であった。二成分押出物中の容積比、PET対スルホポリエステルは70/30に設定した。これは、約70/30の重量比に相当する。二成分押出物の断面は、PETのくさび形ドメインを有し、スルホポリエステルポリマーがこれらのドメインを隔てていた。
【0152】
比較例8において使用したのと同じアスピレーターアセンブリを用いて、二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を生成した。延伸の間に二成分繊維を破壊することのなく使用できる、アスピレーターへの最大空気圧は45psiであった。45psiの空気を用いて、二成分押出物を、約1.2の紡糸時デニールを有する二成分繊維に溶融延伸した。この二成分繊維は、顕微鏡下で見た場合に約11〜12ミクロンの直径を示した。溶融延伸プロセスの間の速度は、約4500m/分と計算された。
【0153】
二成分繊維を、140gsm及び110gsmの重量を有する不織ウェブにレイダウンした。ウェブの収縮率を、材料を強制空気オーブン中で120℃において5分間状態調整することによって、測定した。収縮後の不織ウェブの面積は、ウェブ原面積の約29%であった。
【0154】
溶融延伸繊維及び不織ウェブから採取した繊維の断面の顕微鏡検査は、個々のセグメントがはっきりした輪郭を有し且つ同様なサイズ及び形状を示す、極めて良好なセグメントパイ構造を示した。PETセグメントは、二成分繊維からのスルホポリエステルの除去後にパイ−スライス形状を有する8個の分離したPET一成分繊維を形成するように、互いに完全に分離されていた。
【0155】
布重量が110gsmの不織ウェブを、種々の温度の静止脱イオン水浴に8分間浸漬した。浸漬した不織ウェブを乾燥させ、種々の温度の脱イオン水への浸漬による減量%を測定し、表Vに示した。
【0156】
【表6】

【0157】
スルホポリエステルポリマーは、約46℃より高い温度においては脱イオン水中に非常に容易に散逸し、繊維からのスルホポリエステルポリマーの除去は、減量によって示されるように、51℃より高い温度においては非常に広範囲及び又は完全であった。約30%の減量は、不織ウェブ中の二成分繊維からのスルホポリエステルの完全な除去に相当するものであった。このスルホポリエステルを含む二成分繊維のこの不織ウェブの処理に水流交絡処理を用いる場合には、40℃未満の水温の水流交絡処理用水ジェットではポリマーは広範囲にわたっては除去されないと推測されるであろう。
【0158】
実施例12
140gsm及び110gsmの両方の基本重量を有する実施例11の不織ウェブを、Fleissner GmbH(Egelsbach,Germany)製の水流交絡処理装置を用いて水流交絡処理した。この機械は、3組のジェットが不織ウェブの上面と接触し且つ2組のジェットが不織ウェブの反対の面と接触する5つの総合的水流交絡処理ステーションを有していた。水ジェットは、幅2フィートのジェットストリップで機械加工される直径約100ミクロンの細いオリフィスを1組含んでいた。ジェットへの水圧は60バール(ジェットストリップ#1)、190バール(ジェットストリップ#2及び3)及び230バール(ジェットストリップ(#4及び5)に設定した。水流交絡処理プロセスにおいて、ジェットへの水の温度は約40〜45℃の範囲であることがわかった。水流交絡処理ユニットから出た不織布は強力に結びつけられていた。連続繊維が結ばれ、両方向に伸張した場合に高い引き裂き抵抗を示す水流交絡処理不織ウェブが生成された。
【0159】
次に、水流交絡処理不織布を、堅い長方形フレームを含む幅出機上に、その周囲の1組のピンで固定した。布を、加熱時に収縮しないように、ピンに固定した。布サンプルを含むフレームを130℃の空気強制オーブン中に3分間入れて、布を拘束しながらヒートセットさせた。ヒートセット後、状態調整した布を、正確に測ったサイズのサンプル検体に切断し、検体を、幅出機による拘束を行わずに130℃において状態調整した。この状態調整後の水流交絡処理不織布の寸法を測定したところ、ごくわずかな収縮しか観察されなかった(寸法の減少は<0.5%)。水流交絡処理不織布のヒートセットは、寸法安定性不織布を生成するのに充分であることは明白であった。
【0160】
前述のようにしてヒートセットした後の水流交絡処理不織布を90℃の脱イオン水中で洗浄してスルホポリエステルポリマーを除去し、PET一成分繊維セグメントを水流交絡処理布中に残した。繰り返し洗浄後、乾燥した布は約26%の減量を示した。水流交絡処理前の不織ウェブの洗浄は31.3%の減量を示した。従って、水流交絡処理プロセスは、不織ウェブからスルホポリエステルの一部を除去したが、この量は比較的少なかった。水流交絡処理の間に除去されるスルホポリエステルの量を少なくするためには、水流交絡処理ジェットの水温は40℃未満まで低下させる必要がある。
【0161】
実施例10のスルホポリエステルは、水非分散性繊維がスルホポリエステルポリマーの除去後に同様なサイズ及び形状の個々の繊維を形成する良好なセグメント分布を有するセグメントパイ繊維を生じることがわかった。このスルホポリエステルのレオロジーは、二成分押出物を高い比率で溶融延伸させて、約1.0という低い紡糸時デニールを有する細デニール二成分繊維を生成するのに適当であった。これらの二成分繊維は、スルホポリエステルをそれほど減少させることなく水流交絡処理して不織布を生成できるであろう不織ウェブにレイダウンすることができる。この不織ウェブの水流交絡処理によって製造された不織布は高い強度を示し、約120℃又はそれ以上の温度においてヒートセットすることによって、優れた寸法安定性を有する不織布を生成できた。スルホポリエステルポリマーは、洗浄工程において水流交絡処理不織布から除去された。これによって、より軽い布重量並びにはるかに大きい柔軟性及びしなやかな風合いを有する強力な不織布製品が得られた。この不織布製品中の一成分PET繊維はくさび形であり、約0.1の平均デニールを示した。
【0162】
実施例13
以下の二酸及びジオール組成:二酸組成(テレフタル酸69モル%、イソフタル酸22.5モル%及び5−(ソジオスルホ)イソフタル酸8.5モル%)及びジオール組成(エチレングリコール65モル%及びジエチレングリコール35モル%)を用いて、スルホポリエステルポリマーを製造した。スルホポリエステルは、真空下で高温ポリエステル化によって製造した。エステル化条件を制御して、インヘレント粘度が約0.33のスルホポリエステルを生成した。このスルホポリエステルの溶融粘度を測定すると、240℃において剪断速度1rad/秒で約3000〜4000ポアズの範囲であった。
【0163】
実施例14
実施例13のスルホポリエステルポリマーを、スパンボンドライン上で、16個のアイランドを有する二成分アイランド−イン−ザ−シー繊維に紡糸した。第1押出機(A)はEastman F61HC PETポリエステルメルトを供給し、アイランド−イン−ザ−シー構造中のアイランドを形成した。押出ゾーンを、紡糸口金ダイに入るPETを290℃の温度で溶融させるように設定した。第2押出機(B)は、紡糸口金ダイに中に約260℃の溶融温度で供給された実施例13のスルホポリエステルポリマーを加工した。二成分押出物中の容積比、PET対スルホポリエステルを70/30の比に設定した。これは約70/30の重量比に相当する。紡糸口金を通る溶融処理量(溶融押出量)は0.6g/孔/分であった。二成分押出物の断面はPETの丸形アイランドドメインを有し、スルホポリエステルがこれらのドメインを隔てていた。
【0164】
アスピレーターアセンブリを用いて、二成分押出物を溶融延伸した。溶融延伸の間に二成分繊維を破壊することなく使用できる、アスピレーターへの最大の空気圧は50psiであった。50psiの空気を用いて、二成分押出物を、約1.4の紡糸時デニールを有する二成分繊維に溶融延伸した。この二成分繊維は、顕微鏡下で見た場合に約12ミクロンの直径を示した。延伸プロセスの間の速度は、約3900m/分と計算された。
以下に本発明の態様を記載する。
態様1.(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル;及び
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(ここで前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含んでなる多成分繊維であって、前記繊維が約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;且つ前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む多成分繊維。
態様2.前記多成分繊維が約4デニール/フィラメント未満の紡糸時デニール有する態様1に記載の多成分繊維。
態様3.前記繊維が約2.5デニール/フィラメント未満の紡糸時デニール有する態様1に記載の繊維。
態様4.前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約8000ポアズ未満の溶融粘度を示す態様1に記載の多成分繊維。
態様5.前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約6000ポアズ未満の溶融粘度を示す態様4に記載の多成分繊維。
態様6.前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、4500ポアズ未満の溶融粘度を示す態様4に記載の多成分繊維。
態様7.前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約15モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーを含む態様1に記載の多成分繊維。
態様8.前記の複数のドメインが、セグメント化パイ、海島、シースコア又は並行式断面立体配置で配列されている態様1に記載の多成分繊維。
態様9.前記スルホポリエステルが約4〜約25モル%の前記の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む態様1に記載の多成分繊維。
態様10.前記スルホポリエステルが、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)約5〜約20モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);並びに
(C)1種又はそれ以上のジオールの残基
を含む態様9に記載の多成分繊維。
態様11.前記スルホポリエステルが、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)約5〜約20モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);並びに
(C)1種又はそれ以上のジオールの残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも5モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(D)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する少なくとも1種の分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む態様10に記載の多成分繊維。
態様12.前記ジカルボン酸が脂肪族二酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様10又は11に記載の多成分繊維。
態様13.前記ジカルボン酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、イソフタル酸及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様12に記載の多成分繊維。
態様14.前記スルホモノマーがスルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホン酸又はそれらの組合せの塩である態様1に記載の多成分繊維。
態様15.前記ジオール残基がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオール及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様10又は11に記載の多成分繊維。
態様16.前記分岐モノマーが1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様11に記載の多成分繊維。
態様17.前記繊維が、前記繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む態様1に記載の多成分繊維。
態様18.前記水非分散性ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様1に記載の多成分繊維。
態様19.前記水非分散性ポリマーが、DIN Standard 54900によって測定した場合に、生崩壊性であるか、又はASTM Standard Method,D6340−98によって測定した場合に、生分解性である態様1に記載の多成分繊維。
態様20.前記水非分散性ポリマーが脂肪族−芳香族ポリエステルである態様18に記載の多成分繊維。
態様21.(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル;及び
(B)前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメイン(ここで前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている)
を含んでなり、少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸することができる付形断面を有する多成分押出物。
態様22.前記水分散性スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、且つ前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む態様21に記載の多成分押出物。
態様23.前記スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約8000ポアズ未満の溶融粘度を有する態様22に記載の多成分押出物。
態様24.前記スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約6000ポアズ未満の溶融粘度を有する態様23に記載の多成分押出物。
態様25.前記スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約4500ポアズ未満の溶融粘度を有する態様24に記載の多成分押出物。
態様26.前記スルホポリエステルが、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約4〜約25モル%の前記の少なくとも1種のスルホモノマーを含む態様21に記載の多成分押出物。
態様27.前記スルホポリエステルが、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)約5〜約20モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);並びに
(C)1種又はそれ以上のジオールの残基
を含む態様21に記載の多成分押出物。
態様28.前記スルホポリエステルが、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)約5〜約20モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);並びに
(C)1種又はそれ以上のジオールの残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも5モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(D)総反復単位に基づき、0〜約25モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する1種又はそれ以上の分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む態様26に記載の多成分押出物。
態様29.前記ジカルボン酸が脂肪族二酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様27又は28に記載の多成分押出物。
態様30.前記ジカルボン酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、イソフタル酸及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様27又は28に記載の多成分押出物。
態様31.前記スルホモノマーがスルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホン酸又はそれらの組合せの塩である態様21に記載の多成分押出物。
態様32.前記ジオール残基がエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオール及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様27又は28に記載の多成分押出物。
態様33.前記分岐モノマーが1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸又はそれらの組合せからなる群から選ばれる態様28に記載の多成分押出物。
態様34.前記多成分押出物が、前記多成分押出物の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む態様21に記載の多成分押出物。
態様35.前記水非分散性ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル及びそれらの組合せからなる群から選ばれる態様21に記載の多成分押出物。
態様36.前記水非分散性ポリマーが、DIN Standard 54900によって測定した場合に、生崩壊性であるか、又はASTM Standard Method,D6340−98によって測定した場合に、生分解性である態様21に記載の多成分押出物。
態様37.前記水非分散性ポリマーが脂肪族−芳香族ポリエステルである態様21に記載の多成分押出物。
態様38.前記多成分押出物が少なくとも約3000m/分の速度で溶融延伸することができる態様21に記載の多成分押出物。
態様39.前記多成分押出物が少なくとも約4500m/分の速度で溶融延伸することができる態様21に記載の多成分押出物。
態様40.態様1に記載の多成分繊維を含んでなる繊維製品。
態様41.前記繊維製品が、糸、布、メルトブローンウェブ、スパンボンドウェブ、熱融着ウェブ、水流交絡処理ウェブ、不織布及びそれらの組合せから選ばれる態様40に記載の繊維製品。
態様42.前記製品が1層又はそれ以上の繊維層を含む態様40に記載の繊維製品。
態様43.(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸する(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む)
ことを含んでなる、約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有する、異形断面を有する多成分繊維の製造方法。
態様44.少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);そして
前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成する
ことを含んでなる、異形断面を有する多成分繊維の製造方法。
態様45.前記スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約6000ポアズ未満の溶融粘度を示す態様43又は44に記載の方法。
態様46.前記スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約4500ポアズ未満の溶融粘度を示し且つ二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約20モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む態様43又は44に記載の方法。
態様47.前記スルホポリエステルが、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)約5〜約20モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(C)1種又はそれ以上のジオールの残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(D)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する少なくとも1種の分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む態様43又は44に記載の方法。
態様48.前記異形断面が海島又はセグメント化パイ立体配置である態様43又は44に記載の方法。
態様49.前記多成分繊維が、前記繊維の総重量に基づき、10重量%未満の顔料又は充填剤を含む態様43又は44に記載の方法。
態様50.(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記繊維は約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);そして
(B)前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法。
態様51.(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し;そして
(C)前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法。
態様52.前記スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し且つ二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む態様51に記載の方法。
態様53.前記スルホポリエステルが、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)約5〜約20モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);
(C)1種又はそれ以上のジオールの残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(D)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する少なくとも1種の分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む態様50又は51に記載の方法。
態様54.前記工程(C)が前記多成分繊維を少なくとも約45℃の温度の水と接触させることを含む態様50又は51に記載の方法。
態様55.前記水非分散性ポリマーがポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル及びそれらの組合せから選ばれる態様50又は51に記載の方法。
態様56.前記水非分散性ポリマーが、DIN Standard 54900によって測定した場合に、生崩壊性であるか又はASTM Standard Method,D6340−98によって測定した場合に、生分解性である態様50又は51に記載の方法。
態様57.前記水非分散性ポリマーが脂肪族−芳香族ポリエステルである態様50又は51に記載の方法。
態様58.(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記繊維は約6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);
(B)工程(A)の前記多成分繊維を集めて不織布ウェブを形成し;そして
(C)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法。
態様59.(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分押出物に押出し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記ドメインはドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し;
(C)工程(B)の前記多成分繊維を集めて、不織ウェブを形成し;そして
(D)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法。
態様60.前記延伸が約4000m/分の速度である態様59に記載の方法。
態様61.前記工程(C)が前記多成分繊維を少なくとも約45℃の温度の水と接触させることを含む態様58に記載の方法。
態様62.前記工程(D)が前記多成分繊維を少なくとも約45℃の温度の水と接触させることを含む態様59に記載の方法。
態様63.前記多成分繊維を少なくとも約45℃の温度の水と接触させる工程の前に、前記不織ウェブの前記多成分繊維を水流交絡処理する工程を更に含む態様58又は59に記載の方法。
態様64.前記水流交絡処理工程が前記多成分繊維中に含まれる前記スルホポリエステルの約20重量%未満の減量をもたらす態様63に記載の方法。
態様65.前記水流交絡処理工程が約45℃未満の温度の水を利用する態様63に記載の方法。
態様66.水流交絡処理工程の後に、前記不織ウェブをヒートセットしてヒートセット不織ウェブを形成する工程を更に含む態様63に記載の方法。
態様67.前記ヒートセット工程が少なくとも約100℃の温度に前記不織ウェブを加熱することを含む態様66に記載の方法。
態様68.前記ヒートセット不織ウェブが、それが前記ヒートセット工程の間に加熱された温度まで再加熱された場合に、その元の表面積の10%未満の表面収縮率を示す態様66に記載の方法。
態様69.前記スルホポリエステルが、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、約6000ポアズ未満の溶融粘度を示し且つ二酸又はジオール残基の総モルに基づき、約20モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む態様58又は59に記載の方法。
態様70.前記スルホポリエステルが、
(A)1種又はそれ以上のジカルボン酸の残基;
(B)約5〜約12モル%の、芳香環又は脂肪族環に結合した1個又はそれ以上のスルホネート基及び2個の官能基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである);並びに
(C)1種又はそれ以上のジオールの残基(総ジオール残基に基づき、少なくとも25モル%は構造:
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)
を有するポリ(エチレングリコール)である);並びに
(D)総反復単位に基づき、0〜約20モル%の、3個又はそれ以上の官能基を有する分岐モノマーの残基(ここで前記官能基はヒドロキシル、カルボキシル又はそれらの組合せである)
を含む態様58又は59に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);そして
前記多成分押出物を少なくとも2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成する
ことを含んでなる、異形断面を有する多成分繊維の製造方法。
【請求項2】
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記繊維は6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);そして
(B)前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法。
【請求項3】
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを押出して、多成分押出物を生成し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し;そして
(C)前記多成分繊維を水と接触させて前記水分散性スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維を形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維の製造方法。
【請求項4】
前記工程(C)が前記多成分繊維を少なくとも45℃の温度の水と接触させることを含む請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分繊維に紡糸し(ここで前記多成分繊維は、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記複数のドメインはドメイン間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されており;前記繊維は6デニール/フィラメント未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃において1rad/秒の歪速度で測定した場合に、12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し;前記スルホポリエステルは、二酸又はジオール残基の総モルに基づき、25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む);
(B)工程(A)の前記多成分繊維を集めて不織布ウェブを形成し;そして
(C)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法。
【請求項6】
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル及び前記水分散性スルホポリエステルと非混和性の1種又はそれ以上の水非分散性ポリマーを多成分押出物に押出し(ここで前記多成分押出物は前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記ドメインはドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に隔離されている);
(B)前記多成分押出物を少なくとも2000m/分の速度で溶融延伸して、多成分繊維を形成し;
(C)工程(B)の前記多成分繊維を集めて、不織ウェブを形成し;そして
(D)前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することによって、マイクロデニール繊維ウェブを形成する
ことを含んでなる、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法。
【請求項7】
前記延伸が4000m/分の速度である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(C)が前記多成分繊維を少なくとも45℃の温度の水と接触させることを含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(D)が前記多成分繊維を少なくとも45℃の温度の水と接触させることを含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記多成分繊維を少なくとも45℃の温度の水と接触させる工程の前に、前記不織ウェブの前記多成分繊維を水流交絡処理する工程を更に含む請求項5又は6に記載の方法。
【請求項11】
前記水流交絡処理工程が前記多成分繊維中に含まれる前記スルホポリエステルの20重量%未満の減量をもたらす請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水流交絡処理工程が45℃未満の温度の水を利用する請求項10に記載の方法。
【請求項13】
水流交絡処理工程の後に、前記不織ウェブをヒートセットしてヒートセット不織ウェブを形成する工程を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒートセット工程が少なくとも100℃の温度に前記不織ウェブを加熱することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒートセット不織ウェブが、それが前記ヒートセット工程の間に加熱された温度まで再加熱された場合に、その元の表面積の10%未満の表面収縮率を示す請求項13に記載の方法。

【公開番号】特開2012−57291(P2012−57291A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235388(P2011−235388)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2008−552321(P2008−552321)の分割
【原出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】