説明

ズボンと靴との接続構造

【課題】着脱が容易であると共に接続部における防水性を従来よりも高いレベルで得ることができるズボンと靴との接続構造を提供する。
【解決手段】剛性の高い材料で構成され、防水透湿靴3に設けられた靴側筒状体7と、弾性を備えた材料で構成され、防水透湿ズボン5に設けられ、靴側筒状体7を覆うようにして靴側筒状体7に設置されるズボン側筒状体9と、靴側筒状体7の外周に形成された環状の凹部35と、ズボン側筒状体9の内周に形成され、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されたときに、靴側筒状体7の環状の凹部35に嵌り込む環状の凸部39とを有するズボンと靴との接続構造1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズボンと靴との接続構造に係り、特に、防水性を備えているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特殊機能服、防護服等に用いる防水性および透湿性の機能を有する衣服のズボンと防水靴とを水中に入る直前に接合し、水中から出た後に取り外していたが、上記接合と上記取り外しの作業は容易ではない。
【0003】
たとえば、防水透湿ズボンと防水靴とを接着剤や目止めテープを用いて連結(接合)したものがあるが、これは、防水透湿ズボンと防水靴とが一体化した構造になるため、容易には防水透湿ズボンと防水靴との切り離しができないものであった。
【0004】
また、たとえば、防水透湿ズボン、防水靴のいずれか一方に伸縮性のある筒状のゴム材を取り付け、他方に外周が平らな(外周が円柱側面状である)円筒状もしくは楕円筒状の硬い芯材を取り付け、ゴム材を芯材の外周に圧着させることで、防水透湿ズボンと防水靴とを接合する構成のものが知られている。これにより、防水透湿ズボンと防水靴との接合・取り外し(着脱)は容易になるが、防水透湿ズボンと防水靴との接合部の防水性が弱く、また、防水透湿ズボンが防水靴からはずれ易い。
【0005】
また、たとえば、図18(a)で示すように、防水透湿ズボン201の裾に円筒状のズボン側シールゴム203と外周が平らな円筒状の硬質プラスチック(芯材)205とを設け、防水ゴム長靴本体207と保温材209とを備えて構成された防水靴211に、円筒状の靴側シールゴム213を設けた構成のものが知られている。
【0006】
そして、防水透湿ズボン201と防水靴211とを接合するときには、図18(b)で示すように、防水透湿ズボン201のズボン側シールゴム203と硬質プラスチック205との間に、防水靴211の靴側シールゴム213が入り込ませ、さらに、防水透湿ズボン201のズボン側シールゴム203の外周に環状の押さえ用ゴムバンド215を設置して押圧し、防水透湿ズボン201と防水靴211との接合を補強している。
【0007】
しかし、図18で示す構成のものは、防水靴211の靴側シールゴム213等を力一杯引っ張って弾性変形させ、防水透湿ズボン201の芯材205に嵌め込む必要があるので、防水透湿ズボン201と防水靴211との接合や取り外しを容易に行うことができない。また、防水透湿ズボン201と防水靴211との接合部は、押さえ用ゴムバンド215で補強がされてはいるが、長時間にわたる使用では防水性に問題があり、防水靴211等の内部に水が浸入するおそれがある。
【0008】
なお、防水透湿ズボン201と防水靴211と着脱を容易にするための技術として、たとえば、特許文献1〜特許文献4を掲げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−235391号公報
【特許文献2】特開平11−323632号公報
【特許文献3】特開2010−104419号公報
【特許文献4】実願平1−71657号(実開平3−11806号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1〜特許文献4に示されているものでは、防水透湿ズボンと防水靴との着脱が容易であり、また、防水透湿ズボンをつたわって防水靴側に移動する水に対しては防水性を発揮することができるが、逆に、防水靴から防水透湿ズボン側に移動する水に対しては防止性を発揮することができない等、あらゆる使用状況に対して防水性を発揮することができないという問題がある。
【0011】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、着脱が容易であると共に接続部における防水性を従来よりも高いレベルで得ることができるズボンと靴との接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、防水透湿靴に設けられた靴側筒状体と、防水透湿ズボンに設けられ、前記靴側筒状体に設置されるズボン側筒状体と、前記靴側筒状体に設けられ、環状の凸部、環状の凹部の少なくともいずれかで構成された靴側係合部と、前記ズボン側筒状体に設けられ前記ズボン側筒状体が前記靴側筒状体に設置されたときに前記靴側係合部の凸部が嵌り込んで防水する環状の凹部、前記ズボン側筒状体に設けられ前記ズボン側筒状体が前記靴側筒状体に設置されたときに前記靴側係合部の凹部に嵌り込んで防水する環状の凸部の少なくともいずれかで構成されたズボン側係合部とを有するズボンと靴との接続構造である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、剛性の高い材料で構成され、防水透湿靴に設けられた靴側筒状体と、弾性を備えた材料で構成され、防水透湿ズボンに設けられ、前記靴側筒状体を覆うようにして前記靴側筒状体に設置されるズボン側筒状体と、前記靴側筒状体の外周に形成された環状の凹部と、前記ズボン側筒状体の内周に形成され、前記ズボン側筒状体が前記靴側筒状体に設置されたときに、前記靴側筒状体の環状の凹部に嵌り込む環状の凸部とを有するズボンと靴との接続構造である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のズボンと靴との接続構造において、前記防水透湿靴は、皮革で構成されている靴本体部と、この靴本体部の内側に設けられた防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体とを備えているズボンと靴との接続構造である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のズボンと靴との接続構造において、前記靴本体部には、前記靴本体部と前記防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体との間に浸入した水等の液体を、前記靴本体部の外部に排出するための排水弁が設けられているズボンと靴との接続構造である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のズボンと靴との接続構造において、前記靴側筒状体が、円筒状もしくは楕円筒状に形成されているズボンと靴との接続構造である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、着脱が容易であると共に接続部における防水性を従来よりも高いレベルで得ることができるズボンと靴との接続構造を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るズボンと靴との接続構造の概要を示す図であって、防水透湿ズボンと防水透湿靴とを接合した状態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るズボンと靴との接続構造の概要を示す図であって、防水透湿ズボンと防水透湿靴とを離した状態を示す図である。
【図3】防水透湿靴の外観を示す図である。
【図4】防水透湿靴下部の断面を示す図である。
【図5】変形例に係る防水透湿靴下部の断面を示す図である。
【図6】排水弁の概略構成を示す図であり、(a)は、排水弁の正面図であり、(b)、(c)は、排水弁の側面図である。
【図7】排水弁の設置の態様を示す図であって、図5におけるVII部の拡大図である。
【図8】図2におけるVIII部の拡大図である。
【図9】図2におけるIX部の拡大図である。
【図10】図1におけるX部の拡大図である。
【図11】靴側筒状体の概略構成を示す図であって、(b)は断面図であり、(a)は(b)におけるXI矢視図である。
【図12】変形例に係る靴側筒状体の概略構成を示す図であって、図11(a)に対応した図である。
【図13】参考例に係る靴側筒状体の概略構成を示す図であって、図11(a)に対応した図である。
【図14】変形例に係るズボンと靴との接続構造の概要を示す図であって、図9に対応した図である。
【図15】変形例に係るズボンと靴との接続構造の概要を示す図であって、図1に対応した図である。
【図16】変形例に係るズボンと靴との接続構造の概要を示す図であって、図1に対応した図である。
【図17】変形例に係るズボンと靴との接続構造の概要を示す図であって、図1に対応した図である。
【図18】従来例に係るズボンと靴との接続構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係るズボンと靴との接続構造1は、防水透湿靴3と防水透湿ズボン5とをお互いに着脱自在に接続(接合)するものであり、図1等で示すように、靴側筒状体7とズボン側筒状体9とを備えて構成されている。
【0020】
靴側筒状体7は、防水透湿靴3の開口部(はき口)11に一体的に設けられている。防水透湿靴3は、防水性の機能と透湿性の機能とを備えている。この機能によって、防水透湿靴3の内部と外部との間では、水等の液体は透過しないが水蒸気等の気体が透過するようになっている。
【0021】
また、防水透湿靴3は、たとえば、ソール13とアッパー15とこのアッパー15の上側に設けられた筒状の胴部17とを備えて長靴状もしくは半長靴状に形成されている。胴部17の上端には、はき口11が形成されており、はき口11の外周には、環状のトップライン19が形成されている。
【0022】
靴側筒状体7は、少なくとも防水性を備えた材料で、たとえば、円筒状に形成されている(図11等参照)。また、靴側筒状体7は、防水透湿靴3の胴部17の軸(筒状の胴部17の中心軸であって図1では上下方向に延びている軸)と靴側筒状体7の軸(筒状の靴側筒状体7の中心軸であって図1では上下方向に延びている軸)とがお互いに一致し、トップライン19の全周が靴側筒状体7の内周に係合して、胴部17の上方で胴部17に一体的に設けられている。なお、詳しくは後述するが、防水透湿靴3と靴側筒状体7との係合部では、少なくとも防水性が確保されている。
【0023】
ズボン側筒状体9は、防水透湿ズボン5の脚部21の開口部(裾)23のところで、もしくは、裾23の近くで、防水透湿ズボン5に一体的に設けられている。また、ズボン側筒状体9は、この内周の部位が靴側筒状体7の外周の部位に係合して、靴側筒状体7に一体的にしかも着脱自在に設置されるようになっている。なお、ズボン側筒状体9の外周の部位が靴側筒状体7の内周の部位に係合して、靴側筒状体7に一体的にしかも着脱自在に設置されるようになっている構成であってもよい(図17等参照)。また、防水透湿ズボン5は、防水性の機能と透湿性の機能とを備えているシート材で構成されていることによって、防水性の機能と透湿性の機能とを備えている。
【0024】
ズボン側筒状体9も、少なくとも防水性を備えた材料で、たとえば円筒状に形成されている。また、ズボン側筒状体9は、防水透湿ズボン5の脚部21の軸とズボン側筒状体9の軸とがお互いに一致し、防水透湿ズボン5の脚部21の一部(接続体29)の全周がズボン側筒状体9の内周に係合して、防水透湿ズボン5の脚部21の下方で防水透湿ズボン5に一体的に設けられている。なお、防水透湿ズボン5とズボン側筒状体9との係合部では、少なくとも防水性が確保されている。
【0025】
靴側筒状体7には、靴側係合部25が設けられている。靴側係合部25は、詳しくは後述するが、靴側筒状体7に設けられた環状の凸部、靴側筒状体7に設けられた環状の凹部のうちの少なくともいずれかで構成されている。
【0026】
ズボン側筒状体9には、ズボン側係合部27が設けられている。ズボン側係合部27も、詳しくは後述するが、ズボン側筒状体9に設けられた環状の凸部、ズボン側筒状体9に設けられた環状の凹部のうちの少なくともいずれかで構成されている。
【0027】
そして、ズボン側係合部27が環状の凸部で構成されている場合にあっては、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に一体的に設置されたときに靴側係合部25の凹部にズボン側係合部27の凸部が嵌り込んで、ズボン側筒状体9と靴側筒状体7との接合部から防水透湿靴3と防水透湿ズボン5との内部に水が浸入することを防止する(防水する)ようになっている。
【0028】
また、ズボン側係合部27が環状の凹部で構成されている場合にあっては、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に一体的に設置されたときにズボン側係合部27の凹部に靴側係合部25の凸部が嵌り込んで、ズボン側筒状体9と靴側筒状体7との接合部から防水透湿靴3と防水透湿ズボン5との内部に水が浸入することを防止する(防水する)ようになっている。
【0029】
なお、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に一体的に設置されたときには、靴側係合部25(靴側筒状体7)、ズボン側係合部27(ズボン側筒状体9)のうちの少なくとも一方が弾性変形して、靴側係合部25がズボン側係合部27を押圧し(またはズボン側係合部27が靴側係合部25を押圧し)防水性(気密性)を確保するようになっている。
【0030】
ここで、ズボンと靴との接続構造1について、例を掲げてさらに詳しく説明する。
【0031】
靴側筒状体7は、剛性の高い材料(たとえば、ABS樹脂等の硬質のプラスチック)で構成されており、前述したように、防水透湿靴3の開口部11に設けられている。ズボン側筒状体9は、弾性を備えた材料(たとえば、軟質の合成ゴム)で構成されており、前述したように、防水透湿ズボン5の脚部21の下方に設けられており、防水透湿靴3と防水透湿ズボン5とを接合したとき、靴側筒状体7の外周を覆うようにして靴側筒状体7に設置されるようになっている。
【0032】
ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されている状態では、図2等で示すように、靴側筒状体7の外周にズボン側筒状体9の内周が係合し、靴側筒状体7とズボン側筒状体9とで2重管状になっている。また、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されている状態では、ズボン側筒状体9と靴側筒状体7とを介して、防水透湿靴3と防水透湿ズボン5とがお互いに接続されている。さらに、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されている状態では、ズボン側筒状体9が弾性変形してズボン側筒状体9の内径が常態(なんら外力がかかっていない状態)に比べて大きくなり、靴側筒状体7の外径とほぼ同じになっている。
【0033】
なお、防水透湿ズボン5は、ズボン側筒状体9の上端部のところで接続体29を介してズボン側筒状体9に係合しており、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に一体的に設置されたときにはズボン側筒状体9の下端部が靴側筒状体7の下端部に係合するので、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に一体的に設置されたときに、防水透湿ズボン5が靴側筒状体7や防水透湿靴3に干渉することはない。また、防水透湿靴3の開口部11(トップライン19)は、靴側筒状体7の内周に係合しているので、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に一体的に設置されたときに、防水透湿靴3がズボン側筒状体9や防水透湿ズボン5に干渉することはない。
【0034】
ズボン側筒状体9の防水透湿ズボン5への設置の態様についてさらに詳しく説明する。ズボン側筒状体9は、図1や図2等で示すように、筒状の接続体(防水透湿ズボン5と同様の材料で構成された接続体)29を介して、防水透湿ズボン5に一体的に設けられている。
【0035】
すなわち、接続体29上端の環状の開口部の全周が、防水透湿ズボン5の脚部21の内周の全周(脚部21の延伸方向で裾23から上方に所定の距離だけ離れている部位)に係合して、接続体29が防水透湿ズボン5に一体的に設けられている。なお、接続体29と防水透湿ズボン5との接合は、接着剤や縫うことによってなされており、接続体29と防水透湿ズボン5との接合部では、防水性が確保されている。さらに、接続体29と防水透湿ズボン5との接合部が、防水用の目止めシールテープ31で覆われている。これにより、防水性が一層確保されている。
【0036】
また、接続体29下端の環状の開口部の全周が、ズボン側筒状体9の内周の全周に係合して、ズボン側筒状体9が接続体29に一体的に設けられている。なお、接続体29とズボン側筒状体9との接合は、接着剤や縫うことによってなされており、接続体29とズボン側筒状体9との接合部では、防水性が確保されている。さらに、接続体29とズボン側筒状体9との接合部を、防水用の目止めシールテープ31と同様なシールテープで覆ってもよい。
【0037】
このように、ズボン側筒状体9が接続体29を介して、防水透湿ズボン5の脚部21の内側に設けられていることにより、ズボン側筒状体9や接続体29が設けられているところでは、防水透湿ズボン5の脚部21が2重管状になっている。
【0038】
なお、防水透湿ズボン5の脚部21には、ファスナ(線ファスナ)33が設けられている。ファスナ33は、防水透湿ズボン5の裾23から接続体29との接合部の近傍にわたって設けられている。ファスナ33を閉じた状態では、脚部21(裾23と接続体29との接合部との間部位)は筒状になっているが、ファスナ33を開くと、脚部21(裾23と接続体29との接合部との間部位)が板状に開き、ズボン側筒状体9の靴側筒状体7への着脱がしやすくなる。
【0039】
靴側係合部25は、図8、図9等で示すように、靴側筒状体7の外周に形成された環状の凹部35で構成されている。凹部35は、靴側筒状体7の軸方向で靴側筒状体7の中間部に形成されている。靴側筒状体7では、靴側係合部25の凹部35の外径D21が、凹部35が形成されていない部位(靴側筒状体本体部37)の外径D11よりも小さくなっている。
【0040】
さらに説明すると、靴側係合部25の凹部35の断面形状(環状の凹部35の周方向に直交する平面による断面の形状)は、半円状に形成されている。半円の中心は、靴側筒状体本体部37の外周のところに位置している。したがって、靴側係合部25の凹部35は、底側に向かうにしたがって(靴側筒状体7の内周側に向かうにしたがって)、幅(靴側筒状体7の軸方向の寸法;図9の上下方向の寸法)が次第に小さくなっている。
【0041】
ズボン側係合部27は、図9等で示すように、ズボン側筒状体9の内周に形成された環状の凸部39で構成されている。凸部39は、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に一体的に設置されたときに、靴側係合部25に密着して靴側係合部25(凹部35)に嵌り込むようになっている(図10等参照)。
【0042】
ズボン側係合部27は、ズボン側筒状体9の軸方向でズボン側筒状体9の中間部に形成されている。ズボン側筒状体9では、ズボン側係合部27の凸部39の内径D22が、凸部39が形成されていない部位(ズボン側筒状体本体部41)の内径D12よりも小さくなっている。
【0043】
さらに説明すると、ズボン側係合部27の凸部39の断面形状(環状の凸部39の周方向に直交する平面による断面の形状)は、半円状に形成されている。半円の中心は、ズボン側筒状体本体部41の内周のところ位置している。したがって、凸部39は、基端側に向かうにしたがって、幅(ズボン側筒状体9の軸方向の寸法)が次第に小さくなっている。また、凸部39の断面(半円状の断面)の半径は、凹部35の断面の半径と等しいかもしくは僅かに小さくなっている。
【0044】
ここで、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されていない状態やズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されている状態における、靴側筒状体7の各部の寸法と、ズボン側筒状体9の各部の寸法とについて詳しく説明する。
【0045】
ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されていない状態では、図9で示すように、靴側筒状体本体部37の外径D11が、ズボン側筒状体本体部41の内径D12よりもわずかに大きくなっており、靴側筒状体7の凹部35の外径D21が、ズボン側筒状体の凸部39の内径D22よりも大きくなっている。したがって、外径D21と内径D22との差DF2が、外径D11と内径D12との差DF1よりも大きくなっている。
【0046】
これにより、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されている状態では、図10で示すように、ズボン側係合部27が所定の押圧力をもって靴側係合部25に接触するようになっている(ズボン側筒状体9で、ズボン側係合部27の先端部およびこの近傍の部位がズボン側筒状体本体部41よりも大きく弾性変形して接触するようになっている)。
【0047】
そして、靴側筒状体7にズボン側筒状体9を設置したときに、靴側筒状体7とズボン側筒状体9との間での気密性を確実に得ることができる。また、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置した状態では、図10で示すように、ズボン側係合部27の近傍には僅かな隙間43が形成されるようになっている。
【0048】
なお、上記説明では、ズボン側係合部27を、ズボン側筒状体本体部41に一体で設けた凸部39で構成しているが、ズボン側筒状体本体部41に環状の凹部を設け、靴側筒状体7の凹部35にOリングを別途設け、このOリングが、ズボン側筒状体本体部41の環状の凹部に嵌り込むようにして、気密性を得るようにしてもよい。
【0049】
また、靴側筒状体7とズボン側筒状体9とには、ズボン側筒状体9を靴側筒状体7に設置し終えたときに、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7から外れてしまうこと(靴側筒状体7がズボン側筒状体9から抜けてしまうこと)を防止するためのはずれ防止部45が設けられている。はずれ防止部45は、靴側筒状体7とズボン側筒状体9とに設けられている。
【0050】
靴側筒状体7のはずれ防止部45は、図9や図10等で示すように、たとえば、靴側筒状体7の外周に形成されている環状の凹部47と、靴側筒状体7の基端部(防水透湿靴3側の端部)49とで構成されている。
【0051】
靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する環状の凹部47は、靴側筒状体7の軸方向で、靴側筒状体7の中間部であって靴側係合部25よりも先端部(防水透湿靴3とは反対側の端部)側に設けられている。
【0052】
靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する凹部47の断面形状(環状の凹部47の周方向に直交する平面による断面の形状)は、台形状(一方の斜辺が上底と下底とに対して直交している台形状)に形成されている。また、靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する凹部47は、上記台形の一方の斜辺が靴側係合部25とは反対側に位置し、上記台形の他方の斜辺が靴側係合部25側に位置し、上記台形の下底が靴側筒状体本体部37の外径と一致するようにして、靴側筒状体本体部37に設けられている。
【0053】
靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する環状の基端部49は、靴側筒状体7の軸方向で靴側筒状体7の一方の端部に形成されたテーパ面(円錐台の側面)で構成されており、テーパ面は、靴側筒状体7の内周側を向いている。すなわち、テーパ面と靴側筒状体本体部37の外周面との交差角度が鋭角になっており、テーパ面と靴側筒状体本体部37の内周面との交差角度が鈍角になっている。
【0054】
ズボン側筒状体9のはずれ防止部45は、たとえば、ズボン側筒状体9の内周に形成されている環状の凸部51と、ズボン側筒状体9の先端部(防水透湿ズボン5とは反対側の端部)に形成されている鍔部53とで構成されている。
【0055】
ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する環状の凸部51は、ズボン側筒状体9の軸方向で、ズボン側筒状体9の中間部であってズボン側係合部27よりも上側に設けられている。
【0056】
ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する凸部51の断面形状(環状の凸部51の周方向に直交する平面による断面の形状)も、靴側筒状体7のはずれ防止部45の場合と同様にして、台形状(一方の斜辺が上底と下底とに対して直交している台形状)に形成されている。また、ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する凸部51は、上記台形の一方の斜辺がズボン側係合部27とは反対側に位置し、上記台形の他方の斜辺がズボン側係合部27側に位置し、上記台形の下底がズボン側筒状体本体部41の内径と一致するようにして、ズボン側筒状体本体部41に設けられている。
【0057】
ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する環状の鍔部53の一方の面(ズボン側筒状体9の軸方向でズボン側筒状体9の内側に位置している面)は、テーパ面になっている。
【0058】
そして、図10で示すように、ズボン側筒状体9を靴側筒状体7に設置したときには、ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する凸部51が、靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する凹部47に入り込み、ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する鍔部53が靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する基端部49に係合する(引っ掛かる)ようになっている。
【0059】
また、ズボン側筒状体9と靴側筒状体7との軸方向で、ズボン側筒状体9を靴側筒状体7から離す力がズボン側筒状体9に加えられたときは(図10で、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に対して上方向に移動しようとしたきには)、ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する鍔部53のテーパ面が、靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する基端部49のテーパ面に面接触し、ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する凸部51の一方の斜辺で表される面が、靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する凹部47の一方の斜辺で表される面に面接触して、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7から外れることが防止されるようになっている。
【0060】
なお、上記構成において、ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する凸部51と靴側筒状体7のはずれ防止部45を構成する凹部47、もしくは、ズボン側筒状体9のはずれ防止部45を構成する鍔部53を削除してもよい。
【0061】
ところで、防水透湿靴3は、図1等で示すように、皮革(たとえば天然皮革)で構成されている靴本体部(靴皮革)55と、この靴本体部55の内側に設けられた防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57とを備えて構成されている。
【0062】
また、防水透湿靴3には、フェルト等の保温性材料で構成された袋状の保温体59と、インナーソール61(図4等参照)とが設けられている。保温体59は防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の内側に設けられている。これにより、防水透湿靴3は、最も外側に靴本体部55を配置し、この靴本体部55の内側に防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57を配置し、最も内側に保温体59を配置した3重構造になっている。
【0063】
さらに説明すると、たとえば、図1や図3等で示すように、靴本体部55は、ソール(底材)63とアッパー65とこのアッパー65の上側に設けられた筒状の胴部67とを備えて長靴状もしくは半長靴状に形成されている。ソール63は、たとえば合成ゴムで構成されており、アッパー65と胴部67は、たとえば天然皮革を所定の形状に切断し縫い合わせて形成されている。また、ソール63とアッパー65とは、たとえば接着や縫着等によって、一体になっている。
【0064】
胴部67の上端には、図1、図2、図8等で示すように、はき口69が形成されており、はき口69の外周には、環状のトップライン71が形成されている。
【0065】
防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57とは、防水透湿性の(液体不透過性で蒸気発散性の)シート材料をたとえば接合して形成した袋状(長靴状もしくは半長靴状)の内装体(内側ライナー)である。防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57は防水透湿性の機能を備えている。防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57においても、靴本体部55と同様にして、上端にはき口73が形成されており、はき口73の外周には、環状のトップライン75が形成されている(図8等参照)。
【0066】
保温体59は、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57と同様な形状に形成されており、保温体59の上端にもはき口77が形成されており、はき口77の外周には、環状のトップライン79が形成されている(図8等参照)。
【0067】
ここで、靴本体部55と靴側筒状体7との接合の態様について詳しく説明する。
【0068】
図8等で示すように、靴側筒状体7(靴側筒状体本体部37)の内周であって基端部からこの近くの部位にかけては、筒状の凹部(靴本体部用係合部)81が形成されている。したがって、靴本体部用係合部81の内径は、靴本体部用係合部81が形成されていない部位(靴側筒状体本体部37)の内径よりも大きくなっている。また、靴本体部用係合部81の内径は靴本体部55の胴部67の外径(トップライン71近傍の外径)とほぼ等しくなっている。
【0069】
そして、靴本体部55の胴部67(トップライン71からこの近傍の部位)が、靴本体部用係合部81に入り込み、靴本体部55の胴部67の外周が靴本体部用係合部81の内周に接触し、たとえば、縫糸83で靴本体部55が靴側筒状体7に一体的に設けられている(固縛され固定されている)。なお、縫糸83は、靴側筒状体7(靴本体部用係合部81)の周方向で所定の間隔をあけて設けられた貫通孔(靴側筒状体7の肉部をこの径方向で貫通している孔)85を通っている。靴本体部55の胴部67の外周と靴本体部用係合部81の内周とがお互いに接触している部位は、円柱側面状になっている。
【0070】
次に、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57と靴側筒状体7との接合の態様について詳しく説明する。
【0071】
図8等で示すように、靴側筒状体本体部37の内径は、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の胴部の外径(トップライン75近傍の外径)とほぼ等しくなっている。そして、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の胴部(トップライン75とこの近傍の部位)の外周が、靴側筒状体本体部37の内周に係合して、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57が靴側筒状体7に一体的に設けられている。防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57と靴側筒状体7との係合部は、円柱側面状になっており、この円柱側面状の部位にウレタン系接着剤等の接着剤(図示せず)が設けられている。すなわち、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の胴部の外周と靴側筒状体本体部37の内周との間に接着剤が設けられて、この接着剤で防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57と靴側筒状体7とがお互いに接合されており、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57と靴側筒状体7との接合部は、防水の機能を備えていると共に、気密性を備えている。
【0072】
さらに、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57と靴側筒状体7との接合部(特に、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57のトップライン75とこの近傍の部位)には、防水用目止めテープ87が設けられており、防水の機能と気密性が一層確実に保証されている。防水用目止めテープ87は、この長手方向の両端部同士が接合されて環状になっている。また、防水用目止めテープ87の外周面には、粘着剤が設けられており、防水用目止めテープ87の幅方向の一方の側が防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の内周に貼り付き、防水用目止めテープ87の幅方向の他方の側が靴側筒状体7の内周に貼り付いている。
【0073】
次に、保温体59と靴側筒状体7との接合の態様について詳しく説明する。
【0074】
図8等で示すように、靴側筒状体本体部37の内径は、保温体59の胴部の外径(トップライン79近傍の外径)とほぼ等しくなっている。そして、保温体59の胴部(トップライン79とこの近傍の部位)の外周が、靴側筒状体本体部37の内周に係合して、保温体59が靴側筒状体7に一体的に設けられている。保温体59と靴側筒状体7との係合部は、円柱側面状になっており、この円柱側面状の部位に、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の場合と同様にしてウレタン系接着剤等の接着剤が設けられている。
【0075】
なお、靴側筒状体7と靴本体部55との係合部、靴側筒状体7と防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57との係合部、靴側筒状体7と保温体59との係合部における、靴側筒状体7の軸方向での位置は、靴側筒状体7と靴本体部55との係合部が、靴側筒状体7の基端部側(図8で下側)に位置しており、靴側筒状体7と保温体59との係合部が、靴側筒状体7の先端部側(図8で上側)に位置しており、靴側筒状体7と防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57との係合部は、両者の間に位置している。また、防水透湿靴3において、保温体59やインナーソール61を削除した構成であってもよい。
【0076】
靴本体部55のアッパー65や胴部67が天然皮革を縫い合わせて構成されていることにより、アッパー65や胴部67を構成している天然皮革自体を通って、また、天然皮革の縫い合わせた部分を通って、水等の液体が、靴本体部55の外部から内部に入り込むことがある。さらに、靴本体部55が天然皮革で構成されていることにより、水蒸気等の気体が、靴本体部55の外部から内部に入り込み、逆に、靴本体部55の内部から外部に出るようになっている。すなわち、靴本体部55は透湿性の機能を備えている。
【0077】
防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57が防水透湿性の機能を備えているので、靴本体部55の内側に浸入した水等の液体は、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の内側に入り込むことはなく、防水透湿靴3を履いた着用者の足が濡れることはない。
【0078】
保温体59が熱伝導しにくい材料で構成され高い保温性を備えているので、防水透湿靴3は、防寒性を備えており、防水透湿靴3を履いた着用者が足の寒さを感じにくくなっている。また、防水透湿靴3を履いた着用者が足から出る汗の水蒸気等は、保温体59、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57、靴本体部55を通って防水透湿靴3の外部に排出されるようになっている。
【0079】
また、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の底面(着用者の足裏に接する防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の内面と対向している防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の外面)には、インナーソール(中敷)61が一体的にもしくは別体で設けられている。インナーソール61の底面と、靴本体部55のソール63の上面(内面)には、図4に示すように面ファスナ89が設けられており、インナーソール61が靴本体部55に対して着脱自在になっている。
【0080】
なお、図5で示すように、面ファスナを設けることに代えてもしくは加えて、インナーソール61の底面に多数の溝91を設けてあってもよい。各溝91は、インナーソール61の前後方向に並んでインナーソール61の幅方向に延びているが、インナーソール61の幅方向に並んでインナーソール61の前後方向に延びていてもよいし、インナーソール61の斜め方向に並んで設けられていてもよい。また、各溝91をインナーソール61の底面に設けることに代えてもしくは加えて、靴本体部55のソール63の上面に設けてあってもよい。各溝91をインナーソール61の底面と靴本体部55のソール63の上面とに設けた場合、インナーソール61の底面に設けられている各溝91の延伸方向と、靴本体部55のソール63の上面に設けられている各溝の延伸方向とがお互いに交差(たとえば直交)していることが望ましい。また、溝の代わりに多数の凸部(もしくは多数凹部)を設けた構成であってもよい。
【0081】
ところで、靴本体部55には、靴本体部55と防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57との間に浸入した水等の液体を、靴本体部55の外部に排出するための排水弁(排水用逆水弁)93が設けられている(図5、図7等参照)。
【0082】
排水弁93は、ゴム等の弾性部材を、射出成型等で一体成型して生成されており、図6等で示すように、筒状部位95と板状部位97とを備えている。筒状部位95は、たとえば筒状に形成されている。板状部位97は、筒状部位95の軸方向の一端部で筒状部位95につながって設けられている。また、板状部位97は、2枚の平板をこれらの厚さ方向がお互いに一致するようにして重ねた形状に形成されている。
【0083】
そして、常態では(筒状部位95から板状部位97に向かう流体の圧力が存在しない状態では)、板状部位97の2枚の平板が、図6(b)で示すようにお互いに重なっている。また、筒状部位95から板状部位97に向かう流体の圧力が存在する場合には、流体の圧力によって、図6(c)で示すように板状部位97の2枚の平板同士が僅かに離れるようになっている。これにより、筒状部位95の入口(板状部位97とは反対側の端部)から入った水等の液体が、板状部位97の出口(筒状部位95とは反対側の端部)から出るようになっているが、その逆の流れは発生しないようになっている。これより、排水弁93は逆止弁として作用するようになっている。
【0084】
排水弁93は、筒状部位95の入口が靴本体部55の内側に位置し板状部位97の出口が靴本体部55の外側に位置するようにして、靴本体部55のソール63に設けられている。
【0085】
詳しく説明すると、図7で示すように、靴本体部55のソール63の土踏まずの部分に貫通孔99が形成されている。この貫通孔99は、靴本体部55の内側の部位が前側に位置し靴本体部55の外側の部位が後側に位置ようにして斜めに設けられている。
【0086】
排水弁93は、この全体が貫通孔99に挿入されて、靴本体部55のソール63に一体的に設けられている。また、貫通孔99の内壁と排水弁93の外壁との間には、接着剤等の固定剤が設けられており、靴本体部55の外側から内側には水等の液体が、排水弁93や排水弁93と貫通孔99との間を通って浸入しないようになっている。一方、靴本体部55の内側から外側には水等の液体が排水弁93を通って排出されるようになっている。
【0087】
なお、筒状部位95のみが貫通孔99に挿入されており、板状部位97が靴本体部55の外側でソール63の下面に、たとえば接着剤を用いて貼り付くようにして、靴本体部55に一体的に設けられていてもよい。
【0088】
ここで、ズボンと靴との接続構造1における、靴側筒状体7(防水透湿靴3)へのズボン側筒状体9(防水透湿ズボン5)の設置動作等について説明する。
【0089】
図2で示すように、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7から離れており、ファスナ33が開いている状態で、ズボン側筒状体9を弾性変形させて内径を大きくし、ズボン側筒状体9を靴側筒状体7に嵌め込む。これにより、ズボン側筒状体9(防水透湿ズボン5)が靴側筒状体7(防水透湿靴3)に接続される(図10等参照)。なお、図9、図10、図11等では、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57や保温体59等の表示を省略してある。
【0090】
この後、ファスナ33を閉めることにより、図1等で示すように、靴側筒状体7とズボン側筒状体9とが、防水透湿ズボン5で(防水透湿ズボン5の裾23とこの近傍の部位とで)覆われる。
【0091】
なお、ズボン側筒状体9を靴側筒状体7に接合するときに、単にズボン側筒状体9内径を広げるのではなく、ズボン側筒状体9を折り返してもよい。ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に接合されたことにより、防水透湿ズボン5と防水透湿靴3とが一体化される。
【0092】
また、防水透湿ズボン5と防水透湿靴3とを着用者が着用するとき、お互いが離れている防水透湿ズボン5と防水透湿靴3とを別々に着用し、この着用後に、ズボン側筒状体9を靴側筒状体7に接合してもよいし、防水透湿ズボン5と防水透湿靴3と接合しておいてから、防水透湿ズボン5と防水透湿靴3とを着用してもよい。
【0093】
ズボン側筒状体9の靴側筒状体7からの取り外しは、ズボン側筒状体9を靴側筒状体7に接合するときと、逆の動作でなされる。
【0094】
ズボンと靴との接続構造1によれば、環状の凹部35で構成された靴側係合部25と、ズボン側筒状体9が靴側筒状体7に設置されたときに靴側係合部25の凹部35に嵌り込んで防水する環状の凸部39で構成されたズボン側係合部27とを備えているので、防水透湿ズボン5と防水透湿靴3との着脱を容易に行うことができると共に、防水透湿ズボン5と防水透湿靴3との接続部における防水性を従来よりも高いレベルで得ることができる。
【0095】
すなわち、従来のようにズボン側筒状体(ズボン側シールゴム)の全体を大きく弾性変形させて靴側筒状体(芯材)に嵌める構成であると、ズボン側筒状体を弾性変形させるのに大きな力を要し、ズボン側筒状体の靴側筒状体への着脱が困難になるが、ズボンと靴との接続構造1では、ズボン側係合部27とこの近傍の部位のみを大きく弾性変形させればよいので、従来のものに比べてズボン側筒状体9を弾性変形させる力が小さくなり、ズボン側筒状体9と靴側筒状体7との着脱が容易になる。
【0096】
また、主にズボン側係合部27が局部的に弾性変形して靴側係合部25に係合し防水性確保するので、ズボン側筒状体9の全体による靴側筒状体7への押圧力が従来のものより小さくなっているにもかかわらず、シール部における単位面積あたりの押圧力(ズボン側係合部27が靴側係合部25を押している力)が大きくなり、従来よりも高いレベルの気密性を得ることができる。
【0097】
さらに、ズボンと靴との接続構造1によれば、あらゆる方向からの水の浸入も防ぐことができ、たとえば、防水透湿ズボン5と防水透湿靴3とが水中に没した場合であっても、防水透湿ズボン5や防水透湿靴3の内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0098】
また、ズボンと靴との接続構造1によれば、靴側筒状体7の外周に形成された環状の凹部35で靴側係合部25を構成し、ズボン側筒状体9の内周に形成された環状の凸部39でズボン側係合部27を構成してあるので、ズボン側筒状体9(防水透湿ズボン5)を靴側筒状体7(防水透湿靴3)から外してあっても、靴側係合部25とズボン側係合部27とが傷付きにくくなっており、防水透湿ズボン5や防水透湿靴3の内部への水の浸入を一層確実に防ぐことができる。
【0099】
また、ズボンと靴との接続構造1によれば、靴本体部55の内側に防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57を備えているので、靴本体部55での水漏れがあっても、防水透湿靴3の着用者の足が濡れることはなく、水に含まれている有害物質が防水透湿靴3の着用者の足に触れることがない。また、保温体59や防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57や靴本体部55は、透湿性があるので、着用者の足がムレにくくなる。また、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57の外側に靴本体部55が設けられ防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57が靴本体部55で覆われているので、防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57が保護されており傷付きにくくなっている。
【0100】
さらに、ズボンと靴との接続構造1によれば、靴本体部55に排水弁93を設けてあるので、靴本体部55と防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体57との間に入った水が、靴本体部55の外部に自動的に排出され、快適な状態で防水透湿靴3を履くことができる。
【0101】
また、ズボンと靴との接続構造1によれば、図11で示すように靴側筒状体7が円筒状に形成されており、靴側係合部25が円筒状の溝(凹部35)で形成されているので、一層確実な防水性を得ることができる。
【0102】
すなわち、図13で示すように、靴側筒状体217が長円の筒状に形成されていると、長円の直線状部219(直線状の凹部221)では、ズボン側筒状体の凸部の押圧力が小さくなるか、ほとんど無くなり、靴側筒状体217とズボン側筒状体との接合部における気密性が無くなることがある。
【0103】
しかし、図11で示すように、靴側筒状体7が円筒状に形成されており、靴側係合部25が円筒状の溝(凹部35)で形成されていれば、ズボン側筒状体9の凸部39の押圧力が、凸部39の延伸方向で均一になり、靴側筒状体7とズボン側筒状体9との接合部における気密性が確保される。
【0104】
なお、図12で示すように、靴側筒状体7aが楕円筒状に形成されていれば、ズボン側筒状体9の凸部39の押圧力が、凸部39の延伸方向でほぼ均一になり、靴側筒状体7とズボン側筒状体9との接合部における気密性が確保される。
【0105】
また、靴側筒状体7aが楕円筒状に形成されている場合において、凸部39の延伸方向でズボン側筒状体9の凸部39の押圧力がより均一になるようにするために、たとえば、図9で示す凸部39の突出高さHを適宜変えてもよい。すなわち、楕円の曲率半径が大きいほど、凸部39の突出高さHを大きくしてもよい。
【0106】
ところで、図14で示すように、ズボン側筒状体9の先端部に面取り101を設け、靴側筒状体7の先端部に面取り103を設け、ズボン側筒状体9の靴側筒状体7への設置をしやすくしてもよい。すなわち、図14(b)において、単に、ズボン側筒状体9を下側に移動するだけで、ズボン側筒状体9と靴側筒状体7との接合がなされるようにしてもよい。
【0107】
また、図15(a)で示すように、ズボン側筒状体9に凸部105と鍔部107とを設け、靴側筒状体7に凹部109を設け、凸部105と凹部109とでシール性を確保すると共にはずれ防止部を構成し、鍔部107ではずれ防止部を構成してもよい。また、図15(b)で示すように、図15(a)において、鍔部107を削除した構成であってもよい。
【0108】
また、図15(a)において、ズボン側筒状体9に凹部113を設け、靴側筒状体7に凸部111を設けた構成であってもよいし(図16(a)参照)、図15(a)において、ズボン側筒状体9に凸部115をさらに設け、靴側筒状体7に凹部117をさらに設けた構成であってもよい(図16(b)参照)。
【0109】
また、図17で示すように、ズボン側筒状体119の内周に、靴側筒状体121が接続される構成であってもよい。
【0110】
なお、ズボンと靴との接続構造1でお互いが接合されている防水透湿ズボン5と防水透湿靴3とを着用した着用者は、水に濡れずムレに悩まされないだけでなく、寒さ、熱、および、農薬等の化学薬品、細菌、粉塵、放射性粒子等の有害物質、および、水圧や空気圧等の圧力、弾丸、破片、飛翔物体による衝撃から保護される。さらに、防水透湿靴3や防水透湿ズボン5(上衣を含むつなぎでもよい)を適宜の材料で構成することにより、上記保護を一層確実ならしめると共に、電磁波、放射線等からの保護される。
【符号の説明】
【0111】
1 ズボンと靴との接続構造
3 防水透湿靴
5 防水透湿ズボン
7 靴側筒状体
9 ズボン側筒状体
25 靴側係合部
27 ズボン側係合部
35 (靴側係合部を構成する)凹部
39 (ズボン側係合部を構成する)凸部
55 靴本体部
57 防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体
93 排水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水透湿靴に設けられた靴側筒状体と、
防水透湿ズボンに設けられ、前記靴側筒状体に設置されるズボン側筒状体と、
前記靴側筒状体に設けられ、環状の凸部、環状の凹部の少なくともいずれかで構成された靴側係合部と、
前記ズボン側筒状体に設けられ前記ズボン側筒状体が前記靴側筒状体に設置されたときに前記靴側係合部の凸部が嵌り込んで防水する環状の凹部、前記ズボン側筒状体に設けられ前記ズボン側筒状体が前記靴側筒状体に設置されたときに前記靴側係合部の凹部に嵌り込んで防水する環状の凸部の少なくともいずれかで構成されたズボン側係合部と、
を有することを特徴とするズボンと靴との接続構造。
【請求項2】
剛性の高い材料で構成され、防水透湿靴に設けられた靴側筒状体と、
弾性を備えた材料で構成され、防水透湿ズボンに設けられ、前記靴側筒状体を覆うようにして前記靴側筒状体に設置されるズボン側筒状体と、
前記靴側筒状体の外周に形成された環状の凹部と、
前記ズボン側筒状体の内周に形成され、前記ズボン側筒状体が前記靴側筒状体に設置されたときに、前記靴側筒状体の環状の凹部に嵌り込む環状の凸部と、
を有することを特徴とするズボンと靴との接続構造。
【請求項3】
請求項2に記載のズボンと靴との接続構造において、
前記防水透湿靴は、皮革で構成されている靴本体部と、この靴本体部の内側に設けられた防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体とを備えていることを特徴とするズボンと靴との接続構造。
【請求項4】
請求項3に記載のズボンと靴との接続構造において、
前記靴本体部には、前記靴本体部と前記防水透湿性シート材料を接合して形成した袋状内装体との間に浸入した水等の液体を、前記靴本体部の外部に排出するための排水弁が設けられていることを特徴とするズボンと靴との接続構造。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載のズボンと靴との接続構造において、
前記靴側筒状体が、円筒状もしくは楕円筒状に形成されていることを特徴とするズボンと靴との接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−65777(P2012−65777A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212018(P2010−212018)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000107387)日本ゴア株式会社 (121)
【出願人】(510253767)センケンエンジニアリング株式会社 (1)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】