説明

スロッシング抑制材およびスロッシング抑制方法

【課題】 簡単な構造で、スロッシングを効果的に抑制するとともに、タンク内の液体貯蔵量を大きく減少させることもなく、タンク底の近隣まで浮屋根として機能させつつ液体を取り出すことができるスロッシング抑制材およびスロッシング抑制方法を提供する。
【解決手段】 本発明のスロッシング抑制材は、液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根12を備える容器に用いられるものであり、容器の内壁に対向する浮屋根12の外周端から容器の底15に向けて、容器内に貯留される液体11の所定領域を包囲するように湾曲して延び、容器の底15に連結される膜部材からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長周期地震動の発生に伴うタンク内容物によるスロッシングを抑制するスロッシング抑制材および該スロッシング抑制材を用いるスロッシング抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、重油、ガソリン等の揮発性を有する液体を貯留するタンクには、浮屋根式タンクが多く採用されている。浮屋根式タンクは、浮屋根が液面を覆い、かつ昇降自在に浮いており、液面がどの位置にあっても浮屋根と液面との間に空間ができず、液体が揮発することがない構造とされているため、タンク内の貯蔵量を減少させ、液体の使用量を減少させる液ロスを抑制することができる。
【0003】
ここで、浮屋根式タンクの構造について説明する。一般に、円形の底板と、液体を貯留するために中空円筒形に構築される側板と、液面を覆い、液面に浮かべて使用される浮屋根とから構成される。中空円筒形に側板を構築するのは、内部に貯留される液体によって側板に加えられる圧力をほぼ均等にし、タンクを破損しにくくするためである。浮屋根は、液面の中央部を覆うデッキ板と、そのデッキ板の周囲に設けられる中空の箱形構造物で、液面に浮くポンツーンとから構成される。ポンツーンとタンクの側板との間には、わずかな隙間が存在するが、ポンツーンの周囲にシール部材を設け、シール部材によってこの隙間を埋めることで、液体の揮発を抑制することができる。なお、浮屋根は、液面に浮かべて使用され、液体の供給に伴って液面レベルが上昇するにつれて上昇し、液体の取り出しに伴って液面レベルが低下するにつれて降下する。
【0004】
地震が発生した場合、震源を中心とする地震動が発生し、この浮屋根式タンクにもこの地震動が伝えられる。この地震動によってタンクは揺動し、タンク内の液体にもこの揺動が伝えられる。地震動による周期とタンクの固有周期とが重なり合い、共振が発生すると、液面が大きく波立つスロッシングと呼ばれる現象が発生する。浮屋根式タンクにおいてスロッシングが発生すると、浮屋根が傾斜し、液面が露出し、タンク外部へ液体が流出する。タンク内容物が水等の無害な液体であれば、タンク外部に流出しても問題はないが、石油等の可燃性液体や、土壌あるいは河川を汚染する有機化合物等の場合には大きな問題となる。
【0005】
従来、スロッシングを抑制するための装置や方法として、浮屋根を制御する装置や方法、内部の液体の流動を制御する装置や方法が提案されている。スロッシングは、タンクの揺動に伴って液体の流動が始まり、この液体の流動によって発生する。液体の流動を制御する装置は、この流動を抑制することにより、スロッシングを抑制する装置である。この装置としては、タンクまたは浮屋根に取り付けられる隔壁がある。この隔壁は、流動する液体を衝突させることにより、運動エネルギーを減衰させ、これにより、スロッシングを抑制するものである。
【0006】
また、液体の流動は、波を発生させ、浮屋根を持ち上げようとする。大きく波立つスロッシングが発生すると、浮屋根は大きく持ち上げられ、破壊される場合がある。浮屋根を制御する装置は、浮屋根が持ち上げられるのを抑制することにより、スロッシングを抑制する装置である。この装置としては、浮屋根が持ち上がらないように、浮屋根を上から押さえる装置や、浮屋根に吊り下げられる錘等がある。
【0007】
スロッシングを効果的に抑制するためには、液体の流動を制御するとともに、浮屋根を制御することが好ましい。従来、これら2つの制御を可能にする装置も提案されているが、その数は少ない。例えば、タンク内の液面と平行に、タンク高さ方向に沿って複数配設されるフレームと、フレームと交差する方向に配設され、上下に隣接するフレーム間に張架される曲折自在なワイヤと、フレームおよびワイヤで囲まれて形成される四辺空間に配設される可撓性を有する薄膜部材からなり、四辺空間の下側又は上側フレーム辺及び両ワイヤ辺の三辺に固着されるとともに、上側又は下側フレーム辺に固着されない未固着部を有し、この未固着部をタンク内の内部流体が通過可能なスロッシング防止膜とを備えるものが提案されている(特許文献1参照)。この装置は、複数フレームのうち最上位に配設されるフレームおよび最下位のフレームに張架されるワイヤの上端が、タンク内の液面位置に液面と連動するように配置されるとともに、複数フレームのうち最下位に配設されるフレームおよび最下位のフレームに張架されるワイヤの下端がタンク底部に固定され、フレームおよびワイヤに固着されたスロッシング防止膜がタンク内の液面に連動して伸縮、展開するものである。このように、液面に連動して伸縮、展開することで、スロッシングを効果的に防止することができる。
【0008】
上記の装置は、効果的にスロッシングを抑制することはできるものの、複雑な構造であり、製作コスト、メンテナンスコストがかかるという問題や、複数フレームやワイヤ等をタンク内に設置するため、貯蔵液体量が減少するという問題がある。また、液体を取り出す場合、液面低下に伴い、複数フレームによって浮屋根をタンク底の近隣まで降下させることができず、その結果、液ロスを生じさせるという問題もある。
【特許文献1】特開2005−187019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、簡単な構造で、上記2つの制御を可能にしてスロッシングを効果的に抑制するとともに、タンク内の液体貯蔵量を大きく減少させることがなく、また、タンク底に近隣するまで浮屋根として機能させつつ液体を取り出すことができるスロッシング抑制材、そのスロッシング抑制材を用いてスロッシングを抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、タンクの内壁に対向する浮屋根の外周端と、タンクの底とを、略円錐状の膜部材で連結することにより、地震のない通常時には膜部材が弛んだ状態となっているが、地震時には膜部材が緩衝材として機能するとともに、その膜部材の一部がタンク内の液体の運動によって緊張した状態となり、これにより、浮屋根が持ち上がるのを抑制することができるとともに、緊張した状態になることにより形成される傾斜面上を、液体を遡上させることにより、液体の運動エネルギーを減衰させることができることを見出すことによりなされたものである。また、この膜部材を使用することにより、タンク内部に設置される部材が少なくて済むため、液体の貯蔵量を大きく減少させることはなく、また、タンク底の近隣まで浮屋根として機能させつつ液体を取り出すことができる。すなわち、上記課題は、本発明のスロッシング抑制材を提供することにより達成される。
【0011】
本発明のスロッシング抑制材は、容器の内壁に対向する浮屋根の外周端から該容器の底に向けて、該容器に貯留される液体の所定領域を包囲するように湾曲して延び、容器の底または錘に連結される膜部材からなるものである。
【0012】
上記膜部材は、複数の孔を備えることが好ましい。このように複数の孔を備える構造にすることで、孔を通過させて、流動する液体に抵抗を与え、運動エネルギーを減衰させることができる。
【0013】
また、容器の底から浮屋根の外周端に向けて、孔数が増加するように設けられることがより好ましい。これは、膜部材上を遡上し、運動エネルギーが減衰した後の液体を、孔に通しやすくするためである。なお、この孔を通過させることにより、さらに効果的に運動エネルギーを減衰させることができる。
【0014】
上記容器は、中心o、半径rの円形の底を有する容器であり、上記膜部材は、円形の浮屋根の外周端と、前記底の前記中心oで半径r/2となる円とを結ぶように、浮屋根の外周端全体と容器の底とに連結されるものとすることができる。膜部材を適切に緊張させ、液体を遡上させて液体の運動エネルギーを効果的に減衰させるためには、上記位置に連結されるのが好ましいからである。
【0015】
本発明のスロッシング抑制材は、容器の内壁に対向する浮屋根の外周端から該容器の底に向けて、該容器に貯留される液体の所定領域を包囲するように傾斜して延びる膜部材と、膜部材の端部に吊り下げられるリング状の錘とからなる構成にすることもできる。
【0016】
また、上記スロッシング抑制材を用いたスロッシング抑制方法も提供する。この方法は、湾曲して延びる膜部材の一部を、容器の揺動に伴う液体の運動により緊張させ、浮屋根が持ち上がらないようにする段階と、緊張させた膜部材上を、液体を遡上させる段階とを含む。
【0017】
また、スロッシング抑制材が、複数の孔を備えるものの場合、さらに、液体を、複数の孔を通過させる段階を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスロッシング抑制材および方法を提供することにより、スロッシングを効果的に抑制することができる。本発明のスロッシング抑制材は、容器内の液体貯蔵量を大きく減少させることもなく、また、容器の底の近隣まで浮屋根として機能させつつ容器内の液体を取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明は図面に示された実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明のスロッシング抑制材が浮屋根に取り付けられた、浮屋根式タンクの断面図である。ここでは、容器を、タンクとして説明するが、上部が大気に開放され、浮屋根によって上部が覆われる容器であれば、タンクに限定されるものではない。図1に示すタンク本体10は、円形の底板と、中空円筒形の側板とから構成され、内部に液体11を貯蔵することができるようになっている。タンク本体10は、貯蔵する液体11から受ける圧力が均等にかかるように円筒形に形成される。底板および側板の材質は、内部に貯蔵される液体11の種類や大きさによっても異なるが、石油、重油、ガソリンを貯蔵するタンクであれば、鋼材が使用される。
【0020】
浮屋根12は、タンク本体10内に、液体11が収容された後、液面に浮かべて使用される。浮屋根12は、液面を覆い、液体11が揮発するのを抑制する。一般に浮屋根12は、液面の中央部分を覆う鋼材からなるデッキ板と、デッキ板の周囲に取り付けられ、デッキ板を浮かせるポンツーンと、ポンツーンとタンク本体10の側板との隙間を埋め、液体11の揮発を防止するシール部材13とを含んで構成される。ポンツーンは、液面に浮くように、ポリ塩化ビニルや繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック材料やコンクリートから製造される。シール部材13は、その隙間を埋めるものの、側板(すなわち、タンクの内壁)には固定も、接着もされていないため、浮屋根12は液面上昇および降下に伴い、昇降可能にされている。なお、図1では、シール部材13が拡大して示されているが、実際には浮屋根12の外周端とタンクの内壁との間の隙間は小さいものである。
【0021】
本発明のスロッシング抑制材14は、タンクの内壁に対向する浮屋根12の外周端からタンクの底15に向けて、タンク内に貯留される液体11の所定領域を包囲するように湾曲して延び、タンクの底15に連結される膜部材からなるものである。この膜部材は、タンク内に液体の流動がない場合、弛んだ状態で浮屋根12と底15とに連結されている。
【0022】
膜部材は、浮屋根12の外周端全体にわたって、接着あるいは溶着による接着、または、ボルトおよびナット等による締結によって連結され、また、タンク本体10の底15に上記接着または締結により連結される。タンクの底15は、中心o、半径rの円形の底であり、膜部材は、例えば、円形の浮屋根12の外周端と、タンクの底15の中心oで半径r/2となる円とを結ぶように連結される。ここでは、半径r/2となる円としたが、地震にない通常時において、上記のように弛んだ状態であれば、半径r/3、r/4等であってもよい。また、底15に限らず、底15上に配置された錘に連結されていてもよい。この場合の錘としては、液体11に沈むものであればいかなる材質のものでもよく、いかなる形状のものであってもよい。
【0023】
膜部材は、フィルム状のもの、シート状のものとすることができ、ポリ塩化ビニルフィルムまたはシート、ポリエチレンフィルムまたはシート、ポリプロピレンフィルムまたはシート、エチレン酢酸ビニル共重合体のフィルムまたはシート等とすることができる。具体的には、図2に示す形状とすることができる。
【0024】
図2(a)の平面図、図2(b)の正面図に示すように、膜部材20は、図1に示す浮屋根12の外周端に連結されるように、浮屋根12の径にほぼ等しい内径を有する第1開口21と、図1に示すタンクの底15の中心oで半径r/2となる円の径、すなわちrにほぼ等しい内径を有する第2開口22とを備え、図2(b)に示すように延びた構造とされている。図2(b)では、延びた構造とされているが、これをタンクの底15の所定位置と、浮屋根12の外周端とに連結することで、膜部材20の長さ(第1開口21から第2開口22までの長さ)に比べて、浮屋根12から底15までの距離は短いため、弛んだ状態となり、これにより、外周端から底15に向けて湾曲して延びている。
【0025】
地震が発生し、タンク内の液体が流動し始めると、膜部材20が緩衝材として機能することによって運動エネルギーを減衰させる。タンクの揺動が大きく、液面に波が発生し、その波が大きくなり始めると、図3に示すように浮屋根12の上昇に伴い、膜部材20の一部が緊張した状態となり、それ以上に浮屋根12が持ち上がるのを防止するとともに、その一部の膜部材20に形成される傾斜面30を液体11aが遡上することにより、運動エネルギーが減衰される。
【0026】
膜部材20は、一部が緊張した状態になる一方で、それに対向する側では、液面の低下に伴ってさらなる弛みが生じる。傾斜面30を遡上した液体11aは、浮屋根12に衝突し、矢線Aに示す方向とは反対の方向に流動し、上記弛みが生じている側の液面を上昇させる。この液面上昇に伴って、その弛みが生じている側が、緊張した状態とされる。これを繰り返すことにより、運動エネルギーが次第に減衰されていく。
【0027】
膜部材20は、所定領域を包囲するように設けられるため、どの方向にタンクの揺動が起こり、どの方向に液体11a、11bの流動が生じたとしても、運動エネルギーを減衰させることができる。また、膜部材20によって液体が仕切られるため、膜部材20の内部に存在する液体11aと、外部に存在する液体11bとは、流動に連動性がなくなる。矢線Aと矢線Bで示す対向する向きに液体が流動する場合、矢線Aに示す方向に流動する液体は傾斜に沿って遡上し、矢線Bに示す方向に流動する液体は傾斜に沿って下方へ流動するため、運動エネルギーが増幅されることはなく、互いの運動エネルギーを確実に減衰させることができる。このように、膜部材20は、緩衝材および液体の遡上による液体の運動エネルギーを減衰させる機能と、浮屋根が持ち上がるのを防止する機能の2つを備え、これら2つの機能により効果的にスロッシングを抑制することができる。
【0028】
ここで、膜部材20が底15に対して垂直に配置されている場合、液体の流動を和らげる緩衝材として機能させることができるものの、膜部材20によって仕切られている他方側の液体11bの流動によって、運動エネルギーが増幅される場合がある。これは、膜部材20で跳ね返った上記内部に存在する液体11aと、膜部材20に向けて流動する上記外部に存在する液体11bとの流動方向が同じ場合に発生する。本発明では、膜部材20が図3に示すように傾斜しているため、上記内部に存在する液体11aは遡上させ、上記外部に存在する液体11bは下方へ流動させ、確実に運動エネルギーを減衰させることができる。浮屋根が持ち上がらないように、傾斜して延びるように緊張した状態で膜部材20を連結することもできるが、この場合、膜部材20が常に緊張した状態になっているため、緩衝材としての機能が弱く、液体の運動エネルギーによっては膜部材20が破損するおそれがある。また、傾斜面を遡上させ、運動エネルギーを減衰させることはできるものの、それのみの減衰では浮屋根が破損する場合もある。本発明では、弛んだ状態で膜部材20が連結されているため、液体の運動エネルギーを受けても膜部材20が破損することはなく、充分に緩衝材として機能させ、また、緩衝材としての機能により運動エネルギーが減衰された液体を、傾斜面の遡上によってさらに減衰させることができるため、浮屋根に過大な力がかかることはなく、浮屋根が破損することはない。
【0029】
図4は、本発明のスロッシング抑制材の別の実施形態を示した図である。図4に示すスロッシング抑制材は、図2に示す膜部材20に、さらに複数の孔40を備える構成とされている。図4に示す膜部材41は、ランダムに所定径の孔40が複数設けられている。これら複数の孔40は、流動する液体を通過させ、その通過させる段階で抵抗を与え、運動エネルギーを減衰させる。また、複数の孔40を設けることで、適切に液体を通過させ、適当な抵抗を与えることができる。なお、孔40の大きさ、形状は、適切に抵抗を与えることができればいかなる大きさ、形状であってもよい。
【0030】
図5は、本発明のスロッシング抑制材のさらに別の実施形態を示した図である。図5に示すスロッシング抑制材と同様に複数の孔を備えるものであるが、浮屋根に近くなるにつれて孔数が増加するように設けられている。これは、図3に示すように傾斜面30を形成し、液体を遡上させ、その傾斜面30において運動エネルギーを減衰させた後、孔50を通過させ、抵抗を与えて、効果的に減衰させるものである。孔50は、浮屋根に近くなるにつれて孔数が増加するように設けられていれば、ランダムでも、規則的に配列するように設けられていてもよい。
【0031】
図6は、本発明のスロッシング抑制材が浮屋根に取り付けられた、浮屋根式タンクの別の実施形態を示した断面図である。スロッシング抑制材は、図1〜図3と同様の膜部材20とされているが、タンクの底15ではなく、リング状の錘60に連結されている。この錘60は、底15に近隣してはいるものの、底15から離間している状態とされている。このため、膜部材20は、湾曲して延びてはおらず、傾斜して延び、緊張した状態となっている。ここで、傾斜して延びるとは、浮屋根からタンクの底15に向いた鉛直方向に対して、ある角度で直線的に延びていることを意味する。この実施形態では、錘60がタンクの底15から離間しているため、膜部材20の一端が固定されておらず、また、波の発生により、浮屋根の鉛直方向への移動が自在とされているため、充分に緩衝材として機能させることができ、また、浮屋根に大きな力が作用することはないため、浮屋根が破損するおそれはない。また、膜部材20がすでに緊張した状態とされているため、すでに傾斜面が形成されており、その傾斜面上を、液体を遡上させることにより、運動エネルギーを減衰させることができる。さらに、浮屋根は、錘60によって荷重が加えられているため、波を小さくし、上記運動エネルギーの減衰とあいまってスロッシングを減衰させることができる。
【0032】
リング状の錘60は、単なる枠部材であってもよいが、浮屋根12に荷重を加え、容易に持ち上がらないようにするためには錘であることが好ましい。リング状の錘60は、図2に示す第2開口22とほぼ同じ外径とされ、膜部材の端部に設けられる袋の中に収容、接着、締結等によって取り付けることができる。なお、錘60は、浮屋根12を液面に浮かべつつ、膜部材を底15に向けて垂らすことができるように、液体の比重より大きい材質で、所定の質量のものとされる。例えば、鋼等から製造される金属リングとすることができ、円形に限らず、矩形のリングであってもよい。
【0033】
図6に示す実施形態では、リング状の錘60を通して内部に液体を移動、あるいは内部から外部へ移動させることができ、液体の流動に乱れを生じさせ、これが流動の抵抗となって運動エネルギーを減衰させることもできる。この場合においても、複数の孔を設け、これらの孔を通過させ、流動する液体に抵抗を与え、運動エネルギーをさらに効果的に減衰させることができる。
【0034】
本発明のスロッシング抑制材は、上記の膜部材からなるものであるため、液体の取り出し時において液面が低下しても、膜部材が変形して浮屋根を充分に降下させることができ、液ロスを抑制することができる。すなわち、充分に低い液面においても、浮屋根として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のスロッシング抑制材が浮屋根に取り付けられた、浮屋根式タンクの断面図。
【図2】スロッシング抑制材の第1実施形態を示した図。
【図3】地震時の浮屋根式タンクの断面図。
【図4】スロッシング抑制材の第2実施形態を示した図。
【図5】スロッシング抑制材の第3実施形態を示した図。
【図6】浮屋根式タンクの別の実施形態を示した断面図。
【符号の説明】
【0036】
10…タンク本体
11、11a、11b…液体
12…浮屋根
13…シール部材
14…スロッシング抑制材
15…底
20、41…膜部材
21…第1開口
22…第2開口
30…傾斜面
40、50…孔
60…錘
o…中心
r…半径


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根を備える容器に用いられ、スロッシングを抑制するためのスロッシング抑制材であって、前記容器の内壁に対向する前記浮屋根の外周端から該容器の底に向けて、該容器に貯留される液体の所定領域を包囲するように湾曲して延び、前記容器の底または錘に連結される膜部材からなる、スロッシング抑制材。
【請求項2】
前記膜部材は、複数の孔を備える、請求項1に記載のスロッシング抑制材。
【請求項3】
前記複数の孔は、前記容器の底から前記浮屋根の外周端に向けて、孔数が増加するように設けられることを特徴とする、請求項2に記載のスロッシング抑制材。
【請求項4】
前記容器は、中心o、半径rの円形の底を有する容器であり、前記膜部材は、円形の前記浮屋根の外周端と、前記底の前記中心oで半径r/2となる円とを結ぶように、前記浮屋根の外周端全体と前記容器の底とに連結される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスロッシング抑制材。
【請求項5】
液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根を備える容器に用いられ、スロッシングを抑制するためのスロッシング抑制材であって、前記容器の内壁に対向する前記浮屋根の外周端から該容器の底に向けて、該容器に貯留される液体の所定領域を包囲するように傾斜して延びる膜部材と、前記膜部材の端部に吊り下げられるリング状の錘とからなる、スロッシング抑制材。
【請求項6】
液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根を備える容器に用いられるスロッシング抑制材によりスロッシングを抑制する方法であって、前記スロッシング抑制材は、前記容器の内壁に対向する前記浮屋根の外周端から該容器の底に向けて、該容器に貯留される液体の所定領域を包囲するように湾曲して延び、前記容器の底または錘に連結される膜部材からなり、
前記湾曲して延びる前記膜部材の一部を、前記容器の揺動に伴う前記液体の運動により緊張させ、前記浮屋根が持ち上がらないようにする段階と、
緊張させた前記膜部材上を、前記液体を遡上させる段階とを含む、スロッシング抑制方法。
【請求項7】
前記スロッシング抑制材は、複数の孔を備えていて、さらに、前記液体を、前記複数の孔を通過させる段階を含む、請求項6に記載のスロッシング抑制方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−253971(P2007−253971A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78269(P2006−78269)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】