説明

スルホポリエステルを含む多成分繊維から製造される不織布

不織布を製造する方法であって:(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと少なくとも1種の水非分散性ポリマーとを含む多成分繊維であって、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインが該ドメイン間に介在する該水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成すること;(B)該水分散性スルホポリエステルの部分を除去するのに十分な温度および圧力で該不織ウエブを水と接触させることによってマイクロ繊維ウエブを形成すること;ならびに(C)該マイクロ繊維ウエブをハイドロエンタングルすることにより該不織布を生成すること;を含む方法を提供する。ステップ(B)および(C)を組合せた方法も提供する。該不織布を用いた繊維状物品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルおよび少なくとも1種の水非分散性ポリマーを含む多成分繊維からの不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
従来のテキスタイル布帛は、織りまたは編みにより形成されている。不織布は、織布および編布と、共にポリマー系材料で構成された平面で本質的に可撓性の多孔質構造である点で類似する。二者間の主な差異は、布帛を形成するプロセスである。織布は、2つ以上の組のヤーンを互いに正しい角度で指定の順序で織合せることにより形成する。不織布は、予定数の繊維またはフィラメントを2次元配列に配置し、これらを共に固定することによって形成する。不織布は、繊維、フィラメントまたはヤーンの複数の層またはネットワークを機械的、化学的または熱的に連結させることによって集合させることができる。典型的には、不織布を製造するための方法は、4つの一般的な分類:テキスタイル、紙、押出物、およびハイブリッド(これらの技術の組合せを用いることを意味する)にグループ分けすることができる。これらの布帛は技術的に高度化設計された構造であり、該構造を形成して織布と類似させ、そして織布の特性を超えることができる。
【0003】
押出法は、スパンボンド、メルトブロー品、および多孔質フィルムの不織布を製造するために用いられている。不織布のこれらの種類は、ポリマーレイド不織布とよぶこともある。スパンボンドおよびメルトブロー品のプロセスは不織布の製造において進歩である。不織布を、繊維を形成するために使用する材料自体から直接形成することにより繊維製造ステップがなくなるからである。スパンボンド法は、フィラメントを押出し、これらをバンドルまたはグループとして配向させ、これらを搬送スクリーン上に敷き、そしてこれらを熱融合、機械的エンタングル、化学的接着またはこれらの方法の組合せによって連結することによって、ポリマーを直接布帛に変換する。メルトブロー法においては、ポリマーを加熱して液体状態とし、そしてこれが押出しオリフィスを通過するに従って、これを音速気とともに約250〜500℃で射出する。高速移動気流が溶融ポリマーをストレッチ(延伸)し、これを固化させて微細繊維を生成する。次いで該繊維を気流からエンタングルウエブとして分離して加熱ロール間で圧縮する。
【0004】
不織布は、テキスタイル用途,例えば衣服、カーテン、張り地およびユニフォーム等において利用されている。不織布は、パーソナルケア製品,例えば、これらに限定するものではないが、ワイプ、女性用衛生製品、ベビー用おむつ、大人用失禁用ブリーフ、ならびに病院用/外科用および他の医療用消耗品において利用することもできる。他の用途としては、これらに限定するものではないが、保護布および保護層、ジオテキスタイル、工業用ワイプおよびフィルター媒体が挙げられる。
【0005】
従って、不織布およびそれから製造される繊維状物品であって、より効率的および/または低コストであるものを製造するための新たな方法に対する要求がある。本発明は、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルおよび少なくとも1種の水非分散性ポリマーを含む多成分繊維から不織布を製造する新規な方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
本発明の一態様において、不織布の製造方法を提供する。該方法は:(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと少なくとも1種の水非分散性ポリマーとを含む多成分繊維であって、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインが該ドメイン間に介在する該水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成すること;(B)該水分散性スルホポリエステルの部分を除去するのに十分な温度および圧力で該不織ウエブを水と接触させることによってマイクロ繊維ウエブを形成すること;ならびに(C)該マイクロ繊維ウエブをハイドロエンタングル(hydroentangle)することにより該不織布を生成すること;を含む。
【0007】
本発明の別の態様において、不織布の別の製造方法を提供する。該方法は:(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと少なくとも1種の水非分散性ポリマーとを含む多成分繊維であって、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインが該ドメイン間に介在する該水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成すること;ならびに(B)該水分散性スルホポリエステルの部分を除去するのに十分な温度および圧力で該不織ウエブを水と接触させることによってマイクロ繊維を形成し、同時に該マイクロ繊維をハイドロエンタングルして該不織布を生成すること;を含む。
【0008】
従って、我々の発明は、不織布を製造するための新規で安価な方法を提供する。不織布は、平坦な布帛または3次元形状であることができ、そして種々の繊維状物品,例えば先に議論したものの内部に組込むことができる。
図面の簡単な説明
図1は、スパンボンド法を説明する。
図2は、例の互いの関係を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本発明は、本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明およびそれに含まれる例ならびに図面およびこれらの前および後の説明の参照によってより容易に理解されよう。
【0010】
本発明の化合物、組成物、物品、装置および/または方法を開示および説明する前に、本発明は具体的な合成方法、具体的なプロセス、または特定の装置に限定されず、それ自体が無論変化できることを理解すべきである。本明細書で用いる専門用語は、特定の態様を説明するのみの趣旨であって限定を意図しないことも理解すべきである。
【0011】
本明細書および後の特許請求の範囲において、以下の意味を有することが定義されるものとする多くの用語に言及する。
【0012】
本明細書および特許請求の範囲において用いる単数形”a”,”an”および”the”は、他であることの明確な記載がない限り複数の指示対象を包含する。よって、例えば、”ポリマー(polymer)”の言及は1種以上のポリマーを包含する。
【0013】
範囲は本明細書で「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、と表現できる。このような範囲が表現される場合、別の態様は、ある特定の値から、および/または、他の特定の値まで、を包含する。同様に、値が、先行詞「約」を用いることにより近似で表現される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点は、他の端点と関係して、および他の端点と独立で、の両者の意味を持つことが更に理解されよう。更に、本開示および特許請求の範囲において記載される範囲は、1つまたは複数の端点のみでなく全範囲を具体的に包含することを意図する。例えば、0〜10と記載される範囲は、0から10の間の全ての整数,例えば1,2,3,4等、0から10の間の全ての分数、例えば1.5,2.3,4.57,6.1113等、および端点0および10を開示することを意図する。また、化学置換基に関連する範囲,例えば「C1−C5炭化水素」等は、C1およびC5の炭化水素、更にC2、C3およびC4の炭化水素を具体的に包含および開示することを意図する。
【0014】
「任意」または「任意に」は、後続で説明する事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、そして該説明は、該事象または該状況が生じる場合およびそれが生じない場合を包含する。例えば、語句「任意に加熱」は、物質を加熱しても加熱しなくてもよいことを意味し、そしてこのような語句は、加熱および非加熱のプロセスの両者を包含する。
【0015】
特記がない限り、含有成分、特性,例えば分子量、反応条件、ならびに明細書および特許請求の範囲において記載するものの量を表す全ての数は、全ての場合において用語「約」で修飾されると理解すべきである。従って、特記がない限り、以下の説明および特許請求の範囲において記載される数値パラメータは、本発明によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化できる近似である。最低限でも、各数値パラメータは、少なくとも、記録される有効数字の数を考慮して、および通常の四捨五入法を適用することによって解釈すべきである。本発明の広範な範囲を記載する数値範囲およびパラメータが近似であることに関わらず、具体的な例において記載される数値は可能な限り正確に記録される。しかし、任意の数値は、本来的に、これらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差による所定の誤差を不可避的に含んでいる。
【0016】
本明細書で用いる用語「不織布」または「不織ウエブ」は、編布においてのように識別できる様式ではなく挿し込まれる個々の繊維またはスレッドの構造を意味する。不織布の基本質量(坪量)は、通常、平方ヤード当たりの物質のオンス(osy)または平方メートル当たりのグラム(gsm)で表される。
【0017】
本明細書で用いる用語「繊維」は、ポリマーに形成オリフィス(例えばダイ)を通過させることによって形成される、伸長された押出物を意味する。特記がない限り、用語「繊維」は、物質の明確な長さを有する不連続ストランドおよび連続ストランド,例えばフィラメントを包含する。本発明の不織布は、ステープル多成分繊維から形成することができる。このようなステープル繊維を毛羽立たせて結合させ、不織布を形成できる。しかし、望ましくは、本発明の不織布は、押出され、延伸(ドロー)され、そして移動性形成表面上に敷かれる連続多成分フィラメントで形成される。
【0018】
本明細書において用いる用語「マイクロ繊維」は、平均径が約12ミクロン以下,例えば平均径が約3ミクロン〜約8ミクロンの小径繊維を意味する。繊維はデニール単位でも一般的に議論される。より低いデニールは、より細い繊維を示し、そしてより高いデニールは、より厚いかまたはより重い繊維を示す。例えば、15ミクロンポリプロピレン繊維は、約1.42のデニール(152 x 0.89 x 0.00707=1.415)を有する。本発明の不織布を製造するために用いるマイクロ繊維は、典型的に、d/f値1以下、0.5以下、または0.1以下を有する。
【0019】
本発明で用いる用語「多成分繊維」または「コンジュゲート繊維」は、少なくとも2種のポリマー成分から形成された繊維を意味する。このような繊維は、通常別個の押出機から押出すが一緒に紡糸して1つの繊維を形成する。それぞれの成分のポリマーは通常互いに異なるが、多成分繊維が同様または同一のポリマー材料の別個の成分を含むことができる。個々の成分は、典型的には、多成分繊維の断面に亘って、実質的に一定に位置決めされた区別できるセグメントまたはゾーンに配列し、そして実質的に多成分繊維の全長に沿って伸長させる。このような多成分繊維の構造は、例えば、並列配列、パイ配列または他の配列であることができる。多成分繊維およびその製造方法は、米国特許第5,108,820号(Kanekoら);米国特許第4,795,668号(Kruegerら);米国特許第5,382,400号(Pikeら);米国特許第5,336,552号(Strackら);米国出願第08/550,042号(1996年10月30日出願)(Cook);および米国出願第11/344,320号(2006年1月31日出願)(Guptaら)において教示されている。繊維およびそれを含む個々の成分は、種々の不規則な形,例えば米国特許第5,277,976号(Hogleら);米国特許第5,162,074号および第5,466,410号(Hills);ならびに米国特許第5,069,970号および第5,057,368号(Largmanら)に記載されるものを有することもできる。前記の特許および出願の全内容は、これらが本明細書の記載と矛盾しない限りにおいて参照により本明細書に組入れる。
【0020】
本明細書で用いる用語「ポリマー」は、一般的に、これらに限定するものではないが、ホモポリマー、コポリマー,例えばブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマー、ターポリマー等、ならびにこれらのブレンド物および修飾物を包含する。更に、他に具体的な限定がない限り、用語「ポリマー」は、分子の全ての可能な幾何学形態を包含するものとする。これらの形態としては、これらに限定するものではないが、イソタクチック、シンジオタクチックおよびランダム対称が挙げられる。
【0021】
多成分繊維の1成分としての水分散性スルホポリエステルの言及において本明細書で用いる用語「水分散性(water-dispersible)」は、用語「水消失性(water-dissipatable)」、「水崩壊性(water-disintegratable)」「水に溶ける(water- dissolvable)」「水消散性(water-dispellable)」「水溶解性(water soluble)」「水除去性(water-removable)」「水溶性(hydro-soluble)」および「水分散性(hydrodispersible")」と同義であることを意図し、そしてスルホポリエステル成分が十分に多成分繊維から除去され、そして水の作用によって分散または溶解して、その中に含まれる水非分散性ポリマー繊維の放出および分離を可能にすることを意味することを意図する。
【0022】
用語「分散した」「分散性」または「消失する」または「消失性」は、十分量の脱イオン水(例えば、質量で100:1 水:繊維)を用いて繊維の緩いサスペンションまたはスラリーを温度約60℃で、5日以内の時間で形成し、スルホポリエステル成分が溶解、崩壊または多成分繊維から分離し、複数のマイクロ繊維を水非分散性ポリマーセグメントから残すことを意味する。本発明の文脈において、これらの用語の全ては、水または水の混合物および本明細書に記載する水分散性スルホポリエステル上の水混和性共溶媒の活性を意味する。このような水混和性共溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、エステル等が挙げられる。この専門用語は、水分散性スルホポリエステルが溶解して真溶液を形成する条件、更に水分散性スルホポリエステルが水性媒体中に分散する条件を包含することが意図される。単一スルホポリエステルサンプルが水性媒体中に入れられる場合、しばしば、スルホポリエステル組成物の統計的性質により可溶性画分および分散画分を有する場合がある。
【0023】
多成分繊維の成形断面の説明のために用いる用語「セグメント」または「ドメイン」または「ゾーン」は、水非分散性ポリマーを含む断面内の領域であって、これらのドメインまたはセグメントが、セグメントまたはドメインの間に介在する水分散性スルホポリエステルによって実質的に互いに分離している領域を意味する。本明細書で用いる用語「実質的に分離している」は、スルホポリエステルの除去時にセグメントドメインが個々の繊維を形成可能になるようにセグメントまたはドメインが互いに離れていることを意味することを意図する。セグメントまたはドメインまたはゾーンは、同様のサイズおよび形状または異なるサイズおよび形状であることができる。繰り返すが、セグメントまたはドメインまたはゾーンは、任意の形態で配列できる。これらのセグメントまたはドメインまたはゾーンは、多成分の押出物または繊維の長さに沿って「実質的に連続」である。用語「実質的に連続」は、多成分繊維の長さ少なくとも10cmで連続であることを意味する。
【0024】
本発明は、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルおよび少なくとも1種の水非分散性ポリマーを含む多成分繊維からの不織布の製造方法を提供する。
【0025】
一態様において:(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと少なくとも1種の水非分散性ポリマーとを含む多成分繊維であって、該水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインが該ドメイン間に介在する該水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成すること;(B)該水分散性スルホポリエステルの部分を除去するのに十分な温度および圧力で該不織ウエブを水と接触させることによってマイクロ繊維ウエブを形成すること;ならびに(c)該マイクロ繊維ウエブをハイドロエンタングルすることにより該不織布を生成すること;を含む方法を提供する。
【0026】
我々の発明の多成分繊維は、単一スルホポリエステルまたはスルホポリエステルブレンド物と、該スルホポリエステルとは非混和性の水非分散性ポリマーとの溶融紡糸によって製造できる。たとえば、米国特許第5,916,678号において、多成分繊維は、スルホポリエステルと1種以上の水非分散性ポリマー(これはスルホポリエステルと非混和性である)とを、成形または加工された横断幾何学形状,例えば「海中島」構造、鞘芯構造、並列(side-by-side)構造、またはセグメント化パイ構造等を有する紡糸口金経由で別個に押出すことによって製造できる。水分散性スルホポリエステルは、後に、界面層またはパイセグメントを溶解させ、そして1種または複数種の水非分散性ポリマーのより小さいフィラメントまたはマイクロ繊維を残すことによって除去する。水非分散性ポリマーのこれらの繊維は、水分散性スルホポリエステルを取出す前の多成分繊維よりも大幅に小さい繊維サイズを有する。
【0027】
一態様において、多成分繊維は、スルホポリエステルおよび水非分散性ポリマーをポリマー分配系(ここでポリマーをセグメント化紡糸口金板内に導入する)に供給することによって製造する。ポリマーは、繊維紡糸口金への別個の通路に従い、そして紡糸口金穴(これは2つの同心円穴によって鞘芯型繊維を与えるか、または径に沿って複数部分に分割された円形紡糸口金穴によって並列型の繊維を与えるかのいずれかを含む)で組合される。代替として、非混和性の水分散性スルホポリエステルと水非分散性ポリマーとを、複数の放射状チャンネルを有する紡糸口金内に別個に導入して、セグメント化パイ断面を有する多成分繊維を生成することができる。典型的には、スルホポリエステルは、鞘芯構造の「鞘」成分を形成することになる。複数のセグメントを有する繊維断面において、水非分散性セグメントは、典型的には、スルホポリエステルによって互いに実質的に分離している。
【0028】
代替として、多成分繊維は、スルホポリエステルと水非分散性ポリマーとを別個の押出機内で溶融させ、そしてポリマー流を、小薄チューブまたはセグメント形状の複数の分配流路で1つの紡糸口金内に導いて、海中島成形断面を有する多成分繊維を作製することにより形成できる。このような紡糸口金の例は、米国特許第5,366,804号明細書(本明細書の記載と矛盾しない限りにおいて参照により本明細書に組み入れる)に記載されている。本発明において、典型的には、スルホポリエステルは「海」成分を形成し、そして水非分散性ポリマーは「島」成分を形成することになる。
【0029】
本開示で記載するように、多成分繊維の成形断面は、例えば、鞘芯、海中島、セグメント化パイ、中空セグメント化パイ、偏心セグメント化パイ等の形状であることができる。
【0030】
本発明の多成分繊維は、ジカルボン酸モノマー残基、スルホモノマー残基、ジオールモノマー残基、および繰り返し単位を含む、ポリエステル、またはより具体的にはスルホポリエステルから製造される。スルホモノマーは、ジカルボン酸、ジオールまたはヒドロキシカルボン酸であることができる。よって、本明細書で用いる用語「モノマー残基」は、ジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸の残基を意味する。本明細書で用いる「繰り返し単位」は、カルボニルオキシ基を介して結合した2つのモノマー残基を有する有機構造を意味する。本発明のスルホポリエステルは、実質的に等モル比率の酸残基(100モル%)およびジオール残基(100モル%)(これらは、繰り返し単位の総モルが100モル%となるように実質的に等しい比率で反応する)を含む。従って、本開示で与えられるモルパーセントは、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル、または繰り返し単位の総モルを基準とすることができる。例えば、総繰り返し単位基準で30モル%のスルホモノマーを含有するスルホポリエステル(これは、ジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸であることができる)は、スルホポリエステルが、100モル%の繰り返し単位全体のうち、30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。よって、全100モルの繰り返し単位のうち30モルのスルホモノマー残基が存在する。同様に、総酸残基基準で30モル%のジカルボン酸スルホモノマーを含有するスルホポリエステルは、スルホポリエステルが、100モル%の酸残基全体のうち30モル%のスルホモノマーを含有することを意味する。よって、この後者の場合では、全100モルの酸残基のうち30モルのスルホモノマー残基が存在する。
【0031】
本明細書で記載するスルホポリエステルのインヘレント粘度(以後「Ih.V.」と略す)は、フェノール/テトラクロロエタン溶媒の60/40質量部溶液中で25℃にて、溶媒100mL中のスルホポリエステル約0.5gの濃度で測定したときに、少なくとも約0.1dL/gである。スルホポリエステルのインヘレント粘度は、約0.2〜約0.3dL/gの範囲であることもできる。インヘレント粘度の別の範囲は、約0.3dL/g超である。本明細書で用いる用語「ポリエステル」は、「ホモポリエステル」および「コポリエステル」の両者を網羅し、そして二官能カルボン酸と二官能ヒドロキシル化合物との重縮合によって製造される合成ポリマーを意味する。本明細書で用いる用語「スルホポリエステル」は、スルホモノマーを含む任意のポリエステルを意味する。
【0032】
典型的には、二官能カルボン酸はジカルボン酸であり、そして二官能ヒドロキシル化合物は二価アルコール,例えばグリコールおよびジオール等である。代替として、二官能カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸,例えばp−ヒドロキシ安息香酸等であることができ、そして、二官能ヒドロキシ化合物は、芳香核を有する2ヒドロキシ置換物,例えばハイドロキノン等であることができる。本明細書で用いる用語「残基」は、対応するモノマーを含む重縮合反応を介してポリマーに組込まれる任意の有機構造を意味する。よって、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマーまたはその関連酸のハライド、エステル、塩、無水物またはこれらの混合物に由来することができる。従って、本明細書で用いる用語ジカルボン酸は、ジカルボン酸およびジカルボン酸の任意の誘導体,例えばその関連酸のハライド、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物またはこれらの混合物の、ジオールとの重縮合プロセスにおいて高分子量ポリエステルを形成するのに有用であるものを含むことを意図する。
【0033】
本発明のスルホポリエステルは1種以上のジカルボン酸残基を含む。スルホモノマーの種類および濃度に左右されるが、ジカルボン酸残基は、酸残基の約60〜約100モル%含むことができる。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は、約60モル%〜約95モル%、および約70モル%〜約95モル%である。使用できるジカルボン酸の例としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、またはこれらの酸の2種以上の混合物が挙げられる。よって、好適なジカルボン酸としては、これらに限定するものではないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、オキシ二酢酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、およびイソフタル酸が挙げられる。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、またはジエステルを用いる場合には、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、およびジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートである。ジカルボン酸メチルエステルを使用できるが、より高配列のアルキルエステル,例えばエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等を含むことも許容される。加えて、芳香族エステル、特にフェニルも採用できる。
【0034】
スルホポリエステルは、総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基および芳香環または脂環式環に付いた1つ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含み、ここで該官能基は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである。スルホモノマー残基の濃度範囲の追加的な例は、総繰り返し単位基準で約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、および約8〜約25モル%である。スルホモノマーは、スルホネート基を含むジカルボン酸またはそのエステル、スルホネート基を含むジオール、またはスルホネート基を含むヒドロキシ酸であることができる。用語「スルホネート」は、構造「−SO3M」(式中、Mはスルホネート塩のカチオンである)を有するスルホン酸の塩を意味する。スルホネート塩のカチオンは、金属イオン,例えばLi+、Na+、K+、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等であることができる。代替として、スルホネート塩のカチオンは、非金属のもの,例えば窒素塩基(例えば米国特許第4,304,901号明細書に記載されるもの)であることができる。窒素塩基カチオンは、窒素含有塩基(これは脂肪族、脂環式、または芳香族の化合物であることができる)に由来する。このような窒素含有塩基の例としては、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン、およびピペリジンが挙げられる。窒素塩基スルホネート塩を含むモノマーは、典型的には、溶融物中でポリマーを形成するのに必要な条件で熱的に安定でないため、窒素塩基スルホネート塩の基を含むスルホポリエステルを製造するための本発明の方法は、必要量のスルホネート基をそのアルカリ金属塩の形で含むポリマーを水中で分散、消失または溶解させ、次いで窒素塩基カチオンをアルカリ金属カチオンに交換するのがよい。
【0035】
一価アルカリ金属イオンをスルホネート塩のカチオンとして用いる場合、得られるスルホポリエステルは、ポリマー中のスルホモノマーの量、水の温度、スルホポリエステルの表面積/厚み等に左右される分散速度で、水中において完全に分散性である。二価金属イオンを用いる場合、得られるスルホポリエステルは、冷水によっては容易に分散しないが、熱水によってより容易に分散する。単一ポリマー組成物中で1種より多い対イオンを用いることが可能であり、そして得られる工業物品の水応答性を調整または手直しする手段を与えることができる。スルホモノマー残基の例としては、スルホネート塩の基が芳香族酸核,例えば、ベンゼン;ナフタレン;ジフェニル;オキシジフェニル;スルホニルジフェニル;およびメチレンジフェニル等、または脂環式環,例えばシクロヘキシル;シクロペンチル;シクロブチル;シクロヘプチル;およびシクロオクチル等に付いているモノマー残基が挙げられる。本発明において使用できるスルホモノマー残基の他の例は、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、またはこれらの組合せの金属スルホネート塩である。使用できるスルホモノマーの他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸およびそのエステルである。スルホモノマー残基が5−ソジオスルホイソフタル酸由来である場合、典型的なスルホモノマー濃度範囲は、酸残基の総モル基準で約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、および約8〜25モル%である。
【0036】
スルホポリエステルの製造において用いるスルホモノマーは、公知の化合物であり、そして当該分野で周知の方法を用いて製造できる。例えば、スルホモノマー(その中でスルホネート基が芳香環に付いている)は、芳香族化合物を発煙硫酸(oleum)でスルホン化して対応スルホン酸を得て、続いて金属酸化物または塩基,例えば酢酸ナトリウムと反応させてスルホネート塩を得ることによって得ることができる。種々のスルホモノマーを得るための手順は、例えば米国特許第3,779,993号;第3,018,272号;および第3,528,947号に記載されている。
【0037】
例えばナトリウムスルホネート塩およびイオン交換法を用いてナトリウムを異なるイオン,例えば亜鉛に置換してポリエステルを得ることも可能である(ポリマーが分散形態にある場合)。この種のイオン交換手順は、一般的に、二価の塩でポリマーを得るよりも優れている(ナトリウム塩が通常ポリマー反応物質溶融相中でより溶解性である限り)。
【0038】
スルホポリエステルは、脂肪族、脂環式およびアラルキルのグリコールを含んでもよい1種以上のジオール残基を含む。脂環式ジオール,例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノールは、これらの純粋なシスまたはトランス異性体として、またはシスおよびトランス異性体の混合物として存在できる。本明細書で用いる用語「ジオール」は、用語「グリコール」と同義であり、そして任意の二価アルコールを意味する。ジオールの例としては、これらに限定するものではないが、エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;ポリエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2−エチルへキサン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;p−キシリレンジオールまたはこれらのグリコールの1種以上の組合せが挙げられる。
【0039】
ジオール残基は、総ジオール残基基準で約25モル%〜約100モル%の、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)の残基を含むことができる。より低分子量のポリエチレングリコール,例えばnが2〜6のものの限定しない例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールである。これらのより低分子量のグリコールのうち、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールは好ましい。より高分子量のポリエチレングリコール(本明細書で「PEG」と略す)(式中、nが7〜約500のもの)としては、市販で入手可能な製品の、称号CARBOWAX(登録商標)で公知のもの(Dow Chemical Company(元Union Carbide)の製品)が挙げられる。典型的には、PEGは、他のジオール,例えば、ジエチレングリコールまたはエチレングリコール等との組合せで用いる。nの値(その範囲は6超から500である)に基づき、分子量は300超から約22,000g/molの範囲であることができる。分子量およびモル%は互いに反比例する;具体的には、分子量が増大するに従って、モル%は、規定程度の親水性を実現するために低くなる。例えば、この概念の例は、分子量1000のPEGが総ジオールの10モル%を構成し、一方分子量10,000のPEGが総ジオールの1モル%未満のレベルで典型的に組込まれることを考慮することである。
【0040】
所定の二量体、三量体および四量体のジオールは、プロセス条件を変えることによって制御される場合がある副反応に起因して、in situで形成される場合がある。例えば、変動量のジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは、酸性条件下で重縮合反応が起こる際に容易に生じる酸触媒脱水反応によって、エチレングリコールから形成される場合がある。緩衝溶液(当業者に周知のもの)の存在を反応混合物中に加えてこれらの副反応を抑制できる。追加的な組成の自由も可能である。しかし、緩衝溶液を省略する場合、二量化、三量化および四量化の反応の進行がもたらされる。
【0041】
本発明のスルホポリエステルは、総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基(ここで、官能基は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである)を有する分岐用モノマーの残基を含むことができる。分岐用モノマーの限定しない例は、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸またはこれらの組合せである。分岐用モノマー濃度範囲の更なる例は、0〜約20モル%、および0〜約10モル%である。分岐用モノマーの存在は、多くの考えられる利点を本発明のスルホポリエステルにもたらす場合があり、これらに限定するものではないが、レオロジー、溶解性、および引張特性を調整する能力が挙げられる。例えば、一定分子量では、分岐スルホポリエステルは、直鎖の類似物と比較して、末端基(重合後架橋反応を促進する場合がある)のより大きい濃度も有する。しかし、分岐用剤が高濃度であると、スルホポリエステルはゲル化する傾向を有する場合がある。
【0042】
本発明の多成分繊維用に使用するスルホポリエステルのガラス転移温度(本明細書において「Tg」と略す)は、乾燥ポリマーで標準技術,例えば示差走査熱量計(「DSC」)(当業者に周知)を用いて測定したときに、少なくとも25℃である。本発明のスルホポリエステルのTg測定は、「乾燥ポリマー」,すなわち、付随または吸収された水が、ポリマーを温度約200℃まで加熱してサンプルを室温まで戻すことによって追い出されたポリマーサンプルを用いて行なう。典型的には、DSC装置内で、1回目の熱スキャン(ここでサンプルが水蒸発温度を超える温度まで加熱される)を行ない、ポリマー中に吸収された水の蒸発が完了するまで(大きくブロードな吸熱によって示される)サンプルをその温度で保持し、サンプルを室温まで冷却することによってスルホポリエステルを乾燥させ、そして次いで2回目の熱スキャンを行なってTg測定を得る。スルホポリエステルによって示されるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、および少なくとも90℃である。他のガラス転移温度が可能であるが、我々の発明における乾燥スルホポリエステルの典型的なガラス転移温度は、約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃および約90℃である。
【0043】
しかし、別の態様において、本発明のスルホポリエステルは、単一ポリエステルであることができ、または、得られる多成分繊維の特性を変えるために1種以上の補助的なポリマーとブレンドすることができる。補助的なポリマーは、用途に応じて水分散性であってもそうでなくてもよく、そして、スルホポリエステルと混和性または非混和性であることができる。補助的なポリマーが水非分散性である場合、スルホポリエステルとのブレンド物は非混和性であることが好ましい。本明細書で用いる用語「混和性」は、ブレンド物が単一の均一な非晶質相(単一組成−従属的Tgによって示される)を有することを意味することを意図する。例えば、第2のポリマーと混和性の第1のポリマーを用いて第2のポリマーを「可塑化」する(例えば、米国特許第6,211,309号に例示されるように)ことができる。これに対し、本明細書で用いる「非混和性」は、少なくとも2つのランダム混合された相を示し、そして1つより多いTgを示すブレンド物を意味する。幾つかのポリマーは、スルホポリエステルと非混和性であることができ、そして更に混和性であることができる。混和性および非混和性のポリマーブレンド物およびこれらの特性のための種々の分析技術の更に一般的な説明は、Polymer Blends Volumes 1 and 2,D.R.PaulおよびCB.Bucknall編集,2000,John Wiley&Sons,Incに見出すことができる。
【0044】
スルホポリエステルとブレンドできる水分散性ポリマーの限定しない例は、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、イソプロピルセルロース、メチルエーテルスターチ、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリエチルオキサゾリン、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリビニルメチルオキサゾリドン、水分散性スルホポリエステル、ポリビニルメチルオキサゾリジノン、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)、およびエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコポリマーである。スルホポリエステルとブレンドできる水非分散性のポリマーの例としては、これらに限定するものではないが、ポリオレフィン,例えばポリエチレンおよびポリプロピレンのホモ−およびコポリマー;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ブチレンテレフタレート);およびポリアミド,例えばナイロン−6;ポリラクチド;カプロラクトン;Eastar Bio(登録商標)(ポリ(テトラメチレンアジペート−コ−テレフタレート),Eastman Chemical Companyの製品);ポリカーボネート;ポリウレタン;およびポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0045】
我々の発明に従い、1種より多いスルホポリエステルのブレンド物を用いて、得られる不織布またはウエブの最終用途特性を調整できる。1種以上のスルホポリエステルのブレンド物のガラス転移温度は、少なくとも25℃であることができる。よって、ブレンドを活用して、スルホポリエステルの加工特性を変えて不織布の製造を促進することもできる。
【0046】
スルホポリエステルおよび補助的なポリマーは、バッチ、半連続または連続のプロセスでブレンドできる。小規模バッチは、当業者に周知の任意の高負荷混合装置,例えばバンバリーミキサにおいて、繊維を溶融紡糸する前に容易に準備できる。成分を、溶液中、適切な溶媒中でブレンドすることもできる。溶融ブレンド法としては、スルホポリエステルと補助的なポリマーとを、ポリマーを溶融させるのに十分な温度でブレンドすることが挙げられる。ブレンド物を冷却して、更なる用途のためにペレット化でき、または溶融ブレンド物をこの溶融ブレンド物から繊維形状に直接溶融紡糸できる。本明細書で用いる用語「溶融」としては、これらに限定するものではないが、ポリエステルを単に軟化させることが挙げられる。溶融混合法は、一般的にポリエステル分野で公知である。Mixing and Compounding of Polymers(I.Manas−Zloczower&Z.Tadmor editors,Carl Hanser Verlag Publisher,1994,New York,N.Y.)を参照のこと。
【0047】
本発明の別の態様において、多成分繊維中のスルホポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、少なくとも25℃であり、該スルホポリエステルは:
(A)総酸残基基準で約50〜約96モル%の、イソフタル酸またはテレフタル酸の1種以上の残基;
(B)総酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基;
(C)1種以上のジオール残基であって、総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)であるもの;(iv)総繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3つ以上の官能基(該官能基は、ヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである)を有する分岐用モノマーの残基;を含む。
【0048】
上記で記載するように、多成分繊維は、スルホポリエステルとブレンドされる第1の水分散性ポリマー;および、任意に、ブレンド物が非混和性ブレンド物であるようにスルホポリエステルとブレンドされる水非分散性ポリマーを任意に含むことができる。第1の水分散性ポリマーは上記した通りである。スルホポリエステルのガラス転移温度(Tg)は、少なくとも25℃であることができるが、例えば、Tgは約35℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、および約90℃であることができる。スルホポリエステルは、イソフタル酸残基の他の濃度,例えば約60〜約95モル%、および約75〜約95モル%を含むことができる。イソフタル酸残基濃度範囲の更なる例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%および約90〜約95モル%である。スルホポリエステルは、約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含むこともできる。ジエチレングリコール残基濃度範囲の更なる例としては、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%、および約75〜約95モル%が挙げられる。スルホポリエステルは、エチレングリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノール(本明細書において「CHDM」と略す)の残基を含むこともできる。CHDM残基の典型的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的な濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。別の態様において、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸の残基および約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含む。
【0049】
本発明のスルホポリエステルは、適切なジカルボン酸、エステル、無水物または塩、スルホモノマーおよび適切なジオールまたはジオール混合物から、典型的な重縮合反応条件を用いて容易に得ることができる。これらは、連続様式、半連続様式およびバッチ様式の操作で形成でき、そして種々の反応器種を用いることができる。好適な反応器種の例としては、これらに限定するものではないが、撹拌タンク反応器、連続撹拌タンク反応器、スラリー反応器、管型反応器、ワイプトフィルム(wiped-film)反応器、落下膜(falling film)反応器または押出反応器が挙げられる。本明細書で用いる用語「連続」は、不断様式で同時に、反応物質を導入して生成物を取出すプロセスを意味する。「連続」は、プロセスが操作において実質的または完全に連続であることを意味し、「バッチ」プロセスと対比されるものである。「連続」は、例えば、立ち上げ、反応器保守、または定期的な操業停止の期間によるプロセスの連続性の通常の中断を禁止する意味では決してない。本明細書で用いる用語「バッチ」プロセスは、全ての反応物質を反応器に添加し、次いで反応の予定コース(その間、何らの物質も反応器内に供給または取出ししない)に従って加工するプロセスを意味する。用語「半連続」は、反応物質の幾つかを、プロセスの開始時に充填し、そして反応物質を反応の進行に従って連続的に供給し続けるプロセスを意味する。代替として、半連続プロセスは、バッチプロセスと同様のプロセス(ここで、1種以上の生成物を反応の進行に従って連続的に取出すことを除いて、全ての反応物質をプロセスの開始時に添加する)も含むことができる。プロセスは、経済的およびポリマーの着色性に優位性を与えるという理由で連続プロセスとして有利に操作する。高温であまりに長い持続時間で反応器内に残留した場合にはスルホポリエステルが外観を悪化させる場合があるからである。
【0050】
本発明のスルホポリエステルは、当業者に公知の手順によって製造される。スルホモノマーは、最もしばしば、直接反応混合物中に添加され、これからポリマーが形成されるが、例えば米国特許第3,018,272号、第3,075,952号および第3,033,822号に記載される他のプロセスが公知であり、そしてこれも採用できる。スルホモノマー、ジオール成分およびジカルボン酸成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて行なうことができる。
【0051】
例えば、エステル交換反応の方法で、すなわちジカルボン酸成分のエステル形から、スルホポリエステルを製造する場合、反応プロセスは2ステップを含むことができる。第1のステップにおいては、ジオール成分およびジカルボン酸成分,例えばイソフタル酸ジメチル等を、高温,典型的には約150℃〜約250℃で約0.5〜約8時間、約0.0kPa gauge〜約414kPa gauge(60ポンド毎平方インチ,「psig」)の範囲の圧力で反応させる。好ましくは、エステル交換反応の温度は、約180℃〜約230℃で約1〜約4時間の範囲であり、一方好ましい圧力は、約103kPa gauge(15psig)〜約276kPa gauge(40psig)の範囲である。
【0052】
その後、より高温およびより低圧で反応生成物を加熱して、ジオールを排出しながらスルホポリエステル(これは、これらの条件下で容易に蒸発して系から除去される)を形成する。この第2のステップ、すなわち重縮合ステップは、より高い減圧下および温度下である、一般的に、約230℃〜約350℃、好ましくは約250℃〜約310℃、および最も好ましくは約260℃〜約290℃の範囲で、約0.1〜約6時間、または好ましくは、約0.2〜約2時間で、所望の重合度(インヘレント粘度で評価される)のポリマーが得られるまで続く。重縮合ステップは、より低圧である、約53kPa(400torr)〜約0.013kPa(0.1torr)の範囲で行なうことができる。撹拌または適切な条件を両段階で用いて、反応混合物の適切な熱伝導および表面更新を確保する。両段階の反応は、適切な触媒,例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属ヒドロキシドおよびアルコラート、有機カルボン酸の塩、アルキルスズ化合物、金属酸化物等によって促進させる。特に、酸およびエステルの混合モノマー供給物を採用する場合、米国特許第5,290,631号に記載されるのと同様の3段階製造手順も用いることができる。
【0053】
ジオール成分およびジカルボン酸成分のエステル交換反応機構による反応を完了させることを確保するために、1モルのジカルボン酸成分に対して約1.05〜約2.5モルのジオール成分を採用することが好ましい。しかし、当業者は、ジオール成分のジカルボン酸成分に対する比が、一般的に反応器(この中で反応プロセスを行なう)の設計により決定されることを理解するであろう。
【0054】
直接エステル化による,すなわち酸型のジカルボン酸成分からのスルホポリエステルの製造において、スルホポリエステルは、ジカルボン酸またはジカルボン酸の混合物をジオール成分またはジオール成分の混合物と反応させることによって製造する。反応は、圧力約7kPa gauge(1psig)〜約1379kPa gauge(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満で行なって、低分子量の、直鎖または分岐鎖の、平均重合度が約1.4〜約10のスルホポリエステル生成物を生成する。直接エステル化反応の間に採用される温度は、典型的には約180℃〜約280℃の範囲である。別の範囲は、約220℃〜約270℃である。次いで、この低分子量ポリマーを、重縮合反応によって重合する。
【0055】
本発明の多成分繊維、不織布および繊維状物品は、これらの最終用途に有害に影響しない他の従来の添加剤および含有成分を含むこともできる。例えば、添加剤,例えばフィラー、表面摩擦調整剤、光および熱安定剤、押出助剤、帯電防止剤、着色剤、色素、顔料、蛍光増白剤、抗菌剤、偽造防止マーカー、疎水性および親水性のエンハンサー、粘度調整剤、スリップ剤、強化剤、接着促進剤等を使用できる。
【0056】
我々の発明の多成分繊維、不織布および繊維状物品は、加工の間の繊維のブロッキングまたは融合を防止するための添加剤,例えば顔料、フィラー、油、ワックス、または脂肪酸仕上剤等の存在を必要としない。本明細書で用いる用語「ブロッキングまたは融合」は、繊維または繊維状物品が一緒に貼付くかまたは融合して塊になり、繊維をその意図する目的のために加工または使用できなくなることを意味することが理解される。ブロッキングおよび融合は、繊維または繊維状物品の加工の間または何日かもしくは何週間かに亘る貯蔵の間に生じる場合があり、そして高温高湿条件下で悪化する。
【0057】
本発明の一態様において、多成分繊維、不織布、および繊維状物品は、多成分繊維または繊維状物品の総質量基準で10wt%未満のこのような耐ブロッキング添加剤を含むことができる。例えば、多成分繊維および繊維状物品は、10wt%未満の顔料またはフィラーを含むことができる。他の例において、多成分繊維、不織布、および繊維状物品は、多成分繊維の総質量基準で9wt%未満、5wt%未満、3wt%未満、1wt%未満および0wt%の顔料またはフィラーを含むことができる。着色剤(トナーということもある)を添加して所望の中間色相および/または明度をスルホポリエステルに与えることができる。着色された多成分繊維が所望される場合、顔料または着色剤が、ジオールモノマーとジカルボン酸モノマーとの反応の間にスルホポリエステル反応混合物中に含有されることができ、または、これらは、プレフォームスルホポリエステルと溶融ブレンドされることができる。着色剤を含有させる好ましい方法は、反応性基を有する熱的に安定な有機着色化合物を有する着色剤を用いることによって、着色剤を共重合させてスルホポリエステル中に組込んでその色相を向上させることである。例えば、反応性のヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を有する着色剤,例えば色素としては、これらに限定するものではないが、青色および赤色の置換アントラキノンが挙げられ、これをポリマー鎖中に共重合することができる。色素を着色剤として採用する場合、エステル交換または直接エステル化反応の後に、これらをコポリマー反応プロセスに添加することができる。
【0058】
本発明の一態様において、多成分繊維中に含まれるスルホポリエステルのガラス転移温度(Tg)は少なくとも57℃である。ガラス転移温度(Tg)少なくとも57℃は、紡糸および巻き取りの間の多成分繊維のブロッキングおよび融合を防止するために特に有用であることが見出されている。よって、本発明の一態様において、成形断面を有する多成分繊維を利用して:
(A)ガラス転移温度(Tg)少なくとも57℃の水分散性スルホポリエステルであって、該スルホポリエステルが:
(i)1種以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基と芳香環または脂環式環に付いた1つ以上のスルホネート基とを有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;
(iii)1種以上のジオール残基であって、総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である、ジオール残基;ならびに
(iv)総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;を含む水分散性スルホポリエステル;ならびに
(B)スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントであって、該セグメントが、セグメント間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離している、セグメント;
を含み、繊維が、海中島断面またはセグメント化パイ断面を有する、不織布を製造する。
【0059】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、および分岐用モノマー残基は、本発明の他の態様について前記した通りである。多成分繊維について、スルホポリエステルは、Tg少なくとも57℃を有することが有利である。多成分繊維のスルホポリエステルまたはスルホポリエステルブレンド物が示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、および少なくとも90℃である。更に、Tgが少なくとも57℃のスルホポリエステルを得るために、1種以上のスルホポリエステルのブレンド物を種々の比率で使用して、所望のTgを有するスルホポリエステルブレンド物を得ることができる。スルホポリエステルブレンド物のTgは、スルホポリエステル成分のガラス転移温度の加重平均を用いることにより算出できる。例えば、Tg48℃を有するスルホポリエステルを、25:75 wt:wt比で、Tg65℃の別のスルホポリエステルとブレンドして、Tg約61℃のスルホポリエステルブレンド物を与えることができる。
【0060】
本発明の別の態様において、多成分繊維の水分散性スルホポリエステル成分は、以下:
(A)多成分繊維が所望の低デニールに紡糸されること、および
(B)多成分繊維が、熱セット可能で、安定で強い不織布を与えること
のうち少なくとも1つを可能にする特性を与える。驚くべき、そして予期しない結果が、所定の溶融粘度およびスルホモノマー残基のレベルを有するスルホポリエステルを用いてこれらの目的の促進において実現された。従って、本発明のこの態様において:
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステル;および
(B)スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性ポリマーを含む複数のドメインであって、該ドメインが該ドメイン間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、ドメイン;
を含む成形断面を有する多成分繊維であって、
多成分繊維が、アズスパン(as-spun)デニール約6デニール毎フィラメント未満であり;
水分散性スルホポリエステルが、240℃で歪み速度1rad/秒で測定したときに溶融粘度約12,000ポイズ未満を示すものであり、そしてスルホポリエステルが、二塩基酸残基またはジオール残基の総モル基準で約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含むもの;を用いる。
【0061】
これらの多成分繊維において用いられるスルホポリエステルの溶融粘度は、一般的に、約12,000ポイズ未満である。スルホポリエステルの溶融粘度の他の範囲は、240℃で1rad/秒の剪断速度で測定したときに、10,000ポイズ未満、6,000ポイズ未満、および4,000ポイズ未満である。別の側面において、スルホポリエステルは、240℃で1rad/秒の剪断速度で測定したときに、約1000〜約12000ポイズ、約2000〜約6000ポイズ、または約2500〜約4000ポイズの範囲の溶融粘度を示す。粘度の評価前に、サンプルを60℃で減圧オーブン内で2日間乾燥させる。溶融粘度を、1mmギャップ設定の25mm径パラレル板幾何学形状のレオメータを用いて測定する。動的周波数検査は、歪み速度範囲1〜400rad/秒および10%歪み振幅で行なう。次いで粘度を240℃で歪み速度1rad/秒にて測定する。
【0062】
本発明のこの態様で使用するためのスルホポリエステルポリマー中のスルホモノマー残基のレベルは、一般的に、約25モル%未満または20モル%未満であり、スルホポリエステル中の二塩基酸残基またはジオール残基全体のパーセントとして記録される。スルホポリエステルポリマー中のスルホモノマー残基のレベルについての他の範囲は、約4〜約20モル%、約5〜約12モル%、および約7〜約10モル%の範囲である。この態様の別の側面において、本発明で使用するためのスルホモノマーは、2つの官能基と芳香環または脂環式環に付いた1つ以上のスルホネート基とを有することができ、ここで該官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せであり、例えば、ソジオスルホイソフタル酸モノマーである。
【0063】
前記のスルホモノマーに加え、スルホポリエステルは、1種以上のジカルボン酸の残基、1種以上のジオール残基であって総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である残基、ならびに、総繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3つ以上の官能基(該官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである)を有する分岐用モノマーの残基、を含むことができる。
【0064】
本発明の一態様において、スルホポリエステルは、約80〜96モル%のジカルボン酸残基、約4〜約20モル%のスルホモノマー残基、および100モル%のジオール残基(総モル%で200%が存在、すなわち100モル%の二塩基酸および100モル%のジオール)を含む。より具体的には、スルホポリエステルのジカルボン酸部分は、約60〜80モル%のテレフタル酸、約0〜30モル%のイソフタル酸、および約4〜20モル%の5−ソジオスルホイソフタル酸(5−SSIPA)を含む。ジオール部分は、約0〜約50モル%のジエチレングリコールおよび約50〜100モル%のエチレングリコールを含む。本発明のこの態様に従った例示的な配合を続いて記載する。
【0065】
【表1】

【0066】
多成分繊維の水非分散性成分は、本明細書に記載する任意の水非分散性ポリマーを含むことができる。多成分繊維の紡糸は、本明細書に記載する任意の方法で行なうこともできる。しかし、本発明のこの側面に従った多成分繊維の改善されたレオロジー特性は、延伸速度の向上を与える。水分散性スルホポリエステルの溶融粘度が、240℃で歪み速度1rad/秒で測定したときに約12,000ポイズ未満であり、そして、スルホポリエステルが、二塩基酸残基またはジオール残基の総モル基準で約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含み、そして押出されて多成分押出物を生成する場合、本明細書に記載する任意の方法を用い、少なくとも約2000m/分の速度で多成分押出物を溶融延伸して多成分繊維を生成することが可能である。この態様の別の側面において、多成分押出物は、以下の範囲:少なくとも約3000m/分、少なくとも約4000m/分、または少なくとも約4500m/分の速度で溶融延伸することが可能である。理論に拘束されることを意図しないが、これらの速度で多成分押出物を溶融延伸することにより、多成分繊維の水非分散性成分において少なくとも幾らかかの配向結晶性がもたらされる。この配向結晶性は、多成分繊維から形成された不織布の後続の加工の間の寸法安定性を増大させることができる。
【0067】
240℃で歪み速度1rad/秒で測定される溶融粘度約12,000ポイズ未満のスルホポリエステルから生成され、そしてスルホポリエステルが、二塩基酸残基またはジオール残基の総モル基準で約25モル%未満の、少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含む多成分押出物の別の利点は、これを、アズスパンデニール6デニール毎フィラメント未満を有する多成分繊維に溶融延伸できることである。多成分繊維サイズの他の範囲としては、アズスパンデニール4デニール未満毎フィラメントおよび2.5デニール毎フィラメント未満が挙げられる。
【0068】
多成分繊維は、スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性ポリマーの複数のセグメントまたはドメインを含み、該セグメントまたはドメインは、該セグメントまたはドメイン間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている。本明細書で用いる用語「実質的に分離されている」は、スルホポリエステルの除去時にセグメントドメインが個々の繊維を形成可能になるように該セグメントまたはドメインが互いに離れていることを意味することを意図する。例えば、セグメントまたはドメインは、例えば、セグメント化パイ構造におけるように互いに接触していることができるが、衝撃によってまたはスルホポリエステルが除去される際に解体できる。
【0069】
本発明の多成分繊維におけるスルホポリエステルの水非分散性ポリマー成分に対する質量比は、一般的に、約60:40〜約2:98の範囲であり、または、別の例において、約50:50〜約5:95の範囲である。典型的には、スルホポリエステルは、多成分繊維の総質量の50質量%以下を構成する。
【0070】
多成分繊維のセグメントまたはドメインは、1種以上の水非分散性ポリマーを含む。多成分繊維のセグメントにおいて用いる水非分散性ポリマーの例としては、これらに限定するものではないが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルが挙げられる。例えば、水非分散性ポリマーは、ポリエステル,例えば、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート等であることができる。
【0071】
本発明の一態様において、水非分散性ポリマーは、フェノール/テトラクロロエタン溶媒の60/40質量部溶液中で25℃にて、溶媒100mL中のポリ(エチレン)テレフタレート約0.5gの濃度で測定したときのインヘレント粘度が0.6dL/g未満のポリ(エチレン) テレフタレートである。他の範囲は、0.55dL/g未満、0.4dL/g未満、および0.3dL/g未満である。このインヘレント粘度を有するPETは、不織布の表面上に良好な繊維エンタングルメントおよび少ない緩みの繊維を有する改善された不織布を生成できる。
【0072】
別の例において、水非分散性ポリマーは、DIN Standard 54900によって評価されるように、生崩壊性(biodisintegratable)であり、および/またはASTM Standard Method,D6340−98によって評価されるように生分解性であることができる。生分解性のポリエステルおよびポリエステルブレンド物の例は、米国特許第5,599,858号;第5,580,911号;第5,446,079号;および第5,559,171号に開示されている。本発明の水非分散性ポリマーに関して本明細書において用いる用語「生分解性」は、環境的な影響下,例えば堆肥化環境中、例えばASTM Standard Method,D6340−98,表題“Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Materials in an Aqueous or Compost Environment”によって規定される適切かつ明らかなタイムスパン等でポリマーが分解することを意味するものと理解される。本発明の水非分散性ポリマーは、生崩壊性(例えばDIN Standard 54900によって規定されるように、ポリマーが堆肥化環境中で容易に断片化することを意味する)であることもできる。例えば、生分解性ポリマーは、該環境中で熱、水、空気、微生物および他の要因の作用によって初期に分子量が低下する。この分子量低下は、物理特性(頑強さ)の損失およびしばしば繊維破壊をもたらす。ポリマーの分子量が十分低くなった時点で、次いでモノマーおよびオリゴマーが微生物によって消化される。好気性環境中で、これらのモノマーまたはオリゴマーは最終的にCO2、H2Oおよび新しいセルバイオマスに酸化される。嫌気性環境中では、モノマーまたはオリゴマーは最終的にCO2、H2、アセテート、メタン、およびセルバイオマスに変換される。
【0073】
例えば、水非分散性ポリマーは、脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書において「AAPE」と略す)であることができる。本明細書で用いる用語「脂肪族−芳香族ポリエステル」は、脂肪族または脂環式のジカルボン酸またはジオールと芳香族のジカルボン酸またはジオールとに由来する残基の混合物を含むポリエステルを意味する。本発明のジカルボン酸およびジオールのモノマーに関して本明細書で用いる用語「非芳香族」は、モノマーのカルボキシル基またはヒドロキシル基が芳香環を介して接続していないことを意味する。例えば、アジピン酸は、芳香族をその骨格、すなわちカルボン酸基に接続する炭素原子の鎖に全く有さず、よって「非芳香族」である。これに対し、用語「芳香族」は、ジカルボン酸またはジオールが、芳香核を骨格中に含むこと、例えばテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸を意味する。従って、「非芳香族」は、脂肪族および脂環式の構造の両者,例えばジオールおよびジカルボン酸の、骨格として直鎖もしくは分岐鎖または構成炭素原子(飽和していても本来的にパラフィン性,不飽和,すなわち非芳香族炭素−炭素二重結合を含むもの、またはアセチレン性,すなわち炭素−炭素三重結合を含むものであってもよい)の環状配列を含むもの等を含むことを意図する。よって、本発明の明細書および特許請求の範囲の文脈において、非芳香族は直鎖および分岐鎖の構造(本明細書において「脂肪族」という)ならびに環状構造(本明細書において「脂環式(alicyclicまたはcycloaliphatic)」という)を含むことを意図する。しかし、用語「非芳香族」は、脂肪族または脂環式のジオールまたはジカルボン酸の骨格に付くことができる任意の芳香族置換基を排除することを意図しない。本発明において、二官能カルボン酸は、典型的には脂肪族ジカルボン酸,例えばアジピン酸等、または芳香族ジカルボン酸,例えばテレフタル酸等である。二官能ヒドロキシル化合物は、脂環式ジオール,例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール等、直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族ジオール,例えば1,4−ブタンジオール等、または芳香族ジオール,例えばハイドロキノン等であることができる。
【0074】
AAPEは、2〜約8個の炭素原子を含む脂肪族ジオール、2〜8個の炭素原子を含むポリアルキレンエーテルグリコール、および約4〜約12個の炭素原子を含む脂環式ジオールから選択される1種以上の置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐鎖のジオールの残基を含むジオール残基を含む、直鎖もしくは分岐鎖のランダムコポリエステルおよび/または鎖延長コポリエステルであることができる。置換ジオールは、典型的には、ハロ、C6-C10アリール、およびC1−C4アルコキシから独立に選択される1〜約4つの置換基を含むことができる。使用できるジオールの例としては、これらに限定するものではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールが挙げられ、1種以上のジオールを含む好ましいジオールは、1,4−ブタンジオール;1,3−プロパンジオール;エチレングリコール;1,6−へキサンジオール;ジエチレングリコール;または1,4−シクロヘキサンジメタノールから選択される。AAPEは、二塩基酸残基の総モル基準で約35〜約99モル%の、2〜約12個の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸および約5〜約10個の炭素原子を含む脂環式ジカルボン酸から選択される、1種以上の置換または非置換の直鎖または分岐鎖の非芳香族ジカルボン酸の残基を含む二塩基酸塩基を含むこともできる。置換非芳香族ジカルボン酸は、典型的には、ハロ、C6-C10アリール、およびC1−C4アルコキシから選択される1〜約4個の置換基を含むことができる。非芳香族二塩基酸の限定しない例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、オキシ二酢酸、イタコン酸、マレイン酸、および2,5−ノルボルナン−ジカルボン酸が挙げられる。非芳香族ジカルボン酸に加え、AAPEは、二塩基酸残基の総モル基準で約1〜約65モル%の、6〜約10個の炭素原子を含む1種以上の置換または非置換の芳香族ジカルボン酸の残基を含む。置換芳香族ジカルボン酸を用いる場合、これらは、典型的には、ハロ、C6-C10アリール、およびC1−C4アルコキシから選択される1〜約4つの置換基を含むことができる。我々の発明のAAPE中で使用できる芳香族ジカルボン酸の限定しない例は、テレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸の塩、および2,6−ナフタレンジカルボン酸である。より好ましくは、非芳香族ジカルボン酸は、アジピン酸を含むことができ、芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸を含むことができ、そしてジオールは1,4−ブタンジオールを含むことができる。
【0075】
我々の発明のAAPEのための他の可能な組成物は、以下のジオールおよびジカルボン酸(またはそのポリエステル形成性の等価物,例えばジエステル)から、二塩基酸成分の100モルパーセントおよびジオール成分の100モルパーセントを基準として以下のモルパーセントで得られるものである:
(1)グルタル酸(約30〜約75%);テレフタル酸(約25〜約70%);1,4−ブタンジオール(約90〜100%);および修飾用ジオール(0〜約10%);
(2)コハク酸(約30〜約95%);テレフタル酸(約5〜約70%);1,4−ブタンジオール(約90〜100%);および修飾用ジオール(0〜約10%);ならびに
(3)アジピン酸(約30〜約75%);テレフタル酸(約25〜約70%);1,4−ブタンジオール(約90〜100%);および修飾用ジオール(0〜約10%)
【0076】
修飾用ジオールは、好ましくは、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールから選択される。最も好ましいAAPEは、約50〜約60モルパーセントのアジピン酸残基、約40〜約50モルパーセントのテレフタル酸残基、および少なくとも95モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基を含む直鎖、分岐鎖または鎖延長コポリエステルである。更により好ましくは、アジピン酸残基は約55〜約60モルパーセント含み、テレフタル酸残基は約40〜約45モルパーセント含み、そしてジオール残基は約95モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基を含む。このような組成物は、商標EASTAR BIO(登録商標)コポリエステルでEastman Chemical Company,Kingsport,TNから、および商標ECOFLEX(登録商標)でBASF Corporationから市販で入手可能である。
【0077】
好ましいAAPEの追加的な具体例としては、(a)50モルパーセントのグルタル酸残基、50モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基、(b)60モルパーセントのグルタル酸残基、40モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基または(c)40モルパーセントのグルタル酸残基、60モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基を含むポリ(テトラ−メチレングルタレート−コ−テレフタレート);(a)85モルパーセントのコハク酸残基、15モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基または(b)70モルパーセントのコハク酸残基、30モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基を含むポリ(テトラメチレンサクシネート−コ−テレフタレート);70モルパーセントのコハク酸残基、30モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントのエチレングリコール残基を含むポリ(エチレンサクシネート−コ−テレフタレート);ならびに(a)85モルパーセントのアジピン酸残基、15モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基;または(b)55モルパーセントのアジピン酸残基、45モルパーセントのテレフタル酸残基、および100モルパーセントの1,4−ブタンジオール残基を含むポリ(テトラメチレンアジペート−コ−テレフタレート)が挙げられる。
【0078】
AAPEは、好ましくは、約10〜約1,000の繰り返し単位、および好ましくは、約15〜約600の繰り返し単位を含む。AAPEは、温度25℃で、フェノール/テトラクロロエタンの60/40質量溶液100ml中のコポリエステル0.5グラムの濃度を用いて測定したときに、インヘレント粘度約0.4〜約2.0dL/gを有することができ、またはより好ましくは約0.7〜約1.6dL/gを有することができる。
【0079】
AAPEは、任意に、分岐用剤の残基を含むことができる。分岐用剤のモルパーセント範囲は、二塩基酸またはジオール残基の総モル基準で(分岐用剤がカルボキシル基またはヒドロキシル基のいずれを含むかに左右される)約0〜約2モル%、好ましくは約0.1〜約1モル%、および最も好ましくは約0.1〜約0.5モル%である。分岐用剤は、好ましくは重量平均分子量約50〜約5000、より好ましくは約92〜約3000を有し、そして官能性約3〜約6を有する。分岐用剤は、例えば、3〜6つのヒドロキシル基を有するポリオール、3もしくは4つのカルボキシル基(またはエステル形成性の等価の基)を有するポリカルボン酸または全体で3〜6つのヒドロキシル基およびカルボキシル基を有するヒドロキシ酸のエステル化残基であることができる。加えて、AAPEは、反応性の押出しの間に過酸化物を添加することによって分岐させることができる。
【0080】
水非分散性ポリマーの各セグメントの繊度は他と異なっていてもよく、そして当業者に公知の任意の成形または加工された断面幾何学形状で配列することができる。例えば、スルホポリエステルおよび水非分散性ポリマーを用いて、加工された幾何学形状,例えば並列、「海中島」、セグメント化パイ、他の分裂可能なもの、鞘/芯、または当業者に公知の他の構造等を有する多成分繊維を製造することができる。他の多成分構造も可能である。後続の、側、「海」、または「パイ」の部分の除去により極めて細い繊維が得られる。多成分繊維を製造する方法も当業者に公知である。多成分繊維において、本発明のスルホポリエステル繊維は約10〜約90質量%の量で存在することができ、そして一般的に、鞘/芯繊維の鞘部分において使用できる。他の成分は、広範囲の他のポリマー材料,例えばポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、ポリラクチド等、更にポリオレフィン、セルロースエステル、およびポリアミド等によることができる。典型的には、水不溶性または水非分散性のポリマーを用いる場合、得られる2成分または多成分の繊維は、完全には水分散性ではない。熱収縮において顕著な相違を伴う並列の組合せを、螺旋クリンプ(crimp)を改良するために利用できる。クリンプが所望される場合、鋸歯またはスタッファーボックスクリンプが、多くの用途に一般的に好適である。第2のポリマー成分が鞘/芯構造のコアにある場合、このようなコアは任意に安定化できる。
【0081】
スルホポリエステルは、「海中島」または「セグメント化パイ」断面を有する繊維に対して特に有用である。これらは、分散のために、他の水分散性ポリマーを多成分繊維から除去することがしばしば必要な苛性含有溶液と比べて、中性または僅かに酸性(すなわち「軟」水)であることを必要とするのみであるからである。よって、我々の発明の別の側面は、多成分繊維が:
(A)ガラス転移温度(Tg)少なくとも57℃の水分散性スルホポリエステルであって、該スルホポリエステルが:
(i)総酸残基基準で約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸の残基;
(ii)総酸残基基準で約4〜約30モル%の、ソジオスルホイソフタル酸の残基;
(iii)1種以上のジオール残基であって、総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である、ジオール残基;ならびに
(iv)総繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;を含む水分散性スルホポリエステル;ならびに
(B)スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントであって、該セグメントが、セグメント間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離している、セグメント;
を含み;
繊維が、海中島断面またはセグメント化パイ断面を有する場合である。
【0082】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、分岐用モノマー残基、および水非分散性ポリマーは前記の通りである。多成分繊維について、スルホポリエステルは、Tg少なくとも57℃を有することが有利である。スルホポリエステルは、単一スルホポリエステルまたは1種以上のスルホポリエステルポリマーのブレンド物であることができる。スルホポリエステルまたはスルホポリエステルブレンド物が示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃、および少なくとも90℃である。例えば、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸またはテレフタル酸の1種以上の残基、および約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含むことができる。前記のように、水非分散性ポリマーの例はポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルである。加えて、水非分散性ポリマーは、生分解性または生崩壊性であることができる。例えば、水非分散性ポリマーは、前記の脂肪族−芳香族ポリエステルであることができる。
【0083】
多成分繊維は、当業者に公知の任意の多くの方法によって製造できる。本発明の一態様において、成形断面を有する多成分繊維は:ガラス転移温度(Tg)が少なくとも57℃の水分散性スルホポリエステルと、該スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性ポリマーとを繊維に紡糸すること;を含む方法によって製造し、スルホポリエステルは:
(i)1種以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基および芳香環または脂環式環に付いた1つ以上のスルホネート基を有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基であって、該官能基が、ヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;
(iii)1種以上のジオール残基であって、総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である、ジオール残基;ならびに
(iv)総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基であって、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;
を含み;繊維は、水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントであって、該セグメントが該セグメント間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離している、セグメントを有する。
【0084】
例えば、多成分繊維は、スルホポリエステルおよび1種以上の水非分散性ポリマーを別個の押出機内で溶融させ、そして個々のポリマー流を1つの紡糸口金または押出ダイに複数の分配流路で導き、これにより水非分散性ポリマー成分が、介在スルホポリエステルによって互いに実質的に分離している小さいセグメントまたは薄いストランドを形成するようにすることによって製造できる。このような繊維の断面は、例えば、セグメント化パイ配列または海中島配列であることができる。別の例において、スルホポリエステルおよび1種以上の水非分散性ポリマーは、別個に紡糸口金のオリフィスに供給し、次いで鞘−芯形状に押出し、ここで水非分散性ポリマーは、スルホポリエステル「鞘」ポリマーによって実質的に取り囲まれる「コア」を形成する。このような同心繊維の場合、「コア」ポリマーを供給するオリフィスは紡糸オリフィス出口の中心部にあり、そしてコアポリマー流体のフロー条件を厳密に制御して紡糸時の両成分の同心性を維持する。紡糸口金オリフィスの変更によって、異なる形状のコアおよび/または鞘を繊維断面内に得ることが可能になる。更に別の例において、並列の断面または構造を有する多成分繊維は、水分散性スルホポリエステルと水非分散性ポリマーとをオリフィス経由で別個に共押出し、そして別個のポリマー流を実質的に同じ速度で収束させて、紡糸口金の正面下の組合された流れとして並列に合併させることにより;または(2)2つのポリマー流を別個にオリフィス経由で供給し、紡糸口金の正面で、実質的に同じ速度で収束させて、紡糸口金の表面で、組合された流れとして並列に合併させることによって製造できる。両者の場合で、各ポリマー流の速度は、合併の点で、その計量ポンプ速度、オリフィスの数およびオリフィスのサイズによって決定する。
【0085】
ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホモノマー、分岐用モノマー残基、および水非分散性ポリマーは、前記の通りである。スルホポリエステルのガラス転移温度は少なくとも57℃である。スルホポリエステルまたはスルホポリエステルブレンド物が示すことができるガラス転移温度の更なる例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃、および少なくとも90℃である。1つの例において、スルホポリエステルは、総酸残基基準で約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸の残基、および総酸残基基準で約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸の残基;および総繰り返し単位基準で0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を有し、該官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである分岐用モノマーの残基を含むことができる。別の例において、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸の残基、および約25〜約95モル%のジエチレングリコールの残基を含むことができる。上記のように、水非分散性ポリマーの例は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルである。加えて、水非分散性ポリマーは生分解性または生崩壊性であることができる。例えば、水非分散性は、前記した脂肪族−芳香族ポリエステルであることができる。成形断面の例としては、これらに限定するものではないが、海中島構造、並列構造、鞘芯構造、またはセグメント化パイ構造が挙げられる。
【0086】
本発明の別の態様において、成形断面を有する多成分繊維は:少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルおよび該スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性ポリマーを紡糸して多成分繊維を生成することを含み、該多成分繊維が水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインが該ドメイン間に介在する該スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されており;水分散性スルホポリエステルが、240℃で歪み速度1rad/秒で測定したときに溶融粘度約12,000ポイズ未満を有し、そしてスルホポリエステルが、二塩基酸残基またはジオール残基の総モル基準で約25モル%未満の少なくとも1種のスルホモノマーの残基を含み、そして多成分繊維がアズスパンデニール約6デニール毎フィラメント未満である方法によって製造される。
【0087】
これらの多成分繊維および水非分散性ポリマーにおいて用いるスルホポリエステルは、本開示において前記で議論した。
【0088】
本発明の別の態様において、成形断面を有する多成分繊維は:
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルおよび該スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性ポリマーを押出して多成分押出物(ここで多成分押出物は水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、そして該ドメインが該ドメイン間に介在するスルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている)を生成すること;ならびに
(B)多成分押出物を速度少なくとも約2000m/分で溶融延伸して多成分繊維を生成すること;
を含む方法によって製造できる。
【0089】
該方法が、多成分押出物を速度少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、および最も好ましくは少なくとも約4500m/分で溶融延伸するステップを含むことも本態様の特徴である。
【0090】
典型的には、紡糸口金を出る際に繊維が直交流の気流でクエンチされるとすぐに繊維が固化される。種々の仕上げおよびサイズをこの段階の繊維に対して適用できる。冷却された繊維は、典型的には、続いて延伸され、そして巻取りスプール上に巻上げられる。他の添加剤,乳化剤、帯電防止剤、抗菌剤、泡止め剤、潤滑剤、熱安定剤、UV安定剤等のようなものを仕上げ中に有効量で組込むことができる。
【0091】
任意に、延伸した繊維にテクスチャリングして巻取り、バルキーな連続フィラメントを形成することができる。この1ステップ法は、スピンドローテクスチャリングとして当該分野で公知である。他の態様としては、フラットフィラメント(テクスチャリングしていない)ヤーン、またはカットステープル繊維(クリンプまたは非クリンプのいずれも)が挙げられる。
【0092】
本発明の方法のステップ(A)は、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成することを含む。前記した方法によって生成される多成分繊維は、多成分繊維のための支持体が必要でないような不織ウエブを生成する様式で纏めることができる。これは当該分野で公知の任意の方法で実現できる。たとえば、多成分繊維は、多成分繊維のための支持体が必要でないような十分な圧密化(consolidation)を与えるために機械的穿刺、化学的結合、熱的カレンダー、超音波融合、またはハイドロエンタングルのようなプロセスに供することができる。機械的穿刺の例はニードルパンチである。
【0093】
本発明の一態様において、ハイドロエンタングルを選択して多成分繊維を圧密化または結合させる場合、このステップでは、十分なハイドロエンタングルのみを行なって支持体が多成分繊維のために必要でないようにする。本発明の一態様において、この方法において消費されるハイドロエンタングルエネルギーの量は、該方法のステップ(C)で消費されるハイドロエンタングルエネルギーの約20%〜約50%の範囲であることができる。本発明において後で議論するように、該方法のスルホポリエステル除去(ステップC)後のハイドロエンタングルは、エネルギーの大部分を消費して多成分繊維を連結して不織布を生成するステップである。繊維はスルホポリエステルを除去した際により細いため、これは改善された不織布を与え、そして、繊維のハイドロエンタングルは、スルホポリエステル除去前である従来の系よりも必要とするハイドロエンタングルエネルギーが少ない。
【0094】
本発明の別の態様において、押出し法を用いて、ステップ(A)の不織ウエブを、多成分繊維を形成するために用いる材料自体から生成でき、これにより多成分繊維生成ステップを排除する。これらの方法としてはスパンボンド法およびメルトブロー法が挙げられる。スパンボンド法は、多成分繊維を押出し、これらをバンドルまたはグループとして配向させ、そしてこれらを搬送スクリーン上に敷くことにより、別個の繊維生成ステップを有することなく、水分散性スルホポリエステルおよび水非分散性ポリマーを直接不織ウエブに変換する。従来方法において、多成分繊維は、まず紡糸して纏め、次いで別個のプロセスで布帛に形成する。従って、水分散性スルホポリエステルおよび水非分散性ポリマーは、スパンボンド法を経由して、ステップ(A)の不織ウエブとなる。図1はスパンボンド法を示す。メルトブロー法において、水分散性スルホポリエステルおよび水非分散性ポリマーを加熱して液相にし、そしてこれが押出しオリフィスを通過するに従って、これを音速気流で約250〜500℃で射出する。高速移動気流が溶融ポリマーをストレッチ(延伸)し、これを固化させて微細多成分繊維を生成する。次いで該多成分繊維を気流からエンタングルウエブとして分離して加熱ロール間で圧縮してステップ(A)の不織ウエブを生成する。
【0095】
一般的に、不織ウエブの質量は、約10グラム/m2〜約800グラム/m2の範囲であることができる。他の範囲は、10グラム/m2〜600グラム/m2、10グラム/m2〜400グラム/m2、50グラム/m2〜300グラム/m2、約50グラム/m2〜約150グラム/m2である。
【0096】
本発明の方法のステップ(B)は、不織ウエブを水と十分な抽出温度および圧力で接触させて水分散性スルホポリエステルの部分を除去することによってマイクロ繊維ウエブを形成することを含む。典型的には、多成分繊維を水と抽出温度約20℃〜約100℃で接触させることができる。他の抽出温度範囲は、25℃〜約100℃、および約40℃〜約90℃である。
【0097】
抽出温度は、以下の手順によって規定される。公知の水分散性スルホポリエステル量を有する多成分繊維からなる不織ウエブを計量し、次いで金属バッキング板にテープ付けして100〜200メッシュのステンレススチールスクリーンで上部をカバーする。不織布付きバッキング板を脱イオン水浴に試験温度約20℃〜約60℃の範囲で10分間置き、水分散性スルホポリエステルを抽出する。状態調整後、該種を水から除去し、そして過剰の水は、吸収材タオルをスクリーンメッシュの上に置き、そして圧搾することで除去する。状態調整した布帛ウエブを、強制通気オーブン内で60℃で乾燥させ、そして最終質量を測定する。抽出による質量損失を、開始質量のパーセントとして算出する。状態調整水の温度(ここで開始繊維中のスルホポリエステルポリマーの80%超を、状態調整の間に除去する)を、スルホポリエステルの抽出温度として指定する。
【0098】
一般的に、水の温度、圧力、接触時間は、水分散性スルホポリエステルが除去され、そして不織ウエブが十分に構造体として損傷を受けずに維持されるものである。水の圧力は約30barr〜約600barrの範囲であることができる。他の圧力範囲は、50barr〜300barrである。
【0099】
本発明の一態様において、不織ウエブを水と、多成分繊維中に含まれる総水分散性スルホポリエステルの約30質量%〜約100質量%を除去するのに十分な時間、接触させることができる。本発明の別の態様において、総水分散性スルホポリエステルの90質量%超を不織ウエブから除去する。別の態様において、総水分散性スルホポリエステルの95質量%超を不織ウエブから除去する。
【0100】
別の態様において、不織ウエブは、水と約10〜約600秒間接触させることによって、水分散性スルホポリエステルを消失または溶解させる。
【0101】
スルホポリエステルの除去後、残りの水非分散性ポリマーマイクロ繊維は、出発多成分繊維のデニールの30%未満の平均繊度を有することができる。残りの水非分散性ポリマーマイクロ繊維は、典型的には、平均繊度1d/f以下、典型的には0.5d/f以下、またはより典型的には0.1d/f以下を有することができる。
【0102】
一般的に、不織ウエブを水と、当該分野で公知の任意の方法で接触させる。例えば、水噴流(water jets)を用いることができる。本発明の一態様において、1〜8の水噴流ヘッドを用いることができる。用いる水の量は、水と接触させる前の不織ウエブの500質量倍未満から1000質量倍未満の範囲である。
【0103】
水分散性スルホポリエステルを含む洗浄水は再循環できる。本発明の一態様において、洗浄水の80%以上を再循環させる。これは相当の前進である。不織布を製造する従来の方法においては、洗浄水は一般的に、設備を閉塞させる場合があり過剰の機器損耗の原因となる場合がある水分散性スルホポリエステルによって再循環できないからである。本発明の別の態様において、スルホポリエステルの実質的に全てを洗浄水から除去する。スルホポリエステル再循環プロセスは、米国特許出願第11/343,955号(2006年1月31日出願,Gupta,タイトル”Sulfopolyester Recovery”)(これが本明細書の記載と矛盾しない限りにおいて参照により本明細書に組入れる)に記載されている。
【0104】
ステップ(C)は、マイクロ繊維ウエブをハイドロエンタングルして不織布を生成することを含む。一般的に、ハイドロエンタングル中の水温度は40℃未満である。圧力は約150bar〜約220barの範囲であることができる。このハイドロエンタングルステップの間、1質量%未満の水分散性スルホポリエステルを、マイクロ繊維ウエブから除去する。本発明の他の態様において、除去される水分散性スルホポリエステルの量は、マイクロ繊維ウエブの質量基準で、0.8質量%未満、0.5質量%未満、0.25質量%未満、0.1質量%未満、0.08質量%未満、0.05質量%未満、および0.02質量%未満であることができる。ハイドロエンタングルステップによる水は、前記のようにも再循環できる。水分散性スルホポリエステルが低レベルであることにより、スルホポリエステルは、再使用前の洗浄水から除去しなくてもよい。
【0105】
本発明の一態様において、ハイドロエンタングルは水噴流で行なう。水噴流ヘッドの数は、1〜約20、または2〜約15、または2〜約10の範囲であることができる。実質量のスルホポリエステルが除去されているため、マイクロ繊維ウエブ中に含まれる繊維は、大幅により細く、そしてハイドロエンタングルステップの間、綻びおよび緩んだ繊維がより少ないより強固な構造を有する優れた不織布が生成される。
【0106】
加えて、本発明のハイドロエンタングルプロセスは、従来の不織布ハイドロエンタングルプロセス(ハイドロエンタングルを水分散性ポリマーの除去前に行なう)から単純化できる。マイクロ繊維ウエブ中の水非分散性ポリマー繊維がより細いため、繊維をエンタングルするのに必要な水圧エネルギーが少ない。更に、従来の不織プロセスにおいては、ハイドロエンタングルは、典型的には水分散性スルホポリエステルの除去前に行ない、そしてしばしば、スルホポリエステルの除去後に更にハイドロエンタングルさせることが必要である。しかし、本発明においては、更なるハイドロエンタングルステップなしで高品質の不織布を得ることができる。
【0107】
本発明の別の態様において、不織布を製造するための方法であって:
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと少なくとも1種の水非分散性ポリマーとを含む多成分繊維であって、該多成分繊維が水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、該ドメインが該ドメイン間に介在する該水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成すること;
(B)該スルホポリエステルの部分を除去するのに十分な温度および圧力で該不織ウエブを水と接触させることによってマイクロ繊維を形成し、同時に該マイクロ繊維をハイドロエンタングルして不織布を生成すること;
を含む方法を提供する。ステップ(A)および(B)は本開示において前記した。
【0108】
不織布は、不織布を温度少なくとも約100℃、およびより好ましくは少なくとも約120℃に加熱することを含む熱セットステップを受けることができる。熱セットステップは、内部繊維応力をリラックスさせ、寸法安定性を有する布帛製品の製造の助けとなる。熱セット材料を、熱セットステップの間にこれが加熱された温度に再加熱する際には、これが示す表面積収縮が元の表面積の約5%未満であることが好ましい。より好ましくは、収縮は元の表面積の約2%未満であり、そして最も好ましくは収縮は約1%未満である。
【0109】
不織布は、任意に、1)ウエブまたはマットにおける機械的な繊維の結束(cohesion)および連結(interlocking);2)繊維を融合させる種々の方法である、バインダー繊維の使用、所定のポリマーおよびポリマーブレンド物の熱可塑性特性の利用等;3)結合レジン,例えばスターチ、カゼイン、セルロース誘導体、または合成レジン,例えばアクリルラテックスまたはウレタンの使用;4)粉末接着剤バインダー;または5)これらの組合せによって一緒に保持できる。不織布中の繊維は、しばしばランダム様式で堆積させるが、1方向に配向させることが可能であり、続いて上記の方法のうち1つを用いて結合する。
【0110】
本発明は、衣服、カーテン、張り地およびユニフォームにおいて利用できる不織布を製造する。不織布は、パーソナルケア製品,例えば、これらに限定するものではないが、ワイプ、女性用衛生製品、ベビー用おむつ、トレーニングパンツ、大人用失禁用ブリーフ、ならびに病院用/外科用および他の医療用消耗品,例えば、これらに限定するものではないが、外科用ガウン、ガーゼ、包帯等において利用することもできる。他の用途としては、これらに限定するものではないが、複層不織布、ラミネートおよびコンポジット、保護布および保護層、ジオテキスタイル、工業用ワイプおよびフィルター媒体が挙げられる。更に、繊維状物品としては、種々のパーソナル衛生製品および洗浄製品の置換挿入物を挙げることができる。本発明の繊維状物品は、水分散性であってもそうでなくてもよい他の材料と組合せて結合、ラミネート、付着、または使用できる。繊維状物品,例えば不織布層は、水非分散性材料(例えばポリエチレン)の可撓性プラスチックフィルムまたはバッキングに結合できる。このような組立品は、例えば、使い捨ておむつの1部品として使用できる。
【0111】

以下の例で記載する多成分繊維および不織布を、以下に記載する方法で製造した。0.5メートル幅の不織布の製造が可能なパイロットスケールの2成分スパンボンドラインを用いて多成分繊維を紡糸し、列挙する例で用いる不織布を製造した。スパンボンドラインの単純化したプロセス略図を図1に示す。この方法の具体的な詳細を後に記載する。
【0112】
別個の押出機および紡糸ポンプを用いて水分散性スルホポリエステルおよびPETを2成分紡糸パック内に溶融および計量した。第1の押出機では水分散性スルホポリエステルを溶融および計量し、そして第2の押出機ではPETポリマーを溶融および計量した。このプロセスにおいて、水分散性スルホポリエステルを溶融温度260℃で押出し、そしてPET成分を溶融温度285℃で押出した。総組合せポリマー流は約1.33kg/分であり、2222ホールを有する紡糸口金から各々のダイホールを出る平均ポリマー流速 約0.60グラム/ホール毎分を得た。
【0113】
両ポリマー溶融物流をセグメント化パイ2成分紡糸パック(Hills Inc.,Melbourne,FLにより製造)に入れた。これは最終組合せ溶融物流がセグメント化パイポリマー分布を有する2222多成分繊維の形状になるようにポリマー溶融物を分布させた。丸突出物(lobe)はPET成分を含み、一方これらの丸突出物間の領域は、この繊維紡糸プロセスの間にPETと共押出しされる水分散性スルホポリエステルで構成されている。この紡糸パックにおける紡糸口金は、各々直径0.35ミリメートルの2222のダイホールで構成されていた。
【0114】
圧縮空気を用いるアスピレータ組立品を用いて高速下向きフロー流(これは、紡糸口金から出る押出されたポリマー溶融物流を微細多成分繊維に延伸する)を形成した。本例において、多成分繊維を繊度約1.0〜約1.5デニール毎フィラメント(dpf)または名目フィラメント径約8〜約12ミクロンに紡糸するのに十分な気圧を適用した。
【0115】
延伸した繊維を収集ベルト上に横たえて、不織ウエブの密度(坪量)がベルトの速度および押出し速度によって制御された連続不織ウエブを形成した。典型的な坪量約100〜約150グラム/平方メートルまたは指定のものを有する不織ウエブを例において製造した。
【0116】
圧縮ロールおよび巻上げ部を用いて、セグメント化パイ繊維断面構造を有する多成分繊維の軽く圧縮された不織ウエブのロールを生成した。不織ウエブの圧縮は、カレンダーロールを室温で、不織ウエブを圧密化するのに十分なニップ圧で用いて行ない、これをロール上で操作して更なる処理のために巻戻しできるようにした。
【0117】
前記のプロセスによって製造される不織ウエブを、続いて、5つのハイドロエンタングルヘッドを有するパイロットスケールハイドロエンタングルライン(Fleissner,Engelsbach,Germanyによって製造)を用いてハイドロエンタングルした。例では、種々の数のハイドロエンタングルヘッドおよび例において特定する圧力を用いて、ハイドロエンタングル設備を用いた。ハイドロエンタングル設備は、3つの高圧ハイドロエンタングルヘッドを有しており、これは、不織ウエブが103メッシュスクリーンベルトで支持されて水噴流下を通過するに従って該不織ウエブに接触した。第1のヘッドは予湿潤場所として操作し約30bar水圧のみを用い、一方、ハイドロエンタングルヘッド2および3は、典型的な水圧の約100〜約200barの範囲で操作した。最終の2つのハイドロエンタングルヘッドの水噴流は、ドラム内の減圧を用いて水をハイドロエンタングル噴流からドラム内に引入れることが可能な多孔質表面のハイドロエンタングルドラム上に不織ウエブが搬送されるに従って、該不織ウエブを圧縮した。これらの最終の2つのハイドロエンタングル噴流は約200bar水圧で操作し、そして噴流は、布帛の、第1の3つのハイドロエンタングル噴流によって接触される側部と反対側の側部に接触した。
【0118】
各ハイドロエンタングルヘッドにおいて、ホール間が約0.8mm離れた径約120ミクロンの微細に機械加工されたホールのラインからなる噴流ストリップを挿入した。ハイドロエンタングルへッド内側の噴流ストリップの一方の側の水圧約200barによって水の高速噴流が各ホール内に形成された。これらの高速水噴流により、不織ウエブ中の多成分繊維を、ウエブがハイドロエンタングル噴流下を通るに従ってエンタングルした。操作において、約1200の水噴流を不織ウエブ幅のメートル当たり適用し、そして典型的には、噴流ストリップを通る水流は、約150リットル/分または約0.12リットル/分の、噴流ストリップにおける各ホールを通って流れる水である。ハイドロエンタングルプロセスの間、不織ウエブをハイドロエンタングル噴流下に速度約10メートル/分〜約50メートル/分の範囲で通した。布帛速度を調整して、ハイドロエンタングル処理の程度を変えることができる。ハイドロエンタングルプロセスの間の水の温度は約30℃〜40℃であり、そしてプロセス水の処理(例えば脱イオンまたは脱塩)は何ら行なわなかった。これらの例において用いるハイドロエンタングルプロセス水は、金属イオン量が本質的に低かった。実際、ハイドロエンタングル操作において用いる脱塩は望ましい。
【0119】
これらのプロセスの詳細は、一般的であり、そして以下の例の布帛の製造のために可能な具体的なパイロット設備に当てはまる。記載される条件は限定を意味するものではなく、例において記載される材料を、例において用いる具体的な設備ではなく他の種類の不織布設備を用いてどのように製造できるかを示す役割のものである。
【0120】
例1−不織ウエブの製造
16セグメントのセグメント化パイ構造を有する2成分繊維で構成された不織ウエブは、前記の手順に従って作製した。2成分繊維のうち非水分散性成分は、F53HCグレードのPETポリエステルで、インヘレント粘度約0.53のもの(Eastman Chemical Company,Kingsport,TN,U.S.A.)であり、第2成分としての水分散性スルホポリエステルとともに押出した。水分散性スルホポリエステルは、称号SP05F Lot TP06038931(Eastman Chemical Company)を有し、240℃で1rad/秒剪断速度で測定される溶融粘度約3000ポイズを示した。
【0121】
両ポリマーを、2222ホールを有する紡糸口金を有するセグメント化パイ2成分紡糸パック(Hills Inc.,Melbourne FL)を介し、各ホールを介した総押出し速度約0.6グラム/ホール−分(ghm)で、2種のポリマーを70(PET)対30(スルホポリエステル)の質量比で押出した。溶融繊維押出物を、アスピレータ組立品を用いて延伸し、平均繊維径約9ミクロンの、所望のセグメント化パイポリマー分布を有する繊維を形成した。押出した多成分繊維を形成ベルト上に横たえ、坪量135グラム/平方メートル(gsm)の不織ウエブを製造した。
【0122】
例1の不織ウエブを、カレンダーロール間で室温にてプレスすることにより圧密化した。多成分繊維を、見積もり速度約5000メートル/分超でこのプロセスの間に溶融延伸した。例1の不織ウエブを、無拘束でオーブン内で120℃にて状態調整した時点で、不織ウエブは、多成分繊維の応力のリラックスにより、開始寸法のMD(機台方向)およびCD(横方向)のそれぞれ60%×57%に収縮した。
【0123】
この不織ウエブは、最低限の繊維間結合を有し、そして例1のこの不織ウエブの後続の加工によるハイドロエンタングルされた不織布の製造のためのプレカーサとしての役割を有した。
【0124】
例2
例1の不織ウエブを、高速水噴流で、前記のハイドロエンタングルユニットを用いてハイドロエンタングルした。ハイドロエンタングルプロセスの間、布帛を40メートル/分の速度で機械に通し、一方不織ウエブを、150barの水圧で操作する2つの高圧ハイドロエンタングル噴流に曝露した。不織ウエブを103メッシュスクリーンベルト上に移送するに従って第1の噴流を該不織ウエブに適用し、微細メッシュパターンを該不織ウエブに適用した。減圧下で操作されるハイドロエンタングルドラム上にウエブが支持されるに従って第2のハイドロエンタングル噴流を該ウエブの逆側に適用して、不織布を得た。
【0125】
ハイドロエンタングルプロセスの最終ステップにおいて、湿潤不織布をドラム乾燥機に通し、ここで70℃のエアを、1.4メートル径ドラム内で維持される減圧作用によって不織布に通した。該プロセスにおいて、不織布は、オーブン内での加熱時に一部のみ乾燥し、湿潤状態で出た。不織布のオーブン内の滞留時間を、約5秒間となるよう測った。不織布をコア上に巻取るに従って幾らかかの過剰の水が搾り出され、そして水は乳化されたスルホポリエステルの存在によって濁っており、そして乾燥された時に粘着性の膜を形成したことが注目された。両観察は、スルホポリエステルの幾らかかが、この乾燥ステップの間に乳化したことを示した。
【0126】
ハイドロエンタングルプロセスの間に消費されるエネルギーは、噴流下を通過する不織布の速度に反比例し、より遅い速度は、不織布に適用されるハイドロエンタングルエネルギーの増大に言い換えられる。同様に、適用されるエネルギーは、ハイドロエンタングル噴流場所(この下を不織布が通る)の数に正比例し、ここで各噴流場所によって適用されるハイドロエンタングルエネルギーは水圧の平方根に比例する。これらの関係を用い、不織ウエブに適用されるハイドロエンタングルエネルギーの相対量を比較のために近似できる。例2の本場合において、ハイドロエンタングルエネルギーは値1.0を適宜割り当て、一方後続の例で値は、例2におけるプロセスに対しての、不織ウエブに適用されるハイドロエンタングルエネルギーの増大を表すことになる。
【0127】
例2のハイドロエンタングルされた不織布の坪量は139gsm(乾燥基準)であり、これは、開始不織ウエブの値と同様であり、ハイドロエンタングルの間に除去されたスルホポリエステルは無いか最低限のみであったことを示した。
【0128】
例2の湿潤不織布を3回環境温度の脱イオン水でリンスして、不織布において浸した水相中で乳化したスルホポリエステルを除去した。リンスおよび乾燥の後、柔らかい不織布を回収した。回収された不織布は極めて緩く、限られた強度を示し、そして緩んだ繊維子(fiberson)布表面による毛羽立った(fuzzy)質感を有していた。該不織布はテキスタイル布帛としての限られた有用性を有した。リンスステップの間の質量損失は、29%であり、水分散性スルホポリエステルの不織布からのほぼ完全な除去を示した。
【0129】
例2のこの不織布は、仕上げされた製品としての限られた有用性を有したが、スルホポリエステルが多成分繊維から除去されてPETマイクロ繊維が露出したマイクロ繊維の不織ウエブからなる。例2のこのプレカーサ不織布を更に加工して後続の例5および7の不織布を形成した。
【0130】
例3
例1の不織ウエブを高速水噴流で前記のハイドロエンタングルユニットを用いてハイドロエンタングルした。ハイドロエンタングルプロセスの間、不織ウエブをユニットに10メートル/分の速度で通し、一方不織ウエブを、それぞれ100bar、150bar、200barおよび200barの噴流圧で操作する4つの高圧ハイドロエンタングル噴流に曝露した。不織ウエブを103メッシュスクリーンベルト上に移送するに従って第1の2つの噴流を不織ウエブに適用し、微細メッシュパターンを不織ウエブに適用した。減圧下で操作するハイドロエンタングルドラム上に不織ウエブが支持されるに従って第3および第4のハイドロエンタングル噴流を不織ウエブの逆側に適用して、不織布を得た。
【0131】
ハイドロエンタングルプロセスの最終ステップにおいて、湿潤不織布をドラム乾燥機に通し、ここで70℃のエアを、1.4メートル径ドラム内で維持される減圧作用によって不織布に通した。プロセスにおいて、不織布は、オーブン内での加熱時に一部のみ乾燥し、湿潤状態で出た。不織布のオーブン内の滞留時間を、約18秒間となるよう測った。不織布を巻取るに従って幾らかかの過剰の水が搾り出され、そして水は乳化されたスルホポリエステルの存在によって濁っていたことが注目された。乳化されたスルホポリエステルは、乾燥された時に不織布上に粘着性の膜も形成した。
【0132】
ハイドロエンタングルプロセスの間に消費されるエネルギーは、噴流下を通過する不織布の速度に反比例し、より遅い速度は、不織布に適用されるハイドロエンタングルエネルギーの増大に言い換えられる。同様に、適用されるエネルギーは、ハイドロエンタングル噴流場所(この下を不織布が通る)の数に正比例し、ここで各噴流場所によって適用されるハイドロエンタングルエネルギーは水圧の平方根に比例する。これらの関係を用い、例2に対する、例3のこの不織ウエブに適用されるハイドロエンタングルエネルギーの相対量を比較のために算出した。本場合において、ハイドロエンタングルエネルギーの量は、例2に割り当てられるベース値の8.3倍の大きさの値であった。例3においてハイドロエンタングルの程度がより高いことは、用いたハイドロエンタングル噴流の数が2倍であることと、1/4プロセスライン速度がハイドロエンタングル噴流下の4倍の滞留時間を与えたことによる。
【0133】
例3のハイドロエンタングルされた不織布の坪量は136gsmであり、これは、例1の開始不織ウエブの値と同様であり、そしてハイドロエンタングルの間に除去されたスルホポリエステルは無いか最低限のみであったことを示した。
【0134】
例3の湿潤不織布を3回環境温度の脱イオン水でリンスして、不織布における浸した水相中で乳化したいずれのスルホポリエステルも除去した。リンスおよび乾燥の後、柔らかい不織布を回収した。質量損失約28%が観察され、本質的に全てのスルホポリエステルの不織布からの除去を示した。この不織布は極めて可撓性で、良好な強度を示したが、緩んだ表面繊維による毛羽立った表面質感を有していた。例3のこのプレカーサ布帛を更なる加工のために用いて後続の例6および9の布帛を形成した。
【0135】
例4
例2の湿潤不織布を、布帛中の多成分繊維の多くの追加的なエンタングルを適用することなくスルホポリエステルを不織布から除去するために接触させる最低限の水を用いて、前記のハイドロエンタングルユニットに通した。例2に示すように、不織布中のスルホポリエステルは、多成分繊維よりも吸収水相中に存在することが見出され、そして単純な水リンスが、スルホポリエステルを不織布から除去することが見出された。不織布を、ハイドロエンタングルユニットに50メートル/分の速度で通し、一方不織布を、100bar圧力で操作する単一高圧ハイドロエンタングル噴流に曝露した。プロセスの間の水の温度は約20℃であった。
【0136】
例4の布帛を環境温度で乾燥させ、続いて50℃で脱イオン水中で洗浄し、例4のプロセスの単一水噴流では除去されなかった不織布中の残留スルホポリエステルの量を算出した。3.0%のみの質量損失が、例4の不織布の洗浄後に測定され、例2の不織布中のスルホポリエステルの約90質量%がこの単一ヘッドハイドロエンタングルステップで除去されたことを示した。単一水ヘッドは、不織布中のスルホポリエステルのバルクの除去のために有効であり、そして除去は、温度がより高い場合、好ましくは約40℃〜約50℃の範囲である場合、スルホポリエステルの除去に対してより効率的であった。
【0137】
例5
例2のプレカーサ不織布を、前記のように高速水噴流でハイドロエンタングルユニットを用いて更にハイドロエンタングルした。この後続の第2のハイドロエンタングルステップの間、例2のプレカーサ不織布を、ハイドロエンタングルユニットに、速度10メートル/分で通し、そして、噴流圧力それぞれ130bar、150bar、200barおよび200barで操作する4つの高圧ハイドロエンタングル噴流に曝露した。Charleston,SCのAsten Johnsonから得られる61メッシュスクリーンベルト上に不織布を移送するに従って第1の2つの噴流を不織布に適用し、微細メッシュパターンを不織ウエブに適用した。減圧下で操作するハイドロエンタングルドラム上に不織布が支持されるに従って第3および第4のハイドロエンタングル噴流を不織布の逆側に適用した。
【0138】
前記の関係を用い、例2のプロセスに対する、例5のプロセスにおけるこの不織布に適用されるハイドロエンタングルエネルギーの相対量を比較のために算出した。例5におけるハイドロエンタングルエネルギーの量は、例2に割り当てられるベース値1の8.5倍の大きさの値である。例2および5の組合せプロセスにおいて不織布に適用される全ハイドロエンタングルエネルギーの量は、例2のみのプロセスにおいて適用されるハイドロエンタングルエネルギーの約9.5倍の値である。この布帛は、表面上の緩んだ繊維がなく極めて良好な繊維エンタングルを示した。この布帛は、良好な平滑表面質感を示した。
【0139】
例6
例3のプレカーサ不織布を、高速水噴流でハイドロエンタングルユニットを用いて更にハイドロエンタングルした。この第2のハイドロエンタングルステップの間、不織布をハイドロエンタングルユニットに速度10メートル/分で通し、一方不織布を噴流圧力それぞれ130bar、150bar、200barおよび200barで操作する4つの高圧ハイドロエンタングル噴流に曝露した。Asten Johnsonから得られる61メッシュスクリーンベルト上に移送するに従って第1の2つの噴流を例3の不織布に適用し、メッシュパターンを布帛に適用した。減圧下で操作するハイドロエンタングルドラム上に不織布が支持されるに従って第3および第4のハイドロエンタングル噴流を不織布の逆側に適用した。
【0140】
前記の関係を用い、例2のプロセスに対する、例6のプロセスにおけるこの不織布に適用されるハイドロエンタングルエネルギーの相対量を比較のために算出した。例6におけるハイドロエンタングルエネルギーの量は、例2に割り当てられる任意値1の8.5倍の大きさの値である。例3および6の組合せプロセスにおいて不織布に適用される全ハイドロエンタングルエネルギーの量は、例2のみのプロセスにおいて適用されるハイドロエンタングルエネルギーの約16.8倍の値である。
【0141】
この布帛は、表面上の緩んだ繊維がなく極めて良好な繊維エンタングルを示した。この布帛は、良好な平滑表面質感を示した。
【0142】
例7
例2のプレカーサ不織布を、高速水噴流でハイドロエンタングルユニットを用いて更にハイドロエンタングルした。この第2のハイドロエンタングルステップの間、不織布をハイドロエンタングルユニットに速度10メートル/分で通し、一方不織布を噴流圧力それぞれ130bar、150bar、200barおよび200barで操作する4つの高圧ハイドロエンタングル噴流に曝露した。Albany,NYのAlbany Internationalから得られるFormtec 14(14メッシュスクリーン)ベルト上に移送するに従って第1の2つの噴流を不織布に適用し、粗いメッシュパターンを不織布に適用した。例5の布帛と例7の布帛との間の差異は用いた形成ベルトであり、例7におけるベルトは、例5の布帛と比べ、より粗いバスケット織外観を布帛表面に与える。減圧下で操作するハイドロエンタングルドラム上に不織布が支持されるに従って第3および第4のハイドロエンタングル噴流を不織布の逆側に適用した。
【0143】
前記の関係を用い、例2のプロセスに対する、例7のプロセスにおけるこの不織布に適用されるハイドロエンタングルエネルギーの相対量を比較のために算出した。例7におけるハイドロエンタングルエネルギーの量は、例2に割り当てられる任意値1の8.5倍の大きさの値である。例2および7の組合せプロセスにおいて不織布に適用される全ハイドロエンタングルエネルギーの量は、例2のみのプロセスにおいて適用されるハイドロエンタングルエネルギーの約9.5倍の値である。
【0144】
この布帛は、表面上の緩んだ繊維がなく極めて良好な繊維エンタングルを示した。この布帛は、良好な平滑表面質感を示した。
【0145】
例8
例5の不織布を、布帛片を拘束フレーム上に置いて不織布を強制換気オーブン内で130℃にて5分間の状態調整時間で状態調整することにより熱セットした。拘束フレームは14インチ×14インチのフレームで、フレームの外周の周りにピンを有し、ピン間が1/2インチ間隔であるものであった。ピンの拘束作用により、加熱時の不織布の収縮を防止した。高温での状態調整により、繊維中の応力をリラックスさせた。
【0146】
この布帛は、表面上の緩んだ繊維がなく極めて良好な繊維エンタングルを示した。布帛は良好な平滑表面質感を示した。
【0147】
例9
例6の布帛を、不織布片を拘束フレーム上に置いて不織布を強制換気オーブン内で130℃にて5分間の状態調整時間で状態調整することにより熱セットした。拘束フレームは14インチ×14インチのフレームで、フレームの外周の周りにピンを有し、ピン間が1/2インチ間隔であるものであった。ピンの拘束作用により、加熱時の不織布の収縮を防止した。高温での状態調整により、繊維中の応力をリラックスさせた。
【0148】
この布帛は、表面上の緩んだ繊維がなく極めて良好な繊維エンタングルを示した。この布帛は良好な平滑表面質感を示した。
【0149】
例10
例7の不織布を、不織布片を拘束フレーム上に置いて不織布を強制換気オーブン内で130℃にて5分間の状態調整時間で状態調整することにより熱セットした。拘束フレームは14インチ×14インチのフレームで、フレームの外周の周りにピンを有し、ピン間が1/2インチ間隔であるものであった。ピンの拘束作用により、加熱時の不織布の収縮を防止した。高温での状態調整により、繊維中の応力をリラックスさせた。
【0150】
この布帛は、表面上の緩んだ繊維がなく極めて良好な繊維エンタングルを示した。この布帛は良好な平滑表面質感を示した。
【0151】
比較例1
例1の布帛を、高速水噴流で、前記のハイドロエンタングルユニットを用いてハイドロエンタングルした。ハイドロエンタングルプロセスの間、布帛を10メートル/分の速度で機械に通し、一方不織ウエブを、噴流圧力それぞれ100bar、150bar、200barおよび200barで操作する4つの高圧ハイドロエンタングル噴流に曝露した。103メッシュスクリーンベルト上に移送するに従って第1の2つの噴流を布帛に適用し、微細メッシュパターンを布帛に適用した。減圧下で操作するハイドロエンタングルドラム上に不織ウエブが支持されるに従って第3および第4のハイドロエンタングル噴流を不織ウエブの逆側に適用した。
【0152】
ハイドロエンタングルプロセスの最終ステップにおいて、湿潤布帛をドラム乾燥機に通し、ここで70℃のエアを、1.4メートル径ドラム内で維持される減圧作用によって布帛に通した。プロセスにおいて、布帛は、オーブン内での加熱時に一部のみ乾燥し、湿潤状態で出た。布帛のオーブン内の滞留時間を、約18秒間となるよう測った。布帛をコア上に巻取るに従って幾らかかの過剰の水が搾り出され、そして水は幾らかかのスルホポリエステルの乳化を示して濁っていたことが注目された。
【0153】
このハイドロエンタングルステップによって形成した布帛を、脱イオン水中45℃で、および家庭用洗浄機内で高温水(48℃)を用いてのサイクルの両者でリンスした。布帛は、表面上の多数の緩んだ繊維を伴う高度にしわになった外観を有していた。布帛中の表面繊維の緩んだ性質により、布帛は極めて「粘着性の(tacky)」または「粘りつく(clingy)」ものであり、そしてテキスタイル用途に望ましくないものであった。
【0154】
比較例2
比較例1の不織布を、布帛片を拘束フレーム上に置いて不織布を強制換気オーブン内で130℃にて5分間の状態調整時間で状態調整することにより熱セットした。拘束フレームは14インチ×14インチのフレームで、フレームの外周の周りにピンを有し、ピン間が1/2インチ間隔であるものであった。ピンの拘束作用により、加熱時の不織布の収縮を防止した。高温での状態調整により、繊維中の応力をリラックスさせた。
【0155】
この布帛は、表面上の緩んだ繊維を示し、表面上の過度の量の緩んだ繊維により「粘着性」または「粘りつく」感触を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を製造する方法であって:
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと少なくとも1種の水非分散性ポリマーとを含む多成分繊維であって、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記ドメインが前記ドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成すること;
(B)前記水分散性スルホポリエステルの部分を除去するのに十分な温度および圧力で前記不織ウエブを水と接触させることによってマイクロ繊維ウエブを形成すること;ならびに
(C)前記マイクロ繊維ウエブをハイドロエンタングルすることにより前記不織布を生成すること;
を含む、方法。
【請求項2】
前記スルホポリエステルが、ジカルボン酸モノマー残基、スルホモノマー残基、ジオールモノマー残基および繰り返し単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジカルボン酸が、脂肪族二塩基酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸およびこれらの組合せから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、オキシ二酢酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、イソフタル酸およびこれらの組合せから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スルホモノマーが、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸またはこれらの組合せの金属スルホネート塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ジオール残基が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルへキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオールおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記スルホポリエステルが、少なくとも1種の分岐用モノマーを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記分岐用モノマーが、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸またはこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水非分散性ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルおよびこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記多成分繊維の成形断面が、海中島構造、セグメント化パイ構造または鞘芯構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記スルホポリエステルのガラス転移温度(Tg)が少なくとも57℃であり、前記水分散性スルホポリエステルが:
(i)1種以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基と芳香環または脂環式環に付いた1つ以上のスルホネート基とを有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;
(iii)1種以上のジオール残基であって、総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である、ジオール残基;ならびに
(iv)総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;を含み、
前記繊維が、前記水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、そして前記セグメントが、前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に分離している、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記スルホポリエステルの溶融粘度が、240℃および1ラジアン/秒の剪断速度で測定したときに12,000ポイズ未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スルホポリエステルの溶融粘度が、240℃および1ラジアン/秒の剪断速度で測定したときに6,000ポイズ未満である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スルホポリエステルの溶融粘度が、240℃および1ラジアン/秒の剪断速度で測定したときに4,000ポイズ未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記纏めることを、機械的穿刺、化学的結合、熱的カレンダー、超音波融合、およびハイドロエンタングルからなる群から選択される少なくとも1つの方法により実現させる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記纏めることを、ハイドロエンタングルにより実現させ、前記ハイドロエンタングルステップにおけるハイドロエンタングルエネルギーが、ステップ(C)において消費されるハイドロエンタングルエネルギーの量の約20%〜約50%を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多成分繊維を、スパンボンド法またはメルトブロー法により製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記不織ウエブの質量が、約10グラム/m2〜約800グラム/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記不織ウエブの質量が、約10グラム/m2〜約400グラム/m2の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記不織ウエブの質量が、約50グラム/m2〜約150グラム/m2の範囲である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記水分散性スルホポリエステルの抽出温度が、約20℃〜約100℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(B)の間の水の圧力が、約30bar〜約600barの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(B)の間の水の圧力が、約50bar〜約300barの範囲である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(B)において、前記不織ウエブ中に含まれる水分散性スルホポリエステル全体のうち約30質量%〜約100質量%を除去するのに十分な時間、前記不織ウエブを水と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(B)において、前記不織ウエブから水分散性スルホポリエステル全体のうち90質量%超を除去するのに十分な時間、前記不織ウエブを水と接触させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(B)において、前記不織ウエブから水分散性スルホポリエステル全体のうち95質量%超を除去するのに十分な時間、前記不織ウエブを水と接触させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記不織ウエブを、約10〜約600秒の時間水と接触させることによって、前記水分散性スルホポリエステルを消失または溶解させる、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
マイクロ繊維ウエブ中のマイクロ繊維が、前記多成分繊維のデニールの30%未満の平均繊度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記マイクロ繊維ウエブ中の前記マイクロ繊維の平均繊度が、1dpf以下である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記マイクロ繊維ウエブ中の前記マイクロ繊維の平均繊度が、0.5dpf以下である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(B)において、水噴流を用いて前記不織ウエブを水と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
1〜8の水噴流ヘッドを用いる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(B)において使用する水の量が、前記不織ウエブの約500質量倍〜約1000質量倍の範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(B)およびステップ(C)からの洗浄水が再利用可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
洗浄水の80%以上を再利用する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(C)における水の温度が40℃未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(C)における水の圧力が約150bar〜約250barの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(C)において、水分散性スルホポリエステルの1質量%未満を前記マイクロ繊維ウエブから除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(C)において、水分散性スルホポリエステルの0.5質量%未満を前記マイクロ繊維ウエブから除去する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ステップ(C)において、水分散性スルホポリエステルの0.1質量%未満を前記マイクロ繊維ウエブから除去する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(C)における前記ハイドロエンタングルを、水噴流ヘッドによって行なう、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
水噴流ヘッドの数が1〜約20である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
不織布を製造する方法であって:
(A)少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと少なくとも1種の水非分散性ポリマーとを含む多成分繊維であって、前記水非分散性ポリマーを含む複数のドメインを有し、前記ドメインが前記ドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルによって互いに実質的に分離されている、多成分繊維を纏めて不織ウエブを形成すること;ならびに
(B)前記スルホポリエステルの部分を除去するのに十分な温度および圧力で前記不織ウエブを水と接触させることによってマイクロ繊維を形成し、同時に前記マイクロ繊維をハイドロエンタングルして前記不織布を生成すること;
を含む、方法。
【請求項44】
前記スルホポリエステルが、ジカルボン酸モノマー残基、スルホモノマー残基、ジオールモノマー残基および繰り返し単位を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記ジカルボン酸が、脂肪族二塩基酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸およびこれらの組合せから選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ジカルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、オキシ二酢酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、イソフタル酸およびこれらの組合せから選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記スルホモノマーが、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸またはこれらの組合せの金属スルホネート塩である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記ジオール残基が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(エチレン)グリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルへキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、p−キシリレンジオールおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記スルホポリエステルが、少なくとも1種の分岐用モノマーを更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記分岐用モノマーが、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、スレイトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ジメチロールプロピオン酸またはこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記水非分散性ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルおよびこれらの組合せから選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
前記多成分繊維の成形断面が、海中島構造、セグメント化パイ構造または鞘芯構造である、請求項43に記載の方法。
【請求項53】
前記スルホポリエステルのガラス転移温度(Tg)が少なくとも57℃であり、前記水分散性スルホポリエステルが:
(i)1種以上のジカルボン酸の残基;
(ii)総繰り返し単位基準で約4〜約40モル%の、2つの官能基と芳香環または脂環式環に付いた1つ以上のスルホネート基とを有する少なくとも1種のスルホモノマーの残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;
(iii)1種以上のジオール残基であって、総ジオール残基基準で少なくとも25モル%が、構造
H−(OCH2−CH2n−OH
(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を有するポリ(エチレングリコール)である、ジオール残基;ならびに
(iv)総繰り返し単位基準で0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を有する分岐用モノマーの残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せである、残基;を含み、
前記繊維が、前記水非分散性ポリマーを含む複数のセグメントを有し、そして前記セグメントが、前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルによって互いに実質的に分離している、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
前記スルホポリエステルの溶融粘度が、240℃および1ラジアン/秒の剪断速度で測定したときに12,000ポイズ未満である、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
前記スルホポリエステルの溶融粘度が、240℃および1ラジアン/秒の剪断速度で測定したときに6,000ポイズ未満である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記スルホポリエステルの溶融粘度が、240℃および1ラジアン/秒の剪断速度で測定したときに4,000ポイズ未満である、請求項56に記載の方法。
【請求項57】
前記纏めることを、機械的穿刺、化学的結合、熱的カレンダー、超音波融合、およびハイドロエンタングルからなる群から選択される少なくとも1つの方法により実現させる、請求項43に記載の方法。
【請求項58】
前記纏めることを、ハイドロエンタングルにより実現させ、前記ハイドロエンタングルステップにおけるハイドロエンタングルエネルギーが、ステップ(C)において消費されるハイドロエンタングルエネルギーの量の約20%〜約50%を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記多成分繊維を、スパンボンド法またはメルトブロー法により製造する、請求項43に記載の方法。
【請求項60】
前記不織ウエブの質量が、約10グラム/m2〜約800グラム/m2の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項61】
前記不織ウエブの質量が、約10グラム/m2〜約400グラム/m2の範囲である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記不織ウエブの質量が、約50グラム/m2〜約150グラム/m2の範囲である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記水分散性スルホポリエステルの抽出温度が、約20℃〜約100℃の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項64】
ステップ(B)の間の水の圧力が、約30bar〜約600barの範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項65】
ステップ(B)の間の水の圧力が、約50bar〜約300barの範囲である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
ステップ(B)において、前記不織ウエブ中に含まれる水分散性スルホポリエステル全体のうち約30質量%〜約100質量%を除去するのに十分な時間、前記不織ウエブを水と接触させる、請求項43に記載の方法。
【請求項67】
ステップ(B)において、前記不織ウエブから水分散性スルホポリエステル全体のうち90質量%超を除去するのに十分な時間、前記不織ウエブを水と接触させる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
ステップ(B)において、前記不織ウエブから水分散性スルホポリエステル全体のうち95質量%超を除去するのに十分な時間、前記不織ウエブを水と接触させる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記不織ウエブを、約10〜約600秒の時間水と接触させることによって、前記水分散性スルホポリエステルを消失または溶解させる、請求項43に記載の方法。
【請求項70】
マイクロ繊維ウエブ中のマイクロ繊維が、前記多成分繊維のデニールの30%未満の平均繊度を有する、請求項43に記載の方法。
【請求項71】
前記マイクロ繊維ウエブ中の前記マイクロ繊維の平均繊度が、1dpf以下である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記マイクロ繊維ウエブ中の前記マイクロ繊維の平均繊度が、0.5dpf以下である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
ステップ(B)において、水噴流を用いて前記不織ウエブを水と接触させる、請求項43に記載の方法。
【請求項74】
1〜8の水噴流ヘッドを用いる、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ステップ(B)において使用する水の量が、前記不織ウエブの約500質量倍〜約1000質量倍の範囲である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
ステップ(B)およびステップ(C)からの洗浄水が再利用可能である、請求項43に記載の方法。
【請求項77】
洗浄水の80%以上を再利用する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
ステップ(C)における水の温度が40℃未満である、請求項43に記載の方法。
【請求項79】
ステップ(C)における水の圧力が約150bar〜約250barの範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項80】
ステップ(C)において、水分散性スルホポリエステルの1質量%未満を前記マイクロ繊維ウエブから除去する、請求項43に記載の方法。
【請求項81】
ステップ(C)において、水分散性スルホポリエステルの0.5質量%未満を前記マイクロ繊維ウエブから除去する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
ステップ(C)において、水分散性スルホポリエステルの0.1質量%未満を前記マイクロ繊維ウエブから除去する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
ステップ(C)における前記ハイドロエンタングルを、水噴流ヘッドによって行なう、請求項43に記載の方法。
【請求項84】
水噴流ヘッドの数が1〜約20である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記不織布が熱セットされる、請求項1または43に記載の方法。
【請求項86】
請求項1または43に記載の方法により製造される不織布であって、前記不織布が、以下の最終用途:衣服、カーテン、張り地、ユニフォーム、パーソナルケア製品、病院用/外科用および他の医療用消耗品、複層不織布、ラミネートおよびコンポジット、保護布および保護層、ジオテキスタイル、工業用ワイプ、ならびにフィルター媒体;のうち少なくとも1つにおいて用いられる、不織布。

【公表番号】特表2010−514957(P2010−514957A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544837(P2009−544837)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/025770
【国際公開番号】WO2008/085332
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】