スーパー抗体の合成並びに疾患の検出、予防及び治療における使用
自己好性、触媒性及び/又は膜貫通性特性が強化されたスーパー抗体が、光活性化可能有機分子の標的免疫グロブリンに対する親和性に依存する結合によって製造される。光活性化可能有機分子は芳香族炭化水素の発色団部分をもち、前記は免疫グロブリンに対して親和性を有する。光分解に際して、前記有機分子は免疫グロブリンと共有結合する。好ましい有機分子はペプチドであり、好ましい芳香族炭化水素部分はトリプトファン残基である。前記光活性化可能有機分子は、免疫グロブリンとの結合及び/又は光活性化の達成にプリン、ピリミジン、又はアジド基の保有を必要としない。スーパー抗体は、標的抗体の潜在能力を増強し、さらに標的誘導範囲を広大することができる。自己好性スーパー抗体は、標的細胞のアポトーシスを促進し、及び/又は抗体療法に応答する疾患又は症状をもつ患者の治療で治療効果を高めることができる。そのような疾患の例は、アテローム性動脈硬化症及び心脈管系疾患である。膜貫通性スーパー抗体は、細胞内抗カスパーゼシグナルタンパク質と結合することによってアポトーシスを防ぐことができる。スーパー抗体を含む組成物が、前記を製造及び使用する方法とともに開示される。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の参照
本願は米国特許出願第11/119,404号(出願日:2005年4月29日)の一部継続出願であり、その出願は米国特許出願第10/652,864号(出願日:2003年8月29日)(米国仮特許出願第60/407,421号(出願日:2002年8月30日)の利益を主張する)の一部継続出願であり、その出願は米国特許出願第09/865,281号(出願日:2001年5月29日)の一部継続出願であり、その出願は米国特許出願第09/070,907号(出願日:1998年5月4日)(現在、特許第6,238,667号)の一部継続出願である。上記出願の開示は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、抗体、抗体の作成方法、並びに多様な症状の検出、予防及び/又は治療における抗体の使用方法に関する。
【0003】
背景技術
抗体は、慢性疾患、例えば癌及び自己免疫疾患の処置のための主要な治療ツールとして出現した。重要な成功例には、乳癌治療におけるハーセプチン(Herceptin(商標))及び非ホジキンリンパ腫の治療におけるリツキサン(Rituxan(商標))が含まれる。疾患の治療における抗体の主要な利点は、疾患誘導細胞又は分子を標的とするが、身体の健康な組織及び正常産物を傷つけないそれらの能力にある。しかしながら、実験室での研究で所望の特異性を示す抗体が、非効率的な標的誘導性、低い治療効果及び/又は許容不能な副作用のために前臨床及び臨床評価ではしばしば成功しない。
治療用抗体がそれらの標的細胞に対して有効である主要なメカニズムは、細胞死を誘発すること、すなわち抗体誘発アポトーシスによることが知られている。そのような誘発アポトーシスは典型的には、細胞のアポトーシスシグナル経路の一部分であるレセプターを架橋することによって始動される。例えば、抗体の手段によるB細胞抗原レセプターの架橋は、B細胞腫瘍のアポトーシスを誘発する(M. Ghetie et al, 1997)。細胞レセプターの架橋はまた抗体のその標的抗原への結合親和力を高め、したがって全ての細胞表面依存性治療メカニズム、例えば、補体仲介殺滅並びに補体依存性オプソニン化及び食作用、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を高めるとともに、細胞レセプターを標的とする抗体を用いたときには、細胞レセプターとの結合強化及び封鎖を介して細胞増殖阻害の強化又は細胞内代謝経路の変化をもたらすであろう。
【0004】
希少クラスの自己結合抗体(“自己好性(autophilic)抗体”又は“自己抗体”として多様な形で知られている)が自然界で同定されている。それらは、自己との非共有結合的相互作用を介してダイマー及び/又はポリマーを形成することができる。自己好性抗体のある例はTEPC-15であり、前記はアポトーシス細胞及びアテローム性動脈硬化症病巣のホスホリルコリンの通常は隠蔽された決定基を標的とする(J. Binder et al. 2003;C-Y. Kang et al. 1988)。ダイマー化又はマルチマー化は、改変抗体がその細胞表面標的に付着した後でのみ誘発されえる(すなわち“弁別的オリゴマー化”)。溶液中では、自己好性抗体はそのモノマー形とダイマー形の間で平衡を保つことができる(S. Kaveri et al. 1990)。
自己好性抗体はより大きなクラスに属する(本明細書では“スーパー抗体(商標)(SuperAntibodiesTM)”と称する)。本明細書で用いられるスーパー抗体は、通常的に抗体に付随する抗原結合特性の他に1つ以上の有利な特性を示す(H. Kohler et al. 1998;H. Kohler 2000)。特にこのクラスのスーパー抗体は、触媒的、アジュバント的、膜貫通性、及び/又は自己好性特性を有する抗体を含み、優れた標的誘導性及び治療特性をもつ分子が含まれる。そのようなスーパー抗体はキメラであると考えられ、典型的には、少なくとも1つの非抗体成分(例えばペプチドであって、前記ペプチドは触媒的、アジュバント的、膜貫通性、及び/又は自己好性特性を有する)に共有結合した抗体又は抗体フラグメントを含む。ある種のペプチドと抗体の結合は、抗体の能力(例えばアポトーシス誘発の能力)を高めることが示された(Zhao et al. 2001;Zhao et al. 2002a;Zhao et al. 2002b)。以前の実験で用いられた結合化学はヌクレオチド結合部位を利用するか(Pavlinkova et al. 1997)又は特異的結合部位として抗体の炭水化物部分を利用した(Award et al. 1994)。
【0005】
既知の抗体の抗原検出及び/又は治療有効性を高めるために、2つの別個の共有結合ドメインを含む多くのハイブリッド分子が提案された。例えば、米国特許5,219,996号(Bodmer et al.)は、抗体分子のアミノ酸残基のシステイン残基への変更とそれに続くシステインチオール基によるエフェクターまたはレポーター分子の抗体への結合を提唱している。米国特許5,191,066号(Bieniarz et al.)は、免疫グロブリンのFc領域での炭水化物分子の過ヨウ素酸酸化及び前記とジスルフィド化合物の結合を提唱している。米国特許6,218,160号(Duan)は、酵素と抗体との間にジヒドラゾン架橋を形成することによる酵素と抗体の位置特異的結合を提唱している。米国特許5,596,081号(Haley et al.)は、抗体分子へのプリン又はプリン類似体光親和性化合物の位置特異的結合のための方法を開示する。米国特許6,238,667号(Kohler)は、抗体上のプリン又はトリプトファン親和性部位でアジド-ペプチド分子を光化学的に抗体に架橋することを提唱する。米国特許公開公報2005/0033033(Kohler et al.)は、細胞アポトーシスを阻害するスーパー抗体を提唱する。前記文献では、スーパー抗体は、膜トランスポーターペプチドに結合した抗カスパーゼ抗体を含む。米国特許公開公報2003/0103984(Kohler)は抗体及びペプチドドメインを含む融合タンパク質を開示し、前記融合タンパク質では、ペプチドドメインは自己好性活性を示すことができる。米国特許6,482,586号(Arab et al.)は、細胞内標的誘導で使用される共有結合ハイブリッド組成物を提唱する。米国特許6,06,693号(Thorpe et al.)は、腫瘍血管の管腔表面のアミノリン脂質に結合させることによって癌を治療することを目的とする抗体及びコンジュゲートを提唱する。米国特許6,780,605号(Frostegard et al.)は、血小板活性化因子に特異的な抗体を用いる心脈管系疾患を診断する方法を提唱する。米国特許6,716,410号(Witztum et al.)は、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)に対して特異的な結合親和性を有するモノクローナル抗体を用いる、アテローム性動脈硬化症のための治療を提唱する。前記抗体は治療薬剤(例えば血栓溶解剤)と共有結合されている。米国特許公開公報2003/0143226(Kobayashi et al.)は、酸化LDLレセプターに対して特異的な結合親和性を有するモノクローナル抗体を提唱し、前記抗体はレセプターとoxLDLの結合を阻害する。
上記のアプローチは、抗体の抗原検出能力及び/又は治療有効性を強化するために提唱されているが、それらは、天然又は“ヒト化”状態において、適所配置又はそれらの標的の殺滅で十分には有効ではない。適切に改変された抗体を用いて、多くの疾患の検出、予防及び/又は治療を促進することがなお要求され続けている。本発明の目的は、適切に調製したスーパー抗体を用いて前述の要求を満たすことである。
【0006】
発明の要旨
本発明は、自己好性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は触媒的特性を有する新規なスーパー抗体を提供する。本発明が意図するスーパー抗体は、免疫グロブリン(Ig)及び非免疫グロブリン(非Ig)ドメインを含み、この場合少なくとも1つの非Igドメインは、好ましくは化学的に生成されたハイブリッド分子(すなわちイムノコンジュゲート)として前記Igドメインに共有結合されている。前記免疫グロブリンドメインは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、又はF(ab')2フラグメントを含むことができ、前記は抗原決定基に対する特異的な結合親和性を付与する。非Igドメインは、前記イムノコンジュゲートに自己好性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は触媒的特性を付与又は増強する有機的化学的部分であるが、ただしアジド、プリン又はピリミジン基を含まない。好ましくは、前記非Igドメインは自己好性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は触媒的特性を有するペプチドを含む。
本発明のまた別の特徴は、新規なスーパー抗体の製造方法を目的とする。本発明の方法では、光活性化が可能な有機分子が、前記有機分子に対して結合親和性を有する免疫グロブリン上の部位で前記免疫グロブリンと共有結合される。Igと光活性化可能有機分子との相互牽引力は、前記2つの物質の接触及び結合を活性化照射への暴露に際して促進する。好ましくは、前記有機分子は、光活性化に感受性を有する発色団、例えば芳香族炭化水素部分(プリン又はピリミジン基以外)を含む。さらにまた、アジド基は前記分子に存在している必要はない。
【0007】
好ましくは、本発明の芳香族炭化水素部分(AHM)(前記は光活性化能力を有する)は、単環又は多核アリール又は複素環である。そのような部分には、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、インドール、ベンゾフラン、チオナフテン、キノリン、又はイソキノリン基が含まれる。便利には、AHMは光活性化可能有機分子内にアミノ酸残基の側鎖部分として存在する。そのようなアミノ酸残基の例はトリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニンであり、前記はそれぞれインドール、フェノール、イミダゾール及びフェニル側鎖を有する。トリプトファン残基がもっとも好ましい。
本発明のスーパー抗体はまた、1つ以上の自己好性ペプチドと結合され機能性が付加されえる。例えば、スーパー抗体は、膜貫通ペプチド配列をもつことができる。前記配列は、抗体が細胞膜を通過して移動するのを促進する(抗体はそこで細胞内標的と結合する)。具体的な実施態様では、前記膜貫通ペプチドは少なくとも1つのMTSペプチド又はMTS最適化ペプチドを含む。さらにまた、自己好性スーパー抗体は膜貫通ペプチド配列と結合し、それによって抗体に両機能性が付与されえる。
【0008】
本発明のまた別の特徴では、アテローム性動脈硬化症プラークに対し特異的結合親和性を有するスーパー抗体(前記はアテローム性動脈硬化症の検出、予防及び/又は治療を可能にする)が意図される。例えば、自己好性スーパー抗体は、アテローム性動脈硬化症プラークの抗原決定基(例えばox-LDL)と結合することができ、さらにその抗原決定基といったん特異的に結合するとダイマー化又はオリゴマー化することができる。このようにして、マクロファージによるox-LDLの摂取を効率的に阻止するか又は減少させることができ、それによってアテローム性動脈硬化症に付随する慢性的炎症を抑える。具体的な実施態様では、前記イムノコンジュゲートの自己好性ペプチドは、T15、T15-scr2、R24、R-24チャージアミノ酸配列又は他の最適化アミノ酸配列を含む。好ましくは、スーパー抗体の免疫グロブリン及び/又はペプチドドメインはヒト化され患者における寛容性が改善される。
医薬組成物もまた意図され、前記は1つ以上のスーパー抗体及び医薬的に許容できる担体を含む。その優れた結合力のために、本発明のスーパー抗体は、対応する非自己好性抗体で実施可能な用量と同様な用量又はそれより低い用量で患者に投与することができる。
本発明のまた別の特徴では、アポトーシスを受けている細胞のアッセイが、細胞を本発明のスーパー抗体と接触させることによって実施される。スーパー抗体は、アポトーシスを受けている細胞の抗原決定基と特異的に結合し、レポーター分子又は二次抗体によって可視化することができる。アポトーシスに関連する抗原決定基の例は膜結合ホスホリルコリン及びホスファチジルセリンである。
【0009】
発明の詳細な説明
スーパー抗体の合成及び処方物
多くの免疫グロブリンがある種の光活性化が可能な芳香族部分に対して親和性を有することがこれまでに発見されている。そのような親和性は、免疫グロブリン(Ig)と前記芳香族炭化水素部分(AHM)との間の接近及び接触時間の延長を可能にし、それによってIgと前記AHMをもつ有機分子との光分解結合を促進する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、AHMとIgの親和性部位との間の牽引力はおそらくファンデルワールス力及び/又は双極子-双極子相互作用のためであり、前記は平行している芳香環の接近及び積み重ねを促進する。
本発明では、光活性化が可能な有機化合物をIgと共有結合させてイムノコンジュゲート(スーパー抗体)が形成される。そのようなイムノコンジュゲートは、光活性化が可能な有機化合物及びIgを混合し、前記光活性化可能有機化合物とIgとの共有結合に有効な光活性化条件に前記混合物をさらすことによって形成される。本発明の光活性化可能有機化合物は、Igに対する結合親和性を有する少なくとも1つのAHMを含む。しかしながら、前記光活性化可能有機化合物はアジド、プリン又はピリミジン基を含まない。なぜならば、そのような基はIgの異なる親和性部位と相互作用する可能性があるか、又は光活性化可能有機化合物の合成を不必要に複雑にする可能性があるからである。
本発明の好ましい特徴では、AHMに加えて、光活性化可能有機化合物は、自己結合性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は酵素的特性を有するペプチドを含む。そのようなペプチドは、したがってその後形成されるイムノコンジュゲートに前記の特性を付与することができる。好ましくは、前記ペプチドを含む光活性化可能有機化合物は約5から約30アミノ酸残基を含む。
【0010】
本発明のさらに好ましい特徴では、前記ペプチドは、以下の群から選択される自己好性アミノ酸配列を含む:
NH-ASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR-COOH(配列番号:1)
NH-SKAVSRFNAKGIRYSETNVDTYAS-COOH(配列番号:4)
NH-GAAVAYISSGGSSINYA-COOH(配列番号:5)及び
NH-GKAVAYISSGGSSINYAE-COOH(配列番号:6)。
また別には、前記ペプチドは、以下の群から選択される膜貫通性アミノ酸配列を含む:
NH-KGEGAAVLLPVLLAAPG-COOH(配列番号:2)及び
NH-WKGESAAVILPVLIASPG-COOH(配列番号:7)。
光活性化可能有機化合物内のペプチドと共有結合されるAHMは、前記ペプチドの所望の特性に干渉しないように好ましくは前記ペプチドのC-末端又はN-末端に存在する。便利には、前記AHMは、アミノ酸(例えばトリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニン)の芳香族側鎖に存在することができる。
本明細書でいう“免疫グロブリン”は、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でも、Fabフラグメント又はF(ab')2フラグメントでもよい。IgとAHMとの間の相互牽引及び共有結合は、免疫グロブリンの可変ドメインに存在する親和性部位で生じることが一般的には好ましい。自己好性ペプチドに対しては、前記は、細胞表面上の2つの近接するIg分子間の接近及び非共有結合型相互作用を担保することができる。Ig分子のそのような結合は、順次、細胞レセプターの架橋を促進し、さらに細胞内シグナリングを促進することができる。同様に、膜貫通性ペプチドに対しては、前記ペプチドのための細胞レセプター近くに前記ペプチドが存在することは、細胞内へのイムノコンジュゲートの輸送を促進することができる。IgとAHMとの間の結合親和性は、以下で示すように、芳香族レポーター分子(前記もまたIg結合部位に対して親和性を有する)との競合結合によって明示することができる。実際には、免疫グロブリン上に親和性部位が多数存在するために、複数の光活性化可能有機化合物をIgに共有結合させることができる。機能的には、本発明に関しては任意のタイプの免疫グロブリンを用いることができ、例えば癌関連抗原、カスパーゼ酵素、ox-LDL又は細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する免疫グロブリンである。
【0011】
本発明の芳香族炭化水素部分(AHM)は少なくとも1つのアリール、多核アリール、複素環、又は多核複素環基を含む。これらの種々の化学物質クラスの代表的なものは以下の官能基である:アリール−ベンゼン;多核アリール−ナフタレン、アントラセン及びフェナントレン;複素環−ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン及びイミダゾール;多核複素環−ベンゾフラン、アクリジン、チオナフトレン、インドール、キノリン及びイソキノリン、並びにそれらの幾何学異性体。したがって、光活性化可能有機化合物がAHMと共有結合するペプチドを含む実施態様については、前記AHMは前記ペプチドのアミノ酸残基、例えばトリプトファン(インドール)、チロシン(置換ベンゼン)、ヒスチジン(イミダゾール)、及びフェニルアラニン(ベンゼン)に存在しえる。代表的なAHMは表1に示す。
さらにまた本発明に包含されるものは、薬理学的に有効量の本発明のスーパー抗体及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物である。そのような担体の代表的なものは塩類溶液、例えば0.15%塩類溶液である。
好ましい実施態様では、光反応性を有するビオチン基添加トリプトファンがいくつかの抗体に挿入され、ビオチン基添加抗体が得られる。このビオチン基添加反応はATPの存在によって阻害されず(ATPは抗体上の保存ヌクレオチド結合部位のためのリガンドである(Rajagopalan et al. 1996))、異なる親和性部位が反応に中心的に関与することが提唱されている。さらにまた、UVエネルギーは複素環化合物(例えばトリプトファン)内で反応性ラジカルを誘発することができることが報告された(Miles et al. 1985)。したがって、本発明の好ましい実施態様では、UV光が、トリプトファン含有分子を抗体と前記抗体上のトリプトファン親和性部位で共有結合させるために用いられる。
【0012】
【表1】
【0013】
抗体のAHM(例えばトリプトファン)に対する親和性の発見に関しては、有機分子を抗体に結合させるために簡単で穏やかでかつ迅速な方法が利用可能である。実際の適用では、多数のビオチン基添加AMHを使用して、抗体にビオチン基親和性添加が実施される。さらにまた、生物学的又は化学的特性を有するAHM含有ペプチドを抗体に親和性を介して都合よく架橋して、スーパー抗体を作成することができる。
抗体コンジュゲートを合成するまた別の方法は、ペプチドを抗体に結合させるために化学的技術又は遺伝子工学技術を利用する。例えば、化学的手段によって、ペプチドを免疫グロブリン(完全なポリクローナル若しくはモノクローナル抗体又はそのフラグメント)に、Fc部分の炭水化物部位で、又は抗体のアミノ若しくはスルフヒドリル基に結合させることができる。さらにまた、ペプチドは、アジド-トリプトファン又はアジド-プリンを抗体に光架橋することによって、抗体の可変ドメイン構造に結合させることができる。後者のアプローチでは、ペプチドは、アジド基の光活性化によってトリプトファン又はプリン親和性部位で優先的に抗体と結合すると考えられる。さらに別のアプローチでは、キメラ抗体は、遺伝子操作技術を用い自己好性ペプチド及び全免疫グロブリン又はそのフラグメントの融合タンパク質として発現されえる。例えば以下を参照されたい:米国特許6,238,667号、PCT公開公報WO9914244、米国特許RE38,008号、米国特許5,635,180号及び米国特許5,106,951号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0014】
本発明の自己好性抗体は、典型的には自己好性配列を有する1つ以上のペプチドと結合した抗体を含む。本発明の自己好性抗体は本質的に任意の免疫グロブリンを含むことができると考えられる。いくつかの実施態様では、前記抗体は、疾患又は異常に関連する標的と結合し、この場合、標的との結合は前記疾患又は異常に対して治療的効果を有する。標的抗原には細胞表面抗原(トランスメンブレンレセプターを含む)が含まれえる。具体的な実施態様では、前記抗体のIg成分は以下を含むことができる:モノクローナル抗体5D10(ヒトB細胞レセプターと結合する)、モノクローナル抗体S1C5(ネズミB細胞レセプターと結合する)、抗CD20抗体(例えばリツキシマブ(rituximab)(Rituxan(商標))(正常並びに悪性の前B及び成熟Bリンパ球上のCD20と結合する)、マウスモノクローナル抗体IF5(ヒトB細胞リンパ腫上のCD-20に特異的である)、トシツマブ(tositumab)(Bexxar(商標))(前記もまたBリンパ球上のCD20と結合する)、抗GM2(リンパ球上のヒトガングリオシドGM2と結合する)、トラスツズマブ(trastuzumab)(Herceptin(商標))(乳房細胞によって産生されるタンパク質HER2と結合する)、抗カスパーゼ抗体(アポトーシスで必要とされるカスパーゼタンパク質を認識する)、ヒト化TEPC-15抗体(酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)と結合してマクロファージによる酸化LDLの摂取を防ぐことができる)、ヒト化T-15イディオタイプ陽性抗体(ホスホコリンと結合する)、及びヒト化R24抗体(メラノーマ細胞表面上のヒトGD3ガングリオシドを認識する)。
【0015】
本発明の自己好性抗体は任意の自己好性ペプチド配列を含むことができる。前記自己好性ペプチドはまた最適化ペプチド配列を含むことができる。前記は、強化機能を有する配列、例えばリンカーとして作用して抗体のディスプレー及び架橋活性を強化する配列、又は自己好性配列の可溶性を高める残基を含むことができる。
本発明は、本発明の自己好性コンジュゲートを製造する方法を意図し、前記方法では、上記に記載したように、自己好性抗体の架橋潜在能力を強化するために鋳型ペプチドは改変されている。本発明のある実施態様では、そのような機能的に強化されたペプチドは、鋳型配列内の各アミノ酸の位置で置換を有する一連の合成ペプチドを生成し、続いてこのペプチドライブラリーを自己好性結合について又は最初のペプチド配列との結合について試験することによって決定される。最初の配列との優れた結合を示すペプチドを続いて免疫グロブリンと結合させ、得られた結合物を、潜在能力、特異性及び望ましくない凝集誘発能について試験する。ある具体的な実施態様では、T15ペプチド配列を変化させ、改変した配列を強化機能について選別する。
本発明のまた別の実施態様では、ペプチドの自己結合潜在能力は、例えば米国特許4,863,857号(Blalock et al.)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載されているように、配列の相補性を高めることによって強化することができる。ペプチドの自己結合潜在能力及び/又は寛容はまた、非ヒト動物由来の自己結合ペプチド配列をヒト化することによって強化することができる。ペプチド配列のヒト化は、ヒトでの発現又は機能性について配列を最適にすることを必要とする。ペプチド及びタンパク質をヒト化する例及び方法はまた別の文献に記載されている(Roque-Navarro et al. 2003;Caldas et al. 2003;Leger et al. 1997;Isaacs and Waldmann, 1994;Miles et al. 1989;Veeraraghavan et al. 2004;Dean et al. 2004;Hakenberg et al. 2003;Gonzales et al. 2004;及びH. Schllekens, 2002)。
【0016】
好ましい実施態様では、自己好性ペプチドはT15ペプチドを含み、前記は本来、ネズミ生殖細胞系列がコードするS107/TEPC15抗体のCDR2及びFR3の領域を含んでいた。T15ペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:ASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)(C-Y Kang et al. 1988)。その自己好性特性は抗原非依存性であることが示され、したがって、前記ペプチドのモノマー抗体への結合は、自己好性特性及び結合親和力強化特性を抗体に付与することが示唆された(S. Kaveri et al. 1991)。T15ペプチドは、芳香族炭化水素部分又は免疫グロブリンのヌクレオチド親和性部位に光架橋され、自己好性抗体を生成することができる。また別には、T15ペプチドは、Fc部分の炭水化物部位又は免疫グロブリンのアミノ若しくはスルフヒドリル基と架橋することができる。さらにまた、前記自己好性抗体は、T15ペプチド及び完全免疫グロブリン又はそのフラグメントの融合タンパク質として都合よく発現させることができる。他の具体的な実施態様では、自己好性ペプチドは、スクランブルしたT15配列(T15-scr2)(アミノ酸配列NH-SKAVSRFNAKGIRYSETNVDTYAS-COOH(配列番号:4)を含む)、ペプチドR24(配列NH-GAAVAYISSGGSSINYA-COOH(配列番号:5を含む)、R24-チャージ配列(配列NH-GKAVAYISSGGSSINYAE-COOH(配列番号:6)を含む)及び抗体の結合及び治療効果を最適化又は強化するそのようなペプチドの任意の改変物を含むことができる。
自己好性ペプチドのモノマー抗体への結合は、自己好性特性及び結合親和力強化特性を抗体に付与することができる(Y. Zhao and H. Kohler, 2002)。具体的な実施態様では、抗体は、オルソロガス抗体のヒト化型であってもよい。オルソロガス抗体は、自己好性ペプチド(例えばT15配列を含むペプチド)と結合されたとき、結合及び有効性の強化又は最適化を獲得する。抗体をヒト化する方法は以前に記載されている。例えば以下を参照されたい:米国特許5,639,641号(Pedersen et al.)、米国特許5,498,531号(Jarrell)、米国特許6,180,370号及び5,693,762号(Queen et al.)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0017】
本発明の自己好性抗体コンジュゲートはまた1つ以上の他の生物活性ペプチド又は機能的ペプチドを含むことができ、前記ペプチドはさらに追加の機能を前記抗体コンジュゲートに付与する。例えば、前記抗体コンジュゲートは、T15自己好性ペプチド及びMTS膜転移ペプチドを有する抗体を含むことができる(Y. Zhao et al. 2003;Lin et al. 1995)。具体的な実施態様では、MTS転移ペプチドはアミノ酸配列KGEGAAVLLPVLLAAPG(配列番号:2)を有することができる。また別の実施態様では、前記転移ペプチドは最適化MTSペプチド(アミノ酸配列WKGESAAVILPVLIASPG(配列番号:7)を含む)であってもよい。T15ペプチドはコンジュゲートに自己好性性を提供し、MTS配列は抗体の細胞内進入を促進する。そのようなコンジュゲートは、その抗体領域が主として細胞内の腫瘍関連抗原(例えば癌胎児性抗原(CEA))を標的とするときは、例えば放射性免疫療法のために癌細胞を標的とすることができる。例えば米国特許6,238,667号を参照されたい(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。前記自己好性コンジュゲートは、投与に際して、CEA-保持大腸癌細胞を標的とし、MTSペプチドによって仲介される抗体の転移によって内在化され、より豊富なCEAの細胞内形態と結合することができる。例えば治療用同位元素(例えば131I)によるCEA抗体の架橋は、改変されていない標識抗体よりも長期間細胞内で維持されることができ、より高い放射能線量を腫瘍にデリバーすることができる。さらにまた、125Iのような治療用同位元素(前記は軌道の長さが短いベータ粒子を放出し、通常は治療に有用であるとは考えられていない)は、細胞内に核に極めて接近してデリバーされるときは、ある種の標的(特に類リンパ起源の標的)に対しては有効であり、さらに血液及びリンパ組織に接近することができる。第二の生物活性又は機能的ペプチドの他のカテゴリーには、レセプターに結合することができるペプチド、及びペプチド模倣体が含まれ、前記は別個の抗原又は同じ抗原の別個のエピトープと結合することができ、主要抗原結合部位によって標的へ誘導される。
【0018】
1つ以上の他の機能的ペプチドと結合された自己好性抗体はまた、細胞内抗原を標的とするために有用でありえる。そのような抗原には腫瘍関連抗原及びウイルスタンパク質が含まれよう。例えば、ウイルスタンパク質に特異的な自己好性抗体(自己結合ペプチド及びMTSペプチドと結合されている)はまた、細胞内ウイルスタンパク質との結合に用いられ、ウイルスの産生を防ぐことができる。前記抗体はMTSペプチドによって内在化することができ、細胞内ウイルスタンパク質との結合に最適化することができる(Y. Zhao et al. 2003)。他の多くの機能的ペプチドもまた自己好性抗体と結合され、機能性を高めることができる。
本発明はまた、本発明のスーパー抗体及び医薬的に許容できる担体を含む組成物に関する。自己好性抗体コンジュゲートは、それらの標的抗原と結合するときに、非共有結合により他の自己好性抗体と結合することができる。しかしながら、抗体のダイマー又はマルチマーの不完全な形成は、製造時(例えば精製時及び濃縮時)における問題を生じるとともに投与における欠点(前記は副作用につながりえる)をもたらす可能性がある。したがって、本発明の自己好性抗体-ペプチドコンジュゲートは、溶液として存在しているとき及び投与前には、このダイマー形成潜在能力を低下させ、モノマー特性を最大にするように処方される。例えば、溶液のダイマー形成は高張組成物を用いることによって低下又は減少させることができることが判明した。いくつかの実施態様では、0.5M以上の塩濃度、低レベルのSDS又は他の種々の洗剤(例えば陰イオンの性質をもつもの)(米国特許5,151,266号を参照されたい、前記文献は参照により本明細書に含まれる)、又はその等電点を低下させる抗体の改変(例えば無水コハク酸(succinyl anhydride)の使用による)(米国特許5,322,678号を参照されたい、前記文献は参照により本明細書に含まれる)を用いて、組成物を処方することができる。
【0019】
疾患の検出、予防及び治療
標的のアポトーシス、補体結合、エフェクター細胞仲介殺滅を強化するか、又は症状の進行若しくは悪化を予防する方法もまた意図され、前記方法は、本発明のスーパー抗体又はスーパー抗体を含む組成物を利用する。ある実施態様では、本発明の自己好性コンジュゲート、又は本発明の自己好性コンジュゲートを含む組成物が対象者に投与される。いったん投与されると、前記抗体は標的細胞に結合し、標的のアポトーシス、補体結合、エフェクター細胞仲介殺滅を強化するか、又は標的抗原若しくは細胞が症状の進行を刺激し若しくは悪化させるのを防ぐ。さらに別の実施態様では、自己好性コンジュゲートが標的細胞と結合してアポトーシス、補体結合、エフェクター細胞仲介殺滅を強化するか、又は標的抗原若しくは細胞が症状をさらに悪化させるのを防ぎ、さらに自己好性コンジュゲートが正常組織から除去される時間を見越して、第二の抗自己好性ペプチド抗体を投与することができる。例えば、自己好性コンジュゲートが非天然の自己好性ペプチド、例えばネズミT15配列を含む場合は、抗T15ペプチド抗体を投与することができる(前記抗体はT15配列を含む抗体コンジュゲートを認識し、これと結合する)。これは、予め局在化されたスーパー抗体との結合を可能にし、アポトーシスを強化することができる。さらにまた、鋳型の自己好性ペプチドを改変して、上記に記載した自己好性抗体の架橋潜在能力を強化することができる。
【0020】
本発明のまた別の特徴では、患者の標的細胞のアポトーシスを強化する方法は、自己好性抗体-ペプチドコンジュゲートを含む第一の自己好性抗体-ペプチドコンジュゲート、及び第二の抗体又は第二の抗体を含む組成物を投与することを含む(前記第二の抗体は前記コンジュゲートの自己好性ペプチドドメインを認識する)。この実施態様では、前記抗体-ペプチドコンジュゲートは標的細胞上の抗原を認識する。そのホモダイマー形成特性のために、前記抗体-ペプチドコンジュゲートは、自己好性ペプチドドメインを欠く対応する抗体よりも高い結合力で標的と結合することができる。これは、おそらくは標的細胞の表面で抗原と架橋する能力によるものであろう。さらにまた、自己好性抗体が2つ以上の抗原と結合し、これら抗原が抗体の自己好性特性のために互いに接近して架橋されるときはいつでも、細胞内のアポトーシスシグナルが始動されえる。コンジュゲートのペプチドドメインが露出エピトープを提示する事例では、第二の抗体(前記自己好性ペプチドに特異的)を投与して前記改変抗体に結合させて架橋プロセスを強化し、さらには標的抗原の一時的撤去さえも引き起こすことができる。例として、標的抗原がレセプターである場合は、細胞表面からの撤去、エンドサイトーシス及び分解によって引き続き新規なレセプタータンパク質の合成が要求され、単純なブロッキング抗体又は小分子阻害剤を用いるよりも長期に及ぶより有効な、レセプターの生物学的機能の阻害がもたらされる。また別には、第二の抗体は、投与されたときに標的細胞を攻撃することができるように、放射能標識又は他の潜在的に治療効果を有する物質を保持することができる。自己好性ペプチドは少数の免疫グロブリンにのみ存在し、また別の生物に由来し得るので、第二の抗体は、自己好性ペプチドを保持する抗体に対して特異性を有する。したがって、前記自己好性ペプチドに特異的な抗体は、in vivoで使用されるために必須の選択性を有するであろう。
本発明のまた別の特徴では、抗体療法に応答する疾患又は症状に罹患している患者は、本発明の少なくとも1つの自己好性抗体を、前記疾患又は症状を緩和するために有効な量で投与される。本発明の抗体による治療が意図される疾患又は症状は、悪性疾患、新形成、癌、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、アルツハイマー病若しくは他の神経変性症状、移植片若しくは移植拒絶、又は抗体療法に応答する他の任意の疾患若しくは症状でありえる。
【0021】
アテローム性動脈硬化症は、卒中、心不全、並びに他の器官及び部位における循環の崩壊を含む致死的及び慢性的血管疾患の主要な原因である。アテローム性動脈硬化症が慢性炎症性疾患であることを示す証拠が増えている。最近の発見は、酸化脂質(特にリン脂質)だけでなくオキシステロールもまた(前記はLDLの酸化時に又は酸化ストレスにさらされている細胞内で生成される)、進行病巣で観察される事象の多くの引き金であることを示している(P. Libby et al. 2003)。ox-LDL中の酸化リン脂質は、マクロファージのスカベンジャーレセプターのためのリガンドである(S. Horkko et al. 2000)。したがって、ox-LDL及びその生成物(酸化リン脂質が含まれるが、ただしこれに限定されない)は、動脈壁及びその成分細胞が応答する始動因子である。古典的な脂質仮説及び新しい炎症仮説は両者まとめてアテローム性動脈硬化症における病変発生経路の部分と考えられるべきである。
本発明のある特徴は、炎症経路を遮断し、それによって高コレステロール及び脂質レベルをもつ患者で更なるプラーク形成を停止させることを目的とする。好ましい実施態様では、マウスのT15抗体が、ヒトの血管疾患の治療のために治療用抗体に向けて“ヒト化”される。非ヒト抗体のヒト化は抗体分子の広範囲の再形成を必要とし、前記は抗体の特異性及び親和性の消失又は低下をもたらす可能性がある。自己好性ペプチドをヒト化T15抗体に結合させることによって、自己好性ペプチドのox-LDLに対する優れた標的誘導性を回復させることができ、それによってマクロファージのox-LDLの摂取を阻止し、アテローム性動脈硬化症に付随する慢性炎症を抑えることができる。したがってox-LDLに特異的なヒト化T15は、同抗原に対する人体の自己抗体応答(免疫減弱個体では前記応答は低下しえる)を模倣する。
【0022】
したがって、患者でアテローム性動脈硬化症を予防又は治療する一般的な方法は、酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に特異的な結合親和性及び自己好性特性を有するスーパー抗体を前記患者に投与することを含む。前記スーパー抗体は、マクロファージによるox-LDLの摂取を阻止するか又は低下させるために有効な用量で投与され、それによって、アテローム性動脈硬化症に付随する慢性炎症を抑える。好ましくは、前記イムノコンジュゲートはホスホリルコリンと特異的に結合し、T15イディオタイプを発現する。イムノコンジュゲートはヒト化することができ、好ましくは自己好性ペプチド配列、例えば配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5及び配列番号:6を含む。
本発明の基本にしたがえば、スーパー抗体又はスーパー抗体を含む組成物は、好ましくは非改変抗体で実施されえる投薬量と実質的に同一又はそれより低い1回以上の投薬量で投与される。したがって、リンパ腫又は乳癌の治療では、本発明の自己好性抗体は、リツキシマブ又はトラスツズマブで用いられる用量と同一又はそれより低い1回以上の用量で投与することができる。例えば、HER2+の乳癌の患者では、トラスツズマブ(ヒト化抗HER2/neuモノクローナル抗体)による治療は約10mg/mLの抗体濃度を用いる。90分間の静脈内輸液は、0日目に250mgの初期総用量を提供する。7日目から、毎週100mgが合計10回投与される。投薬スケジュールは、250−100mgから50mg/週の維持用量に徐々に減らされる。トラスツズマブの投薬スケジュールと同様又はそれより低い投薬スケジュールが、任意のアジュバント(前記は当業者の技術範囲内である)とともに自己好性抗体では用いられる。
【0023】
好ましい実施態様では、本発明のスーパー抗体はox-LDLに対して特異的な結合親和性を有する。スーパー抗体の抗体ドメインの例は、米国特許6,716,410号(Witztum et al)に記載されたモノクローナル抗体1K17である(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。本発明の基本にしたがって自己好性ペプチドで改変されたとき、得られた自己好性抗体の優れた結合力は前記ペプチドを欠く抗体の結合特性を強化することができる。自己好性抗体はアテローム性動脈硬化症プラークのox-LDLに局在することができ、したがって、標識、レポーター分子、又は二次抗体などとともに使用するとき、前記自己好性抗体を用いてプラークの部位を検出することができる。また別には、自己好性抗体を用いてox-LDL沈着部位を被覆し、それによって更なるプラークの蓄積を防ぐことができる。さらに別の特徴では、自己好性抗体を用いて抗プラーク剤(例えば血栓溶解剤又は抗酸化剤)を誘導することができる。
Witztumらは、IK17と称されるヒト抗体フラグメント(Fab)はox-LDL及び分解産物MDA-LDLのエピトープと結合するが、天然のLDLには結合しないことを報告した。さらにまた、彼らは、Fabはマクロファージによるox-LDLの摂取を、おそらくはマクロファージのスカベンジャーレセプターによって認識されるox-LDL上のエピトープとの結合により阻害しえると提唱している。Fabは、したがって炎症性応答を阻止することによってアテローム形成を抑制すると提唱された。これらの著者はまた、抗ox-LDLヒト抗体はいわゆるT15イディオタイプを発現することを報告している(P. Shaw et al. 2000)。T15イディオタイプは最初ホスホリルコリンに特異的であると記載された(Lieberman et al. 1974)。以前に、T15イディオタイプは自己好性であること、すなわちそれらは非共有結合ダイマーとして自己結合することが見出された(S. Kaveri et al. 2000)。自己好性T15ペプチドとヒト化T15/S107抗体との結合によって、T15抗体の自己結合特性及びその結合力を回復させることができる。
【0024】
T15抗体は、ox-LDLと結合することが知られているヒトの抗ホスホリルコリン抗体と生物学的に等価であり、マクロファージにより始動される炎症を抑えることを示したときに、T15抗体のアテローム性動脈硬化症の予防及び/又は治療における有効性が明示される。T15抗体の提唱される作用態様は、図22に模式図で示される(以下の文献から改変:Steinberg, Nature Medicine, 2002, 8:12311)。
本発明はまた、病的状態、例えば患者の血管系のアテローム性動脈硬化症プラークの存在を検出する方法を目的とする。そのような方法は、酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に対して特異的な結合親和性を有する、本発明の免疫コンジュゲートを患者に投与することを含む。前記免疫コンジュゲートはまた自己好性特性を有する。続いて、患者の血管系の免疫コンジュゲート集積(concentration)を検出し、それによってアテローム性動脈硬化症プラークの位置を知りさらに可視化する。好ましくは、免疫コンジュゲートは、前述のアミノ酸配列を有する自己好性ペプチドを保持する。
アポトーシス(病的状態の指標でありえる)を受けている細胞を検出する方法もまた意図される。例えば、細胞表面のある抗原決定基が膜結合ホスホリルコリン又はホスファチジルセリンによって表示されるとき、前記細胞を本発明の自己好性イムノコンジュゲート(前記抗原決定基に対して特異的な結合親和性を有する)と接触させることができる。続いて前記細胞と結合したイムノコンジュゲートの有無が検出される。以前に述べた自己好性ペプチドを用いてもよい。フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡法、組織学的染色、又はin vivo画像化のような方法が検出の実施に特に好ましい。前記方法を容易にするために、イムノコンジュゲートをフルオレセインで標識してもよい。
【0025】
さらにまた、アポトーシスのin vitroアッセイを用いて、多数の抗原陽性標的細胞株、さらに可能ならば単離したばかりの抗原陽性細胞単離物をスクリーニングすることができる。非改変抗体を二次(抗免疫グロブリン)抗体とインキュベートし、架橋の潜在能力が強化される。例えば51Cr又は131I-UDRで前標識することによって、又はアポトーシスの指標を用いるFACS分析によって細胞を列挙していってもよい。このアッセイの陽性結果は自己好性イムノコンジュゲートを用いた陽性結果を予想するが、しかしながら、このアッセイの陰性結果は、自己好性ペプチドとのその後の結合によって1つ以上の抗体のエフェクター特性が改善されることはないということを必ずしも意味するものではない。
本発明の自己好性抗体は、実験室条件下において(例えばPEGとともに溶液中で)in vitroでダイマーを形成するより高い潜在能力を有する。この実験室的特徴は、細胞表面標的との結合時の架橋能力及びより高い治療的潜在能力(アポトーシス始動のようなメカニズムを介する)と相関する。この特徴を用いて、天然のスーパー抗体を特定し、自己結合ペプチドと非自己好性抗体との適切な結合についてスクリーニングすることができる。前述の自己好性抗体の有効性を試験する適切な動物モデルには、重度の抵抗性減弱免疫不全(SCID)マウス又はヒト腫瘍異種移植片保有ヌードマウスが含まれる。
以下の実施例は本発明のある種の特徴を例示するために提示され、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0026】
実施例
実施例1:T15ペプチドとB-細胞レセプターに特異的な2つのMabとの結合
細胞株と抗体:
ヒトB-細胞腫瘍株(Su-DHL4)及びネズミB-細胞腫瘍株(38C13)を、RPMI1640培養液(10%ウシ胎児血清、2μmol/Lのグルタミン、10μmol/LのHEPES、50U/mLのペニシリン及び50μg/mLのストレプトマイシン、50μmol/Lの2-メルカプトエタノールを補充)で5%二酸化炭素下にて37℃で増殖させる。2つのmAb、5D10及びS1C5(それぞれヒト又はネズミBCRに特異的)を本実験に用いた。抗体は、プロテインG及びプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって培養上清から精製する。
抗体-ペプチドコンジュゲートの合成:
T15HペプチドASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)(自己好性抗体-T15のVH-由来ペプチド)はジーンメド・シンテシス社(Genemed Synthesis, San Francisco, CA, USA)によって合成された。抗体をPBS(pH6.0)に対して透析し、200μmol/Lの過ヨウ素酸ナトリウムを1/10容積で添加し、暗所で30分4℃にてインキュベートした。グリセロールを30μmol/Lの濃度に添加することにより反応を停止させ、サンプルを4℃で30分間PBS(pH7.0)に対して透析した。100倍モル過剰のT15H又はスクランブルT15ペプチド(T15scr/T15s)SYSASRFRKNGSIRAVEATTDVNSAYAK(配列番号:3)を前記抗体に添加し、37℃で1時間インキュベートした。L-リジンを添加し、37℃で30分間インキュベートして、残余のアルデヒド基をブロッキングした。同じ酸化反応(ペプチド添加は除く)をコントロールとして用いる抗体に適用した。ブロッキング工程の後で、抗体コンジュゲートをPBS(pH7.2)に対して一晩透析した。
Ig捕捉ELISA:
4μg/mLのネズミS1C5-T15Hでコスター(Costar)ビニルアッセイプレート(Costar, Cambridge, MA)を被覆した。3%BSA溶液でブロッキングした後、8μg/mLのビオチン基光添加S1C5-T15H、S1C5-スクランブルペプチドコンジュゲート、及びコントロールS1C5を第一のウェルに添加し、1:1希釈を実施した。抗体を2時間室温でインキュベートした。PBS緩衝液で洗浄した後、アビジン-HRP(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を1:2500希釈として添加した。基質o-フェニレンジアミンを添加して結合抗体を可視化した。
【0027】
サイズ排除クロマトグラフィー:
抗体コンジュゲートを75mLのセファクリル300HRカラム(Pharmacia, Peapack, NJ)でクロマトグラフィーに付した。1:10に希釈したPBS(pH7.2)を溶出緩衝液として選択した。分画(0.5mL/分画)を採集し、その一部(100μL)を抗ヒトIgG捕捉ELISAでアッセイした。ELISAの読み(OD490nm)を溶出体積に対してプロットした。
抗体処理細胞についての生存率アッセイ:
リンパ腫細胞を1mLの培養液にて96ウェルの組織培養ウェルで増殖させた。2μgの抗体又は抗体-ペプチドコンジュゲートを添加し記載のように種々の時間インキュベートした。この細胞懸濁液の10μL部分を用いトリパンブルー排除により生存率を決定した。
B-細胞リンパ腫のFACSアッセイ:
ヒトSu-DHLA及びネズミ38C13細胞を1%のパラホルムアルデヒドで固定した。50μLの染色緩衝液(0.1%のNaN3、1.0%BSAを含むハンクス塩類バランス溶液)に1x106細胞を懸濁し、続いて1.5μgのビオチン基光添加ネズミS1C-T15Hコンジュゲートを添加し、氷上で30分間インキュベートした。コントロール抗体及び抗体-スクランブルT15ペプチドコンジュゲートをコントロールとして供した。細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、その後アビジン-FITC(Sigma-Aldrich)を氷上で30分間細胞に加えた。続いて前記細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、200μLのPBSに再懸濁してフローサイトメトリーで分析した。
アポトーシス検出のためのヘキスト-メロシアニン540染色:
1x106のリンパ腫細胞を24ウェルの組織培養ウェルに加えた。4μgの抗体又は抗体-ペプチドコンジュゲートを添加し記載のように種々の時間インキュベートした。前記培養から1x106の細胞を取り出し、900μLの冷PBS(pH7.2)に再懸濁させた。100μLのヘキスト(Hoechst)33342(50μg/mL;Molecular Probe, Eugene, OR, USA)を添加し、細胞を暗所にて37℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心し、100μLのPBSに再懸濁した。続いて、4μLのMC540溶液(分子プローブ)を添加し、20分のインキュベーションを暗所で室温にて30分間実施した。細胞を沈殿させ、1mLの冷PBS(pH7.2)に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0028】
結果
自己好性抗体の性状決定:
T15H(24-mer)ペプチドを2つのネズミmAb(S1C5及び5D10)と過ヨウ素酸炭水化物結合を用いて架橋した。mAb S1C5(IgG1)はマウスの38C13 B-細胞株の腫瘍イディオタイプに特異的であり、5D10抗体はヒトSu-DHL4 B細胞腫瘍に特異的である。両mAbは、B-細胞腫瘍上のBCR IgMの固有のイディオタイプを認識する。
自己好性的作用動態はELISAによって容易に明示されえる:
S1C5-T15H Mabコンジュゲートを用いて自己好性作用を調べた。T15H-架橋S1C5は、ビオチン-アビジンELISAによって検出される不溶化S1C5-T15Hと結合する。コントロールS1C5はS1C5-T15H又はスクランブルペプチド架橋S1C5とは有意には結合しない。T15Hペプチド架橋mAb 5D10と不溶化T15H-5D10との同様な自己結合もまた観察された。ペプチド仲介自己好性作用の特異性を、24-merペプチドT15Hそれ自体を阻害物質として用いて試験した。T15HペプチドだけがS1C5-T15H及び5D10-T15H自己結合を阻害し、一方コントロール-スクランブルペプチドは阻害しない。これらの結果は、天然に存在する自己好性T15/S107抗体に関する以前の阻害データ(R. Halpen et al. 1991)と類似している。
T15H-抗体コンジュゲートは溶液中でモノマー-ダイマー平衡にある:
T15H-連結抗体の自己凝集の非共有結合の性質は溶液中でのその物理的状態に関する疑問を提起した。この疑問に答えるために、T15H-連結モノクローナル抗体の分子種をゲル電気泳動及びゲルろ過サイジングを用いて分析した。コントロール並びにS1C5及び5D10に結合させたT15Hペプチドの還元及び非還元条件下での電気泳動移動度に相違はなく、抗体鎖間の化学的結合は存在しないことを示した。ペプチド結合抗体(5D10-T15H)をさらにサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。溶出プロフィルは異なるサイズをもつ2つの免疫グロブリン種を示した。大きな第一のピークは抗体ダイマーの位置で溶出した。第二の小さいピークは非結合5D10抗体の位置で溶出した。2つのピークの外観はモノマー及びダイマー抗体に類似し、抗体の部分は改変されていないか、又は改変は完了し抗体はダイマーとモノマーを平衡させているかのどちらかであることを示している可能性がある。後者の可能性を試験するために、両ピークの材料を同じカラムで二回目のゲルろ過に付した。両ピークの再泳動によって再び2つのピークが、1回目のクロマトグラフィーと同じ位置で得られた(Zhao and Kohler, 2002)。これらのデータは、T15Hペプチド連結抗体は溶液中でモノマーとダイマーとして平衡しながら2つの別個の分子種として存在することを示している。
【0029】
対応する腫瘍標的に対するペプチド結合抗体の結合を、コントロール抗体の結合と間接的蛍光活性化細胞分類(FACS)で比較した。コントロールとして、スクランブルペプチドと連結した抗体を含めた。38C13細胞上のT15H-S1C5の蛍光強度をSC15及びスクランブルペプチドS1C5の蛍光強度と比較する。S1C5-T15Hとコントロールとの間の平均蛍光チャネルにおける相違は10倍より大きかった。同様に、Su-DHL4細胞上の自己好性5D10-T15HのFACS分析は、コントロール5D10及びコントロールペプチド-架橋5D10の結合を超える強化結合を示した。両腫瘍系で、腫瘍特異的抗体とT15Hの結合は、同じ濃度で用いられたコントロール抗体よりもFACSシグナルを強化した(Zhao, Lou et al. 2002)。蛍光の強化は、自己凝集及び腫瘍細胞表面での格子形成により生じた標的に誘導された抗体の増加により説明することができる。
腫瘍増殖の抑制:
BCRとの抗体結合はBCRの架橋を誘発し、これは、順に細胞増殖の抑制、死滅シグナルの生成をもたらす。さらにまた、化学的にダイマーを形成した、B-細胞に対して誘導された抗体は、BCRの超架橋、続いて細胞分裂の抑制及び腫瘍のアポトーシスを誘発する。ダイマー化抗体の抗腫瘍作用の同様な強化が非共有結合型ダイマー化T15H-連結抗体によって誘発されるか否かを見るために、2つにB細胞腫瘍を、コントロール及びT15H-連結抗体の非存在下又は存在下で培養した。両腫瘍、38C13及びSu-DHL4のそれらの対応するT15H-連結抗体との同時培養は、コントロール抗体と比較して前記細胞の増殖を有意に強く抑制した。増殖抑制における自己好性抗体の腫瘍標的特異性を試験するために、38C13及びSu-DHL-4細胞株で交差実験を実施した。ネズミ38C13細胞の増殖抑制はミスマッチ5D10-T15Hよりも統計的に強かった。自己好性抗体の特異性について同様な結果がSu-DHL4細胞で得られた(Y. Zhao et al. 2002)。
アポトーシスの誘発:
初期の実験で提唱されたように、B-細胞リンパ腫のBCRに対して誘導された抗体のinvitro及びin vivo抗腫瘍作用はアポトーシスの誘発によって引き起こされるかもしれない。コントロール又はT15H-連結抗体の存在下で培養した腫瘍細胞(38C13及びSu-DHL-4)の一部を、アポトーシスについて二重染色FACSプロトコルを用いて分析した。抗体の非存在下で、38C13及びSu-DHL4細胞は、それぞれ6時間、18時間培養で中程度の量のアポトーシスを示した。このアポトーシスは、対応する抗体を添加したとき強化された。しかしながら、T15H-連結抗体を添加したとき、アポトーシスを示す38C13細胞の累積数はほぼ2倍であり、さらにSu-DHL4細胞のアポトーシスは全培養中に2倍を超えた(Y. Zhao et al. 2002)。
【0030】
考察
自己好性特性の生物学的利点が、S107/T15抗ホスホリルコリン抗体を用いて具体的に示される。この自己好性抗体は、免疫不全マウスのプニューモコッキー・プニューモニエ(Pneumococci pneumoniae)の感染防御において、同じ抗原特異性及び親和性をもつ非自己好性抗体よりも数倍強力である。
ここで示したように、自己好性抗体の機能は、T15 VH生殖系列配列に由来するペプチドを化学的に架橋することによって他の抗体に移すことができる。前記改変抗体は、T15/S107抗体の自己好性特性を模倣し、結合力の増加及び標的誘導強化を示す自己好性抗体を生じる。自己好性操作抗体とB-細胞腫瘍のBCRとの結合の強化は細胞死シグナルの強度を高め、培養細胞の分裂の強い抑制をもたらす。ここではアポトーシスの倍増が示されたが、他の増殖抑制メカニズムも深く関与しえる。
成熟ネズミB-細胞リンパ腫A20のBCRの架橋によってCD95仲介アポトーシスを防ぐことができる。抗体を架橋することによるBCR嵌合のこの抗アポトーシス活性は、CD95刺激の時間枠に高度に拘束され、さらにタンパク質合成に依存しない。BCRの超架橋それ自体は前アポトーシス状態であるという発見は、BCR嵌合の抗アポトーシス活性に関する報告と矛盾しない。なぜならば、前記は、より未熟なB-細胞株の使用、ホモダイマー形成抗体によってデリバーされるシグナルの様々な強度、又はFas-非依存性アポトーシスに起因しえるからである。
種々の腫瘍に対する2つのBCRイディオタイプ特異的抗体の使用は、イディオタイプ特異的BCR以外のレセプターを標的とすることの生物学的効果を試験する機会を提供する。自己好性抗体を用いた交差実験では、FACS分析での結合及びin vitro増殖抑制は、自己好性マッチ抗体によってのみ顕著な強化を示す。この状況において、腫瘍への標的誘導強化はまた細胞のエフェクター機能も強化するのか否かを推測することは興味深いことである。
化学的にホモダイマーを形成させた抗体を用いた初期の実験では、Fcドメインは増殖抑制の強化に必要とされず、Fcレセプターを欠く腫瘍細胞はホモダイマーの抗増殖活性に感受性を示した。したがって、ダイマー形成抗体によって誘発される抗腫瘍作用は、類リンパ腫(例えば非ホジキン型B-細胞リンパ腫)に限定されないであろう(この場合、抗腫瘍作用はFcレセプター保持エフェクター細胞の参画を要求する)。天然に存在する自己好性特性を他の抗体に移転し、それによってそれらの抗腫瘍作用を強化するという本開示のアプローチは、能動的免疫療法における抗体の治療的有効性を改善する一般的方法として概略される。そのような非共有結合型抗体複合体は、化学的に架橋された抗体を超えるいくつかの以下の利点を提供する:(i)モノマーと非共有結合型ホモポリマーとの間の平衡は溶液中での非生理学的沈殿複合体の形成を防ぐ;(ii)自己好性変換は抗体の構造的一体性を損なわない;及び(iii)前記方法は単純で効率的であり、化学的架橋ダイマーに典型的に要求される精製工程(活性なIgダイマーの収量を低下させる)を必要としない。ダイマー形成抗体を使用するこのアプローチの可能なある制限は、大きな腫瘍塊に侵入する能力であるかもしれない。ホモ好性ペプチドはネズミ起源であるので、人間で免疫原性を示す可能性がある。したがって、コンピュータモデリングを用いて、配列相同性及び構造的相同性にしたがってネズミペプチドをヒト化する必要があるえるであろう。抗体の構造にただ1つのペプチドを添加することによって標的に結合する抗体量及び抗腫瘍活性が増加することを示すことは、自己好性活性を発現する組換え抗体を操作する試みを後押しする。
【0031】
実施例2:MTSペプチド結合抗体の内在化
細胞株及び抗体:
ヒトJurkat T細胞を10%ウシ胎児血清及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンホテリシン)を補充したRPMI1640で増殖させた。ウサギ抗-活性カスパーゼ3ポリクローナル抗体(#9661S)及び抗切断フォドリン、すなわちアルファIIスペクトリン(#2121S)はセル・シグナリング社(Cell Signaling, Inc., Beverly, MA)から購入した。抗-活性カスパーゼ3(ウサギ)モノクローナル抗体(#C92-605)はBDファーミンゲン(BD PharMingen, San Diego, CA)から購入した。マウスモノクローナル抗体3H1(抗CEA)は、プロテインGアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。抗マウス及び抗ウサギHRP結合二次抗体はサンタクルツバイオテクノロジーズ社(Santa Cruz Biotechnologies, Inc.)から購入した。アポアラート(ApoAlert)カスパーゼ-3蛍光アッセイキットは、クロンテックラボラトリーズ(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)から購入した。細胞死検出ELISAはロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)から購入した。
MTSペプチド-抗体コンジュゲートの合成:
MTSペプチドKGEGAAVLLPVLLAAPG(配列番号:2)はシグナルペプチド系膜転移配列であり、ジーンメドシンテシス社(Genemed Synthesis, San Francisco, CA)により合成された。抗体はPBS(pH6.0)緩衝液に対して透析し、200mmol/LのNaIO4の1/10容積の添加によって酸化し、4℃にて暗所で30分間インキュベートした。グリセロールを最終濃度30mMで加えて酸化工程を終了させた。続いてサンプルを4℃で1時間1xPBS(pH6.0)緩衝液に対して透析した。MTSペプチド(50倍のモル過剰)を添加して抗体とカップリングさせ、サンプルを37℃で1時間インキュベートし、得られた抗体-ペプチドコンジュゲートを1xPBS(pH7.4)に対して透析した。
MTS結合抗体の細胞増殖に対する影響:
Jurkat細胞(2.5x105)を96ウェルの培養プレートに播種した。0.5μgのMTS-抗体コンジュゲートとともに6、12、18及び24時間インキュベートした後、その一部を取り出し、生存率をトリパンブルー排除によって決定した。
ELISAによる抗体の内在化の調査:
6ウェルの培養プレートで1mLの培養液を用いて増殖させたJurkat細胞を、2μgの未結合抗体又はMTS結合抗体とともに0、6、12及び18時間インキュベートした。細胞を遠心し、続いて培養上清を新しいチューブに移した。細胞ペレットを2回PBS(pH7.4)で洗浄した後、ペレット・ペストル・モーター(Kontes, Vineland, NJ)によって30秒均質化した。全細胞ホモジネート及び等体積の培養上清(10μL)をヒツジ抗ウサギIgG被覆ELISAプレート(Falcon, Oxnard, CA)に添加し、2時間室温でインキュベートした。洗浄後、HRP-標識ヤギ抗ウサギ軽鎖抗体を添加し、o-フェニレンジアミンを用いて可視化した。
【0032】
DNA断片化:
Jurkat細胞を抗体又はカスパーゼ3阻害剤(DEVD-fmk)で1時間前処理して遠心し、さらにアクチノマイシンDのみ(1μg/mL)を含む新しい培養液とともに4時間インキュベートした。処理後、Jurkat細胞を採集し、洗浄して700μLのHL緩衝液(10mMトリス-HCl(pH8.0)、1mMのEDTA、0.2%トリトンX-100)に室温で15分間再懸濁した。フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を用いてDNAを抽出し、0.1容の5MのNaCl及び1容のイソプロパノールで-20℃にて24時間沈殿させた。DNAを洗浄し乾燥させ、TE(pH8.0)に再懸濁した。DNAを1.5%アガロースゲルで電気泳動によって分析し、臭化エチジウムで染色後UV蛍光によって可視化した。細胞死検出ELISAを製造業者の指示にしたがって用いDNA断片化も決定した。
全細胞溶解物の調製:
Jurkat細胞をDNA断片化の項に記載したように処理した。処理後、細胞を採集し、PBS(pH7.4)で2回洗浄し、続いて300μLのCHAPS緩衝液(50mMのPIPES(pH6.5)、2mMのEDTA、0.1%CHAPS)に懸濁した。サンプルを10秒間超音波処理し、14,000rpmで15分4℃にて遠心した。上清を新しいチューブに移し、全細胞溶解物と呼んだ。
カスパーゼ3様切断活性アッセイ:
Jurkat細胞をDNA断片化の項に記載したように処理した。等しい量の全細胞溶解物タンパク質を、製造業者の指示にしたがいアポアラートカスパーゼ3蛍光アッセイキットを用いるカスパーゼ3活性アッセイに適用した。スペクトラMAX GEMINIリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて蛍光を測定した。
ウェスタンブロット解析:
全Jurkat細胞溶解物(10μg)を10%のSDS-PAGEゲル上で分離し、切断スペクトリンに対して免疫反応するタンパク質を検出した。ポンシュー染色を用いて、ニトロセルロース膜へのタンパク質の移転の均質性をモニターした。前記の膜を蒸留水で洗浄して過剰な染色を除去し、ブロットー(Blotto)(5%ミルク、10mMトリス-HCl(pH8.0)、150mMのNaCl及び0.05%のトゥイーン20)中で2時間室温にてブロッキングした。二次抗体を添加する前に、この膜を2回TBST(10mMトリス-HCl、150mMのNaCl及び0.05%トゥイーン20)で洗浄し、続いてHRP-結合二次抗体とともにインキュベートした。ブロットを十分に洗浄し、強化ケミルミネッセンス(AmershamBiotech, Piscataway, NJ)によって反応性を可視化した。
統計解析:
統計解析は、スチューデントt検定(ペア式比較)及びワンウェイANOVAとそれに続くニューマン-ケウルス(Newman-Keuls)の後テストを用いて実施した。データは平均±SEで示される。
結果
図1に示すように、MTSを結合させた抗-活性カスパーゼ3抗体は、未改変抗体よりも迅速に内在化される。細胞を化学療法剤(アクチノマイシンD)に暴露したとき、アポトーシスが始動され、細胞は死滅した(図2)。しかしながら、細胞が同じときにMTS-結合抗体(transMab)に暴露されるならば、化学療法剤の毒性の大半が抑制される。
【0033】
実施例3:ペプチド結合抗CD20抗体を用いた結合及びアポトーシスの強化
細胞株及び抗体:
ヒトB-細胞腫瘍株SU-DHL-4及びRajをRPMI培養液(10%ウシ胎児血清、2mmol/Lのグルタミン、10μmol/LのHepes、50U/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン及び50μmol/Lの2-メルカプトエタノールを補充)で、5%の二酸化炭素下で37℃にて増殖させた。ヒトB-細胞リンパ腫5D10及び3H1に特異的なマウスモノクローナル抗体1F5 IgG2a(ATCC#HB-9645)を、プロテインG又はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。
抗体-ペプチドコンジュゲートの合成:
T15ペプチドASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)、自己結合抗体-T15のVH-由来ペプチドを実施例1に記載したように合成した。8-アジド-アデノシン-ビオチンを合成し、抗体にビオチンをアフィニティ架橋するために用いた。8-アジドアデノシンジアルデヒドを以前に記載されたように調製した(米国特許5,800,991号(Haley et al.)前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
自己結合酵素-結合免疫吸着アッセイ:
4μg/mLの1F5-T15を用いてコスター(Costar)ビニルアッセイプレート(Costar, Cambridge, MA, USA)を被覆した。1%BSA溶液でブロッキングした後、8μg/mLのビオチン基光添加1F5-T15、裸の1F5、及びコントロール抗体(5D10)を添加し、1:1に希釈し、室温で2時間インキュベートした。PBS緩衝液で洗浄した後、アビジン-HRP(Sigma-Aldrich)を添加し、o-フェニレンジアミンを用いて酵素結合免疫吸着アッセイを発色させた。
B-細胞リンパ腫のFACSアッセイ:
SU-DHL-4細胞を1%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、さらに1x106細胞を50μLの染色緩衝液(0.1%のNaN3及び1.0%のBSAを含むハンクス)に懸濁した。1.5μg/mLのビオチン基光添加1F5-T15コンジュゲート、裸の1F5、及びコントロール抗体を添加し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を染色緩衝液で2回洗浄した後、続いてアビジン-FITCを氷上で30分間添加した。染色緩衝液で2回洗浄した後、FACS解析のために細胞を200μLのPBSに再懸濁した。
アポトーシス検出のためのヘキスト-メロシアニン540染色:
1x106のリンパ腫細胞を24ウェルの組織培養ウェルに播種した後、4μgの抗体及び抗体-ペプチドコンジュゲートを添加した。24時間のインキュベーション後に、1x106細胞を培養ペレットから取り出し、900μLの冷PBS(pH7.2)に懸濁し、100μLのヘキスト(Pierce, Rockford, IL, USA)3342(50μg/mL)を添加し、37℃で30分暗所にてインキュベートした。細胞を遠心して100μLのPBSに再懸濁させた。4μLのMC540希釈溶液を添加し、細胞を室温で20分暗所にてインキュベートした。細胞を沈殿させ、1mLのPBSに再懸濁してフローサイトメトリーで分析した。
培養での細胞増殖の抑制:
1x105の腫瘍細胞を完全培養液に播種した。培養1、2及び3日目に、その一部を取り出し、生存細胞を数えた(トリパンブルー)。
結果
実施例1のように、マウスモノクローナル抗体1F5 IgG2aを自己結合ペプチドと結合させた。競合解析によって抗体当たり平均1.8ペプチドが見出された。フローサイトメトリーにより、結合について親抗体をコンジュゲート形と比較した。図3に示すように、抗体の制限希釈を用いてアッセイしたとき、結合はコンジュゲート抗体について増加した。この特徴は、結合蛍光のより強い強度へのシフトによって示された。一連の希釈で比較したとき、コンジュゲート抗体は、親抗体と同じレベルの強度を達成するためにほぼ1/10の抗体濃度を要求した(図4)。図5に示すように、コンジュゲート抗体の量を増加させることによって蛍光強度の低下が生じ、これはおそらく内在化のためであろう(内在化は、薬剤、毒素及び短軌道長の放射線治療用同位元素を含むイムノコンジュゲートの潜在能力を高めるために用いることができるSAT技術の特性である)。さらにまた、アポトーシスを始動する能力について試験したとき、コンジュゲート形(Sab)は天然の抗体よりもはるかに活性が高く、天然の抗体を含むほんの小分画と比較したときほとんどの細胞が3日までに死滅した(図6)。
【0034】
実施例4:抗GM2抗体による結合及びアポトーシスの強化
細胞株及び抗体:
ヒトT細胞白血病Jurkat細胞を10%ウシ胎児血清及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンホテリシン)を補充したRPMI1640で増殖させた。キメラハムスター抗GM2抗体(ch-α-GM2)はコリキサ社(Corixa Corporation, Seattle, WA)から入手した。キメラ化後に、得られた抗体はガングリオシドGM2発現標的細胞でアポトーシスを誘発するというその能力を失った。
抗体-ペプチドコンジュゲートの合成:
T15ペプチドASRNKANDYTTEYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)(自己結合抗体-T15のVH-由来ペプチド(Kaveri et al. 1991))及びスクランブルT15ペプチド(T15-scr)(配列番号:3)(T15アミノ酸配列からランダムに生成)はジーンメドシンテシス社(Genemed Synthesis, South San Francisco, CA)により合成された。スクランブルペプチドをコントロールとして用いた。抗体をPBS(pH6.0)に対して透析し、続いて200μMのNaIO4を1/10容積で添加し、暗所で30分間4℃にてインキュベートした。グリセロールを30μMの最終濃度で添加することにより反応を停止させ、サンプルを4℃で30分間PBS(pH6.0)に対して透析した。50倍モル過剰のT15又はスクランブルペプチドを前記抗体に添加し、37℃で1時間インキュベートした。L-リジンを添加し、37℃で30分間インキュベートして、残余の反応性アルデヒド基をブロッキングした。ブロッキング工程の後で、抗体コンジュゲートをPBS(pH7.2)に対して4℃で一晩透析し、続いて使用まで4℃で保存した。
直接結合ELISA:
GM2ガングリオシドをメタノールに溶解し、96ウェルのポリスチレンプレート(Costar, Cambridge, MA)のウェル当たり0.5μgで被覆し一晩乾燥させた。前記ウェルを1%のBSAで2時間室温にてブロッキングし、400μgの抗GM2抗体(1%BSAで希釈)を第一のウェルに加え、続いて連続的に1:1に希釈した。1時間のインキュベーション後、前記ウェルを5回洗浄し、HRP-結合抗ヒトIgG(Sigma-Aldrich)を1:1000希釈で添加し、さらに1.5時間インキュベートした。3回洗浄後、基質o-フェニレンジアミンを用いて結合抗体を可視化し、分光光度計を用いてOD492で計測した。
特異的結合ELISA:
ガングリオシドGM2、GM1、GM3を0.5μgのDMSOに溶解し、96ウェルのポリスチレンプレート(Costar, Cambridge, MA)で被覆して一晩乾燥させた。前記ウェルを1%のBSAで2時間室温にてブロッキングし、400μgのch-α-GM2抗体(抗GM2-15抗体)を第一のウェルに加え、続いて連続的に1:1に希釈した。1時間のインキュベーション後、前記ウェルを5回洗浄し、HRP-結合抗ヒトIgGを添加し、さらに1.5時間インキュベートした。3回洗浄後、基質o-フェニレンジアミンを用いて結合抗体を可視化し、前に記載したようにアッセイした。
抗体自己結合ELISA:
2μg/mLの裸のch-α-GM2(抗GM2)又はch-α-GM2-T15(抗GM2-15)でコスタービニルアッセイプレートを被覆した。3%のBSAでブロッキングした後、0.5μg/ウェルのビオチン基光添加した抗GM2-T15を添加した。続いて前記抗体を2時間室温でインキュベートした。3回洗浄後、アビジン-HRP(Sigma-Aldrich)を1:1000希釈で添加し、さらに1時間インキュベートした。結合抗体をo-フェニレンジアミンを用いて可視化し、前に記載したようにアッセイした。
【0035】
FACSによって検出される細胞表面結合:
ウェル当たり2x105のJurkat細胞を6ウェルプレートに播種して一晩インキュベートし、続いて細胞を採集し、P/B/G/A緩衝液(PBSに0.5%BSA、5%ヤギ血清)で2回洗浄した。続いて細胞を、5μg/mLの抗GM2抗体を含む100μLのP/B/G/A緩衝液に30分懸濁した。P/B/G/A緩衝液で洗浄後、FITC-結合抗ヒトIgG(Sigma-Aldrich)(100μLのP/B/G/Aで1:1000に希釈)を添加し、氷上で30分間インキュベートした。P/B/G/A緩衝液で洗浄後、10μg/mLのヨウ化プロピジウム(生存率プローブとして)を含む400μLのP/B/G/A緩衝液に細胞を懸濁し、フローサイトメトリーで分析した。
アネキシンV染色によるアポトーシスの検出:
ウェル当たり2x105のJurkat細胞を6ウェルプレートに播種した。6時間後、20μg/mLの抗GM2又は抗GM2-T15抗体とともに細胞を12時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞の小部分(50μL)を取りおいて生存率をアッセイし、一方、残りの細胞を採集して冷PBSで洗浄した。続いて細胞を100μLのアネキシン染色緩衝液に再懸濁し、5μLのAlex蛍石488を1xのアネキシン結合緩衝液95μLに添加しさらにシトックス(Sytox)を1:1000の希釈で添加した。室温で15分間インキュベートした後、1xのアネキシン結合緩衝液400μLを添加し、サンプルをFACSで分析した。
抗体処理細胞の生存率アッセイ:
アネキシン実験で取りおいた細胞サンプルの小部分を生存率アッセイで用いた。前記細胞懸濁物から10μL部分を取り、トリパンブルー排除アッセイを用いて生存率を決定した。
統計解析:
統計解析は、ワンウェイANOVAとそれに続くニューマン-ケウルス(Newman-Keuls)の後テストを用いて実施した。データは平均+SDで示される。
【0036】
結果
自己結合ペプチドは抗体とその特異的ガングリオシドとの結合を強化した:
抗体-ペプチド結合に続いて、T15結合ch-α-GM2抗体(抗GM2-T15)の結合能力を、直接結合ELISAを用いて決定した。図7に示すように、ch-α-GM2抗体(抗GM2)及び抗GM2-T15抗体は、ガングリオシドGM2との結合において用量依存増加を示した。抗GM2-T15抗体は、裸の抗GM2抗体と比較して全ての被検用量でより強い結合能力を示し、自己結合T15ペプチドは、与えられた抗体濃度でch-α-GM2抗体の抗原結合能力を高めた。
ELISAによって示される抗体の自己結合の作用動態:
次に、ガングリオシドGM2とT15ペプチド連結抗体との結合における増加はその自己結合特性によるものか否かをELISAによって調べた。図8に示すように、抗GM2-T15抗体は、ウェルに被覆したペプチド結合抗GM2-T15抗体との結合でより強い用量依存性増加を示し、一方、前記はペプチド非結合抗GM2抗体との有意な結合を示さなかった。これらのデータは、抗GM2-T15抗体は、それ自身と結合しえるか、又はFc-結合自己好性ペプチド部分を介してホモダイマーを形成することができることを示している。
T15の結合はch-α-GM2抗体の特異性に変化を生じない:
T15ペプチドの結合が、前記抗体の同族との結合特異性に変化を与えるか否かを判定するために、直接抗原結合ELISAを用いて、抗GM2-T15結合抗体の結合特異性を決定した。図9に示すように、抗GM2-T15抗体は特異的な用量依存性増加をガングリオシドGM2との結合で示し、一方、ガングリオシドGM1又はGM3とのバックグラウンドを超える結合は検出されなかった。この結果によって、自己結合T15ペプチドの付加はch-α-GM2抗体の特異性に変化を与えずまたその特異性も低下させないことが確認された。
抗GM2抗体と標的腫瘍細胞との表面結合の強化:
ヒトT-細胞白血病細胞株Jurkatは、ガングリオシドGM2を発現することが知られている(Suzuki et al. 1987)。Jurkat細胞の表面で発現される天然のガングリオシドGM2と結合するペプチド結合抗GM2-T15抗体の能力をペプチド非結合抗GM2抗体の能力とフローサイトメトリーで比較した。図10に示すように、ch-α-GM2抗体(抗GM2)は、バックグラウンドレベルよりも3倍強いGM2特異的結合シグナルを示したが、T-15結合抗GM2抗体によって示された結合は、非ペプチド結合抗体よりも2倍高かった。この結果は、ペプチド結合Abによって示される結合の強化はこの抗体の自己凝集のためであることを提唱している。
【0037】
腫瘍増殖の抑制:
抗体とB-細胞レセプターとの結合はBCRの架橋を誘発し、これは順次細胞分裂を抑制し(Ward et al. 1988)、さらに細胞死シグナルを生じる(Hasbold et al. 1990;Wallen-Ohman et al. 1993)。さらにまた、B-細胞に対して誘導された化学的ダイマー化抗体は、BCRの超架橋、続いて細胞分裂の抑制及び腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する(Ghetie et al. 1994;Ghetie et al. 1997)。T15-結合抗GM2抗体が同様な抗分裂作用を誘発するか否かを決定するために、2x105のJurkat細胞を抗GM2又はコントロール抗体の存在下又は非存在下で12時間培養し、続いて残留する生存細胞数を数えた。図11に要約するように、“無抗体”又はコントロールヒトIgG抗体(HuIgG)処理は細胞増殖又は生存率に影響を与えなかったが、抗GM2抗体に関してはある程度の影響があった。しかしながら、T15連結抗体は、Jurkat細胞増殖の顕著な抑制を示した(細胞数は、裸の抗GM2抗体処理細胞と比較して2倍を超える低下、コントロールIgG処理に対しては4倍を超える低下を示した)。比較及び陽性コントロールとしては、アクチノマイシンDはアポトーシス誘発能力を示し、スーパー抗体よりもわずかに高いレベルであった。
アポトーシスの誘発:
細胞表面発現ガングリオシドに対して誘導された抗体の抗腫瘍作用はアポトーシスの誘発によるものか否かを決定するために、細胞増殖実験で用いた細胞サンプルを、アネキシンV染色を測定することによってアポトーシス誘発について分析した。結果を表2に要約する。
表2:アネキシンV染色によるアポトーシス分析
*データは4セットの実験のまとめである。
ch-α-GM2抗体(抗GM2)、又はスクランブルしたコントロールペプチドと結合させたch-α-GM2抗体(抗GM2-T15scr)によるJurkat細胞の処理では、コントロールヒトIgGによる処理で誘発されるレベルを有意に超えるアポトーシスは誘発されなかった(軽度な2倍増加が観察された)。しかしながら、抗GM2-T15結合抗体で処理されたJurkat細胞では顕著な量のアポトーシスを受け、バックグラウンドのほぼ8倍、ペプチド非結合抗体又はコントロール結合抗体によって誘発されるレベルの4倍を超える。これらの結果によってT-15結合抗体の活性及び特異性が確認された。
【0038】
実施例5:自己好性ペプチド配列T15-scr、T15-scr2、R24及びR-24チャージの生成
ペプチドを実施例1のように合成した。この配列は表3及び4に示されている。
表3:自己好性結合ペプチドの配列
表4:膜貫通ペプチドの配列
R24に由来するペプチドは、DMSO又はアルコールを除き、溶解させるのが困難である。そのような可溶化剤を用いることは、抗体を変性させるだけでなく、抗体の親水性領域への結合を困難にする。この溶解性の問題を克服するために、表3に示すようにチャージアミノ酸への配列の添加又は変更を実施した。得られた改変ペプチド(R-24チャージ)は水性緩衝液に可溶性であり、トリプトファン又はヌクレオチド結合部位と結合させることができ、さらに抗GM2抗体と結合させたときに自己結合が保存されるとともにアポトーシスを誘発することができた。T15配列に存在する同じアミノ酸をランダムに再編成し、更なる合成ペプチドの構築に使用した。このスクランブル配列(T15scr又はT15s)は自己結合能をもたず、抗GM2抗体と結合させたときアポトーシスを誘発しなかった(実施例4、表2参照)。同様な態様で、ランダムに選別した第二の配列(T15配列のアミノ酸から誘導)を用いて、合成ペプチドを生成した(T15scr2)。第一のスクランブル配列と異なり、このペプチドは自己結合を示し、抗GM2抗体と結合させたとき、最初のT15配列よりも高いレベルでアポトーシスを誘発した。したがって、自己結合性作用動態は、最初のT15配列と同じアミノ酸であるが最初のT15とは異なる順番で編成されているものを用いて作り出すことができる。これらの同じアミノ酸を自己結合のスクリーニングと併せて用いて作成したペプチドライブラリーを使用して、他の自己結合配列を同定することができよう。
【0039】
実施例6:種々の免疫グロブリン結合部位の比較
T15ペプチド配列を、ヌクレオチド結合部位トリプトファン親和性部位を介して、及びFc領域上の炭水化物の過ヨウ素酸塩の酸化を介して抗GM2抗体と結合させた。図12に示すように、アポトーシスを始動する能力について試験したとき、ヌクレオチド部位での結合(GM2-N3-ATP-T15/ビオチン)は、炭水化物連結(抗GM2-T15)よりも高いレベルのアポトーシスを生じた。これは、炭水化物連結は抗体当たり8−10ペプチドを加え、ヌクレオチド連結は抗体当たり2ペプチドしか加えないという事実を一顧だにしていない。したがって、親和性部位での結合がペプチド結合の最良の方法であった。抗体のエプシロン-アミノ酸との結合(ヘテロ二官能性架橋剤を介する)は、不活性なコンジュゲートを生じた(データは示されていない)。
【0040】
実施例7:アポトーシス活性の回復
GM2糖脂質に対する親抗体(非ヒトハイブリドーマに由来する)を、ヒトの癌(非小細胞肺癌を含む)に対しアポトーシスを始動する能力について試験した(図13)。親抗体は、癌細胞の高レベルのアポトーシス及び殺滅を示した。前記抗体はまた、ヌードマウスモデルで癌の増殖抑制にも有効であった(データは示されていない)。ヒトでの免疫原性に対する潜在能力を除去するために、重鎖及び軽鎖CDRをヒトIgG1にクローニングすることによって前記抗体を“ヒト化”した。親和性及び特異性を保持しているにもかかわらず(データは示されていない)、ヒト化抗体はアポトーシス始動能力を大きく低下させた。対照的に、自己結合ペプチド(Sab)と結合させたヒト化抗体は、親抗体と同様な高レベルのアポトーシスを示した。
更なる実験はネズミの抗体、R-24に関する。前記抗体はヒトメラノーマ細胞上のGD3ガングリオシドを標的とする。天然に発現されるとき、この抗体は自己結合活性及び患者で治療活性を有するが、ヒト化抗体では、結合親和力、自己結合活性及び治療活性が失われている(Chapman et al. 1994)。ヒト化R24抗体の治療活性の回復はまた自己結合ペプチドとこの抗体との結合によって達成することができる。
抗体TEPC-15及びT15/S107のヒト化型もまた自己結合ペプチドとの結合により利益を受け、自己結合及び治療活性を回復又は強化することができる。
【0041】
実施例8:ハーセプチン(Herceptin(商標))スーパー抗体による結合及び腫瘍認識の強化
ハーセプチン(Herceptin(商標))(HER2/neuに対するモノクローナル抗体)は、乳癌治療用としてFDAによって認可された。前記抗原は乳癌のほぼ30%で発現されるが、このような患者の約半分しか治療効果を始動させるために十分な発現レベルを示さない。実際、患者は通常、診断検査で前スクリーニングを受けそれらの治療適切性が決定される。HER2/neuはまた他の癌(例えば非小細胞肺癌)でも発現されるが、典型的には極めて低レベルで発現され、このタイプの癌の治療を不適切にしている。自己好性ペプチドをハーセプチン(Herceptin(商標))と結合させ、非小細胞肺癌に結合する能力を試験した。図14(上段パネル)に示すように、ハーセプチンはこの癌と非常に弱く反応し、無関係の抗体と比較して、0.5%の細胞のみが陽性であった。対照的に、同じ癌をハーセプチンの自己好性ペプチド結合形(すなわちスーパー抗体形)で良好に検出することができ、無関係の抗体と比較して57%を超える細胞が陽性である(下段パネル)。ハーセプチンのスーパー抗体形はまた親抗体よりも良好に増殖を抑制し、親抗体と異なりアポトーシスを始動させることができた。
【0042】
実施例9:トリプトファンペプチドと抗体との光架橋
抗体と試薬:
抗ヒトIgG(完全分子)-ペルオキシダーゼ結合二次抗体、アビジン結合ペルオキシダーゼ、抗ヒトIgG(完全分子)抗体、モノガングリオシドGM2は、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から購入した。抗GM2抗体、ハーセプチン及び抗GM3はコリキサ(Corixa, Seattle, WA)、ジェネンテク(Genentech, San Francisco, CA)及びCMI(Havana, Cuba)からそれぞれ入手した。
以下の2種類のTrp-ビオチンペプチドを設計した:KAAGW(配列番号:8)(アルファアミノ基上に1つのビオチン分子を含む(単ビオチン-ペプチド))及びKAAKGEAKAAGW(配列番号:9)(リジンのアルファ及びエプシロンアミノ基上に複数のビオチン分子を含む(多ビオチン-ペプチド))。これらのペプチドはジーンメドシンテシス社(Genemed Synthesis, Inc., San Francisco, CA)によって合成された。
GM1、2及び3はシグマ-アルドリッチから入手し、グリコリルGM3はアレキシス(Alexix)USA(San Diego, CA)から入手した。
トリプトファン部位を用いるビオチン基光添加:
全ての抗体をトリプトファン含有ペプチドと室温で1時間インキュベートした。前記抗体を200、100、50、10及び1μM濃度のビオチン-ペプチドでビオチン基光添加を実施した。光架橋は、UV架橋装置FP-UVXL-1000(Fisher Scientific)を使用し最適設定100μj/cm2で実施した。サンプルをPBS(pH7.4)緩衝液に対して透析した。抗体濃度はクマシープラスプロテインアッセイ(Comassie Plus Protein Assay, Pierce)を用いて決定した。化学的なビオチン基添加は、NHS-ビオチン(Pierce Chemical, Rockford, IL)を用いて実施した。キメラ抗GM3グリコリル(CIMAB, Havana, Cuba)は、15モル過剰のNHS-ビオチンを製造業者のプロトコルにしたがって使用してビオチン基添加を実施した。
直接抗体結合ELISA:
ビオチン基光添加抗体の2μgを第一のウェルに加え、さらに連続的に希釈し4℃で一晩インキュベートすることによって前記抗体で被覆した。前記ウェルを3回洗浄し、PBS(pH7.4)に溶解した3%のBSAで2時間ブロッキングした。プレートを3回洗浄し、1:1000希釈のアビジンペルオキシダーゼコンジュゲート(100μL)を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄溶液で3回洗浄した。100μLのOPD溶液(OPD緩衝液、o-フェニレンジアミン及び1μLの30%過酸化水素/mL)を各ウェルに添加した。発色は30μLのH2SO4(4N)の添加によって停止させ、光学密度はフィッシャーサイエンティフィックマルチスキャン(Fisher Scientific Multiskan)RCプレート読取装置を用い492nmで各ウェルをスキャンして決定した。
【0043】
抗体捕捉ELISA:
ヤギ抗ヒトIgG完全分子を各ウェル当たり1/100希釈で4℃にて一晩被覆した。前記プレートを3回洗浄し、PBS(pH7.4)中の3%のBSAで室温にて2時間ブロッキングした。プレートを3回洗浄し、2μgのビオチン基光添加抗体を第一のウェルに加え、連続的に希釈し、室温で2時間又は4℃で一晩インキュベートした。プレートを3回洗浄し、1:1000希釈のアビジンペルオキシダーゼコンジュゲート(100μL)を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄溶液で3回洗浄した。100μLのOPD溶液(OPD緩衝液、o-フェニレンジアミン及び1μLの30%過酸化水素/mL)を各ウェルに添加した。発色は30μLのH2SO4(4N)の添加によって停止させ、光学密度はフィッシャーサイエンティフィックマルチスキャン(Fisher Scientific Multiskan)RCプレート読取装置を用い492nmで各ウェルをスキャンして決定した。
モノガングリオシドELISA:
GM1、GM2、GM3及びグリコリルGM3モノガングリオシドをメタノールに溶解し、さらにウェル当たり0.5μgをポリスチレンマイクロタイタープレート上で乾燥させることによって一晩被覆した。前記ウェルを1%BSAで2時間ブロッキングした。GM2トリプトファンT15コンジュゲートを1%BSAに2μg/μLの濃度に添加し、300μLをウェルの第一の列に加え、さらに連続的に希釈した。室温で1時間インキュベートした後、洗浄溶液でウェルを5回洗浄した。プレートを3回洗浄し、1:1000希釈のアビジンペルオキシダーゼコンジュゲート(100μL)を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄溶液で3回洗浄した。100μLのOPD溶液(OPD緩衝液、o-フェニレンジアミン及び1μLの30%過酸化水素/mL)を各ウェルに添加した。発色は30μLのH2SO4(4N)の添加によって停止させ、光学密度はフィッシャーサイエンティフィックマルチスキャン(Fisher Scientific Multiskan)RCプレート読取装置を用い492nmで各ウェルをスキャンして決定した。
種々のpHでのビオチン基光添加:
抗体を100μMのビオチンペプチドとともにpH5、6、7、8、9、10で1時間、室温でインキュベートしUV架橋した。サンプルはPBS(pH7.4)に対して透析し、捕捉ELISAで分析した。
【0044】
結果
ビオチンアミノ酸のビオチン基光添加についてのスクリーニング:
いくつかのビオチン基添加アミノ酸をモノクローナル抗体OKT3と混合し、UVに暴露した。続いて前記混合物をドット-ブロットに付し、アビジン-HRPと反応させた。ドットをスキャンし、相対的発色強度を記録した。図15に示すように、ビオチン基添加トリプトファンで光分解されたOKT3は、アビジンとのもっとも強い反応を生じ、ビオチン-チロシンがこれに続いた。他のビオチンアミノ酸で光分解されたOKT3はアビジンとバックグラウンドレベルの反応を示しただけであった。
Trp-ビオチン光分解の定量:
ビオチン-Trpの親和性に関するデータを入手するために、キメラ抗ガングリオシド(抗GM2)モノクローナル抗体をビオチン-Trpの濃度を増加させながら光分解に付した。図16Aに示した結果は、100μMレベルでの抗体のビオチン基添加の飽和プラトーを示している。同様な結果が、ガングリオシドに対する別のキメラモノクローナル抗体の力価測定でも得られた(データは示されていない)。
ビオチン基光添加のTrp親和性のpHに対する依存性を調べた。ヒト化抗体ハーセプチン(Herceptin(商標))を種々のpHで光分解した。図16Bに示されるように、最高のビオチン基添加はpH9であった。ビオチン基添加に対する同様なpH依存性は他のモノクローナル抗体でも観察された(データは示されていない)。
ビオチン-Trp-ペプチドの共有結合検査:
ビオチン基光添加はビオチンペプチドと抗体との間で共有結合を生じることを証明するために、ビオチン基添加キメラ抗ガングリオシド抗体を6MのグアニジンHClに暴露し、続いてPBSに対して透析し、直接アビジン-HRP ELISAで試験した。図17は、天然のビオチン基添加抗GM2抗体及び変性/再生抗体のELISAの読みを示している。両調製物は同一のELISA色を生じた。UVに暴露されていない抗GM2はELISAでアビジンと反応しなかった。これらの結果は、Trp-ビオチンペプチドを用いるビオチン基光添加は、共有結合によりビオチン-ペプチドを抗体に結合させるという証拠を提供している。
単及び多ビオチン基付加抗体の抗原結合:
次に、末端Trpを含むビオチン-ペプチドの使用を検討した。以下の2種類のTrp-ビオチンペプチドを合成した:1)KAAGW(配列番号:8)アルファアミノ基上に1つのビオチン分子を含む(単ビオチン-ペプチド))及び2)KAAKGEAKAAGW(リジンのアルファ及びエプシロンアミノ基上に複数のビオチン分子を含む(多ビオチン-ペプチド))。
図18Aでは、単ビオチン-ペプチドヒト化抗GM3を多ビオチン-ペプチド抗GM3と不溶化ガングリオシドに対して比較した。多ビオチン抗体は、アビジン-HRPでより強いELISAシグナルを生じた。単及び多ビオチン基添加抗体間で同様な相違がキメラ抗GM2で観察された(図18B)。
ビオチン基光添加と化学的ビオチン基添加との効率比較:
化学的ビオチン基添加技術は、反応性アミノ酸側鎖の多様な利用可能性に依存し、ビオチンタンパク質の混合物を生じる。抗体の場合、結合ビオチン数は分子当たり8−12である。対照的に、アフィニティ依存ビオチン基添加は抗体当たりの親和性部位数によって制限を受ける。ヌクレオチド部位を標的とする場合、Ig分子当たり2つの親和性部位が利用可能である。Trp部位の数は、市販のビオチン決定アッセイで概算したとき抗体の1分子当たり3から5の間で変動する(データは示されていない)。図19では、アビジン-HRPと不溶化抗体との反応が示されている。予想されたとおり、化学的にビオチン基を添加した抗体はビオチン基光添加抗体より強いELISAの読みを生じた。
抗原特異的ELISAでの検出感度を比較するために、キメラ抗グリコリルGM3抗体のビオチン基光及び化学的添加を実施した。図20に示すように、化学的ビオチン基添加抗体は、化学的方法を用いた場合抗体上のビオチン分子数の数がはるかに多いためにビオチン基光添加抗体よりも強いシグナルを生じた。
親和性-ビオチン基光添加抗体の抗原特異性を示すために、キメラ抗グリコリルGM3抗体をELISAで用いた。図21に示すように、光-ビオチン抗体はその標的抗原を認識するが、コントロールのガングリオシドGM1、GM2及びGM2は認識しない。
【0045】
考察
生物学的又は化学的特性をもつペプチドを結合させることは、抗体の潜在能力を強化するか、又は抗体に診断的及び治療的有用性を付与する有益な方法である(Zhao et al. 2001;Zhao et al. 2002a;Zhao et al. 2002b)。例えば、抗体の標的誘導は自己好性ペプチドを結合して標的誘導及びアポトーシス誘発が強化されたダイマー化抗体を生成することによって高められた。別の実験では、膜転移配列(MTS)を抗体に結合させ、そのようなMTS-抗体は、細胞を害することなく生細胞の細胞膜を貫通することを示した(Zhao et al. 2001)。カスパーゼ3酵素に対するMTS抗体は腫瘍細胞でアポトーシス誘発を阻害することができる。C3d補体フラグメント由来ペプチドの結合は、抗体ワクチンに対する免疫応答を強化し、分子アジュバントワクチンを生じる(Lou, 1998)。
これらの結合のいずれにおいても、不変炭水化物又は不変ヌクレオチド結合部位が用いられる。両方法とも複雑な化学反応を必要とするという欠点を有する。炭水化物による方法は、反応性アルデヒドを生成するために抗体の酸化を要求し、ヌクレオチド親和性光架橋はアジド-アデノシンペプチドの合成を必要とする(Lou and Kohler 1998)。
本明細書では、抗体は芳香族炭化水素部分(AHM)(複素環式アミノ酸(例えばトリプトファン)を含む)と光架橋することができるという発見を根拠とする、ペプチドの単純な一工程アフィニティ架橋技術が提供される。したがって、末端トリプトファンを含むペプチドが抗体のための親和性光架橋試薬である。
これらの新規なアフィニティ結合方法がビオチン基添加ペプチドを用いて提示された。抗体とTrp-ビオチンペプチドとの混合物をUVエネルギーに暴露することによって、ELISA及び他のビオチン系検出方法で用いることができるビオチン抗体が生成される。そのようなビオチン基アフィニティ添加抗体は、通常のビオチン基添加化学反応よりも少ないが、ELISAで有用なシグナルを生成するには十分な規定数の結合ビオチンを有する。現在のところ、Trp-親和性光架橋の方法は、以前(Lou et al. 1998;Zhao et al. 2001;Zhao et al. 2002a;Zhao et al. 2002b)に報告されたものと同様な、生物学的及び化学的特性をもつペプチドを結合させるために用いられる。
トリプトファン親和性部位によるビオチン基添加の利点は、(i)アミノ酸側鎖を改変しない穏やかな一工程方法であること、及び(ii)規定数のビオチン分子で標識された再生可能な抗体生成物を生じることである。
【0046】
実施例10:スーパー抗体による循環ox-LDLの検出
本発明の原理にしたがって調製した、循環ox-LDLのエピトープを認識する自己好性抗体の能力は、サンドイッチアッセイを実施することによって決定することができる。第一に、ヤギ抗マウスIgG-Fc抗血清でマイクロタイターウェルを被覆し、前記ウェルにLDL粒子(例えばアポB)に特異的な結合親和性を有するマウスmAbを添加した。次いで血漿を前記被覆マイクロタイターウェルと接触させ、その後十分に洗浄した。続いてスーパー抗体(自己好性ペプチドと結合させた、ox-LDL特異的mAbを含む)を添加して、前記サンドイッチを覆う。完成したサンドイッチを自己好性ペプチドに特異的な標識二次抗体によって可視化することができる。ox-LDLに特異的な結合親和性を有するスーパー抗体は、ox-LDLに特異的でない類似のスーパー抗体よりも少なくとも数倍の検出強化を示すはずである。ox-LDLのコントロールはCu2+-酸化LDLによって提供される(米国特許6,225,070号(Witztum et al.)を参照されたい)。
【0047】
実施例11:アテローム性動脈硬化症の慢性炎症の抑制
アテローム性動脈硬化症をもたらす慢性炎症は、ox-LDLと強力に結合し、それによってマクロファージによるox-LDLの摂取を阻止するか又は低下させるスーパー抗体の能力によって抑制することができる。ox-LDLに特異性を有するヒト化自己好性抗体は、上記に記載の治療スケジュールにしたがって患者に投与される。自己好性抗体の自己結合特性は、未結合抗体の自己結合特性よりもox-LDLに対するそれらの親和性を増強させ、マクロファージによるLDL粒子の認識を低下させる。ox-LDLとマクロファージの結合は、イムノコンジュゲートの存在下では50%を超えて効果的に抑制されるはずである。
当業者には明白なように、本発明の実施においてはある種の改善及び改変が、本発明の範囲を逸脱することなく前述の開示を基にして可能である。したがって、本発明の範囲は本明細書に添付の特許請求の範囲及びその等価物によって規定される。
【0048】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】抗カスパーゼ3抗体を用いた、MTS結合抗体とMTS非結合抗体の内在化の比較である。
【図2】MTS結合(Sab)抗体の存在下及び非存在下における化学療法剤(アクチノマイシンD)の細胞死に対する効果を示す。
【図3】T15ペプチドを結合させた抗CD20抗体の結合の強化を示す。
【図4】T15ペプチド結合抗CD20抗体の低濃度抗体での結合の改善を示す。
【図5】T15ペプチド結合抗CD20抗体の高濃度抗体でのDHL-4細胞との結合の改善を示す。
【図6】T15ペプチド結合マウス抗CD20抗体によるアポトーシス誘発強化を示す。
【図7】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体のガングリオシドGM2との結合の比較である。
【図8】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体の自己結合活性を示す。
【図9】T15結合抗GM2抗体と種々のガングリオシドとの結合特異性を示す。
【図10】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体のJurkat細胞での細胞表面結合における相違を示す。
【図11】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体のJurkat細胞の増殖に対する影響を示す。
【図12】抗GM2抗体を用いた、抗体の親和性部位(ヌクレオチド)及び非親和性部位(CHO-炭水化物)と自己好性ペプチドとの結合の有効性の比較である。
【図13】T15ペプチド結合抗GM2抗体を用いた腫瘍細胞のアポトーシスの強化を示す。
【図14】ハーセプチン(Herceptin(商標);上段パネル)及びハーセプチンの自己好性ペプチド結合形(下段パネル)と小細胞肺癌細胞との結合の比較である。
【図15】ビオチン-アミノ酸とモノクローナルOKT3抗体との光結合を示す。ビオチン-アミノ酸パネルをモノクローナル抗体OKT3と20−50μMolの濃度で混合しUVに2分間暴露した。反応混合物をアビジン-HRPを用いてドットブロットし、スキャンした。
【図16】パネルA:キメラ抗GM2抗体とのビオチン-トリプトファン光結合の定量。キメラ抗GM2に種々のモル濃度のTrpペプチドを用いてビオチン基光添加を実施した。ELISAウェルをビオチン基光添加を実施したキメラ抗GM2とともにインキュベートし、ブロックし、さらにアビジン-HRPでデベロップした。パネルB:パネルAのように種々のpH、ELISAの下でのTrp-ビオチンペプチドによるヒト化抗Her2/neu(ハーセプチン)抗体のビオチン基光添加。
【図17】ビオチン基光添加抗GM2抗体の変性。図16AのようなELISAによる変性/再生抗体のビオチンの検出。
【図18】パネルA:単一ビオチン抗GM3抗体とマルチビオチン抗GM3抗体の比較。ELISAウェルをガングリオシドで被覆し、単一及びマルチビオチン抗GM3抗体を添加し、アビジン-HRPでデベロップした。パネルB:単一ビオチンキメラ抗Gm2抗体とマルチビオチンキメラ抗Gm2抗体のGm2結合についての比較。単一ビオチン抗体とマルチビオチン抗体の比較。ELISAは図19の場合と同様。
【図19】化学的にビオチン基添加した抗体とビオチン基光添加抗体との比較である。市販のNHS-ビオチンウサギ抗マウス抗体(Sigma)及びNHS-ビオチン抗GM2抗体をビオチン基光添加抗体と比較する。ELISAは図16と同様。
【図20】グリコリルGM3モノガングリオシドと結合する、ビオチン基光添加及びビオチン基化学的添加キメラ抗グリコリルGM3抗体の検出感度の比較である。ELISAは図19の場合と同様。
【図21】ビオチン基光添加抗グリコリルGM3抗体のモノガングリオシドGM1、GM2、GM3及びグリコリルGM3との抗原特異的結合を示す。ELISAは図20の場合と同様。
【図22】本発明の自己好性抗体(ox-LDLに対して免疫特異的である)が、なぜアテローム性動脈硬化症をもたらす慢性炎症を抑えることができるかについての提唱されるメカニズムを示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の参照
本願は米国特許出願第11/119,404号(出願日:2005年4月29日)の一部継続出願であり、その出願は米国特許出願第10/652,864号(出願日:2003年8月29日)(米国仮特許出願第60/407,421号(出願日:2002年8月30日)の利益を主張する)の一部継続出願であり、その出願は米国特許出願第09/865,281号(出願日:2001年5月29日)の一部継続出願であり、その出願は米国特許出願第09/070,907号(出願日:1998年5月4日)(現在、特許第6,238,667号)の一部継続出願である。上記出願の開示は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、抗体、抗体の作成方法、並びに多様な症状の検出、予防及び/又は治療における抗体の使用方法に関する。
【0003】
背景技術
抗体は、慢性疾患、例えば癌及び自己免疫疾患の処置のための主要な治療ツールとして出現した。重要な成功例には、乳癌治療におけるハーセプチン(Herceptin(商標))及び非ホジキンリンパ腫の治療におけるリツキサン(Rituxan(商標))が含まれる。疾患の治療における抗体の主要な利点は、疾患誘導細胞又は分子を標的とするが、身体の健康な組織及び正常産物を傷つけないそれらの能力にある。しかしながら、実験室での研究で所望の特異性を示す抗体が、非効率的な標的誘導性、低い治療効果及び/又は許容不能な副作用のために前臨床及び臨床評価ではしばしば成功しない。
治療用抗体がそれらの標的細胞に対して有効である主要なメカニズムは、細胞死を誘発すること、すなわち抗体誘発アポトーシスによることが知られている。そのような誘発アポトーシスは典型的には、細胞のアポトーシスシグナル経路の一部分であるレセプターを架橋することによって始動される。例えば、抗体の手段によるB細胞抗原レセプターの架橋は、B細胞腫瘍のアポトーシスを誘発する(M. Ghetie et al, 1997)。細胞レセプターの架橋はまた抗体のその標的抗原への結合親和力を高め、したがって全ての細胞表面依存性治療メカニズム、例えば、補体仲介殺滅並びに補体依存性オプソニン化及び食作用、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)を高めるとともに、細胞レセプターを標的とする抗体を用いたときには、細胞レセプターとの結合強化及び封鎖を介して細胞増殖阻害の強化又は細胞内代謝経路の変化をもたらすであろう。
【0004】
希少クラスの自己結合抗体(“自己好性(autophilic)抗体”又は“自己抗体”として多様な形で知られている)が自然界で同定されている。それらは、自己との非共有結合的相互作用を介してダイマー及び/又はポリマーを形成することができる。自己好性抗体のある例はTEPC-15であり、前記はアポトーシス細胞及びアテローム性動脈硬化症病巣のホスホリルコリンの通常は隠蔽された決定基を標的とする(J. Binder et al. 2003;C-Y. Kang et al. 1988)。ダイマー化又はマルチマー化は、改変抗体がその細胞表面標的に付着した後でのみ誘発されえる(すなわち“弁別的オリゴマー化”)。溶液中では、自己好性抗体はそのモノマー形とダイマー形の間で平衡を保つことができる(S. Kaveri et al. 1990)。
自己好性抗体はより大きなクラスに属する(本明細書では“スーパー抗体(商標)(SuperAntibodiesTM)”と称する)。本明細書で用いられるスーパー抗体は、通常的に抗体に付随する抗原結合特性の他に1つ以上の有利な特性を示す(H. Kohler et al. 1998;H. Kohler 2000)。特にこのクラスのスーパー抗体は、触媒的、アジュバント的、膜貫通性、及び/又は自己好性特性を有する抗体を含み、優れた標的誘導性及び治療特性をもつ分子が含まれる。そのようなスーパー抗体はキメラであると考えられ、典型的には、少なくとも1つの非抗体成分(例えばペプチドであって、前記ペプチドは触媒的、アジュバント的、膜貫通性、及び/又は自己好性特性を有する)に共有結合した抗体又は抗体フラグメントを含む。ある種のペプチドと抗体の結合は、抗体の能力(例えばアポトーシス誘発の能力)を高めることが示された(Zhao et al. 2001;Zhao et al. 2002a;Zhao et al. 2002b)。以前の実験で用いられた結合化学はヌクレオチド結合部位を利用するか(Pavlinkova et al. 1997)又は特異的結合部位として抗体の炭水化物部分を利用した(Award et al. 1994)。
【0005】
既知の抗体の抗原検出及び/又は治療有効性を高めるために、2つの別個の共有結合ドメインを含む多くのハイブリッド分子が提案された。例えば、米国特許5,219,996号(Bodmer et al.)は、抗体分子のアミノ酸残基のシステイン残基への変更とそれに続くシステインチオール基によるエフェクターまたはレポーター分子の抗体への結合を提唱している。米国特許5,191,066号(Bieniarz et al.)は、免疫グロブリンのFc領域での炭水化物分子の過ヨウ素酸酸化及び前記とジスルフィド化合物の結合を提唱している。米国特許6,218,160号(Duan)は、酵素と抗体との間にジヒドラゾン架橋を形成することによる酵素と抗体の位置特異的結合を提唱している。米国特許5,596,081号(Haley et al.)は、抗体分子へのプリン又はプリン類似体光親和性化合物の位置特異的結合のための方法を開示する。米国特許6,238,667号(Kohler)は、抗体上のプリン又はトリプトファン親和性部位でアジド-ペプチド分子を光化学的に抗体に架橋することを提唱する。米国特許公開公報2005/0033033(Kohler et al.)は、細胞アポトーシスを阻害するスーパー抗体を提唱する。前記文献では、スーパー抗体は、膜トランスポーターペプチドに結合した抗カスパーゼ抗体を含む。米国特許公開公報2003/0103984(Kohler)は抗体及びペプチドドメインを含む融合タンパク質を開示し、前記融合タンパク質では、ペプチドドメインは自己好性活性を示すことができる。米国特許6,482,586号(Arab et al.)は、細胞内標的誘導で使用される共有結合ハイブリッド組成物を提唱する。米国特許6,06,693号(Thorpe et al.)は、腫瘍血管の管腔表面のアミノリン脂質に結合させることによって癌を治療することを目的とする抗体及びコンジュゲートを提唱する。米国特許6,780,605号(Frostegard et al.)は、血小板活性化因子に特異的な抗体を用いる心脈管系疾患を診断する方法を提唱する。米国特許6,716,410号(Witztum et al.)は、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)に対して特異的な結合親和性を有するモノクローナル抗体を用いる、アテローム性動脈硬化症のための治療を提唱する。前記抗体は治療薬剤(例えば血栓溶解剤)と共有結合されている。米国特許公開公報2003/0143226(Kobayashi et al.)は、酸化LDLレセプターに対して特異的な結合親和性を有するモノクローナル抗体を提唱し、前記抗体はレセプターとoxLDLの結合を阻害する。
上記のアプローチは、抗体の抗原検出能力及び/又は治療有効性を強化するために提唱されているが、それらは、天然又は“ヒト化”状態において、適所配置又はそれらの標的の殺滅で十分には有効ではない。適切に改変された抗体を用いて、多くの疾患の検出、予防及び/又は治療を促進することがなお要求され続けている。本発明の目的は、適切に調製したスーパー抗体を用いて前述の要求を満たすことである。
【0006】
発明の要旨
本発明は、自己好性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は触媒的特性を有する新規なスーパー抗体を提供する。本発明が意図するスーパー抗体は、免疫グロブリン(Ig)及び非免疫グロブリン(非Ig)ドメインを含み、この場合少なくとも1つの非Igドメインは、好ましくは化学的に生成されたハイブリッド分子(すなわちイムノコンジュゲート)として前記Igドメインに共有結合されている。前記免疫グロブリンドメインは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント、又はF(ab')2フラグメントを含むことができ、前記は抗原決定基に対する特異的な結合親和性を付与する。非Igドメインは、前記イムノコンジュゲートに自己好性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は触媒的特性を付与又は増強する有機的化学的部分であるが、ただしアジド、プリン又はピリミジン基を含まない。好ましくは、前記非Igドメインは自己好性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は触媒的特性を有するペプチドを含む。
本発明のまた別の特徴は、新規なスーパー抗体の製造方法を目的とする。本発明の方法では、光活性化が可能な有機分子が、前記有機分子に対して結合親和性を有する免疫グロブリン上の部位で前記免疫グロブリンと共有結合される。Igと光活性化可能有機分子との相互牽引力は、前記2つの物質の接触及び結合を活性化照射への暴露に際して促進する。好ましくは、前記有機分子は、光活性化に感受性を有する発色団、例えば芳香族炭化水素部分(プリン又はピリミジン基以外)を含む。さらにまた、アジド基は前記分子に存在している必要はない。
【0007】
好ましくは、本発明の芳香族炭化水素部分(AHM)(前記は光活性化能力を有する)は、単環又は多核アリール又は複素環である。そのような部分には、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、インドール、ベンゾフラン、チオナフテン、キノリン、又はイソキノリン基が含まれる。便利には、AHMは光活性化可能有機分子内にアミノ酸残基の側鎖部分として存在する。そのようなアミノ酸残基の例はトリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニンであり、前記はそれぞれインドール、フェノール、イミダゾール及びフェニル側鎖を有する。トリプトファン残基がもっとも好ましい。
本発明のスーパー抗体はまた、1つ以上の自己好性ペプチドと結合され機能性が付加されえる。例えば、スーパー抗体は、膜貫通ペプチド配列をもつことができる。前記配列は、抗体が細胞膜を通過して移動するのを促進する(抗体はそこで細胞内標的と結合する)。具体的な実施態様では、前記膜貫通ペプチドは少なくとも1つのMTSペプチド又はMTS最適化ペプチドを含む。さらにまた、自己好性スーパー抗体は膜貫通ペプチド配列と結合し、それによって抗体に両機能性が付与されえる。
【0008】
本発明のまた別の特徴では、アテローム性動脈硬化症プラークに対し特異的結合親和性を有するスーパー抗体(前記はアテローム性動脈硬化症の検出、予防及び/又は治療を可能にする)が意図される。例えば、自己好性スーパー抗体は、アテローム性動脈硬化症プラークの抗原決定基(例えばox-LDL)と結合することができ、さらにその抗原決定基といったん特異的に結合するとダイマー化又はオリゴマー化することができる。このようにして、マクロファージによるox-LDLの摂取を効率的に阻止するか又は減少させることができ、それによってアテローム性動脈硬化症に付随する慢性的炎症を抑える。具体的な実施態様では、前記イムノコンジュゲートの自己好性ペプチドは、T15、T15-scr2、R24、R-24チャージアミノ酸配列又は他の最適化アミノ酸配列を含む。好ましくは、スーパー抗体の免疫グロブリン及び/又はペプチドドメインはヒト化され患者における寛容性が改善される。
医薬組成物もまた意図され、前記は1つ以上のスーパー抗体及び医薬的に許容できる担体を含む。その優れた結合力のために、本発明のスーパー抗体は、対応する非自己好性抗体で実施可能な用量と同様な用量又はそれより低い用量で患者に投与することができる。
本発明のまた別の特徴では、アポトーシスを受けている細胞のアッセイが、細胞を本発明のスーパー抗体と接触させることによって実施される。スーパー抗体は、アポトーシスを受けている細胞の抗原決定基と特異的に結合し、レポーター分子又は二次抗体によって可視化することができる。アポトーシスに関連する抗原決定基の例は膜結合ホスホリルコリン及びホスファチジルセリンである。
【0009】
発明の詳細な説明
スーパー抗体の合成及び処方物
多くの免疫グロブリンがある種の光活性化が可能な芳香族部分に対して親和性を有することがこれまでに発見されている。そのような親和性は、免疫グロブリン(Ig)と前記芳香族炭化水素部分(AHM)との間の接近及び接触時間の延長を可能にし、それによってIgと前記AHMをもつ有機分子との光分解結合を促進する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、AHMとIgの親和性部位との間の牽引力はおそらくファンデルワールス力及び/又は双極子-双極子相互作用のためであり、前記は平行している芳香環の接近及び積み重ねを促進する。
本発明では、光活性化が可能な有機化合物をIgと共有結合させてイムノコンジュゲート(スーパー抗体)が形成される。そのようなイムノコンジュゲートは、光活性化が可能な有機化合物及びIgを混合し、前記光活性化可能有機化合物とIgとの共有結合に有効な光活性化条件に前記混合物をさらすことによって形成される。本発明の光活性化可能有機化合物は、Igに対する結合親和性を有する少なくとも1つのAHMを含む。しかしながら、前記光活性化可能有機化合物はアジド、プリン又はピリミジン基を含まない。なぜならば、そのような基はIgの異なる親和性部位と相互作用する可能性があるか、又は光活性化可能有機化合物の合成を不必要に複雑にする可能性があるからである。
本発明の好ましい特徴では、AHMに加えて、光活性化可能有機化合物は、自己結合性、膜貫通性、アジュバント的及び/又は酵素的特性を有するペプチドを含む。そのようなペプチドは、したがってその後形成されるイムノコンジュゲートに前記の特性を付与することができる。好ましくは、前記ペプチドを含む光活性化可能有機化合物は約5から約30アミノ酸残基を含む。
【0010】
本発明のさらに好ましい特徴では、前記ペプチドは、以下の群から選択される自己好性アミノ酸配列を含む:
NH-ASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR-COOH(配列番号:1)
NH-SKAVSRFNAKGIRYSETNVDTYAS-COOH(配列番号:4)
NH-GAAVAYISSGGSSINYA-COOH(配列番号:5)及び
NH-GKAVAYISSGGSSINYAE-COOH(配列番号:6)。
また別には、前記ペプチドは、以下の群から選択される膜貫通性アミノ酸配列を含む:
NH-KGEGAAVLLPVLLAAPG-COOH(配列番号:2)及び
NH-WKGESAAVILPVLIASPG-COOH(配列番号:7)。
光活性化可能有機化合物内のペプチドと共有結合されるAHMは、前記ペプチドの所望の特性に干渉しないように好ましくは前記ペプチドのC-末端又はN-末端に存在する。便利には、前記AHMは、アミノ酸(例えばトリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニン)の芳香族側鎖に存在することができる。
本明細書でいう“免疫グロブリン”は、ポリクローナル抗体でも、モノクローナル抗体でも、Fabフラグメント又はF(ab')2フラグメントでもよい。IgとAHMとの間の相互牽引及び共有結合は、免疫グロブリンの可変ドメインに存在する親和性部位で生じることが一般的には好ましい。自己好性ペプチドに対しては、前記は、細胞表面上の2つの近接するIg分子間の接近及び非共有結合型相互作用を担保することができる。Ig分子のそのような結合は、順次、細胞レセプターの架橋を促進し、さらに細胞内シグナリングを促進することができる。同様に、膜貫通性ペプチドに対しては、前記ペプチドのための細胞レセプター近くに前記ペプチドが存在することは、細胞内へのイムノコンジュゲートの輸送を促進することができる。IgとAHMとの間の結合親和性は、以下で示すように、芳香族レポーター分子(前記もまたIg結合部位に対して親和性を有する)との競合結合によって明示することができる。実際には、免疫グロブリン上に親和性部位が多数存在するために、複数の光活性化可能有機化合物をIgに共有結合させることができる。機能的には、本発明に関しては任意のタイプの免疫グロブリンを用いることができ、例えば癌関連抗原、カスパーゼ酵素、ox-LDL又は細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する免疫グロブリンである。
【0011】
本発明の芳香族炭化水素部分(AHM)は少なくとも1つのアリール、多核アリール、複素環、又は多核複素環基を含む。これらの種々の化学物質クラスの代表的なものは以下の官能基である:アリール−ベンゼン;多核アリール−ナフタレン、アントラセン及びフェナントレン;複素環−ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン及びイミダゾール;多核複素環−ベンゾフラン、アクリジン、チオナフトレン、インドール、キノリン及びイソキノリン、並びにそれらの幾何学異性体。したがって、光活性化可能有機化合物がAHMと共有結合するペプチドを含む実施態様については、前記AHMは前記ペプチドのアミノ酸残基、例えばトリプトファン(インドール)、チロシン(置換ベンゼン)、ヒスチジン(イミダゾール)、及びフェニルアラニン(ベンゼン)に存在しえる。代表的なAHMは表1に示す。
さらにまた本発明に包含されるものは、薬理学的に有効量の本発明のスーパー抗体及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物である。そのような担体の代表的なものは塩類溶液、例えば0.15%塩類溶液である。
好ましい実施態様では、光反応性を有するビオチン基添加トリプトファンがいくつかの抗体に挿入され、ビオチン基添加抗体が得られる。このビオチン基添加反応はATPの存在によって阻害されず(ATPは抗体上の保存ヌクレオチド結合部位のためのリガンドである(Rajagopalan et al. 1996))、異なる親和性部位が反応に中心的に関与することが提唱されている。さらにまた、UVエネルギーは複素環化合物(例えばトリプトファン)内で反応性ラジカルを誘発することができることが報告された(Miles et al. 1985)。したがって、本発明の好ましい実施態様では、UV光が、トリプトファン含有分子を抗体と前記抗体上のトリプトファン親和性部位で共有結合させるために用いられる。
【0012】
【表1】
【0013】
抗体のAHM(例えばトリプトファン)に対する親和性の発見に関しては、有機分子を抗体に結合させるために簡単で穏やかでかつ迅速な方法が利用可能である。実際の適用では、多数のビオチン基添加AMHを使用して、抗体にビオチン基親和性添加が実施される。さらにまた、生物学的又は化学的特性を有するAHM含有ペプチドを抗体に親和性を介して都合よく架橋して、スーパー抗体を作成することができる。
抗体コンジュゲートを合成するまた別の方法は、ペプチドを抗体に結合させるために化学的技術又は遺伝子工学技術を利用する。例えば、化学的手段によって、ペプチドを免疫グロブリン(完全なポリクローナル若しくはモノクローナル抗体又はそのフラグメント)に、Fc部分の炭水化物部位で、又は抗体のアミノ若しくはスルフヒドリル基に結合させることができる。さらにまた、ペプチドは、アジド-トリプトファン又はアジド-プリンを抗体に光架橋することによって、抗体の可変ドメイン構造に結合させることができる。後者のアプローチでは、ペプチドは、アジド基の光活性化によってトリプトファン又はプリン親和性部位で優先的に抗体と結合すると考えられる。さらに別のアプローチでは、キメラ抗体は、遺伝子操作技術を用い自己好性ペプチド及び全免疫グロブリン又はそのフラグメントの融合タンパク質として発現されえる。例えば以下を参照されたい:米国特許6,238,667号、PCT公開公報WO9914244、米国特許RE38,008号、米国特許5,635,180号及び米国特許5,106,951号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0014】
本発明の自己好性抗体は、典型的には自己好性配列を有する1つ以上のペプチドと結合した抗体を含む。本発明の自己好性抗体は本質的に任意の免疫グロブリンを含むことができると考えられる。いくつかの実施態様では、前記抗体は、疾患又は異常に関連する標的と結合し、この場合、標的との結合は前記疾患又は異常に対して治療的効果を有する。標的抗原には細胞表面抗原(トランスメンブレンレセプターを含む)が含まれえる。具体的な実施態様では、前記抗体のIg成分は以下を含むことができる:モノクローナル抗体5D10(ヒトB細胞レセプターと結合する)、モノクローナル抗体S1C5(ネズミB細胞レセプターと結合する)、抗CD20抗体(例えばリツキシマブ(rituximab)(Rituxan(商標))(正常並びに悪性の前B及び成熟Bリンパ球上のCD20と結合する)、マウスモノクローナル抗体IF5(ヒトB細胞リンパ腫上のCD-20に特異的である)、トシツマブ(tositumab)(Bexxar(商標))(前記もまたBリンパ球上のCD20と結合する)、抗GM2(リンパ球上のヒトガングリオシドGM2と結合する)、トラスツズマブ(trastuzumab)(Herceptin(商標))(乳房細胞によって産生されるタンパク質HER2と結合する)、抗カスパーゼ抗体(アポトーシスで必要とされるカスパーゼタンパク質を認識する)、ヒト化TEPC-15抗体(酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)と結合してマクロファージによる酸化LDLの摂取を防ぐことができる)、ヒト化T-15イディオタイプ陽性抗体(ホスホコリンと結合する)、及びヒト化R24抗体(メラノーマ細胞表面上のヒトGD3ガングリオシドを認識する)。
【0015】
本発明の自己好性抗体は任意の自己好性ペプチド配列を含むことができる。前記自己好性ペプチドはまた最適化ペプチド配列を含むことができる。前記は、強化機能を有する配列、例えばリンカーとして作用して抗体のディスプレー及び架橋活性を強化する配列、又は自己好性配列の可溶性を高める残基を含むことができる。
本発明は、本発明の自己好性コンジュゲートを製造する方法を意図し、前記方法では、上記に記載したように、自己好性抗体の架橋潜在能力を強化するために鋳型ペプチドは改変されている。本発明のある実施態様では、そのような機能的に強化されたペプチドは、鋳型配列内の各アミノ酸の位置で置換を有する一連の合成ペプチドを生成し、続いてこのペプチドライブラリーを自己好性結合について又は最初のペプチド配列との結合について試験することによって決定される。最初の配列との優れた結合を示すペプチドを続いて免疫グロブリンと結合させ、得られた結合物を、潜在能力、特異性及び望ましくない凝集誘発能について試験する。ある具体的な実施態様では、T15ペプチド配列を変化させ、改変した配列を強化機能について選別する。
本発明のまた別の実施態様では、ペプチドの自己結合潜在能力は、例えば米国特許4,863,857号(Blalock et al.)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載されているように、配列の相補性を高めることによって強化することができる。ペプチドの自己結合潜在能力及び/又は寛容はまた、非ヒト動物由来の自己結合ペプチド配列をヒト化することによって強化することができる。ペプチド配列のヒト化は、ヒトでの発現又は機能性について配列を最適にすることを必要とする。ペプチド及びタンパク質をヒト化する例及び方法はまた別の文献に記載されている(Roque-Navarro et al. 2003;Caldas et al. 2003;Leger et al. 1997;Isaacs and Waldmann, 1994;Miles et al. 1989;Veeraraghavan et al. 2004;Dean et al. 2004;Hakenberg et al. 2003;Gonzales et al. 2004;及びH. Schllekens, 2002)。
【0016】
好ましい実施態様では、自己好性ペプチドはT15ペプチドを含み、前記は本来、ネズミ生殖細胞系列がコードするS107/TEPC15抗体のCDR2及びFR3の領域を含んでいた。T15ペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:ASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)(C-Y Kang et al. 1988)。その自己好性特性は抗原非依存性であることが示され、したがって、前記ペプチドのモノマー抗体への結合は、自己好性特性及び結合親和力強化特性を抗体に付与することが示唆された(S. Kaveri et al. 1991)。T15ペプチドは、芳香族炭化水素部分又は免疫グロブリンのヌクレオチド親和性部位に光架橋され、自己好性抗体を生成することができる。また別には、T15ペプチドは、Fc部分の炭水化物部位又は免疫グロブリンのアミノ若しくはスルフヒドリル基と架橋することができる。さらにまた、前記自己好性抗体は、T15ペプチド及び完全免疫グロブリン又はそのフラグメントの融合タンパク質として都合よく発現させることができる。他の具体的な実施態様では、自己好性ペプチドは、スクランブルしたT15配列(T15-scr2)(アミノ酸配列NH-SKAVSRFNAKGIRYSETNVDTYAS-COOH(配列番号:4)を含む)、ペプチドR24(配列NH-GAAVAYISSGGSSINYA-COOH(配列番号:5を含む)、R24-チャージ配列(配列NH-GKAVAYISSGGSSINYAE-COOH(配列番号:6)を含む)及び抗体の結合及び治療効果を最適化又は強化するそのようなペプチドの任意の改変物を含むことができる。
自己好性ペプチドのモノマー抗体への結合は、自己好性特性及び結合親和力強化特性を抗体に付与することができる(Y. Zhao and H. Kohler, 2002)。具体的な実施態様では、抗体は、オルソロガス抗体のヒト化型であってもよい。オルソロガス抗体は、自己好性ペプチド(例えばT15配列を含むペプチド)と結合されたとき、結合及び有効性の強化又は最適化を獲得する。抗体をヒト化する方法は以前に記載されている。例えば以下を参照されたい:米国特許5,639,641号(Pedersen et al.)、米国特許5,498,531号(Jarrell)、米国特許6,180,370号及び5,693,762号(Queen et al.)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0017】
本発明の自己好性抗体コンジュゲートはまた1つ以上の他の生物活性ペプチド又は機能的ペプチドを含むことができ、前記ペプチドはさらに追加の機能を前記抗体コンジュゲートに付与する。例えば、前記抗体コンジュゲートは、T15自己好性ペプチド及びMTS膜転移ペプチドを有する抗体を含むことができる(Y. Zhao et al. 2003;Lin et al. 1995)。具体的な実施態様では、MTS転移ペプチドはアミノ酸配列KGEGAAVLLPVLLAAPG(配列番号:2)を有することができる。また別の実施態様では、前記転移ペプチドは最適化MTSペプチド(アミノ酸配列WKGESAAVILPVLIASPG(配列番号:7)を含む)であってもよい。T15ペプチドはコンジュゲートに自己好性性を提供し、MTS配列は抗体の細胞内進入を促進する。そのようなコンジュゲートは、その抗体領域が主として細胞内の腫瘍関連抗原(例えば癌胎児性抗原(CEA))を標的とするときは、例えば放射性免疫療法のために癌細胞を標的とすることができる。例えば米国特許6,238,667号を参照されたい(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。前記自己好性コンジュゲートは、投与に際して、CEA-保持大腸癌細胞を標的とし、MTSペプチドによって仲介される抗体の転移によって内在化され、より豊富なCEAの細胞内形態と結合することができる。例えば治療用同位元素(例えば131I)によるCEA抗体の架橋は、改変されていない標識抗体よりも長期間細胞内で維持されることができ、より高い放射能線量を腫瘍にデリバーすることができる。さらにまた、125Iのような治療用同位元素(前記は軌道の長さが短いベータ粒子を放出し、通常は治療に有用であるとは考えられていない)は、細胞内に核に極めて接近してデリバーされるときは、ある種の標的(特に類リンパ起源の標的)に対しては有効であり、さらに血液及びリンパ組織に接近することができる。第二の生物活性又は機能的ペプチドの他のカテゴリーには、レセプターに結合することができるペプチド、及びペプチド模倣体が含まれ、前記は別個の抗原又は同じ抗原の別個のエピトープと結合することができ、主要抗原結合部位によって標的へ誘導される。
【0018】
1つ以上の他の機能的ペプチドと結合された自己好性抗体はまた、細胞内抗原を標的とするために有用でありえる。そのような抗原には腫瘍関連抗原及びウイルスタンパク質が含まれよう。例えば、ウイルスタンパク質に特異的な自己好性抗体(自己結合ペプチド及びMTSペプチドと結合されている)はまた、細胞内ウイルスタンパク質との結合に用いられ、ウイルスの産生を防ぐことができる。前記抗体はMTSペプチドによって内在化することができ、細胞内ウイルスタンパク質との結合に最適化することができる(Y. Zhao et al. 2003)。他の多くの機能的ペプチドもまた自己好性抗体と結合され、機能性を高めることができる。
本発明はまた、本発明のスーパー抗体及び医薬的に許容できる担体を含む組成物に関する。自己好性抗体コンジュゲートは、それらの標的抗原と結合するときに、非共有結合により他の自己好性抗体と結合することができる。しかしながら、抗体のダイマー又はマルチマーの不完全な形成は、製造時(例えば精製時及び濃縮時)における問題を生じるとともに投与における欠点(前記は副作用につながりえる)をもたらす可能性がある。したがって、本発明の自己好性抗体-ペプチドコンジュゲートは、溶液として存在しているとき及び投与前には、このダイマー形成潜在能力を低下させ、モノマー特性を最大にするように処方される。例えば、溶液のダイマー形成は高張組成物を用いることによって低下又は減少させることができることが判明した。いくつかの実施態様では、0.5M以上の塩濃度、低レベルのSDS又は他の種々の洗剤(例えば陰イオンの性質をもつもの)(米国特許5,151,266号を参照されたい、前記文献は参照により本明細書に含まれる)、又はその等電点を低下させる抗体の改変(例えば無水コハク酸(succinyl anhydride)の使用による)(米国特許5,322,678号を参照されたい、前記文献は参照により本明細書に含まれる)を用いて、組成物を処方することができる。
【0019】
疾患の検出、予防及び治療
標的のアポトーシス、補体結合、エフェクター細胞仲介殺滅を強化するか、又は症状の進行若しくは悪化を予防する方法もまた意図され、前記方法は、本発明のスーパー抗体又はスーパー抗体を含む組成物を利用する。ある実施態様では、本発明の自己好性コンジュゲート、又は本発明の自己好性コンジュゲートを含む組成物が対象者に投与される。いったん投与されると、前記抗体は標的細胞に結合し、標的のアポトーシス、補体結合、エフェクター細胞仲介殺滅を強化するか、又は標的抗原若しくは細胞が症状の進行を刺激し若しくは悪化させるのを防ぐ。さらに別の実施態様では、自己好性コンジュゲートが標的細胞と結合してアポトーシス、補体結合、エフェクター細胞仲介殺滅を強化するか、又は標的抗原若しくは細胞が症状をさらに悪化させるのを防ぎ、さらに自己好性コンジュゲートが正常組織から除去される時間を見越して、第二の抗自己好性ペプチド抗体を投与することができる。例えば、自己好性コンジュゲートが非天然の自己好性ペプチド、例えばネズミT15配列を含む場合は、抗T15ペプチド抗体を投与することができる(前記抗体はT15配列を含む抗体コンジュゲートを認識し、これと結合する)。これは、予め局在化されたスーパー抗体との結合を可能にし、アポトーシスを強化することができる。さらにまた、鋳型の自己好性ペプチドを改変して、上記に記載した自己好性抗体の架橋潜在能力を強化することができる。
【0020】
本発明のまた別の特徴では、患者の標的細胞のアポトーシスを強化する方法は、自己好性抗体-ペプチドコンジュゲートを含む第一の自己好性抗体-ペプチドコンジュゲート、及び第二の抗体又は第二の抗体を含む組成物を投与することを含む(前記第二の抗体は前記コンジュゲートの自己好性ペプチドドメインを認識する)。この実施態様では、前記抗体-ペプチドコンジュゲートは標的細胞上の抗原を認識する。そのホモダイマー形成特性のために、前記抗体-ペプチドコンジュゲートは、自己好性ペプチドドメインを欠く対応する抗体よりも高い結合力で標的と結合することができる。これは、おそらくは標的細胞の表面で抗原と架橋する能力によるものであろう。さらにまた、自己好性抗体が2つ以上の抗原と結合し、これら抗原が抗体の自己好性特性のために互いに接近して架橋されるときはいつでも、細胞内のアポトーシスシグナルが始動されえる。コンジュゲートのペプチドドメインが露出エピトープを提示する事例では、第二の抗体(前記自己好性ペプチドに特異的)を投与して前記改変抗体に結合させて架橋プロセスを強化し、さらには標的抗原の一時的撤去さえも引き起こすことができる。例として、標的抗原がレセプターである場合は、細胞表面からの撤去、エンドサイトーシス及び分解によって引き続き新規なレセプタータンパク質の合成が要求され、単純なブロッキング抗体又は小分子阻害剤を用いるよりも長期に及ぶより有効な、レセプターの生物学的機能の阻害がもたらされる。また別には、第二の抗体は、投与されたときに標的細胞を攻撃することができるように、放射能標識又は他の潜在的に治療効果を有する物質を保持することができる。自己好性ペプチドは少数の免疫グロブリンにのみ存在し、また別の生物に由来し得るので、第二の抗体は、自己好性ペプチドを保持する抗体に対して特異性を有する。したがって、前記自己好性ペプチドに特異的な抗体は、in vivoで使用されるために必須の選択性を有するであろう。
本発明のまた別の特徴では、抗体療法に応答する疾患又は症状に罹患している患者は、本発明の少なくとも1つの自己好性抗体を、前記疾患又は症状を緩和するために有効な量で投与される。本発明の抗体による治療が意図される疾患又は症状は、悪性疾患、新形成、癌、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、アルツハイマー病若しくは他の神経変性症状、移植片若しくは移植拒絶、又は抗体療法に応答する他の任意の疾患若しくは症状でありえる。
【0021】
アテローム性動脈硬化症は、卒中、心不全、並びに他の器官及び部位における循環の崩壊を含む致死的及び慢性的血管疾患の主要な原因である。アテローム性動脈硬化症が慢性炎症性疾患であることを示す証拠が増えている。最近の発見は、酸化脂質(特にリン脂質)だけでなくオキシステロールもまた(前記はLDLの酸化時に又は酸化ストレスにさらされている細胞内で生成される)、進行病巣で観察される事象の多くの引き金であることを示している(P. Libby et al. 2003)。ox-LDL中の酸化リン脂質は、マクロファージのスカベンジャーレセプターのためのリガンドである(S. Horkko et al. 2000)。したがって、ox-LDL及びその生成物(酸化リン脂質が含まれるが、ただしこれに限定されない)は、動脈壁及びその成分細胞が応答する始動因子である。古典的な脂質仮説及び新しい炎症仮説は両者まとめてアテローム性動脈硬化症における病変発生経路の部分と考えられるべきである。
本発明のある特徴は、炎症経路を遮断し、それによって高コレステロール及び脂質レベルをもつ患者で更なるプラーク形成を停止させることを目的とする。好ましい実施態様では、マウスのT15抗体が、ヒトの血管疾患の治療のために治療用抗体に向けて“ヒト化”される。非ヒト抗体のヒト化は抗体分子の広範囲の再形成を必要とし、前記は抗体の特異性及び親和性の消失又は低下をもたらす可能性がある。自己好性ペプチドをヒト化T15抗体に結合させることによって、自己好性ペプチドのox-LDLに対する優れた標的誘導性を回復させることができ、それによってマクロファージのox-LDLの摂取を阻止し、アテローム性動脈硬化症に付随する慢性炎症を抑えることができる。したがってox-LDLに特異的なヒト化T15は、同抗原に対する人体の自己抗体応答(免疫減弱個体では前記応答は低下しえる)を模倣する。
【0022】
したがって、患者でアテローム性動脈硬化症を予防又は治療する一般的な方法は、酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に特異的な結合親和性及び自己好性特性を有するスーパー抗体を前記患者に投与することを含む。前記スーパー抗体は、マクロファージによるox-LDLの摂取を阻止するか又は低下させるために有効な用量で投与され、それによって、アテローム性動脈硬化症に付随する慢性炎症を抑える。好ましくは、前記イムノコンジュゲートはホスホリルコリンと特異的に結合し、T15イディオタイプを発現する。イムノコンジュゲートはヒト化することができ、好ましくは自己好性ペプチド配列、例えば配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5及び配列番号:6を含む。
本発明の基本にしたがえば、スーパー抗体又はスーパー抗体を含む組成物は、好ましくは非改変抗体で実施されえる投薬量と実質的に同一又はそれより低い1回以上の投薬量で投与される。したがって、リンパ腫又は乳癌の治療では、本発明の自己好性抗体は、リツキシマブ又はトラスツズマブで用いられる用量と同一又はそれより低い1回以上の用量で投与することができる。例えば、HER2+の乳癌の患者では、トラスツズマブ(ヒト化抗HER2/neuモノクローナル抗体)による治療は約10mg/mLの抗体濃度を用いる。90分間の静脈内輸液は、0日目に250mgの初期総用量を提供する。7日目から、毎週100mgが合計10回投与される。投薬スケジュールは、250−100mgから50mg/週の維持用量に徐々に減らされる。トラスツズマブの投薬スケジュールと同様又はそれより低い投薬スケジュールが、任意のアジュバント(前記は当業者の技術範囲内である)とともに自己好性抗体では用いられる。
【0023】
好ましい実施態様では、本発明のスーパー抗体はox-LDLに対して特異的な結合親和性を有する。スーパー抗体の抗体ドメインの例は、米国特許6,716,410号(Witztum et al)に記載されたモノクローナル抗体1K17である(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。本発明の基本にしたがって自己好性ペプチドで改変されたとき、得られた自己好性抗体の優れた結合力は前記ペプチドを欠く抗体の結合特性を強化することができる。自己好性抗体はアテローム性動脈硬化症プラークのox-LDLに局在することができ、したがって、標識、レポーター分子、又は二次抗体などとともに使用するとき、前記自己好性抗体を用いてプラークの部位を検出することができる。また別には、自己好性抗体を用いてox-LDL沈着部位を被覆し、それによって更なるプラークの蓄積を防ぐことができる。さらに別の特徴では、自己好性抗体を用いて抗プラーク剤(例えば血栓溶解剤又は抗酸化剤)を誘導することができる。
Witztumらは、IK17と称されるヒト抗体フラグメント(Fab)はox-LDL及び分解産物MDA-LDLのエピトープと結合するが、天然のLDLには結合しないことを報告した。さらにまた、彼らは、Fabはマクロファージによるox-LDLの摂取を、おそらくはマクロファージのスカベンジャーレセプターによって認識されるox-LDL上のエピトープとの結合により阻害しえると提唱している。Fabは、したがって炎症性応答を阻止することによってアテローム形成を抑制すると提唱された。これらの著者はまた、抗ox-LDLヒト抗体はいわゆるT15イディオタイプを発現することを報告している(P. Shaw et al. 2000)。T15イディオタイプは最初ホスホリルコリンに特異的であると記載された(Lieberman et al. 1974)。以前に、T15イディオタイプは自己好性であること、すなわちそれらは非共有結合ダイマーとして自己結合することが見出された(S. Kaveri et al. 2000)。自己好性T15ペプチドとヒト化T15/S107抗体との結合によって、T15抗体の自己結合特性及びその結合力を回復させることができる。
【0024】
T15抗体は、ox-LDLと結合することが知られているヒトの抗ホスホリルコリン抗体と生物学的に等価であり、マクロファージにより始動される炎症を抑えることを示したときに、T15抗体のアテローム性動脈硬化症の予防及び/又は治療における有効性が明示される。T15抗体の提唱される作用態様は、図22に模式図で示される(以下の文献から改変:Steinberg, Nature Medicine, 2002, 8:12311)。
本発明はまた、病的状態、例えば患者の血管系のアテローム性動脈硬化症プラークの存在を検出する方法を目的とする。そのような方法は、酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に対して特異的な結合親和性を有する、本発明の免疫コンジュゲートを患者に投与することを含む。前記免疫コンジュゲートはまた自己好性特性を有する。続いて、患者の血管系の免疫コンジュゲート集積(concentration)を検出し、それによってアテローム性動脈硬化症プラークの位置を知りさらに可視化する。好ましくは、免疫コンジュゲートは、前述のアミノ酸配列を有する自己好性ペプチドを保持する。
アポトーシス(病的状態の指標でありえる)を受けている細胞を検出する方法もまた意図される。例えば、細胞表面のある抗原決定基が膜結合ホスホリルコリン又はホスファチジルセリンによって表示されるとき、前記細胞を本発明の自己好性イムノコンジュゲート(前記抗原決定基に対して特異的な結合親和性を有する)と接触させることができる。続いて前記細胞と結合したイムノコンジュゲートの有無が検出される。以前に述べた自己好性ペプチドを用いてもよい。フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡法、組織学的染色、又はin vivo画像化のような方法が検出の実施に特に好ましい。前記方法を容易にするために、イムノコンジュゲートをフルオレセインで標識してもよい。
【0025】
さらにまた、アポトーシスのin vitroアッセイを用いて、多数の抗原陽性標的細胞株、さらに可能ならば単離したばかりの抗原陽性細胞単離物をスクリーニングすることができる。非改変抗体を二次(抗免疫グロブリン)抗体とインキュベートし、架橋の潜在能力が強化される。例えば51Cr又は131I-UDRで前標識することによって、又はアポトーシスの指標を用いるFACS分析によって細胞を列挙していってもよい。このアッセイの陽性結果は自己好性イムノコンジュゲートを用いた陽性結果を予想するが、しかしながら、このアッセイの陰性結果は、自己好性ペプチドとのその後の結合によって1つ以上の抗体のエフェクター特性が改善されることはないということを必ずしも意味するものではない。
本発明の自己好性抗体は、実験室条件下において(例えばPEGとともに溶液中で)in vitroでダイマーを形成するより高い潜在能力を有する。この実験室的特徴は、細胞表面標的との結合時の架橋能力及びより高い治療的潜在能力(アポトーシス始動のようなメカニズムを介する)と相関する。この特徴を用いて、天然のスーパー抗体を特定し、自己結合ペプチドと非自己好性抗体との適切な結合についてスクリーニングすることができる。前述の自己好性抗体の有効性を試験する適切な動物モデルには、重度の抵抗性減弱免疫不全(SCID)マウス又はヒト腫瘍異種移植片保有ヌードマウスが含まれる。
以下の実施例は本発明のある種の特徴を例示するために提示され、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0026】
実施例
実施例1:T15ペプチドとB-細胞レセプターに特異的な2つのMabとの結合
細胞株と抗体:
ヒトB-細胞腫瘍株(Su-DHL4)及びネズミB-細胞腫瘍株(38C13)を、RPMI1640培養液(10%ウシ胎児血清、2μmol/Lのグルタミン、10μmol/LのHEPES、50U/mLのペニシリン及び50μg/mLのストレプトマイシン、50μmol/Lの2-メルカプトエタノールを補充)で5%二酸化炭素下にて37℃で増殖させる。2つのmAb、5D10及びS1C5(それぞれヒト又はネズミBCRに特異的)を本実験に用いた。抗体は、プロテインG及びプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって培養上清から精製する。
抗体-ペプチドコンジュゲートの合成:
T15HペプチドASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)(自己好性抗体-T15のVH-由来ペプチド)はジーンメド・シンテシス社(Genemed Synthesis, San Francisco, CA, USA)によって合成された。抗体をPBS(pH6.0)に対して透析し、200μmol/Lの過ヨウ素酸ナトリウムを1/10容積で添加し、暗所で30分4℃にてインキュベートした。グリセロールを30μmol/Lの濃度に添加することにより反応を停止させ、サンプルを4℃で30分間PBS(pH7.0)に対して透析した。100倍モル過剰のT15H又はスクランブルT15ペプチド(T15scr/T15s)SYSASRFRKNGSIRAVEATTDVNSAYAK(配列番号:3)を前記抗体に添加し、37℃で1時間インキュベートした。L-リジンを添加し、37℃で30分間インキュベートして、残余のアルデヒド基をブロッキングした。同じ酸化反応(ペプチド添加は除く)をコントロールとして用いる抗体に適用した。ブロッキング工程の後で、抗体コンジュゲートをPBS(pH7.2)に対して一晩透析した。
Ig捕捉ELISA:
4μg/mLのネズミS1C5-T15Hでコスター(Costar)ビニルアッセイプレート(Costar, Cambridge, MA)を被覆した。3%BSA溶液でブロッキングした後、8μg/mLのビオチン基光添加S1C5-T15H、S1C5-スクランブルペプチドコンジュゲート、及びコントロールS1C5を第一のウェルに添加し、1:1希釈を実施した。抗体を2時間室温でインキュベートした。PBS緩衝液で洗浄した後、アビジン-HRP(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を1:2500希釈として添加した。基質o-フェニレンジアミンを添加して結合抗体を可視化した。
【0027】
サイズ排除クロマトグラフィー:
抗体コンジュゲートを75mLのセファクリル300HRカラム(Pharmacia, Peapack, NJ)でクロマトグラフィーに付した。1:10に希釈したPBS(pH7.2)を溶出緩衝液として選択した。分画(0.5mL/分画)を採集し、その一部(100μL)を抗ヒトIgG捕捉ELISAでアッセイした。ELISAの読み(OD490nm)を溶出体積に対してプロットした。
抗体処理細胞についての生存率アッセイ:
リンパ腫細胞を1mLの培養液にて96ウェルの組織培養ウェルで増殖させた。2μgの抗体又は抗体-ペプチドコンジュゲートを添加し記載のように種々の時間インキュベートした。この細胞懸濁液の10μL部分を用いトリパンブルー排除により生存率を決定した。
B-細胞リンパ腫のFACSアッセイ:
ヒトSu-DHLA及びネズミ38C13細胞を1%のパラホルムアルデヒドで固定した。50μLの染色緩衝液(0.1%のNaN3、1.0%BSAを含むハンクス塩類バランス溶液)に1x106細胞を懸濁し、続いて1.5μgのビオチン基光添加ネズミS1C-T15Hコンジュゲートを添加し、氷上で30分間インキュベートした。コントロール抗体及び抗体-スクランブルT15ペプチドコンジュゲートをコントロールとして供した。細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、その後アビジン-FITC(Sigma-Aldrich)を氷上で30分間細胞に加えた。続いて前記細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、200μLのPBSに再懸濁してフローサイトメトリーで分析した。
アポトーシス検出のためのヘキスト-メロシアニン540染色:
1x106のリンパ腫細胞を24ウェルの組織培養ウェルに加えた。4μgの抗体又は抗体-ペプチドコンジュゲートを添加し記載のように種々の時間インキュベートした。前記培養から1x106の細胞を取り出し、900μLの冷PBS(pH7.2)に再懸濁させた。100μLのヘキスト(Hoechst)33342(50μg/mL;Molecular Probe, Eugene, OR, USA)を添加し、細胞を暗所にて37℃で30分間インキュベートした。細胞を遠心し、100μLのPBSに再懸濁した。続いて、4μLのMC540溶液(分子プローブ)を添加し、20分のインキュベーションを暗所で室温にて30分間実施した。細胞を沈殿させ、1mLの冷PBS(pH7.2)に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0028】
結果
自己好性抗体の性状決定:
T15H(24-mer)ペプチドを2つのネズミmAb(S1C5及び5D10)と過ヨウ素酸炭水化物結合を用いて架橋した。mAb S1C5(IgG1)はマウスの38C13 B-細胞株の腫瘍イディオタイプに特異的であり、5D10抗体はヒトSu-DHL4 B細胞腫瘍に特異的である。両mAbは、B-細胞腫瘍上のBCR IgMの固有のイディオタイプを認識する。
自己好性的作用動態はELISAによって容易に明示されえる:
S1C5-T15H Mabコンジュゲートを用いて自己好性作用を調べた。T15H-架橋S1C5は、ビオチン-アビジンELISAによって検出される不溶化S1C5-T15Hと結合する。コントロールS1C5はS1C5-T15H又はスクランブルペプチド架橋S1C5とは有意には結合しない。T15Hペプチド架橋mAb 5D10と不溶化T15H-5D10との同様な自己結合もまた観察された。ペプチド仲介自己好性作用の特異性を、24-merペプチドT15Hそれ自体を阻害物質として用いて試験した。T15HペプチドだけがS1C5-T15H及び5D10-T15H自己結合を阻害し、一方コントロール-スクランブルペプチドは阻害しない。これらの結果は、天然に存在する自己好性T15/S107抗体に関する以前の阻害データ(R. Halpen et al. 1991)と類似している。
T15H-抗体コンジュゲートは溶液中でモノマー-ダイマー平衡にある:
T15H-連結抗体の自己凝集の非共有結合の性質は溶液中でのその物理的状態に関する疑問を提起した。この疑問に答えるために、T15H-連結モノクローナル抗体の分子種をゲル電気泳動及びゲルろ過サイジングを用いて分析した。コントロール並びにS1C5及び5D10に結合させたT15Hペプチドの還元及び非還元条件下での電気泳動移動度に相違はなく、抗体鎖間の化学的結合は存在しないことを示した。ペプチド結合抗体(5D10-T15H)をさらにサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。溶出プロフィルは異なるサイズをもつ2つの免疫グロブリン種を示した。大きな第一のピークは抗体ダイマーの位置で溶出した。第二の小さいピークは非結合5D10抗体の位置で溶出した。2つのピークの外観はモノマー及びダイマー抗体に類似し、抗体の部分は改変されていないか、又は改変は完了し抗体はダイマーとモノマーを平衡させているかのどちらかであることを示している可能性がある。後者の可能性を試験するために、両ピークの材料を同じカラムで二回目のゲルろ過に付した。両ピークの再泳動によって再び2つのピークが、1回目のクロマトグラフィーと同じ位置で得られた(Zhao and Kohler, 2002)。これらのデータは、T15Hペプチド連結抗体は溶液中でモノマーとダイマーとして平衡しながら2つの別個の分子種として存在することを示している。
【0029】
対応する腫瘍標的に対するペプチド結合抗体の結合を、コントロール抗体の結合と間接的蛍光活性化細胞分類(FACS)で比較した。コントロールとして、スクランブルペプチドと連結した抗体を含めた。38C13細胞上のT15H-S1C5の蛍光強度をSC15及びスクランブルペプチドS1C5の蛍光強度と比較する。S1C5-T15Hとコントロールとの間の平均蛍光チャネルにおける相違は10倍より大きかった。同様に、Su-DHL4細胞上の自己好性5D10-T15HのFACS分析は、コントロール5D10及びコントロールペプチド-架橋5D10の結合を超える強化結合を示した。両腫瘍系で、腫瘍特異的抗体とT15Hの結合は、同じ濃度で用いられたコントロール抗体よりもFACSシグナルを強化した(Zhao, Lou et al. 2002)。蛍光の強化は、自己凝集及び腫瘍細胞表面での格子形成により生じた標的に誘導された抗体の増加により説明することができる。
腫瘍増殖の抑制:
BCRとの抗体結合はBCRの架橋を誘発し、これは、順に細胞増殖の抑制、死滅シグナルの生成をもたらす。さらにまた、化学的にダイマーを形成した、B-細胞に対して誘導された抗体は、BCRの超架橋、続いて細胞分裂の抑制及び腫瘍のアポトーシスを誘発する。ダイマー化抗体の抗腫瘍作用の同様な強化が非共有結合型ダイマー化T15H-連結抗体によって誘発されるか否かを見るために、2つにB細胞腫瘍を、コントロール及びT15H-連結抗体の非存在下又は存在下で培養した。両腫瘍、38C13及びSu-DHL4のそれらの対応するT15H-連結抗体との同時培養は、コントロール抗体と比較して前記細胞の増殖を有意に強く抑制した。増殖抑制における自己好性抗体の腫瘍標的特異性を試験するために、38C13及びSu-DHL-4細胞株で交差実験を実施した。ネズミ38C13細胞の増殖抑制はミスマッチ5D10-T15Hよりも統計的に強かった。自己好性抗体の特異性について同様な結果がSu-DHL4細胞で得られた(Y. Zhao et al. 2002)。
アポトーシスの誘発:
初期の実験で提唱されたように、B-細胞リンパ腫のBCRに対して誘導された抗体のinvitro及びin vivo抗腫瘍作用はアポトーシスの誘発によって引き起こされるかもしれない。コントロール又はT15H-連結抗体の存在下で培養した腫瘍細胞(38C13及びSu-DHL-4)の一部を、アポトーシスについて二重染色FACSプロトコルを用いて分析した。抗体の非存在下で、38C13及びSu-DHL4細胞は、それぞれ6時間、18時間培養で中程度の量のアポトーシスを示した。このアポトーシスは、対応する抗体を添加したとき強化された。しかしながら、T15H-連結抗体を添加したとき、アポトーシスを示す38C13細胞の累積数はほぼ2倍であり、さらにSu-DHL4細胞のアポトーシスは全培養中に2倍を超えた(Y. Zhao et al. 2002)。
【0030】
考察
自己好性特性の生物学的利点が、S107/T15抗ホスホリルコリン抗体を用いて具体的に示される。この自己好性抗体は、免疫不全マウスのプニューモコッキー・プニューモニエ(Pneumococci pneumoniae)の感染防御において、同じ抗原特異性及び親和性をもつ非自己好性抗体よりも数倍強力である。
ここで示したように、自己好性抗体の機能は、T15 VH生殖系列配列に由来するペプチドを化学的に架橋することによって他の抗体に移すことができる。前記改変抗体は、T15/S107抗体の自己好性特性を模倣し、結合力の増加及び標的誘導強化を示す自己好性抗体を生じる。自己好性操作抗体とB-細胞腫瘍のBCRとの結合の強化は細胞死シグナルの強度を高め、培養細胞の分裂の強い抑制をもたらす。ここではアポトーシスの倍増が示されたが、他の増殖抑制メカニズムも深く関与しえる。
成熟ネズミB-細胞リンパ腫A20のBCRの架橋によってCD95仲介アポトーシスを防ぐことができる。抗体を架橋することによるBCR嵌合のこの抗アポトーシス活性は、CD95刺激の時間枠に高度に拘束され、さらにタンパク質合成に依存しない。BCRの超架橋それ自体は前アポトーシス状態であるという発見は、BCR嵌合の抗アポトーシス活性に関する報告と矛盾しない。なぜならば、前記は、より未熟なB-細胞株の使用、ホモダイマー形成抗体によってデリバーされるシグナルの様々な強度、又はFas-非依存性アポトーシスに起因しえるからである。
種々の腫瘍に対する2つのBCRイディオタイプ特異的抗体の使用は、イディオタイプ特異的BCR以外のレセプターを標的とすることの生物学的効果を試験する機会を提供する。自己好性抗体を用いた交差実験では、FACS分析での結合及びin vitro増殖抑制は、自己好性マッチ抗体によってのみ顕著な強化を示す。この状況において、腫瘍への標的誘導強化はまた細胞のエフェクター機能も強化するのか否かを推測することは興味深いことである。
化学的にホモダイマーを形成させた抗体を用いた初期の実験では、Fcドメインは増殖抑制の強化に必要とされず、Fcレセプターを欠く腫瘍細胞はホモダイマーの抗増殖活性に感受性を示した。したがって、ダイマー形成抗体によって誘発される抗腫瘍作用は、類リンパ腫(例えば非ホジキン型B-細胞リンパ腫)に限定されないであろう(この場合、抗腫瘍作用はFcレセプター保持エフェクター細胞の参画を要求する)。天然に存在する自己好性特性を他の抗体に移転し、それによってそれらの抗腫瘍作用を強化するという本開示のアプローチは、能動的免疫療法における抗体の治療的有効性を改善する一般的方法として概略される。そのような非共有結合型抗体複合体は、化学的に架橋された抗体を超えるいくつかの以下の利点を提供する:(i)モノマーと非共有結合型ホモポリマーとの間の平衡は溶液中での非生理学的沈殿複合体の形成を防ぐ;(ii)自己好性変換は抗体の構造的一体性を損なわない;及び(iii)前記方法は単純で効率的であり、化学的架橋ダイマーに典型的に要求される精製工程(活性なIgダイマーの収量を低下させる)を必要としない。ダイマー形成抗体を使用するこのアプローチの可能なある制限は、大きな腫瘍塊に侵入する能力であるかもしれない。ホモ好性ペプチドはネズミ起源であるので、人間で免疫原性を示す可能性がある。したがって、コンピュータモデリングを用いて、配列相同性及び構造的相同性にしたがってネズミペプチドをヒト化する必要があるえるであろう。抗体の構造にただ1つのペプチドを添加することによって標的に結合する抗体量及び抗腫瘍活性が増加することを示すことは、自己好性活性を発現する組換え抗体を操作する試みを後押しする。
【0031】
実施例2:MTSペプチド結合抗体の内在化
細胞株及び抗体:
ヒトJurkat T細胞を10%ウシ胎児血清及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンホテリシン)を補充したRPMI1640で増殖させた。ウサギ抗-活性カスパーゼ3ポリクローナル抗体(#9661S)及び抗切断フォドリン、すなわちアルファIIスペクトリン(#2121S)はセル・シグナリング社(Cell Signaling, Inc., Beverly, MA)から購入した。抗-活性カスパーゼ3(ウサギ)モノクローナル抗体(#C92-605)はBDファーミンゲン(BD PharMingen, San Diego, CA)から購入した。マウスモノクローナル抗体3H1(抗CEA)は、プロテインGアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。抗マウス及び抗ウサギHRP結合二次抗体はサンタクルツバイオテクノロジーズ社(Santa Cruz Biotechnologies, Inc.)から購入した。アポアラート(ApoAlert)カスパーゼ-3蛍光アッセイキットは、クロンテックラボラトリーズ(Clontech Laboratories, Palo Alto, CA)から購入した。細胞死検出ELISAはロシュ・アプライド・サイエンス(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)から購入した。
MTSペプチド-抗体コンジュゲートの合成:
MTSペプチドKGEGAAVLLPVLLAAPG(配列番号:2)はシグナルペプチド系膜転移配列であり、ジーンメドシンテシス社(Genemed Synthesis, San Francisco, CA)により合成された。抗体はPBS(pH6.0)緩衝液に対して透析し、200mmol/LのNaIO4の1/10容積の添加によって酸化し、4℃にて暗所で30分間インキュベートした。グリセロールを最終濃度30mMで加えて酸化工程を終了させた。続いてサンプルを4℃で1時間1xPBS(pH6.0)緩衝液に対して透析した。MTSペプチド(50倍のモル過剰)を添加して抗体とカップリングさせ、サンプルを37℃で1時間インキュベートし、得られた抗体-ペプチドコンジュゲートを1xPBS(pH7.4)に対して透析した。
MTS結合抗体の細胞増殖に対する影響:
Jurkat細胞(2.5x105)を96ウェルの培養プレートに播種した。0.5μgのMTS-抗体コンジュゲートとともに6、12、18及び24時間インキュベートした後、その一部を取り出し、生存率をトリパンブルー排除によって決定した。
ELISAによる抗体の内在化の調査:
6ウェルの培養プレートで1mLの培養液を用いて増殖させたJurkat細胞を、2μgの未結合抗体又はMTS結合抗体とともに0、6、12及び18時間インキュベートした。細胞を遠心し、続いて培養上清を新しいチューブに移した。細胞ペレットを2回PBS(pH7.4)で洗浄した後、ペレット・ペストル・モーター(Kontes, Vineland, NJ)によって30秒均質化した。全細胞ホモジネート及び等体積の培養上清(10μL)をヒツジ抗ウサギIgG被覆ELISAプレート(Falcon, Oxnard, CA)に添加し、2時間室温でインキュベートした。洗浄後、HRP-標識ヤギ抗ウサギ軽鎖抗体を添加し、o-フェニレンジアミンを用いて可視化した。
【0032】
DNA断片化:
Jurkat細胞を抗体又はカスパーゼ3阻害剤(DEVD-fmk)で1時間前処理して遠心し、さらにアクチノマイシンDのみ(1μg/mL)を含む新しい培養液とともに4時間インキュベートした。処理後、Jurkat細胞を採集し、洗浄して700μLのHL緩衝液(10mMトリス-HCl(pH8.0)、1mMのEDTA、0.2%トリトンX-100)に室温で15分間再懸濁した。フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を用いてDNAを抽出し、0.1容の5MのNaCl及び1容のイソプロパノールで-20℃にて24時間沈殿させた。DNAを洗浄し乾燥させ、TE(pH8.0)に再懸濁した。DNAを1.5%アガロースゲルで電気泳動によって分析し、臭化エチジウムで染色後UV蛍光によって可視化した。細胞死検出ELISAを製造業者の指示にしたがって用いDNA断片化も決定した。
全細胞溶解物の調製:
Jurkat細胞をDNA断片化の項に記載したように処理した。処理後、細胞を採集し、PBS(pH7.4)で2回洗浄し、続いて300μLのCHAPS緩衝液(50mMのPIPES(pH6.5)、2mMのEDTA、0.1%CHAPS)に懸濁した。サンプルを10秒間超音波処理し、14,000rpmで15分4℃にて遠心した。上清を新しいチューブに移し、全細胞溶解物と呼んだ。
カスパーゼ3様切断活性アッセイ:
Jurkat細胞をDNA断片化の項に記載したように処理した。等しい量の全細胞溶解物タンパク質を、製造業者の指示にしたがいアポアラートカスパーゼ3蛍光アッセイキットを用いるカスパーゼ3活性アッセイに適用した。スペクトラMAX GEMINIリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて蛍光を測定した。
ウェスタンブロット解析:
全Jurkat細胞溶解物(10μg)を10%のSDS-PAGEゲル上で分離し、切断スペクトリンに対して免疫反応するタンパク質を検出した。ポンシュー染色を用いて、ニトロセルロース膜へのタンパク質の移転の均質性をモニターした。前記の膜を蒸留水で洗浄して過剰な染色を除去し、ブロットー(Blotto)(5%ミルク、10mMトリス-HCl(pH8.0)、150mMのNaCl及び0.05%のトゥイーン20)中で2時間室温にてブロッキングした。二次抗体を添加する前に、この膜を2回TBST(10mMトリス-HCl、150mMのNaCl及び0.05%トゥイーン20)で洗浄し、続いてHRP-結合二次抗体とともにインキュベートした。ブロットを十分に洗浄し、強化ケミルミネッセンス(AmershamBiotech, Piscataway, NJ)によって反応性を可視化した。
統計解析:
統計解析は、スチューデントt検定(ペア式比較)及びワンウェイANOVAとそれに続くニューマン-ケウルス(Newman-Keuls)の後テストを用いて実施した。データは平均±SEで示される。
結果
図1に示すように、MTSを結合させた抗-活性カスパーゼ3抗体は、未改変抗体よりも迅速に内在化される。細胞を化学療法剤(アクチノマイシンD)に暴露したとき、アポトーシスが始動され、細胞は死滅した(図2)。しかしながら、細胞が同じときにMTS-結合抗体(transMab)に暴露されるならば、化学療法剤の毒性の大半が抑制される。
【0033】
実施例3:ペプチド結合抗CD20抗体を用いた結合及びアポトーシスの強化
細胞株及び抗体:
ヒトB-細胞腫瘍株SU-DHL-4及びRajをRPMI培養液(10%ウシ胎児血清、2mmol/Lのグルタミン、10μmol/LのHepes、50U/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン及び50μmol/Lの2-メルカプトエタノールを補充)で、5%の二酸化炭素下で37℃にて増殖させた。ヒトB-細胞リンパ腫5D10及び3H1に特異的なマウスモノクローナル抗体1F5 IgG2a(ATCC#HB-9645)を、プロテインG又はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。
抗体-ペプチドコンジュゲートの合成:
T15ペプチドASRNKANDYTTDYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)、自己結合抗体-T15のVH-由来ペプチドを実施例1に記載したように合成した。8-アジド-アデノシン-ビオチンを合成し、抗体にビオチンをアフィニティ架橋するために用いた。8-アジドアデノシンジアルデヒドを以前に記載されたように調製した(米国特許5,800,991号(Haley et al.)前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
自己結合酵素-結合免疫吸着アッセイ:
4μg/mLの1F5-T15を用いてコスター(Costar)ビニルアッセイプレート(Costar, Cambridge, MA, USA)を被覆した。1%BSA溶液でブロッキングした後、8μg/mLのビオチン基光添加1F5-T15、裸の1F5、及びコントロール抗体(5D10)を添加し、1:1に希釈し、室温で2時間インキュベートした。PBS緩衝液で洗浄した後、アビジン-HRP(Sigma-Aldrich)を添加し、o-フェニレンジアミンを用いて酵素結合免疫吸着アッセイを発色させた。
B-細胞リンパ腫のFACSアッセイ:
SU-DHL-4細胞を1%のパラホルムアルデヒドを用いて固定し、さらに1x106細胞を50μLの染色緩衝液(0.1%のNaN3及び1.0%のBSAを含むハンクス)に懸濁した。1.5μg/mLのビオチン基光添加1F5-T15コンジュゲート、裸の1F5、及びコントロール抗体を添加し、氷上で30分間インキュベートした。細胞を染色緩衝液で2回洗浄した後、続いてアビジン-FITCを氷上で30分間添加した。染色緩衝液で2回洗浄した後、FACS解析のために細胞を200μLのPBSに再懸濁した。
アポトーシス検出のためのヘキスト-メロシアニン540染色:
1x106のリンパ腫細胞を24ウェルの組織培養ウェルに播種した後、4μgの抗体及び抗体-ペプチドコンジュゲートを添加した。24時間のインキュベーション後に、1x106細胞を培養ペレットから取り出し、900μLの冷PBS(pH7.2)に懸濁し、100μLのヘキスト(Pierce, Rockford, IL, USA)3342(50μg/mL)を添加し、37℃で30分暗所にてインキュベートした。細胞を遠心して100μLのPBSに再懸濁させた。4μLのMC540希釈溶液を添加し、細胞を室温で20分暗所にてインキュベートした。細胞を沈殿させ、1mLのPBSに再懸濁してフローサイトメトリーで分析した。
培養での細胞増殖の抑制:
1x105の腫瘍細胞を完全培養液に播種した。培養1、2及び3日目に、その一部を取り出し、生存細胞を数えた(トリパンブルー)。
結果
実施例1のように、マウスモノクローナル抗体1F5 IgG2aを自己結合ペプチドと結合させた。競合解析によって抗体当たり平均1.8ペプチドが見出された。フローサイトメトリーにより、結合について親抗体をコンジュゲート形と比較した。図3に示すように、抗体の制限希釈を用いてアッセイしたとき、結合はコンジュゲート抗体について増加した。この特徴は、結合蛍光のより強い強度へのシフトによって示された。一連の希釈で比較したとき、コンジュゲート抗体は、親抗体と同じレベルの強度を達成するためにほぼ1/10の抗体濃度を要求した(図4)。図5に示すように、コンジュゲート抗体の量を増加させることによって蛍光強度の低下が生じ、これはおそらく内在化のためであろう(内在化は、薬剤、毒素及び短軌道長の放射線治療用同位元素を含むイムノコンジュゲートの潜在能力を高めるために用いることができるSAT技術の特性である)。さらにまた、アポトーシスを始動する能力について試験したとき、コンジュゲート形(Sab)は天然の抗体よりもはるかに活性が高く、天然の抗体を含むほんの小分画と比較したときほとんどの細胞が3日までに死滅した(図6)。
【0034】
実施例4:抗GM2抗体による結合及びアポトーシスの強化
細胞株及び抗体:
ヒトT細胞白血病Jurkat細胞を10%ウシ胎児血清及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン及びアンホテリシン)を補充したRPMI1640で増殖させた。キメラハムスター抗GM2抗体(ch-α-GM2)はコリキサ社(Corixa Corporation, Seattle, WA)から入手した。キメラ化後に、得られた抗体はガングリオシドGM2発現標的細胞でアポトーシスを誘発するというその能力を失った。
抗体-ペプチドコンジュゲートの合成:
T15ペプチドASRNKANDYTTEYSASVKGRFIVSR(配列番号:1)(自己結合抗体-T15のVH-由来ペプチド(Kaveri et al. 1991))及びスクランブルT15ペプチド(T15-scr)(配列番号:3)(T15アミノ酸配列からランダムに生成)はジーンメドシンテシス社(Genemed Synthesis, South San Francisco, CA)により合成された。スクランブルペプチドをコントロールとして用いた。抗体をPBS(pH6.0)に対して透析し、続いて200μMのNaIO4を1/10容積で添加し、暗所で30分間4℃にてインキュベートした。グリセロールを30μMの最終濃度で添加することにより反応を停止させ、サンプルを4℃で30分間PBS(pH6.0)に対して透析した。50倍モル過剰のT15又はスクランブルペプチドを前記抗体に添加し、37℃で1時間インキュベートした。L-リジンを添加し、37℃で30分間インキュベートして、残余の反応性アルデヒド基をブロッキングした。ブロッキング工程の後で、抗体コンジュゲートをPBS(pH7.2)に対して4℃で一晩透析し、続いて使用まで4℃で保存した。
直接結合ELISA:
GM2ガングリオシドをメタノールに溶解し、96ウェルのポリスチレンプレート(Costar, Cambridge, MA)のウェル当たり0.5μgで被覆し一晩乾燥させた。前記ウェルを1%のBSAで2時間室温にてブロッキングし、400μgの抗GM2抗体(1%BSAで希釈)を第一のウェルに加え、続いて連続的に1:1に希釈した。1時間のインキュベーション後、前記ウェルを5回洗浄し、HRP-結合抗ヒトIgG(Sigma-Aldrich)を1:1000希釈で添加し、さらに1.5時間インキュベートした。3回洗浄後、基質o-フェニレンジアミンを用いて結合抗体を可視化し、分光光度計を用いてOD492で計測した。
特異的結合ELISA:
ガングリオシドGM2、GM1、GM3を0.5μgのDMSOに溶解し、96ウェルのポリスチレンプレート(Costar, Cambridge, MA)で被覆して一晩乾燥させた。前記ウェルを1%のBSAで2時間室温にてブロッキングし、400μgのch-α-GM2抗体(抗GM2-15抗体)を第一のウェルに加え、続いて連続的に1:1に希釈した。1時間のインキュベーション後、前記ウェルを5回洗浄し、HRP-結合抗ヒトIgGを添加し、さらに1.5時間インキュベートした。3回洗浄後、基質o-フェニレンジアミンを用いて結合抗体を可視化し、前に記載したようにアッセイした。
抗体自己結合ELISA:
2μg/mLの裸のch-α-GM2(抗GM2)又はch-α-GM2-T15(抗GM2-15)でコスタービニルアッセイプレートを被覆した。3%のBSAでブロッキングした後、0.5μg/ウェルのビオチン基光添加した抗GM2-T15を添加した。続いて前記抗体を2時間室温でインキュベートした。3回洗浄後、アビジン-HRP(Sigma-Aldrich)を1:1000希釈で添加し、さらに1時間インキュベートした。結合抗体をo-フェニレンジアミンを用いて可視化し、前に記載したようにアッセイした。
【0035】
FACSによって検出される細胞表面結合:
ウェル当たり2x105のJurkat細胞を6ウェルプレートに播種して一晩インキュベートし、続いて細胞を採集し、P/B/G/A緩衝液(PBSに0.5%BSA、5%ヤギ血清)で2回洗浄した。続いて細胞を、5μg/mLの抗GM2抗体を含む100μLのP/B/G/A緩衝液に30分懸濁した。P/B/G/A緩衝液で洗浄後、FITC-結合抗ヒトIgG(Sigma-Aldrich)(100μLのP/B/G/Aで1:1000に希釈)を添加し、氷上で30分間インキュベートした。P/B/G/A緩衝液で洗浄後、10μg/mLのヨウ化プロピジウム(生存率プローブとして)を含む400μLのP/B/G/A緩衝液に細胞を懸濁し、フローサイトメトリーで分析した。
アネキシンV染色によるアポトーシスの検出:
ウェル当たり2x105のJurkat細胞を6ウェルプレートに播種した。6時間後、20μg/mLの抗GM2又は抗GM2-T15抗体とともに細胞を12時間インキュベートした。インキュベーションに続いて、細胞の小部分(50μL)を取りおいて生存率をアッセイし、一方、残りの細胞を採集して冷PBSで洗浄した。続いて細胞を100μLのアネキシン染色緩衝液に再懸濁し、5μLのAlex蛍石488を1xのアネキシン結合緩衝液95μLに添加しさらにシトックス(Sytox)を1:1000の希釈で添加した。室温で15分間インキュベートした後、1xのアネキシン結合緩衝液400μLを添加し、サンプルをFACSで分析した。
抗体処理細胞の生存率アッセイ:
アネキシン実験で取りおいた細胞サンプルの小部分を生存率アッセイで用いた。前記細胞懸濁物から10μL部分を取り、トリパンブルー排除アッセイを用いて生存率を決定した。
統計解析:
統計解析は、ワンウェイANOVAとそれに続くニューマン-ケウルス(Newman-Keuls)の後テストを用いて実施した。データは平均+SDで示される。
【0036】
結果
自己結合ペプチドは抗体とその特異的ガングリオシドとの結合を強化した:
抗体-ペプチド結合に続いて、T15結合ch-α-GM2抗体(抗GM2-T15)の結合能力を、直接結合ELISAを用いて決定した。図7に示すように、ch-α-GM2抗体(抗GM2)及び抗GM2-T15抗体は、ガングリオシドGM2との結合において用量依存増加を示した。抗GM2-T15抗体は、裸の抗GM2抗体と比較して全ての被検用量でより強い結合能力を示し、自己結合T15ペプチドは、与えられた抗体濃度でch-α-GM2抗体の抗原結合能力を高めた。
ELISAによって示される抗体の自己結合の作用動態:
次に、ガングリオシドGM2とT15ペプチド連結抗体との結合における増加はその自己結合特性によるものか否かをELISAによって調べた。図8に示すように、抗GM2-T15抗体は、ウェルに被覆したペプチド結合抗GM2-T15抗体との結合でより強い用量依存性増加を示し、一方、前記はペプチド非結合抗GM2抗体との有意な結合を示さなかった。これらのデータは、抗GM2-T15抗体は、それ自身と結合しえるか、又はFc-結合自己好性ペプチド部分を介してホモダイマーを形成することができることを示している。
T15の結合はch-α-GM2抗体の特異性に変化を生じない:
T15ペプチドの結合が、前記抗体の同族との結合特異性に変化を与えるか否かを判定するために、直接抗原結合ELISAを用いて、抗GM2-T15結合抗体の結合特異性を決定した。図9に示すように、抗GM2-T15抗体は特異的な用量依存性増加をガングリオシドGM2との結合で示し、一方、ガングリオシドGM1又はGM3とのバックグラウンドを超える結合は検出されなかった。この結果によって、自己結合T15ペプチドの付加はch-α-GM2抗体の特異性に変化を与えずまたその特異性も低下させないことが確認された。
抗GM2抗体と標的腫瘍細胞との表面結合の強化:
ヒトT-細胞白血病細胞株Jurkatは、ガングリオシドGM2を発現することが知られている(Suzuki et al. 1987)。Jurkat細胞の表面で発現される天然のガングリオシドGM2と結合するペプチド結合抗GM2-T15抗体の能力をペプチド非結合抗GM2抗体の能力とフローサイトメトリーで比較した。図10に示すように、ch-α-GM2抗体(抗GM2)は、バックグラウンドレベルよりも3倍強いGM2特異的結合シグナルを示したが、T-15結合抗GM2抗体によって示された結合は、非ペプチド結合抗体よりも2倍高かった。この結果は、ペプチド結合Abによって示される結合の強化はこの抗体の自己凝集のためであることを提唱している。
【0037】
腫瘍増殖の抑制:
抗体とB-細胞レセプターとの結合はBCRの架橋を誘発し、これは順次細胞分裂を抑制し(Ward et al. 1988)、さらに細胞死シグナルを生じる(Hasbold et al. 1990;Wallen-Ohman et al. 1993)。さらにまた、B-細胞に対して誘導された化学的ダイマー化抗体は、BCRの超架橋、続いて細胞分裂の抑制及び腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する(Ghetie et al. 1994;Ghetie et al. 1997)。T15-結合抗GM2抗体が同様な抗分裂作用を誘発するか否かを決定するために、2x105のJurkat細胞を抗GM2又はコントロール抗体の存在下又は非存在下で12時間培養し、続いて残留する生存細胞数を数えた。図11に要約するように、“無抗体”又はコントロールヒトIgG抗体(HuIgG)処理は細胞増殖又は生存率に影響を与えなかったが、抗GM2抗体に関してはある程度の影響があった。しかしながら、T15連結抗体は、Jurkat細胞増殖の顕著な抑制を示した(細胞数は、裸の抗GM2抗体処理細胞と比較して2倍を超える低下、コントロールIgG処理に対しては4倍を超える低下を示した)。比較及び陽性コントロールとしては、アクチノマイシンDはアポトーシス誘発能力を示し、スーパー抗体よりもわずかに高いレベルであった。
アポトーシスの誘発:
細胞表面発現ガングリオシドに対して誘導された抗体の抗腫瘍作用はアポトーシスの誘発によるものか否かを決定するために、細胞増殖実験で用いた細胞サンプルを、アネキシンV染色を測定することによってアポトーシス誘発について分析した。結果を表2に要約する。
表2:アネキシンV染色によるアポトーシス分析
*データは4セットの実験のまとめである。
ch-α-GM2抗体(抗GM2)、又はスクランブルしたコントロールペプチドと結合させたch-α-GM2抗体(抗GM2-T15scr)によるJurkat細胞の処理では、コントロールヒトIgGによる処理で誘発されるレベルを有意に超えるアポトーシスは誘発されなかった(軽度な2倍増加が観察された)。しかしながら、抗GM2-T15結合抗体で処理されたJurkat細胞では顕著な量のアポトーシスを受け、バックグラウンドのほぼ8倍、ペプチド非結合抗体又はコントロール結合抗体によって誘発されるレベルの4倍を超える。これらの結果によってT-15結合抗体の活性及び特異性が確認された。
【0038】
実施例5:自己好性ペプチド配列T15-scr、T15-scr2、R24及びR-24チャージの生成
ペプチドを実施例1のように合成した。この配列は表3及び4に示されている。
表3:自己好性結合ペプチドの配列
表4:膜貫通ペプチドの配列
R24に由来するペプチドは、DMSO又はアルコールを除き、溶解させるのが困難である。そのような可溶化剤を用いることは、抗体を変性させるだけでなく、抗体の親水性領域への結合を困難にする。この溶解性の問題を克服するために、表3に示すようにチャージアミノ酸への配列の添加又は変更を実施した。得られた改変ペプチド(R-24チャージ)は水性緩衝液に可溶性であり、トリプトファン又はヌクレオチド結合部位と結合させることができ、さらに抗GM2抗体と結合させたときに自己結合が保存されるとともにアポトーシスを誘発することができた。T15配列に存在する同じアミノ酸をランダムに再編成し、更なる合成ペプチドの構築に使用した。このスクランブル配列(T15scr又はT15s)は自己結合能をもたず、抗GM2抗体と結合させたときアポトーシスを誘発しなかった(実施例4、表2参照)。同様な態様で、ランダムに選別した第二の配列(T15配列のアミノ酸から誘導)を用いて、合成ペプチドを生成した(T15scr2)。第一のスクランブル配列と異なり、このペプチドは自己結合を示し、抗GM2抗体と結合させたとき、最初のT15配列よりも高いレベルでアポトーシスを誘発した。したがって、自己結合性作用動態は、最初のT15配列と同じアミノ酸であるが最初のT15とは異なる順番で編成されているものを用いて作り出すことができる。これらの同じアミノ酸を自己結合のスクリーニングと併せて用いて作成したペプチドライブラリーを使用して、他の自己結合配列を同定することができよう。
【0039】
実施例6:種々の免疫グロブリン結合部位の比較
T15ペプチド配列を、ヌクレオチド結合部位トリプトファン親和性部位を介して、及びFc領域上の炭水化物の過ヨウ素酸塩の酸化を介して抗GM2抗体と結合させた。図12に示すように、アポトーシスを始動する能力について試験したとき、ヌクレオチド部位での結合(GM2-N3-ATP-T15/ビオチン)は、炭水化物連結(抗GM2-T15)よりも高いレベルのアポトーシスを生じた。これは、炭水化物連結は抗体当たり8−10ペプチドを加え、ヌクレオチド連結は抗体当たり2ペプチドしか加えないという事実を一顧だにしていない。したがって、親和性部位での結合がペプチド結合の最良の方法であった。抗体のエプシロン-アミノ酸との結合(ヘテロ二官能性架橋剤を介する)は、不活性なコンジュゲートを生じた(データは示されていない)。
【0040】
実施例7:アポトーシス活性の回復
GM2糖脂質に対する親抗体(非ヒトハイブリドーマに由来する)を、ヒトの癌(非小細胞肺癌を含む)に対しアポトーシスを始動する能力について試験した(図13)。親抗体は、癌細胞の高レベルのアポトーシス及び殺滅を示した。前記抗体はまた、ヌードマウスモデルで癌の増殖抑制にも有効であった(データは示されていない)。ヒトでの免疫原性に対する潜在能力を除去するために、重鎖及び軽鎖CDRをヒトIgG1にクローニングすることによって前記抗体を“ヒト化”した。親和性及び特異性を保持しているにもかかわらず(データは示されていない)、ヒト化抗体はアポトーシス始動能力を大きく低下させた。対照的に、自己結合ペプチド(Sab)と結合させたヒト化抗体は、親抗体と同様な高レベルのアポトーシスを示した。
更なる実験はネズミの抗体、R-24に関する。前記抗体はヒトメラノーマ細胞上のGD3ガングリオシドを標的とする。天然に発現されるとき、この抗体は自己結合活性及び患者で治療活性を有するが、ヒト化抗体では、結合親和力、自己結合活性及び治療活性が失われている(Chapman et al. 1994)。ヒト化R24抗体の治療活性の回復はまた自己結合ペプチドとこの抗体との結合によって達成することができる。
抗体TEPC-15及びT15/S107のヒト化型もまた自己結合ペプチドとの結合により利益を受け、自己結合及び治療活性を回復又は強化することができる。
【0041】
実施例8:ハーセプチン(Herceptin(商標))スーパー抗体による結合及び腫瘍認識の強化
ハーセプチン(Herceptin(商標))(HER2/neuに対するモノクローナル抗体)は、乳癌治療用としてFDAによって認可された。前記抗原は乳癌のほぼ30%で発現されるが、このような患者の約半分しか治療効果を始動させるために十分な発現レベルを示さない。実際、患者は通常、診断検査で前スクリーニングを受けそれらの治療適切性が決定される。HER2/neuはまた他の癌(例えば非小細胞肺癌)でも発現されるが、典型的には極めて低レベルで発現され、このタイプの癌の治療を不適切にしている。自己好性ペプチドをハーセプチン(Herceptin(商標))と結合させ、非小細胞肺癌に結合する能力を試験した。図14(上段パネル)に示すように、ハーセプチンはこの癌と非常に弱く反応し、無関係の抗体と比較して、0.5%の細胞のみが陽性であった。対照的に、同じ癌をハーセプチンの自己好性ペプチド結合形(すなわちスーパー抗体形)で良好に検出することができ、無関係の抗体と比較して57%を超える細胞が陽性である(下段パネル)。ハーセプチンのスーパー抗体形はまた親抗体よりも良好に増殖を抑制し、親抗体と異なりアポトーシスを始動させることができた。
【0042】
実施例9:トリプトファンペプチドと抗体との光架橋
抗体と試薬:
抗ヒトIgG(完全分子)-ペルオキシダーゼ結合二次抗体、アビジン結合ペルオキシダーゼ、抗ヒトIgG(完全分子)抗体、モノガングリオシドGM2は、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から購入した。抗GM2抗体、ハーセプチン及び抗GM3はコリキサ(Corixa, Seattle, WA)、ジェネンテク(Genentech, San Francisco, CA)及びCMI(Havana, Cuba)からそれぞれ入手した。
以下の2種類のTrp-ビオチンペプチドを設計した:KAAGW(配列番号:8)(アルファアミノ基上に1つのビオチン分子を含む(単ビオチン-ペプチド))及びKAAKGEAKAAGW(配列番号:9)(リジンのアルファ及びエプシロンアミノ基上に複数のビオチン分子を含む(多ビオチン-ペプチド))。これらのペプチドはジーンメドシンテシス社(Genemed Synthesis, Inc., San Francisco, CA)によって合成された。
GM1、2及び3はシグマ-アルドリッチから入手し、グリコリルGM3はアレキシス(Alexix)USA(San Diego, CA)から入手した。
トリプトファン部位を用いるビオチン基光添加:
全ての抗体をトリプトファン含有ペプチドと室温で1時間インキュベートした。前記抗体を200、100、50、10及び1μM濃度のビオチン-ペプチドでビオチン基光添加を実施した。光架橋は、UV架橋装置FP-UVXL-1000(Fisher Scientific)を使用し最適設定100μj/cm2で実施した。サンプルをPBS(pH7.4)緩衝液に対して透析した。抗体濃度はクマシープラスプロテインアッセイ(Comassie Plus Protein Assay, Pierce)を用いて決定した。化学的なビオチン基添加は、NHS-ビオチン(Pierce Chemical, Rockford, IL)を用いて実施した。キメラ抗GM3グリコリル(CIMAB, Havana, Cuba)は、15モル過剰のNHS-ビオチンを製造業者のプロトコルにしたがって使用してビオチン基添加を実施した。
直接抗体結合ELISA:
ビオチン基光添加抗体の2μgを第一のウェルに加え、さらに連続的に希釈し4℃で一晩インキュベートすることによって前記抗体で被覆した。前記ウェルを3回洗浄し、PBS(pH7.4)に溶解した3%のBSAで2時間ブロッキングした。プレートを3回洗浄し、1:1000希釈のアビジンペルオキシダーゼコンジュゲート(100μL)を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄溶液で3回洗浄した。100μLのOPD溶液(OPD緩衝液、o-フェニレンジアミン及び1μLの30%過酸化水素/mL)を各ウェルに添加した。発色は30μLのH2SO4(4N)の添加によって停止させ、光学密度はフィッシャーサイエンティフィックマルチスキャン(Fisher Scientific Multiskan)RCプレート読取装置を用い492nmで各ウェルをスキャンして決定した。
【0043】
抗体捕捉ELISA:
ヤギ抗ヒトIgG完全分子を各ウェル当たり1/100希釈で4℃にて一晩被覆した。前記プレートを3回洗浄し、PBS(pH7.4)中の3%のBSAで室温にて2時間ブロッキングした。プレートを3回洗浄し、2μgのビオチン基光添加抗体を第一のウェルに加え、連続的に希釈し、室温で2時間又は4℃で一晩インキュベートした。プレートを3回洗浄し、1:1000希釈のアビジンペルオキシダーゼコンジュゲート(100μL)を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄溶液で3回洗浄した。100μLのOPD溶液(OPD緩衝液、o-フェニレンジアミン及び1μLの30%過酸化水素/mL)を各ウェルに添加した。発色は30μLのH2SO4(4N)の添加によって停止させ、光学密度はフィッシャーサイエンティフィックマルチスキャン(Fisher Scientific Multiskan)RCプレート読取装置を用い492nmで各ウェルをスキャンして決定した。
モノガングリオシドELISA:
GM1、GM2、GM3及びグリコリルGM3モノガングリオシドをメタノールに溶解し、さらにウェル当たり0.5μgをポリスチレンマイクロタイタープレート上で乾燥させることによって一晩被覆した。前記ウェルを1%BSAで2時間ブロッキングした。GM2トリプトファンT15コンジュゲートを1%BSAに2μg/μLの濃度に添加し、300μLをウェルの第一の列に加え、さらに連続的に希釈した。室温で1時間インキュベートした後、洗浄溶液でウェルを5回洗浄した。プレートを3回洗浄し、1:1000希釈のアビジンペルオキシダーゼコンジュゲート(100μL)を各ウェルに添加した。室温で1時間インキュベートした後、ウェルを洗浄溶液で3回洗浄した。100μLのOPD溶液(OPD緩衝液、o-フェニレンジアミン及び1μLの30%過酸化水素/mL)を各ウェルに添加した。発色は30μLのH2SO4(4N)の添加によって停止させ、光学密度はフィッシャーサイエンティフィックマルチスキャン(Fisher Scientific Multiskan)RCプレート読取装置を用い492nmで各ウェルをスキャンして決定した。
種々のpHでのビオチン基光添加:
抗体を100μMのビオチンペプチドとともにpH5、6、7、8、9、10で1時間、室温でインキュベートしUV架橋した。サンプルはPBS(pH7.4)に対して透析し、捕捉ELISAで分析した。
【0044】
結果
ビオチンアミノ酸のビオチン基光添加についてのスクリーニング:
いくつかのビオチン基添加アミノ酸をモノクローナル抗体OKT3と混合し、UVに暴露した。続いて前記混合物をドット-ブロットに付し、アビジン-HRPと反応させた。ドットをスキャンし、相対的発色強度を記録した。図15に示すように、ビオチン基添加トリプトファンで光分解されたOKT3は、アビジンとのもっとも強い反応を生じ、ビオチン-チロシンがこれに続いた。他のビオチンアミノ酸で光分解されたOKT3はアビジンとバックグラウンドレベルの反応を示しただけであった。
Trp-ビオチン光分解の定量:
ビオチン-Trpの親和性に関するデータを入手するために、キメラ抗ガングリオシド(抗GM2)モノクローナル抗体をビオチン-Trpの濃度を増加させながら光分解に付した。図16Aに示した結果は、100μMレベルでの抗体のビオチン基添加の飽和プラトーを示している。同様な結果が、ガングリオシドに対する別のキメラモノクローナル抗体の力価測定でも得られた(データは示されていない)。
ビオチン基光添加のTrp親和性のpHに対する依存性を調べた。ヒト化抗体ハーセプチン(Herceptin(商標))を種々のpHで光分解した。図16Bに示されるように、最高のビオチン基添加はpH9であった。ビオチン基添加に対する同様なpH依存性は他のモノクローナル抗体でも観察された(データは示されていない)。
ビオチン-Trp-ペプチドの共有結合検査:
ビオチン基光添加はビオチンペプチドと抗体との間で共有結合を生じることを証明するために、ビオチン基添加キメラ抗ガングリオシド抗体を6MのグアニジンHClに暴露し、続いてPBSに対して透析し、直接アビジン-HRP ELISAで試験した。図17は、天然のビオチン基添加抗GM2抗体及び変性/再生抗体のELISAの読みを示している。両調製物は同一のELISA色を生じた。UVに暴露されていない抗GM2はELISAでアビジンと反応しなかった。これらの結果は、Trp-ビオチンペプチドを用いるビオチン基光添加は、共有結合によりビオチン-ペプチドを抗体に結合させるという証拠を提供している。
単及び多ビオチン基付加抗体の抗原結合:
次に、末端Trpを含むビオチン-ペプチドの使用を検討した。以下の2種類のTrp-ビオチンペプチドを合成した:1)KAAGW(配列番号:8)アルファアミノ基上に1つのビオチン分子を含む(単ビオチン-ペプチド))及び2)KAAKGEAKAAGW(リジンのアルファ及びエプシロンアミノ基上に複数のビオチン分子を含む(多ビオチン-ペプチド))。
図18Aでは、単ビオチン-ペプチドヒト化抗GM3を多ビオチン-ペプチド抗GM3と不溶化ガングリオシドに対して比較した。多ビオチン抗体は、アビジン-HRPでより強いELISAシグナルを生じた。単及び多ビオチン基添加抗体間で同様な相違がキメラ抗GM2で観察された(図18B)。
ビオチン基光添加と化学的ビオチン基添加との効率比較:
化学的ビオチン基添加技術は、反応性アミノ酸側鎖の多様な利用可能性に依存し、ビオチンタンパク質の混合物を生じる。抗体の場合、結合ビオチン数は分子当たり8−12である。対照的に、アフィニティ依存ビオチン基添加は抗体当たりの親和性部位数によって制限を受ける。ヌクレオチド部位を標的とする場合、Ig分子当たり2つの親和性部位が利用可能である。Trp部位の数は、市販のビオチン決定アッセイで概算したとき抗体の1分子当たり3から5の間で変動する(データは示されていない)。図19では、アビジン-HRPと不溶化抗体との反応が示されている。予想されたとおり、化学的にビオチン基を添加した抗体はビオチン基光添加抗体より強いELISAの読みを生じた。
抗原特異的ELISAでの検出感度を比較するために、キメラ抗グリコリルGM3抗体のビオチン基光及び化学的添加を実施した。図20に示すように、化学的ビオチン基添加抗体は、化学的方法を用いた場合抗体上のビオチン分子数の数がはるかに多いためにビオチン基光添加抗体よりも強いシグナルを生じた。
親和性-ビオチン基光添加抗体の抗原特異性を示すために、キメラ抗グリコリルGM3抗体をELISAで用いた。図21に示すように、光-ビオチン抗体はその標的抗原を認識するが、コントロールのガングリオシドGM1、GM2及びGM2は認識しない。
【0045】
考察
生物学的又は化学的特性をもつペプチドを結合させることは、抗体の潜在能力を強化するか、又は抗体に診断的及び治療的有用性を付与する有益な方法である(Zhao et al. 2001;Zhao et al. 2002a;Zhao et al. 2002b)。例えば、抗体の標的誘導は自己好性ペプチドを結合して標的誘導及びアポトーシス誘発が強化されたダイマー化抗体を生成することによって高められた。別の実験では、膜転移配列(MTS)を抗体に結合させ、そのようなMTS-抗体は、細胞を害することなく生細胞の細胞膜を貫通することを示した(Zhao et al. 2001)。カスパーゼ3酵素に対するMTS抗体は腫瘍細胞でアポトーシス誘発を阻害することができる。C3d補体フラグメント由来ペプチドの結合は、抗体ワクチンに対する免疫応答を強化し、分子アジュバントワクチンを生じる(Lou, 1998)。
これらの結合のいずれにおいても、不変炭水化物又は不変ヌクレオチド結合部位が用いられる。両方法とも複雑な化学反応を必要とするという欠点を有する。炭水化物による方法は、反応性アルデヒドを生成するために抗体の酸化を要求し、ヌクレオチド親和性光架橋はアジド-アデノシンペプチドの合成を必要とする(Lou and Kohler 1998)。
本明細書では、抗体は芳香族炭化水素部分(AHM)(複素環式アミノ酸(例えばトリプトファン)を含む)と光架橋することができるという発見を根拠とする、ペプチドの単純な一工程アフィニティ架橋技術が提供される。したがって、末端トリプトファンを含むペプチドが抗体のための親和性光架橋試薬である。
これらの新規なアフィニティ結合方法がビオチン基添加ペプチドを用いて提示された。抗体とTrp-ビオチンペプチドとの混合物をUVエネルギーに暴露することによって、ELISA及び他のビオチン系検出方法で用いることができるビオチン抗体が生成される。そのようなビオチン基アフィニティ添加抗体は、通常のビオチン基添加化学反応よりも少ないが、ELISAで有用なシグナルを生成するには十分な規定数の結合ビオチンを有する。現在のところ、Trp-親和性光架橋の方法は、以前(Lou et al. 1998;Zhao et al. 2001;Zhao et al. 2002a;Zhao et al. 2002b)に報告されたものと同様な、生物学的及び化学的特性をもつペプチドを結合させるために用いられる。
トリプトファン親和性部位によるビオチン基添加の利点は、(i)アミノ酸側鎖を改変しない穏やかな一工程方法であること、及び(ii)規定数のビオチン分子で標識された再生可能な抗体生成物を生じることである。
【0046】
実施例10:スーパー抗体による循環ox-LDLの検出
本発明の原理にしたがって調製した、循環ox-LDLのエピトープを認識する自己好性抗体の能力は、サンドイッチアッセイを実施することによって決定することができる。第一に、ヤギ抗マウスIgG-Fc抗血清でマイクロタイターウェルを被覆し、前記ウェルにLDL粒子(例えばアポB)に特異的な結合親和性を有するマウスmAbを添加した。次いで血漿を前記被覆マイクロタイターウェルと接触させ、その後十分に洗浄した。続いてスーパー抗体(自己好性ペプチドと結合させた、ox-LDL特異的mAbを含む)を添加して、前記サンドイッチを覆う。完成したサンドイッチを自己好性ペプチドに特異的な標識二次抗体によって可視化することができる。ox-LDLに特異的な結合親和性を有するスーパー抗体は、ox-LDLに特異的でない類似のスーパー抗体よりも少なくとも数倍の検出強化を示すはずである。ox-LDLのコントロールはCu2+-酸化LDLによって提供される(米国特許6,225,070号(Witztum et al.)を参照されたい)。
【0047】
実施例11:アテローム性動脈硬化症の慢性炎症の抑制
アテローム性動脈硬化症をもたらす慢性炎症は、ox-LDLと強力に結合し、それによってマクロファージによるox-LDLの摂取を阻止するか又は低下させるスーパー抗体の能力によって抑制することができる。ox-LDLに特異性を有するヒト化自己好性抗体は、上記に記載の治療スケジュールにしたがって患者に投与される。自己好性抗体の自己結合特性は、未結合抗体の自己結合特性よりもox-LDLに対するそれらの親和性を増強させ、マクロファージによるLDL粒子の認識を低下させる。ox-LDLとマクロファージの結合は、イムノコンジュゲートの存在下では50%を超えて効果的に抑制されるはずである。
当業者には明白なように、本発明の実施においてはある種の改善及び改変が、本発明の範囲を逸脱することなく前述の開示を基にして可能である。したがって、本発明の範囲は本明細書に添付の特許請求の範囲及びその等価物によって規定される。
【0048】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】抗カスパーゼ3抗体を用いた、MTS結合抗体とMTS非結合抗体の内在化の比較である。
【図2】MTS結合(Sab)抗体の存在下及び非存在下における化学療法剤(アクチノマイシンD)の細胞死に対する効果を示す。
【図3】T15ペプチドを結合させた抗CD20抗体の結合の強化を示す。
【図4】T15ペプチド結合抗CD20抗体の低濃度抗体での結合の改善を示す。
【図5】T15ペプチド結合抗CD20抗体の高濃度抗体でのDHL-4細胞との結合の改善を示す。
【図6】T15ペプチド結合マウス抗CD20抗体によるアポトーシス誘発強化を示す。
【図7】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体のガングリオシドGM2との結合の比較である。
【図8】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体の自己結合活性を示す。
【図9】T15結合抗GM2抗体と種々のガングリオシドとの結合特異性を示す。
【図10】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体のJurkat細胞での細胞表面結合における相違を示す。
【図11】抗GM2抗体及びT15結合抗GM2抗体のJurkat細胞の増殖に対する影響を示す。
【図12】抗GM2抗体を用いた、抗体の親和性部位(ヌクレオチド)及び非親和性部位(CHO-炭水化物)と自己好性ペプチドとの結合の有効性の比較である。
【図13】T15ペプチド結合抗GM2抗体を用いた腫瘍細胞のアポトーシスの強化を示す。
【図14】ハーセプチン(Herceptin(商標);上段パネル)及びハーセプチンの自己好性ペプチド結合形(下段パネル)と小細胞肺癌細胞との結合の比較である。
【図15】ビオチン-アミノ酸とモノクローナルOKT3抗体との光結合を示す。ビオチン-アミノ酸パネルをモノクローナル抗体OKT3と20−50μMolの濃度で混合しUVに2分間暴露した。反応混合物をアビジン-HRPを用いてドットブロットし、スキャンした。
【図16】パネルA:キメラ抗GM2抗体とのビオチン-トリプトファン光結合の定量。キメラ抗GM2に種々のモル濃度のTrpペプチドを用いてビオチン基光添加を実施した。ELISAウェルをビオチン基光添加を実施したキメラ抗GM2とともにインキュベートし、ブロックし、さらにアビジン-HRPでデベロップした。パネルB:パネルAのように種々のpH、ELISAの下でのTrp-ビオチンペプチドによるヒト化抗Her2/neu(ハーセプチン)抗体のビオチン基光添加。
【図17】ビオチン基光添加抗GM2抗体の変性。図16AのようなELISAによる変性/再生抗体のビオチンの検出。
【図18】パネルA:単一ビオチン抗GM3抗体とマルチビオチン抗GM3抗体の比較。ELISAウェルをガングリオシドで被覆し、単一及びマルチビオチン抗GM3抗体を添加し、アビジン-HRPでデベロップした。パネルB:単一ビオチンキメラ抗Gm2抗体とマルチビオチンキメラ抗Gm2抗体のGm2結合についての比較。単一ビオチン抗体とマルチビオチン抗体の比較。ELISAは図19の場合と同様。
【図19】化学的にビオチン基添加した抗体とビオチン基光添加抗体との比較である。市販のNHS-ビオチンウサギ抗マウス抗体(Sigma)及びNHS-ビオチン抗GM2抗体をビオチン基光添加抗体と比較する。ELISAは図16と同様。
【図20】グリコリルGM3モノガングリオシドと結合する、ビオチン基光添加及びビオチン基化学的添加キメラ抗グリコリルGM3抗体の検出感度の比較である。ELISAは図19の場合と同様。
【図21】ビオチン基光添加抗グリコリルGM3抗体のモノガングリオシドGM1、GM2、GM3及びグリコリルGM3との抗原特異的結合を示す。ELISAは図20の場合と同様。
【図22】本発明の自己好性抗体(ox-LDLに対して免疫特異的である)が、なぜアテローム性動脈硬化症をもたらす慢性炎症を抑えることができるかについての提唱されるメカニズムを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)光活性化可能化合物と、該光活性化可能化合物に対して結合親和性を有する免疫グロブリンとの混合物を形成する工程、及び(b)前記光活性化可能化合物を前記免疫グロブリンに共有結合させるために有効な光活性化条件に前記混合物をさらす工程を含む、光活性化可能化合物を免疫グロブリンに共有結合させる方法であって、前記光活性化可能化合物が、少なくとも1つの芳香族炭化水素部分を含み、さらにアジド、プリン又はピリミジン基は含まない、前記方法。
【請求項2】
光活性化可能化合物が、自己結合性、膜貫通性、アジュバント特性及び/又は酵素特性を有するペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光活性化可能化合物が、5から30のアミノ酸残基を含むペプチドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ペプチドが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12及び配列番号:13から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族炭化水素部分がペプチドの末端位置又は内部位置に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
免疫グロブリンがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント又はF(ab')2フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結合親和性が、免疫グロブリンの可変ドメインに位置する親和性部位で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記結合親和性が、芳香族レポーター分子を用いる競合結合によって示されえる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数の前記光活性化可能化合物が免疫グロブリンに共有結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
芳香族炭化水素部分が、少なくとも1つのアリール、多核アリール、複素環又は多核複素環を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
芳香族炭化水素部分が、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、インドール、ベンゾフラン、チオナフテン、キノリン、又はイソキノリン基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
芳香族炭化水素部分が、トリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
免疫グロブリンが癌関連抗原、カスパーゼ酵素、ox-LDL又は細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって生成されるイムノコンジュゲート。
【請求項15】
自己好性、膜貫通性、アジュバント特性及び/又は酵素特性を有する、請求項14に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項16】
少なくとも1つのペプチドと共有結合した免疫グロブリンを含むイムノコンジュゲートであって、前記イムノコンジュゲートがアジド、プリン又はピリミジン基を含まない、前記イムノコンジュゲート。
【請求項17】
免疫グロブリンがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント又はF(ab')2フラグメントである、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項18】
ペプチドが5から30のアミノ酸残基を含む、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項19】
ペプチドが自己結合性、膜貫通性、アジュバント特性及び/又は酵素特性を有する、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項20】
ペプチドが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択される自己好性アミノ酸配列を含む、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項21】
ペプチドが、配列番号:2、配列番号:7、配列番号:12及び配列番号:13から成る群から選択される膜貫通性アミノ酸配列を含む、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項22】
免疫グロブリン及びペプチドが光活性化芳香族炭化水素部分によって結合される、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項23】
光活性化芳香族炭化水素部分が、ペプチドの末端位置に配置される、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項24】
前記芳香族炭化水素部分が、少なくとも1つのアリール、多核アリール、複素環又は多核複素環を含む、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項25】
芳香族炭化水素部分が、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、インドール、ベンゾフラン、チオナフテン、キノリン、又はイソキノリン基を含む、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項26】
芳香族炭化水素部分が、トリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基を含む、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項27】
免疫グロブリンが、癌関連抗原、カスパーゼ酵素、ox-LDL又は細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項28】
薬理学的に有効な量の請求項16に記載のイムノコンジュゲート及び医薬的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項29】
酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に対する特異的結合親和性及び自己好性特性を有するイムノコンジュゲートを、マクロファージによるox-LDLの摂取を阻止するか又は低下させるために有効な用量で患者に投与し、それによってアテローム性動脈硬化症に付随する慢性炎症を抑えることを含む、患者でアテローム性動脈硬化症を予防又は治療する方法。
【請求項30】
イムノコンジュゲートがホスホリルコリンと結合するか、及び/又はT15イディオタイプを発現する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
イムノコンジュゲートがヒト化される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
イムノコンジュゲートが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
予め決定したイムノコンジュゲートの初期用量及び予め決定した後期用量が患者に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
維持用量のイムノコンジュゲートが患者に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
以下の工程を含む、患者の血管系においてアテローム性動脈硬化症プラークを検出する方法:
(a)患者にイムノコンジュゲートを投与する工程であって、前記イムノコンジュゲートが、酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に対する特異的結合親和性及び自己好性特性を有する前記工程、及び
(b)患者の血管系においてイムノコンジュゲートの集積を検出し、それによってアテローム性動脈硬化症プラークを検出する工程。
【請求項36】
イムノコンジュゲートがホスホリルコリンと結合するか、及び/又はT15イディオタイプを発現する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
イムノコンジュゲートがヒト化される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
イムノコンジュゲートが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む自己好性ペプチドを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
以下の工程を含む、アポトーシスを受けている細胞を検出する方法:
(a)自己好性ペプチドと結合した免疫グロブリンを含むイムノコンジュゲートと細胞を接触させる工程であって、前記イムノコンジュゲートがアポトーシスを受けている細胞の抗原決定基と特異的に結合する前記工程;及び
(b)前記細胞と結合したイムノコンジュゲートの有無を検出する工程。
【請求項40】
抗原決定基が膜のホスホリルコリン又はホスファチジルセリンを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
自己好性ペプチドが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記検出が、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡法、組織学的染色、又はin vivo画像化を利用する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
イムノコンジュゲートをフルオレセインで標識し、前記フルオレセイン標識を検出する、請求項39に記載の方法。
【請求項1】
(a)光活性化可能化合物と、該光活性化可能化合物に対して結合親和性を有する免疫グロブリンとの混合物を形成する工程、及び(b)前記光活性化可能化合物を前記免疫グロブリンに共有結合させるために有効な光活性化条件に前記混合物をさらす工程を含む、光活性化可能化合物を免疫グロブリンに共有結合させる方法であって、前記光活性化可能化合物が、少なくとも1つの芳香族炭化水素部分を含み、さらにアジド、プリン又はピリミジン基は含まない、前記方法。
【請求項2】
光活性化可能化合物が、自己結合性、膜貫通性、アジュバント特性及び/又は酵素特性を有するペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光活性化可能化合物が、5から30のアミノ酸残基を含むペプチドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ペプチドが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12及び配列番号:13から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族炭化水素部分がペプチドの末端位置又は内部位置に配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
免疫グロブリンがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント又はF(ab')2フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結合親和性が、免疫グロブリンの可変ドメインに位置する親和性部位で生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記結合親和性が、芳香族レポーター分子を用いる競合結合によって示されえる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数の前記光活性化可能化合物が免疫グロブリンに共有結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
芳香族炭化水素部分が、少なくとも1つのアリール、多核アリール、複素環又は多核複素環を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
芳香族炭化水素部分が、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、インドール、ベンゾフラン、チオナフテン、キノリン、又はイソキノリン基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
芳香族炭化水素部分が、トリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
免疫グロブリンが癌関連抗原、カスパーゼ酵素、ox-LDL又は細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって生成されるイムノコンジュゲート。
【請求項15】
自己好性、膜貫通性、アジュバント特性及び/又は酵素特性を有する、請求項14に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項16】
少なくとも1つのペプチドと共有結合した免疫グロブリンを含むイムノコンジュゲートであって、前記イムノコンジュゲートがアジド、プリン又はピリミジン基を含まない、前記イムノコンジュゲート。
【請求項17】
免疫グロブリンがポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabフラグメント又はF(ab')2フラグメントである、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項18】
ペプチドが5から30のアミノ酸残基を含む、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項19】
ペプチドが自己結合性、膜貫通性、アジュバント特性及び/又は酵素特性を有する、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項20】
ペプチドが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択される自己好性アミノ酸配列を含む、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項21】
ペプチドが、配列番号:2、配列番号:7、配列番号:12及び配列番号:13から成る群から選択される膜貫通性アミノ酸配列を含む、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項22】
免疫グロブリン及びペプチドが光活性化芳香族炭化水素部分によって結合される、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項23】
光活性化芳香族炭化水素部分が、ペプチドの末端位置に配置される、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項24】
前記芳香族炭化水素部分が、少なくとも1つのアリール、多核アリール、複素環又は多核複素環を含む、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項25】
芳香族炭化水素部分が、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、インドール、ベンゾフラン、チオナフテン、キノリン、又はイソキノリン基を含む、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項26】
芳香族炭化水素部分が、トリプトファン、チロシン、ヒスチジン及びフェニルアラニンから選択されるアミノ酸残基を含む、請求項22に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項27】
免疫グロブリンが、癌関連抗原、カスパーゼ酵素、ox-LDL又は細胞レセプターに対して特異的な結合親和性を有する、請求項16に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項28】
薬理学的に有効な量の請求項16に記載のイムノコンジュゲート及び医薬的に許容できる担体を含む組成物。
【請求項29】
酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に対する特異的結合親和性及び自己好性特性を有するイムノコンジュゲートを、マクロファージによるox-LDLの摂取を阻止するか又は低下させるために有効な用量で患者に投与し、それによってアテローム性動脈硬化症に付随する慢性炎症を抑えることを含む、患者でアテローム性動脈硬化症を予防又は治療する方法。
【請求項30】
イムノコンジュゲートがホスホリルコリンと結合するか、及び/又はT15イディオタイプを発現する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
イムノコンジュゲートがヒト化される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
イムノコンジュゲートが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
予め決定したイムノコンジュゲートの初期用量及び予め決定した後期用量が患者に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
維持用量のイムノコンジュゲートが患者に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
以下の工程を含む、患者の血管系においてアテローム性動脈硬化症プラークを検出する方法:
(a)患者にイムノコンジュゲートを投与する工程であって、前記イムノコンジュゲートが、酸化された低密度リポタンパク質(ox-LDL)に対する特異的結合親和性及び自己好性特性を有する前記工程、及び
(b)患者の血管系においてイムノコンジュゲートの集積を検出し、それによってアテローム性動脈硬化症プラークを検出する工程。
【請求項36】
イムノコンジュゲートがホスホリルコリンと結合するか、及び/又はT15イディオタイプを発現する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
イムノコンジュゲートがヒト化される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
イムノコンジュゲートが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む自己好性ペプチドを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
以下の工程を含む、アポトーシスを受けている細胞を検出する方法:
(a)自己好性ペプチドと結合した免疫グロブリンを含むイムノコンジュゲートと細胞を接触させる工程であって、前記イムノコンジュゲートがアポトーシスを受けている細胞の抗原決定基と特異的に結合する前記工程;及び
(b)前記細胞と結合したイムノコンジュゲートの有無を検出する工程。
【請求項40】
抗原決定基が膜のホスホリルコリン又はホスファチジルセリンを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
自己好性ペプチドが、配列番号:1、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:10及び配列番号:11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記検出が、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡法、組織学的染色、又はin vivo画像化を利用する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
イムノコンジュゲートをフルオレセインで標識し、前記フルオレセイン標識を検出する、請求項39に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2008−540344(P2008−540344A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509247(P2008−509247)
【出願日】平成18年4月29日(2006.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/016844
【国際公開番号】WO2006/119291
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507357139)イネクサス バイオテクノロジー インターナショナル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月29日(2006.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/016844
【国際公開番号】WO2006/119291
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507357139)イネクサス バイオテクノロジー インターナショナル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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