説明

スルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜の製造方法及びスルホ基含有重合体の取得方法

【課題】製造スピードの向上、工程数減少によるコスト削減、及び、酸廃棄物量削減のための使用する酸量の削減等の効果が得られ、工業的製造において有利な薄膜製造方法及び重合体取得方法を提供すること。
【解決手段】滴定法によるイオン交換容量が0.5〜8.5meq/gのスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜の製造方法であって、式(1−1)



で示される基を有する難水溶性重合体が有するRを、90〜200℃の反応温度で、水の存在下で且つ酸解離定数<10のブレンステッド酸等の非存在下で脱離させる工程、生成された前記スルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する工程、回収された前記スルホ基含有重合体を液体状態で基材上に塗布する工程及び得られた塗布物から液体を除去することにより基材上に前記のスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜を形成させる工程を含む方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜の製造方法及びスルホ基含有重合体の取得方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固体高分子型燃料電池用の高分子電解質等として有用なスルホ基(−SOH)を有する重合体が開示されている。かかるスルホ基を有する重合体は、対応するスルホン酸エステルと臭化リチウムとを反応させ、次に、得られた反応生成物と酸とを反応させることによって製造されている。
このようにして製造されたスルホ基含有重合体を用いて、基材上に前記スルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜を形成する形成工程と、基材上に形成された薄膜を基材から剥離する剥離工程と、前記剥離工程で得られた薄膜に張力を与えながら、薄膜を水で洗浄する水洗工程と、前記水洗工程で得られた薄膜に張力を与えながら、薄膜を乾燥させる乾燥工程とを含む製造方法により、スルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜が製造されている。
従来の薄膜の製造方法では、基材上にスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜を形成する形成工程において用いられるスルホ基含有重合体を得るために、スルホン酸エステル基を有する重合体を脱エステル化してスルホン酸塩を有する重合体へと一旦導き、次いで酸等で処理することによって得ていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−284653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記処理の場合、(1)回収されたスルホ基含有重合体を液体状態で基材上に塗布する工程の前工程において、生成されたスルホ基含有重合体を、スルホン酸塩の形で一旦固体として単離しなければならない点や、(2)一旦スルホン酸塩にした後に酸による処理が必須である点や、及び、(3)スルホン酸塩に対して過剰量の酸が必要である点等の課題があり、製造スピードの向上、工程数減少によるコスト削減、及び、酸廃棄物量削減のための使用する酸量の削減等が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.式(1−2)


で示されるスルホ基を有し、滴定法によるイオン交換容量が0.5meq/gから8.5meq/gまでの範囲にあるスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜の製造方法であって、
(1)式(1−1)


(Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。)
で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRを、90℃から200℃までの範囲である反応温度で、(a)溶媒と水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下、脱離させる第一工程、
(2)前工程により生成された前記のスルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する第二工程、
(3)前工程により回収された前記のスルホ基含有重合体を液体状態で基材上に塗布する第三工程、及び、
(4)得られた塗布物から液体を除去することにより基材上に前記のスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜を形成させる第四工程
を含むこと特徴とする方法(以下、本発明薄膜製造方法と記すこともある。);
2.第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、水と任意の割合で混ざり、アミド結合及びエステル結合を有しない溶媒中で行われることを特徴とする前項1記載の方法;
3.第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、アルキレングリコールの共存在下で行われること特徴とする前項1又は2記載の方法;
4.第一工程である脱保護工程における難水溶性重合体の液体状態が、溶液状態であること特徴とする前項1乃至3のいずれかの前項記載の方法;
5.第二工程である回収工程におけるスルホ基含有重合体の状態が、溶液状態であること特徴とする前項1乃至4のいずれかの前項記載の方法;
6.前記の難水溶性重合体が、ポリアリーレンを含む重合体であること特徴とする前項1乃至5のいずれかの前項記載の方法;
7.前記の難水溶性重合体が、式(2)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。mは1又は2を表わす。kは4−mを表わす。)
で示される繰り返し単位を含む重合体であること特徴とする前項1乃至6のいずれかの前項記載の方法;
8.前記の難水溶性重合体が、式(2)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。mは1又は2を表わす。kは4−mを表わす。)
で示される繰り返し単位と式(4)

(式中、a、b及びcは、同一又は相異なって、0又は1を表わす。nは5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、同一又は相異なって、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。Y及びYは、同一又は相異なって、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、同一又は相異なって、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される繰り返し単位とを含む重合体であること特徴とする前項1乃至7のいずれかの前項記載の方法;
9.前記の難水溶性重合体が、式(2)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。mは1又は2を表わす。kは4−mを表わす。)
で示される繰り返し単位と式(5)

(式中、Arは、2価の芳香族基を表わす。
ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基;からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)
で示される繰り返し単位とを含む重合体であること特徴とする前項1乃至7のいずれかの前項記載の方法;
10.Rが2,2−ジメチルプロピル基であること特徴とする前項1乃至9のいずれかの前項記載の方法;
11.式(1−2)


で示されるスルホ基を有し、滴定法によるイオン交換容量が0.5meq/gから8.5meq/gまでの範囲にあるスルホ基含有重合体の取得方法であって、
式(1−1)


(Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。)
で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRを、90℃から200℃までの範囲である反応温度で、(a)溶媒と水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下、脱離させる第一工程、及び、前工程により生成された前記スルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する工程を含むことを特徴とする方法(以下、本発明重合体取得方法と記すこともある。);
12.第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、水と任意の割合で混ざり、アミド結合及びエステル結合を有しない溶媒中で行われることを特徴とする前項11記載の方法;
13.第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、アルキレングリコールの共存在下で行われること特徴とする前項12記載の方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造スピードの向上、工程数減少によるコスト削減、及び、酸廃棄物量削減のための使用する酸量の削減等の効果が得られ、工業的製造において有利な薄膜製造方法及び重合体取得方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明薄膜製造方法及び本発明重合体取得方法における「スルホ基含有重合体」は、例えば、燃料電池の伝導膜として用いたときに、イオン伝導性を発現する程度にイオン交換基を有するポリマーを意味しており、プロトン伝導性を発現するようなスルホ基を含むイオン交換基(プロトン交換基)を有するポリマーである。かかるイオン交換基としては、スルホ基(−SOH)の他には、スルホニルイミド基(−SO−NH−SO−)、ホスホン酸基(−PO)、リン酸基(−OPO)、カルボキシル基(−COOH)等を含むこともある。
【0009】
上記のスルホ基含有重合体におけるイオン交換基の導入量としては、スルホ基含有重合体の単位質量当たりのイオン交換基数、即ち、イオン交換容量で表して、例えば、0.5meq/g〜8.5meq/gの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、1meq/g〜6meq/gの範囲が挙げられる。更に好ましくは、例えば、1meq/g〜5meq/gの範囲を挙げることができる。
【0010】
上記のスルホ基含有重合体としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニレン、ポリイミド等の主鎖に芳香族環を有するエンジニアリング樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン等の汎用樹脂に上記に例示したプロトン交換基が導入されたポリマー等を挙げることができる。
【0011】
このようなスルホ基含有重合体は、典型的にはフッ素等のハロゲン原子を全く含まない化合物であるが、部分的にフッ素原子を有していてもよい。実質的にフッ素原子を含まないものであると、含フッ素系高分子電解質と比較して安価であるという利点を有する。スルホ基含有重合体を構成する元素組成比において、フッ素原子が20質量%以下であることが好ましい。
【0012】
上記のスルホ基含有重合体としては、例えば、主鎖に芳香環を有するものが好ましく、中でも、(1)主鎖を構成する芳香環を有し、且つ、当該芳香環にイオン交換基が直接結合しているポリマー、(2)主鎖を構成する芳香環を有し、且つ、当該芳香環にイオン交換基が他の原子若しくは原子団を介して間接的に結合しているポリマー、(3)主鎖を構成する芳香環若しくは側鎖を構成する芳香環の、両者又はどちらか一方の芳香族環にイオン交換基が直接結合しているポリマー、(4)主鎖を構成する芳香環若しくは側鎖を構成する芳香環の、両者又はどちらか一方の芳香族環にイオン交換基が他の原子若しくは原子団を介して間接的に結合しているポリマー等を挙げることができる。
【0013】
また、上記のスルホ基含有重合体を含む薄膜を得たとき、当該薄膜が良好な機械強度を達成するといった観点から、イオン交換基を有する繰り返し単位とイオン交換基を有さない繰り返し単位とを各々含み、これらを組み合わせた共重合体であって、そのイオン交換容量が上述の範囲であるものが好ましい。係る共重合体における共重合様式は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合又は交互共重合の何れであってもよく、これらの共重合様式を組み合わせた構成でもよい。尚、上記のスルホ基含有重合体としては、例えば、ブロック共重合体を好ましく挙げることができる。より好ましくは、例えば、後述するポリアリーレン系ブロック共重合体等が挙げられる。
【0014】
尚、「ポリアリーレン系ブロック共重合体」としては、例えば、イオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を実質的に有しないブロックとをそれぞれ一つ以上有し、当該イオン交換基を有するブロックの主鎖が、複数の芳香環が直接連結してなるポリアリーレン構造を有し、更にイオン交換基が、前記主鎖を構成する芳香環に直接結合しているブロック等を好ましく挙げることができる。ここで、「ブロックの主鎖」とは、ポリアリーレン系ブロック共重合体としたときに、当該共重合体の主鎖となりうる分子鎖のことを表し、「ポリアリーレン構造」とは、前記のように複数の芳香環が互いに直接結合(単結合)にて連結してなる構造を示すものである。
【0015】
本発明薄膜製造方法は、式(1−2)


で示されるスルホ基を有し、滴定法によるイオン交換容量が0.5meq/gから8.5meq/gまでの範囲にあるスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜の製造方法であって、
(1)式(1−1)


(Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。)
で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRを、90℃から200℃までの範囲である反応温度で、(a)溶媒と水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下、脱離させる第一工程、
(2)前工程により生成された前記のスルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する第二工程、
(3)前工程により回収された前記のスルホ基含有重合体を液体状態で基材上に塗布する第三工程、及び、
(4)得られた塗布物から液体を除去することにより基材上に前記のスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜を形成させる第四工程
を含むこと特徴とする。
また、本発明重合体取得方法は、式(1−2)


で示されるスルホ基を有し、滴定法によるイオン交換容量が0.5meq/gから8.5meq/gまでの範囲にあるスルホ基含有重合体の取得方法であって、
式(1−1)


(Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。)
で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRを、90℃から200℃までの範囲である反応温度で、(a)溶媒と水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下、脱離させる工程、及び、前工程により生成された前記スルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する工程を含むことを特徴とする。
本発明薄膜製造方法と本発明重合体取得方法との両発明は、(本発明薄膜製造方法の第三工程において用いられる)スルホ基含有重合体を回収するまでの工程が共通しており、まずは、当該スルホ基含有重合体を回収するまでの工程について述べる。
【0016】
本発明薄膜製造方法の第一工程(即ち、保護基脱離工程)及び本発明重合体取得方法の保護基脱離工程は、式(1−1)


(Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。)
で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRを、90℃から200℃までの範囲である反応温度で、(a)溶媒と水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下、脱離させる工程である。
【0017】
式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRにおける炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2−メチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状の炭素数1〜20のアルキル基等を挙げることができる。好ましくは、例えば、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。
尚、後述されるような、本発明における他置換基としての炭素数1〜20のアルキル基の例示も、上記の例示と同様なものを挙げることができる。
【0018】
式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRにおける炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状の炭素数1〜20のアルコキシ基等を挙げることができる。
尚、後述されるような、本発明における他置換基としての炭素数1〜20のアルコキシ基の例示も、上記の例示と同様なものを挙げることができる。
【0019】
式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRにおける炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−フェナントリル基及び2−アントリル基等を挙げることができる。
尚、後述されるような、本発明における他置換基としての炭素数6〜20のアリール基の例示も、上記の例示と同様なものを挙げることができる。
【0020】
式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRにおける炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、3−フェナントリルオキシ基、2−アントリルオキシ基等の前記炭素数6〜20のアリール基と酸素原子とから構成される基等を挙げることができる。
尚、後述されるような、本発明における他置換基としての炭素数6〜20のアリールオキシ基の例示も、上記の例示と同様なものを挙げることができる。
【0021】
式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRにおける炭素数2〜20のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20の脂肪族若しくは芳香族アシル基等を挙げることができる。
尚、後述されるような、本発明における他置換基としての炭素数2〜20のアシル基の例示も、上記の例示と同様なものを挙げることができる。
【0022】
式(1−1)で示される基を有する好ましい難水溶性重合体としては、例えば、後述するようなポリアリーレンを含む重合体等を挙げることができる。
より具体的には、例えば、式(2)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。mは1又は2を表わす。kは4−mを表わす。)
で示される繰り返し単位を含む重合体等を挙げることができる。
ここで、式(2)で示される繰り返し単位に含まれるRは、式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRと同一の意味を表す。また、式(2)で示される繰り返し単位に含まれるRにおける炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基、並びに、これらの基に少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、前記したものと同様のものを挙げることができる。
また、例えば、式(3)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。)
で示される繰り返し単位を含む重合体や式(3−2)

(式中、R及びR1は、上記式(3)における置換基の定義と同じである。)
で示される繰り返し単位を含む重合体等も挙げることができる。
ここで、式(3)で示される繰り返し単位または式(3−2)で示される繰り返し単位に含まれるRは、式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRと同一の意味を表す。また、式(3)で示される繰り返し単位または式(3−2)で示される繰り返し単位に含まれるRにおける炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基、並びに、これらの基に少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、前記したものと同様のものを挙げることができる。
【0023】
式(2)で示される繰り返し単位を含む重合体は、通常、当該繰り返し単位が少なくとも2個連続している。式(3)で示される繰り返し単位または式(3−2)で示される繰り返し単位を含む重合体は、通常、当該繰り返し単位が少なくとも2個連続している。
【0024】
式(2)で示される具体的な繰り返し単位としては、例えば、下記式(2a)〜(2c)で示される繰り返し単位を挙げることができる。

【0025】
式(3)で示される具体的な繰り返し単位としては、例えば、下記式(3a)〜(3c)で示される繰り返し単位を挙げることができる。

【0026】
式(3−2)で示される具体的な繰り返し単位としては、例えば、下記式(3−2a)〜(3−2c)で示される繰り返し単位を挙げることができる。

【0027】
式(1−1)で示される基を有する、特に好ましい難水溶性重合体としては、例えば、式(2)で示される繰り返し単位、又は、式(3)で示される繰り返し単位のいずれか一方と、式(4)で示される繰り返し単位、又は、式(5)で示される繰り返し単位のいずれか一方とを含む重合体を挙げることができる。

(式中、a、b及びcは、同一又は相異なって、0又は1を表わす。nは5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、同一又は相異なって、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。Y及びYは、同一又は相異なって、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、同一又は相異なって、酸素原子又は硫黄原子を表す。)

(式中、Arは、2価の芳香族基を表わす。
ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基;からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)
【0028】
式(4)におけるAr1、Ar2、Ar3及びAr4における2価の芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニル−1,1’−ジイル基等の2価の単環状芳香族基;ナフタレン−1,3−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−1,7−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基、9H−フルオレン−2,7−ジイル基等の2価の縮合芳香族基;ピリジン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,6−ジイル基、キノキサリン−2,6−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、2,2’−ビチオフェン−5,5’−ジイル基、ピロール−2,5−ジイル基、2,2’−ビピリジン−5,5’−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、キノリン−5,8−ジイル基、キノリン−2,6−ジイル基、イソキノリン−1,4−ジイル基、イソキノリン−5,8−ジイル基、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル基、ベンゾイミダゾール−4,7−ジイル基、キノキサリン−5,8−ジイル基、キノキサリン−2,6−ジイル基等の2価の複素芳香族基等を挙げることができる。好ましくは、例えば、2価の単環状芳香族基、2価の縮合芳香族基等が挙げられる。より好ましくは、例えば、1,4−フェニレン基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−2,7−ジイル基等を挙げることができる。
ここで、2価の芳香族基に少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基、並びに、これらの基に少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、前記したものと同様のものを挙げることができる。
【0029】
このような2価の芳香族基としては、例えば、上記式(a2)〜(e2)からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を挙げることができる。
【0030】
式(4)で示される繰り返し単位としては、例えば、下記式(4a)〜(4y)に示される繰り返し単位を挙げることができる。尚、下記式中、nは前記と同一の意味を表す。尚、式(4)で示される繰り返し単位におけるポリスチレン換算の重量平均分子量としては、例えば、1,000以上15,000以下を挙げることができる。好ましくは、例えば、1,500以上10,000以下が挙げられる。
【0031】

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】
式(2)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位とを含む重合体は、式(2)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、式(2)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位に加えて、式(2)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位や式(4)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
式(3)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位とを含む重合体は、式(3)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、式(3)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位に加えて、式(3)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位や式(4)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
式(3−2)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位とを含む重合体は、式(3−2)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、式(3−2)で示される繰り返し単位と式(4)で示される繰り返し単位に加えて、式(3−2)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位や式(4)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0039】
式(2)で示される繰り返し単位、式(3)で示される繰り返し単位又は式(3−2)で示される繰り返し単位と、式(4)で示される繰り返し単位とを含む重合体としては、例えば、前記式(2a)〜(2c)のうちのいずれか一つの式で示される繰り返し単位、式(3a)〜(3c)のうちのいずれか一つの式で示される繰り返し単位又は式(3−2a)〜(3−2c)のうちのいずれか一つの式で示される繰り返し単位と、前記式(4a)〜(4y)のうちのいずれか一つの式で示される繰り返し単位とを含む重合体を挙げることができる。具体的には、下記(I)〜(IV)のうちのいずれか一つの式で示される重合体を挙げることができる。ここで、下記式中、nは前記と同一の意味を表し、pは2以上の整数を表す。
【0040】

【0041】
式(2)で示される繰り返し単位、式(3)で示される繰り返し単位又は式(3−2)で示される繰り返し単位と、式(4)で示される繰り返し単位とを含む重合体の中の式(2)で示される繰り返し単位、式(3)で示される繰り返し単位又は式(3−2)で示される繰り返し単位の量としては、例えば、5重量%〜95重量%の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、30重量%〜90重量%の範囲が挙げられる。
また、式(2)で示される繰り返し単位、式(3)で示される繰り返し単位又は式(3−2)で示される繰り返し単位の量と、式(4)で示される繰り返し単位とを含む重合体の中の式(4)で示される繰り返し単位の量としては、例えば、5重量%〜95重量%の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、10重量%〜70重量%の範囲が挙げられる。
【0042】
式(5)で示される繰り返し単位における2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基;からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。
尚、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRとして例示されたものと同様のもの等を挙げることができる。
【0043】
式(5)で示される繰り返し単位としては、例えば、下記式(5a)で示される繰り返し単位、(5b)で示される繰り返し単位等を挙げることができる。

【0044】
式(2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位とを含む重合体は、式(2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、式(2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位に加えて、式(2)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位や式(5)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
式(3)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位とを含む重合体は、式(3)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、式(3)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位に加えて、式(3)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位や式(5)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0045】
式(3−2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位とを含む重合体は、式(3−2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、式(3−2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位に加えて、式(3−2)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位や式(5)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0046】
式(2)で示される繰り返し単位、式(3)で示される構造単又は式(3−2)で示される繰り返し単位と、式(5)で示される繰り返し単位とを含む重合体としては、例えば、前記式(2a)〜(2c)のうちのいずれか一つの式で示される繰り返し単位、式(3a)〜(3c)のうちのいずれか一つの式で示される繰り返し単位と、前記式(5a)、(5b)のいずれか一つの式で示される繰り返し単位又は式(3−2a)〜(3−2c)のうちのいずれか一つの式で示される繰り返し単位と、前記式(5a)、(5b)のいずれか一つの式で示される繰り返し単位とを含む重合体を挙げることができる。具体的には、下記(VII)〜(XII)のうちのいずれか一つの式で示される重合体を挙げることができる。

【0047】

【0048】
式(2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位とを含むポリアリーレン中の式(2)で示される繰り返し単位の量としては、例えば、5重量%以上、95重量%以下を挙げることができる。好ましくは、例えば、30重量%以上、90重量%以下が挙げれらる。式(2)で示される繰り返し単位と式(5)で示される繰り返し単位とを含むポリアリーレン中の式(4)で示される繰り返し単位の量としては、例えば、5重量%以上、95重量%以下を挙げることができる。好ましくは、例えば、10重量%以上、70重量%以下が挙げられる。
【0049】
かかる重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量としては、例えば、1,000〜2,000,000の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、2,000〜1,000,000の範囲が挙げられる。より好ましくは、3,000〜800,000の範囲を挙げることができる。
【0050】
尚、このようなポリアリーレン系ブロック重合体は、例えば、特開2007−284653号公報、WO2011−030921号公報等に記載される通常の方法に準じて製造すればよい。より具体的には、上記の繰り返し単位を与えるモノマー化合物若しくはその塩を、例えば、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)と2,2’−ビピリジルとからなる錯体のようなニッケル錯体の存在下(、必要に応じて、亜鉛を還元剤として共存下)で、共重合することによって得ることができる。
【0051】
本発明薄膜製造方法の第一工程(即ち、保護基脱離工程)及び本発明重合体取得方法の保護基脱離工程における反応温度は、90℃から200℃までの範囲である。好ましくは、100℃から150℃までの範囲が挙げられる。
【0052】
本発明薄膜製造方法の第一工程(即ち、保護基脱離工程)及び本発明重合体取得方法の保護基脱離工程における反応時間としては、例えば、1時間〜72時間の範囲を挙げることができる。
【0053】
本発明薄膜製造方法の第一工程(即ち、保護基脱離工程)及び本発明重合体取得方法の保護基脱離工程における反応速度を加速させるためには、副生する保護基由来の成分を系内から除去することが好ましい。例えば、加熱中に保護基由来の副生物を留出させる方法、又は反応途中で濃縮操作を入れて、保護基由来の副生物を留出させる方法が挙げられる。
【0054】
本発明薄膜製造方法の第一工程(即ち、保護基脱離工程)及び本発明重合体取得方法の保護基脱離工程における反応は、例えば、水と任意の割合で混ざり、アミド結合及びエステル結合を有しない溶媒中で行われることが好ましい。
【0055】
用いられる溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶媒、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種類以上の溶媒を混合して用いることもできる。
【0056】
好ましい溶媒としては、スルホ基含有重合体がポリアリーレン系ブロック共重合体である場合には、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含むもの等を挙げることができる。より好ましくは、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0057】
本発明薄膜製造方法の第一工程(即ち、保護基脱離工程)及び本発明重合体取得方法の保護基脱離工程における反応は、(a)水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下(ここで「非存在下」とは、実質的な非存在下を含むものである。)で行う。好ましくは、前記反応を、(1)水と溶媒との存在下(即ち、式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体と水と溶媒とを含む系)又は、(2)水とアルキレングリコールとの存在下(即ち、式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体と水とアルキレングリコールとを含む系)、又は、(3)水とアルキレングリコールと溶媒との存在下(即ち、式(1−1)で示される基を有する難水溶性重合体と水とアルキレングリコールと溶媒とを含む系)で行うことがよい。
尚、上記反応の進行は、NMR、IR等により確認することができる。
【0058】
酸解離定数(pKa)は、25℃の水中における数値であり、化学便覧基礎編改訂5版II−331〜II−343(日本化学会編、丸善株式会社発行)に記載された方法により算出することができる。ブレンステッド酸が多価塩基酸の場合、酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸とは第1段階の酸解離定数(酸解離定数(pKa))が10以下であるとする。
【0059】
酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸としては、例えば、ハロゲン化水素(酸解離定数(pKa):−4〜2.7)、硫酸(酸解離定数(pKa):2以下)、チオシアン酸(酸解離定数(pKa):−0.9)、リン酸(酸解離定数(pKa):1.8)、炭酸(酸解離定数(pKa):6.1)、硝酸(酸解離定数(pKa):−1.8)、メタンスルホン酸(酸解離定数(pKa):−1.2)、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸(酸解離定数(pKa):−2.5)、酢酸(酸解離定数(pKa):4.7)、トリフルオロ酢酸(酸解離定数(pKa):0.2)、ペンタフルオロプロピオン酸、アセチルアセトン(酸解離定数(pKa):8.8)、フェノール(酸解離定数(pKa):9.9)、ペンタフルオロフェノール、チオフェノール(酸解離定数(pKa):6.4)等を挙げることができる。
【0060】
本発明薄膜製造方法の第一工程(即ち、保護基脱離工程)及び本発明重合体取得方法の保護基脱離工程における反応の好ましい実施態様としては、例えば、前述のように、第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応がアルキレングリコールの共存在下で行われることを挙げることができる。
【0061】
また、第一工程である脱保護工程における難水溶性重合体の液体状態が、溶液状態であることが好ましい。
【0062】
重合工程から固体として単離することなく溶液状態で接続するためには、抽出操作が有効であり、例えば、特開2011−42745号公報等に記載される通常の方法に準じて実施すればよい。
【0063】
本発明薄膜製造方法の第二工程(即ち、回収工程)及び本発明重合体取得方法の回収工程において、上記の第一工程で生成されたスルホ基含有重合体は、式(1−2)で示されるスルホ基を有し、滴定法によるイオン交換容量が0.5meq/gから8.5meq/gまでの範囲にあるスルホ基含有重合体を含む反応混合物をそのままで、固体として単離することなく回収してもよいし、前記反応混合物から前記スルホ基含有重合体のみを固体として単離することなく回収してもよい。
また、第二工程である回収工程におけるスルホ基含有重合体の状態が、溶液状態であることがよい。
【0064】
本発明薄膜製造方法の第二工程(即ち、回収工程)及び本発明重合体取得方法の回収工程は、前工程により生成された前記スルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する工程である。
【0065】
本発明薄膜製造方法の第三工程(即ち、塗布工程)は、前工程により回収された前記のスルホ基含有重合体を液体状態で基材上に塗布する工程である。
回収されたスルホ基含有重合体を、必要に応じて更に溶媒に希釈させた後、液体状態で基材上に塗布することにより、スルホ基含有重合体を含む薄膜を基材上に形成させる。
用いられる溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶媒、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、又は、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種類以上の溶媒を混合して用いることもできる。
より具体的な溶媒としては、例えば、スルホ基含有重合体がポリアリーレン系ブロック共重合体である場合には、アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含むものを挙げることができる。好ましくは、例えばエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0066】
溶液中のスルホ基含有重合体自体の濃度としては、例えば、1重量%〜20重量%の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、3重量%〜10重量%の範囲が挙げられる。
【0067】
溶液には添加剤を加えてもよい。用いられる添加剤としては、例えば、高分子化合物を取り扱う場合において使用されるような、可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等を挙げることができる。
【0068】
本発明薄膜製造方法の第四工程(即ち、薄膜形成工程)は、得られた塗布物から液体を除去することにより基材上に前記のスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜を形成させる工程である。
【0069】
基材上に塗布することにより得られた塗布物から液体を除去すること、即ち、溶媒の全部若しくは一部を蒸発させることにより乾燥し、基材上の塗布物から液体を除去することで薄膜強度を向上させる。処理(乾燥)温度としては、例えば、40℃〜150℃の範囲を挙げることができる。処理(乾燥)時間としては、例えば、60分間以下を挙げることができる。好ましくは、例えば、1分間〜30分間の範囲が挙げられる。前記処理(乾燥)後の薄膜に含まれる溶媒は、薄膜に対して60重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、40重量%以下である。
【0070】
本発明薄膜製造方法により形成された薄膜は、更に、例えば、剥離工程、水洗工程、乾燥工程等を経て、製品としてよい。各工程では、工程毎に巻取り操作を行ってもよいし、また複数の工程を連続的に行ってもよい。複数の工程を連続的に行うことが生産性の点では好ましく、全ての工程を連続的に行うことがより好ましい。
因みに、巻取り操作における張力としては、例えば、0.0015N/mm〜15N/mmの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.003N/mm〜3N/mmの範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、0.01N/mm〜0.1N/mmの範囲を挙げることができる。巻取り操作における単位厚み当たりの好ましい張力としては、例えば、0.3N/mm〜30N/mmの範囲を挙げることができる。また、巻取り開始から巻取り終了までの間で張力を変化させることが好ましく、巻き径の増加とともに張力を減少させることが好ましい。
【0071】
各工程の張力は、(i)工程毎に薄膜を巻き取る、(ii)各工程の間にテンションカットを設ける、等により変化させることができる。テンションカットとしては、例えば、ロールにモーター、クラッチ、ブレーキ等を設置したものを挙げることができる。好ましくは、例えば、薄膜に与えられる張力を検知する検知手段を備えることがよい。
【0072】
薄膜に与えられる張力[N/mm]、引張荷重[N]、薄膜幅[mm]、薄膜厚[mm]及び単位厚み当たりの張力[N/mm]は、次式で表される。
張力[N/mm]=引張荷重[N]/薄膜幅[mm]
単位厚み当たりの張力[N/mm]=張力[N/mm]/薄膜厚[mm]
ここで、「引張荷重」とは、薄膜に与えられる荷重を意味し、張力とは、薄膜の単位幅当たりの引張荷重を意味し、単位厚み当たりの張力とは、薄膜の単位厚み当たりの張力を意味する。
【0073】
薄膜厚は、各工程中及び各工程間において変化しても構わないが、例えば、0.001mm〜1mmの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.001mm〜0.5mmの範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、0.001mm〜0.1mmの範囲を挙げることができる。
【0074】
水洗工程における張力T及び乾燥工程における張力Tにおける張力Tは、薄膜に伸び又は破れが生じない程度に小さく、且つ、薄膜に皺が生じるのを防ぐために十分な程度に大きいことが好ましい。薄膜に与えられる好ましい張力としては、例えば、薄膜の降伏応力の50%以下等を挙げることができる。
【0075】
上記の剥離工程では、基材上に形成された薄膜を基材から剥離する。剥離工程における張力としては、例えば、10N/mm以下を挙げることができる。好ましくは、例えば、6N/mm以下が挙げられる。より好ましくは、例えば、0.005N/mm〜5N/mmの範囲を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、0.01N/mm〜1N/mmの範囲が挙げられる。また剥離工程における単位厚み当たりの張力としては、20N/mm以下を挙げることができる。好ましくは、例えば、12N/mm以下が挙げられる。より好ましくは、例えば、1N/mm〜10N/mmの範囲を挙げることができる。このような張力により、薄膜が基材から剥離される。
【0076】
上記の水洗工程では、上記の剥離工程で得られた薄膜に張力を与えながら、薄膜を水で洗浄する。水洗工程における張力としては、例えば、0.0001N/mm〜2N/mmの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.001N/mm〜1N/mmの範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、0.002N/mm〜0.2N/mmの範囲を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、0.005N/mm〜0.03N/mmの範囲が挙げられる。また水洗工程における単位厚み当たりの張力としては、0.1N/mm〜4N/mmの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.2N/mm〜2N/mmの範囲が挙げられる。尚、張力が0.0001N/mm〜2N/mmである場合には、薄膜の厚さが0.001mm〜0.5mmの範囲であることが好ましく、張力が0.005N/mm〜0.03N/mmである場合には、薄膜の厚さが0.001mm〜0.1mmの範囲であることが好ましい。
【0077】
水洗工程を複数段に分けて行う場合には、前段における張力と後段における張力とを等しくしてもよいが、前段における張力よりも後段における張力を増加させることが好ましい。使用する洗浄液としては、例えば、金属イオン成分が含まれていない水を挙げることができる。好ましくは、25℃における抵抗率が17MΩ・cm以上である水が挙げられる。このような抵抗率を呈する水は、市販の純水製造装置により得ることができる。水洗温度としては、例えば、0℃〜100℃の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、5℃〜80℃の範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、10℃〜60℃の範囲を挙げることができる。水洗時間としては、例えば、10秒間〜30分間の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、20秒間〜10分間の範囲が挙げられる。水洗は、例えば、薄膜を水に浸漬することにより行うことができる。
【0078】
上記の乾燥工程では、水洗工程で得られた薄膜に張力を与えながら、薄膜を乾燥させる。
乾燥工程(D)における張力としては、例えば、0.001N/mm〜10N/mmの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、0.005N/mm〜5N/mmの範囲が挙げられる。より好ましくは、例えば、0.01N/mm〜1N/mmの範囲を挙げることができる。特に好ましくは、例えば、0.01N/mm〜0.05N/mmの範囲が挙げられる。また水洗工程における単位厚み当たりの張力としては、0.2N/mm〜20N/mmの範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、1N/mm〜10N/mmの範囲が挙げられる。尚、張力が0.01N/mm〜0.05N/mmである場合には、薄膜の厚さが0.001mm〜0.1mmの範囲であることが好ましい。
【0079】
乾燥工程を複数段に分けて行う場合には、前段における張力と後段における張力とを等しくしてもよいが、前段における張力よりも後段における張力を増加させることが好ましい。乾燥温度としては、例えば、20℃〜90℃の範囲を挙げることができる。乾燥時間としては、例えば、10秒間〜30分間の範囲を挙げることができる。好ましくは、例えば、20秒間〜10分間の範囲が挙げられる。乾燥は、例えば、上記の乾燥温度である窒素、空気等の気体を循環させることにより行うことができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。得られたスルホ基を有する重合体を、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記する。)により分析し(分析条件は下記のとおり)、分析結果からポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を算出した。
<分析条件>
GPC測定装置:CTO−10A(株式会社島津製作所製)
カラム:TSK−GEL(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:臭化リチウム含有N,N−ジメチルホルムアミド(臭化リチウム濃度:10mmol/dm
流量:0.5mL/分
検出波長:300nm
【0081】
<スルホ基への変換率Aの算出>
得られたスルホ基を有する重合体のイオン交換容量を以下に記載の2つの方法により求め、得られたイオン交換容量をもとに、スルホ基への変換率Aを算出した。
1.保護基脱離工程で得られたスルホ基を有する重合体を含む溶液をシャーレに量り取り、溶媒を留去させた。得られた製膜品の水洗を繰り返し、洗浄後の重合体を乾燥させた。所定量を量り取り、滴定装置(AT−510;株式会社京都電子製)を使用して、NaOHの標準溶液で滴定を行い、中和点からイオン交換容量(IEC1)を求めた。
2.保護基脱離工程で得られたスルホ基を有する重合体を含む溶液をシャーレに量り取り、溶媒を留去させた。得られた製膜品を18.9%塩酸に30分浸漬し、塩酸を交換して、再度重合体を浸漬させた。洗浄後に得られる水が中性を示すまで洗浄を続けた。洗浄後の重合体を乾燥させた後、所定量を量り取り、滴定装置(AT−510;株式会社京都電子製)を使用して、NaOHの標準溶液で滴定を行い、中和点からイオン交換容量(IEC2)を求めた。
スルホ基への変換率A(%)=IEC1÷IEC2
【0082】
[製造例1]
内部の気体を窒素ガスで置換した反応容器に、塩化ニッケル六水和物5.94gとN―メチルピロリドン186gとを仕込んだ。得られた混合物を脱水濃縮し、終了後これを内温50℃に冷却した後、2,2’−ビピリジン3.89gを加え、同温度で1時間撹拌し、その後下記式

で示される化合物10.33gを仕込んでニッケル含有溶液を調製した。
窒素置換した別の反応容器に、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)68.8g、N―メチルピロリドン185g、メチルイソブチルケトン309gを仕込んだ。得られた混合物を50℃に昇温し、1時間攪拌した。亜鉛粉末12.30gを加え40℃に昇温し、メタンスルホン酸144mgとN−メチル−2−ピロリドン9.44gとを混合することにより調製した溶液を加えた。得られた混合溶液を40℃で3時間攪拌した後、15℃に冷却し、モノマー溶液を得た。得られた混合溶液に前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、得られた混合物を20℃で13時間攪拌しカップリング反応を行い、下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位を含む重合体を含んだ黒色の重合溶液680gを得た。
[実施例1](本発明重合体取得方法(その1))
製造例1から得られた重合溶液646gにメチルイソブチルケトン586g、2%硫酸320gを加え、80℃で攪拌した。10分静置後に分液し、下層の水層を分離し、重合体を含む有機層を1055g得た。同様の操作を2回繰り返した後、水320gで繰り返し洗浄し、有機層を648g得た。得られた有機層にジエチレングリコールモノエチルエーテルを788g加えて減圧下濃縮し、メチルイソブチルケトンを留去後、重合体を含む溶液を842g得た。
【0083】
得られた重合体を含む溶液800gと水160gとエチレングリコール80gとの混合溶液を、副生物を留出させながら内温110℃で30時間反応させた。得られた反応溶液では下記式

で示される繰り返し単位と下記式


で示される繰り返し単位とを含む重合体の状態が溶液状態であり、液体状態のままで薄膜の製造方法のための工程に繋げることが可能になった。
【0084】
次に、溶液状態で得られた重合体8gをシャーレ(基材)に入れ、これを70℃で4時間乾燥させることにより液体を除去したところ、無色透明の薄膜がシャーレ(基材)上に形成された。イオン交換容量を測定した結果、スルホ基への変換率Aは、95.2%であった。
【0085】
[製造例2]
製造例1と同様の操作で得られた重合溶液1060gに35%塩酸を53g加えて撹拌し、得られた混合溶液を18.9%塩酸2118gに滴下し30分撹拌後ろ過した。得られた固体を再度18.9%塩酸2120gで洗浄し、水で繰り返し洗浄してpHを3.4に上げた後、メタノール/水混合溶媒で1時間還流した。ろ過後メタノールで浸漬洗浄を行い、90℃で24時間乾燥することで下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位を含む重合体固体を70g得た。
【0086】
[実施例2](本発明重合体取得方法(その2))
製造例2から得られた重合体固体7gをジエチレングリコールモノエチルエーテル105gに溶解させ、水21gを加えて内温110℃で15時間反応させた。その後常圧で140℃まで昇温して留分7gを留去し、水を加えた後再度内温110℃で20時間加熱した。その後再度留分を11g留去し、水を加えた後再度内温110℃で25時間加熱した。得られた反応溶液では下記式

で示される繰り返し単位と下記式


で示される繰り返し単位とを含む重合体の状態が溶液状態であり、液体状態のままで薄膜の製造方法のための工程に繋げることが可能になった。
【0087】
次に、溶液状態で得られた重合体8gをシャーレ(基材)に入れ、これを70℃で4時間乾燥させることにより液体を除去したところ、無色透明の薄膜がシャーレ(基材)上に形成された。イオン交換容量を測定した結果、スルホ基への変換率Aは、94.8%であった。
【0088】
[実施例3](本発明重合体取得方法(その3))
製造例2から得られた重合体固体7gをジエチレングリコールモノエチルエーテル105gに溶解させ、水10gを加えて内温115℃で53時間反応させた。得られた反応溶液では下記式

で示される繰り返し単位と下記式


で示される繰り返し単位とを含む重合体の状態が溶液状態であり、液体状態のままで薄膜の製造方法のための工程に繋げることが可能になった。
【0089】
次に、溶液状態で得られた重合体8gをシャーレ(基材)に入れ、これを70℃で4時間乾燥させることにより液体を除去したところ、無色透明の薄膜がシャーレ(基材)上に形成された。イオン交換容量を測定した結果、スルホ基への変換率Aは、95.0%であった。
【0090】
[製造例3]
内部の気体を窒素ガスで置換した反応容器に、臭化ニッケル2.91gとN―メチルピロリドン160g、トルエン479g、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン2.23gと4,4’−ジカルボン酸メチル−2,2’−ビピリジン0.365gとを加え、70℃で1時間撹拌することにより、ニッケル含有溶液を調製した。
窒素置換した別の反応容器に、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラキス(2,2−ジメチル−1−プロピル)45.0g、下記式

で示される化合物18.7g及びN―メチルピロリドン319gを仕込んだ後、これに亜鉛粉末8.89gを加え40℃に昇温した後、メタンスルホン酸104mgとN−メチル−2−ピロリドン6.90gとを混合することにより調製した溶液を加えた。得られた混合溶液を40℃で3時間攪拌した後、70℃に昇温して、モノマー溶液を得た。得られたモノマー溶液に前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、得られた混合物を70℃で3時間攪拌しカップリング反応を行うことにより、下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位とを含む重合体を含んだ黒色の重合溶液1020gを得た。
【0091】
[製造例4]
製造例3から得られた重合溶液776gを2mol/N塩酸1552gに加えて撹拌し、これを30分撹拌後ろ過した。得られた固体を再度2mol/N塩酸783gで洗浄し、水で繰り返し洗浄してpHを3.3に上げた後、メタノール/水混合溶媒で1時間還流した。得られた混合物をろ過後メタノールで浸漬洗浄した後、90℃で乾燥することにより、下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位とを含む重合体固体を50.2g得た。
【0092】
[実施例4](本発明重合体取得方法(その4))
製造例4から得られた重合体固体7gをジエチレングリコールモノエチルエーテル120gに溶解させ、これに水24gを加えて内温110℃で23時間反応させた。次いで、得られた反応混合物を常圧で140℃まで昇温して留分9.3gを留去し、これに水を加えた後再度内温110℃で22時間加熱した。得られた反応溶液では下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位とを含む重合体の状態が溶液状態であり、液体状態のままで薄膜の製造方法のための工程に繋げることが可能になった。
【0093】
次に、溶液状態で得られた重合体12gをシャーレ(基材)に入れ、これを70℃で6時間乾燥させることにより液体を除去したところ、無色透明の薄膜がシャーレ(基材)上に形成された。イオン交換容量を測定した結果、スルホ基への変換率Aは、94.4%であった。
【0094】
[製造例5]
内部の気体を窒素ガスで置換した反応容器に、塩化ニッケル六水和物10.1gとN―メチルピロリドン270gとを加え、濃縮脱水で95g溶液を留去した。次いで、得られた混合物に、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン7.09gと4,4’−ジカルボン酸メチル−2,2’−ビピリジン1.17gとを加え、55℃で1時間撹拌することにより、ニッケル含有溶液を調製した。
窒素置換した別の反応容器に、下記式

で示される化合物75.7g、N―メチルピロリドン1080g及びトルエン630gを仕込んだ後、4,4’−ジクロロ−2,2’,6,6’−ビフェニルテトラスルホン酸テトラキス(2,2−ジメチル−1−プロピル)90.7gと、亜鉛粉末8.89gとを加えた。メタンスルホン酸219mgとN−メチル−2−ピロリドン14.6gとを混合することにより調製した溶液を加え、得られた混合溶液を50℃で1時間攪拌した後、55℃に昇温し、モノマー溶液を得た。得られたモノマー溶液に前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、得られた混合物を55℃で2時間攪拌しカップリング反応を行うことにより、下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位とを含む重合体を含んだ黒色の重合溶液2088gを得た。
【0095】
[製造例6]
製造例5から得られた重合溶液420gにメチルイソブチルケトン619gを加えた後、5%硫酸水溶液295gを加えて80℃で30分撹拌後油層を抽出した。得られた油層を296gイオン交換水で3回洗浄した後、ジエチレングリコールモノエチルエーテル70g加えて再び分離した水層を除去した。その後イオン交換水390gとジエチレングリコールモノエチルエーテル60gとを加えて油層を抽出し、得られた油層を再度イオン交換水390gとジエチレングリコールモノエチルエーテル92gとを加えて抽出することにより、ポリマー溶液Aを得た。水層のpHは2.7であった。
【0096】
[製造例7]
製造例6から得られたポリマー溶液A1190gから溶媒を142g濃縮し、そこへジエチレングリコールモノエチルエーテル488g仕込んで再度濃縮した。濃縮後ジエチレングリコールモノエチルエーテル106gを加えて、ポリマー溶液B642gを得た。
【0097】
[実施例5](本発明重合体取得方法(その5))
製造例7で得られたポリマー溶液Bに、ジエチレングリコールモノエチルエーテル20gとイオン交換水5gとを加え、内温110℃で21時間反応させた。得られた反応溶液では下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位とを含む重合体の状態が溶液状態であり、液体状態のままで薄膜の製造方法のための工程に繋げることが可能になった。
【0098】
次に、溶液状態で得られた重合体12gをシャーレ(基材)に入れ、これを70℃で6時間乾燥させることにより液体を除去したところ、無色透明の薄膜がシャーレ(基材)上に形成された。イオン交換容量を測定した結果、スルホ基への変換率Aは、94.2%であった。
[比較例1]
製造例2から得られた重合体固体6.4gに、N−メチル−2−ピロリドン186g、無水臭化リチウム8.7g、水18.5gを加えて110℃で3時間撹拌した。得られた混合物10gをシャーレ(基材)に入れ、これを110℃で4時間乾燥させたところ、白濁した薄膜がシャーレ(基材)上に形成された。イオン交換容量は0.02であり、スルホ基への変換率Aは、0.45%であった。
このように、重合体を液体状態のままでスルホ基へ変換することはできず、薄膜の製造工程に繋げることは不可能であった。
【0099】
[製造例3]
窒素置換した反応容器に、臭化ニッケル10.18g、N−メチル−2−ピロリドン577.2g加えた。得られた混合物を65℃で2時間攪拌した後、50℃に冷却し、2,2’−ビピリジン7.26gを加え15℃に冷却し、ニッケル含有溶液を調製した。
窒素置換した別の反応容器に、下記式


で示される化合物19.40g、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)126.18g、N−メチル−2−ピロリドン975.5gを加え、30分攪拌した。亜鉛粉末23.05gを加え、40℃に昇温し、メタンスルホン酸268mgとN−メチル−2−ピロリドン17.6gとを混合することにより調製した溶液を加えた。得られた混合溶液を40℃で3時間攪拌した後、15℃に冷却し、モノマー溶液を得た。
前記ニッケル含有溶液をモノマー溶液に注ぎ、得られた混合物を20℃で13時間攪拌し、カップリング反応を行い、下記式、

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位を含む黒色の重合溶液1756gを得た。得られた重合溶液1756gにトルエン1756g、メチルエチルケトン1756g、18.9%塩酸527gを加え、80℃で攪拌した。15分静置後に分液し、下層の水層を分離し、ポリアリーレンを含む上層を4709g得た。得られた上層を減圧下、濃縮し、トルエンとメチルエチルケトンを留去後、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアリーレンを含む溶液を1721g得た。35%塩酸91.5gを加え120℃で24時間攪拌し、脱保護反応を行い、得られた溶液を減圧下、濃縮し、N−メチル−2−ピロリドンを加えて重合体を含む溶液を1780g得た。
〔比較例2〕
製造例3で調製した重合体を含む溶液1780gをアセトン3561g中に析出させて、液を分離後、析出した析出ポリアリーレンをアセトン、13.2%塩酸で洗浄して、水洗浄して、減圧乾燥することにより、下記式

で示される繰り返し単位と下記式

で示される繰り返し単位を含むポリアリーレンを79.09g得た。このように、生成されたスルホ基含有重合体を、スルホン酸塩の形で一旦固体として単離しなければならず、また、一旦スルホン酸塩にした後に酸による処理が必須であった。このため、スルホン酸塩に対して過剰量の酸が必要である点等の課題があり、製造スピードの低下、工程数増加によるコスト増加、及び、使用する酸量の発生等が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、製造スピードの向上、工程数減少によるコスト削減、及び、酸廃棄物量削減のための使用する酸量の削減等の効果が得られ、工業的製造において有利な薄膜製造方法及び重合体取得方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−2)


で示されるスルホ基を有し、滴定法によるイオン交換容量が0.5meq/gから8.5meq/gまでの範囲にあるスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜の製造方法であって、
(1)式(1−1)


(Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。)
で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRを、90℃から200℃までの範囲である反応温度で、(a)水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下、で脱離させる第一工程、
(2)前工程により生成された前記のスルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する第二工程、
(3)前工程により回収された前記のスルホ基含有重合体を液体状態で基材上に塗布する第三工程、及び、
(4)得られた塗布物から液体を除去することにより基材上に前記のスルホ基含有重合体を構成成分とする薄膜を形成させる第四工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、水と任意の割合で混ざり、アミド結合及びエステル結合を有しない溶媒中で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、アルキレングリコールの共存在下で行われること特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
第一工程である脱保護工程における難水溶性重合体の液体状態が、溶液状態であること特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項5】
第二工程である回収工程におけるスルホ基含有重合体の状態が、溶液状態であること特徴とする請求項1乃至4のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項6】
前記の難水溶性重合体が、ポリアリーレンを含む重合体であること特徴とする請求項1乃至5のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項7】
前記の難水溶性重合体が、式(2)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。mは1又は2を表わす。kは4−mを表わす。)
で示される繰り返し単位を含む重合体であること特徴とする請求項1乃至6のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項8】
前記の難水溶性重合体が、式(2)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。mは1又は2を表わす。kは4−mを表わす。)
で示される繰り返し単位と式(4)

(式中、a、b及びcは、同一又は相異なって、0又は1を表わす。nは5以上の整数を表わす。Ar、Ar、Ar及びArは、同一又は相異なって、2価の芳香族基を表わす。ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;
フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜10のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。Y及びYは、同一又は相異なって、単結合、カルボニル基、スルホニル基、イソプロピリデン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基又はフルオレン−9,9−ジイル基を表わす。Z及びZは、同一又は相異なって、酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で示される繰り返し単位とを含む重合体であること特徴とする請求項1乃至7のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項9】
前記の難水溶性重合体が、式(2)

(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基又はシアノ基を表わす。ここで、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基及び炭素数2〜20のアシル基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい。また、結合位置が隣接する2つのRが結合して環を形成していてもよい。mは1又は2を表わす。kは4−mを表わす。)
で示される繰り返し単位と式(5)

(式中、Arは、2価の芳香族基を表わす。
ここで、2価の芳香族基は、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基;フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基;及び、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数6〜20のアリールオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい炭素数2〜20のアシル基;からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されていてもよい。)
で示される繰り返し単位とを含む重合体であること特徴とする請求項1乃至7のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項10】
が2,2−ジメチルプロピル基であること特徴とする請求項1乃至9のいずれかの請求項記載の方法。
【請求項11】
式(1−2)


で示されるスルホ基を有し、滴定法によるイオン交換容量が0.5meq/gから8.5meq/gまでの範囲にあるスルホ基含有重合体の取得方法であって、
式(1−1)


(Rは炭素数1〜20のアルキル基を表わす。当該アルキル基は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアシル基及びシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を有していてもよい。)
で示される基を有する難水溶性重合体が有する保護基であるRを、90℃から200℃までの範囲である反応温度で、(a)水の存在下で、且つ、(b)酸解離定数(pKa)<10のブレンステッド酸もしくはそこから水素原子を引き抜いたブレンステッド塩基の非存在下、脱離させる工程、及び、前工程により生成された前記スルホ基含有重合体を固体として単離することなく回収する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、水と任意の割合で混ざり、アミド結合及びエステル結合を有しない溶媒中で行われることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
第一工程である脱保護工程における保護基の脱離反応が、アルキレングリコールの共存在下で行われること特徴とする請求項12記載の方法。

【公開番号】特開2013−64100(P2013−64100A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−79320(P2012−79320)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】