説明

スルホン酸基含有共重合体およびその製造方法およびその用途

【課題】洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された再汚染防止能を有する重合体組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明にかかる共重合体は、スルホン酸基含有単量体と分子内にカルボキシル基を1つ有するカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を過酸化水素の存在下で重合して得られるスルホン酸基含有共重合体であって、該共重合体中のスルホン酸基含有単量体由来の構造(S)の組成が、5を超えて60質量%以下(酸型換算)であり、カルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成が40質量%以上95質量%未満(酸型換算)であり、上記構造(S)と構造(C)の組成の合計が85質量%以上100質量%以下(酸型換算)であるスルホン酸基含有共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸基含有共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、多くのカルボキシル基を有するアクリル酸系重合体、マレイン酸/アクリル酸系共重合体等は、カルシウムイオン捕捉作用やクレー分散作用等を有することが知られていることから、洗剤組成物、無機顔料分散剤、凝集剤、スケール防止剤、キレート剤、繊維処理剤等の広範囲の用途に使用されている。
【0003】
上記アクリル酸系重合体の製造方法としては、例えば特許文献1、特許文献2等種々開示されており、上記作用を向上させる工夫がなされている。
また、特許文献3には、マレイン酸系単量体およびアクリル酸系単量体およびスルホン酸基含有単量体を必須に重合して得られる共重合体が、良好なカルシウムイオン捕捉能、高硬度水でのクレー分散能、耐ゲル化能を示すことが開示されている。また、特許文献3には、上記重合体が過酸化水素等からなる重合開始剤を使用して製造されることが知られている。
【0004】
また、特許文献4には、アクリル酸と3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムの共重合体であって、連鎖移動剤として亜硫酸塩を用いた共重合体が、良好な耐ゲル性を発揮することが開示されている。
ここで、近年の消費者の環境問題への意識の高まりより、洗剤ビルダーに要求される性能が変化しつつある。すなわち、消費者が風呂の残り湯を洗濯に使用することにより節水を図ったり、排水する洗剤成分の低減の志向により使用量の少ない洗剤(洗剤組成物のコンパクト化)を好んだりするようになってきた。
残り湯の使用により、汚れ成分や硬度成分の多い条件下で洗濯をしなければならない問題が発生する。上記問題に対処すべく、汚れ成分の洗濯中の繊維などへの再付着を抑制する再汚染防止能が従来より一層高い剤が要求されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−270605号公報
【特許文献2】特開平5−239114号公報
【特許文献3】特開2000−355615号公報
【特許文献4】特開2002−3536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来、種々の重合体が報告されてはいるものの、上述した現在の消費者ニーズに更に適応した洗剤ビルダーの開発が求められている。
そこで、本発明は、洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された洗浄力および再汚染防止能を有する重合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、スルホン酸基含有単量体由来の構造と、カルボキシル基含有単量体由来の構造とを所定の割合で有する共重合体であって、過酸化水素の存在下で重合された共重合体が、高い洗浄力を有し、かつ再汚染防止能が顕著に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明にかかる共重合体は、スルホン酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を過酸化水素の存在下で重合して得られるスルホン酸基含有共重合体であって、上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するスルホン酸基含有単量体由来の構造(S)の組成が、5を超えて60質量%以下(酸型換算)であり、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成が40質量%以上95質量%未満(酸型換算)であり、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するスルホン酸基含有単量体由来の構造(S)の組成とカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成の合計が85質量%以上100質量%以下(酸型換算)であり、
上記カルボキシル基含有単量体は、分子内にカルボキシル基を1つ有する単量体である、
スルホン酸基含有共重合体である。
【0008】
本発明の別の局面によれば、上記スルホン酸基含有共重合体の製造方法であって、スルホン酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を過酸化水素の存在下で重合させることを特徴とする、スルホン酸基含有共重合体の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の別の局面によれば、スルホン酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を過酸化水素の存在下で重合して得られるスルホン酸基含有共重合体であって、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対する下記一般式(s−1)で表されるスルホン酸基含有単量体由来の構造(S1)の組成が、5を超えて60質量%以下(酸型換算)であり、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成が40質量%以上95質量%未満(酸型換算)であり、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対する下記一般式(s−1)で表されるスルホン酸基含有単量体由来の構造(S1)の組成とカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成の合計が85質量%以上100質量%以下(酸型換算)であり、
上記カルボキシル基含有単量体は、分子内にカルボキシル基を1つ有する単量体である、
スルホン酸基含有共重合体が提供される。
【0010】
【化1】

【0011】

一般式(s−1)において、Rは、単結合、CH、CHCHのいずれかの構造を表し、Rは、水素原子、メチル基を表し、X、Yは、水酸基又はSOM基を表し、SOM基において、Mは、水素原子、Li、Na、Kを表し、但し、X、Yのいずれか一方は、SOM基を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の共重合体(本発明の重合体とも言う)を洗剤ビルダーとして使用すれば、本発明の共重合体が優れた再汚染防止能を有していることに起因して洗浄力が向上するので、洗剤添加物として好ましく使用することができる。また、本発明の共重合体がスルホン酸基を有していることに起因して、多価イオンを介しての界面活性剤との相互作用により洗浄力が相乗的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の共重合体は、特定のスルホン酸基含有単量体(一般式(s−1)の構造を有する単量体とも言う)に由来の構造、およびカルボキシル基含有単量体に由来の構造を有する共重合体である。
[スルホン酸基含有不飽和単量体]
本発明におけるスルホン酸基含有単量体は、炭素−炭素二重結合と、スルホン酸基および/またはスルホン酸基の塩を必須として有すれば特に限定されず、具体的にはスルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、およびこれらの塩等が挙げられる。ここで塩とは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、4級アミン塩が挙げられるが、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩である。
しかしながら、得られる重合体の安定性が良好であることから、スルホン酸基含有単量体としては、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、およびこれらの塩等が好ましい。
また、得られる重合体の再汚染防止能等の洗剤特性が優れることからスルホン酸基含有単量体としては、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸塩等が好ましい。
本発明における好ましいスルホン酸基含有単量体として、下記一般式(s−1)で表される構造を有するスルホン酸基含有単量体が挙げられる。
【0014】
【化2】

【0015】

一般式(s−1)において、Rは、単結合、CH、CHCHのいずれかの構造を表し、Rは、水素原子、メチル基を表し、X、Yは、水酸基又はSOM基を表し、SOM基において、Mは、水素原子、Li、Na、Kを表し、但し、X、Yのいずれか一方は、SOM基を表す。
ここで、本明細書においてRが単結合の場合とは、例えばC−R−Oと表される場合であれば、C−Oとなることを意味する。
【0016】
共重合体が上記単量体由来の構造を有することにより、再汚染防止能が向上する。共重合体の再汚染防止能がより向上する傾向にあることからRは、CHであることがより好ましい。
【0017】
共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するスルホン酸基含有単量体由来の構造の組成は、5〜60質量%(酸型換算)であり、より好ましくは10〜55質量%(酸型換算)であり、更に好ましくは15〜50質量%(酸型換算)である。
なお、本発明において「酸型換算」とは、スルホン酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、その他の酸基含有単量体において、全単量体成分に対する該単量体の質量割合(組成比)を算出するに際し、対応する酸型の単量体として計算することを意味する。該単量体由来の構造の共重合体の有する全単量体由来の構造に対する質量割合を算出するときも同様とする。例えば、アクリル酸ナトリウムの全単量体成分に対する質量割合を計算する場合、対応する酸であるアクリル酸として質量計算することを意味し、アクリル酸ナトリウム由来の構造の全単量体由来の構造に対する質量割合を計算する場合、対応する酸型構造であるアクリル酸由来の構造として質量計算することを意味する。同様にアミン塩基含有単量体、アミン塩構造を有する構造単位も同様に、質量割合を計算する場合、対応するアミン(アミノ基)含有単量体、アミン構造(アミノ基構造)を有する構造単位として質量計算することとする。
【0018】
本発明の共重合体は、スルホン酸基含有単量体由来の構造(S)を必須として有することを特徴としている。スルホン酸基含有単量体由来の構造(S)として、上記一般式(s−1)で表されるスルホン酸基含有単量体由来の構造(S1)を有することが好ましい。本発明で、スルホン酸基含有単量体由来の構造(S)とは、スルホン酸基含有単量体がラジカル重合により共重合した構造である。例えばスルホン酸基含有単量体が、上記一般式(s−1)で表されるスルホン酸基含有単量体である場合、スルホン酸基含有単量体由来の構造(S)は、下記一般式(S1)で表される。
【0019】
【化3】

【0020】

一般式(S1)において、Rは、単結合、CH、CHCHのいずれかの構造を表し、Rは、水素原子、メチル基を表し、X、Yは、水酸基又はSOM基を表し、SOM基において、Mは、水素原子、Li、Na、Kを表し、但し、X、Yのいずれか一方は、SOM基を表す。
[カルボキシル基含有単量体]
本発明のカルボキシル基含有単量体(本発明におけるカルボキシル基含有単量体)は、分子内に1つのカルボキシル基またはカルボキシル基の塩を有する単量体である。
本発明のカルボキシル基含有単量体は、カルボキシル基(またはカルボキシル基の塩)と炭素‐炭素二重結合を有する単量体である。好ましくは本発明のカルボキシル基含有単量体は、カルボキシル基(またはカルボキシル基の塩)と炭素‐炭素二重結合を一つづつ有する単量体である(モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とも言う)。かようなカルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、これらの塩等が例示される。なかでも、重合性が高く得られる共重合体の再汚染防止能が高いという観点からは、カルボキシル基含有単量体は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩であることがより好ましい。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
なお、構造上、上記本発明のスルホン酸基含有単量体にも該当するカルボキシル基含有単量体は、質量割合を計算する場合はスルホン酸基含有単量体として計算することとする。
【0021】
本発明の共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成は、40〜95質量%(酸型換算)であり、より好ましくは45〜90質量%(酸型換算)であり、更に好ましくは50〜85質量%(酸型換算)である。
【0022】
本発明の共重合体は、カルボキシル基含有単量体由来の構造を必須として有することを特徴としている。本発明で、カルボキシル基含有単量体由来の構造(C)とは、カルボキシル基含有単量体がラジカル重合により共重合した構造であり、例えばカルボキシル基含有単量体がアクリル酸である場合、−CH−CH(COOH)−で表される構造を言う。
[他の単量体]
なお、スルホン酸基含有不飽和単量体、カルボキシル基含有単量体に加えて、当該単量体のいずれかと共重合可能な他の単量体が含まれてもよい。他の単量体としては、特に制限はないが、例えば、酸基含有単量体(本発明のスルホン酸基含有不飽和単量体やカルボキシル基含有単量体に該当する単量体を除く)が挙げられ、該酸基含有単量体としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2−メチレングルタル酸等のジカルボン酸系単量体、ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸などのホスホン酸基を有する単量体等が挙げられる。また、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜300モル付加した単量体や、(メタ)アクリル酸のアルコキシアルキレングリコールエステル等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコールとのエステル化により得られるアルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール:ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;等が挙げられる。これらの他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
本発明の共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対する他の単量体由来の構造(E)の組成は、好ましくは0〜15質量%である。より好ましくは0〜10質量%であり、更に好ましくは0〜5質量%である。当該構造(E)は任意成分であり、用途に応じて当該構造(E)を有していても良く、全く有さなくても構わない。
【0024】
本発明で、他の単量体由来の構造とは、他の単量体がラジカル重合により共重合した構造であり、例えば他の単量体がアクリル酸メチルである場合、−CH−CH(COOCH)−で表される構造を言う。
なお、スルホン酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体および他の単量体の全体(「単量体成分の全量」又は「全単量体組成」とも言う)に占めるスルホン酸基含有単量体の割合は特に制限されないが、本発明の作用効果を十分に発揮させるという観点から、単量体成分の全量に対するスルホン酸基含有不飽和単量体の割合は、好ましくは5を超えて60質量%以下であり、より好ましくは10を超えて55質量%以下であり、さらに好ましくは15を超えて50質量%以下である。
単量体成分の全量に占めるカルボキシル基含有単量体の割合は特に制限されないが、本発明の作用効果を十分に発揮させるという観点から、単量体成分の全量に対するカルボキシル基含有単量体の割合は、好ましくは40質量%以上95質量%未満であり、より好ましくは45質量%以上90質量%未満であり、さらに好ましくは50質量%以上85質量%未満である。
単量体成分の全量に占めるスルホン酸基含有不飽和単量体の割合とカルボキシル基含有単量体の割合の合計は、特に制限されないが、本発明の作用効果を十分に発揮させるという観点から、好ましくは85質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
単量体成分の全量に占める他の単量体の割合は特に制限されないが、本発明の作用効果を十分に発揮させるという観点から、好ましくは0〜15質量%でありより好ましくは0〜10質量%であり、更に好ましくは0〜5質量%である。
【0025】
[スルホン酸基含有共重合体]
上述したように、本発明のスルホン酸基含有共重合体は、上述したスルホン酸基含有共重合体由来の構造とカルボキシル基含有単量体由来の構造を必須として含むものである。
本発明のスルホン酸基含有共重合体は、スルホン酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を共重合することにより得られるものであることが好ましい。
【0026】
本発明のスルホン酸基含有共重合体の重量平均分子量は、洗剤ビルダー等としての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明のスルホン酸基含有共重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは500〜200000であり、より好ましくは1000〜100000であり、さらに好ましくは1500〜50000であり、特に好ましくは2000〜30000であり、さらに特に好ましくは3000〜20000であり、最も好ましくは3500〜15000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のスルホン酸基含有共重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0027】
また、本発明のスルホン酸基含有共重合体の数平均分子量は、洗剤ビルダー等としての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明のスルホン酸基含有共重合体の数平均分子量は、具体的には、好ましくは300〜100000であり、より好ましくは500〜50000であり、さらに好ましくは800〜25000あり、特に好ましくは1000〜15000であり、さらに特に好ましくは1500〜10000であり、最も好ましくは1800〜8000である。この数平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この数平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のスルホン酸基含有共重合体の数平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0028】
本発明のスルホン酸基含有共重合体は、後述する[スルホン酸基含有共重合体の製造方法]の箇所で記載する方法により得られたものが好ましい。
【0029】
本発明の共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するスルホン酸基含有単量体由来の構造(S)の組成、カルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成、はそれぞれ上述した通りであるが、本発明の共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するスルホン酸基含有単量体由来の構造(S)の組成とカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成の合計は、85質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上100質量%以下である。上記範囲であることにより、本発明の共重合体の再汚染防止能が向上する。
【0030】
[スルホン酸基含有共重合体の製造方法]
本発明のスルホン酸基含有共重合体の製造方法は、スルホン酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を過酸化水素の存在下で共重合することを特徴としているが、その他特に断りの無い限りは、公知の重合方法あるいは公知の方法を修飾した方法が使用できる。
【0031】
本発明の製造方法において、過酸化水素は、重合開始剤および/または連鎖移動剤等として作用する。したがって、本発明の共重合体は、通常、重合末端の一方、或いは両方に水酸基を有することとなる。
【0032】
本発明の製造方法においては、開始剤系としては、過酸化水素が必須であり、好ましくは更に1種類または2種類以上の過硫酸塩を併用して用いる。また場合により、連鎖移動剤や多価金属イオンを用いてもよく(ここで、多価金属イオンは開始剤の分解促進剤として働く)、これらは両方同時に用いても良い。以下、具体的に説明する。
【0033】
<ラジカル重合開始剤>
上記過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムを挙げることができる。好ましくは過硫酸ナトリウムである。
上記過硫酸塩に代えて、または過硫酸塩に加えてその他の公知の重合開始剤を使用することができ、例えば、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。その他の公知の重合開始剤も1種または2種以上を使用する事ができる。
上記過酸化水素の添加量は、単量体1molに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られるスルホン酸基含有共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。
【0034】
上記過硫酸塩の添加量は、単量体1molに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られるスルホン酸基含有共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに、得られるスルホン酸基含有共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
【0035】
上記過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られるスルホン酸基含有共重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
【0036】
また、過酸化水素の添加方法としては、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは90重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過酸化水素は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
【0037】
また、スルホン酸基含有単量体が、上記一般式(s−1)で表されるスルホン酸基含有単量体である場合、過酸化水素と上記一般式(s−1)で表されるスルホン酸基含有単量体の重合に用いる割合は、スルホン酸基含有単量体1モルに対し、過酸化水素5〜50g、好ましくは10〜40gである。本範囲で重合すれば、得られる共重合体のクレー分散能や再汚染防止能が向上する傾向にある。また、本範囲で重合すれば、高濃度で重合しても得られる共重合体の分子量が大きくなりすぎるのを抑制することができる傾向にある。
【0038】
過酸化水素の滴下は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、カルボキシル基含有単量体(分子内にカルボキシル基1つ有するカルボキシル基含有単量体)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。好ましくはカルボキシル基含有単量体の滴下開始後1分以上経過後、更に好ましくは3分以上経過後、より好ましくは5分以上経過後、最も好ましくは10分以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始時間を遅らすことにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始時間を遅らす時間は、カルボキシル基含有単量体の滴下開始後60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下をカルボキシル基含有単量体の滴下と同時に開始すること、カルボキシル基含有単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
カルボキシル基含有単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、カルボキシル基含有単量体の滴下開始時間から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応等が起こらなくなる為、重合初期の分子量が高くなる。
【0039】
過酸化水素の滴下終了時間は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体の滴下終了時間と同時に終了することが好ましく、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することがより好ましく、30分以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、過酸化水素としての効果が得られず無駄となり、また、過酸化水素が多量に残存する恐れがあることから、得られた共重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくはない。
【0040】
また、過硫酸塩の添加方法としては、その分解性等を鑑み、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
【0041】
滴下時間においても特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤においては、単量体の滴下終了時間まで滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、共重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る効果を見出せる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた共重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良いものである。
【0042】
これら比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、或は特に併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、或は終了してから別の開始剤の滴下を開始しても良い。何れも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
【0043】
添加時のラジカル重合開始剤の濃度は、特には限定されないが、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。開始剤の濃度が5重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる共重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に60重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で問題となる。
【0044】
<連鎖移動剤>
本発明のスルホン酸基含有共重合体の製造方法は、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として過酸化水素等と併用で連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0045】
上記の連鎖移動剤の内、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)を使用した場合、スルホン酸基含有共重合体水溶液中の不純物(ボウショウ)量が増加することに起因して寒冷条件下で結晶の析出が発生する虞がある。よって、これらの観点からこれらの使用は最小限に設定した方が好ましい。
【0046】
<反応促進剤>
本発明のスルホン酸基含有共重合体の製造方法は、開始剤などの使用量を低減する等の目的で反応促進剤を加えても良い。反応促進剤としては、重金属イオンが例示される。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明の疎水基含有共重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0047】
上記重金属イオンの添加方法は特に限定されないが、単量体の滴下終了前までに添加することが好ましく、全量初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。100ppmを越えると添加した効果はもはや見られず、また得られた共重合体の着色が大きく洗剤組成物として用いる場合などには使用できない恐れがあるため好ましくない。
【0048】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる共重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である共重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合に、着色汚れの原因となるおそれがある。
【0049】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体がアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0050】
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせに関しては、上記の範囲で適宜選択できる。好ましい例示として、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過酸化水素(H)、、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過酸化水素(H)/Fe、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/過酸化水素(H)、過硫酸ナトリウム(NaPS)/過酸化水素(H)、過硫酸ナトリウム(NaPS)/過酸化水素(H)/Fe等が挙げられる。
【0051】
本発明のスルホン酸基含有共重合体の製造方法において、重合の際には、上述した化合物等に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0053】
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、スルホン酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体ならびに必要であれば他の単量体からなる全単量体成分1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明の疎水基含有共重合体を効率よく生産することができ、また、疎水基含有共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
【0054】
上記重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入しても
よく、単量体成分を構成する各単量体、溶媒等とあらかじめ混同しておいてもよい。
【0055】
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体のうちの一の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、洗剤ビルダーとして用いる場合の分散性を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
【0056】
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、上述したように、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒または水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
【0057】
上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、共重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
【0058】
<重合時の中和度>
重合中(即ち単量体滴下中)の中和度は、カルボキシル基含有単量体およびスルホン酸基含有単量体の酸量の合計量に対して、99mol%以下、好ましくは50〜95mol%以下である。中和度が50mol%未満であると過酸化水素の分解が十分に起こらず、重量平均分子量が高くなる傾向がある。また99mol%を越えると強アルカリ性の腐食性条件となるため、高温では製造設備が腐食する恐れがあり、さらに、アルカリによって過酸化水素が分解してしまうため、添加量が多くなってしまうという恐れもある。重合終了後(即ち単量体滴下終了後)の中和度は、残存する過酸化水素の分解を促進するために、カルボキシル基含有単量体およびスルホン酸基含有単量体の酸量の合計量に対して、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上とする。
【0059】
単量体の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物:アンモニア;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上の混合物として用いても良い。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物であり、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。以下、本発明ではこれらのものを単に「中和剤」とのみ表記する。
【0060】
中和は単量体を反応器に供給する前に予め行われていても良いし、単量体と中和剤とを別々に反応器に供給して反応器内で中和を行っても良い。また、重合開始時から重合終了時までの中和度は上記の範囲内であれば一定である必要はなく、具体的にいえば、重合前半に中和度を低くしても良いし、あるいは、重合後半に中和度を高くしてもかまわない。
【0061】
添加時の中和剤の濃度は、特には限定されないが、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは30〜50重量%である。中和剤の濃度が10重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に70重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で好ましくない。
【0062】
<重合温度>
重合時における温度は、初期仕込時には特に限定されず、単量体或は重合開始剤の滴下開始による重合開始時から重合終了時(即ち、単量体及び重合開始剤等全ての滴下が終了するとき。)までは60℃以上が好ましく、さらに90℃以上が好ましく、重合溶媒の沸点近傍が特に好ましく、重合溶媒の沸点が最も好ましい。重合終了後にpH調整、濃度調整を行う際は特に限定されず適宜行えば良い。
重合時の温度を60℃未満とすると、得られる重合体における単量体の残存量が多くなる等して再汚染防止能が低下する傾向にあるので好ましくない。また、沸点で重合を行うことは、温度制御が非常に容易となり、そのため重合の再現性が良く、得られる重合体においても品質的に非常に安定したものとなり、非常に好ましいものである。ただし、大きな発泡がある場合は沸点以下が好ましい。
なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間または昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温または降温)させてもよい。
【0063】
<重合濃度>
全単量体滴下終了時の固形分濃度を30以上、50以下に設定することが好ましい。より好ましくは35以上であり、45以下である。
上記濃度で重合すると、残存するスルホン酸基含有単量体が低減する傾向にある。また、得られる共重合体のクレー分散能や再汚染防止能が向上する傾向にある。
【0064】
<重合時間>
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜300分である。なお、本発明において、「重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間を表す。
<重合時の圧力>
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる重合体の分子量の点では、常圧下、または、反応系内を密閉し、加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0065】
[スルホン酸基含有共重合体組成物(重合体組成物)]
本発明の重合体組成物中には、本発明のスルホン酸基含有共重合体が必須に含まれる。水などの溶媒が含まれても良い。このほか、未反応のスルホン酸基含有単量体、未反応のカルボキシル基含有単量体、未反応の重合開始剤等の未反応の重合原料、重合開始剤分解物等の副生成物が含まれうる。
本発明の重合体組成物が過酸化水素を含有する場合、重合体組成物の着色が抑制される為好ましい。着色を抑制する面では、好ましくは製造直後に、重合体組成物の質量に対して、200ppm以上、より好ましくは500ppm以上、最も好ましくは1000ppm以上である。
本発明の重合体組成物中に存在する未反応のスルホン酸基含有不飽和単量体の含有量は、重合体組成物の固形分100質量%に対して3質量%未満が好ましい。より好ましくは2質量%未満である。重合体組成物中に存在する未反応のカルボキシル基含有単量体の含有量は、重合体組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以下であり、最も好ましくは0質量ppmである。
なお、本発明の重合体組成物は、特に制限されるものではないが、生産効率性の観点から、好ましくは、不純物除去などの精製工程を経ずに得られる。さらに、重合工程の後に、得られた重合組成物を、取り扱いの便のため、少量の水にて希釈(得られた混合物に対して1〜400質量%程度)したものも本発明の重合体組成物に含まれる。
【0066】
本発明のスルホン酸基含有共重合体組成物は、連鎖移動剤等として過酸化水素を使用している為、他の連鎖移動剤を使用したスルホン酸基含有共重合体と比較して不純物が少ないという特徴を有する。それにより、例えば、上記特許文献4に開示された重合体と比較して、寒冷条件下での副生成物の析出が抑制される。よって、各種用途に好ましく適用し得る。
本発明の重合体、重合体組成物は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0067】
<水処理剤>
本発明のスルホン酸基含有共重合体や重合体組成物は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0068】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0069】
<繊維処理剤>
本発明のスルホン酸基含有共重合体や重合体組成物は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体組成物を含む。
【0070】
上記繊維処理剤における本発明のスルホン酸基含有共重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0071】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0072】
本発明のスルホン酸基含有共重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0073】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0074】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体組成物と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
【0075】
<無機顔料分散剤>
本発明のスルホン酸基含有共重合体や重合体組成物は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0076】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のスルホン酸基含有共重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0077】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0078】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0079】
<洗剤組成物>
本発明のスルホン酸基含有共重合体や重合体組成物は、洗剤組成物にも添加しうる。
本発明の重合体組成物は、上述したスルホン酸基含有共重合体を含むが、洗剤組成物における当該スルホン酸基含有共重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、スルホン酸基含有共重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗剤組成物は、本発明の重合体組成物に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
また、本発明のスルホン酸基含有共重合体や重合体組成物を洗剤ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは400mg/L以下であり、さらに好ましくは300mg/L以下であり、特に好ましくは200mg/L以下であり、最も好ましくは100mg/L以下である。カオリン濁度の値としては、以下の手法により測定される値を採用するものとする。
【0080】
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、本発明のスルホン酸基含有共重合体の重量平均分子量、再汚染防止能、未反応の単量体の定量、重合体組成物および重合体水溶液の固形分量は、下記の方法に従って測定した。
【0082】
<重量平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ,GF−710−HQ,GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
<重合体組成物、共重合体水溶液の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0083】
<重合体組成物中のカルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体等の含有量の測定>
該単量体の測定は、下記表1の条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX RSpak DE−413
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min
<再汚染防止能(再汚染防止率)の測定方法>
(1) Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(2) 塩化カルシウム2水和物4.41gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した。
(3) 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0g、炭酸ナトリウム6.0g、硫酸ナトリウム2.0gに純水を加えて100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。
(4) ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で2%の重合体水溶液1g、ゼオライト0.15g、カーボンブラック0.25gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌した。その後、白布10枚を入れ100rpmで10分間攪拌した。
(5) 手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。これを2回行った。
(6) 白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度白布の白度を反射率にて測定した。
(7) 以上の測定結果から下式により再汚染防止率を求めた。
【0084】
【数1】

【0085】

<実施例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水68.0g、および3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムの40%水溶液(以下、「40%HAPS」とも称する。)244.1gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)162.0g、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)103.1g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)45.0g、および35%過酸化水素水(以下、「35%H」とも称する。)32.1gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、48%NaOHについては、80%AA滴下開始30分後より150分間、15%NaPSについては190分間、35%Hについては80%AA滴下開始15分後より135分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH9.4gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度44.8%、重量平均分子量17000の重合体1(スルホン酸基含有共重合体1)の水溶液(スルホン酸基含有共重合体組成物1)を得た。
【0086】
<実施例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水151.0g、および40%HAPS244.1gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点に保持された重合反応系中に、80%AAを162.0g、48%NaOHを103.1g、15%NaPSを45.0g、および35%Hを32.1g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、48%NaOHについては、80%AA滴下開始30分後より150分間、15%NaPSについては190分間、35%Hについては80%AA滴下開始15分後より135分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH9.4gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度40.2%、重量平均分子量12000の重合体2(スルホン酸基含有共重合体2)の水溶液(スルホン酸基含有共重合体組成物2)を得た。
【0087】
<実施例3>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水145.9g、および40%HAPS191.5gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点に保持された重合反応系中に、80%AAを180.0g、48%NaOHを122.5g、15%NaPSを47.1g、および35%Hを33.6g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、48%NaOHについては、80%AA滴下開始20分後より160分間、15%NaPSについては190分間、35%Hについては80%AA滴下開始15分後より135分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH9.8gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度41.0%、重量平均分子量13000の重合体3(スルホン酸基含有共重合体3)の水溶液(スルホン酸基含有共重合体組成物3)を得た。
【0088】
<実施例4>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水248.1g、および40%HAPS244.1gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点に保持された重合反応系中に、80%AAを162.0g、48%NaOHを103.1g、15%NaPSを45.0g、および35%Hを19.3g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、48%NaOHについては、80%AA滴下開始30分後より150分間、15%NaPSについては190分間、35%Hについては150分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度36.4%、重量平均分子量11000の重合体4(スルホン酸基含有共重合体4)の水溶液(スルホン酸基含有共重合体組成物4)を得た。
【0089】
<実施例5>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水298.3g、および40%HAPS191.5gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点に保持された重合反応系中に、80%AAを180.0g、48%NaOHを122.5g、15%NaPSを47.1g、および35%Hを20.2g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、48%NaOHについては、80%AA滴下開始20分後より160分間、15%NaPSについては190分間、35%Hについては150分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH9.8gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度35.3%、重量平均分子量10000の重合体5(スルホン酸基含有共重合体5)の水溶液(スルホン酸基含有共重合体組成物5)を得た。
【0090】
<実施例6>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水120.0g、無水マレイン酸(以下、「MA」とも称する。)9.4g、および40%HAPS191.5gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点に保持された重合反応系中に、80%AAを132.9g、48%NaOHを118.1g、15%NaPSを38.5g、および35%Hを27.5g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、48%NaOHについては、80%AA滴下開始20分後より160分間、15%NaPSについては190分間、35%Hについては80%AA滴下開始15分後より135分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を沸点に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH6.9gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度41.3%、重量平均分子量11000の重合体6(スルホン酸基含有共重合体6)の水溶液(スルホン酸基含有共重合体組成物6)を得た。
【0091】
<比較例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水20.0g、およびモール塩0.014gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを162.0g、40%HAPSを244.1g、15%NaPSを45.0g、および35%SBSを45.0g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては120分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH127.5gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45.5%、重量平均分子量11000の比較重合体1の水溶液を得た。
【0092】
<比較例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水31.0g、およびモール塩0.012gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを162.0g、40%HAPSを174.5g、15%NaPSを42.4g、および35%SBSを30.3g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、40%HAPSについては150分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH127.5gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45.0%、重量平均分子量12000の比較重合体2の水溶液を得た。
【0093】
<実施例7>
実施例1〜6、比較例1〜2で得られたスルホン酸基含有共重合体の再汚染防止能を測定した結果を表にまとめた。
【0094】
【表1】

【0095】

表1に示す結果から、本発明の重合体は従来の重合体と比較して、優れた再汚染防止能を有していることが実証された。
従って、本発明の重合体を洗剤ビルダーとして用いると、風呂の残り湯を用いて洗浄しても汚れの再汚染が効果的に防止されうることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を過酸化水素の存在下で重合して得られるスルホン酸基含有共重合体であって、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するスルホン酸基含有単量体由来の構造(S)の組成が、5を超えて60質量%以下(酸型換算)であり、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成が40質量%以上95質量%未満(酸型換算)であり、
上記共重合体の全単量体由来の構造の質量100質量%に対するスルホン酸基含有単量体由来の構造(S)の組成とカルボキシル基含有単量体由来の構造(C)の組成の合計が85質量%以上100質量%以下(酸型換算)であり、
上記カルボキシル基含有単量体は、分子内にカルボキシル基を1つ有する単量体である、
スルホン酸基含有共重合体。
【請求項2】
スルホン酸基含有単量体とカルボキシル基含有単量体を含む単量体成分を過酸化水素の存在下で重合させることを特徴とする、
請求項1に記載のスルホン酸基含有共重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のスルホン酸基含有共重合体を含む洗剤組成物。

【公開番号】特開2010−138243(P2010−138243A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314310(P2008−314310)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】