説明

ズームレンズ

【課題】本発明の課題は、ズームレンズの全長を短くし、高倍率ズームを可能にし、且つ高解像度を有するズームレンズを提供することである。
【解決手段】本発明のズームレンズは、物体側から像側に向かって、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、及び正の屈折力を有する第3レンズ群が順に配列され、以下の条件式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするズームレンズ。
0.78<|f2/f1|<0.91 (1)
0.72<L2/fT<0.87 (2)
ここで、f1は前記第1レンズ群の有効焦点距離であり、f2は前記第2レンズ群の有効焦点距離であり、L2は前記ズームレンズが広角端から望遠端まで変倍した後の前記第2レンズ群の移動距離であり、fTは前記ズームレンズの前記望遠端における有効焦点距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズに関するものであって、特にズームレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズは、高倍率ズーム、小型化及び優れた結像品質に向かって、現在も発展している。従って、いかにズームレンズの全長を短くし、高倍率ズームを可能にし、且つ高解像度を有するズームレンズを確保できるかが、現在ズームレンズを設計する際の主要課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ズームレンズの全長を短くし、高倍率ズームを可能にし、且つ高解像度を有するズームレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため、本発明に係るズームレンズは、物体側から像側に向かって、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、及び正の屈折力を有する第3レンズ群が順に配列され、以下の条件式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするズームレンズ。
0.78<|f2/f1|<0.91 (1)
0.72<L2/fT<0.87 (2)
ここで、f1は前記第1レンズ群の有効焦点距離であり、f2は前記第2レンズ群の有効焦点距離であり、L2は前記ズームレンズが広角端から望遠端まで変倍した後の前記第2レンズ群の移動距離であり、fTは前記ズームレンズの前記望遠端における有効焦点距離である。
【発明の効果】
【0005】
上記の条件式を満たすことによって、ズームレンズの全長を短くし、高倍率ズームを可能にし、且つ高解像度を有するズームレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の第一実施形態に係るズームレンズの構造を示す図である。
【図2】図1に示す本発明の第一実施形態に係るズームレンズの広角端での横収差図である。
【図3】図1に示す本発明の第一実施形態に係るズームレンズの広角端での球面収差図である。
【図4】図1に示す本発明の第一実施形態に係るズームレンズの広角端での像面湾曲図及び歪曲収差図である。
【図5】図1に示す本発明の第一実施形態に係るズームレンズの望遠端での横収差図である。
【図6】図1に示す本発明の第一実施形態に係るズームレンズの望遠端での球面収差図である。
【図7】図1に示す本発明の第一実施形態に係るズームレンズの望遠端での像面湾曲図及び歪曲収差図である。
【図8】本発明の第二実施形態に係るズームレンズの構造を示す図である。
【図9】図8に示す本発明の第二実施形態に係るズームレンズの広角端での横収差図である。
【図10】図8に示す本発明の第二実施形態に係るズームレンズの広角端での球面収差図である。
【図11】図8に示す本発明の第二実施形態に係るズームレンズの広角端での像面湾曲図及び歪曲収差図である。
【図12】図8に示す本発明の第二実施形態に係るズームレンズの望遠端での横収差図である。
【図13】図8に示す本発明の第二実施形態に係るズームレンズの望遠端での球面収差図である。
【図14】図8に示す本発明の第二実施形態に係るズームレンズの望遠端での像面湾曲図及び歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0008】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るズームレンズ10は、物体側から像側(結像面に近い一端)に向かって、負の屈折力を有する第1レンズ群100、正の屈折力を有する第2レンズ群200、及び正の屈折力を有する第3レンズ群300が順に配列されている。ズームレンズ10は、以下の条件式(1)及び(2)を満たす。
【0009】
0.78<|f2/f1|<0.91 (1)
【0010】
0.72<L2/fT<0.87 (2)
【0011】
ここで、f1は第1レンズ群100の有効焦点距離であり、f2は第2レンズ群200の有効焦点距離であり、L2はズームレンズ10が広角端から望遠端まで変倍した後の第2レンズ群200の移動距離であり、fTはズームレンズ10の望遠端における有効焦点距離である。
【0012】
条件式(1)及び(2)を満たせば、第1レンズ群100と第2レンズ群200との距離を変えることができる。従って、ズームレンズ10の有効焦点距離も変えることができ、且つ六倍のズーム倍率を得ることができる。しかし、条件式(1)及び(2)を満たさない場合、高倍率ズーム能力、小型化及び優れた結像品質を獲得することが困難である。
【0013】
具体的に説明すると、条件式(1)を満たさない場合、例えば、第2レンズ群200の有効焦点距離が短すぎる場合、ズームレンズ10の広角端及び望遠端における球面収差及び色収差は大きくなり、ズームレンズ10の解像度を下げる。また、第1レンズ群100の有効焦点距離が短すぎる場合、ズームレンズ10の広角端における歪曲収差は大きくなり、ズームレンズ10の解像度を下げる。また、第1レンズ群100の有効焦点距離が長すぎる場合、ズームレンズ10の広角端におけるレンズの全長は長くなり、小型化に不利である。
【0014】
条件式(2)を満たさない場合、例えば、第2レンズ群200の移動距離が大きすぎる場合、ズームレンズ10の全長は長くなる。また、第2レンズ群200の移動距離が小さすぎる場合、第2レンズ群200の有効焦点距離を増大させなければならず、ズームレンズ10の広角端及び望遠端における球面収差及び色収差が大きくなる。
【0015】
前記ズームレンズ10が結像する際、光は、第1レンズ群100、第2レンズ群200、第3レンズ群300、フィルター20、及び保護ガラス30を順に通り、最後に結像面IMGで結像される。この過程において、使用者は、先ず、被写体の位置によって、第1レンズ群100と第2レンズ群200との間の距離を調整して、ズームレンズ10の有効焦点距離を変える。次いで、第3レンズ群300を調整することによって、被写体を結像面IMGにフォーカシングさせる。
【0016】
具体的には、第1レンズ群100には、物体側から像側に向かって、負の屈折力を有する第1レンズ102及び正の屈折力を有する第2レンズ104が順に配列されている。該第2レンズ群200には、物体側から像側に向かって、正の屈折力を有する第3レンズ202、正の屈折力を有する第4レンズ204、負の屈折力を有する第5レンズ206、及び負の屈折力を有する第6レンズ208が順に配列されている。第4レンズ204及び第5レンズ206は複合レンズである。また、第3レンズ群300は、負の屈折力を有する第7レンズ302を備える。
【0017】
ズームレンズ10は、以下の条件式(3)を満たすことが好ましい。
【0018】
1.75<V1/V2<2.45 (3)
【0019】
ここで、V1及びV2は、第1レンズ102及び第2レンズ104におけるd光線(波長が587.6nmである)に対するアッベ数である。この条件式(3)を満たす場合、ズームレンズ10の色収差は良好に補正される。V2が大き過ぎる場合、広角端における横収差は大きくなり、V2が小さすぎる場合、望遠端における横収差は大きくなる。
【0020】
ズームレンズ10は、以下の条件式(4)を満たすことが好ましい。
【0021】
0.28<f2/f3<0.5 (4)
【0022】
ここで、f3は第3レンズ群300の有効焦点距離である。
【0023】
条件式(4)を満たす場合、ズームレンズ10はズーム性能に優れる。第3レンズ群300の有効焦点距離が短すぎる場合、第3レンズ群300とフィルター20との距離が近くなり、機械的に衝撃を発生し易い。第3レンズ群300の有効焦点距離が長すぎる場合、焦点調整の速度に影響を与える。
【0024】
第3レンズ202は、少なくとも1つの非球面の表面を備えるため、ズームレンズ10の広角端及び望遠端における球面収差及び色収差も良好に補正される。また、第6レンズ104は、プラスチックレンズを使用するため、製造コストを下げることができる。
【0025】
ズームレンズ10は、第2レンズ群200と第3レンズ群300との間に設置される絞り400をさらに備える。さらに、ズームレンズ10は、第1レンズ102から結像面IMGに向かって、表面S1〜S18を順に備える。
【0026】
前記ズームレンズ10は、以下の表1の条件を満たす。
【0027】
【表1】

【0028】
表1において、Rは各々のレンズの光学表面の曲率半径であり、Dは対応する表面から次の表面までの軸上距離であり、NDは各々のレンズのd光線に対する屈折率であり、VDは各々のレンズにおけるd光線に対するアッベ数である。
【0029】
レンズ表面の中心を原点として、光軸がx軸である場合、レンズ表面の非球面形状は以下の数式によって表される。
【0030】
【数1】

【0031】
cはレンズ表面中心の曲率であり、hは光軸からレンズ表面までの高さであり、kは二次曲面係数であり、Aiは第i次の非球面形状の係数である。
【0032】
ズームレンズ10は、以下の表2−1及び表2−2の条件を満たす。
【0033】
【表2−1】

【0034】
【表2−2】

【0035】
ズームレンズ10は、以下の表3の条件を満たす。
【0036】
【表3】

【0037】
表3において、Fはズームレンズ10の有効焦点距離であり、FNOはズームレンズ10の絞り数であり、2ωはズームレンズ10の画角である。
【0038】
本実施形態において、各々のパラメーター及び条件式の値は、以下の表4に示した。
【0039】
【表4】

【0040】
図2〜図7を参照すると、図2及び図5は、その上段の左側から下段の右側まで、順に、ズームレンズ10の中心フィールド、1/4のフィールド、1/2のフィールド、3/4のフィールド及び全体のフィールドの収差特性曲線を示し、各々の特性曲線図は、486nm、588nm、656nmである光線に対応する特性曲線を含む。曲線a1、b1、c1は、波長が486nm、588nm、656nmである光線の球面収差曲線である。曲線at、as、bt、bs、ct、csは、波長が486nm、588nm、656nmである光線のT(Tangential field curvature curve)特性曲線及びS(Sagittal field curvature curve)特性曲線である。曲線a2、b2、c2は、波長が486nm、588nm、656nmである光線の歪曲収差曲線である。図3、図4及び図6、図7に示したように、ズームレンズ10は、広角端及び望遠端における各種の収差が小さい範囲内に制御される。従って、ズームレンズ10は、高解像度を有する。
【0041】
図8は、本発明の第二実施形態のズームレンズ10’を示す。第二実施形態が第一実施形態のズームレンズ10と異なる部分は、表5〜表8を満たすことである。
【0042】
【表5】

【0043】
【表6−1】

【0044】
【表6−2】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

【0047】
図9〜図14に示したように、ズームレンズ10’の広角端及び望遠端における各種の収差は小さい範囲内に制御される。従って、ズームレンズ10’は、高解像度を有する。
【0048】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であることは勿論であって、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0049】
10、10’ ズームレンズ
20 フィルター
30 保護ガラス
100 第1レンズ群
102 第1レンズ
104 第2レンズ
200 第2レンズ群
202 第3レンズ
204 第4レンズ
206 第5レンズ
208 第6レンズ
300 第3レンズ群
302 第7レンズ
400 絞り
S1〜S18 表面
IMG 結像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に向かって、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、及び正の屈折力を有する第3レンズ群が順に配列され、以下の条件式(1)及び(2)を満たすことを特徴とするズームレンズ。
0.78<|f2/f1|<0.91 (1)
0.72<L2/fT<0.87 (2)
ここで、f1は前記第1レンズ群の有効焦点距離であり、f2は前記第2レンズ群の有効焦点距離であり、L2は前記ズームレンズが広角端から望遠端まで変倍した後の前記第2レンズ群の移動距離であり、fTは前記ズームレンズの前記望遠端における有効焦点距離である。
【請求項2】
第1レンズ群は、前記物体側から前記像側に向かって、負の屈折力を有する第1レンズ及び正の屈折力を有する第2レンズが順に配列され、前記第2レンズ群は、前記物体側から前記像側に向かって、正の屈折力を有する第3レンズ、正の屈折力を有する第4レンズ、負の屈折力を有する第5レンズ、及び正の屈折力を有する第6レンズが順に配列され、前記第4レンズ及び前記第5レンズは複合レンズであり、前記第3レンズ群は、正の屈折力を有する第7レンズを備えることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記ズームレンズは、以下の条件式(3)を満たすことを特徴とする請求項2に記載のズームレンズ。
1.75<V1/V2<2.45 (3)
ここで、V1及びV2は、前記第1レンズ及び前記第2レンズにおけるd光線に対するアッベ数である。
【請求項4】
前記ズームレンズは、以下の条件式(4)を満たすことを特徴とする請求項2又は3に記載のズームレンズ。
0.28<f2/f3<0.5 (4)
ここで、f3は前記第3レンズ群の有効焦点距離である。
【請求項5】
前記ズームレンズは、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間に設置される絞りをさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のズームレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−114262(P2013−114262A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235462(P2012−235462)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【出願人】(503023069)鴻富錦精密工業(深▲セン▼)有限公司 (399)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】