説明

スルホン化合物及び当該化合物を用いたカロテノイドの製造方法

【課題】カロテノイドに簡便に誘導し得る中間体、該中間体の効率的な製造方法、及び該中間体を用いたカロテノイドの効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】アリルスルホン化合物と、アリルハライド化合物を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とする式(3):


で示されるスルホン化合物の製造方法、並びに、該スルホン化合物にアルコールを添加することによるカロテノイドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化合物、当該化合物の製造方法、及び当該化合物を用いたカロテノイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、β−カロテン、カンタキサンチン、アスタキサンチン等のカロテノイドが飼料添加物、食品着色料等として使用されている。非特許文献1には、β−カロテンの既存の製造方法等が示されている。具体的には、炭素数15のWittig試薬2分子と炭素数10のジアルデヒド1分子から、炭素数40のβ−カロテンを製造する方法が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Pure & Appl. Chem., Vol.63, No.1, pp.45-58, 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下、カロテノイドに簡便に誘導し得る中間体、並びに、原料の価格、製造工程数、精製工程などの観点からさらに優れた該中間体の製造方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アリルスルホン化合物とアリルハライドとのカップリング反応の塩基として、安価なアルカリ金属水酸化物を用いて、温和な条件で反応させ、スルホン化合物を1工程で製造でき、さらに当該スルホン化合物からカロテノイドを簡便に製造できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明の対象およびその好ましい態様は、以下の通りである。
[1]式(1):
【化1】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるアリルスルホン化合物と、式(2):
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、波線は上記と同じ意味を表す。)
で示されるアリルハライド化合物を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とする式(3):
【化3】

(式中、A、Ar及び波線は、上記と同じ意味を表す。)
で示されるスルホン化合物の製造方法。
【0007】
[2]式(1):
【化4】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるアリルスルホン化合物と、式(2):
【化5】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、波線は上記と同じ意味を表す。)
で示されるアリルハライド化合物を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させ、得られた反応混合物にアルコールを添加することを特徴とするカロテノイドの製造方法。
【0008】
[3]式(1)で示される化合物において、Arが4−メチルフェニル基であることを特徴とする上記[1]又は[2]のいずれか記載の製造方法。
[4]式(2)で示されるアリルハライド化合物において、Xが臭素原子又は塩素原子であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の製造方法。
[5]Xが塩素原子であることを特徴とする上記[4]記載の製造方法。
[6]アルカリ金属水酸化物が、純度85%以上の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムであることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか記載の製造方法。
[7]アルカリ金属水酸化物の粒径が、3mm以下であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれか記載の製造方法。
[8]アルカリ金属水酸化物の粒径が、100μm以下であることを特徴とする上記[7]記載の製造方法。
【0009】
[9]アルカリ金属水酸化物の使用量が、式(1)で示されるアリルスルホン化合物に対し、1〜30モル倍の範囲であることを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか記載の製造方法。
[10]相間移動触媒が、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする上記[1]〜[9]のいずれか記載の製造方法。
[11]相間移動触媒の使用量が、式(1)で示されるアリルスルホン化合物に対し、0.01〜0.5モル倍の範囲であることを特徴とする上記[1]〜[10]のいずれか記載の製造方法。
[12]式(1)で示されるアリルスルホン化合物に対し、0.05〜0.5モル倍の水を添加することを特徴とする上記[1]〜[11]のいずれか記載の製造方法。
[13]有機溶媒が、芳香族炭化水素又はエーテル系溶媒であることを特徴とする上記[1]〜[12]のいずれか記載の製造方法。
【0010】
[14]式(3):
【化6】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるスルホン化合物を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とするカロテノイドの製造方法。
[15]式(3)で示される化合物において、Arが4−メチルフェニル基であることを特徴とする上記[14]記載の製造方法。
【0011】
[16]アルカリ金属水酸化物が、純度85%以上の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムであることを特徴とする上記[14]又は[15]のいずれか記載の製造方法。
[17]アルカリ金属水酸化物の粒径が、3mm以下であることを特徴とする上記[14]〜[16]のいずれか記載の製造方法。
[18]アルカリ金属水酸化物の粒径が、100μm以下であることを特徴とする上記[17]記載の製造方法。
[19]相間移動触媒が、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする上記[14]〜[18]のいずれか記載の製造方法。
[20]炭素数1〜5の低級アルコールを添加することを特徴とする上記[14]〜[19]のいずれか記載の製造方法。
[21]有機溶媒が、芳香族炭化水素又はエーテル系溶媒であることを特徴とする上記[14]〜[20]のいずれか記載の製造方法。
【0012】
[22]式(3):
【化7】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるスルホン化合物。
[23]Arが4−メチルフェニル基であることを特徴とする上記[22]記載のスルホン化合物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、カロテノイドの中間体として有用なスルホン化合物及びカロテノイドを工業的に有利な方法で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記式(1)及び(3)で示される化合物におけるAは、CH又はC=Oである。
【0015】
上記式(1)及び(3)で示される化合物におけるArは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基である。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、置換基としては、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基などが挙げられる。好ましいアリール基はフェニル基であり、好ましい置換基は炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基である。
【0016】
Arの具体例は、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−ペンチルフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−ブロモフェニル、3−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、2−ヨードフェニル、3−ヨードフェニル、4−ヨードフェニル、2−ニトロフェニル、3−ニトロフェニル、4−ニトロフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリクロロフェニルなどである。好ましいArは、無置換フェニル又は炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基で置換されたフェニルである。より好ましいArは、4位が炭素数1〜5の直鎖アルキル基で置換されたフェニルであり、特に好ましいArは4−メチルフェニルである。
【0017】
上記式(2)で示されるアリルハライドにおけるXは、ハロゲン原子を表し、具体的には塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、化合物の製造コストや安定性、取り扱いの点で、より好ましくは塩素原子である。
【0018】
上記式(3)で示されるスルホン化合物[以下、スルホン化合物(3)と記すこともある]は、式(1):
【化8】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるアリルスルホン化合物[以下、アリルスルホン化合物(1)と記すこともある]と、式(2):
【化9】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、波線は上記と同じ意味を表す。)
で示されるアリルハライド化合物[以下、アリルハライド化合物(2)と記すこともある]を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0019】
上記反応に用いられるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。好ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0020】
かかるアルカリ金属水酸化物の使用量は、アリルスルホン化合物(1)に対して、通常0.5〜50モル倍、好ましくは1〜30モル倍、特に好ましくは2〜20モル倍程度である。かかるアルカリ金属水酸化物は、純度85%以上のものが好ましい。特に好ましくは95%以上である。
【0021】
かかるアルカリ金属水酸化物は、市販のフレーク状又はペレット状のものをそのまま使用することもできるが、アルカリ金属水酸化物を、粉砕又は溶融することにより粒径を小さくしてもよい。その方法は特に限定されず、乾式粉砕、有機溶媒中で湿式粉砕などの方法により粉砕したもの、又は有機溶媒中で溶融させたものを使用することができ、ポリエチレングリコールなどの凝集防止剤を添加しておく方が好ましい場合がある。粉砕又は溶融したアルカリ金属水酸化物の粒径は、特に限定されないが、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下である。下限は特に限定されないが、通常は0.01〜100μm程度である。
【0022】
上記反応は、相間移動触媒の添加により促進される。かかる相間移動触媒としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、スルホニウム塩などが挙げられ、好ましくは、第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0023】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化テトラヘプチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラデシルアンモニウム、塩化トリデシルメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化テトラドデシルアンモニウム、塩化トリドデシルメチルアンモニウム、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリエチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラヘキサデシルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウム、塩化テトラオクタデシルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化1−メチルピリジニウム、塩化1−ヘキサデシルピリジニウム、塩化1,4−ジメチルピリジニウム、塩化トリメチルシクロプロピルアンモニウム、あるいは、これらの塩化物塩が、それぞれ対応する臭化物塩、ヨウ化物塩、硫酸水素塩となった化合物が挙げられる。
【0024】
第4級ホスホニウム塩としては、例えば、塩化トリブチルメチルホスホニウム、塩化トリエチルメチルホスホニウム、塩化メチルトリフェノキシホスホニウム、塩化ブチルトリフェニルホスホニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化ベンジルトリフェニルホスホニウム、塩化テトラオクチルホスホニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルホスホニウム、塩化ヘキサデシルトリブチルホスホニウム、塩化ヘキサデシルジメチルエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、あるいは、これらの塩化物塩が、それぞれ対応する臭化物塩、ヨウ化物塩となった化合物が挙げられる。
【0025】
スルホニウム塩としては、例えば、塩化ベンジルメチルエチルスルホニウム、塩化ベンジルジメチルスルホニウム、塩化ベンジルジエチルスルホニウム、塩化ジブチルメチルスルホニウム、塩化トリメチルスルホニウム、塩化トリエチルスルホニウム、塩化トリブチルスルホニウム、あるいは、これらの塩化物塩が、それぞれ対応する臭化物塩、ヨウ化物塩となった化合物が挙げられる。
【0026】
かかる相間移動触媒の使用量は、アリルスルホン化合物(1)に対して、通常0.005〜2モル倍、好ましくは0.01〜0.5モル倍程度である。
【0027】
上記反応は、水の添加により反応が促進されることがある。水の添加量は、アリルスルホン化合物(1)に対して、通常0.01〜1モル倍、好ましくは0.05〜0.5モル倍である。
【0028】
上記反応は有機溶媒中で実施される。かかる有機溶媒としては、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリジノンなどの非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒が挙げられる。炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましく、芳香族炭化水素が特に好ましい。これらは単一であっても2種以上の混合溶媒で使用してもよい。
【0029】
反応温度は、通常、−78℃から溶媒の沸点までの範囲内で任意に選択できるが、使用する原料化合物、アルカリ金属水酸化物、相間移動触媒及び溶媒の種類や量によって最適な反応温度を選択することが望ましい。反応温度は、好ましくは0〜70℃の範囲であり、より好ましくは15〜50℃の範囲である。
【0030】
反応時間は、使用する原料化合物、アルカリ金属水酸化物、相間移動触媒、水添加量、溶媒ならびに反応温度など諸条件によって異なるが、通常は10分間から48時間程度の範囲である。
【0031】
反応は、無酸素条件下に行うのが好ましく、不活性ガス(窒素、アルゴン)雰囲気下に行い、使用する溶媒も十分に脱気しておくことが望ましい。また、安定剤として、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、ビタミンE、エトキシキンなどの酸化防止剤及びこれらの混合物を加えておくのが好ましい。
【0032】
上記反応により、スルホン化合物(3)及びカロテノイドが生成する。スルホン化合物(3)とカロテノイドの生成比は、アルカリ金属水酸化物や相間移動触媒の種類や量、水分添加量、溶媒種、反応温度ならびに反応時間などの諸条件によって異なる。一般的に、アルカリ金属水酸化物及び/又は相間移動触媒の使用量が少なく、反応時間を短くすると、スルホン化合物(3)の生成比が高くなり、アルカリ金属水酸化物及び/又は相間移動触媒の使用量が多く、反応時間を長くするとカロテノイドの生成比が高くなる。
【0033】
反応後に、通常の後処理、例えば抽出、洗浄、晶析、各種クロマトグラフィーなどの操作を行うことにより、スルホン化合物(3)及びカロテノイドを単離及び精製することができる。
【0034】
スルホン化合物(3)は、塩基と反応させることにより、容易にカロテノイドに導くことができる。また、上記反応により得られるカロテノイドは、通常は幾何異性体の混合物として得ることができる。
【0035】
また、アリルスルホン化合物(1)とアリルハライド化合物(2)を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させ、得られた反応混合物にアルコールを添加することにより、中間体を単離することなくカロテノイドを製造することもできる。
【0036】
この場合、アルカリ金属水酸化物は、反応開始時にすべて仕込むより、数回に分割して仕込んだ方が好ましい。分割して仕込む場合のタイミングは特に限定されないが、アリルスルホン化合物(1)とアリルハライド化合物(2)との反応の開始時、及びアリルスルホン化合物(1)がほぼ消失した後に仕込むことが好ましい。
【0037】
反応溶媒によっては、低級アルコールの添加により、スルホニル基の脱離が効率的に促進されることがある。添加されるアルコールとしては、炭素数1から5の低級アルコールが好ましく用いられる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノールなどが用いられる。
【0038】
アルコールの添加量は、アリルスルホン化合物(1)に対して、通常0.01から10モル倍であり、好ましくは0.1から5モル倍である。
アルコールを添加するタイミングは、原料化合物であるアリルスルホン化合物(1)がほぼ消失した後であることが好ましい。
【0039】
単離したスルホン化合物(3)からのカロテノイドの製造に使用する溶媒、試薬、条件等は、アリルスルホン化合物(1)とアリルハライド化合物(2)から出発して中間体を単離することなくカロテノイドを製造する方法と同様のものが使用される。具体的には、アルカリ金属水酸化物の使用量は、スルホン化合物(3)に対して、通常0.5〜50モル倍、好ましくは1〜30モル倍、特に好ましくは2〜20モル倍程度であり、相間移動触媒の使用量は、通常0.005〜2モル倍、好ましくは0.01〜0.5モル倍程度であり、アルコールの添加量は、通常0.01〜10モル倍、好ましくは0.1〜5モル倍程度であり、水の添加量は、通常0.01〜1モル倍、好ましくは0.05〜0.5モル倍程度である。また、反応温度としては、−78℃から溶媒の沸点まで、好ましくは0〜70℃、より好ましくは15〜50℃の範囲である。
【0040】
本発明の方法の原料化合物である下記式(1−a)で示されるアリルスルホン化合物[以下、アリルスルホン化合物(1−a)と記すこともある]は、欧州特許出願公開第1199303号明細書に記載の方法によって製造することができる。また、下記式(1−b)で示されるアリルスルホン化合物[以下、アリルスルホン化合物(1−b)と記すこともある]は、以下に示すように、アリルスルホン化合物(1−a)を、酸化反応に供することにより製造することができる。さらに、アリルハライド化合物(2)は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
【化10】

【化11】

(式中、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、Xはハロゲン原子を表し、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例に用いた化合物の化学式を以下に示す。Tsは、p−トルエンスルホニル基を表す。
【化12】

【0042】
(実施例1)
フラスコに窒素雰囲気下、粒径100μm以下の98%水酸化カリウム27mg(0.47mmol)と脱水トルエン2mlを仕込み、20〜30℃で18時間攪拌後、臭化テトラn−ブチルアンモニウム 6mg(0.02mmol)と水0.5μLを仕込んだ。次いで予め化合物(I-a)98mg(0.19mmol)と化合物(II)34mg(0.11mmol)を脱水トルエン3mlに懸濁した溶液を25〜30℃で滴下した。30〜40℃で4時間反応後、原料の消失を確認し、水でクエンチし、1N塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出した。有機層は硫酸ナトリウムで脱水し、濾過後、濾液を濃縮することでスルホン化合物(IV-a)を含む粗生成物を得た。当該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、スルホン化合物(IV-a)を結晶として単離した。
【0043】
分析データ;
FD-MS(m/z):1161
1H-NMR(CDCl3、δ):
0.61-2.25(m, 42H), 2.43(s, 12H), 2.48-3.07(m, 8H), 3.70-3.87(m, 4H), 4.87-4.93
(m, 2H), 5.72-5.81(m, 2H), 6.12-6.17(m, 2H), 7.23-7.35(m, 8H), 7.65-7.77(m, 8H)
MS、NMRよりスルホン化合物(IV-a)であることが示唆された。
【0044】
(実施例2)
水酸化カリウムの使用量を実施例1の5倍量、臭化テトラn−ブチルアンモニウムを実施例1の3倍量用いて、実施例1と同様に反応、後処理をしたところ、化合物(V-a)を主成分とするスルホン化合物(IV-a)との混合物を得た。
【0045】
(実施例3)
フラスコに窒素雰囲気下、粒径100μm以下の98%水酸化カリウム27mg(0.47mmol)と脱水トルエン2mlを仕込み、20〜30℃で18時間攪拌後、臭化テトラn−ブチルアンモニウム 6mg(0.02mmol)と水0.5μLを仕込んだ。次いで予め化合物(I-a)98mg(0.19mmol)と化合物(III)23mg(0.11mmol)を脱水トルエン2mlに懸濁した溶液を25〜30℃で滴下した。30〜40℃で4時間反応後、原料の消失を確認し、水でクエンチし、1N塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出した。有機層は硫酸ナトリウムで脱水し、濾過後、濾液を濃縮することでスルホン化合物(IV-a)を含む粗生成物を得た。当該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、スルホン化合物(IV-a)を結晶として単離した。
【0046】
(実施例4)
水酸化カリウムの使用量を実施例3の5倍量、臭化テトラn−ブチルアンモニウムを実施例3の3倍量用いて、実施例1と同様に反応、後処理をしたところ、化合物(V-a)を主成分とするスルホン化合物(IV-a)との混合物を得た。
【0047】
(実施例5)
粒径100μm〜1mmの98%水酸化カリウムを用いた以外は、実施例1と同様に反応を行い、スルホン化合物(IV-a)を含む粗生成物を得た。
【0048】
(実施例6)
100μm〜1mmの98%水酸化カリウムを用いた以外は、実施例2と同様に反応、後処理を行い、スルホン化合物(IV-a)を含む粗生成物を得た。
【0049】
(実施例7)
フレーク状の水酸化カリウムを用いて、ポリエチレングリコール600を1wt%(水酸化カリウムに対して)添加し、脱水トルエン中、還流条件で2時間加熱した後、20〜30℃に冷却し、12時間攪拌した以外は、実施例1と同様に反応、後処理を行い、スルホン化合物(IV-a)を含む粗生成物を得た。
【0050】
(実施例8)
フレーク状の水酸化カリウムを用いて、ポリエチレングリコール600を1wt%(水酸化カリウムに対して)添加し、脱水トルエン中、還流条件で2時間加熱した後、20〜30℃に戻し、12時間攪拌した以外は、実施例2と同様に反応、後処理を行い、スルホン化合物(IV-a)を含む粗生成物を得た。
【0051】
(実施例9)
フラスコに窒素雰囲気下、粒径100μm以下の98%水酸化カリウム14mg(0.25mmol)とトルエン(BHT 250ppm含有)2mlを仕込み、20〜30℃で18時間攪拌後、臭化テトラn−ブチルアンモニウム 0.4mg(0.001mmol)を仕込んだ。次いで予めスルホン化合物(IV-a)29mg(0.02mmol)をトルエン(BHT 250ppm含有)1mlに懸濁した溶液を25〜30℃で滴下した。次いでメタノール0.6μLを仕込み、30〜40℃で10時間反応後、原料の消失を確認し、水でクエンチし、1N塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出した。有機層は硫酸ナトリウムで脱水し、濾過後、濾液を濃縮することで化合物(V-a)を含む粗生成物を得た。高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、標準品との比較により化合物(V-a)が得られていることを確認した。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した化合物でMS測定を行い、目的物であることが確認できた。
【0052】
分析データ;
FD-MS(m/z):536
分析条件
装置名:島津LC−10AT型
カラム:ODS A−210EC(3mmφ×150mm、5μm)
カラム温度:40℃
移動相:A液 水 0.1%TFA、B液 MTA 0.1%TFA
B:95%(15分ホールド)→(5分)→100%(30分ホールド)
移動相流量:0.5mL/分
検出器 :UV470nm
試料注入量:10μL
【0053】
(実施例10)
フラスコに窒素雰囲気下、粒径100μm以下の98%水酸化カリウム14mg(0.25mmol)とトルエン(BHT 250ppm含有)2mlを仕込み、すぐに、臭化テトラn−ブチルアンモニウム 0.4mg(0.001mmol)を仕込んだ。次いで予めスルホン化合物(IV-a)29mg(0.02mmol)をトルエン(BHT 250ppm含有)1mlに懸濁した溶液を25〜30℃で滴下した。次いでメタノール0.6μLを仕込み、30〜40℃で4時間反応後、原料の消失を確認し、水でクエンチし、1N塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出した。有機層は硫酸ナトリウムで脱水し、濾過後、濾液を濃縮することで化合物(V-a)を含む粗生成物を得た。高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、標準品との比較により化合物(V-a)が得られていることを確認した。
【0054】
(実施例11)
フラスコに窒素雰囲気下、粒径100μm〜1mmの98%水酸化カリウム14mg(0.25mmol)とトルエン(BHT 250ppm含有)2mlを仕込み、すぐに、臭化テトラn−ブチルアンモニウム 0.4mg(0.001mmol)を仕込んだ。次いで予めスルホン化合物(IV-a)29mg(0.02mmol)をトルエン(BHT 250ppm含有)1mlに懸濁した溶液を25〜30℃で滴下した。次いでメタノール0.6μLを仕込み、30〜40℃で4時間反応後、原料の消失を確認し、水でクエンチし、1N塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出した。有機層は硫酸ナトリウムで脱水し、濾過後、濾液を濃縮することで化合物(V-a)を含む粗生成物を得た。高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、標準品との比較により化合物(V-a)が得られていることを確認した。
【0055】
(実施例12)
フラスコに窒素雰囲気下、フレーク状の98%水酸化カリウム23mg(0.41mmol)とトルエン(BHT 250ppm含有)2mlを仕込み、還流条件で1時間攪拌後、25〜30℃まで徐冷し、臭化テトラn−ブチルアンモニウム 0.7mg(0.002mmol)を仕込んだ。次いで予めスルホン化合物(IV-a)50mg(0.04mmol)をトルエン(BHT 250ppm含有)1mlに懸濁した溶液を25〜30℃で滴下した。次いでメタノール1μLを仕込み、30〜40℃で10時間反応後、原料の消失を確認し、水でクエンチし、1N塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出した。有機層は硫酸ナトリウムで脱水し、濾過後、濾液を濃縮することで化合物(V-a)を含む粗生成物を得た。高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、標準品との比較により化合物(V-a)が得られていることを確認した。
【0056】
(実施例13)
フラスコに窒素雰囲気下、トルエン2ml、化合物(I-b) 100mg(1.0MR、0.19mmol)、粒子径1〜2mmの95%KOH 28mg(2.5MR、0.47mmol)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム3mg(0.05MR、0.01mmol)を25℃で仕込み、スラリー状の反応混合物に、化合物(III)23mg(0.6MR、0.11mmol)をトルエン1mlに溶解して同温度で滴下した。さらに、水0.5μL(0.15MR、0.03mmol)を添加し、30℃で6時間攪拌した。反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチル(10mlで3回)で抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレーターで溶媒を留去することにより茶褐色のオイル状の粗生成物を得た。高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率は、スルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として92%であり、原料化合物(I-b)が1.5%であった。
【0057】
分析データ;
1H-NMR (CDCl3、δ):
7.68-7.83 (4H, m), 7.58-7.72 (4H, m), 7.29-7.39 (8H, m), 6.06-6.18 (2H, m), 5.73-5.75 (2H, m), 4.83-4.91 (2H, m), 3.95-4.10 (2H, m), 3.79-3.94 (2H, m), 2.69-3.10 (4H, m), 2.10-2.80 (4H, m), 2.49-2.50 (2H, m), 2.44-2.45 (12H, 4xs), 2.30-2.34 (2H, m), 2.06-2.11 (6H, 2xs), 1.76-1.90 (2H, m), 1.55-1.80 (2H, m), 1.55-1.64 (6H, 2xs), 1.20-1.27 (6H, m), 1.04-1.18 (6H, m), 0.76-1.02 (6H, m)。
FD-MS:1189.5
【0058】
(実施例14)
フラスコに窒素雰囲気下、トルエン2ml、化合物(I-b) 100mg(1.0MR、0.19mmol)、粒子径1〜2mmの95%KOH 28mg(2.5MR、0.47mmol)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム3mg(0.05MR、0.01mmol)を25℃で仕込み、スラリー状の反応混合物に、化合物(III)23mg(0.6MR、0.11mmol)をトルエン1mlに溶解して同温度で滴下した。さらに水0.5μL(0.15MR、0.03mmol)を添加し、30℃で6時間攪拌した。反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチル(10mlで3回)で抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレーターで溶媒を留去することにより茶褐色のオイル状の粗生成物を得た。高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率はスルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として91%であり、原料化合物(I-b)が2.1%であった。
【0059】
(実施例15)
フラスコに窒素雰囲気下、トルエン2ml、化合物(I-b) 100mg(1.0MR、0.19mmol)、粒子径1〜2mmの95%KOH 28mg(2.5MR、0.47mmol)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム3mg(0.05MR、0.01mmol)を25℃で仕込み、スラリー状の反応混合物に、化合物(III)23mg(0.6MR、0.11mmol)をトルエン1mlに溶解して同温度で滴下した。さらに水0.5μL(0.15MR、0.03mmol)を添加し、30℃で20時間攪拌した。反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチル(10mlで3回)で抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレーターで溶媒を留去することにより茶褐色のオイル状の粗生成物を得た。高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率は、スルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として96%であり、原料化合物(I-b)が2.8%であった。
【0060】
(実施例16)
85%KOHを用いた以外は、実施例15と同様に反応、後処理を行い、高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率は、スルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として94%であり、原料化合物(I-b)が4.8%であった。
【0061】
(実施例17)
平均粒子径0.7mmの98%NaOHを20mg用いた以外は実施例13と同様に仕込みを行い、30℃で22時間反応させ、実施例13と同様に後処理を行い、高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率は、スルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として78%であり、原料化合物(I-b)が5.2%であった。
【0062】
(実施例18)
粒子径1〜2mmの98%NaOHを20mg用いた以外は実施例13と同様に仕込みを行い、30℃で22時間反応させ、実施例13と同様に後処理を行い、高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率は、スルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として73%であり、原料化合物(I-b)が2.7%であった。
【0063】
(実施例19)
反応溶媒として脱水エチレングリコールジメチルエーテルを用いた以外は、実施例13と同様に仕込み、25℃で2時間反応し、実施例13と同様に後処理を行い、高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率は、スルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として78%であり、原料化合物(I-b)が3.1%であった。一部、化合物(V-b)が生成していることも確認できた。
【0064】
(実施例20)
反応溶媒として脱水テトラヒドロフランを用いた以外は、実施例13と同様に仕込み、25℃で4時間反応し、実施例13と同様に後処理を行い、高速液体クロマトグラフィーで定量(内標準法)したところ、収率は、スルホン化合物(IV-b)が異性体混合物として87%であり、原料化合物(I-b)が2%であった。一部、化合物(V-b)が生成していることも確認できた。
【0065】
(実施例21)
化合物(II)32mg(0.6MR、0.11mmol)を用いた以外は実施例13と同様に反応、後処理を行い、茶褐色のオイル状の粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、スルホン化合物(IV-b)を黄色結晶として得た。高速液体クロマトグラフィーで分析(面積百分率)したところ、スルホン化合物(IV-b)は、異性体混合物として97%であった。
【0066】
(実施例22)
フラスコに窒素雰囲気下、トルエン3ml、粒子径100μm〜1mmの95%KOH 50mg(10.0MR、0.84mmol)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム1mg(0.05MR、0.004mmol)を25℃で仕込み、スラリー状の反応混合物に、スルホン化合物(IV-b)100mg (1.0MR、0.08mmol)をトルエン2mlに溶解した溶液を25℃で仕込んだ。メタノール 1.3μL (0.5MR、0.04mmol)を添加し、30℃で20時間攪拌した。反応は、HPLCとTLCにより観察し、原料化合物及び反応中間体がほぼ消失した時点で、1N塩酸水溶液でクエンチした。その後、酢酸エチルで抽出(10ml*3回)し、飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸ナトリウムで脱水した。溶媒を留去することにより固形物が得られた。HPLC(PDA検出器)で分析したところ、化合物(V-b、異性体混合物)が93%(面積百分率)で得られていることを標準品サンプルとの比較により確認した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の方法によれば、カロテノイドの中間体として有用なスルホン化合物及びカロテノイドを工業的に有利な方法で製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるアリルスルホン化合物と、式(2):
【化2】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、波線は上記と同じ意味を表す。)
で示されるアリルハライド化合物を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とする式(3):
【化3】

(式中、A、Ar及び波線は、上記と同じ意味を表す。)
で示されるスルホン化合物の製造方法。
【請求項2】
式(1):
【化4】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるアリルスルホン化合物と、式(2):
【化5】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、波線は上記と同じ意味を表す。)
で示されるアリルハライド化合物を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させ、得られた反応混合物にアルコールを添加することを特徴とするカロテノイドの製造方法。
【請求項3】
式(1)で示される化合物において、Arが4−メチルフェニル基であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか記載の製造方法。
【請求項4】
式(2)で示されるアリルハライド化合物において、Xが臭素原子又は塩素原子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
Xが塩素原子であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属水酸化物が、純度85%以上の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
【請求項7】
アルカリ金属水酸化物の粒径が、3mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の製造方法。
【請求項8】
アルカリ金属水酸化物の粒径が、100μm以下であることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
アルカリ金属水酸化物の使用量が、式(1)で示されるアリルスルホン化合物に対し、1〜30モル倍の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の製造方法。
【請求項10】
相間移動触媒が、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の製造方法。
【請求項11】
相間移動触媒の使用量が、式(1)で示されるアリルスルホン化合物に対し、0.01〜0.5モル倍の範囲であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の製造方法。
【請求項12】
式(1)で示されるアリルスルホン化合物に対し、0.05〜0.5モル倍の水を添加することを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の製造方法。
【請求項13】
有機溶媒が、芳香族炭化水素又はエーテル系溶媒であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の製造方法。
【請求項14】
式(3):
【化6】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるスルホン化合物を、アルカリ金属水酸化物及び相間移動触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることを特徴とするカロテノイドの製造方法。
【請求項15】
式(3)で示される化合物において、Arが4−メチルフェニル基であることを特徴とする請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
アルカリ金属水酸化物が、純度85%以上の水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項14又は15のいずれか記載の製造方法。
【請求項17】
アルカリ金属水酸化物の粒径が、3mm以下であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか記載の製造方法。
【請求項18】
アルカリ金属水酸化物の粒径が、100μm以下であることを特徴とする請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
相間移動触媒が、第4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項14〜18のいずれか記載の製造方法。
【請求項20】
炭素数1〜5の低級アルコールを添加することを特徴とする請求項14〜19のいずれか記載の製造方法。
【請求項21】
有機溶媒が、芳香族炭化水素又はエーテル系溶媒であることを特徴とする請求項14〜20のいずれか記載の製造方法。
【請求項22】
式(3):
【化7】

(式中、Aは、CH又はC=Oであり、Arは、1〜3個の置換基を有していてもよいアリール基であり、波線は、その結合する二重結合の立体がE体、Z体又はE/Zの混合物であることを表す。)
で示されるスルホン化合物。
【請求項23】
Arが4−メチルフェニル基であることを特徴とする請求項22記載のスルホン化合物。

【公開番号】特開2010−189367(P2010−189367A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49035(P2009−49035)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】