説明

スローリターン弁

【課題】 流体の流れに抵抗を与える通路が異物によるって詰まるのを抑え、流体の流量を適正に規制する。
【解決手段】
弁体7を構成する第2の筒状突部10の突出端部10Cに切欠き溝12を設け、第2の筒状突部10が弁体収容部5の第2の弁座5Bに着座したときに、切欠き溝12を流れる圧油に抵抗を与える構成とする。これにより、圧油が第1の流路3Aから第2の流路4Aに流れるときには、第2の筒状突部10が第2の弁座5Bに着座することにより、切欠き溝12を通過する圧油に抵抗を与えてその流量を規制することができる。一方、第2の流路4Aから第1の流路3Aへと圧油が流れるときには、第2の筒状突部10が第2の弁座5Bから離座して切欠き溝12が弁体収容部5内に開放されることにより、切欠き溝12に付着した異物を、弁体収容部5内に流込む圧油を利用して除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械に搭載される油圧機器用の油圧回路等に好適に用いられるスローリターン弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、油圧モータ、油圧シリンダ等の各種の油圧アクチュエータを搭載し、これら油圧アクチュエータに対して油圧源からの圧油を給排することにより、土砂の掘削作業等を行なうようになっている。そして、油圧源と油圧アクチュエータとの間を接続する油圧回路内には、通常、例えばスローリターン弁、シャトル弁、チェック弁、リリーフ弁等の各種の流量制御弁が設けられている。
【0003】
ここで、流量制御弁としてのスローリターン弁は、圧油(流体)が流れる流路の途中に設けられ、この流路を圧油が一方向に流れるときには当該圧油が自由に流れるのを許し、圧油が逆方向に流れるときには当該圧油の流れを規制するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−335456号公報
【0005】
ところで、この種の従来技術によるスローリターン弁は、通常、第1の流路と第2の流路とが設けられ該各流路間に弁体収容部が設けられた弁ケーシングと、該弁ケーシングの弁体収容部内に配置された弁体とにより構成され、この弁体には小径な油孔等からなる絞り通路が穿設されている。
【0006】
そして、圧油が第1,第2の油路を一方向に流れるときには、弁体が弁座から離座して開弁することにより当該圧油が自由に流れるのを許し、圧油が第1,第2の油路を逆方向に流れるときには、弁体が弁座に着座した状態で当該弁体に形成された絞り通路を圧油が流れることにより、この圧油の流れに抵抗を与えて流量を規制するようになっている。従って、弁体に穿設される絞り通路の断面積(流路面積)を小さくすることにより、第1,第2の油路を逆方向に流れる圧油の流量をさらに減少させることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、弁体に穿設される絞り通路の断面積を小さくした場合には、圧油に混入したごみ等の異物が絞り通路に詰まり易くなる。このため、例えば絞り通路に詰まった異物によって必要以上に流量が規制されたり、絞り通路が異物によって閉塞されることにより圧油が完全に流れなくなるといった不具合が発生し、油圧アクチュエータの適正な作動が損なわれるという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、流体の流れに抵抗を与える通路が異物によるって詰まるのを抑え、流体の流量を適正に規制することができるようにしたスローリターン弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため本発明は、第1の流路と第2の流路とが設けられ該各流路間に弁体収容部が設けられた弁ケーシングと、該弁ケーシングの弁体収容部内に配置され、前記第1,第2の流路を一方向に流れる流体は規制せず逆方向に流れる流体を規制する弁体とを備えてなるスローリターン弁に適用される。
【0010】
そして、請求項1の発明の特徴は、前記弁体は、前記弁体収容部内に板厚方向に移動可能に設けられた板状体と、前記第1の流路を取囲むように前記板状体から板厚方向に突設された第1の筒状突部と、前記第2の流路を取囲むように前記板状体から板厚方向に突設され突出端部が前記第2の流路側に設けられた弁座に離着座する第2の筒状突部と、前記第1の筒状突部の内周側と前記第2の筒状突部の外周側とを連通する連通路と、前記第2の筒状突部の一部を切欠くことにより形成され前記第2の筒状突部が前記第2の流路側の弁座に着座したときに流体の流れに抵抗を与える切欠き溝とにより構成したことにある。
【0011】
請求項2の発明は、前記連通路は、前記板状体の板厚方向に貫通する貫通孔により構成したことにある。
【0012】
請求項3の発明は、前記連通路は、前記板状体の外周面と前記第1の筒状突部とにわたって板厚方向に切欠くことにより形成された外周溝により構成したことにある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、例えば流体が第2の流路から第1の流路に向けて一方向に流れるときには、弁ケーシングの弁体収容部内に配置された弁体が、第1の流路側へと移動することにより、該弁体の第2の筒状突部が第2の流路側の弁座から離座する。これにより、第2の流路から弁体収容部内に流込んだ流体は、板状体に設けられた連通路を通じて第1の筒状突部の内周側へと導かれ、規制されることなく第1の流路へと流れることができる。
【0014】
一方、流体が第1の流路から第2の流路に向けて逆方向に流れるときには、弁ケーシングの弁体収容部内に配置された弁体が、第2の流路側へと移動することにより、該弁体の第2の筒状突部が第2の流路側の弁座に着座する。このとき、第2の筒状突部に設けた切欠き溝と弁座との間には、連通路に比較して小さな流路面積を有する通路(絞り通路)が形成される。これにより、第1の流路から弁体収容部内に流込んだ流体は、弁体の板状体に設けられた連通路を通じて第2の筒状突部の外周側へと導かれた後、第2の筒状突部の切欠き溝を通じて第2の流路へと流れるので、この切欠き溝によって流体に抵抗を与え流量を適宜に規制することができる。
【0015】
この場合、切欠き溝は、第2の筒状突部が第2の流路側の弁座に着座したときにのみ当該弁座との間に絞り通路を形成するもので、第2の筒状突部が弁座から離座したときには、弁体収容部内で開放されるものである。従って、例えば流体に混入したごみ等の異物が切欠き溝に付着したとしても、流体が第2の流路から第1の流路に向けて一方向に流れるときに、弁体の第2の筒状突部が第2の流路側の弁座から離座することにより、弁体収容部内に流込んだ流体によって、異物を切欠き溝から容易に除去することができる。
【0016】
このように、第2の筒状突部に設けた切欠き溝と弁座との間に形成される通路が、異物によって詰まるのを確実に抑えることができるので、異物によって必要以上に流量が規制されるといった不具合を防止でき、油圧アクチュエータを常時適正に作動させることができる。また、切欠き溝と弁座との間に形成される通路に異物が詰まることがない分、当該通路の断面積(流路面積)を小さく設定することができるので、流体の流量を調整する範囲を広げることができる。さらに、弁体収容部内に配置される弁体を、板厚方向に移動する板状体等によって構成したので、当該弁体の小型軽量化を図ることができ、スローリターン弁の応答性を高めると共に、装置全体の小型化にも寄与することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、流体が第2の流路から第1の流路に向けて一方向に流れるときには、この流体は、第2の流路から板状体に設けた貫通孔を通じて第1の筒状突部の内周側へと導かれた後、規制されることなく第1の流路へと流れることができる。一方、流体が第1の流路から第2の流路に向けて逆方向に流れるときには、この流体は、第1の流路から貫通孔を通じて第2の筒状突部の外周側へと導かれた後、第2の筒状突部に形成された切欠き溝によって流量を規制されつつ第2の流路へと流れることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、流体が第2の流路から第1の流路に向けて一方向に流れるときには、この流体は、第2の流路から外周溝を通じて第1の筒状突部の内周側へと導かれた後、規制されることなく第1の流路へと流れることができる。一方、流体が第1の流路から第2の流路に向けて逆方向に流れるときには、この流体は、第1の流路から外周溝を通じて第2の筒状突部の外周側へと導かれた後、第2の筒状突部の切欠き溝によって流量を規制されつつ第2の流路へと流れることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るスローリターン弁の実施の形態を図1ないし図10を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
まず、図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1はスローリターン弁(流量制御弁)で、該スローリターン弁1は、例えば油圧源からの圧油を油圧シリンダ(いずれも図示せず)に給排する流路の途中に設けられ、油圧シリンダのロッドが伸長するときと縮小するときの移動速度を適宜に変化させるものである。そして、スローリターン弁1は、後述の弁ケーシング2と、弁体7とにより大略構成されている。
【0021】
2はスローリターン弁1を構成する弁ケーシングで、該弁ケーシング2は、例えば一対のブロック3,4によって構成されている。ここで、一方のブロック3には第1の流路3Aが形成され、他方のブロック4には第2の流路4Aが形成され、これら第1,第2の流路3A,4Aは、後述の弁体収容部5を挟んで同心上に配置されている。そして、油圧源からの圧油(流体)は、これら第1,第2の流路3A,4A等を通じて油圧シリンダに給排される構成となっている。
【0022】
5は弁ケーシング2を構成するブロック3に設けられた弁体収容部で、該弁体収容部5は、第1の流路3Aと第2の流路4Aとの間に配置され、後述の弁体7を収容するものである。ここで、弁体収容部5は、全体として第1の流路3Aよりも大径な円形孔として形成され、後述する第1の筒状突部9が着座する第1の弁座5Aと、該第1の弁座5Aと対面し後述する第2の筒状突部10が着座する第2の弁座5Bと、これら第1,第2の弁座5A,5B間に位置する内周面5Cとによって囲まれている。そして、弁体収容部5の外周側には、弁ケーシング2を構成するブロック3,4間を液密にシールするOリング6が配設されている。
【0023】
7は弁ケーシング2の弁体収容部5内に配置された弁体で、該弁体7は、第1,第2の流路3A,4Aを一方向に流れる流体の流量は規制せず、逆方向に流れる流体の流量のみを規制するものである。そして、弁体7は、図3等に示すように全体として薄肉な円板状をなし、後述の板状体8、第1の筒状突部9、第2の筒状突部10、貫通孔11、切欠き溝12等によって構成されている。
【0024】
8は弁体7のベースとなる板状体で、この板状体8は、弁体収容部5の内径寸法よりも小さな外径寸法を有する薄肉な円板状に形成され、弁体収容部5内を板厚方向に移動するものである。そして、板状体8のうち第1の流路3Aと対向する一方の面8Aには、後述する第1の筒状突部9が一体形成され、板状体8のうち第2の流路4Aと対向する他方の面8Bには、後述する第2の筒状突部10が一体形成されている。
【0025】
9は板状体8の一方の面8Aに一体形成された第1の筒状突部で、該第1の筒状突部9は、第1の流路3Aを外周側から取囲む円筒状に形成され、板状体8の一方の面8Aから第1の流路3Aに向けて突出している。また、第1の筒状突部9の外周面9Aは、板状体8の外周面と等しい外径寸法を有し、第1の筒状突部9の内周面9Bは、第1の流路3Aの内径寸法よりも大きな内径寸法を有している。
【0026】
ここで、図1に示すように、第2の流路4Aから第1の流路3Aに向けて矢示F1方向(一方向)に圧油が流れるときには、第1の筒状突部9の突出端部9Cが、弁体収容部5の第1の弁座5Aに着座する。そして、第1の筒状突部9の突出端部9Cが弁体収容部5の第1の弁座5Aに着座したときには、後述する第2の筒状突部10の突出端部10Cが、弁体収容部5の第2の弁座5Bから離座し、両者間には間隔Tの隙間が形成される構成となっている。
【0027】
10は板状体8の他方の面8Bに一体形成された第2の筒状突部で、該第2の筒状突部10は、第2の流路4Aを外周側から取囲む円筒状に形成され、第1の筒状突部9と同心上に配置された状態で、板状体8の他方の面8Bから第2の流路4Aに向けて突出している。また、第2の筒状突部10の外周面10Aは、第1の筒状突部9の内周面9Bよりも小さな外径寸法を有し、第2の筒状突部10の内周面10Bは、第2の流路4Aの内径寸法よりも大きな内径寸法を有している。
【0028】
ここで、図2に示すように、第1の流路3Aから第2の流路4Aに向けて矢示F2方向(逆方向)に圧油が流れるときには、第2の筒状突部10の突出端部10Cが、弁体収容部5の第2の弁座5Bに着座する。そして、第2の筒状突部10の突出端部10Cが弁体収容部5の第2の弁座5Bに着座したときには、第1の筒状突部9の突出端部9Cが、弁体収容部5の第1の弁座5Aから離座し、両者間には間隔Tの隙間が形成される構成となっている。
【0029】
11は板状体8に設けられた連通路としての貫通孔で、該貫通孔11は、板状体8の一方の面8Aから他方の面8Bへと貫通している。そして、貫通孔11は、第1の筒状突部9の内周側(内周面9Bの内側)と第2の筒状突部10の外周側(外周面10Aの外側)とを連通させ、両者間で圧油を流通させるものである。ここで、貫通孔11は、後述の絞り通路13に比較して十分に大きな断面積(流路面積)を有しており、第1,第2の流路3A,4A間を流れる圧油が、その流量を規制されることなく貫通孔11を通過することができる構成となっている。
【0030】
12は第2の筒状突部10の一部に設けられた切欠き溝で、該切欠き溝12は、第2の筒状突部10が第2の弁座5Bに着座したときに圧油の流れに抵抗を与えるものである。ここで、切欠き溝12は、第2の筒状突部10の突出端部10Cを径方向に切欠くことにより、三角形の断面形状を有する溝として形成されている。
【0031】
そして、図2に示すように、第2の筒状突部10の突出端部10Cが弁体収容部5の第2の弁座5Bに着座したときに、切欠き溝12と第2の弁座5Bとの間には、貫通孔11に比較して十分に小さな断面積(流路面積)を有する断面三角形状の絞り通路13が形成される。従って、第1,第2の流路3A,4A間を流れる圧油は、第2の弁座5Bとの間に絞り通路13を形成する切欠き溝12によって抵抗を与えられ、絞り通路13の断面積に応じてその流量が規制される構成となっている。
【0032】
この場合、切欠き溝12は、図2に示す如く第2の筒状突部10が第2の弁座5Bに着座したときにのみ、当該第2の弁座5Bとの間に絞り通路13を形成するもので、図1に示す如く第2の筒状突部10が第2の弁座5Bから離座したときには、絞り通路13は無くなり、切欠き溝12は弁体収容部5内で開放される構成となっている。
【0033】
本実施の形態によるスローリターン弁1は上述の如き構成を有するもので、以下、その作動について説明する。
【0034】
まず、図1中に矢示F1で示すように、圧油が第2の流路4Aから第1の流路3Aに向けて一方向に流れるときには、弁体7が第1の流路3A側へと移動し、第1の筒状突部9の突出端部9Cが、弁体収容部5の第1の弁座5Aに着座する。このとき、第2の筒状突部10の突出端部10Cは、弁体収容部5の第2の弁座5Bから離座し、両者間には間隔Tの隙間が形成される。
【0035】
これにより、第2の流路4Aから弁体収容部5内に圧油が流込み、この圧油は、板状体8に設けた貫通孔11を通じて第1の筒状突部9の内周側(内周面9Bの内側)へと導かれた後、弁体収容部5から第1の流路3Aへと流れる。この場合、貫通孔11は、絞り通路13に比較して十分に大きな断面積を有しているので、圧油はその流量を規制されることなく第2の流路4Aから第1の流路3Aへと流れることができる。
【0036】
一方、図2中に矢示F2で示すように、圧油が第1の流路3Aから第2の流路4Aに向けて逆方向に流れるときには、弁体7が第2の流路4A側へと移動し、第2の筒状突部10の突出端部10Cが弁体収容部5の第2の弁座5Bに着座する。この場合、第2の筒状突部10には切欠き溝12が設けられているので、第2の筒状突部10が第2の弁座5Bに向けて移動するときに切欠き溝12が圧油に流動抵抗を与えることにより、第2の筒状突部10は緩やかに第2の弁座5Bに着座することができる。
【0037】
そして、第2の筒状突部10の突出端部10Cが第2の弁座5Bに着座した状態では、突出端部10Cに設けた切欠き溝12と第2の弁座5Bとの間には、貫通孔11に比較して十分に小さな断面積を有する絞り通路13が形成される。また、第1の筒状突部9の突出端部9Cは、弁体収容部5の第1の弁座5Aから離座し、両者間には間隔Tの隙間が形成される。
【0038】
これにより、第1の流路3Aから弁体収容部5内に流込んだ圧油は、板状体8に設けられた貫通孔11を通じて第2の筒状突部10の外周側(外周面10Aの外側)へと導かれ、第2の筒状突部10の切欠き溝12と第2の弁座5Bとの間に形成された絞り通路13を通じて、第2の筒状突部10の内周側(内周面10Bの内側)に導かれた後、第2の流路4Aへと流れる。
【0039】
この場合、切欠き溝12と第2の弁座5Bとの間に形成された絞り通路13の断面積は、貫通孔11に比較して十分に小さく設定されている。従って、第1の流路3Aから第2の流路4Aに向けて逆方向に流れる圧油に対し、第2の弁座5Bとの間に絞り通路13を形成する切欠き溝12によって抵抗を与え、絞り通路13の断面積に応じてその流量を規制することができる。
【0040】
かくして、本実施の形態によれば、第2の流路4Aから第1の流路3Aへと一方向に圧油が流れるときには、当該圧油の流れを規制することなく自由に流通させ、第1の流路3Aから第2の流路4Aへと逆方向に圧油が流れるときには、第2の筒状突部10に設けた切欠き溝12によって圧油に抵抗を与え、その流量を規制することができる。従って、例えば油圧源からの圧油を油圧シリンダ(いずれも図示せず)に給排する流路の途中に、本実施の形態によるスローリターン弁1を設けることにより、油圧シリンダのロッドが伸長するときの速度と縮小するときの速度とを適宜に変化させることができる。
【0041】
ここで、切欠き溝12は、図2に示す如く第2の筒状突部10が第2の弁座5Bに着座したときにのみ、当該第2の弁座5Bとの間に絞り通路13を形成するもので、図1に示す如く第2の筒状突部10が第2の弁座5Bから離座したときには、絞り通路13は無くなり、切欠き溝12は弁体収容部5内で開放される。
【0042】
従って、図2に示す如く第1の流路3Aから第2の流路4Aへと圧油が流れるときに、例えば圧油に混入したごみ等の異物が、絞り通路13を構成する切欠き溝12に付着したとしても、図1に示す如く第2の流路4Aから第1の流路3Aへと圧油が流れるときに、第2の筒状突部10が第2の弁座5Bから離座することにより、弁体収容部5内に流込んだ圧油を利用して、異物を切欠き溝12から容易に除去することができる。
【0043】
この結果、切欠き溝12と第2の弁座5Bとの間に形成される絞り通路13に異物が詰まるのを確実に抑えることができるので、異物によって必要以上に流量が規制されるといった不具合を防止でき、油圧シリンダ等の油圧アクチュエータを常時適正に作動させることができる。
【0044】
また、切欠き溝12と第2の弁座5Bとの間に形成される絞り通路13に異物が詰まることがない分、当該絞り通路13の断面積(流路面積)を小さく設定することができるので、圧油の流量を調整する範囲を広げることができる。
【0045】
さらに、弁体収容部5内に配置される弁体7を、板厚方向に移動する板状体8等によって構成したので、当該弁体7の小型軽量化を図ることができ、スローリターン弁1の応答性を高めると共に、装置全体の小型化にも寄与することができる。
【0046】
次に、図4ないし図6は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、弁体の板状体に複数個の貫通孔(連通路)を設けたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0047】
図中、21は本実施の形態によるスローリターン弁で、該スローリターン弁21は、第1の実施の形態によるスローリターン弁1と同様に、弁ケーシング2と、弁体22とにより大略構成されているものの、弁体22の構成が、第1の実施の形態による弁体7とは異なるものである。
【0048】
22は弁ケーシング2の弁体収容部5内に配置された弁体で、該弁体22は、第1の実施の形態による弁体7に代えて本実施の形態に用いたもので、図6等に示すように、後述の板状体23、第1の筒状突部24、第2の筒状突部25、各貫通孔26、切欠き溝27等により構成されている。
【0049】
23は弁体22のベースとなる板状体で、この板状体23は、弁体収容部5の内径寸法よりも小さな外径寸法を有する薄肉な円板状に形成され、弁体収容部5内を板厚方向に移動するものである。そして、板状体23のうち第1の流路3Aと対向する一方の面23Aには、第1の流路3Aを外周側から取囲むように第1の筒状突部24が一体形成され、板状体23のうち第2の流路4Aと対向する他方の面23Bには、第2の流路4Aを外周側から取囲むように第2の筒状突部25が一体形成されている。
【0050】
ここで、第1の筒状突部24は、第1の実施の形態による第1の筒状突部9と同様に、板状体23の外周面と等しい外径寸法を有する外周面24Aと、第1の流路3Aの内径寸法よりも大きな内径寸法を有する内周面24Bと、弁体収容部5の第1の弁座5Aに離着座する環状な突出端部24Cとを有している。一方、第2の筒状突部25は、第1の実施の形態による第2の筒状突部10と同様に、第1の筒状突部24の内周面24Bよりも小さな外径寸法を有する外周面25Aと、第2の流路4Aの内径寸法よりも大きな内径寸法を有する内周面25Bと、弁体収容部5の第2の弁座5Bに離着座する環状な突出端部25Cとを有している。
【0051】
26,26,…は板状体23に設けられた連通路としての4個の貫通孔で、該各貫通孔26は、互いに一定の角度間隔(90°)をもって第2の筒状突部25を取囲むように配置され、板状体23の一方の面23Aから他方の面23Bへと貫通している。そして、各貫通孔26は、第1の筒状突部24の内周側(内周面24Bの内側)と第2の筒状突部25の外周側(外周面25Aの外側)とを連通させることにより、両者間で圧油を流通させるものである。
【0052】
27は第2の筒状突部25の突出端部25Cを径方向に切欠くことにより形成された切欠き溝で、該切欠き溝27は、図5に示すように、第2の筒状突部25の突出端部25Cが第2の弁座5Bに着座したときに、この第2の弁座5Bとの間に小さな断面積を有する絞り通路28を形成するものである。これにより、第1,第2の流路3A,4A間を流れる圧油は、切欠き溝27によって抵抗を与えられ、絞り通路28の断面積に応じてその流量が規制される構成となっている。
【0053】
本実施の形態によるスローリターン弁21は上述の如き構成を有するもので、図5中に矢示F2で示すように、圧油が第1の流路3Aから第2の流路4Aに向けて逆方向に流れるときには、第1の実施の形態と同様に、第2の筒状突部25(突出端部25C)に設けた切欠き溝27によって、第1の流路3Aから第2の流路4Aへと流れる圧油に抵抗を与え、その流量を規制することができる。
【0054】
然るに、本実施の形態によれば、図4中に矢示F1で示すように、圧油が第2の流路4Aから第1の流路3Aに向けて一方向に流れるときには、第2の流路4Aから弁体収容部5内に流込んだ圧油は、板状体23に設けた4個の貫通孔26を通じて第1の流路3Aへと流れるので、第2の流路4Aから第1の流路3Aに向けて大量の圧油を流すことができる。
【0055】
このため、圧油に混入したごみ等の異物が切欠き溝27に付着したとしても、図4に示す如く切欠き溝27を弁体収容部5内に開放した状態で、第2の流路4Aから各貫通孔26を通じて弁体収容部5内に大量の圧油を流入させることにより、切欠き溝27に付着した異物を確実に除去することができる。
【0056】
次に、図7ないし図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、板状体の外周面と第1の筒状突部とにわたって板厚方向に切欠かれた外周溝によって連通路を構成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
図中、31は本実施の形態によるスローリターン弁で、該スローリターン弁31は、第1の実施の形態によるスローリターン弁1と同様に、弁ケーシング2と、弁体32とにより大略構成されているものの、弁体32の構成が、第1の実施の形態による弁体7とは異なるものである。
【0058】
32は弁ケーシング2の弁体収容部5内に配置された弁体で、該弁体32は、第1の実施の形態による弁体7に代えて本実施の形態に用いたもので、図9等に示すように、後述の板状体33、第1の筒状突部34、第2の筒状突部35、各外周溝36、切欠き溝37等により構成されている。
【0059】
33は弁体32のベースとなる板状体で、この板状体33は、弁体収容部5の内径寸法よりも小さな外径寸法を有する薄肉な円板状に形成され、弁体収容部5内を板厚方向に移動するものである。そして、板状体33のうち第1の流路3Aと対向する一方の面33Aには、第1の流路3Aを外周側から取囲むように第1の筒状突部34が一体形成され、板状体33のうち第2の流路4Aと対向する他方の面33Bには、第2の流路4Aを外周側から取囲むように第2の筒状突部35が一体形成されている。
【0060】
ここで、第1の筒状突部34は、第1の実施の形態による第1の筒状突部9と同様に、板状体33の外周面と等しい外径寸法を有する外周面34Aと、第1の流路3Aの内径寸法よりも大きな内径寸法を有する内周面34Bと、弁体収容部5の第1の弁座5Aに離着座する環状な突出端部34Cとを有している。一方、第2の筒状突部35は、第1の実施の形態による第2の筒状突部10と同様に、第1の筒状突部34の内周面34Bよりも小さな外径寸法を有する外周面35Aと、第2の流路4Aの内径寸法よりも大きな内径寸法を有する内周面35Bと、弁体収容部5の第2の弁座5Bに離着座する環状な突出端部35Cとを有している。
【0061】
36,36,…は板状体33と第1の筒状突部34とにわたって設けられた連通路としての4個の外周溝で、該各外周溝36は、弁体収容部5の内周面5Cと対面する板状体33の外周面33Cと、第1の筒状突部9とを板厚方向に切欠くことにより形成され、互いに一定の角度間隔(90°)をもって配置されている。そして、各外周溝36は、第1の筒状突部34の内周側(内周面34Bの内側)と第2の筒状突部35の外周側(外周面35Aの外側)との間を連通し、両者間で圧油を流通させるものである。
【0062】
37は第2の筒状突部35の突出端部35Cを径方向に切欠くことにより形成された切欠き溝で、該切欠き溝37は、図8に示すように、第2の筒状突部35の突出端部35Cが第2の弁座5Bに着座したときに、この第2の弁座5Bとの間に小さな断面積を有する絞り通路38を形成するものである。これにより、第1,第2の流路3A,4A間を流れる圧油は、切欠き溝37によって抵抗を与えられ、絞り通路38の断面積に応じてその流量が規制される構成となっている。
【0063】
本実施の形態によるスローリターン弁31は上述の如き構成を有するもので、図8中に矢示F2で示すように、圧油が第1の流路3Aから第2の流路4Aに向けて逆方向に流れるときには、第1の実施の形態と同様に、第2の筒状突部35(突出端部35C)に設けた切欠き溝37によって、第1の流路3Aから第2の流路4Aへと流れる圧油に抵抗を与え、その流量を規制することができる。
【0064】
然るに、本実施の形態によれば、図7中に矢示F1で示すように、圧油が第2の流路4Aから第1の流路3Aに向けて一方向に流れるときには、第2の流路4Aから弁体収容部5内に流込んだ圧油は、板状体33の外周面33Cと第1の筒状突部34とに設けた4個の外周溝36を通じて第1の流路3Aへと流れるので、第2の流路4Aから第1の流路3Aに向けて大量の圧油を流すことができる。
【0065】
このため、圧油に混入したごみ等の異物が切欠き溝37に付着したとしても、図7に示す如く切欠き溝37を弁体収容部5内に開放した状態で、第2の流路4Aから各外周溝36を通じて弁体収容部5内に大量の圧油を流入させることにより、切欠き溝37に付着した異物を確実に除去することができる。
【0066】
なお、上述した第1の実施の形態では、第2の筒状突部10の突出端部10Cに、三角形の断面形状を有する切欠き溝12を1個のみ設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図10に示す変形例による弁体7′のように、半円形の断面形状を有する切欠き溝12′を複数個(例えば2個)設ける構成としてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0067】
また、上述した第1の実施の形態では、弁体7を構成する第1の筒状突部9と第2の筒状突部10とを、それぞれ環状(円筒状)に形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、第1,第2の筒状突部をそれぞれ角筒状に形成してもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスローリターン弁を、弁体が第2の弁座から離座した状態で示す断面図である。
【図2】スローリターン弁を、弁体が第2の弁座に着座した状態で示す断面図である。
【図3】図1中の弁体を単体で示す斜視図である。
【図4】第2の実施の形態によるスローリターン弁を、弁体が第2の弁座から離座した状態で示す断面図である。
【図5】スローリターン弁を、弁体が第2の弁座に着座した状態で示す断面図である。
【図6】図4中の弁体を単体で示す斜視図である。
【図7】第3の実施の形態によるスローリターン弁を、弁体が第2の弁座から離座した状態で示す断面図である。
【図8】スローリターン弁を、弁体が第2の弁座に着座した状態で示す断面図である。
【図9】図7中の弁体を単体で示す斜視図である。
【図10】弁体の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1,21,31 スローリターン弁
2 弁ケーシング
3A 第1の流路
4A 第2の流路
5 弁体収容部
5A 第1の弁座
5B 第2の弁座
7,7′,22,32 弁体
8,23,33 板状体
9,24,34 第1の筒状突部
10,25,35 第2の筒状突部
10C,25C,35C 突出端部
11,26 貫通孔(連通路)
12,12′,27,37 切欠き溝
36 外周溝(連通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流路と第2の流路とが設けられ該各流路間に弁体収容部が設けられた弁ケーシングと、該弁ケーシングの弁体収容部内に配置され、前記第1,第2の流路を一方向に流れる流体は規制せず逆方向に流れる流体を規制する弁体とを備えてなるスローリターン弁において、
前記弁体は、前記弁体収容部内に板厚方向に移動可能に設けられた板状体と、前記第1の流路を取囲むように前記板状体から板厚方向に突設された第1の筒状突部と、前記第2の流路を取囲むように前記板状体から板厚方向に突設され突出端部が前記第2の流路側に設けられた弁座に離着座する第2の筒状突部と、前記第1の筒状突部の内周側と前記第2の筒状突部の外周側とを連通する連通路と、前記第2の筒状突部の一部を切欠くことにより形成され前記第2の筒状突部が前記第2の流路側の弁座に着座したときに流体の流れに抵抗を与える切欠き溝とにより構成したことを特徴とするスローリターン弁。
【請求項2】
前記連通路は、前記板状体の板厚方向に貫通する貫通孔により構成してなる請求項1に記載のスローリターン弁。
【請求項3】
前記連通路は、前記板状体の外周面と前記第1の筒状突部とにわたって板厚方向に切欠くことにより形成された外周溝により構成してなる請求項1に記載のスローリターン弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−255445(P2007−255445A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77086(P2006−77086)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】