説明

スレッドとその製造方法、スレッドを用いた偽造防止用紙、及び偽造防止印刷物、並びにそれらを用いた真贋判定方法

【課題】用紙の表側から観察した時にスレッドの表側のマイクロ文字の像が観察され、用紙の裏側から観察した時には裏側のマイクロ文字の像が観察されるが、用紙を透かしてみた場合に初めて現れるマイクロ文字の像を視認できる、また、用紙に紫外線を当てたときに初めて現れるマイクロ文字の像を視認でき、用紙に用いたときに偽造が困難なスレッドの提供と、その製造方法、それを用いた偽造防止用紙、及び偽造防止印刷物、並びに、その真贋判定方法を提供する。
【解決手段】基材の表側の面に、表側金属薄膜層、及び、表側着色樹脂層を同一パターン状に形成し、前記基材の裏側の面に、裏側金属薄膜層、及び、裏側着色樹脂層を同一パターン状に形成し、基材の表裏のいずれかの面に、第3金属薄膜層、及び、無色樹脂層を、同一パターン状に形成したスレッドとする。更には、無色樹脂層を紫外線で発光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止が要望される分野に好適なスレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片、等とも称される)とその製造方法、そのスレッドを抄き込んだスレッド入り紙でなる偽造防止用紙、及びそれらを利用した有価証券類、紙幣類等の偽造防止印刷物、並びにそれら偽造防止用紙や偽造防止印刷物の真贋判定方法に関する。
【0002】
また、スレッドについては、偽造防止対策の分野以外で美的デザインにも有効で、例えば服飾等の分野で装飾性に優れた製品を提供する場合にも好適である。本発明に関るスレッドは特に、金属薄膜の層が、所望する文字または模様に応じてパターニングされており、上記分野で好適な効果につながる重要な要素の一つになっている。偽造防止性能を考慮して、一般に、この文字は非常に小さなもの(いわゆるマイクロ文字)が採用され易い。本発明では、特に断りの無い限り、単に文字のみならずここで云う模様のことも含めてマイクロ文字と総称する。尚、金属薄膜層の代表的なパターニング手法は、いわゆるデメタライジング加工である。
【背景技術】
【0003】
紙層内に糸状物を抄き込んだ「スレッド入り紙」と呼ばれる偽造防止用紙はよく知られている。そのスレッド入り紙は製造に極めて高度な技術を必要とするので偽造防止に大きな効果があり、周知のように各国の紙幣などに多く使用されている。
【0004】
上記スレッド入り紙には大きく分けて2種類あり、その一つはスレッドが用紙内部に抄き込まれ、用紙表面に露出しない種類のものであり、もう一つはスレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と呼ばれるものである。
【0005】
前者の表面に露出しない用紙を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献1参照)や、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献2参照)、あるいは2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0006】
また、後者の「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、ワイヤー上の紙料懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端にスレッドを通した溝を有するベルト機構を埋没して製造する方法(例えば、特許文献4参照)や、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献5参照)や、長網抄紙機のワイヤー上の回転ドラム内に圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙匹に挿入したスレッド上のスラリーを圧縮空気で間欠的に吹き飛ばしてスレッドを露出させる方法(例えば、特許文献6参照)などが提案されている。
【0007】
上記「窓空きスレッド入り紙」は、用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くした窓空き部を形成し、この窓空き部にスレッドが露出していることが特徴である。従って、表面に接着剤を塗工していないスレッドを使用して製造した用紙では、スレッドの露出部を爪などでこするとスレッドが簡単に剥がれてしまったり、印刷時にスレッドが浮き上がったりす
るので致命的な欠点となる。このため表面に感熱接着剤を設けたスレッドを使用して窓空きスレッド入り紙を抄紙し、抄紙機の乾燥ゾーンでこの用紙を乾燥する際にスレッドに塗工されている感熱接着剤を溶融若しくは軟化することによって、用紙を構成するセルロース繊維とスレッドとを確実に接着させ、剥離強度を高める対策がとられている。
【0008】
上記スレッド入り紙に使用するスレッドにも多種多様な構成が提案されている。例えば、ホログラムスレッド、磁気スレッド、紫外線の照射で蛍光発色するスレッド、サーモクロミック剤を塗工したスレッド、金属蒸着スレッド、マイクロ文字入りスレッド等々が実用化されている。
【0009】
そのうちのマイクロ文字入りスレッドは、プラスチックフィルムに直接箔押しする方法や、真空蒸着装置においてマスク若しくはテンプレートを使用する選択的金属化をする方法、金属化と腐食により非金属化する方法(パスター加工、或いはデメタライジング加工と呼ばれる)で製造することが知られている(例えば、特許文献7参照)。
【0010】
上記「デメタライジング加工」によりマイクロ文字を形成したスレッドは外国紙幣に多く使用されている。例えば現在の米国のドル紙幣やヨーロッパのユーロ紙幣などではスレッドが紙層間に埋没する構成の用紙が、ユーロ紙幣に移行する前のドイツの100マルク紙幣などではスレッドが窓部に間欠的に露出する構成の用紙が採用されている。これらスレッドに形成されたマイクロ文字は、文字本来の見方で言えば正しい向きの「正文字」と上下反転の「逆文字」が交互に位置するようになっている。
【0011】
このことは、用紙を抄造するときにスレッドが反転しても良いような設計になっていることを意味している。別の言い方をすると、スレッドには表裏の区別をしていないことを意味している。
【0012】
また、マイクロ文字は文字を形成する部分が金属薄膜層の場合(前記米国ドル紙幣等)と、マイクロ文字を形成する部分が抜き文字になっている場合(前記ドイツ100マルク紙幣等)がある。別の言い方をすると、マイクロ文字には「ポジ型」或いは「ネガ型」があることとなる。
【0013】
また、スレッドの表裏を区別して用紙に抄き込んだ偽造防止用紙の提案があり、この提案は、用紙の流れ方向にスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙において、前記スレッドは、ベースとなるフィルムと、前記フィルムの表面に形成された金属薄膜層からなる正文字のみのマイクロ文字と、前記金属薄膜層の上に形成された透明インクによる印刷層と、前記フィルムの裏面に形成された感熱接着剤層とからなり、前記印刷層を形成するインクには紫外線の照射で発色する染顔料が添加されており、用紙の表側から見た場合に、正文字のマイクロ文字が見えるように前記スレッドが用紙に抄き込んでいることを要旨とする偽造防止用紙であり、このスレッドをかような構成にすることで、スレッドに紫外線を照射したときにスレッドの印刷層が発色して見えるか否かを判定することにより、スレッドの表裏面の識別が簡単にできるという効果が得られる。この特許において金属薄膜層からなるマイクロ文字は、いわゆる「デメタライジング加工」で得られることが述べられている(例えば、特許文献8参照)。
【0014】
更には、用紙または印刷物の片面と反対面のそれぞれからスレッドのマイクロ文字を観察しようとしたときに、互いに逆向きではなくいずれの面からでも同じ向きにマイクロ文字の像を視認できる、また、用紙または印刷物の片面からスレッドのマイクロ文字の像を視認できたときに、反対面から観察すると該当すべきそのマイクロ文字の像が視認できない(又は視認し難い)スレッドについても、開発されている(たとえば、特許文献9参照)。
【0015】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭51−130309号公報
【特許文献2】特開平2−169790号公報
【特許文献3】特公平5−40080号公報
【特許文献4】特公平5−85680号公報
【特許文献5】米国特許第4462866号公報
【特許文献6】特開平6−272200号公報
【特許文献7】特公平6−062030号公報
【特許文献8】特許第3279212号公報
【特許文献9】WO2007/007784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記特許文献9に提案されたスレッドは、用紙に抄き込まれたときに、用紙を光に翳すと、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層がある領域と、そのいずれも無い領域で、光透過性の違いによってコントラストを生じ、また、反射光で用紙の表側から観察した時には、スレッドの表側のマイクロ文字の像が観察され、用紙の裏側から観察した時には裏側のマイクロ文字の像が観察されるものであるが、偽造しようとすれば、印刷での偽造が不可能ではない。
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、用紙に用いたときに、反射光で用紙の表側から観察した時にスレッドの表側のマイクロ文字の像が観察され、用紙の裏側から観察した時には裏側のマイクロ文字の像が観察されるが、用紙を光に翳し透かしてみた場合に、反射光では観察されなかったマイクロ文字の像が、初めて視認できる、または、用紙に紫外線を当てた場合に、それまで観察されなかったマイクロ文字の像が、初めて視認できる、偽造が困難なスレッドの提供と、その製造方法、そのスレッドを用いた偽造防止用紙、及び偽造防止印刷物、並びに、それら偽造防止用紙または偽造防止印刷物を用いた真贋判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、表裏の面をもつ糸状物であり且つ光透過性を持つ基材の表側の面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の表側金属薄膜層、及び、該表側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの表側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された表側着色樹脂層を備え、
該表側金属薄膜層が有る領域と、該表側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者の領域と後者の領域とでコントラストが生じること、且つ、該
基材の、該表側金属薄膜層および表側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の表側着色樹脂層を視認できること、
および、前記基材の裏側の面に、少なくとも、文字または模様の片方または両方によるパターン状に形成された1以上の裏側金属薄膜層、及び、該裏側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの裏側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された裏側着色樹脂層を備え、
該裏側金属薄膜層が有る領域と、該裏側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の、該裏側金属薄膜層および裏側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該裏側着色樹脂層を該パターン状に視認できること、
更に、前記基材の表裏のいずれかの面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の第3金属薄膜層、及び、該第3金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの第3金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ無色あるいは淡色の無色樹脂層を備え、
該第3金属薄膜層が有る領域と、該第3金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の、該第3金属薄膜層および無色樹脂層が備わった側から観察すると、該無色樹脂層を該パターン状に視認できないことを特徴とするスレッドである。
【0020】
更に、請求項2の発明は、表裏の面をもつ糸状物であり且つ光透過性を持つ基材の表側の面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の表側金属薄膜層、及び、該表側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの表側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された表側着色樹脂層を備え、
該表側金属薄膜層が有る領域と、該表側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者の領域と後者の領域とでコントラストが生じること、且つ、該基材の、該表側金属薄膜層および表側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の表側着色樹脂層を視認できること、
更に、前記基材の裏側の面に、少なくとも、文字または模様の片方または両方によるパターン状に形成された1以上の裏側金属薄膜層、及び、該裏側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの裏側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された裏側着色樹脂層を備え、
該裏側金属薄膜層が有る領域と、該裏側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の、該裏側金属薄膜層および裏側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該裏側着色樹脂層を該パターン状に視認できること、
更に、表裏のいずれかの面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の第3金属薄膜層、及び、該第3金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの第3金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ紫外線によって発光する無色あるいは淡色の無色樹脂層を備え、
該第3金属薄膜層が有る領域と、該第3金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の該第3金属薄膜層および無色樹脂層が備わった側から観察すると、該無色樹脂層を該パターン状に視認できないこと、更に、該基材の、該第3金属薄膜層および無色樹脂層が備わった側から紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認できることを特徴とするスレッドである。
【0021】
また、請求項3の発明は、ウェブ状で且つ光透過性を持つ基材の表裏面に、金属の薄膜を成膜することにより前記表側金属薄膜層と前記裏側金属薄膜層を設け、
前記表側金属薄膜層の上に前記表側着色樹脂層を印刷法によって所望のパターン状に形成し、前記裏側金属薄膜層の上に前記裏側着色樹脂層を印刷法によって所望のパターン状
に形成し、前記表側金属薄膜層あるいは前記裏側金属薄膜層の上に、前記無色樹脂層を印刷法によって所望のパターン状に形成し、
該パターン状の表側着色樹脂層と裏側着色樹脂層および、前記無色樹脂層を耐エッチング用のマスクとして前記表側金属薄膜層と前記裏側金属薄膜層をエッチングすることにより、該表側金属薄膜層と該裏側金属薄膜層とを表側着色樹脂層と裏側金属薄膜層および、前記無色樹脂層が同様のパターン状を成して重なるように形成し、
その後、該基材をスレッドの幅になるように切断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスレッドの製造方法である。
【0022】
更に、請求項4の発明は、請求項1または請求項2に記載のスレッドが、用紙となる紙の中に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0023】
また、請求項5の発明は、請求項1に記載のスレッドが、紙の表面には露出しないように紙に抄き込まれており、
且つ、前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じ、
前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層が前記パターン状に視認できないことを特徴とする偽造防止用紙である。
【0024】
また、請求項6の発明は、請求項2に記載のスレッドが、紙の表面には露出しないように紙に抄き込まれており、
且つ、前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じ、
前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層が前記パターン状に視認できず、紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認できることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0025】
また、請求項7の発明は、請求項5に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷を施した印刷部が設けてあることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0026】
また、請求項8の発明は、請求項6に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷を施した印刷部が設けてあることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0027】
更に、請求項9の発明は、請求項5に記載の偽造防止用紙の真贋を判定する方法であって、
(a)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(b)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(c)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無
色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(d)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(a)、(b)、(c)及び(d)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止用紙の真贋判定方法である。
更に、請求項10の発明は、
請求項6に記載の偽造防止用紙の真贋を判定する方法であって、
(e)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(f)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(g)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認でき、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(h)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(e)、(f)、(g)及び(h)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止用紙の真贋判定方法である。
【0028】
また、請求項11の発明は、請求項7に記載の偽造防止印刷物の真贋を判定する方法であって、
(a)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(b)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(c)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(d)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(a)、(b)、(c)及び(d)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止印刷物の真贋判定方法である。
【0029】
また、請求項12の発明は、請求項8に記載の偽造防止印刷物の真贋を判定する方法であって、
(e)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(f)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(g)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認でき、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン
状に視認し難いこと、
(h)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(e)、(f)、(g)及び(h)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止印刷物の真贋判定方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。即ち、上記本発明で得られるスレッドは、代表例として偽造防止用紙(偽造防止印刷物を得る為の用紙)とか偽造防止印刷物に利用できる。
【0031】
従来のスレッド入り用紙(又は印刷物)は、片面(オモテ面)から観察したときにスレッドの片面(オモテ面)のマイクロ文字の像が視認されるだけで、反対面(裏面)から観察したときにはスレッドのマイクロ文字の像は必然的に左右の向きか又は上下の向きが逆になった「逆向き」の像として視認されるだけであった。このとき、反射光を使うかあるいは透過光を使うかにも、関係は無かった。
【0032】
また、特許文献9に記載のスレッド入り用紙(又は印刷物)でも、反射光で、片面(例えばオモテ面)から視認できたスレッドのマイクロ文字等のパターンの着色された像が、反対面(例えば裏面)から見ると反射光では視認できず(又は視認し難く)、また、反対面(例えば裏面)から視認できたスレッドのマイクロ文字等のパターンの着色された像が、片面(例えばオモテ面)から見ると反射光では視認できない(又は視認し難い)こと、及び、光に翳して透過光で観察した場合は、当該マイクロ文字等によって影となった像をいずれの面からでも視認できることにより、真贋判定をしていた。このスレッド入り用紙(又は印刷物)であっても、印刷技術によっての偽造が完全には防止することは難しい。
【0033】
請求項1に記載のスレッドを用いた偽造防止用紙ならびにその偽造防止用紙を用いた偽造防止印刷物では、従来の真贋の判定に加えて、反射光では見えなかった第3金属薄膜層が有る領域が、光に翳したときにはじめて、他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じるので、確認でき真贋を判定することが出来る。また、第3金属薄膜層が有る領域は、スキャナーなどで読み取ることが出来ないので、印刷技術により偽造することが困難である。
【0034】
また、さらに工夫した請求項2の発明に記載のスレッドを用いた偽造防止用紙ならびにその偽造防止用紙を用いた偽造防止印刷物では、従来の真贋の判定に加えて、反射光で表側から、裏側から見たときに、それぞれに、表側着色樹脂層、裏側着色樹脂層が視認できるのは同様であるが、紫外線を当てて観察すると、はじめてパターン状の発光樹脂層を視認でき、真贋を判定することが出来る。
【0035】
また、本発明で得られるスレッドは、偽造防止用紙の用途以外にも用いることができる。例えば、和服用の生地の製造に使用される金銀糸と同様な製造方法、即ち撚り糸の外周方向にスパイラル状にこのスレッドを巻き付けて縫い糸を製造すると、偽造防止を目的とした縫い糸とすることができる。また、この縫い糸を、ブランド物と呼ばれる高級なバッグ等の人目に付かない部分に縫いつけておくと、偽物と本物の区別を容易に行うことができる。尚、そのバッグ等に縫い付ける個所を、例えば、そのバッグ等の人目に付かない部分に縫い付けておくと、真偽判定用としては、なかなか気付かれ難いというメリットも得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のスレッドの一実施形態を表す模式的な平面図である。
【図2】本発明のスレッドの一実施形態の中間製品の一部拡大断面図である。
【図3】本発明のスレッドの一実施形態の模式的な一部拡大断面図である。
【図4】本発明の偽造防止用紙の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【図5】本発明の偽造防止用紙の一実施形態を表側から見た模式的な図である。
【図6】本発明の偽造防止用紙の一実施形態を裏側から見た模式的な図である。
【図7】本発明の偽造防止用紙の一実施形態を光に翳して透過光で見た模式的な図である。
【図8】本発明の偽造防止印刷物の一実施形態を表す偽造防止印刷物の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下本発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明のスレッド1の一実施形態を表すスレッド1を表側から見た模式図である。図1では、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターンをひとつの図形丸と三角と四角で表している。透明な基材2の表側に設けた表側金属薄膜層3の上に形成された表側着色樹脂層4が見えており、その隣に基材2の裏側に設けた裏側金属薄膜層5が透明な基材2を通して見え、その隣に、基材2の表側に設けた第3金属薄膜層7の上に形成された無色または淡色の無色樹脂層8が見えている。
【0039】
図2は、本発明のスレッドの一実施形態の中間製品の一部拡大断面図である。基材2の表側(図では基材2の上側)の表側金属薄膜層3と表側金属薄膜層3の上に表側着色樹脂層4と無色樹脂層8が設けられている。基材2の裏側には、裏側金属薄膜層5と裏側金属薄膜層5の上に裏側着色樹脂層6が設けられている。この実施形態では、表側金属薄膜層3が第3金属薄膜層7を兼ねている。各樹脂層4,6,8は、文字または模様のいずれか片方または両方によるマイクロ文字のパターンとして印刷されている。
【0040】
ここで、金属薄膜層3、5、7は、金属を真空蒸着法によって成膜することが、適当な遮光性や光反射性を得やすいとか、その加工性、あるいはコスト面、等から好ましい。尚、本発明の金属薄膜層の成膜には、必要となれば適宜その他の成膜技術を使用してもよい。また、各樹脂層4,6,8は、樹脂を主成分とし必要に応じて着色材を添加したインクを適当な印刷技術を用いて所望のパターン状に形成したものである。また、無色樹脂層には、紫外線によって発光する色材を添加したインキを用いると良い。そして、印刷技術を適宜選択することにより、所望するパターンを精度良く容易に形成することできる。
【0041】
表側着色樹脂層4と裏側着色樹脂層6とは互いに同じ色相でも、或いは互いに異なった色相であってもよい。また、同一着色樹脂層で、パターンを形成する個個の文字あるいは模様どうしで色が異なっていてもよい。
【0042】
各樹脂層4,6,8に形成するパターンは、全て同様であってもよいし、ひとつだけ異なっていてもよく、全て異なっていてもよい。また、無色樹脂層8に形成したパターンを形成する個個の文字あるいは模様が、表側着色樹脂層4あるいは裏側着色樹脂層6に形成したパターンを形成する個個の文字あるいは模様が連続し、あるいは、重なり合ってあらたなひとつの文字あるいは模様を形成するようにすると、反射光で見たときと光に翳して
透過光で見たときとでは、異なった文字あるいは模様が見え、面白いし、また新たな意味合いを付与することもできる。たとえば、無色樹脂層8に星型(☆)の模様を設け、表側着色樹脂層4あるいは裏側着色樹脂層6に円形(○)の模様を設けておいて、反射光では円形しか見えないが、光に翳して透過光で見ると、円の中に星の入った図形が見えるようにすると面白い。
【0043】
また、それぞれのパターンの大きさ、配置、又は、向きが相違していても良いし、また、同じであってもよい。また、パターンは1列以上並ぶように設けてあっても良い。更には、マイクロ文字もポジ型であっても、ネガ型であっても構わない。
【0044】
紫外線によって発光する色材を添加したインキとは、例えば、ZnO:Zn(波長365nmあるいは254nmの励起光に対する発光波長505nm)、ZnGeO :Mn(発光波長534nm)、ZnSiO:Mn(発光波長525nm)、Sr5 (PO4 3 CI:Eu(発光波長445nm)、Y22 S:Eu(発光波長624nm)、3(Ba,Mg)0.8Al29 :Eu,Mn(発光波長514nm)、ZnS:Cu(発光波長528nm)、ZnS:Mn(発光波長586nm)、0.5MgF,3.5MgO,GeO:Mn(発光波長655nm)等の蛍光性を有する物質を、粒径0.8μm〜2.0μm程度の細粒としたものを蛍光性顔料とし、樹脂中に分散させインキ化したものである。なお、粒径が前記以下であると蛍光輝度が悪くなり、粒径が前記以上であると、印刷適正が悪化し、印刷後に蛍光性顔料が剥離する場合がある。
【0045】
上記金属薄膜層3、5、7をエッチングによりパターニングする場合に、樹脂層4,6,8を耐エッチング性のマスクに利用する為には、樹脂層4,6,8の樹脂等の材料としては、エッチング液に侵され難いものを選択する必要がある。尚、金属薄膜層3、5、7と樹脂層4,6,8との界面にエッチンング液が浸透してしまうとパターニング精度に悪影響するので、これを予防する為には、この金属薄膜層と着色樹脂印刷層との間の密着性が良い材料とか成膜手法を適宜選択するのが好ましい。
【0046】
樹脂層4,6,8はオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等で設けることができる。通常この印刷厚みは、0.5μm〜3μmである。マイクロ文字の大きさは、通常2〜10ポイント相当のものを使用することが好ましい。
【0047】
そして、この基材をアルカリ性水溶液や酸性水溶液に浸漬し(即ちデメタライジング加工を施し)、図3に示すように、樹脂層4,6,8のある部分以外の部分の金属薄膜層が溶解させ、これをマイクロスリッターを使用してスリットし、ボビンに巻き取ることで本発明のスレッドとすることができる。
【0048】
図4は、本発明の偽造防止用紙9の一部拡大断面図である。偽造防止用紙9は、紙層10と紙層11の2層から構成されてなり、2層の紙層10、11の間にスレッド1が挿入されている。
【0049】
図5は、本発明の偽造防止用紙9の一例を表側から見た図であり、図5では、偽造防止用紙9の右寄りにスレッド1が紙層の間に配置されて、そのスレッド1の上の表側着色樹脂層4が、紙層10を通して視認される。
【0050】
図6は、本発明の偽造防止用紙9の一例を裏側から見た図であり、図6では、偽造防止用紙9の左寄りにスレッド1が紙層の間に配置されて、そのスレッド1の上の裏側着色樹脂層6が、紙層11を通して視認される。
【0051】
図7は、本発明の偽造防止用紙9の一例を光に翳して表側から見た図であり、図7では、偽造防止用紙9の右寄りにスレッド1が紙層の間に配置されて、そのスレッド1の上の表側金属箔層3、裏側金属箔層5、第3金属箔層7のパターンが、他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じ見えている。
【0052】
図8は本発明の偽造防止印刷物の一例を示す図である。偽造防止印刷物12は、偽造防止用紙9でなり、その右寄りにスレッド1が紙層の間に配置されて、そのスレッド1の上の表側着色樹脂層4が、紙層10を通して視認されており、紙層10の表面に表示やデザインなどの印刷が施されている。尚、図示しないが、裏側の紙層11の表面にも表示、あるいは、記載事項、やデザインなどの印刷が施されている。
【0053】
以下、本発明のスレッド1をより詳しく説明する。
【0054】
基材2は、セロファン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレン等の半合成、若しくは合成樹脂フィルムを、単層あるいは複合体として使用できる。
【0055】
さらに抄紙機の乾燥ゾーンで融解もしくは軟化しない材質で、通常は90〜110℃で粘着性をおびない性質の材質を選択するのが好ましい。基材の厚みは、薄すぎても各種の加工が困難となり、厚すぎてもスレッドを紙層間に抄き込んだ場合に部分的に紙の厚味が増大し種々の問題点を引き起こすので、基材の厚みは5μm〜25μmとすることが好ましい。
【0056】
基材2は、スレッドが紙層間に抄き込まれた偽造防止用紙とか偽造防止印刷物の状態では、外観からその存在を視認できないことが好ましく、この条件を満たす基材として無彩色の基材を挙げることが出来る。ごく淡く着色した有彩色の基材であっても本発明の目的を達成できれば使用することができる。本発明においては、代表例として、物理的な強度が大きく、化学的にも安定な透明なポリエステルフィルムが好適に使用できる。
【0057】
また、サンドブラスト加工を施した半透明の基材も用紙の色が白色か白色に近い場合、紙層間に抄き込まれたスレッドの存在を反射光下で視認できないため好ましく使用される。透過光で観察し、表面から裏文字が見えるようにするためには、基材が透明であることが必要である。本発明において、透明とは、透明度が必ずしも100%必要というわけではなく、課題を達成できれば多少その数値が低くても構わないことを意味する。これは、前記用紙とか印刷物のスレッドが在る辺りに印刷されたインクの色等とも関係するので、この透明度は適宜調整してよい。
【0058】
基材2にマイクロ文字を形成する方法として、デメタライジング加工が挙げられる。このデメタライジング加工はよく知られた方法であり、例えば、金属アルミニウムを真空蒸着した基材2に、耐アルカリ性や耐酸性を有した樹脂インキに必要に応じて、紅・藍・黄・墨・白色等の染料や顔料の単独或いは混合物の着色剤を添加してマイクロ文字を印刷し、樹脂層4,6,8を形成した後、アルカリ性水溶液や酸性水溶液で印刷部以外のアルミニウム等の蒸着層を洗い流す。
【0059】
このような処理によって印刷部にアルミニウム等の蒸着層が残り、印刷部以外は基材2が露出する。この蒸着層に用いられる金属は、前述したアルミニウムが代表的であるが、この他に、スズ、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、等の金属の単体や混合物を使用できる。特に、マイクロ文字列の少なくとも一方を、例えばニッケル−コバルトのよう
な磁性体の蒸着膜にすることで、磁気情報を偽造防止手段とすることができる。金属薄膜層の厚みは通常20〜100nmが適切である。
【0060】
本発明において、基材2の表裏両面に樹脂層4,6,8を設ける方法として、予め両面に金属を真空蒸着した基材に、先ず基材2の表側に表側着色樹脂層4と無色樹脂層8を設け、その後に裏側に裏側着色樹脂層6を設け、次いでデメタライジング加工する方法、或いはこの逆の方法でも良い。
【0061】
或いは、予め片面に金属を蒸着した基材の表面に、先ず基材2の表側に表側着色樹脂層4と無色樹脂層8を設け、その後にデメタライジング加工を施し、次いで裏側に裏側着色樹脂層6を設け、次いでデメタライジング加工する方法でも得ることができる。
【0062】
尚、上記方法では、無色樹脂層8を表側着色樹脂層4と同じ側に設けているが、裏側着色樹脂層6と同じ側に設けても良い。また、第3金属薄膜層7は、表側金属薄膜層3または表側金属薄膜層5と同一の層として設けられる。別の方法としては、表裏のデメタライジング加工が終わったあとに、再度、金属を真空蒸着して第3金属薄膜層7を設け、無色樹脂層8を印刷して、デメタライジング加工を行っても良い。
【0063】
基材2に以上の処理を施した後、必要に応じて片方の面或いは両面に接着剤を塗工する。その接着剤としては、抄紙機のドライヤーで軟化若しくは溶融して、用紙と強固に接着する性能を有した周知の接着剤を使用する。接着剤層としては、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系等の公知の接着剤を水系若しくは溶剤系の塗料とし、ロールコーターやグラビアコーター等の周知の塗工機を用いて基材の表面に塗工することにより形成できる。その塗工量は、通常で0.1〜10g/m2(乾燥質量換算)とする。
【0064】
次いで、マイクロスリッター装置を使用して常法に従い所定の巾でスリットして本発明のスレッドができあがる。スレッドの巾は、通常0.5mm巾〜10mm巾とする。スレッドに形成されているマイクロ文字は、1列以上の文字や模様のパターンが視認できるように形成されている必要がある。
【0065】
次に、本発明の偽造防止用紙9の製造方法の一例を説明する。
[紙料の調製]
まず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の製紙用パルプを主体とし、ビーターやディスクリファイナー等を使用して叩解処理し、これに白土,カオリン,炭酸カルシウム,二酸化チタン,水酸化アルミニウム等の各種填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、定着剤等を適宜併用し紙料を調整する。
[偽造防止用紙の製造]
本発明の偽造防止用紙は、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中にスレッドを抄き込む方法(特許文献1)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特許文献2)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(特許文献3)等が採用できる。本発明においては、これらの方法以外の方法を採用しても良いことは言うまでもない。また、3槽式円網抄紙機を使用して3層抄き合わせ紙としても良い。本発明のスレッド1は、3層のいずれかの間に挟んで抄き
込めば良い。
【0066】
また、「窓空きスレッド入り紙」として、表側着色樹脂層と裏側着色樹脂層のいずれかあるいは両方を紙層の表面に露出させても良い。「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、ワイヤー上の紙料懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端にスレッドを通した溝を有するベルト機構を埋没して製造する方法(特許文献4)や、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(特許文献5)や、長網抄紙機のワイヤー上の回転ドラム内に圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙匹に挿入したスレッド上のスラリーを圧縮空気で間欠的に吹き飛ばしてスレッドを露出させる方法(特許文献6)等が採用できる。本発明においては、これらの方法以外の方法を採用しても良いことは言うまでもない。
【0067】
また、抄紙途上で紙面にポリアクリルアマイド樹脂、澱粉、ポリビニルアルコール等を塗工することも可能である。さらに必要に応じてマシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。用紙は、50〜150g/mの坪量ものが好適に用いられる。
【0068】
このようにして得られた本発明の偽造防止用紙の真偽判定は、(1)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、(2)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、(3)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、(4)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、前記(1)から(4)を確認できるか否かに基づいて判定することである。
【0069】
また、無色樹脂層に紫外線によって発光する色材を添加したインキを用いた場合は、上記に追加して、無色樹脂層がある側の該紙の面に紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認できることを確認できるか否かを判定することが真偽判定に加わり、より一層厳しく判定できる。
【0070】
これを、まとめると、偽造防止用紙の表側の面を反射光で観察したときは、表側着色樹脂層が見え、裏側着色樹脂層 や第3金属薄膜層あるいは無色樹脂層は視認し難く、偽造防止用紙の裏側の面を反射光で観察したときは、裏側着色樹脂層が見え、表側着色樹脂層
や第3金属薄膜層あるいは無色樹脂層は視認し難く、更に光に翳して透過光で見ると表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じて見ることが出来ること、これらを確認することによって真贋判定が出来る。また、無色樹脂層に紫外線によって発光する色材を添加したインキを用いた場合は、上記に追加して、無色樹脂層がある側の該紙の面に紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認できることを確認することが、真偽判定に加わる。
【0071】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0072】
[スレッドの製造]
基材として、厚み12μmの透明ポリエステルフィルム(東レ社製)の巻き取りを使用し、その両面に、金属アルミニウムを蒸発源として、真空蒸着機を使用して常法に従い蒸着し、50nmのアルミニウムの金属薄膜層を設けた。
【0073】
この片面に、グラビア印刷機を使用し、その第1ユニットで、青色に着色した耐アルカリ性樹脂インキ(デメタライジング加工用アクリル系樹脂100質量部に青色染料:オレオゾールブルー(住友化学工業社製)を20質量部配合)を使用して表側着色樹脂層4(マイクロ文字印刷層)を形成し、第2ユニットで、無色の耐アルカリ性樹脂インキ(デメタライジング加工用アクリル系樹脂)を使用して無色樹脂層8(マイクロ文字印刷層)を形成した。
【0074】
金属薄膜層を設けた基材を反転させ、第3ユニットで、反対面に、赤色に着色した耐アルカリ性インキ(デメタライジング加工用アクリル系樹脂100質量部に赤色染料:オレオゾールファーストレッド(住友化学工業社製)を15質量部配合)を使用して裏側着色樹脂層6(マイクロ文字印刷層)を形成した。
【0075】
次いで、常法に従い、水酸化アルミニウム水溶液を使用して、デメタライジング加工を施し、水洗、乾燥してロールに巻き取った。
【0076】
さらにこの片面に、エチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を1.5μmの厚みでグラビアコーターを使用して塗工し接着剤層を形成した。次いでマイクロスリッターを使用して巾2mmのスレッドを製造した。このスレッドをボビンに巻き取った。
【実施例2】
【0077】
[スレッド製造]
実施例1において、無色樹脂層8として、紫外線を照射すると蛍光を発光する色材を添加した無色の耐アルカリ性樹脂インキ(デメタライジング加工用アクリル系樹脂100重量部に、Sr5 (PO4 3 CI:Euを30重量部配合)を使用した以外は同様にして、スレッド1を製造し、このスレッド1をボビンに巻き取った。
【実施例3】
【0078】
[偽造防止用紙の製造]
<紙料の調製>
NBKP25質量部,LBKP75質量部をフリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10質量部、二酸化チタン5質量部、紙力増強剤:ポリストロン(荒川化学工業社製)0.4質量部、サイズ剤:サイズパインE(荒川化学工業社製)1.0質量部、硫酸バンドを適量加え、紙料を調製した。
<偽造防止用紙の製造>
前記紙料を用いて、2槽式円網抄紙機の第1槽目と第2槽目で、それぞれ坪量45g/m2の紙匹を抄造し、両者を抄き合わせる際に、紙層間に実施例1で製造したスレッド1を抄き込んだ。その後、常法に従い乾燥し偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は、反射光で観察すると、片方の面には図5のように青色の表側着色樹脂層4のマイクロ文字のみが、反対の面では図6のように裏側着色樹脂層6の赤色のマイクロ文字のみが見えた。また、光にかざして透過光で見ると図7のように、表側金属薄膜層3、第3金属薄膜層7、裏側金属薄膜層5のパターンがシルエットとして見えた。
【実施例4】
【0079】
〔偽造防止用紙の製造〕
スレッドを実施例2で得られたスレッドに変更した以外は実施例3と同様にして偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は、反射光で観察すると、片方の面には図5の
ように青色の表側着色樹脂層4のマイクロ文字のみが、反対の面では図6のように裏側着色樹脂層6の赤色のマイクロ文字のみが見えた。また、光にかざして透過光で見ると図7のように、表側金属薄膜層3、第3金属薄膜層7、裏側金属薄膜層5のパターンがシルエットとして見えた。更に、暗所にてブラックライトの紫外線を当てると、無色樹脂層8が発光してそのパターンが確認できた。
【実施例5】
【0080】
〔偽造防止印刷物の製造〕
実施例3の偽造防止用紙を使用して図8に示す商品券の図柄等印刷部(P)を印刷し、偽造防止印刷物12を製造した。
【実施例6】
【0081】
[偽造防止印刷物の製造]
実施例4の偽造防止用紙を使用して図8に示す商品券の図柄等印刷部(P)を印刷し、偽造防止印刷物12を製造した。
【0082】
上記実施例5および実施例6で得られた偽造防止印刷物12を表面から反射光で観察すると、抄き込まれたスレッド1の表側着色樹脂層4が視認され、裏面から反射光で観察すると、裏側着色樹脂層6が視認され、光に翳して透過光で観察すると、表側金属薄膜層3、第3金属薄膜層7、裏側金属薄膜層5が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じるので、本物の偽造防止印刷物12であると判定できるものであった。
【0083】
また、実施例6においては、更に紫外線を当てて観察すると、表裏のいずれかの側で、パターン状の無色樹脂層を視認できるので、よりいっそうの真贋判定が出来、本物の偽造防止印刷物12であると判定できる
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のような特性を生かして本発明で得られるスレッドは、その製造に極めて高度の技術が必要なため、偽造防止を目的とした縫い糸の用途等に好適に用いる事ができる。また本発明で得られるスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙は、紙幣、商品券、小切手、株券、債券、カード、各種チケット、機密文書、パスポート、身分証明書等に好適に用いる事ができる。
【符号の説明】
【0085】
1・・・スレッド
2・・・基材
3・・・表側金属薄膜層
4・・・表側着色樹脂層
5・・・裏側金属薄膜層
6・・・裏側着色樹脂層
7・・・第3金属薄膜層
8・・・無色樹脂層
9・・・偽造防止用紙
10、11・・・紙層
12・・・偽造防止印刷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏の面をもつ糸状物であり且つ光透過性を持つ基材の表側の面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の表側金属薄膜層、及び、該表側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの表側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された表側着色樹脂層を備え、
該表側金属薄膜層が有る領域と、該表側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者の領域と後者の領域とでコントラストが生じること、且つ、該基材の、該表側金属薄膜層および表側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の表側着色樹脂層を視認できること、
および、前記基材の裏側の面に、少なくとも、文字または模様の片方または両方によるパターン状に形成された1以上の裏側金属薄膜層、及び、該裏側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの裏側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された裏側着色樹脂層を備え、
該裏側金属薄膜層が有る領域と、該裏側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の、該裏側金属薄膜層および裏側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該裏側着色樹脂層を該パターン状に視認できること、
更に、前記基材の表裏のいずれかの面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の第3金属薄膜層、及び、該第3金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの第3金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ無色あるいは淡色の無色樹脂層を備え、
該第3金属薄膜層が有る領域と、該第3金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の、該第3金属薄膜層および無色樹脂層が備わった側から観察すると、該無色樹脂層を該パターン状に視認できないことを特徴とするスレッド。
【請求項2】
表裏の面をもつ糸状物であり且つ光透過性を持つ基材の表側の面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の表側金属薄膜層、及び、該表側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの表側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された表側着色樹脂層を備え、
該表側金属薄膜層が有る領域と、該表側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者の領域と後者の領域とでコントラストが生じること、且つ、該基材の、該表側金属薄膜層および表側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該パターン状の表側着色樹脂層を視認できること、
更に、前記基材の裏側の面に、少なくとも、文字または模様の片方または両方によるパターン状に形成された1以上の裏側金属薄膜層、及び、該裏側金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの裏側金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ着色された裏側着色樹脂層を備え、
該裏側金属薄膜層が有る領域と、該裏側金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の、該裏側金属薄膜層および裏側着色樹脂層が備わった側から観察すると、該裏側着色樹脂層を該パターン状に視認できること、
更に、表裏のいずれかの面に、少なくとも、文字または模様のいずれか片方または両方によるパターン状に形成された1以上の第3金属薄膜層、及び、該第3金属薄膜層のそれぞれの上にそれぞれの第3金属薄膜層と同じパターン状に形成され且つ紫外線によって発光する無色あるいは淡色の無色樹脂層を備え、
該第3金属薄膜層が有る領域と、該第3金属薄膜層が無い領域との光透過性の違いによって、光に翳したときに前者と後者との間でコントラストが生じること、且つ、該基材の該第3金属薄膜層および無色樹脂層が備わった側から観察すると、該無色樹脂層を該パター
ン状に視認できないこと、更に、該基材の、該第3金属薄膜層および無色樹脂層が備わった側から紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認できることを特徴とするスレッド。
【請求項3】
ウェブ状で且つ光透過性を持つ基材の表裏面に、金属の薄膜を成膜することにより前記表側金属薄膜層と前記裏側金属薄膜層を設け、
前記表側金属薄膜層の上に前記表側着色樹脂層を印刷法によって所望のパターン状に形成し、前記裏側金属薄膜層の上に前記裏側着色樹脂層を印刷法によって所望のパターン状に形成し、前記表側金属薄膜層あるいは前記裏側金属薄膜層の上に、前記無色樹脂層を印刷法によって所望のパターン状に形成し、
該パターン状の表側着色樹脂層と裏側着色樹脂層および、前記無色樹脂層を耐エッチング用のマスクとして前記表側金属薄膜層と前記裏側金属薄膜層をエッチングすることにより、該表側金属薄膜層と該裏側金属薄膜層とを表側着色樹脂層と裏側金属薄膜層および、前記無色樹脂層が同様のパターン状を成して重なるように形成し、
その後、該基材をスレッドの幅になるように切断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスレッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のスレッドが、用紙となる紙の中に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項5】
請求項1に記載のスレッドが、紙の表面には露出しないように紙に抄き込まれており、
且つ、前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じ、
前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層が前記パターン状に視認できないことを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項6】
請求項2に記載のスレッドが、紙の表面には露出しないように紙に抄き込まれており、且つ、前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、
光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じ、
前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層が前記パターン状に視認できず、紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認できることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項7】
請求項5に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷を施した印刷部が設けてあることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項8】
請求項6に記載の偽造防止用紙に、偽造防止印刷物としての印刷を施した印刷部が設けてあることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項9】
請求項5に記載の偽造防止用紙の真贋を判定する方法であって、
(a)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると
、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(b)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(c)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(d)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(a)、(b)、(c)及び(d)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止用紙の真贋判定方法。
【請求項10】
請求項6に記載の偽造防止用紙の真贋を判定する方法であって、
(e)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(f)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(g)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認でき、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(h)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(e)、(f)、(g)及び(h)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止用紙の真贋判定方法。
【請求項11】
請求項7に記載の偽造防止印刷物の真贋を判定する方法であって、
(a)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(b)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(c)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(d)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(a)、(b)、(c)及び(d)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止印刷物の真贋判定方法。
【請求項12】
請求項8に記載の偽造防止印刷物の真贋を判定する方法であって、
(e)前記スレッドの前記表側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該表側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(f)前記スレッドの前記裏側着色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該裏側着色樹脂層を前記パターン状に視認でき、その反対側の面から反射光で観察すると、該視認できた着色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(g)前記スレッドの前記無色樹脂層がある側の該紙の面を反射光で観察したとき、該無色樹脂層を前記パターン状に視認し難く、紫外線を当てて観察すると、該パターン状の無色樹脂層を視認でき、その反対側の面から反射光で観察しても、該無色樹脂層をパターン状に視認し難いこと、
(h)光に翳したときに、表側金属薄膜層と裏側金属薄膜層および第3金属薄膜層が有る領域が他の領域との光透過性の違いによって、コントラストが生じること、
これら(e)、(f)、(g)及び(h)を確認できるか否かに基づいて判定することを特徴とする偽造防止印刷物の真贋判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−132614(P2011−132614A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290450(P2009−290450)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】