説明

ズームダイヤル機構

【課題】小型化が可能で、かつ組立作業性の良いズームダイヤル機構10を提供すること。
【解決手段】ベースプレート20と、ベースプレート20の中心孔20aに時計方向及び反時計方向へ回動可能に組み付けられ、回動方向と回動量に応じて電動ズームレンズのズーム動作を設定するズームダイヤル30と、ズームダイヤルの中心穴33に進退可能に組み付けられたプッシュノブ50とを備えたズームダイヤル機構10であって、ベースプレート20に円弧溝23を中心孔20aの外側に形成し、円弧溝23にコイルばね70を装着し、ズームダイヤル30にコイルばね70の一端に当接する第1リブ36とコイルばね70の他端に当接する第2リブ37を固設し、ズームダイヤル30を時計方向へ回動したとき第1リブ36でコイルばね70が圧縮され、ズームダイヤル30を反時計方向へ回動したとき第2リブ37でコイルばね70が圧縮されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ズームレンズのズーム動作を設定するズームダイヤル機構に関し、特に電動ズームレンズを備えた資料提示装置に用いるに好適なズームダイヤル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
資料提示装置は基台に立設した支柱の先端部にカメラヘッドを設け、書類や模型等の資料をこのカメラヘッドで撮像し、撮像をモニターテレビで再生したり、ビデオプロジェクターでスクリーンに投影するものである。
資料提示装置の一形式として、特開2007−194884号公報には、図8に示すように基台101から支柱102を立設し、この支柱102先端にカメラヘッド103を取り付けた資料提示装置100が開示されている。
【0003】
この資料提示装置100では、支柱102が基台101から直立する直立部102aと、直立部102aから連続して水平に基台101の前方へ延びる水平部102bを有し、水平部102bの先端に円筒形のカメラヘッド103を設けている。このカメラヘッドの先端部下面には電動ズームレンズ104が組み込まれている。また、カメラヘッド103の基端部にズームダイヤル機構200が組み込まれ、カメラヘッド103の内部に電動ズームレンズ104のズーム機構やオートフォーカス機構及びそれらの制御回路が内蔵されている。
【0004】
この資料提示装置では、資料を基台101の前面に近接するように装置設置面上に置き、ズームダイヤル201を回動操作して電動ズームレンズ104の画角を調整し、ズームダイヤル201の中心部に設けたプッシュノブ202を押してオートフォーカス機構を作動させ、資料を撮像する。
【0005】
ところで、上記ズームダイヤル機構200は図9に示すように、ベースプレート203と、ベースプレート203の中心孔203a(図10参照)に時計方向及び反時計方向へ回動可能に組み付けられ、回動方向と回動量に応じて電動ズームレンズ104のズーム動作を設定するズームダイヤル201と、ズームダイヤル201に形成した中心穴201aに進退可能に組み付けたオートフォーカス用プッシュノブ202とを備えている。
【0006】
このズームダイヤル機構では、図10に示すようにベースプレート203の中心孔203aの周囲3箇所に突起203b,203c,203dを設け、この突起203b,203c,203dにズームダイヤル201を回動中立位置へ付勢するねじりばね204を取り付けている。このねじりばね204はベースプレート203の中心孔203aを取り囲むように配置されている。そして、ねじりばね204の一端204aにズームダイヤル201に設けた第1リブ201bが係止され、ねじりばね204の他端204bにズームダイヤル201の第2リブ201cが係止される。ズームダイヤル201を時計方向に回動操作すると第1リブ201bによってねじりばね204の一端204aが時計方向に延びる。指を離してダイヤル操作を停止すると、延びていたねじりばね204の一端204aが収縮してズームダイヤル201が中立位置に復帰する。ズームダイヤル201を反時計方向に回動操作すると第2リブ201cによってねじりばね204の他端204cが反時計方向に延び、ダイヤル操作を停止するとズームダイヤル201が中立位置に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−194884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来のズームダイヤル機構200は、ベースプレート203の中心孔203aよりも径の大きいねじりばね204を用い、中心孔203aを取り囲むようにねじりばね204をベースプレート203に取り付けているため、中心孔203aの周囲にねじりばね204を取り付けるためのスペースを要し、そのためベースプレート203のサイズが大きくなり、ズームダイヤル機構200の小型化が困難であった。
また、ねじりばね204のピン状の端部204a,204bとリブ201b,201cとの係止が外れ易く、作動不良の原因となるおそれがあるだけでなく、ピン状端部204a,204bにリブ201b,201cが係止するように慎重にベースプレート203とズームダイヤル201を組み立てなければならず、組付作業性が悪い。
本発明はかかる問題点に鑑み、小型化が可能で、かつ組立作業性の良いズームダイヤル機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ベースプレートと、ベースプレートの中心孔に時計方向及び反時計方向へ回動可能に組み付けられ、回動方向と回動量に応じて電動ズームレンズのズーム動作を設定するズームダイヤルと、ベースプレートに取り付けられズームダイヤルを回動中立位置方向へ付勢するばねと、ズームダイヤルに形成した中心穴に進退可能に組み付けられたプッシュノブとを備えたズームダイヤル機構であって、前記ベースプレートに前記中心孔と略同心の円弧形状を有する円弧溝を前記中心孔の外側に形成し、該円弧溝にコイルばねを装着し、前記ズームダイヤルに前記コイルばねの一端に当接する第1リブとコイルばねの他端に当接する第2リブを固設し、ズームダイヤルを時計方向へ回動したとき第1リブでコイルばねが圧縮され、ズームダイヤルを反時計方向へ回動したとき第2リブでコイルばねが圧縮されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のズームダイヤル機構において、前記ベースプレートの反円弧溝側にストッパ凸片を形成し、前記ズームダイヤルに、ストッパ凸片に当接してズームダイヤルの時計方向の回動量を規制する第1ストッパ片とストッパ凸片に当接してズームダイヤルの反時計方向の回動量を規制する第2ストッパ片を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明に係るズームダイヤル機構では、ズームダイヤルを時計方向へ回動したとき第1リブでコイルばねが圧縮され、ズームダイヤルを反時計方向へ回動したとき第2リブでコイルばねが圧縮される、そして、ズームダイヤルから指を離してズーム操作を停止すると、圧縮したコイルばねが伸長してズームダイヤルが回動中立位置に復帰する。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、中心孔と同心の円弧溝にコイルばねを装着したので、ねじりばねを用いた従来のズームダイヤル機構に比べばねの設置スペースが少なくて済み、ズームダイヤル機構の小型化が可能となる。
また、コイルばねを円弧溝に装填することにより装着するので、組付作業性が良い。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第1ストッパ片又は第2ストッパ片でズームダイヤルの回動量を規制するので、コイルばねの復元力が過大になって操作感が悪化するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るズームダイヤル機構を示す側面図である。
【図2】図1のB−B線切断断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るズームダイヤル機構のベースプレートを示す斜視図である。
【図4】同ズームダイヤル機構のズームダイヤルを示す斜視図である。
【図5】同ズームダイヤル機構の円形プレートを示す斜視図である。
【図6】図1のA−A線切断断面図である。
【図7】図1のA−A線切断断面図である。
【図8】従来のズームダイヤル機構を備えた資料提示装置を示す斜視図である。
【図9】従来のズームダイヤル機構を示す斜視図である。
【図10】従来のズームダイヤル機構のベースプレートを示す平面図である。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明を図面に基づき説明するに、図1及び図2には本発明の一実施例に係るズームダイヤル機構10が示されている。当該ズームダイヤル機構10はベースプレート20、ズームダイヤル30、プッシュノブ50及び円形プレート60を備えている。
【0016】
ベースプレート20は図3に示すように、略円形の外形を有し、中心部に中心孔20aが形成され、中心孔20aと同心の円弧形のガイドスリット20bが形成さている。また、ベースプレート20の内面には中心孔20aと同心に内外2個の円弧片21,22が凸設され、両円弧片21,22で中心孔20aと同心の円弧溝23が区画形成されている。円弧片21端部にはそれぞれ溝23の内側へ屈折する第1係止部21aと第2係止部21bが形成されている。同様に、円弧片22にも第1係止部22aと第2係止部22bが形成され、円弧片21と円弧片22の対向する係止部21a,22及び係止部21b,22bで第1通路23aと第2通路23bが区画形成されている。ガイドスリット20bは円弧溝23の底面を通過し、円弧溝23の両端から外側へ延びている。中心孔20aの反円弧溝側にはストッパ凸片24が凸設されている。
一方、ベースプレート20の外面には図1及び図2に示すように、3本の係止片25,26,27と1本のボス28が凸設されている。
【0017】
ズームダイヤル30は図2及び図4に示すように、外筒31と、外筒31の中心部に設けた内筒32から成る2重筒構造を有し、内筒32によって中心穴33が区画形成されている。この中心穴33の外端側には拡径部33aが形成され、内端側には拡径部33aから連続する縮径部33bが形成されている。縮径部33bの内端部には4本の係止片35が凸設され、中心穴33の中心線方向に延びている。また、外筒31と内筒32の中間部には中心穴33と同心の2本の第1円弧形リブ36及び第2円弧形リブ37が設けられている。各リブ36,37の一端にはそれぞれ中心穴33の中心線方向内側へ突出する第1押圧片38と第2押圧片39が形成され、両押圧片38,39が所定の間隔をあけて対向している。また、各リブ36,37の反押圧片側にはそれぞれ径方向に延びる第1ストッパ片40と第2ストッパ片41が成形され、両ストッパ片40,41が所定の間隔をあけて対向している。
【0018】
プッシュノブは図2に示すようにヘッド51と、ヘッド51から連続する筒軸部52と、ヘッド51から延びて筒軸部52の中心を貫通するプッシュロッド53から成り、各部が一体成形されている。また、筒軸部52の内端部には2本の係止爪片54が筒軸部52の中心線に関して対称位置に形成されている。
【0019】
円形プレート60の中心部には中心孔61が形成され、中心孔61と同心の円弧形を有する2個の係止片62が凸設されている。2個の係止片62は近接して設けられ、両係止片62の端部間に隙間63が形成されている。また、円形プレート60には4本の係止用スリット64が形成されている。各係止用スリット64は中心穴61と同心の円弧形に形成されている。
【0020】
本実施例に係るズームダイヤル機構10を構成するベースプレート20、ズームダイヤル30、プッシュノブ50及び円形プレート60の構造は以上の通りであって、各部は以下の要領で組み付けられている。図6に示すように、あらかじめベースプレート20の円弧溝23にコイルスプリング70を装填する。コイルスプリングの一端は係止部21a,22aに圧接して係止され、他端は係止部21b,22bに圧接して係止されるので、円弧溝から脱落しないで装着される。
【0021】
ズームダイヤル30の中心穴33にプッシュノブ50の筒軸部52を挿入し、プッシュノブ50の係止爪54をズームダイヤル30の内筒32の内端部に係止させる。これによりプッシュノブ50がズームダイヤル30に取り付けられる。取り付けられたプッシュノブ30はヘッド51とズームダイヤル30の中心穴33の縮径部33bとの間に形成される所定の隙間S(図2参照)に相当するストロークで中心穴33に進退可能に組み付けられる。
【0022】
コイルスプリング70を装填したベースプレート20にプッシュノブ50を組み込んだズームダイヤル30を被せて両者を組み付ける。その際、ズームダイヤル30の内筒32をベースプレート20の中心孔20aに回転可能に嵌合させ、内筒32の内端部の係止片35をベースプレート30の中心孔20aから外側へ突出させる。また、ズームダイヤル30の第1押圧片38を第1通路23aに臨ませ、第2押圧片39を第2通路23bに臨ませる。さらに、第1押圧片38と第2押圧片39をベースプレート20のガイドスリット20bに摺動可能に嵌合させる。
【0023】
ベースプレート20にズームダイヤル30を被せた後、ベースプレート20の中心孔20aから突出する4個の係止片35が円形プレート60の係止用スリット64に挿入されるように円形プレート60をベースプレート20に被せる。そして、係止用スリット64から外側へ突出する係止片35を加熱してて押し潰す。これによりズームダイヤル30がベースプレート20に一体に組み付けられる。
【0024】
組み立てられたズームダイヤル機構10に回路基板80(図1参照)が取り付けられる。ベースプレート20の外面に凸設した3個の係止片25,26,27に回路基板80の一端を係止し、他端側をネジ81でボス28に締め付けてベースプレート20に回路基板80が固定される。この回路基板80には電動ズームレンズ104のオートフォーカス制御機構の作動をオンオフ制御するオートフォーカススイッチ(図示略)と、ズーム機構のズーム動作を設定するズームスイッチ(図示略)が設けられている。オートフォーカススイッチはプッシュノブ50を押圧操作してプッシュロッド53で押圧することにより作動する。また、ズームスイッチにはレバー片が設けられ、ズームスイッチはこのレバー片が円形プレート60の係止片62間の隙間63に係合するように回路基板80に取り付けられている。ズームダイヤル30を回動操作すると、ズームダイヤル30と一体に円形プレート60が回動し、ズームスイッチのレバー片が回動する。
【0025】
本実施例に係るズームダイヤル機構10の構造は以上の通りであって、プッシュノブ50を押圧操作してオートフォーカススイッチをオンにし、オートフォーカス機構を作動させる。電動ズームレンズ104の画角を調整するにはズームダイヤル30を回動操作する。ズームダイヤル30を時計方向へ回動したとき第1リブ36の押圧片38でコイルばね70が圧縮され、図7に示すように、ズームダイヤル30を反時計方向(矢印参照)へ回動したとき第2リブ37の押圧片39でコイルばね70が圧縮される。ズームダイヤル30の回動に連動して円形プレート60も回動し、ズームスイッチがオンになり電動ズームレンズが作動する。時計方向にズームダイヤル30を回動したときズームレンズがワイド側へ駆動され、反時計方向へ回動したときテレ側へ駆動される。また、回動量に応じてワイド側又はテレ側への駆動速度が変化し、回動量が大きいほど早く駆動される。
【0026】
ズームダイヤル30から指を離してズーム操作を停止すると、圧縮したコイルばね70が伸長してズームダイヤル30が図1に示す回動中立位置に復帰する。この位置ではズームスイッチがオフになりズーム機構の作動が停止される。
【0027】
ズームダイヤル30の時計方向への回動はズームダイヤル30の第1ストッパ片40がベースプレート20のストッパ突起片24に当接して規制され、それ以上時計方向へは回動しなくなる。同様に、ズームダイヤル30の反時計方向の回動は図7に示すように第2ストッパ片41がストッパ突起片24に当接して規制される。
【0028】
本実施例に係るズームダイヤル機構10によれば、中心孔20aと同心の円弧溝23にコイルばね70を装着したので、ねじりばねを用いた従来のズームダイヤル機構に比べばねの設置スペースが少なくて済み、ズームダイヤル機構10の小型化が可能となる。
【0029】
コイルばね70を円弧溝23に装填するだけでべースプレート20に装着できるので、組付作業性が良い。
【0030】
係止片35を押し潰すことによりズームダイヤル30、コイルばね70、プッシュノブ50、ベースプレート20及び円形プレート60が一体に組み付けられ、ネジ等の締結手段を要しないので、組み付け作業性がよく製造コストを低減できる。
【0031】
第1ストッパ片40又は第2ストッパ片41でズームダイヤル30の回動量を規制するので、コイルばね70の復元力が過大になって操作感が悪化するのを防止できる。
【符号の説明】
【0032】
10…ズームダイヤル機構
20…ベースプレート
20a…中心孔
21,22…円弧片
21a,22a…第1係止部
21b,22b…第2係止部
23…円弧溝
24…ストッパ凸片
30…ズームダイヤル
31…外筒
32…内筒
33…中心穴
35…係止片
36…第1円弧形リブ
37…第2円弧形リブ
38…第1押圧片
39…第2押圧片
40…第1ストッパ片
41…第2ストッパ片
50…プッシュノブ
53…プッシュロッド
60…円形プレート
62…係止片
70…コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、ベースプレートの中心孔に時計方向及び反時計方向へ回動可能に組み付けられ、回動方向と回動量に応じて電動ズームレンズのズーム動作を設定するズームダイヤルと、ベースプレートに取り付けられズームダイヤルを回動中立位置方向へ付勢するばねと、ズームダイヤルに形成した中心穴に進退可能に組み付けられたプッシュノブとを備えたズームダイヤル機構であって、
前記ベースプレートに前記中心孔と略同心の円弧形状を有する円弧溝を前記中心孔の外側に形成し、該円弧溝にコイルばねを装着し、
前記ズームダイヤルに前記コイルばねの一端に当接する第1リブとコイルばねの他端に当接する第2リブを固設し、
ズームダイヤルを時計方向へ回動したとき第1リブでコイルばねが圧縮され、ズームダイヤルを反時計方向へ回動したとき第2リブでコイルばねが圧縮されるようにしたことを特徴とする。
【請求項2】
前記ベースプレートの反円弧溝側にストッパ凸片を形成し、前記ズームダイヤルに、ストッパ凸片に当接してズームダイヤルの時計方向の回動量を規制する第1ストッパ片とストッパ凸片に当接してズームダイヤルの反時計方向の回動量を規制する第2ストッパ片を形成したことを特徴とする請求項1に記載のズームダイヤル機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−176931(P2010−176931A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16136(P2009−16136)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】