説明

スルホンアミドオニウム塩の製造方法

【課題】
スルホンアミドからスルホンアミドアルカリ金属塩を経由してスルホンアミドオニウム塩を製造する方法は、スルホンアミドアルカリ金属塩の収率が低く、工業的なスルホンアミドオニウム塩の製造方法ではなかった。
【解決手段】
スルホンアミドを、水酸化アルカリ金属と反応させる第1工程を含む、一般式(2)
【化】


で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩の製造方法。
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数5以上の脂環式基または置換基を有していてもよい炭素数2以上の末端に重合性不飽和基を有する基であり、Xは2価の連結基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mはアルカリ金属イオンである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工技術、特にフォトリソグラフィーの光酸発生剤として有用なスルホンアミドオニウム塩およびその前駆体であるスルホンアミドアルカリ金属塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。その背景には、フォトリソグラフィーのパターン微細化を可能にした化学増幅レジスト材料の開発がある。これは、放射線の照射(以下、「露光」という。)により酸を形成する感放射線性酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という)を含有し、露光により発生した酸を触媒とする反応により、露光部の現像液に対する溶解度を変化させてパターンを形成するパターン形成材料である。
【0003】
このような化学増幅型レジスト材料に用いられる光酸発生剤に関しては種々の検討がなされてきた。その中でスルホンアミドオニウム塩骨格を有した光酸発生剤が開発された(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
骨格となるスルホンアミドオニウム塩の製造方法に関しては、トリフルオロメタンスルホンアミドと1−アダマンタンカルボニルクロリドを炭酸ナトリウムの存在下反応させて、一旦スルホンアミドのナトリウム塩としてからオニウム塩に変換する方法(特許文献1)や、スルホンアミドを炭酸水素ナトリウムにより一旦ナトリウム塩としてからイオン交換樹脂を使用してオニウム塩にイオン交換する方法が知られていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−191055号公報
【特許文献2】国際公開2010/119910号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法は、アミド化反応によりスルホンアミドの骨格を形成する反応と得られたスルホンアミドをナトリウム塩にするナトリウム塩化反応を単一の処理で実施しているとはいえ、スルホンアミドナトリウム塩の収率は65%であり、必ずしも満足できるレベルではない。また、特許文献2の方法では、スルホンアミドを一旦ナトリウム塩に変換するナトリウム塩化反応の収率は記載されていないが、オニウム塩化反応において、取り扱いが煩雑なイオン交換樹脂を使用している上、ナトリウム塩基準でのオニウム塩化反応の収率は16%と低い。
【0007】
これらから明らかな様に、スルホンアミドナトリウム塩を経由してスルホンアミドオニウム塩を製造する方法は、スルホンアミドナトリウム塩の収率が低く、工業的なスルホンアミドオニウム塩の製造方法とはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねたところ、スルホンアミドをそのナトリウム塩に転換する際に水酸化ナトリウムを用いることで、スルホンアミドナトリウム塩を高収率かつ高純度で得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
特許文献1および特許文献2の教示に従えば、スルホンアミドのナトリウム塩を得るには炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムなどの弱酸のナトリウム塩が好適である。しかしながら、これらのナトリウム塩を使用してスルホンアミドをナトリウム塩化すると、反応率が低いため収率が低く、また、未反応のスルホンアミドとの分離が困難で高純度品を得ることができなかった。
【0010】
ところが、塩基条件において易分解性のスルホンアミド結合(−NH−SO−)を有するトリフルオロメタンスルホンアミドに敢えて弱塩基ではなく強塩基のナトリウムの水酸化物を使用してナトリウム塩化し、引き続きワンポットでオニウム塩交換したところ、意外にも、スルホンアミド結合の著しい開裂が起こらないことを見出し、さらに、十分に低い温度で反応させると実質的に副生物等の不純物を含まず、しかもスルホンアミドオニウム塩を高収率で得られることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0012】
[発明1]
下記一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
で表されるスルホンアミドを、水酸化アルカリ金属と反応させる第1工程を含む、一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩の製造方法。
【0017】
(各式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数5以上の脂環式基または置換基を有していてもよい炭素数2以上の末端に重合性不飽和基を有する基であり、Xは2価の連結基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mはアルカリ金属イオンである。)
[発明2]
水酸化アルカリ金属が、水酸化ナトリウムである発明1。
【0018】
[発明3]
第1工程の反応を水を含む有機溶媒中において行う発明1または2。
【0019】
[発明4]
第1工程の反応を−10〜40℃において行う発明1〜3。
【0020】
[発明5]
発明1〜4で得られたスルホンアミドアルカリ金属塩を、一般式(4)で表される一価のオニウム塩
(4)
によりオニウム塩交換する第2工程を含む、一般式(3)
【0021】
【化3】

【0022】
で表されるスルホンアミドオニウム塩の製造方法。
【0023】
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数5以上の脂環式基または置換基を有していてもよい炭素数2以上の末端に重合性不飽和基を有する基であり、Xは2価の連結基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Zは1価のアニオンであり、Aは下記一般式(a)で表されるスルホニウムカチオンもしくは下記一般式(b)で示されるヨードニウムカチオンである。)
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、R、RおよびRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基もしくはオキソアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基もしくはアリールオキソアルキル基を表すか、またはR、RおよびRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、RおよびRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基もしくはオキソアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基もしくはアリールオキソアルキル基を表すか、またはRおよびRが相互に結合して式中のヨウ素原子と共に環を形成してもよい。)
[発明6]
第1工程で得られたスルホンアミドアルカリ金属塩を単離することなく、第2工程を実施する発明5。
【発明の効果】
【0028】
本発明の製造方法は、スルホンアミドアルカリ金属塩を高収率で得ることができ、また、得られたスルホンアミドアルカリ金属塩を用いると高純度のスルホンアミドオニウム塩を簡便に、収率よく製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、第1工程(アルカリ金属塩化工程)として第1の目的物であるスルホンアミドアルカリ金属塩を製造する工程を含むスルホンアミドオニウム塩の製造方法であり、また、さらに第2工程(オニウム塩化工程)としてスルホンアミドオニウム塩を製造する工程を含むスルホンアミドオニウム塩の製造方法である。第1工程で得られた反応生成物を含む反応器内容物全体を用いて第2工程を行う、ワンポット製造法を行うこともできる。
【0030】
本発明の各反応工程(アルカリ金属塩化工程、オニウム塩化工程)は、連続法、半連続法またはバッチ式において行うことができる。バッチ式反応装置において実施することが簡便であり、好ましい。以下にその詳細について述べるが、当業者がその記載に基づいて容易に反応条件、操作条件等を調節しうる範囲は本発明の範囲に属する。
【0031】
本発明の出発原料であるスルホンアミドについて説明する。該スルホンアミドは下記一般式(1)で表される。
【0032】
【化6】

【0033】
[Rは置換基を有していてもよい炭素数5以上の脂環式基または置換基を有していてもよい炭素数2以上の末端に重合性不飽和基を有する基であり、Xは2価の連結基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基である。]
の脂環式基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。ここで「脂環式基」とは、芳香族性を持たない単環式基または多環式基を意味する。炭素数は好ましくは5〜30であり、より好ましくは5〜15である。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0034】
脂環式基の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
【0035】
炭素数5以上の脂環式基としては、例えば、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0036】
なかでも、本発明におけるRとしては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることが好ましく、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
【0037】
の「末端に重合性不飽和基を有する基」とは、重合してポリマーを形成する能力を有する二重結合、三重結合などを末端に有する官能基を意味する。また、炭素数は好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜15である。
【0038】
の末端に重合性不飽和基を有する基は、鎖状の炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0039】
として、具体的には、例えば、ビニル基、1−メチルエテニル基、アリル基、3−ブテニル基、1-メチルアリル基、2-メチルアリル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等を例示することができる。
【0040】
式(1)中、Yは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基、又はアリーレン基である。
【0041】
直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。
【0042】
直鎖状のアルキレン基としては、具体的には、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]、テトラメチレン基[−(CH−]、ペンタメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
【0043】
分岐鎖状のアルキレン基としては、具体的には、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH)−、−C(CH)(CHCHCH)−、−C(CHCH−等のアルキルメチレン基;−CH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CHCH−、−CH(CHCH)CH−、−C(CHCH−CH−等のアルキルエチレン基;−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH)CHCHCH−、−CHCH(CH)CHCH−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0044】
環状のアルキレン基としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。また、「環状のアルキレン基」は、環骨格単独で連結する場合の他、前述した鎖状のアルキレン基の末端に結合するか又は鎖状のアルキレン基の途中に環が介在する基を包含する。
【0045】
環状のアルキレン基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0046】
Yのアリーレン基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、1価の芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた2価の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等で、かつ、その芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0047】
なかでも本発明におけるYとしては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基またはテトラメチレン基であることがより好ましい。
【0048】
式(1)中、Xは2価の連結基である。
【0049】
Xの2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(より好ましくは置換基を有する2価の炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
【0050】
該炭化水素基が「置換基を有する」とは、該炭化水素基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の基または原子で置換されていることを意味する。
【0051】
該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
【0052】
該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
【0053】
Xの炭化水素基における、前記脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素基、または構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。具体的には、Yについて挙げた直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基またはYについて挙げた直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基の組み合わせが挙げられる。
【0054】
鎖状または環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有することが好ましく、該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0055】
Xの炭化水素基における、前記芳香族炭化水素基としては、具体的には、Yについて上述したアリーレン基が挙げられる。また、さらにXの場合、前記2価の芳香族炭化水素基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された芳香族炭化水素基も好ましく挙げられる。
【0056】
芳香族炭化水素基は、置換基により炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部が置換されていることが好ましい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0057】
Xの「ヘテロ原子を含む2価の連結基」におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外原子であり、たとえば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0058】
ヘテロ原子を含む2価の連結基として、具体的には、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)、−NH−、−NR04(R04はアルキル基)−、−NH−C(=O)−、=N−等が挙げられる。また、これらの「ヘテロ原子を含む2価の連結基」と2価の炭化水素基との組み合わせ等が挙げられる。2価の炭化水素基としては、Xについて上述した「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」が挙げられ、直鎖状、分岐鎖状または構造中に環を含む脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0059】
Xは、その構造中に酸解離性部位を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0060】
「酸解離性部位」とは、当該有機基内における、露光により発生する酸が作用して解離する部位をいう。Xが酸解離性部位を有する場合、好ましくは第三級炭素原子を有する酸解離性部位を有することが好ましい。
【0061】
本発明において、Xとしては、へテロ原子を含む2価の連結基が好ましい。
【0062】
Xがヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、該連結基として好ましいものとして、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、一般式−A−O−、−O−A−O−、−[A−C(=O)−O]−または−A−O−C(=O)−で表される基[式中、Aは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、mは0〜3の整数である。]等が挙げられる。
【0063】
一般式−A−O−、−O−A−O−、−[A−C(=O)−O]−、又は−A−O−C(=O)−中、Aは、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、Xについて上述した「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」として挙げたものが挙げられる。
【0064】
Aとしては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
【0065】
一般式−[A−C(=O)−O]−で表される基において、mは0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が最も好ましい。
【0066】
ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、ヘテロ原子として酸素原子または窒素原子を有する直鎖状の基、例えばエーテル結合、エステル結合、アミド結合を含む基が好ましく、前記式−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−で表される基がより好ましい。
【0067】
一般式(1)中、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基である。
【0068】
Rfのフッ素原子を含む炭化水素基としては、炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された基が挙げられる。ここで炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基は、飽和であっても不飽和であっても、鎖状であっても環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族飽和炭化水素基(アルキル基)であることが好ましい。
【0069】
水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3がさらに好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された基が挙げられる。
【0070】
水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換された分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された基が挙げられる。
【0071】
なかでもRfとしては、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された基であることが好ましく、直鎖状のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、又はノナフルオロプロピル基であることがさらに好ましい。
【0072】
以下に一般式(1)で表されるスルホンアミドの具体例を例示する。
【0073】
【化7】

【0074】
【化8】

【0075】
次いで第1工程(アルカリ金属塩化工程)により得られる、スルホンアミドアルカリ金属塩について説明する。該スルホンアミドアルカリ金属塩は下記一般式(2)で表される。
【0076】
【化9】

【0077】
前記一般式(2)において、R、X、Y、Rfは一般式(1)におけるR、X、Y、Rfと同義である。Mはアルカリ金属イオンである。具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン又はリチウムイオンであることがより好ましく、ナトリウムイオンであることが特に好ましい。
【0078】
第2工程(オニウム塩化工程)により得られる、スルホンアミドオニウム塩について説明する。該スルホンアミドオニウム塩は下記一般式(3)で表される。
【0079】
【化10】

【0080】
前記一般式(3)において、R、X、Y、Rfは一般式(1)におけるR、X、Y、Rfと同義である。Aは下記一般式(a)で表されるスルホニウムカチオンもしくは下記一般式(b)で示されるヨードニウムカチオンである。
【0081】
【化11】

【0082】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し、R、RおよびRのうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよく、R、RおよびRのうち少なくとも1つはアリール基を表す。)
【0083】
【化12】

【0084】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し、RおよびRのうち少なくとも1つはアリール基を表してもよい。)
以下に一般式(a)で表されるスルホニウムカチオンおよび一般式(b)で表されるヨードニウムカチオンについて詳述する。
【0085】
〈一般式(a)で表されるスルホニウムカチオン〉
一般式(a)中、R、RおよびRはそれぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。なお、一般式(a)におけるR、RおよびRはのうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
【0086】
また、R、RおよびRのうち、少なくとも1つはアリール基であることが好ましい。R、RおよびRのうち、2以上がアリール基であることがより好ましく、R、RおよびRのすべてがアリール基であることが最も好ましい。
【0087】
、RおよびRのアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。
【0088】
アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0089】
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
【0090】
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
【0091】
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0092】
、RおよびRのアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
【0093】
一般式(a)におけるR、RおよびRのうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、イオウ原子を含めて3〜10員環を形成していることが好ましく、5〜7員環を形成していることが特に好ましい。
【0094】
一般式(a)におけるRR、RおよびRのうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、残りの1つは、アリール基であることが好ましい。前記アリール基は、前記R、RおよびRのアリール基と同様のものが挙げられる。
【0095】
一般式(a)で表されるカチオン部の好ましいものとしては、下記式(I−1−1)〜(I−1−10)で表されるカチオン部が挙げられる。これらの中でも、式(I−1−1)〜(I−1−9)で表されるカチオン部等の、トリフェニルメタン骨格を有するものが好ましい。
【0096】
下記式(I−1−10)〜(I−1−11)中、R、R10は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基または炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、水酸基である。
【0097】
uは1〜3の整数であり、1または2が最も好ましい。
【0098】
【化13】

【0099】
【化14】

【0100】
また、Aとしては、下記一般式(a−1)又は(a−2)で表される有機カチオンも挙げられる。
【0101】
【化15】

【0102】
[式中、R41〜R46は前記R〜R10と同義であり、n1’〜n5’はそれぞれ独立して0〜3の整数であり、n6’は0〜2の整数である。]
式(a−1)又は(a−2)中、R41〜R46に付された符号n1’〜n6’が2以上の整数である場合、複数のR41〜R46はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0103】
1’は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
【0104】
2’およびn3’は、好ましくはそれぞれ独立して0又は1であり、より好ましくは0である。
【0105】
4’は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
【0106】
5’は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0107】
6’は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。
【0108】
〈一般式(b)で表されるヨードニウムカチオン〉
一般式(b)中、R〜Rは、それぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R〜Rのうち、少なくとも1つはアリール基であるのが好ましい。R〜Rのすべてが、アリール基であることがより好ましい。
【0109】
〜Rのアリール基としては、R、RおよびRのアリール基と同様のものが挙げられる。
【0110】
〜Rのアルキル基としては、R、RおよびRのアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0111】
これらの中で、R〜Rは、すべてフェニル基であることが最も好ましい。
【0112】
具体的なヨードニウムカチオンとしては、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−エチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−(1,1−ジメチルプロピル)フェニル)ヨードニウム、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、4−(アクリロイルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4−(メタクリロイルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム等が挙げられる。
【0113】
本発明において、Aとしては、前記一般式(a)、(a−1)又は(a−2)で表されるスルホニウムカチオンが好ましく、前記一般式(a)又は(a−2)で表されるスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0114】
一般式(1)で表されるスルホンアミドおよび一般式(2)で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩のアニオン部分としては、一般式(1)で表されるスルホンアミドとしてで具体的に例示した化合物群の窒素上のプロトンを引き抜き、イオン化した構造が例示できる。
【0115】
[第1工程(アルカリ金属塩化工程)]
第1工程(アルカリ金属塩化工程)は上記一般式(1)で表されるスルホンアミド(本明細書において、「スルホンアミド(1)」ということがある。)を水酸化アルカリ金属と反応させて、上記一般式(2)で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩を得る工程である。
【0116】
一般にアミドをアミドのアルカリ金属塩にする反応(アルカリ金属塩化)は、アルカリ金属を含む塩基の存在下で実施されるが、本発明にかかるアルカリ金属塩化はアルカリ金属の水酸化物を用いることを特徴とする。
【0117】
アルカリ金属の塩を得るに当たり、弱塩基性のアルカリ金属塩を用いた温和な条件とすることで、スルホンアミド部位の開裂を避けることができ、収率および特に選択率の向上に好適であると推測された。しかしながら、特許文献1および2の開示に従い本発明にかかるアルカリ金属塩化をアルカリ金属の炭酸塩(NaCO)、炭酸水素塩(NaHCO)などで行うと反応性が低く、原料のアミドが残存してしまうことが分かった。それに対し、水酸化物を用いると懸念されたアミド結合の開裂は起こらず、高い反応率が得られ、しかも高い選択率でスルホンアミドアルカリ金属塩が生成することが判明した。さらに、出発原料である一般式(1)で表されるスルホンアミドの構造中に、アルカリ加水分解を受けやすいエステル基が存在していても、エステル基が開裂することがなかった。
【0118】
水酸化アルカリ金属としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウムが挙げられるが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、その中でも水酸化ナトリウムが最も好ましい。
【0119】
スルホンアミド(1)に対する水酸化アルカリ金属のモル比は、通常、0.5〜3.0、好ましくは0.8〜2.0であり、さらに好ましくは1.0〜1.5である。1.0以下のモル比でも反応自体は進行するが、収率が下がるので効率的でない。
【0120】
この反応は、通常、水の存在下で行われる。スルホンアミド(1)100質量部に対する水の質量部は、通常1質量部以上であり、50質量部以上が好ましく、100重量部以上がより好ましい。上限は反応に関して特に無いが、あまりに多量の水を使用すると効率が低下するので、10000質量部以下とし、2000質量部以下が好ましい。
【0121】
また、水と有機溶媒とを併用することができる。併用する有機溶媒に特に制限は無いが、スルホンアミド(1)の水に対する溶解度を向上させるために、水溶性の有機溶媒を使用するのが好ましい。本明細書で、「水溶性の有機溶媒」とは、親水性の極性溶媒であって、溶解パラメーター(SP値)の理論値が9.9以上の有機溶媒をいう。例えば、アセトニトリル、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を挙げることができる。
【0122】
この場合の有機溶媒の使用量は、使用するスルホンアミド(1)の水溶性に大きく影響を受けるが、スルホンアミド(1)100質量部に対し、200質量部以下であり、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましい。有機溶媒と水の比率は、特に限定されないが、水100質量部に対し、0〜2000質量部であり、0〜500質量部が好ましい。有機溶媒の使用は製造コストの上昇を招くので、前記上限を超えるのは好ましくない。
【0123】
反応温度は、通常、−10〜40℃、好ましくは0〜20℃であり、より好ましくは0〜10℃である。40℃よりも高い温度ではスルホンアミド結合の開裂が生じる虞があり、また、アミドの構造によっては、重合可能部位の重合やエステル部位の開裂等の副反応が生じる虞があり好ましくない。−10℃未満では、反応液が固化する虞があり、好ましくない。反応時間は、反応温度、基質濃度等の反応条件により異なるが、通常、10分〜16時間である。好ましくは30分〜6時間である。薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し,原料であるスルホンアミド(1)が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0124】
第1工程は、ガラス、ステンレス鋼、フッ素樹脂またはこれらの材質でライニングされた容器を用いて行うことができる。
【0125】
このようにして得られた一般式(2)で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩は、有機溶媒による抽出、再結晶などの方法で精製することができる。
【0126】
しかしながら、第一工程で得られたスルホンアミドアルカリ金属塩は、そのような精製をせず引き続きオニウム塩化工程に進むのが最も操作性、スルホンアミドオニウム塩収率の点でも効率の良い方法である。
【0127】
[第2工程(オニウム塩化工程)]
本発明にかかる第2工程について説明する。第2工程は、第1工程で得られた一般式(2)で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩を、一般式(4)で表される一価のオニウム塩
(4)
を用いてアルカリ金属イオンとオニウムイオンをオニウム塩交換し、一般式(3)で表されるスルホンアミドオニウム塩を得る工程である。第2工程では、スルホンアミドアルカリ金属塩は容易にイオン交換し、スルホンアミド(1)やスルホンアミドアルカリ金属塩、スルホンアミドオニウム塩に含まれるスルホンアミド構造の開裂、分解などは生じない。一般式(4)におけるAは一般式(3)におけると同義である。Zは1価のアニオンを表す。かかるアニオンの具体例としては、例えば、F、Cl、Br、I、ClO、HSO、HPO、BF、PF、SbF、脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、フルオロカルボン酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン等を挙げることができ、好ましくは、Cl、Br、HSO、BF、脂肪族スルホン酸アニオン等であり、さらに好ましくは、Cl、Br、HSOである。
【0128】
一般式(4)で表される一価のオニウム塩の、一般式(2)で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩に対するモル比は、通常、0.5〜3.0、好ましくは0.8〜2.0であり、さらに好ましくは1.0〜1.5である。0.5以下のモル比でも反応自体は進行するが、収率が下がるので効率的でない。
【0129】
この反応は、通常、反応溶媒中で行う。反応溶媒としては、水や有機溶媒が使用できる。有機溶媒としては、例えば、低級アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなど炭素数1〜4のアルコール。)、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。好ましくは、水、メタノール、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等であり、特に好ましくは水である。
【0130】
反応溶媒のスルホンアミドナトリウム塩100質量部に対する質量部は、50〜20000重量部であり、100〜10000質量部が好ましい。有機溶媒と水を併用する場合、
有機溶媒と水の比率は、特に限定されないが、水100質量部に対し、0〜2000質量部であり、0〜500質量部が好ましい。
【0131】
反応温度は、通常、0〜80℃、好ましくは5〜30℃であり、反応時間は、反応温度、基質濃度等の反応条件により異なるが、通常、10分〜16時間、好ましくは30分〜6時間であるが、薄層クロマトグラフィー(TLC)や核磁気共鳴装置(NMR)などの分析機器を使用し、原料であるスルホンアミドアルカリ金属塩が消費された時点を反応の終点とすることが好ましい。
【0132】
第2工程は、ガラス、ステンレス鋼、フッ素樹脂またはこれらの材質でライニングされた容器を用いて行うことができる。
【0133】
反応の終了した反応液(反応器内容物)は、通常水層と有機層に分離している。有機層を取得し、水での洗浄、有機溶媒での洗浄、抽出などの精製をすることができる。精製で使用する有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類等の、水と混合しない有機溶媒が挙げられる。本明細書で「水と混合しない有機溶媒」とは疎水性の非極性溶媒であって、溶解パラメーター(SP値)の理論値が9.8以下の有機溶媒をいう。
【0134】
さらに、有機溶媒で抽出した後、該有機溶媒を留去し、残ったスルホンアミドオニウム塩を再結晶、再沈殿等で精製することで高純度のスルホンアミドオニウム塩を得ることができる。
【0135】
[ワンポット製造法]
本発明の一般式(3)で表されるスルホンアミドオニウム塩の製造は、第1工程および第2工程をワンポットで行うことができる。「ワンポット」とは、第1工程で形成された反応液をそのまま使用して第2工程を行うことをいう。「そのまま」とは、第1工程と第2工程の間で実質的な精製をしないことをいい、二つの工程を同一の反応器で実施することもできるし、異なる反応器で実施することもできる。ワンポット製造法は第1工程および第2工程の間で精製を行う必要がないため、簡便かつ収率がよく効率のよい方法である。
【0136】
ワンポット製造法は、第1工程および第2工程をそれぞれ上記の第1工程および第2工程についての詳細な説明に準じればよく、第1工程と第2工程を順に実施して行うことができる。
【0137】
具体的な実施態様を以下に例示するが、これに限られない。
【0138】
スルホンアミド(1)を水と混合しない有機溶媒に溶解させる。該有機溶媒としては例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類が例示できる。
【0139】
スルホンアミド(1)100質量部に対する有機溶媒の質量部は、通常1質量部以上10000質量部以下であり、100質量部以上2000重量部以下が好ましい。
【0140】
あまりに多量の有機溶剤を使用すると効率が悪くなるので、50質量部以下が好ましく、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0141】
このスルホンアミド(1)が溶解した溶液を、上記第1工程の説明に記載した所定量の水酸化アルカリ金属と水を別々にまたは水溶液として混合する。反応は上記第1工程に記載した所定の温度と時間で実施する。
【0142】
所定時間が経過した後、第2工程の説明に記載した一般式(4)で表される1価のオニウム塩を所定量添加し、反応を所定の温度と時間で実施する。第2工程の開始に際し、または反応の進行に伴って有機溶媒を添加することもできる。
【0143】
反応終了後、目的とするスルホンアミドオニウム塩は当初添加した水と混合しない有機溶媒に溶解しているため、水層との分液操作を行うだけで目的とするスルホンアミドオニウム塩を含む溶液を得ることができる。次いで該有機溶媒を留去し、残ったスルホンアミドオニウム塩を再結晶、再沈殿等で精製することで高純度のスルホンアミドオニウム塩を得ることができる。
【0144】
本発明の方法で得られるスルホンアミドオニウム塩は、半導体工業のフォトリソグラフィーにおいて、化学増幅型レジスト組成物の酸発生剤やクエンチャーとして使用できる。酸発生剤は、紫外線、電子線などの高エネルギー線を露光されることにより発生した酸がレジスト組成物中の酸脱離部位の分解を促進し、または架橋部位を架橋させることでアルカリ現像液への溶解性を変化させ、露光されたパターン形状に忠実なレジストパターンを形成するために用いられる。クエンチャーとして用いる場合、本発明にかかるスルホンアミドオニウム塩は、未露光部では通常のクエンチャーと同様に酸発生剤から発生した酸を捕捉するとともに、露光部では感光により分解してクエンチャーとしての機能を失い酸濃度を減らすことがなく、未露光部および露光部での酸の触媒作用を調節することができる。
【実施例】
【0145】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されない。
【0146】
有機物の分析は、別途明示したものの他は核磁気共鳴装置(19F−NMRまたはH−NMR)で行った。ここで、H−NMRの化学シフト基準物質はテトラメチルシラン(TMS)であり、19F−NMRの化学シフト基準物質はトリクロロフルオロメタンである(但し、ヘキサフルオロベンゼンのピークを−162.2ppmとした)。また、純度、収率は19F−NMRを使用し、標準物質(1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)に対する積分比に基づいて計算し「%」で表示した。
【0147】
[合成例1] N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド
【0148】
【化16】

【0149】
温度計、コンデンサーを備えたガラスのフラスコにトリフルオロメタンスルホン酸アミドエタノール100g(0.52mol)、1−アダマンタンカルボン酸108.6g(0.54mol)、パラトルエンスルホン酸(0.1mol)、およびトルエン500gを投入しディーンシュターク型脱水装置を用いて還流下、脱水を行った。9時間還流の後、約9mlの水が除去できた。この反応液を酢酸エチル500gに溶解し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で順次洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、ヘキサン中で再結晶し、N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド151g(収率81%、純度99%)を得た。
【0150】
[N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドの物性]
H−NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=5.43−5.35(brs,1H),4.20(t,2H, J=5.2Hz),3.53(td,2H, J=5.2Hz),2.08−1.98(brs,3H),1.91−1.87(brs,6H),1.75−1.67(brs,6H).
19F−NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−77.8(s,3F).
上記分析の結果から、得られた化合物が上に示すN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドであることを確認した。
【0151】
[実施例1]トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド((C)−1)の合成
【0152】
【化17】

【0153】
1Lのガラス製反応器に、上記合成例1で得られたで得られたN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド 100g(0.28mol)、水400mLを仕込み、内温を0℃に維持し、攪拌しながら11%水酸化ナトリウム水溶液 109g(水酸化ナトリウム0.3mol)をゆっくりと滴下した後、30分撹拌を行った。水酸化ナトリウム水溶液を滴下する前に懸濁していた反応液は水酸化ナトリウム水溶液の滴下完了時には均一な液体となった。その後水を留去することによってN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド ナトリウム塩を111g得た。このとき、純度は90%、収率は95%であった。
【0154】
次いで、1Lのガラス製反応器に、得られたナトリウム塩100g(純度90%、0.24mol)、クロロホルム200mL、トリフェニルスルホニウムブロミド86g(0.25mol)を一度に加え、25〜32℃で15時間撹拌した後、反応液を水300mLで1回洗浄してから分液し、有機層を減圧濃縮した。得られた黄色油状物をアセトニトリルに溶解しジイソプロピルエーテル中で再結晶を行いトリフェニルスルホニウムN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドを142g得た。このとき純度は99%、収率96%であった。
【0155】
[トリフェニルスルホニウムN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドの物性]
H−NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.88−7.76(m,15H;Ph), 3.85(t,2H),3.02(t,2H),2.08−1.98(brs,3H),1.91−1.87(brs,6H),1.75−1.67(brs,6H).
19F−NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−75.5(s,3F).
上記分析の結果から、得られた化合物が上の式(C)−1に示すトリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドであることを確認した。
【0156】
[実施例2]トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド((C)−1)の合成
【0157】
【化18】

【0158】
3Lのガラス製反応器に、上記合成例1で得られたで得られたN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド240g(0.63mol)、水800mL、クロロホルム800mLを仕込み、内温を0℃に維持し、攪拌しながら11%水酸化ナトリウム水溶液 0.24kg(水酸化ナトリウム0.68mol)をと滴下した後30分撹拌を行った。攪拌を停止した後、二層に分離した双方の層が均一で、不溶分が無いことを確認した。次いでトリフェニルスルホニウムブロミド244g(0.71mol)を一度に加え23〜30℃で15時間撹拌した後、二層に分離した反応器内容物を分液して、得られた有機層を水800mLで洗浄し、減圧濃縮を行った。得られた黄色油状物をアセトニトリルに溶解しジイソプロピルエーテル中で再結晶を行いトリフェニルスルホニウムN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドを360g得た。このとき純度は99%、収率87%であった。
【0159】
[実施例3]トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドの合成
3Lのガラス製反応器に、[合成例1]で得られたN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド240g(0.63mol)、水800mL、クロロホルム800mLを加え、30〜32℃で22%水酸化ナトリウム水溶液 0.12kg(0.68mol)を30分で滴下し、さらに30分撹拌を続けた。攪拌を停止した後、二層に分離した双方の層が均一で、不溶分が無いことを確認した。次いで、トリフェニルスルホニウムブロミド244g(0.71mol)を加え22〜32℃で15時間撹拌した後、二層に分離した反応器内容物を分液し、得られた有機層を水800mLで1回洗浄し、減圧濃縮を行った。
【0160】
この時点でH−NMR分析装置を用いて分析を行ったところ、スルホンアミドまたはエステル部位が開裂したと推定される成分が合計で32%検出された。
【0161】
得られた黄色油状物をアセトニトリルに溶解させ、ジイソプロピルエーテル中で再結晶を行いトリフェニルスルホニウムN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドを得ることを試みたが、結晶化できなかった。そこでジイソプロピルエーテルを留去し、207gの粗体を粘度の高い液体として得た。このとき収率50%、純度78%であった。
【0162】
[実施例4]トリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミド((C)−B)の合成
【0163】
【化19】

【0164】
5Lのガラス製反応器に、2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミド650g(2.49mol)、水300mL、アセトニトリル200mLを一度に加え、攪拌して内温を0℃に維持しながら10%水酸化ナトリウム水溶液 1.11kg(水酸化ナトリウム2.75mol)をゆっくりと滴下した後一時間撹拌を続けた。トリフェニルスルホニウムブロマイド876g(2.55mol)、クロロホルム 1.4kgを一度に加え20〜25℃で5時間撹拌した後、二層に分離した反応器内容物を分液し、得られた有機層を水800mLで1回洗浄し、減圧濃縮を行った。得られた褐色油状物をアセトニトリルに溶解させジイソプロピルエーテル中で再結晶を行いトリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドを550g得た。このとき純度は99%、収率42%であった。
【0165】
[トリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドの物性]
H−NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:テトラメチルシラン);δ=7.88−7.76(m,15H;Ph), 6.00−5.89(m,1H),5.15−5.10(m,1H),3.96(t,J = 6.59 Hz,2H;CH),3.13−3.09(m,2H;CH),1.85(s,3H,CH).
19F−NMR(測定溶媒:重DMSO,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−75.5(s,3F).
上記分析の結果から、得られた化合物が上記式(C)−Bに示すトリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドであることを確認した。
【0166】
[実施例5]化合物(C)−2の合成
反応容器に、N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド3.91g、水36mL、クロロホルム180mLを加え、内温を0℃に維持しながら10%NaOH 4.4gを滴下し、10分撹拌した。そこへPAG[A]を5.42g添加し、室温で1時間撹拌した後、分液を行い、得られた有機層を水36mLで4回洗浄し、減圧濃縮を行うことによって(C)−2を6.7g得た。
【0167】
【化20】

【0168】
[化合物(C)−2の物性]
H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=7.76−7.82(m、10H、ArH)、7.59(s、2H、ArH)、4.55(s、2H、CH)、3.82−3.89(t、2H、CH)、3.00−3.08(t、2H、CH)、2.29(m、6H、CH)、1.48−1.93(m、25H、Cyclopentyl+Adamantan)、0.77−0.81(t、3H、CH).
19F−NMR(DMSO、376MHz):δ(ppm)=−75.5。
[実施例6]化合物(C)−3の合成
化合物(C)−3の合成をPAG[B]を用いて化合物(C)−2と同様に行った。
【0169】
[化合物(C)−3の物性]
H−NMR(DMSO、400MHz):δ(ppm)=8.28(d、2H、ArH)、8.12(d、1H、ArH)、7.88 (t、1H、ArH)、7.80 (d、1H、 ArH)、7.62−7.74 (m、5H、ArH)、3.82−3.89(t、2H、CH)、3.00−3.08(t、2H、CH)、1.58−1.93(m、15H、Adamantan)、1.27 (s、9H、CH).
19F−NMR(DMSO、376MHz):δ(ppm)=−75.5。
【0170】
【化21】

【0171】
[比較例1]トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドの合成
50mLのガラス製反応器に、N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド3g(0.009mol)、水18mL、クロロホルム18mLを加え30分撹拌を行った。その後トリフェニルスルホニウムブロマイド3.1g(0.009mol)を加え一度に21〜28℃で15時間撹拌した後、分液を行い、得られた有機層を水20mLで4回洗浄し、減圧濃縮を行った。得られた黄色油状物にアセトンを加えると、固体が析出し、析出物はトリフェニルスルホニウムブロマイドであり、トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドは得られなかった。
【0172】
[比較例2]N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド ナトリウム塩の合成
50mLのガラス製ガラス製反応器に、上記[合成例1]で得られたN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド3g(9.0mmol)、水20mLを一度に加え、内温を0℃に維持し、攪拌しながら、ゆっくりと炭酸水素ナトリウム 0.76g(NaHCO 9.0mmol)を加え5時間、内温を0℃に維持し撹拌を行った。攪拌を停止して内容物を静置しても均一にならず懸濁したままであり、水溶性のN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド ナトリウム塩は殆ど生成していなかった。
【0173】
[比較例3]N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド ナトリウム塩の合成
前記比較例2の反応に引き続いて反応液を室温で10時間攪拌した。この時の液温は約23℃であった。得られた反応液は均一ではなかった。その後水を留去することによって白色固体を4.0g得た。19F−NMRで分析を行ったところ、原料のN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドとナトリウム塩の比は9:1であった。
【0174】
この白色固体をクロロホルムに溶解させジイソプロピルエーテル中で再結晶を行ったが、N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド ナトリウム塩は結晶化しなかった。
【0175】
[比較例4]トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドの合成
50mLのガラス製反応器に、上記[合成例1]で得られたN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド3g(9.0mmol)、水18mL、クロロホルム18mL、炭酸水素ナトリウム 0.76g(9.0mmol)を加え23℃で30分撹拌を行った。トリフェニルスルホニウムブロマイド3.1g(9.0mmol)を加え19〜24℃で15時間撹拌した後、二層に分離した反応器内容物を分液し、得られた有機層を水20mLで4回洗浄し、減圧濃縮を行った。得られた黄色油状物を19F−NMRで分析を行ったところ、原料のN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドとトリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドの比は8.5:1.5であった。
【0176】
この黄色油状物をアセトニトリルに溶解させジイソプロピルエーテル中で再結晶を行ったが、トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドは結晶化しなかった。
【0177】
[比較例5] トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドの合成
50mLのガラス製反応器に、[合成例1]で得られたN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミド3g(0.009mol)、水18mL、クロロホルム18mL、炭酸カリウム 1.23g(0.009mol)を加え23℃で30分撹拌を行った。トリフェニルスルホニウムブロマイド3.1g(0.009mol)を加え19〜24℃で15時間撹拌した後、分液を行い、得られた有機層を水20mLで4回洗浄し、減圧濃縮を行った。得られた黄色油状物19F−NMRで分析を行ったところ、原料のN−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドとナトリウム塩の比は4.5:5.5であった。
【0178】
この黄色油状物をアセトニトリルに溶解させジイソプロピルエーテル中で再結晶を行ったが、トリフェニルスルホニウム N−[2−(アダマンタン−1−イルカルボニルオキシ)エチル]トリフルオロメタンスルホンアミドは結晶化しなかった。
【0179】
[比較例6]トリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドの合成
25mLのガラス製反応器に、2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミド 3.0g(11.5mmol)、水6mL、アセトニトリル 1.5g、炭酸ナトリウム 1.5g(14.2mmol)を20℃で加えた後20〜22℃で3時間撹拌を行った。トリフェニルスルホニウムブロマイド 4.1g(11.2mmol)、クロロホルム 6mLを加え18〜26℃で15時間撹拌した後、二層に分離した反応器内容物を分液し、得られた有機層を水6mLで1回洗浄し、減圧濃縮を行い、褐色油状物を得た。この得られた褐色油状物は、原料である2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドと目的とするトリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドの混合物であり、2.4gであった。19F−NMRで分析を行ったところ、2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドとトリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドの比は1:2であった。このものを再結晶で精製して目的とするトリフェニルスルホニウム 2−(メタクルロイルオキシ)エチル トリフルオロメタンスルホンアミドを得ようとしたが結晶化できなかった。
【0180】
[参考例1〜5、参考比較例1]
表1に示す各成分を混合して溶解し、ポジ型のレジスト組成物を調製した。
【0181】
【表1】

【0182】
表1中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
【0183】
(A)−1:下記高分子化合物(A)−1.
(B)−1:下記化合物(B)−1
(B)−2:下記化合物(B)−2.
(C)−B:前記化合物(C)−B(実施例4で製造).
(C)−1:前記化合物(C)−1(実施例1および2で製造).
(C)−2:前記化合物(C)−2(実施例5で製造).
(C)−3:前記化合物(C)−3(実施例6で製造).
(D)−1:トリ−n−オクチルアミン.
(F)−1:下記高分子化合物(F)−1.
(S)−1:PGMEA/PGME/シクロヘキサノン=45/30/25(質量比)の混合溶剤。
【化22】

【0184】
[Mw=9400、Mw/Mn=1.65、( )の右下の数値は共重合組成比(モル比)を示す。]
【化23】

【0185】
得られたポジ型のレジスト組成物を用いて、以下の手順に従ってレジストパターンを形成し、以下に示す評価をそれぞれ行った。
【0186】
[レジストパターンの形成]
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、90秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。
【0187】
そして、該有機系反射防止膜上に、参考例1〜5、参考比較例1のレジスト組成物をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間の条件でプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0188】
次に、ArF液浸露光装置NSR−S609B(ニコン社製;Dipole(in/out:0.78/0.97) w/POLANO;液浸媒体:水)により、マスクパターン(6%ハーフトーン)を介して、前記レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。
【0189】
そして、115℃で60秒間のPEB処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で10秒間、アルカリ現像処理を行い、その後、純水を用いて水リンス30秒間を行い、振り切り乾燥を行った。
【0190】
続いて、100℃で45秒間のポストベークを行った。
【0191】
その結果、いずれの例においても、ライン幅50nmの1:1ラインアンドスペース(LS)パターンが得られた。
【0192】
該LSパターンが形成される最適露光量Eop(mJ/cm;感度)を求めた。その結果を表2に示す。
【0193】
[LWR(ラインワイズラフネス)評価]
前記露Eopにおいて形成したライン幅50nm、ピッチ100nmのLSパターンにおいて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧800V、商品名:S−9220、日立製作所社製)により、スペース幅を、スペースの長手方向に400箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を求め、400箇所の3sについて平均化した値を、LWRを示す尺度として算出した。その結果を表2に示す。
【0194】
この3sの値が小さいほど、その線幅のラフネスが小さく、より均一幅のLSパターンが得られたことを意味する。
【0195】
[パターン倒れの評価]
上記Eopを変化させた他は、上記と同様にしてLSパターンの形成を行い、パターンが倒れる直前のライン幅を測定した。
【0196】
この値が小さいほど、レジストパターンの倒れにくさ(パターン倒れの耐性)が良好であることを意味する。
【0197】
[露光余裕度(ELマージン)の評価]
前記EopでLSパターンのラインがターゲット寸法(ライン幅50nm)の±5%(47.5nm〜52.5nm)の範囲内で形成される際の露光量を求め、次式によりELマージン(単位:%)を求めた。その結果を表2に示す。
【0198】
ELマージン(%)=(|E1−E2|/EOP)×100
E1:スペース幅47.5nmのLSパターンが形成された際の露光量(mJ/cm
E2:スペース幅52.5nmのLSパターンが形成された際の露光量(mJ/cm
なお、ELマージンは、その値が大きいほど、露光量の変動に伴うパターンサイズの変化量が小さいことを示す。
【0199】
[パターン形状評価]
上記50nmの1:1LSパターンが形成される最適露光量Eopにおいて形成されたパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(商品名:S−4700、日立製作所製)を用いて観察し、その形状を以下の基準で評価した。結果を表2に示す.
○:矩形性が高く、良好である.
△:Top−round形状であり、矩形性が低い.
×:T−top形状であり、矩形性が低い.
【0200】
【表2】

【0201】
表2の結果から、参考例1〜5のレジスト組成物は、参考比較例1のレジスト組成物に比べて、LWR、ELマージン等のリソグラフィー特性及び形状が良好であり、且つ、パターン倒れが抑制されることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

で表されるスルホンアミドを、水酸化アルカリ金属と反応させる第1工程を含む、一般式(2)
【化2】

で表されるスルホンアミドアルカリ金属塩の製造方法。
(各式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数5以上の脂環式基または置換基を有していてもよい炭素数2以上の末端に重合性不飽和基を有する基であり、Xは2価の連結基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mはアルカリ金属イオンである。)
【請求項2】
水酸化アルカリ金属が、水酸化ナトリウムである請求項1に記載のスルホンアミドアルカリ金属塩の製造方法。
【請求項3】
第1工程の反応を水を含む有機溶媒中において行う請求項1または2に記載のスルホンアミドアルカリ金属塩の製造方法。
【請求項4】
第1工程の反応を−10〜40℃において行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のスルホンアミドアルカリ金属塩の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られたスルホンアミドアルカリ金属塩を、一般式(4)で表される一価のオニウム塩
(4)
によりオニウム塩交換する第2工程を含む、一般式(3)
【化3】

で表されるスルホンアミドオニウム塩の製造方法。
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数5以上の脂環式基または置換基を有していてもよい炭素数2以上の末端に重合性不飽和基を有する基であり、Xは2価の連結基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキレン基またはアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Zは1価のアニオンであり、Aは下記一般式(a)で表されるスルホニウムカチオンもしくは下記一般式(b)で示されるヨードニウムカチオンである。)
【化4】

(式中、R、RおよびRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基もしくはオキソアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基もしくはアリールオキソアルキル基を表すか、またはR、RおよびRのうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【化5】

(式中、RおよびRは相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基もしくはオキソアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基もしくはアリールオキソアルキル基を表すか、またはRおよびRが相互に結合して式中のヨウ素原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項6】
第1工程で得られたスルホンアミドアルカリ金属塩を単離することなく、第2工程を実施する請求項5に記載のスルホンアミドオニウム塩の製造方法。

【公開番号】特開2012−121830(P2012−121830A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273285(P2010−273285)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】