説明

スルホン酸基含有ポリマーとその用途および製造方法

【課題】膨潤性はそのままで、物理耐久性と電極触媒層との接合性が改良されたイオン交換膜および、それに用いることができる新規スルホン酸基含有ポリマー、および該イオン交換膜および/または該スルホン酸基含有ポリマーを用いた膜/電極接合体と燃料電池、該スルホン酸基含有ポリマー組成物の提供。
【解決手段】下記化学式1で表される繰り返し構造からなるスルホン酸基含有ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造のスルホン酸基含有ポリマーと該ポリマーの組成物および製造方法、該ポリマーを用いたイオン交換膜、膜/電極接合体、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも高分子固体電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有するため、電気自動車や分散発電などの電源装置としての開発が進んできている。
【0003】
高分子固体電解質膜には通常プロトン伝導性のイオン交換膜が使用される。高分子固体電解質膜にはプロトン伝導性以外にも、燃料の水素などの透過を防ぐ燃料透過抑止性や機械的強度などの特性が必要である。このような高分子固体電解質膜としては、例えば米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜が知られている。しかしながら、分子中にフッ素を含むため、使用条件によっては排気ガス中に腐食性のフッ酸が混入することや、廃棄時に環境への負荷が大きいことなどが問題視されている。
【0004】
パーフルオロカーボンスルホン酸系イオン交換膜は、燃料電池の電解質膜としてバランスのよい特性を示すものの、コストや性能などで、より優れた膜を得るために、炭化水素系イオン交換膜の開発が盛んに行われている。
【0005】
多くの炭化水素系イオン交換膜には、ポリイミドやポリスルホンなどの耐熱性ポリマーに、スルホン酸基などのイオン性基を導入したポリマーが用いられている。(例えば特許文献1を参照)
【0006】
一般に炭化水素系イオン交換膜では、パーフルオロカーボンスルホン酸系イオン交換膜と同等のプロトン伝導性を発現させるためには、より多くのイオン性基を導入する必要がある。しかしながら、イオン性基の量が多くなると、水による膨潤性が大きくなり、吸湿時において、寸法変化や、物理特性の低下といった問題の原因となる。そのため、ポリマーの構造を改良し、より膨潤性を抑制した炭化水素系イオン交換膜もある。(例えば特許文献2を参照)
【0007】
しかしながら、膨潤性を小さくしようとすると、しばしば物理的な耐久性や電極触媒層との接合性が、低下してしまうといった問題が起こることがあった。
【0008】
【特許文献1】特表2004−509224号公報
【特許文献2】特開2004−149779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、膨潤性はそのままで、物理耐久性と電極触媒層との接合性が改良されたイオン交換膜および、それに用いることができる新規スルホン酸基含有ポリマー、および該イオン交換膜および/または該スルホン酸基含有ポリマーを用いた膜/電極接合体と燃料電池、該スルホン酸基含有ポリマー組成物の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
【0011】
1.主として下記化学式1で表される繰り返し構造からなるスルホン酸基含有ポリマー。
【0012】
【化6】

【0013】
[化学式1において、ArはArまたはArのいずれかを、Arは下記化学式2〜4で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の基を、Arは電子吸引性基を有する2価の芳香族基を、Arは、電子吸引性基と、スルホン酸基またはその塩や誘導体とを共に有する2価の芳香族基を、Arは下記化学式5で表される群より選ばれる1種以上の構造の基を、ArはAr、Arとは異なる2価の芳香族基を、ArはArまたはArのいずれかを、Z、Z、Zはそれぞれ独立して、OまたはS原子を、それぞれ表す。n、m、pは1以上の、oは0以上の整数をそれぞれ表す。]
【0014】
【化7】

【0015】
[化学式5において、Wは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基を、qは1以上の整数を、それぞれ表す。]
【0016】
ただし、化学式1において、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造の、それぞれ3つの単位構造は、それぞれランダムに結合していてもよいし、特定の単位構造が連続してセグメントを形成していてもよい。
【0017】
2.Arが化学式2で表される構造であることを特徴とする上記1に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0018】
3.Arが、下記化学式6〜9で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする上記1または2に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0019】
【化8】

【0020】
4.Arが、化学式8または9で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の構造であることを特徴とする上記3に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0021】
5.Arが、下記化学式10および11で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0022】
【化9】

【0023】
[化学式10および11において、XはHまたは1価の陽イオンを表す。]
【0024】
6.Arが、化学式10で表される構造である基であることを特徴とする上記5に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0025】
7.Arが下記化学式12で表される構造である基であることを特徴とする上記1〜6のいずれかにに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0026】
【化10】

【0027】
8.Wが、O原子、S原子、−C(CF−基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0028】
9.ZおよびZがO原子であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0029】
10.ZがS原子であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0030】
11.Arが化学式2で表される構造であり、Arが化学式9で表される構造であり、Arが化学式10で表される構造であり、WがOまたはS原子であり、Arが化学式12で表される構造であり、ZおよびZがいずれもO原子であり、ZがOまたはS原子のいずれかであることを特徴とする上記1に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0031】
12.WがO原子であり、qの平均値が3以上であることを特徴とする上記11に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0032】
13.n、m、oが下記の数式を満たすことを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0033】
【数4】

【0034】
14.n、m、oが下記の数式を満たすことを特徴とする上記13に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0035】
【数5】

【0036】
15.n、m、oが下記の数式を満たすことを特徴とする上記14に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【0037】
【数6】

【0038】
16.上記1〜15のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマーを用いたイオン交換膜。
【0039】
17.上記16に記載のイオン交換膜を用いた膜/電極接合体。
【0040】
18.電極触媒層に、上記1〜15のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマーを用いたことを特徴とする膜/電極接合体。
【0041】
19.上記17または18に記載の膜/電極接合体を用いた燃料電池。
【0042】
20.上記1〜15のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマーを含む組成物。
【0043】
21.(A)Ar、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造と、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造と、活性な末端基とを必須成分とし、必要に応じて−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造を含むオリゴマーを合成する工程、および(B)前記オリゴマーの活性な末端基と反応し得る末端基を、化学式5で表される構造と共に有する化合物を反応させる工程を有することを特徴とする上記1〜15のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0044】
本発明による新規スルホン酸基含有ポリマーまたは該組成物から得られるイオン交換膜は、従来の炭化水素系イオン交換膜に比べて、燃料電池として用いた場合に、高い耐久性と高出力を可能にするという優れた効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0046】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーの構造を示した化学式1におけるArは化学式2〜4で表される基である。Arが化学式2の構造であると、ポリマーの膨潤性が抑制され吸湿時においても優れた物理特性を示すため好ましい。Arが化学式3の構造であると、ガラス転移温度が高くなり耐熱性が向上するため好ましい。Arが化学式4の構造であると、成型したときの脆さが低減できるため好ましい。化学式2〜4の中でも、化学式2は全般的に良い特性を示すため最も好ましい。
【0047】
Arは電子吸引性基を有する2価芳香族基である。電子吸引性基の例としては、スルホン基、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィン基、シアノ基、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基、ニトロ基、ハロゲン基などが挙げられ、シアノ基、スルホン基、カルボニル基が好ましい。さらに、Arは化学式6〜9で表される構造から選ばれる1種以上の基であることが好ましい。化学式6の構造であると、溶媒への溶解性が高まるため好ましい。また、化学式7の構造であると、ポリマーに光架橋性を付与することが可能になるため好ましい。また、化学式8または9の構造であると、ポリマーの膨潤性が小さくなるため好ましい。下記化学式6〜9の中でも、化学式8または9の構造が好ましく、化学式9の構造が最も好ましい。
【0048】
Arは電子吸引性基と、スルホン酸基またはその塩や誘導体を共に有する2価の芳香族基である。電子吸引性基の例としては、スルホン基、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィン基、シアノ基、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基、ニトロ基、ハロゲン基などが挙げられ、シアノ基、スルホン基、カルボニル基が好ましい。スルホン酸基は遊離の酸であってもよいし、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン、第四級アミン塩などの1価のカチオンとの塩であってもよいし、エステル、アミド、スルホンイミド、酸無水物、酸ハライドなどの誘導体であってもよい。燃料電池のイオン交換膜や電極触媒層のアイオノマーとして用いる場合には、遊離のスルホン酸であることがプロトン伝導性の面から好ましく、全スルホン酸基における遊離のスルホン酸が80モル%以上であることがより好ましく、90モル%であるとさらに好ましい。Arの例としては化学式6〜9で表される構造にスルホン酸基を導入した基を挙げることができる。化学式6に由来する構造であると、溶媒への溶解性が高まるため好ましい。また、化学式7に由来する構造であると、ポリマーに光架橋性を付与することが可能になるため好ましい。具体的には、化学式10または11で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の基であると優れたプロトン伝導性を示すため好ましい。化学式10で表される構造であると溶媒への溶解性が高まるため好ましい。また、化学式11で表される構造であると、ポリマーに光架橋性を付与することが可能になるため好ましい。中でも、化学式10で表される構造であると、耐熱性、プロトン伝導性などにおいて優れた特性を示すため、より好ましい。
【0049】
化学式10または11において、XはHまたは1価の陽イオンを表すが、燃料電池のイオン交換膜として用いる場合には、XはHであることが好ましい。また、溶解、成型、製膜などの加工においては、XがHであるよりも1価の陽イオンであるほうが、スルホン酸基の熱安定性が高まるため好ましい。1価の陽イオンとしては、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン、第四級アミン塩などが例として挙げることができ、Na、K、Liなどのアルカリ金属イオンが好ましい。アルカリ金属塩となっているスルホン酸基は、硫酸、塩酸、過塩素酸などの強酸またはその水溶液でポリマーを処理することによって、スルホン酸基に変換することができる。スルホン酸基を有するポリマーは高いプロトン伝導性を示し、イオン交換樹脂や、イオン交換膜として用いることができる。中でもイオン交換膜は、固体高分子形燃料電池の電解質として用いることができ、本発明のポリマーを用いると優れた性能を有する燃料電池を得ることができる。
【0050】
Arは、化学式5で表される群より選ばれる1種以上の基を表す。化学式5におけるWは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基を表すが、O原子、S原子、−C(CF−基、であると、接合性が向上すると共に、耐久性にも優れるため好ましく、中でもOまたはS原子であることがより好ましく、S原子が最も好ましい。qは1以上であればよい。WがO原子の場合、qの値は2種類以上であってもよいが、その平均値が3以上であると、接合性がさらに向上するため好ましい。
【0051】
、Z、Zは、それぞれ独立してOまたはS原子を表すが、S原子であると耐酸化性が向上するため好ましい。O原子であるとポリマーの原料となるモノマーの毒性が低く、入手しやすいためより好ましい。それぞれ、合成のしやすさ、耐久性の面から、Z、ZはO原子であることが好ましく、さらにZがS原子であるとより好ましい。
【0052】
ArはAr、Arとは異なる2価の芳香族基を表す。Arは、ベンゼン環以外にも、ベンザゾール基、ピリジン環、トリアジン環などの複素芳香族基を有していてもよい。また、シアノ基、ヒドロキシ基などの極性基を有していてもよい。Arが化学式12で表される構造であると耐久性が向上するため好ましい。あるいは、ホスホン酸基やリン酸基などを含むようなものであると、耐酸化性が向上して好ましい。また、メチル基などのアルキル基や、アリル基、エチニル基、マレイミド基などの架橋性を有する基を含むものであると、ポリマーに架橋性を付与してイオン交換膜の耐久性や強度などを向上させることができるため好ましい。その他のArの具体例としては化学式13A〜13Eで表される構造を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
【化11】

【0054】
(式中、Rはメチル基を、rは0〜2の整数を、sは1以上の整数を、それぞれ表す。)
【0055】
化学式1において、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造の、それぞれ3つの単位構造は、それぞれランダムに結合していてもよいし、特定の単位構造が連続してセグメントを形成していてもよい。Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造は必須であるが、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造はなくてもよい。全てがランダムに結合しているほうが、耐膨潤性、耐久性において優れるため好ましい。
【0056】
化学式1における、n、m、oが数式1および2を満たしていると、プロトン伝導性や耐膨潤性、接合性などにおいて特性が良好なイオン交換膜を得ることができる。さらに、n、m、oが数式3を満たしていると、耐膨潤性と接合性のバランスが取れるためより好ましい。n+m+oが2よりも小さいと膨潤性が大きくなる傾向にあり、接合性は有するものの、メタノール透過性が大きくなったり、耐久性が低下したりするなどして好ましくない。n+m+oが1000よりも大きいと、接合性の改善効果が極めて小さくなり好ましくない。
【0057】
本発明のイオン交換膜を、ダイレクトメタノール型燃料電池のイオン交換膜として用いる場合には、nおよびmは数式5を満たすことが好ましい。
【0058】
【数7】

【0059】
m/(n+m)が小さくなるほどメタノール透過性は小さくなるがプロトン伝導性も低下し、大きくなるとプロトン伝導性は向上するが、メタノール透過性も増大する。用いるメタノール水溶液の濃度、容量などを考慮して目的に応じたnとmを選ぶことで、優れた燃料電池を得ることができる。0.1よりも小さいと充分なプロトン伝導性が得られず、燃料電池の出力が低くなり、0.5よりも大きいとメタノールが膜を透過する量が大きくなりすぎて燃料電池の出力が低下してしまうため好ましくない。より好ましい範囲は0.1〜0.4である。また、燃料として用いるメタノール水溶液の濃度が低い場合にはm/(n+m)が大きいほうが、プロトン伝導性が大きくなるため、燃料電池の出力が高くなる。一方、高濃度のメタノール水溶液を用いる場合には、m/(n+m)が小さいほうが、メタノールの透過に伴う出力の低下を抑制することができ、燃料電池の出力を大きくすることができる。
【0060】
本発明のイオン交換膜を、水素を燃料とする燃料電池のイオン交換膜として用いる場合には、nおよびmは数式6を満たすことが好ましい。
【0061】
【数8】

【0062】
m/(n+m)が小さくなるほど膨潤性は小さくなるがプロトン伝導性も低下し、大きくなるとプロトン伝導性は向上するが、膨潤性も増大する。m/(n+m)の値が、0.3よりも小さいと充分なプロトン伝導性が得られず、燃料電池の出力が低くなり好ましくない。0.7よりも大きいと膜の膨潤性が大きくなりすぎて破損や出力低下などが起きやすくなり好ましくない。m/(n+m)のより好ましい範囲は0.35〜0.7であり、より好ましくは0.4〜0.5の範囲である。目的に応じたnとmを選ぶことで、優れた燃料電池を得ることができる。
【0063】
pは1以上の整数であればよいが、より好ましくは3〜1000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5〜1000の範囲である。3以下だとポリマーの分子量が小さくなり、イオン交換膜の物理特性が低下する可能性がある。また、1000以上だとポリマーの分子量が大きくなりすぎて、溶液の粘度が著しく高くなるなど、取り扱いが困難になる。ポリマーの分子量は後述するように、希薄溶液の対数粘度で適正な範囲に管理することができる。
【0064】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーにおいて、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造は必須ではなく、oは0でもよいが、耐久性、架橋性の付与、物理特性の向上などを目的として、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造を組み込むことができる。その場合、n、m、oは数式4を満たしていると、特性のバランスが優れるため好ましい。さらに好ましい範囲は数式7で示される範囲である。
【0065】
【数9】

【0066】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、イオン交換樹脂や、イオン交換膜、吸湿樹脂、吸湿膜、透湿膜、電解膜などに用いることができ、特にイオン交換膜として用いることが好ましい。さらに、本発明のスルホン酸基含有ポリマーを用いたイオン交換膜は、スルホン酸基をスルホン酸型にすることでプロトン交換膜として用いることができ、燃料電池用イオン交換膜に特に適している。また、本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、イオン交換膜などを、電極、触媒と接合する際に、接着剤として用いることにも適している。
【0067】
本発明のイオン交換膜は、電極や触媒を接合して膜/電極接合体とすることができる。また、本発明のイオン交換膜以外の膜に対して、電極や触媒との接着剤として、本発明のスルホン酸基含有ポリマーを用いることができる。本発明のスルホン酸基含有ポリマーを接着剤として用いる場合には、スルホン酸基が酸型であることが好ましい。スルホン酸基が陽イオンと塩を形成している状態で用いる場合には、接合後、酸処理によってスルホン酸基を酸型にすることもできる。
【0068】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、適当な溶媒に溶解、分散して組成物として用いることもできる。用いることのできる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミド、N−モルフォリンオキサイドなどの非プロトン性有機極性溶媒や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などの極性溶媒、およびこれらの有機溶媒の混合物、並びに水との混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
ポリマー溶液の濃度は0.1〜50重量%の範囲が好ましい。溶液から、膜、繊維などを成型する場合には、濃度が5〜50重量%の範囲にあることがより好ましく、10〜40重量%の範囲がさらに好ましい。溶液を接着剤として用いる場合には、濃度が0.1〜20重量%の範囲であるとより好ましい。溶液を接着剤として用いる場合には、Pt、PT−Ruなどの触媒を担持したカーボン粒子や、フッ素樹脂など、他の成分を含んでいてもよい。
【0070】
本発明のおけるスルホン酸基含有ポリマーにおいて、好ましい構造の代表例である化学式14A〜14ARを以下に示すが、本発明の範囲は、以下に限定されるものではない。下記式中で、q’は3以上の整数を表す。
【0071】
【化12】

【0072】
【化13】

【0073】
【化14】

【0074】
【化15】

【0075】
化学式14A〜14ACの中でも、化学式14A〜14Pが、プロトン伝導性と耐膨潤性に優れるため好ましく、化学式14A、14D、14G、14I、14L、14Oがより好ましく、化学式14A、14D、14Gがさらに好ましく、化学式14Aが最も好ましい。また、化学式14V〜14AAで表される構造であると、ポリマーの耐酸化性が向上するため好ましい。また、化学式14ABまたは14ACで表される構造であるとポリマーが架橋性を有するため、膨潤性の小さいイオン交換膜を得ることができるため好ましい。
【0076】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、公知の任意の方法で合成することができるが、その一例としては、電子吸引性基によって活性化されたハロゲン元素またはニトロ基を1分子中に少なくとも2個有する化合物と、ビスフェノール化合物、ビスチオフェノール化合物、ビスフェノール化合物の誘導体、およびビスチオフェノール化合物の誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを、極性非プロトン性溶媒中で、必要に応じて塩基性物質を加えて加熱することによって、芳香族求核置換反応により重合することができる。
【0077】
本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、(A)Ar、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造と、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造と、活性な末端基とを必須成分とし、必要に応じて−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造を含むオリゴマーを合成する工程、および(B)前記オリゴマーの活性な末端基と反応し得る末端基を、化学式5で表される構造と共に有する化合物を反応させる工程を有する方法によって得ることができる。具体的には、Ar、Ar、Arの構造になるそれぞれのモノマーを、ArとArのモル数の合計がArよりも過剰になるようにして反応させて、ハロゲンもしくはニトロ基末端のオリゴマーを合成し、そこに化学式5の構造に、ヒドロキシ基またはメルカプト基が結合したモノマーを反応させることによって、本発明のスルホン酸基含有ポリマーが得られる。前記のオリゴマーは、反応後で、一旦精製、単離してから用いてもよいし、反応溶液に化学式5の構造に、ヒドロキシ基またはメルカプト基が結合したモノマーを加えてさらに反応させてもよい。
【0078】
スルホン酸基は、上記のモノマーのいずれかに予め導入しておくことが反応性の面から好ましい。
【0079】
電子吸引性基の例としては、スルホン基、カルボニル基、スルホニル基、ホスフィン基、シアノ基、トリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基、ニトロ基、ハロゲン基などが挙げられ、シアノ基、スルホン基、カルボニル基が好ましい。
【0080】
電子吸引性基によって活性化されたハロゲン元素またはニトロ基を1分子中に少なくとも2個有する化合物として、スルホン酸基を有さないもの例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジクロロ−1−トリフルオロメチルベンゼン、2,4−ジクロロ−1−トリフルオロメチルベンゼン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロジフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ビス(4−フルオロフェニルスルホニル)ビフェニル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロ−1−トリフルオロメチルベンゼン、2,4−ジフルオロ1−トリフルオロメチルベンゼン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。中でも、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンが好ましく、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリルがさらに好ましい。
【0081】
電子吸引性基によって活性化されたハロゲン元素またはニトロ基を1分子中に2個有する化合物として、スルホン酸基を有するものの例としては3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウム、リチウムや他の金属種や各種アミン類等を挙げることができ、ナトリウム、カリウムなどが好ましいが、これらに限定されるものではない。好ましい例として、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを挙げることができ、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンがより好ましい。
【0082】
化学式1のArを形成するビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物としては、1,3−ビス(4−ヒドロキシ)アダマンタン、4,4’−ビフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジメルカプトビフェニルを用いることができ、4,4’−ビフェノールが好ましい。
【0083】
化学式1のArを形成するビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物としては、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどを用いることができ、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンがより好ましく、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドがさらに好ましい。これらのモノマーに由来するポリマー構造が、ポリマーの柔軟性を高め、変形に対して破壊しにくくして耐久性を高める効果や、ガラス転移温度を低下させて電極との接合性が高まる効果をもたらしている。
【0084】
化学式1のArを形成するビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−メルカプトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−メルカプトシフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ジメルカプトビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、4,4’−チオジフェノール、3−メチル−4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、1,3−ビス(4−ヒドロキシ)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ)アダマンタン、ナフタレンビスフェノール類、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド、ジアリルビスフェノールAなどを用いることができる。
【0085】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーを芳香族求核置換反応により重合する場合、上記の芳香族ジハロゲン化合物と、ビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物とを、塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。モノマー中の、反応性のハロゲン基またはニトロ基と、反応性のヒドロキシ基およびチオール基のモル比は任意のモル比にすることで、得られるポリマーの重合度を調整することができるが、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1であり、0.95〜1.05であるとさらに好ましく、1であると最も高重合度のポリマーを得ることができる。
【0086】
重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
【0087】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられるが、芳香族ジオール類や芳香族ジメルカプト化合物を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。塩基性化合物は、ビスフェノール化合物およびビスチオフェノール化合物の総和に対して100モル%以上の量を用いると良好に重合することができ、好ましくはビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物の総和に対して105〜125モル%の範囲である。ビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物の量が多くなりすぎると、分解などの副反応の原因となるので好ましくない。
【0088】
また、上記重合反応において、塩基性化合物を用いずに、ビスフェノール化合物またはビスチオフェノール化合物を、イソシアネート化合物と反応させてカルバモイル化したものと、活性化ジハロゲン芳香族化合物やジニトロ芳香族化合物とを直接反応させることもできる。
【0089】
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。また副生する塩類を濾過によって取り除いてポリマー溶液を得ることもできる。
【0090】
また、本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーは、後で述べる方法により測定したポリマー対数粘度が0.1dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.1dL/gよりも小さいと、イオン交換膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。対数粘度は、0.3dL/g以上であることがさらに好ましい。一方、対数粘度が5dL/gを超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
【0091】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーのイオン交換容量は、0.1meq/g以上であることが好ましいが、3.5meq/g以下であることがさらに好ましい。イオン交換容量が小さくなるとプロトン伝導性が低下するため好ましくない。イオン交換容量が大きくなると、プロトン伝導性は増大するが、同時に膜が膨潤したり、水に溶解してしまったりする問題が起きやすくなる。より好ましい範囲としては0.5〜3.5meq/g、さらに好ましい範囲としては、0.6〜2.2meq/gを挙げることができる。
【0092】
本発明におけるイオン交換膜は任意の厚みにすることができるが、10μm以下だと所定の特性を満たすことが困難になるので10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、300μm以上になると製造が困難になるため、300μm以下であることが好ましい。
【0093】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーは、単体として使用することができるが、他のポリマーとの組み合わせによる樹脂組成物として使用することもできる。これらのポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などの熱硬化性樹脂等、特に制限はない。ポリベンズイミダゾールやポリビニルピリジンなどの塩基性ポリマーとの樹脂組成物は、ポリマー寸法性の向上のために好ましい組み合わせといえる、これらの塩基性ポリマー中に、さらにスルホン酸基を導入しておくと、組成物の加工性がより好ましいものとなる。これら樹脂組成物として使用する場合には、本発明のルホン酸基含有ポリマーは、樹脂組成物全体の50質量%以上100質量%未満含まれていることが好ましい。より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。本発明のスルホン酸基含有ポリマーの含有量が樹脂組成物全体の50重量%未満の場合には、この樹脂組成物を含むイオン交換膜のスルホン酸基濃度が低くなり良好なイオン伝導性が得られない傾向にあり、また、スルホン酸基を含有するユニットが非連続相となり伝導するイオンの移動度が低下する傾向にある。なお、本発明の組成物は、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、などの各種添加剤を含んでいても良い。
【0094】
また、各種の多孔質材料、繊維材料、微粒子などと複合化してイオン交換膜とすることもできる。
【0095】
本発明のイオン交換膜は、本発明のスルホン酸基含有イオン交換樹脂を含む組成物から、押し出し、圧延またはキャストなど任意の方法で得ることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。例えば、加熱、減圧乾燥、化合物を溶解する溶媒と混和することができる化合物非溶媒への浸漬等によって、溶媒を除去し成形体を得ることができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱または減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基は陽イオン種との塩の形の物を含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。
【0096】
本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーおよびその樹脂組成物からイオン交換膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン交換膜を得ることができる。当該溶液としてはN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を用いた溶液や、場合によってはアルコール系溶媒等も挙げることができる。溶媒の除去は、乾燥によることがイオン交換膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下できるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン交換膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2000μmよりも厚いと不均一な膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にしたりして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。イオン交換膜として使用する場合、膜中のスルホン酸基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理によりフリーのスルホン酸に変換することもできる。この場合、硫酸、塩酸、等の水溶液中に加熱下あるいは加熱せずに膜を浸漬処理することで行うことも効果的である。
【0097】
本発明の膜/電極接合体は、本発明のイオン交換膜を電極と接合することによって得ることができる。この接合体の作製方法としては、従来から公知の方法を用いて行うことができ、例えば、電極表面に接着剤を塗布しイオン交換膜と電極とを接着する方法またはイオン交換膜と電極とを加熱加圧する方法等がある。この中でも本発明におけるスルホン酸基含有ポリマーおよびその樹脂組成物を主成分とした接着剤を電極表面に塗布して接着する方法が好ましい。イオン交換膜と電極との接着性が向上し、また、イオン交換膜のプロトン伝導性を損なうことが少なくなると考えられるためである。
【0098】
本発明の燃料電池は、本発明のイオン交換膜または膜/電極接合体を用いて作製することができる。本発明のイオン交換膜は、固体高分子形燃料電池に適している。本発明の燃料電池は、例えば酸素極と、燃料極と、それぞれの極に挟まれて配置された本発明の高分子電解質膜と、酸素極側に設けられた酸化剤の流路と、燃料極側に設けられた燃料の流路を有するものである。このような一つの単位セルを導電性のセパレーターで連結することによって燃料電池スタックを得ることができる。ポリマー中のスルホン酸基量を調整することによって、メタノールを燃料とするダイレクトメタノール型燃料電池や、水素を燃料とする燃料電池にも用いることができる。また、ジメチルエーテル、水素。ギ酸など他の物質を燃料として用いる燃料電池にも好適に用いることができ、電解膜、分離膜など、イオン交換膜として公知の任意の用途に用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
【0100】
対数粘度:ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチルピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/cで評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
【0101】
プロトン伝導性:自作測定用プローブ(テトラフルオロエチレン樹脂製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、25℃の水中または80℃95%の恒湿恒温槽に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。
導電率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
【0102】
メタノール透過性:イオン交換膜の液体燃料透過速度はメタノールの透過速度として、以下の方法で測定した。25℃に調整した5M(モル/リットル)のメタノール水溶液に24時間浸漬したイオン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5Mメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水(18MΩ・cm)を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量を、ガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm)。得られたメタノール透過速度とサンプルの膜厚から、メタノール透過係数を求めた。
【0103】
水素を燃料とする燃料電池(PEFC)の発電評価:デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液に、市販の40%Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒 TEC10V40E)と、少量の超純水およびイソプロパノールを加えた後、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が0.5mg/cmになるように均一に塗布・乾燥して、電極触媒層付きガス拡散層を作製した。上記の電極触媒層付きガス拡散層の間に、イオン交換膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により130℃、2.5MPaで3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度80℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ75℃で加湿した水素と空気を供給して発電特性を評価した。開始直後における電流密度が0.5A/cmにおける出力電圧を初期特性とした。また、耐久性評価として、1時間に1回の割合で開回路電圧を測定しつつ上記の条件で連続運転を行った。開回路電圧が開始直後の値よりも10%以上低下したときの時間を耐久時間とした。耐久性評価は1000時間を上限として行った。
【0104】
ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の発電評価:Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC61E54)に少量の超純水およびイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となる東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が2mg/cmになるようにスクリーン印刷により塗布乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社TEC10V40E)に少量の超純水およびイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオン(登録商標)の重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施した東レ製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1mg/cmとなるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により180℃、10MPaで3分間加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込み、燃料電池発電試験機(株式会社東陽テクニカ製)を用いて発電試験を行った。発電は、セル温度40℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ40℃に調整した高純度空気ガス(80ml/min)と、5mol/Lのメタノール水溶液(1.5ml/min)とを供給しながら行った。電流密度が0.02A/cmにおける出力電圧と、電流遮断法で測定した抵抗値を測定した。
【0105】
イオン交換容量:100℃で1時間乾燥し、窒素雰囲気下室温で一晩放置した試料の重量を測定し、水酸化ナトリウム水溶液と撹拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定でイオン交換容量を求めた。
【0106】
軟化温度:5mm幅の酸型の膜を、チャック幅10mmで、50℃から250℃まで2℃/分で加熱しながら、10Hzの動歪を与えて動的粘弾性を、Rheogel E−4000(東機産業株式会社製)を用いて測定した。温度を上昇させたときに、E’が大きく低下する変曲点の温度を変形温度とした。
【0107】
<実施例1>
3,3’−ジスルホン酸ナトリウム−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(略号:S−DCDPS)6.2332g(12.69mmol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)8.7302g(50.75mol)、4,4’−ビフェノール(略号:BP)10.6322g(57.10mmol)、炭酸カリウム9.6452g(69.79mmol)、80mlのN−メチル−2−ピロリドン(略号:NMP)をディーンスタークトラップ、窒素導入管、攪拌装置を取り付けた200ml四つ口フラスコに計り取った。フラスコをオイルバスにつけて、窒素を流しながら攪拌して加熱し、190℃でNMPと共に溜出する水を30分間除いた後、ディーンスタークトラップを取り外し、冷却管で還流するようにして、溶液温度を200℃に上昇させて8時間反応させた。その後、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド(略号:BPS)1.3848g(6.34mmol)を10mlのNMPに溶解した溶液を、少しずつ滴下し、よく攪拌してから、さらに8時間200℃で反応させた。その後、放冷し、反応溶液を水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄を2回行った後、ガラスフィルターで固形分を濾過し、100℃のイナートオーブン中で乾燥した。ポリマーの対数粘度は0.84dL/gを示した。重水素化ジメチルスルホキシド中室温で測定したH−NMRスペクトルを図1に示した。ポリマー7gをNMP28gに溶解し、ホットプレート上ガラス板に約400μm厚にキャストして80℃で0.5時間、120℃で0.5時間、150℃で0.5時間加熱した後、窒素雰囲気の150℃のオーブン中で1時間乾燥し、ガラス板からフィルムを剥離した。得られたフィルムは室温の純水に1日浸漬した後、2mol/Lの硫酸水溶液に2時間浸漬した。その後、洗浄水が中性になるまでフィルムを純水で洗浄し、空気中に放置して乾燥して、イオン交換膜を得た。得られたイオン交換膜について評価を行った。
【0108】
<実施例2>
BPSの代わりに、4,4’−チオビスベンゼンチオール(略号:TBT)4.6054g(18.39mmol)を用い、BPの量を9.7472g(52.35mmol)に変更した他は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0109】
<実施例3>
S−DCDPS、DCBN、BPS、BPの量を変更した他は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0110】
<実施例4>
BPSの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(略号:BPA)を用いた他は実施例3と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0111】
<実施例5>
BPSの代わりに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(略号:BPF)を用いた他は実施例3と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0112】
<実施例6>
S−DCDPS、DCBN、BPS、BPの量を変更し、さらに10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキシド(略号:DHP)を加えた他は実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0113】
<実施例7>
BPSの代わりに、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(略号:BPH)を用いた他は実施例3と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0114】
<比較例1>
BPSを最初から反応させた以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0115】
<比較例2>
BPSを最初から反応させた以外は、実施例3と同様にしてイオン交換膜を作製し評価を行った。
【0116】
<比較例3>
構造が公知である下記化学式15のスルホン酸基含有ポリマーを用いて実施例1と同様にして、イオン交換膜を作製し評価を行った。
【0117】
【化16】

【0118】
<比較例4>
構造が公知である下記化学式16のスルホン酸基含有ポリマーを用いて実施例1と同様にして、イオン交換膜を作製し評価を行った。
【0119】
【化17】

【0120】
<比較例5>
構造が公知である下記化学式17のスルホン酸基含有ポリマーを用いて実施例1と同様にして、イオン交換膜を作製し評価を行った。
【0121】
【化18】

【0122】
<比較例6>
市販のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)112について各種評価を行った。
【0123】
<比較例7>
市販のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)117について各種評価を行った。
【0124】
実施例および比較例のイオン交換膜の評価結果を表1に示す。
【0125】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0126】
表1より、本発明における、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)用のイオン交換膜(実施例1、2)は、比較例のイオン交換膜(比較例1、3)に対して、軟化温度が低くなることで接合性が向上し、抵抗値が低下することで高い出力電圧が得られていることが明らかである。特に実施例1と比較例1は、ポリマー組成が同じであるにも関わらず、本発明の製法で得られる特有の高次構造により、BPSの共重合量が少なくても接合性の改善効果が大きく出ており、本発明の優れた点を示している。また、既存のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)117(比較例7)に対しては、メタノール透過性が大幅に小さく、耐メタノール透過性に優れており、燃料電池としての出力も高く、優れたイオン交換膜であることが明らかである。
【0127】
また、水素を燃料とする燃料電池(PEFC)用のイオン交換膜(実施例3〜7)は、比較例のイオン交換膜(比較例2、4〜5)のイオン交換膜に対して、初期電圧がわずかに向上し、かつ耐久時間が大幅に向上しており、耐久性に優れたイオン交換膜であることが明らかである。特に実施例3と比較例2は、ポリマー組成は同じであるにも関わらず、本発明の製法で得られる特有の高次構造により、BPSの共重合量が少なくても耐久性の改善効果が大きく出ており、本発明の優れた点を示している。また既存のイオン交換膜であるナフィオン(登録商標)112(比較例6)に匹敵する耐久性を示し、かつ同等以上の初期電圧を示すことから、フッ酸などの腐食性物質の発生が少なく、また廃棄時の環境負荷の少ない炭化水素系イオン交換膜として、充分に優れた特性を有していることは明らかである。これらのことから、本発明のスルホン酸基含有ポリマーは、燃料電池用イオン交換膜に用いることによってその特性を大きく改善することができ、産業界に寄与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明における実施例1で合成したポリマーを、VARIAN社製GEMINI−200を用いて、重水素化ジメチルスルホキシド中室温で測定したH−NMRスペクトルである。
【0129】
【図2】本発明における実施例6で合成したポリマーを上記と同様にして測定したH−NMRスペクトルである。
【0130】
【図3】本発明における実施例1で得られたRheogel E−4000(東機産業株式会社製)を用いて測定したイオン交換膜の動的粘弾性特性を示す。
【符号の説明】
【0131】
NMP:ポリマーに不純物として含まれている重合溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンに由来するシグナル
DMSO:重水素化ジメチルスルホキシド中のジメチルスルホキシドに由来するシグナル
O:ポリマーに吸着した水に由来するシグナル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として下記化学式1で表される繰り返し構造からなるスルホン酸基含有ポリマー。
【化1】

[化学式1において、ArはArまたはArのいずれかを、Arは下記化学式2〜4で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の基を、Arは電子吸引性基を有する2価の芳香族基を、Arは、電子吸引性基と、スルホン酸基またはその塩や誘導体とを共に有する2価の芳香族基を、Arは下記化学式5で表される群より選ばれる1種以上の構造の基を、ArはArとは異なる2価の芳香族基を、ArはArまたはArのいずれかを、Z、Z、Zはそれぞれ独立して、OまたはS原子を、それぞれ表す。n、m、pは1以上の、oは0以上の整数をそれぞれ表す。]
【化2】

[化学式5において、Wは、O原子、S原子、−C(CH−基、−C(CF−基、−CH−基、シクロヘキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基を、qは1以上の整数を、それぞれ表す。]
ただし、化学式1において、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造の、それぞれ3つの単位構造は、それぞれランダムに結合していてもよいし、特定の単位構造が連続してセグメントを形成していてもよい。
【請求項2】
Arが化学式2で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項3】
Arが、下記化学式6〜9で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする、請求項1または2に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【化3】

【請求項4】
Arが、化学式8または9で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の構造であることを特徴とする請求項3に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項5】
Arが、下記化学式10および11で表される構造からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【化4】

[化学式10および11において、XはHまたは1価の陽イオンを表す。]
【請求項6】
Arが、化学式10で表される構造である基であることを特徴とする請求項5に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項7】
Arが下記化学式12で表される構造である基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【化5】

【請求項8】
Wが、O原子、S原子、−C(CF−基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項9】
およびZがO原子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項10】
がS原子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項11】
Arが化学式2で表される構造であり、Arが化学式9で表される構造であり、Arが化学式10で表される構造であり、WがOまたはS原子であり、Arが化学式12で表される構造であり、ZおよびZがいずれもO原子であり、ZがOまたはS原子のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項12】
WがO原子であり、qの平均値が3以上であることを特徴とする請求項11に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【請求項13】
n、m、oが下記の数式を満たすことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【数1】

【請求項14】
n、m、oが下記の数式を満たすことを特徴とする請求項13に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【数2】

【請求項15】
n、m、oが下記の数式を満たすことを特徴とする請求項14に記載のスルホン酸基含有ポリマー。
【数3】

【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマーを用いたイオン交換膜。
【請求項17】
請求項16のイオン交換膜を用いた膜/電極接合体。
【請求項18】
電極触媒層に請求項1〜15のいずれかに記載のポリマーを用いたことを特徴とする膜/電極接合体。
【請求項19】
請求項17または18に記載の膜/電極接合体を用いた燃料電池。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマーを含む組成物。
【請求項21】
(A)Ar、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造と、−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造と、活性な末端基とを必須成分とし、必要に応じて−Z−Ar−Z−Ar−で表される単位構造を含むオリゴマーを合成する工程、および(B)前記オリゴマーの活性な末端基と反応し得る末端基を、化学式5で表される構造と共に有する化合物を反応させる工程を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のスルホン酸基含有ポリマーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−63533(P2007−63533A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187807(P2006−187807)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】