スロットルバルブ用回転角度検出装置
【課題】径時的に信頼性が低下することを抑制することができると共に、検出開始時の実際の回転角度と演算した回転角度との誤差を小さくすることができるスロットルバルブ用回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】第1信号および第2信号を用いて磁気発生部20の回転角度を演算し、磁気発生部20の実際の回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行う角度演算部60と、角度演算部60が演算した回転角度φに対応する信号を出力する出力部70と、を備える。そして、角度演算部60は、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ10が全閉状態であるときの角度を用いるものとする。
【解決手段】第1信号および第2信号を用いて磁気発生部20の回転角度を演算し、磁気発生部20の実際の回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行う角度演算部60と、角度演算部60が演算した回転角度φに対応する信号を出力する出力部70と、を備える。そして、角度演算部60は、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ10が全閉状態であるときの角度を用いるものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルバルブと一体となって回転する磁気発生部の磁界中に磁電変換素子を備え、磁電変換素子から出力される信号を用いて磁気発生部の回転角度を演算することにより、スロットルバルブの回転角度を検出するスロットルバルブ用回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、エンジンの燃焼室内に吸入される吸入空気量を制御するスロットルバルブの回転角度(開度)を検出するスロットルバルブ用回転角度検出装置が提案されている。このスロットルバルブ用回転角度検出装置では、スロットルバルブの回転によって変化するスロットルポジションセンサの抵抗値を検出することによってスロットルバルブの回転角度を検出している。
【0003】
また、例えば、特許文献2は、回転体の回転に応じて回転検出器から出力される信号からデジタル角度を演算し、このデジタル角度を用いてフィードバック制御する回転角度検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−70587号公報
【特許文献2】特開2000−353957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のスロットルバルブ用回転角度検出装置では、スロットルポジションセンサの抵抗値の変化、つまりいわゆる摺動式抵抗の抵抗値の変化を検出しているため、摩耗等によって経時的に信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の回転角度検出装置では、デジタル角度を用いるフィードバック制御をして回転検出器の回転角度を演算している。このため、このような回転検出装置をスロットルバルブ用回転角度検出装置に適用して経時的に信頼性が低下することを抑制することが考えられる。しかしながら、上記特許文献2に記載の回転角度検出装置をスロットルバルブの回転角度の検出に単純に適用した場合には、検出開始時の演算した回転角度(フィードバックする角度)が定められていないため、検出開始時の実際の回転角度と演算した回転角度との誤差が大きいという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、径時的に信頼性が低下することを抑制することができると共に、検出開始時の実際の回転角度と演算した回転角度との誤差を小さくすることができるスロットルバルブ用回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために本発明者らは鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、スロットルバルブは検出開始時には必ず全閉状態になることに着目し、フィードバック制御を行う回転検出装置において、検出開始時の演算角度としてスロットルバルブが全閉状態であるときの角度を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0009】
このため、請求項1に記載の発明では、吸入通路(12)内を流れる媒体の流量を制御するスロットルバルブ(10)と一体化して回転する磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置され、磁気発生部(20)の回転に応じた第1信号を出力する第1磁電変換素子(M1)と、第1信号との間に所定の位相差を有する第2信号を出力する第2磁電変換素子(M2)と、を備え、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される第1、第2信号を用いて磁気発生部(20)の回転角度を求めるスロットルバルブ用回転角度検出装置において、以下の点を特徴としている。
【0010】
すなわち、第1信号および第2信号を用いて磁気発生部(20)の回転角度を演算し、磁気発生部(20)の実際の回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行う角度演算部(60)と、角度演算部(60)が演算した回転角度φに対応する信号を出力する出力部(70)と、を備え、角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ(10)が全閉状態であるときの角度を用いることを特徴としている。
【0011】
このようなスロットルバルブ用回転角度検出装置では、フィードバック制御を行って磁気発生部(20)の回転角度、つまりスロットルバルブ(10)の回転角度を演算しているため、経時的に信頼性が低下することを抑制することができる。
【0012】
また、角度演算部(60)では、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ(10)が全閉状態であるときの角度を用いている。これにより、検出開始時において、スロットルバルブ(10)の実際の回転角度θと演算した回転角度φとの誤差を小さくすることができる。検出開始時、つまりスロットルバルブ(10)が作動する直前では、スロットルバルブ(10)は必ず全閉状態となるためである。
【0013】
例えば、請求項2に記載の発明のように、第1磁電変換素子(M1)は磁気発生部(20)の回転に応じてsinNθ信号(Nは自然数)を出力すると共に、第2磁電変換素子(M2)は磁気発生部(20)の回転に応じてcosNθ信号(Nは自然数)を出力する状態で磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置されるものとすることができる。そして、角度演算部(60)は、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力されたsinNθ信号およびcosNθ信号に対して所定の演算を行って同じ位相差αを有するsin(Nθ+α)およびsin(Nθ−α)を生成した後、sin(Nθ+α)、sin(Nθ−α)および回転角度φを用いた所定の演算を行うことによってAsin(Nθ−Nφ)信号を生成し、当該Asin(Nθ−Nφ)に基づく偏差(Nθ−Nφ)が所定値になるようにフィードバック制御を行うものとすることができる。
【0014】
この場合、請求項3に記載の発明のように、角度演算部(60)は、偏差(Nθ−Nφ)が0になるようにフィードバック制御を行うのが好ましい。
【0015】
そして、請求項4に記載の発明のように、角度演算部(60)は、演算した回転角度φに対応するカウント値をカウントするカウンタ(64)を備え、偏差(Nθ−Nφ)の正負を判定し、その判定結果に基づいてカウンタ(64)のカウント値を増減するものとすることができる。
【0016】
これによれば、演算した回転角度φをカウンタ(64)のカウント値に対応させることができるため、演算した回転角度φを高精度に演算することができる。
【0017】
さらに、請求項5に記載の発明のように、角度演算部(60)は、sin(Nθ−Nφ)信号を逆正弦演算することにより偏差(Nθ−Nφ)を演算し、その演算結果に基づいて正負を判定するものとすることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明のように、角度演算部(60)は、sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも大きいときは偏差(Nθ−Nφ)が正であると判定し、sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも小さいときは偏差(Nθ−Nφ)が負であると判定するものとすることができる。
【0019】
そして、請求項7に記載の発明のように、角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとして0を用いるものとすることができる。また、請求項8に記載の発明のように、角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとして、スロットルバルブ(10)が吸入通路(12)に組みつけられて全閉状態であるときに計測された角度を用いるものとすることができる。
【0020】
さらに、請求項9に記載の発明のように、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度が入力され、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される第1、第2信号に対して第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度に応じた補正を行い、補正した信号を角度演算部(60)に入力する温特補正部を備えることができる。
【0021】
これによれば、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度に応じて温特補正を行うため、検出感度が温度に依存することを抑制することができる。
【0022】
そして、請求項10に記載の発明のように、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)は、それぞれ磁気抵抗素子(R1〜R8)にて構成されているものとすることができる。
【0023】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスロットルバルブ用回転角度検出装置のブロック図である。
【図2】センサチップとスロットルバルブとの配置関係を示す模式図であり、(a)はスロットルバルブが閉じている状態を示す図、(b)はスロットルバルブが開いている状態を示す図である。
【図3】図1に示すセンサチップの構造を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】図3に示す第1AMRセンサの構造を模式的に示す平面図である。
【図5】図3に示す第2AMRセンサの構造を模式的に示す平面図である。
【図6】図4に示す第1AMRセンサの等価回路図である。
【図7】図5に示す第2AMRセンサの等価回路図である。
【図8】第1、第2AMRセンサの各出力信号を示す図である。
【図9】検出回路の作動を説明するための図である。
【図10】入力角度と出力角度との関係を示す図である。
【図11】実際の回転角度θと演算した回転角度φとの関係を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態におけるセンサチップとスロットルバルブとの配置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のスロットルバルブ用回転角度検出装置は、エンジンの燃焼室内に吸入される吸入空気量を制御するスロットルバルブの回転角度(開度)を検出するのに用いられるものである。図1は、本実施形態におけるスロットルバルブ用回転角度検出装置のブロック図である。
【0026】
図1に示されるように、スロットルバルブ用回転角度検出装置は、センサチップ1と、検出回路2とを備えている。センサチップ1は、磁気抵抗素子から成る2つの異方性磁気抵抗センサ(以下、単に第1、第2AMRセンサという)M1、M2が形成されたものであり、吸入通路内に設けられたスロットルバルブの回転軸上に配置される。なお、本実施形態では第1、第2AMRセンサM1、M2が本発明の第1、第2磁電変換素子に相当している。以下に、センサチップ1とスロットルバルブとの配置関係について簡単に説明する。
【0027】
図2は、センサチップ1とスロットルバルブとの配置関係を示す模式図であり、(a)はスロットルバルブが閉じている状態を示す図、(b)はスロットルバルブが開いている状態を示す図である。
【0028】
図2に示されるように、エンジンの燃焼室内に吸入される吸入空気量を制御するスロットルバルブ10は、スロットルバルブ10と共に回転するシャフト11と一体化されており、このシャフト11が吸入通路12を形成するスロットルボディー13に支持されることによって吸入通路12内に備えられている。本実施形態では、吸入通路12は吸入空気の流れの方向に対する断面が円形状とされ、スロットルバルブ10は全閉時に吸入空気を遮断することができるように吸入通路12とほぼ同じ径を有する円形板状とされている。また、シャフト11は、一端部側が吸入通路12外に突出するようにスロットルボディー13に備えられ、突出している先端部に本発明の磁界発生部に相当する永久磁石20を備えている。なお、本実施形態では、吸入空気が本発明の媒体に相当している。
【0029】
永久磁石20は、本実施形態では、円板状とされており、径方向で同じ大きさに2分割されている。そして、2分割された一方がN極の永久磁石20aとされ、他方がS極の永久磁石20bとされており、図2(b)に示されるように、シャフト11を介してスロットルバルブ10と共に一体化して回転する。
【0030】
センサチップ1は、永久磁石20が生成する磁界中に、永久磁石20の径に沿った回転面20cと対向する状態で図示しない支持部材によって支持されて配置位置が変化しないように固定されて備えられている。なお、周知のように、N極の永久磁石20aからS極の永久磁石20bに向かうように磁界が生成されるため、センサチップ1には、スロットルバルブ10が図2(a)の状態である場合には紙面左右方向の磁界Bが印加され、図2(b)の状態である場合には紙面垂直方向の磁界Bが印加される。また、図2(b)中のθは、スロットルバルブ10の回転角度のことであり、スロットルバルブ10が全閉状態(図2(a))であるときを基準とし、この基準から回転した角度である。
【0031】
次に、センサチップ1の具体的な構造について説明する。図3はセンサチップ1の構造を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0032】
図3に示されるように、センサチップ1は、シリコン基板40と、このシリコン基板40の表面に形成されたシリコン酸化膜等の絶縁膜41と、この絶縁膜41の表面に形成された複数の磁気抵抗素子R1〜R8を有する第1、第2AMRセンサM1、M2とを備えている。なお、磁気抵抗素子R1〜R8の形状は、素子の形成方向を分かり易くするため、実際の寸法よりも大きく描いてある。
【0033】
図4は第1AMRセンサM1の構造を模式的に示す平面図、図5は第2AMRセンサM2の構造を模式的に示す平面図である。図6は第1AMRセンサM1の等価回路図、図7は第2AMRセンサM2の等価回路図である。図8は、第1、第2AMRセンサM1、M2の各出力信号を示す図である。
【0034】
図4および図5に示されるように、磁気抵抗素子R1〜R8は、帯状領域が複数回折り返された形状、つまり、メアンダ状(蛇行状)に形成されており、主としてシリコン基板40の表面に平行な磁界の強度および向きにより抵抗値が変化し、抵抗値に応じたレベルの信号を出力する。つまり、磁気抵抗素子R1〜R8は、異方性磁気抵抗効果を発生する素子である。特に限定されるものではないが、本実施形態では、磁気抵抗素子R1〜R8は、強磁性体の金属薄膜により形成されている。強磁性体としては、NiFe(パーマロイ)やNiCo等が用いられる。また、強磁性体の金属薄膜は、スパッタ法や蒸着法により成膜される。
【0035】
第1AMRセンサM1は、図4に示されるように、4つの磁気抵抗素子R1〜R4を備えて構成されている。磁気抵抗素子R1〜R4は、相互に隣接する磁気抵抗素子において帯状素子の延設方向の成す角度が90°になるように配置されている。言い換えると、磁気抵抗素子R1〜R4は、隣り合う磁気抵抗素子の電流の方向(磁化容易軸)が90°の角度を成すように配置されている。つまり、磁気抵抗素子R1、R3およびR2、R4の各組は、各組において出力信号間の位相が90°異なるように配置されている。
【0036】
図4および図6に示されるように、磁気抵抗素子R1、R3は電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout1を取出すための出力端子31が電気的に接続されている。磁気抵抗素子R2、R4も電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout2を取出すための出力端子32が電気的に接続されている。
【0037】
そして、両ハーフブリッジ回路は並列接続され、sin2θ信号を出力するフルブリッジ回路が構成されている。このフルブリッジ回路には、電源Vccを供給するための電源供給端子30と、グランドG1と電気的に接続するための端子33とが電気的に接続されている。このフルブリッジ回路において相対向する磁気抵抗素子R1、R2は、(R0+ΔRsin2θ)信号を出力し、磁気抵抗素子R3、R4は、(R0−ΔRsin2θ)信号を出力する。なお、R0は、無磁界中における磁気抵抗素子の抵抗値であり、ΔRは、抵抗値変化量である。また、本実施形態では、sin2θ信号が本発明の第1信号に相当している。
【0038】
各中点出力Vout1、Vout2は、それぞれVcc/2を中心に振動するため、環境温度の変化等に起因する出力波形のオフセットを抑制することができる。また、出力端子31、32は、後述の増幅部に接続され、中点出力Vout1、Vout2が差動増幅される。このように、第1AMRセンサM1を構成することにより、第1AMRセンサM1を1つのハーフブリッジ回路によって構成する場合と比較して、第1AMRセンサM1の出力振幅を2倍にすることができ、磁気の検出感度を高めることができる。
【0039】
また、図5に示されるように、第2AMRセンサM2は、4つの磁気抵抗素子R5〜R8を備えて構成されている。磁気抵抗素子R5〜R8は、相互に隣接する磁気抵抗素子において帯状素子の延設方向の成す角度が90°になるように配置されている。言い換えると、磁気抵抗素子R5〜R8は、隣り合う磁気抵抗素子の電流の方向(磁化容易軸)が90°の角度を成すように配置されている。つまり、磁気抵抗素子R5、R8およびR6、R7の各組は、各組において出力信号間の位相が90°異なるように配置されている。
【0040】
図5および図7に示されるように、磁気抵抗素子R5、R7は電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout3を取出すための出力端子35が電気的に接続されている。磁気抵抗素子R2、R4も電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout4を取出すための出力端子36が電気的に接続されている。
【0041】
そして、両ハーフブリッジ回路は並列接続され、cos2θ信号を出力するフルブリッジ回路が構成されている。このフルブリッジ回路には、電源Vccを供給するための電源供給端子34と、グランドG2と電気的に接続するための端子37とが電気的に接続されている。このフルブリッジ回路において相対向する磁気抵抗素子R5、R6は、(R0−ΔRcos2θ)信号を出力し、磁気抵抗素子R7、R8は、(R0+ΔRcos2θ)信号を出力する。なお、本実施形態では、cos2θ信号が本発明の第2信号に相当している。
【0042】
各中点出力Vout3、Vout4は、それぞれVcc/2を中心に振動するため、環境温度の変化等に起因する出力波形のオフセットを抑制することができる。また、出力端子35、36は、後述の増幅部に接続され、中点出力Vout3、Vout4が差動増幅される。このように、第2AMRセンサM2を構成することにより、第2AMRセンサM2を1つのハーフブリッジ回路によって構成する場合と比較して、第2AMRセンサM2の出力振幅を2倍にすることができ、磁気の検出感度を高めることができる。
【0043】
そして、図3(a)に示されるように、第1、第2AMRセンサM1、M2の各磁気抵抗素子R1〜R8は同心円状に交互に配置されている。具体的には、隣り合う第1AMRセンサM1の磁気抵抗素子R1〜R4と、第2AMRセンサM2の磁気抵抗素子R5〜R8とは、電流の方向(磁化容易軸)が45°の角度を成すように配置されている。なお、異方性磁気抵抗素子の電気抵抗の変化量ΔRは、自身の金属薄膜に流れる電流の方向(磁化容易軸)と、磁界の方向との成す角度が90°および270°のときに最大になり、0°および180°のときに最小になる。
【0044】
以上より、図8に示されるように、第1AMRセンサM1は、1波長が電気角180°のsin信号を出力し、第2AMRセンサM2は、第1AMRセンサM1との位相差が45°で、1波長が電気角180°のcos信号を出力する。以上が本実施形態におけるセンサチップ1の構造である。
【0045】
次に、検出回路2の構成について説明する。検出回路2は、図1に示されるように、増幅部50と、角度演算部60と、出力部70とを備えている。
【0046】
増幅部50は、第1、第2差動増幅回路50a、50bを有している。そして、第1差動増幅回路50aにて第1AMRセンサM1の出力信号sin2θを差動増幅し、第2差動増幅回路50bにて第2AMRセンサM2の出力信号cos2θを差動増幅する。
【0047】
角度演算部60は、トラッキングループ型デジタル角度変換回路であり、信号作成部61と、偏差算出部62と、正負判定部63と、アップダウンカウンタ(U/Dカウンタ)64と、初期角度記憶部65とを有している。そして、第1、第2AMRセンサM1、M2から出力される信号を用い、永久磁石20(スロットルバルブ10)に対する回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行って回転角度θを演算する。なお、本実施形態では、この所定値は0とされている。
【0048】
信号作成部61は、第1、第2差動増幅回路50a、50bから出力される信号を用い、第1AMRセンサM1から出力されたsin信号の増幅信号からAsin(2θ+α)を生成すると共に、第2AMRセンサM2から出力されたcos信号の増幅信号からAsin(2θ−α)を生成する。そして、これらAsin(2θ+α)およびAsin(2θ−α)を用いた所定の演算を行って信号2Asin(2θ−2φ)を生成する。なお、Aは振幅、αは位相差であり、本実施形態では振幅A=1、位相差α=45°とされている。
【0049】
偏差算出部62は、信号作成部61から出力される信号2Asin(2θ−2φ)を用いて偏差(2θ−2φ)を算出する。
【0050】
正負判定部63は、偏差算出部62により算出された偏差(2θ−2φ)が正の値であるか負の値であるかを判定する。
【0051】
アップダウンカウンタ64は、正負判定部63の判定結果に応じてカウント値を加算(カウントアップ)または減算(カウントダウン)する。
【0052】
初期角度記憶部65は、EEPROM等で構成されており、初期角度としてスロットルバルブ10が全閉状態であるときの角度が記憶されている。例えば、初期角度は、スロットルバルブ10が組み付けられた時点ではほぼ0となるため、0とすることができる。また、初期角度は、スロットルバルブ10が組み付けられたときの角度ずれ等を考慮し、スロットルバルブ10を組み付けたときの全閉状態のときの計測した角度とすることもできる。
【0053】
出力部70は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φをアナログ値に変換した信号を出力する。
【0054】
次に、検出回路2の作動について説明する。図9は、検出回路2の作動を説明するための図である。なお、図9では、符号61a〜61kで示す各ブロックは、信号作成部61が実行する処理の内容、または、その処理によって発生する信号、あるいは、データを示す。
【0055】
図9に示されるように、永久磁石20(スロットルバルブ10)が全閉状態からθ回転すると、第1AMRセンサM1から信号sin2θが出力され、第2AMRセンサM2から信号cos2θが出力される。そして、信号作成部61は、第1、第2差動増幅回路50a、50bから出力される信号からAsin(2θ+α)(61a)およびAsin(2θ−α)(61b)を生成し、Asin(2θ+α)とAsin(2θ−α)とを加算して信号2Asin2θcosαを生成する(61c)と共に、Asin(2θ+α)からAsin(2θ−α)を減算して信号2Acos2θsinαを生成する(61d)。なお、加算は、公知の加算回路を用いて行うことができ、減算は高知の減算回路を用いて行うことができる。
【0056】
また、上記のように位相差αは任意に変更可能であるが、次のようにされていることが好ましい。図10は、入力角度(スロットルバルブ10の回転角度)と出力角度との関係を示す図である。図10に示されるように、後述の演算を行った演算した回転角度φは、αが45°であるときに入力角度(永久磁石20の回転角度)に対してリニアに変化する信号となり、αが45°から離れると入力角度と演算した回転角度との誤差が大きくなる。このため、本実施形態では、位相差α=45°としている。
【0057】
続いて、図9に示されるように、信号作成部61は、信号2Asin2θcosαに信号cos2φおよび(1/cosα)を乗算し、信号2Asin2θcos2φを作成する(61e、61i、61g)。また、信号作成部61は、信号2Acos2θsinαに信号sin2φおよび(1/sinα)を乗算し、信号2Acos2θsin2φを作成する(61f、61h、61j)。これらの乗算は、それぞれ公知の乗算回路を用いて行うことができる。
【0058】
なお、(1/cosα)および(1/sinα)は永久磁石20(スロットルバルブ10)の回転に応じて変化しない係数である。また、cos2φ(61i)およびsin2φ(61j)の各φは、アップダウンカウンタ64のカウント値により変化する変数である。ただし、スロットルバルブ10の検出を開始した1回目の演算(検出開始時)では、φは初期角度記憶部65から読み出された値となる(65)。スロットルバルブ10は、上記のように吸入空気量を調整するものであり、検出開始時、つまり、スロットルバルブ10が回転させられる直前は必ず全閉状態となるためである。
【0059】
続いて、信号作成部61は、信号2Asin2θcos2φから信号2Acos2θsin2φを減算し、信号2Asin(2θ−2φ)、つまり、偏差(2θ−2φ)を変数とするsin信号を作成する(61k)。この減算は、公知の減算回路を用いて行うことができる。
【0060】
次に、偏差算出部62は、信号作成部61が作成した信号2Asin(2θ−2φ)を逆正弦演算(アークサイン演算)し、偏差(2θ−2φ)を求める(62)。
【0061】
続いて、正負判定部63は、偏差算出部62が求めた偏差(2θ−2φ)が正の値であるか負の値であるかを判定する(63)。
【0062】
その後、アップダウンカウンタ64は、正負判定部63の判定結果が正であった場合は、カウンタの最下位ビット(LSB)に1を加算してカウント値を加算し、正負判定部63の判定結果が負であった場合は、カウンタの最下位ビットから1を減算する(64)。このアップダウンカウンタ64のカウント値がデジタル角度、つまり演算した回転角度φとなる(65)。
【0063】
また、信号作成部61は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φ(カウント値)を用い、信号cos2φおよびsin2φを作成する(61i、61j)。これらの信号の作成は、例えば、演算した回転角度φ(カウント値)と、データcos2φおよびsin2φとを対応付けたテーブルを用い、演算した回転角度φに対応付けられているデータcos2φおよびsin2φを読出し、その読出したデータをアナログ信号に変換する手法によって行うことができる。なお、上記のように、スロットルバルブ10の検出を開始した1回目の演算(検出開始時)では、φは初期角度となる(65)。
【0064】
そして、信号作成部61は、再度、信号2Asin2θcosαに信号cos2φおよび(1/cosα)を乗算し、信号2Asin2θcos2φを作成する。また、再度、信号2Acos2θsinαに信号sin2φおよび(1/sinα)を乗算し、信号2Acos2θsin2φを作成する。つまり、偏差(2θ−2φ)が、信号cos2φおよびsin2φにフィードバックされ、偏差(2θ−2φ)が0となるように制御される。
【0065】
また、出力部70は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φをアナログ値に変換した信号を出力する。例えば、出力部70は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φをアナログ電圧に変換して出力する。図11は、実際の回転角度θと出力部70から出力される演算した回転角度φとの関係を示す図である。
【0066】
図11に示されるように、このような回転角度検出装置では、スロットルバルブ10の回転角度の1回目の演算(検出開始時)において初期角度記憶部65に記憶されている初期角度を読み出して演算を行うため、実際の回転角度θと演算した回転角度φとの検出開始時の誤差を小さくすることができる。
【0067】
なお、上記のような検出回路2では、回転角度θが0〜360°の範囲で演算可能であるが、一般的には永久磁石20(スロットルバルブ10)の回転角度θは0〜90°であるため、出力部70の出力範囲を0〜90°の範囲となるようにしてもよい。また、取り付け誤差等を考慮し、出力部70の出力範囲を0〜120°の範囲となるようにしてもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の回転角度検出装置は、角度演算部60で演算した回転角度φを演算し、演算した回転角度φを用いたフィードバック制御を行っている。このため、経時的に信頼性が低下することを抑制することができる。
【0069】
また、角度演算部60では、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ10が全閉状態であるときの角度を用いている。これにより、検出開始時において、永久磁石20(スロットルバルブ10)の実際の回転角度θと演算した回転角度φとの誤差を小さくすることができる(図11参照)。検出開始時では、スロットルバルブ10が必ず全閉状態となるためである。
【0070】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、センサチップ1に第1、第2AMRセンサM1、M2が形成されているものを説明したが、センサチップ1に次のセンサが形成されていてもよい。すなわち、1波長が電気角360°のsin信号を出力するGMR(Giant Magneto-Resistive effect:巨大磁気抵抗効果)センサと、このGMRセンサとの位相差が90°であり、1波長が電気角360°のcos信号を出力するGMRセンサが形成されていてもよい。また、1波長が電気角360°のsin信号を出力するTMR(Tunnel Magneto-Resistive effect:トンネル磁気抵抗効果)センサと、このTMRセンサとの位相差が90°であり、1波長が電気角360°のcos信号を出力するTMRセンサが形成されていてもよい。同様に、1波長が電気角360°のsin信号を出力するホール素子と、このホール素子との位相差が90°であり、1波長が電気角360°のcos信号を出力するホール素子が形成されていてもよい。
【0071】
このように、センサチップ1にGMRセンサ、TMRセンサまたはホール素子が形成されているものを用いた場合には、信号作成部61にて上記と同様の処理が行われて偏差が(θ−φ)であるsin信号が生成される(61k)。このため、正負判定部63は、偏差(θ−φ)が正の値であるか負の値であるかを判定した後、上記と同様にアップダウンカウンタ64のカウント値が加算または減算される。
【0072】
また、上記第1実施形態では、正負判定部63は、偏差(2θ−2φ)が0よりも大きいか否かを判定する例について説明したが、次のようにすることもできる。すなわち、角度演算部60に偏差算出部62を備えずに、正負判定部63は、信号2Asin(2θ−2φ)が0よりも大きいときは正であると判定し、0よりも小さいときは負であると判定するようにしてもよい。
【0073】
さらに、上記第1実施形態において、増幅部50は備えられていなくてもよく、第1、第2AMRセンサM1、M2の信号がそのまま角度演算部60に入力されるようにしてもよい。また、特に図示しないが、フィルター等でノイズを除去するようにしてもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態において、温特補正を行うようにしてもよい。すなわち、センサチップ1に温度検出部を形成し、増幅部50と角度演算部60との間に、温度と第1、第2AMRセンサM1、M2の感度変化に対する補正値とが対応付けられているデータを有する温特補正部を備えてもよい。これにより、温特補正部にて、温度検出部で検出された温度から補正値を読み出し、増幅信号に対して温度に依存する補正値を用いた温特補正を行うことができるため、検出感度が温度に依存することを抑制することができる。
【0075】
さらに、上記第1実施形態において、第1、第2AMRセンサM1、M2を室温(25℃)で最も感度が高くなるように構成してもよい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、センサチップ1が円板状の永久磁石20が生成する磁界中に配置される例を説明したが、センサチップ1は次のような永久磁石20が生成する磁界中に配置されていてもよい。図12は、センサチップ1とスロットルバルブ10との配置関係を示す図である。
【0077】
図12(a)に示されるように、永久磁石20は厚さ方向で同じ大きさに2分割されていると共に径方向で同じ大きさに2分割されて4分割され、厚さ方向に分割されたうちのスロットルボディー13側の一方がN極の永久磁石20aとされていると共に他方がS極の永久磁石20bとされ、永久磁石20aの厚さ方向に積層された部分がS極の永久磁石20dとされていると共に永久磁石20bの厚さ方向に積層された部分がN極の永久磁石20eとされていてもよい。
【0078】
また、図12(b)に示されるように、永久磁石20は矩形板状部材とこの部材の両端部に板状部材の面方向と垂直方向に突出した突出部とを有する断面がU字型のものとされていてもよい。
【0079】
さらに、図12(c)に示されるように、永久磁石20である矩形板状部材とこの部材の両端部に板状部材の面方向と垂直方向に突出した鉄等のヨーク部位21とを備えた断面がU字型のものとされていてもよい。
【0080】
これら図12(b)および(c)のように磁気発生部を構成することにより、板状部材から突出した部位の一方から他方に向かう方向に磁界Bが生成されるため、センサチップ1にシリコン基板40の平面方向と平行な方向に磁界Bが印加されることになり、印加される磁界の方向が部分的にばらつくことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 センサチップ
2 検出回路
10 スロットルバルブ
12 吸入通路
20 永久磁石
60 角度演算部
61 信号作成部
62 偏差算出部
63 正負判定部
64 アップダウンカウンタ
70 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルバルブと一体となって回転する磁気発生部の磁界中に磁電変換素子を備え、磁電変換素子から出力される信号を用いて磁気発生部の回転角度を演算することにより、スロットルバルブの回転角度を検出するスロットルバルブ用回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、エンジンの燃焼室内に吸入される吸入空気量を制御するスロットルバルブの回転角度(開度)を検出するスロットルバルブ用回転角度検出装置が提案されている。このスロットルバルブ用回転角度検出装置では、スロットルバルブの回転によって変化するスロットルポジションセンサの抵抗値を検出することによってスロットルバルブの回転角度を検出している。
【0003】
また、例えば、特許文献2は、回転体の回転に応じて回転検出器から出力される信号からデジタル角度を演算し、このデジタル角度を用いてフィードバック制御する回転角度検出装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−70587号公報
【特許文献2】特開2000−353957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のスロットルバルブ用回転角度検出装置では、スロットルポジションセンサの抵抗値の変化、つまりいわゆる摺動式抵抗の抵抗値の変化を検出しているため、摩耗等によって経時的に信頼性が低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の回転角度検出装置では、デジタル角度を用いるフィードバック制御をして回転検出器の回転角度を演算している。このため、このような回転検出装置をスロットルバルブ用回転角度検出装置に適用して経時的に信頼性が低下することを抑制することが考えられる。しかしながら、上記特許文献2に記載の回転角度検出装置をスロットルバルブの回転角度の検出に単純に適用した場合には、検出開始時の演算した回転角度(フィードバックする角度)が定められていないため、検出開始時の実際の回転角度と演算した回転角度との誤差が大きいという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、径時的に信頼性が低下することを抑制することができると共に、検出開始時の実際の回転角度と演算した回転角度との誤差を小さくすることができるスロットルバルブ用回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために本発明者らは鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、スロットルバルブは検出開始時には必ず全閉状態になることに着目し、フィードバック制御を行う回転検出装置において、検出開始時の演算角度としてスロットルバルブが全閉状態であるときの角度を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
【0009】
このため、請求項1に記載の発明では、吸入通路(12)内を流れる媒体の流量を制御するスロットルバルブ(10)と一体化して回転する磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置され、磁気発生部(20)の回転に応じた第1信号を出力する第1磁電変換素子(M1)と、第1信号との間に所定の位相差を有する第2信号を出力する第2磁電変換素子(M2)と、を備え、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される第1、第2信号を用いて磁気発生部(20)の回転角度を求めるスロットルバルブ用回転角度検出装置において、以下の点を特徴としている。
【0010】
すなわち、第1信号および第2信号を用いて磁気発生部(20)の回転角度を演算し、磁気発生部(20)の実際の回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行う角度演算部(60)と、角度演算部(60)が演算した回転角度φに対応する信号を出力する出力部(70)と、を備え、角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ(10)が全閉状態であるときの角度を用いることを特徴としている。
【0011】
このようなスロットルバルブ用回転角度検出装置では、フィードバック制御を行って磁気発生部(20)の回転角度、つまりスロットルバルブ(10)の回転角度を演算しているため、経時的に信頼性が低下することを抑制することができる。
【0012】
また、角度演算部(60)では、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ(10)が全閉状態であるときの角度を用いている。これにより、検出開始時において、スロットルバルブ(10)の実際の回転角度θと演算した回転角度φとの誤差を小さくすることができる。検出開始時、つまりスロットルバルブ(10)が作動する直前では、スロットルバルブ(10)は必ず全閉状態となるためである。
【0013】
例えば、請求項2に記載の発明のように、第1磁電変換素子(M1)は磁気発生部(20)の回転に応じてsinNθ信号(Nは自然数)を出力すると共に、第2磁電変換素子(M2)は磁気発生部(20)の回転に応じてcosNθ信号(Nは自然数)を出力する状態で磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置されるものとすることができる。そして、角度演算部(60)は、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力されたsinNθ信号およびcosNθ信号に対して所定の演算を行って同じ位相差αを有するsin(Nθ+α)およびsin(Nθ−α)を生成した後、sin(Nθ+α)、sin(Nθ−α)および回転角度φを用いた所定の演算を行うことによってAsin(Nθ−Nφ)信号を生成し、当該Asin(Nθ−Nφ)に基づく偏差(Nθ−Nφ)が所定値になるようにフィードバック制御を行うものとすることができる。
【0014】
この場合、請求項3に記載の発明のように、角度演算部(60)は、偏差(Nθ−Nφ)が0になるようにフィードバック制御を行うのが好ましい。
【0015】
そして、請求項4に記載の発明のように、角度演算部(60)は、演算した回転角度φに対応するカウント値をカウントするカウンタ(64)を備え、偏差(Nθ−Nφ)の正負を判定し、その判定結果に基づいてカウンタ(64)のカウント値を増減するものとすることができる。
【0016】
これによれば、演算した回転角度φをカウンタ(64)のカウント値に対応させることができるため、演算した回転角度φを高精度に演算することができる。
【0017】
さらに、請求項5に記載の発明のように、角度演算部(60)は、sin(Nθ−Nφ)信号を逆正弦演算することにより偏差(Nθ−Nφ)を演算し、その演算結果に基づいて正負を判定するものとすることができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明のように、角度演算部(60)は、sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも大きいときは偏差(Nθ−Nφ)が正であると判定し、sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも小さいときは偏差(Nθ−Nφ)が負であると判定するものとすることができる。
【0019】
そして、請求項7に記載の発明のように、角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとして0を用いるものとすることができる。また、請求項8に記載の発明のように、角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとして、スロットルバルブ(10)が吸入通路(12)に組みつけられて全閉状態であるときに計測された角度を用いるものとすることができる。
【0020】
さらに、請求項9に記載の発明のように、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度が入力され、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される第1、第2信号に対して第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度に応じた補正を行い、補正した信号を角度演算部(60)に入力する温特補正部を備えることができる。
【0021】
これによれば、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度に応じて温特補正を行うため、検出感度が温度に依存することを抑制することができる。
【0022】
そして、請求項10に記載の発明のように、第1、第2磁電変換素子(M1、M2)は、それぞれ磁気抵抗素子(R1〜R8)にて構成されているものとすることができる。
【0023】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスロットルバルブ用回転角度検出装置のブロック図である。
【図2】センサチップとスロットルバルブとの配置関係を示す模式図であり、(a)はスロットルバルブが閉じている状態を示す図、(b)はスロットルバルブが開いている状態を示す図である。
【図3】図1に示すセンサチップの構造を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】図3に示す第1AMRセンサの構造を模式的に示す平面図である。
【図5】図3に示す第2AMRセンサの構造を模式的に示す平面図である。
【図6】図4に示す第1AMRセンサの等価回路図である。
【図7】図5に示す第2AMRセンサの等価回路図である。
【図8】第1、第2AMRセンサの各出力信号を示す図である。
【図9】検出回路の作動を説明するための図である。
【図10】入力角度と出力角度との関係を示す図である。
【図11】実際の回転角度θと演算した回転角度φとの関係を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態におけるセンサチップとスロットルバルブとの配置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のスロットルバルブ用回転角度検出装置は、エンジンの燃焼室内に吸入される吸入空気量を制御するスロットルバルブの回転角度(開度)を検出するのに用いられるものである。図1は、本実施形態におけるスロットルバルブ用回転角度検出装置のブロック図である。
【0026】
図1に示されるように、スロットルバルブ用回転角度検出装置は、センサチップ1と、検出回路2とを備えている。センサチップ1は、磁気抵抗素子から成る2つの異方性磁気抵抗センサ(以下、単に第1、第2AMRセンサという)M1、M2が形成されたものであり、吸入通路内に設けられたスロットルバルブの回転軸上に配置される。なお、本実施形態では第1、第2AMRセンサM1、M2が本発明の第1、第2磁電変換素子に相当している。以下に、センサチップ1とスロットルバルブとの配置関係について簡単に説明する。
【0027】
図2は、センサチップ1とスロットルバルブとの配置関係を示す模式図であり、(a)はスロットルバルブが閉じている状態を示す図、(b)はスロットルバルブが開いている状態を示す図である。
【0028】
図2に示されるように、エンジンの燃焼室内に吸入される吸入空気量を制御するスロットルバルブ10は、スロットルバルブ10と共に回転するシャフト11と一体化されており、このシャフト11が吸入通路12を形成するスロットルボディー13に支持されることによって吸入通路12内に備えられている。本実施形態では、吸入通路12は吸入空気の流れの方向に対する断面が円形状とされ、スロットルバルブ10は全閉時に吸入空気を遮断することができるように吸入通路12とほぼ同じ径を有する円形板状とされている。また、シャフト11は、一端部側が吸入通路12外に突出するようにスロットルボディー13に備えられ、突出している先端部に本発明の磁界発生部に相当する永久磁石20を備えている。なお、本実施形態では、吸入空気が本発明の媒体に相当している。
【0029】
永久磁石20は、本実施形態では、円板状とされており、径方向で同じ大きさに2分割されている。そして、2分割された一方がN極の永久磁石20aとされ、他方がS極の永久磁石20bとされており、図2(b)に示されるように、シャフト11を介してスロットルバルブ10と共に一体化して回転する。
【0030】
センサチップ1は、永久磁石20が生成する磁界中に、永久磁石20の径に沿った回転面20cと対向する状態で図示しない支持部材によって支持されて配置位置が変化しないように固定されて備えられている。なお、周知のように、N極の永久磁石20aからS極の永久磁石20bに向かうように磁界が生成されるため、センサチップ1には、スロットルバルブ10が図2(a)の状態である場合には紙面左右方向の磁界Bが印加され、図2(b)の状態である場合には紙面垂直方向の磁界Bが印加される。また、図2(b)中のθは、スロットルバルブ10の回転角度のことであり、スロットルバルブ10が全閉状態(図2(a))であるときを基準とし、この基準から回転した角度である。
【0031】
次に、センサチップ1の具体的な構造について説明する。図3はセンサチップ1の構造を模式的に示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【0032】
図3に示されるように、センサチップ1は、シリコン基板40と、このシリコン基板40の表面に形成されたシリコン酸化膜等の絶縁膜41と、この絶縁膜41の表面に形成された複数の磁気抵抗素子R1〜R8を有する第1、第2AMRセンサM1、M2とを備えている。なお、磁気抵抗素子R1〜R8の形状は、素子の形成方向を分かり易くするため、実際の寸法よりも大きく描いてある。
【0033】
図4は第1AMRセンサM1の構造を模式的に示す平面図、図5は第2AMRセンサM2の構造を模式的に示す平面図である。図6は第1AMRセンサM1の等価回路図、図7は第2AMRセンサM2の等価回路図である。図8は、第1、第2AMRセンサM1、M2の各出力信号を示す図である。
【0034】
図4および図5に示されるように、磁気抵抗素子R1〜R8は、帯状領域が複数回折り返された形状、つまり、メアンダ状(蛇行状)に形成されており、主としてシリコン基板40の表面に平行な磁界の強度および向きにより抵抗値が変化し、抵抗値に応じたレベルの信号を出力する。つまり、磁気抵抗素子R1〜R8は、異方性磁気抵抗効果を発生する素子である。特に限定されるものではないが、本実施形態では、磁気抵抗素子R1〜R8は、強磁性体の金属薄膜により形成されている。強磁性体としては、NiFe(パーマロイ)やNiCo等が用いられる。また、強磁性体の金属薄膜は、スパッタ法や蒸着法により成膜される。
【0035】
第1AMRセンサM1は、図4に示されるように、4つの磁気抵抗素子R1〜R4を備えて構成されている。磁気抵抗素子R1〜R4は、相互に隣接する磁気抵抗素子において帯状素子の延設方向の成す角度が90°になるように配置されている。言い換えると、磁気抵抗素子R1〜R4は、隣り合う磁気抵抗素子の電流の方向(磁化容易軸)が90°の角度を成すように配置されている。つまり、磁気抵抗素子R1、R3およびR2、R4の各組は、各組において出力信号間の位相が90°異なるように配置されている。
【0036】
図4および図6に示されるように、磁気抵抗素子R1、R3は電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout1を取出すための出力端子31が電気的に接続されている。磁気抵抗素子R2、R4も電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout2を取出すための出力端子32が電気的に接続されている。
【0037】
そして、両ハーフブリッジ回路は並列接続され、sin2θ信号を出力するフルブリッジ回路が構成されている。このフルブリッジ回路には、電源Vccを供給するための電源供給端子30と、グランドG1と電気的に接続するための端子33とが電気的に接続されている。このフルブリッジ回路において相対向する磁気抵抗素子R1、R2は、(R0+ΔRsin2θ)信号を出力し、磁気抵抗素子R3、R4は、(R0−ΔRsin2θ)信号を出力する。なお、R0は、無磁界中における磁気抵抗素子の抵抗値であり、ΔRは、抵抗値変化量である。また、本実施形態では、sin2θ信号が本発明の第1信号に相当している。
【0038】
各中点出力Vout1、Vout2は、それぞれVcc/2を中心に振動するため、環境温度の変化等に起因する出力波形のオフセットを抑制することができる。また、出力端子31、32は、後述の増幅部に接続され、中点出力Vout1、Vout2が差動増幅される。このように、第1AMRセンサM1を構成することにより、第1AMRセンサM1を1つのハーフブリッジ回路によって構成する場合と比較して、第1AMRセンサM1の出力振幅を2倍にすることができ、磁気の検出感度を高めることができる。
【0039】
また、図5に示されるように、第2AMRセンサM2は、4つの磁気抵抗素子R5〜R8を備えて構成されている。磁気抵抗素子R5〜R8は、相互に隣接する磁気抵抗素子において帯状素子の延設方向の成す角度が90°になるように配置されている。言い換えると、磁気抵抗素子R5〜R8は、隣り合う磁気抵抗素子の電流の方向(磁化容易軸)が90°の角度を成すように配置されている。つまり、磁気抵抗素子R5、R8およびR6、R7の各組は、各組において出力信号間の位相が90°異なるように配置されている。
【0040】
図5および図7に示されるように、磁気抵抗素子R5、R7は電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout3を取出すための出力端子35が電気的に接続されている。磁気抵抗素子R2、R4も電気的に直列接続されており、ハーフブリッジ回路を構成している。このハーフブリッジ回路の中点には、中点出力Vout4を取出すための出力端子36が電気的に接続されている。
【0041】
そして、両ハーフブリッジ回路は並列接続され、cos2θ信号を出力するフルブリッジ回路が構成されている。このフルブリッジ回路には、電源Vccを供給するための電源供給端子34と、グランドG2と電気的に接続するための端子37とが電気的に接続されている。このフルブリッジ回路において相対向する磁気抵抗素子R5、R6は、(R0−ΔRcos2θ)信号を出力し、磁気抵抗素子R7、R8は、(R0+ΔRcos2θ)信号を出力する。なお、本実施形態では、cos2θ信号が本発明の第2信号に相当している。
【0042】
各中点出力Vout3、Vout4は、それぞれVcc/2を中心に振動するため、環境温度の変化等に起因する出力波形のオフセットを抑制することができる。また、出力端子35、36は、後述の増幅部に接続され、中点出力Vout3、Vout4が差動増幅される。このように、第2AMRセンサM2を構成することにより、第2AMRセンサM2を1つのハーフブリッジ回路によって構成する場合と比較して、第2AMRセンサM2の出力振幅を2倍にすることができ、磁気の検出感度を高めることができる。
【0043】
そして、図3(a)に示されるように、第1、第2AMRセンサM1、M2の各磁気抵抗素子R1〜R8は同心円状に交互に配置されている。具体的には、隣り合う第1AMRセンサM1の磁気抵抗素子R1〜R4と、第2AMRセンサM2の磁気抵抗素子R5〜R8とは、電流の方向(磁化容易軸)が45°の角度を成すように配置されている。なお、異方性磁気抵抗素子の電気抵抗の変化量ΔRは、自身の金属薄膜に流れる電流の方向(磁化容易軸)と、磁界の方向との成す角度が90°および270°のときに最大になり、0°および180°のときに最小になる。
【0044】
以上より、図8に示されるように、第1AMRセンサM1は、1波長が電気角180°のsin信号を出力し、第2AMRセンサM2は、第1AMRセンサM1との位相差が45°で、1波長が電気角180°のcos信号を出力する。以上が本実施形態におけるセンサチップ1の構造である。
【0045】
次に、検出回路2の構成について説明する。検出回路2は、図1に示されるように、増幅部50と、角度演算部60と、出力部70とを備えている。
【0046】
増幅部50は、第1、第2差動増幅回路50a、50bを有している。そして、第1差動増幅回路50aにて第1AMRセンサM1の出力信号sin2θを差動増幅し、第2差動増幅回路50bにて第2AMRセンサM2の出力信号cos2θを差動増幅する。
【0047】
角度演算部60は、トラッキングループ型デジタル角度変換回路であり、信号作成部61と、偏差算出部62と、正負判定部63と、アップダウンカウンタ(U/Dカウンタ)64と、初期角度記憶部65とを有している。そして、第1、第2AMRセンサM1、M2から出力される信号を用い、永久磁石20(スロットルバルブ10)に対する回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行って回転角度θを演算する。なお、本実施形態では、この所定値は0とされている。
【0048】
信号作成部61は、第1、第2差動増幅回路50a、50bから出力される信号を用い、第1AMRセンサM1から出力されたsin信号の増幅信号からAsin(2θ+α)を生成すると共に、第2AMRセンサM2から出力されたcos信号の増幅信号からAsin(2θ−α)を生成する。そして、これらAsin(2θ+α)およびAsin(2θ−α)を用いた所定の演算を行って信号2Asin(2θ−2φ)を生成する。なお、Aは振幅、αは位相差であり、本実施形態では振幅A=1、位相差α=45°とされている。
【0049】
偏差算出部62は、信号作成部61から出力される信号2Asin(2θ−2φ)を用いて偏差(2θ−2φ)を算出する。
【0050】
正負判定部63は、偏差算出部62により算出された偏差(2θ−2φ)が正の値であるか負の値であるかを判定する。
【0051】
アップダウンカウンタ64は、正負判定部63の判定結果に応じてカウント値を加算(カウントアップ)または減算(カウントダウン)する。
【0052】
初期角度記憶部65は、EEPROM等で構成されており、初期角度としてスロットルバルブ10が全閉状態であるときの角度が記憶されている。例えば、初期角度は、スロットルバルブ10が組み付けられた時点ではほぼ0となるため、0とすることができる。また、初期角度は、スロットルバルブ10が組み付けられたときの角度ずれ等を考慮し、スロットルバルブ10を組み付けたときの全閉状態のときの計測した角度とすることもできる。
【0053】
出力部70は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φをアナログ値に変換した信号を出力する。
【0054】
次に、検出回路2の作動について説明する。図9は、検出回路2の作動を説明するための図である。なお、図9では、符号61a〜61kで示す各ブロックは、信号作成部61が実行する処理の内容、または、その処理によって発生する信号、あるいは、データを示す。
【0055】
図9に示されるように、永久磁石20(スロットルバルブ10)が全閉状態からθ回転すると、第1AMRセンサM1から信号sin2θが出力され、第2AMRセンサM2から信号cos2θが出力される。そして、信号作成部61は、第1、第2差動増幅回路50a、50bから出力される信号からAsin(2θ+α)(61a)およびAsin(2θ−α)(61b)を生成し、Asin(2θ+α)とAsin(2θ−α)とを加算して信号2Asin2θcosαを生成する(61c)と共に、Asin(2θ+α)からAsin(2θ−α)を減算して信号2Acos2θsinαを生成する(61d)。なお、加算は、公知の加算回路を用いて行うことができ、減算は高知の減算回路を用いて行うことができる。
【0056】
また、上記のように位相差αは任意に変更可能であるが、次のようにされていることが好ましい。図10は、入力角度(スロットルバルブ10の回転角度)と出力角度との関係を示す図である。図10に示されるように、後述の演算を行った演算した回転角度φは、αが45°であるときに入力角度(永久磁石20の回転角度)に対してリニアに変化する信号となり、αが45°から離れると入力角度と演算した回転角度との誤差が大きくなる。このため、本実施形態では、位相差α=45°としている。
【0057】
続いて、図9に示されるように、信号作成部61は、信号2Asin2θcosαに信号cos2φおよび(1/cosα)を乗算し、信号2Asin2θcos2φを作成する(61e、61i、61g)。また、信号作成部61は、信号2Acos2θsinαに信号sin2φおよび(1/sinα)を乗算し、信号2Acos2θsin2φを作成する(61f、61h、61j)。これらの乗算は、それぞれ公知の乗算回路を用いて行うことができる。
【0058】
なお、(1/cosα)および(1/sinα)は永久磁石20(スロットルバルブ10)の回転に応じて変化しない係数である。また、cos2φ(61i)およびsin2φ(61j)の各φは、アップダウンカウンタ64のカウント値により変化する変数である。ただし、スロットルバルブ10の検出を開始した1回目の演算(検出開始時)では、φは初期角度記憶部65から読み出された値となる(65)。スロットルバルブ10は、上記のように吸入空気量を調整するものであり、検出開始時、つまり、スロットルバルブ10が回転させられる直前は必ず全閉状態となるためである。
【0059】
続いて、信号作成部61は、信号2Asin2θcos2φから信号2Acos2θsin2φを減算し、信号2Asin(2θ−2φ)、つまり、偏差(2θ−2φ)を変数とするsin信号を作成する(61k)。この減算は、公知の減算回路を用いて行うことができる。
【0060】
次に、偏差算出部62は、信号作成部61が作成した信号2Asin(2θ−2φ)を逆正弦演算(アークサイン演算)し、偏差(2θ−2φ)を求める(62)。
【0061】
続いて、正負判定部63は、偏差算出部62が求めた偏差(2θ−2φ)が正の値であるか負の値であるかを判定する(63)。
【0062】
その後、アップダウンカウンタ64は、正負判定部63の判定結果が正であった場合は、カウンタの最下位ビット(LSB)に1を加算してカウント値を加算し、正負判定部63の判定結果が負であった場合は、カウンタの最下位ビットから1を減算する(64)。このアップダウンカウンタ64のカウント値がデジタル角度、つまり演算した回転角度φとなる(65)。
【0063】
また、信号作成部61は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φ(カウント値)を用い、信号cos2φおよびsin2φを作成する(61i、61j)。これらの信号の作成は、例えば、演算した回転角度φ(カウント値)と、データcos2φおよびsin2φとを対応付けたテーブルを用い、演算した回転角度φに対応付けられているデータcos2φおよびsin2φを読出し、その読出したデータをアナログ信号に変換する手法によって行うことができる。なお、上記のように、スロットルバルブ10の検出を開始した1回目の演算(検出開始時)では、φは初期角度となる(65)。
【0064】
そして、信号作成部61は、再度、信号2Asin2θcosαに信号cos2φおよび(1/cosα)を乗算し、信号2Asin2θcos2φを作成する。また、再度、信号2Acos2θsinαに信号sin2φおよび(1/sinα)を乗算し、信号2Acos2θsin2φを作成する。つまり、偏差(2θ−2φ)が、信号cos2φおよびsin2φにフィードバックされ、偏差(2θ−2φ)が0となるように制御される。
【0065】
また、出力部70は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φをアナログ値に変換した信号を出力する。例えば、出力部70は、アップダウンカウンタ64から出力される演算した回転角度φをアナログ電圧に変換して出力する。図11は、実際の回転角度θと出力部70から出力される演算した回転角度φとの関係を示す図である。
【0066】
図11に示されるように、このような回転角度検出装置では、スロットルバルブ10の回転角度の1回目の演算(検出開始時)において初期角度記憶部65に記憶されている初期角度を読み出して演算を行うため、実際の回転角度θと演算した回転角度φとの検出開始時の誤差を小さくすることができる。
【0067】
なお、上記のような検出回路2では、回転角度θが0〜360°の範囲で演算可能であるが、一般的には永久磁石20(スロットルバルブ10)の回転角度θは0〜90°であるため、出力部70の出力範囲を0〜90°の範囲となるようにしてもよい。また、取り付け誤差等を考慮し、出力部70の出力範囲を0〜120°の範囲となるようにしてもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の回転角度検出装置は、角度演算部60で演算した回転角度φを演算し、演算した回転角度φを用いたフィードバック制御を行っている。このため、経時的に信頼性が低下することを抑制することができる。
【0069】
また、角度演算部60では、検出開始時の演算した回転角度φとしてスロットルバルブ10が全閉状態であるときの角度を用いている。これにより、検出開始時において、永久磁石20(スロットルバルブ10)の実際の回転角度θと演算した回転角度φとの誤差を小さくすることができる(図11参照)。検出開始時では、スロットルバルブ10が必ず全閉状態となるためである。
【0070】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、センサチップ1に第1、第2AMRセンサM1、M2が形成されているものを説明したが、センサチップ1に次のセンサが形成されていてもよい。すなわち、1波長が電気角360°のsin信号を出力するGMR(Giant Magneto-Resistive effect:巨大磁気抵抗効果)センサと、このGMRセンサとの位相差が90°であり、1波長が電気角360°のcos信号を出力するGMRセンサが形成されていてもよい。また、1波長が電気角360°のsin信号を出力するTMR(Tunnel Magneto-Resistive effect:トンネル磁気抵抗効果)センサと、このTMRセンサとの位相差が90°であり、1波長が電気角360°のcos信号を出力するTMRセンサが形成されていてもよい。同様に、1波長が電気角360°のsin信号を出力するホール素子と、このホール素子との位相差が90°であり、1波長が電気角360°のcos信号を出力するホール素子が形成されていてもよい。
【0071】
このように、センサチップ1にGMRセンサ、TMRセンサまたはホール素子が形成されているものを用いた場合には、信号作成部61にて上記と同様の処理が行われて偏差が(θ−φ)であるsin信号が生成される(61k)。このため、正負判定部63は、偏差(θ−φ)が正の値であるか負の値であるかを判定した後、上記と同様にアップダウンカウンタ64のカウント値が加算または減算される。
【0072】
また、上記第1実施形態では、正負判定部63は、偏差(2θ−2φ)が0よりも大きいか否かを判定する例について説明したが、次のようにすることもできる。すなわち、角度演算部60に偏差算出部62を備えずに、正負判定部63は、信号2Asin(2θ−2φ)が0よりも大きいときは正であると判定し、0よりも小さいときは負であると判定するようにしてもよい。
【0073】
さらに、上記第1実施形態において、増幅部50は備えられていなくてもよく、第1、第2AMRセンサM1、M2の信号がそのまま角度演算部60に入力されるようにしてもよい。また、特に図示しないが、フィルター等でノイズを除去するようにしてもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態において、温特補正を行うようにしてもよい。すなわち、センサチップ1に温度検出部を形成し、増幅部50と角度演算部60との間に、温度と第1、第2AMRセンサM1、M2の感度変化に対する補正値とが対応付けられているデータを有する温特補正部を備えてもよい。これにより、温特補正部にて、温度検出部で検出された温度から補正値を読み出し、増幅信号に対して温度に依存する補正値を用いた温特補正を行うことができるため、検出感度が温度に依存することを抑制することができる。
【0075】
さらに、上記第1実施形態において、第1、第2AMRセンサM1、M2を室温(25℃)で最も感度が高くなるように構成してもよい。
【0076】
また、上記第1実施形態では、センサチップ1が円板状の永久磁石20が生成する磁界中に配置される例を説明したが、センサチップ1は次のような永久磁石20が生成する磁界中に配置されていてもよい。図12は、センサチップ1とスロットルバルブ10との配置関係を示す図である。
【0077】
図12(a)に示されるように、永久磁石20は厚さ方向で同じ大きさに2分割されていると共に径方向で同じ大きさに2分割されて4分割され、厚さ方向に分割されたうちのスロットルボディー13側の一方がN極の永久磁石20aとされていると共に他方がS極の永久磁石20bとされ、永久磁石20aの厚さ方向に積層された部分がS極の永久磁石20dとされていると共に永久磁石20bの厚さ方向に積層された部分がN極の永久磁石20eとされていてもよい。
【0078】
また、図12(b)に示されるように、永久磁石20は矩形板状部材とこの部材の両端部に板状部材の面方向と垂直方向に突出した突出部とを有する断面がU字型のものとされていてもよい。
【0079】
さらに、図12(c)に示されるように、永久磁石20である矩形板状部材とこの部材の両端部に板状部材の面方向と垂直方向に突出した鉄等のヨーク部位21とを備えた断面がU字型のものとされていてもよい。
【0080】
これら図12(b)および(c)のように磁気発生部を構成することにより、板状部材から突出した部位の一方から他方に向かう方向に磁界Bが生成されるため、センサチップ1にシリコン基板40の平面方向と平行な方向に磁界Bが印加されることになり、印加される磁界の方向が部分的にばらつくことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 センサチップ
2 検出回路
10 スロットルバルブ
12 吸入通路
20 永久磁石
60 角度演算部
61 信号作成部
62 偏差算出部
63 正負判定部
64 アップダウンカウンタ
70 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入通路(12)内を流れる媒体の流量を制御するスロットルバルブ(10)と一体化して回転する磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置され、前記磁気発生部(20)の回転に応じた第1信号を出力する第1磁電変換素子(M1)と、前記第1信号との間に所定の位相差を有する第2信号を出力する第2磁電変換素子(M2)と、を備え、
前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される前記第1、第2信号を用いて前記磁気発生部(20)の回転角度を求めるスロットルバルブ用回転角度検出装置において、
前記第1信号および前記第2信号を用いて前記磁気発生部(20)の回転角度を演算し、前記磁気発生部(20)の実際の回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行う角度演算部(60)と、
前記角度演算部(60)が演算した回転角度φに対応する信号を出力する出力部(70)と、を備え、
前記角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとして前記スロットルバルブ(10)が全閉状態であるときの角度を用いることを特徴とするスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項2】
前記第1磁電変換素子(M1)は前記磁気発生部(20)の回転に応じてsinNθ信号(Nは自然数)を出力すると共に、前記第2磁電変換素子(M2)は前記磁気発生部(20)の回転に応じてcosNθ信号(Nは自然数)を出力する状態で前記磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置され、
前記角度演算部(60)は、前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力された前記sinNθ信号および前記cosNθ信号に対して所定の演算を行って同じ位相差αを有するsin(Nθ+α)およびsin(Nθ−α)を生成した後、前記sin(Nθ+α)、前記sin(Nθ−α)および前記回転角度φを用いた所定の演算を行うことによってAsin(Nθ−Nφ)信号を生成し、当該Asin(Nθ−Nφ)に基づく偏差(Nθ−Nφ)が前記所定値になるようにフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項3】
前記角度演算部(60)は、前記偏差(Nθ−Nφ)が0になるようにフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項4】
前記角度演算部(60)は、前記回転角度φに対応するカウント値をカウントするカウンタ(64)を備え、前記偏差(Nθ−Nφ)の正負を判定し、その判定結果に基づいて前記カウンタ(64)のカウント値を増減することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項5】
前記角度演算部(60)は、前記sin(Nθ−Nφ)信号を逆正弦演算することにより前記偏差(Nθ−Nφ)を演算し、その演算結果に基いて前記正負を判定することを特徴とする請求項4に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項6】
前記角度演算部(60)は、前記sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも大きいときは前記偏差(Nθ−Nφ)が正であると判定し、前記sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも小さいときは前記偏差(Nθ−Nφ)が負であると判定することを特徴とする請求項4に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項7】
前記角度演算部(60)は、前記検出開始時の演算した回転角度φとして0を用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項8】
前記角度演算部(60)は、前記検出開始時の演算した回転角度φとして、前記スロットルバルブ(10)が前記吸入通路(12)に組みつけられて全閉状態であるときに計測された角度を用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項9】
前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度が入力され、前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される前記第1、第2信号に対して前記温度に応じた補正を行い、補正した信号を前記角度演算部(60)に入力する温特補正部を備えていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項10】
前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)は、それぞれ磁気抵抗素子(R1〜R8)にて構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項1】
吸入通路(12)内を流れる媒体の流量を制御するスロットルバルブ(10)と一体化して回転する磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置され、前記磁気発生部(20)の回転に応じた第1信号を出力する第1磁電変換素子(M1)と、前記第1信号との間に所定の位相差を有する第2信号を出力する第2磁電変換素子(M2)と、を備え、
前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される前記第1、第2信号を用いて前記磁気発生部(20)の回転角度を求めるスロットルバルブ用回転角度検出装置において、
前記第1信号および前記第2信号を用いて前記磁気発生部(20)の回転角度を演算し、前記磁気発生部(20)の実際の回転角度θと演算により求めた回転角度φとの偏差が所定値に収束するようにフィードバック制御を行う角度演算部(60)と、
前記角度演算部(60)が演算した回転角度φに対応する信号を出力する出力部(70)と、を備え、
前記角度演算部(60)は、検出開始時の演算した回転角度φとして前記スロットルバルブ(10)が全閉状態であるときの角度を用いることを特徴とするスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項2】
前記第1磁電変換素子(M1)は前記磁気発生部(20)の回転に応じてsinNθ信号(Nは自然数)を出力すると共に、前記第2磁電変換素子(M2)は前記磁気発生部(20)の回転に応じてcosNθ信号(Nは自然数)を出力する状態で前記磁気発生部(20)が生成する磁界中に配置され、
前記角度演算部(60)は、前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力された前記sinNθ信号および前記cosNθ信号に対して所定の演算を行って同じ位相差αを有するsin(Nθ+α)およびsin(Nθ−α)を生成した後、前記sin(Nθ+α)、前記sin(Nθ−α)および前記回転角度φを用いた所定の演算を行うことによってAsin(Nθ−Nφ)信号を生成し、当該Asin(Nθ−Nφ)に基づく偏差(Nθ−Nφ)が前記所定値になるようにフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項3】
前記角度演算部(60)は、前記偏差(Nθ−Nφ)が0になるようにフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項4】
前記角度演算部(60)は、前記回転角度φに対応するカウント値をカウントするカウンタ(64)を備え、前記偏差(Nθ−Nφ)の正負を判定し、その判定結果に基づいて前記カウンタ(64)のカウント値を増減することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項5】
前記角度演算部(60)は、前記sin(Nθ−Nφ)信号を逆正弦演算することにより前記偏差(Nθ−Nφ)を演算し、その演算結果に基いて前記正負を判定することを特徴とする請求項4に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項6】
前記角度演算部(60)は、前記sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも大きいときは前記偏差(Nθ−Nφ)が正であると判定し、前記sin(Nθ−Nφ)信号が0よりも小さいときは前記偏差(Nθ−Nφ)が負であると判定することを特徴とする請求項4に記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項7】
前記角度演算部(60)は、前記検出開始時の演算した回転角度φとして0を用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項8】
前記角度演算部(60)は、前記検出開始時の演算した回転角度φとして、前記スロットルバルブ(10)が前記吸入通路(12)に組みつけられて全閉状態であるときに計測された角度を用いることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項9】
前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)の温度が入力され、前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)から出力される前記第1、第2信号に対して前記温度に応じた補正を行い、補正した信号を前記角度演算部(60)に入力する温特補正部を備えていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【請求項10】
前記第1、第2磁電変換素子(M1、M2)は、それぞれ磁気抵抗素子(R1〜R8)にて構成されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載のスロットルバルブ用回転角度検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−96898(P2013−96898A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241221(P2011−241221)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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