説明

セキュリティタグ

【課題】 汎用性の高いセキュリティタグを実現する。
【解決手段】 誘電体フィルム130と、誘電体フィルムの両面周縁部上に設けられた一対のコイルパターン110、120とから構成される共振回路と、誘電体フィルム130の一面上の、コイルパターンが形成されていない領域に取り付けられ、共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部150とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子商品監視システム(EAS:Electronic Article Surveillance)のようなセキュリティシステムで用いるセキュリティタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、万引き防止などを目的として、電子商品監視システムが広く用いられている。電子商品監視システムは、一般的に、監視対象物品の各々に取り付けられるセキュリティタグ(以下、「タグ」という)と、タグを検出するゲートから構成される。そして、ゲートを例えば店舗の出入り口等に配置し、タグがゲートで検出された場合には、音や光などの警報を出力する。監視対象物品に取り付けられるタグは、監視システムのユーザ(例えば店員)が無効化できるように構成され、正当な手続(例えば購入)を経た物品のタグは無効化されて、ゲートで検出されない。このようにして、購入手続を経ていない物品の持ち出しの検出を実現している。
【0003】
【特許文献1】特開平11−3476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子商品監視システムにおいては、監視対象物品1つ1つにタグを取り付ける必要がある。そのため、例えば、小売店に電子商品監視システムを導入する場合、仕入れた商品に1つ1つタグの取り付けるために多くの手間が必要となる。このような小売店の負担を軽減する方法として、商品の製造時にタグを取り付けることが考えられる。
【0005】
しかし、このような方法を実現しようとすると、別の問題が生じる。すなわち、電子商品監視システムのゲートは、通常、予め定められた特定の周波数を有する電波や磁界(以下、電磁波という)を出力し、タグはこの特定周波数の電磁波に共振するように設計されている(特許文献1)。従って、タグとゲートとは互いに密接な関係を有し、共振周波数や検出原理の異なるタグとゲートの組み合わせでは、電子商品監視システムがその機能を実現できない。
【0006】
そのため、商品を納入する小売店が導入している電子商品監視システムに適したタグを取り付けないと、小売店でタグを取り付ける手間を省くことは出来ない。しかし、商品の納入先が使用している電子商品監視システムに応じて取り付けるタグの種類を変えるとすると、製造者側の負担が大幅に増加する。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、汎用性の高いセキュリティタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、誘電体フィルムと、誘電体フィルムの両面周縁部上に設けられた、略均一の幅を有する導電体薄膜からなる一対のコイルパターンとから構成される共振回路と、記誘電体フィルムの一面上の、コイルパターンが形成されていない領域に取り付けられ、共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部とを有するセキュリティタグによって達成される。
【0009】
また、上述の目的は、略均一の幅を有する導電体薄膜からなる一対のコイルパターンが、樹脂塗膜により張り合わされた構成を有する共振回路と、共振回路全体が取り付けられる支持部材と、支持部材上の、コイルパターンよりも内側の領域に取り付けられ、共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部とを有するセキュリティタグによっても達成される。
【発明の効果】
【0010】
このような構成により、本発明によれば、汎用性の高いセキュリティタグを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す上面図、図2は本発明の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す側面図である。
【0012】
図において、タグ100は、誘電体フィルム130と、第1のコイルパターン110と、第2のコイルパターン120と、共振部150と、台紙180とを有する。なお、台紙180はセキュリティタグの必須構成ではなく、補強部材や、物品への貼り付け部材等として必要に応じて設けられる。
【0013】
誘電体フィルム130は例えば樹脂フィルムである。第1及び第2のコイルパターン110及び120は誘電体フィルム130の周縁部に設けられ、全長に渡って略均一な幅の線状の導電体薄膜を、重ならないようにできるだけ大回りさせて配置したものである。また、第1及び第2のコイルパターン110及び120は、誘電体フィルム130を挟んで対向する区間を有し、この区間(対向区間)が、第1及び第2のコイルパターン110及び120を電極、第1及び第2のコイルパターン110及び120に挟まれた誘電体フィルム130を誘電体とするコンデンサを形成する。このコンデンサ(C)と、第1及び第2のコイルパターン110及び120が形成するコイル(L)とにより、所望の共振周波数(例えば13.65MHz)を有するLC共振回路が構成されるよう、第1及び第2のコイルパターン110及び120の幅wや対向区間の長さ、コイルの巻数が調整されている。
【0014】
図3に、従来の典型的なセキュリティタグの構成例を示す。図3(a)は上面図、図3(b)は下面図である。
従来のタグは、図3に示すように、細く、周回数の多いコイルパターン14を誘電体フィルム24の片面にのみ設け、コイルパターン14の内側終端部には、コンデンサを形成するための幅広の電極部分15aが設けられる。そして、誘電体フィルム24のもう一方の面の、電極部分15aに対向する位置にもう1つの電極部分15bが設けられる。このように、従来のタグは、できるだけ多くの周回数を有するコイルパターンを片面に設けるとともに、コイルパターンとは別の大きな電極対を設け、この電極対と誘電体フィルムとでコンデンサを形成するという思想の元に作られていた。従って、コイルパターンは終端部で幅が大きくなるとともに、コイル部分は細く形成されていた。
【0015】
これに対し、本実施形態のタグは、上述したように誘電体フィルム130の上面及び下面の両面にコイルパターン110及び120を設け、コイルパターンで誘電体を挟むように構成すると共に、コイルパターン110及び120の幅wを大きくして、従来技術における電極部分15a,15bの機能を持たせている。これにより、コンデンサを形成するための電極部分15a,15bをコイルパターンの他に(コイルとして機能する部分とは別に)設ける必要がなく、コイルパターンの幅は全体でほぼ均一である。さらに、コイルパターン110、120を従来の構成よりも短く(つまり、巻数を少なく)することが可能となる。
【0016】
この原理について説明する。一般に、共振回路の性能を表すQ値は、以下の式で表されることが知られている。
Q=2πfL/R
(Lはインダクタンス、Rは電気抵抗、fは共振周波数である)
【0017】
ここで、コイルパターン110、120を短くすると、コイルのインダクタンスLは低下する。しかし、幅wを大きくすることにより、コイルパターン110、120の電気抵抗Rもまた低下する。従って、例えばLとRとが同率で低下した場合、(L/R)の値は変化せず、Q値も変化しない。
【0018】
換言すれば、電気抵抗Rを低下させることにより、Q値を維持したままインダクタンスLを小さく(即ちコイルパターンを短く)することが可能であり、また、電気抵抗Rを低下させることにより、コイルパターンを短くすることによるQ値への影響を抑制することができる。
【0019】
なお、このような特徴的なコイルパターンを有するタグの詳細については、例えば特開2001−84463号公報を参照されたい。
【0020】
このように、本実施形態のセキュリティタグは、誘電体フィルム130に設けた一対のコイルパターン110及び120が、誘電体フィルム130を挟んで対向する領域を有する様に配置されるとともに、対向する領域により形成されるコンデンサと、コイルパターンによって共振回路を構成する。そのため、誘電体フィルム130の中央部分にコンデンサ形成用の電極パターンを設ける必要が無い。しかしながら、一般的な電子商品監視システムにおいて用いられる周波数(例えば13.65MHz)の共振周波数を実現するにはある程度のコイル長が必要であり、タグ全体の小型化には限度がある。従って、誘電体フィルム130の中央部には、コイルパターンが存在しない領域が残る。
【0021】
そのため、本実施形態のセキュリティタグでは、誘電体フィルム130のコイルパターンのない領域、具体的には上面の略中央部領域を利用し、共振回路とは異なる共振周波数を有する共振部150を設けている。後述するように、共振部150は、電気的に共振する共振回路とは異なり、機械的な共振により電磁波を出力する電気機械変換素子を用いている。
【0022】
図4は、共振部150の構成例を示す分解斜視図である。
共振部150は、電気機械変換素子の一例としての磁歪素子152と、磁歪素子152に直流磁界を与える磁石151と、容器153とから構成される。例えば樹脂材料からなる容器153は、収納部153aを有する。そして、シート状の非晶質磁性材料である磁歪素子152は、収納部153aに収納される。容器153の蓋部としても機能する磁石151は、高保磁力材料が板状に形成されたものである。磁石151と容器153とで形成されるケーシングは、磁歪素子がその共振周波数で示す機械的な変位を妨げないよう、収納部の深さ等が定められる。
【0023】
このような、磁歪素子を用いた共振部150は、磁歪素子152の組成、製造時の熱処理温度、時間や、磁石151が磁歪素子152に与えるバイアス磁場の強さによって共振周波数を制御することが可能であるが、大凡10KHzオーダの共振周波数を有する。
【0024】
そして、共振周波数を有する交流磁場を外部から与えると、磁歪素子152が機械的共振を起こし、共振信号を発生する。この共振信号を検出することで、共振部150の存在を検出することができる。共振信号は、磁場の印加と受信を並行して検出することはもちろん、磁場を間欠的に印加し、印加後の残留振動を受信することでも検出可能である。
【0025】
本発明において、振動部150は、共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用い、電気機械変換素子の機械的な共振を利用して外部から存在を検出可能でありさえすれば、その構成についてはいかなるものであっても良い。また、磁歪素子を用いた共振部150の詳細については、例えば特公昭62−14873号公報や特許第3152862号公報に記載されるように公知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0026】
なお、電気機械変換素子としては、機械的共振により外部で検出可能な電磁波を出力しさえすれば、磁歪素子に限らず、他の素子であっても原理的には利用可能である。例えば、電歪素子であってもよい。この場合、振動部150の蓋部は磁石である必要はないであろう。
【0027】
本実施形態のタグは、どのような方法で製造しても良いが、一例を挙げると以下の通りである。
まず、共振回路部分を図5に示すように構成する。
【0028】
第1及び第2のコイルパターンは、アルミ、銅などの導電体の薄膜から構成することができる。上述のように、本実施形態のタグではコイルパターンの幅wが太く、また短いため、例えば図3に示した従来構成のような細いパターンでは困難な打ち抜き加工によりコイルパターンを生成することができる。第1及び第2のコイルパターン110及び120は、粘着剤等によってと誘電体フィルム130表面に取り付けることができる。或いは、誘電体フィルム130が例えばポリエチレンフィルムのように熱接着性を有する素材の場合、粘着剤等を用いずに、第1及び第2のコイルパターン110及び120を誘電体フィルム130に加熱接着することができる。
【0029】
なお、第1及び第2のコイルパターン110及び120は、その一端部、例えば図5で115a及び115bとして示す部分において、電気的に接続させる。電気的接続を取る方法に特に制限はなく、例えば従来から行われているような、圧力により誘電体フィルム130を押しのけて接触させる方法や、一方のコイルパターンから他方のコイルパターンに向かって針状の部材を突き通すことにより、コイルパターン同士を接触させる等の方法を用いることができる。
【0030】
最後に、必要に応じて台紙180を粘着剤等により貼り付ける。台紙180は必須でないが、例えば監視対象物品にタグを貼り付ける場合などは、台紙180の裏面(図5において見えない側の面)に粘着剤と剥離紙を設け、貼り付け時に剥離紙を剥がすことにより容易にタグを物品に貼り付けることができる。
【0031】
そして、このようにして形成した共振回路(単体でタグとしても機能する)に、振動部150を取り付ける。振動部150の取り付け方にも特に制限はないが、粘着剤により容器153の底面を誘電体フィルム130の上面、第1のコイルパターン110の無い中央部領域(取り付け領域)に貼り付けることができる。この際、電気機械変換素子を用いる振動部150が通常細長い形状を有することから、例えば図1に示すように、通常は方形であるタグの対角線方向に長さ方向を向けて取り付けることで、取り付け領域を有効に利用することが可能である。
【0032】
なお、特開2001−84463号公報に記載されるように、誘電体フィルム130の代わりに、コイルパターン110及び/又は120の裏面に樹脂や粘着剤を塗布し、コイルパターン同士を貼り合わせて共振回路を形成することもできる。図6はこのような共振回路を採用した場合の共振回路部分の構成手順を説明した図である。裏面に熱接着性樹脂等の塗膜121を設けた第1及び第2のコイルパターン110及び120を、巻き方向が互いに異なる方向となるように重ね合わせ、熱溶着する。そして、コイルパターン端部でコイルを電気的に接続して共振回路を形成する。
【0033】
このように構成した共振回路は、コイルパターン110及び120の部分以外、すなわち、金属薄膜部分以外には誘電体フィルム(塗膜)は存在しない。そのため、共振部150を設ける場所として、共振回路全体を支持する支持部材としての台紙180を用いる。台紙180は、必ずしも紙である必要はなく、樹脂フィルム、樹脂シート等であっても良い。また、台紙180の大きさは、タグを不必要に大型化することのないよう、コイルパターン110及び120の最外周よりも一回り大きい程度であることが好ましい。
【0034】
なお、共振回路は、粘着剤により台紙180に貼り付けることが可能である。あるいは、台紙180が熱接着性樹脂との接着性を有する場合には、共振回路の台紙180と接着する面に熱接着性樹脂の塗膜を設け、台紙180に熱溶着させても良い。この場合、第1のコイルパターン110の下面と、第2のコイルパターン120の少なくとも下面に熱接着性樹脂の塗膜を設けておくことにより、第1及び第2のコイルパターン110及び120と、台紙180とを重ねて一度に熱溶着させることが可能である。
【0035】
その後、台紙180上の、コイルパターンより内側の領域に、共振部150を取り付けることで、図1に記載したような構成のタグを得ることができる。ただし、誘電体フィルム130の代わりに台紙180が見えることになる。
【0036】
このように、本実施形態によるタグは、電気的に共振する共振回路と、機械的に共振する共振部とを同一のタグに含めた。そのため、本実施形態のタグは、1つのタグで2つの異なる検出原理の電子商品監視システムに対応することができる。
【0037】
通常、共振回路をタグとして用いる電子商品監視システムにおいては、数MHz〜十数MHz、代表的には13.65MHzの共振周波数を有するタグが使用されており、一方で電気機械変換素子を用いたタグを使用する電子商品監視システムにおいては、数10KHzの共振周波数を有するタグが使用されている。このように、両者の共振周波数は大きく異なるので、共振回路を検出する電子商品監視システムにおいて、共振部の存在は影響を与えず、逆もまた同様である。
【0038】
しかも、本実施形態においては、共振回路を構成するコイルパターンが存在しない領域を利用して共振部を取り付けている。例えば、図3に示したような従来構成のタグに、共振部150を取り付けた場合、コイルパターン上に共振部150が存在することになる。この場合、例えば共振部150が電気機械変換素子として用いる磁歪素子(強磁性体)の影響で、共振回路の共振周波数が変化するなどの影響が生じてします。これに対し、本実施形態では、共振部150はコイルパターン上に存在しないため、共振回路の特性に与える影響は無いか非常に少ない。
【0039】
加えて、コイルパターンより内側の領域に共振部150を取り付けているので、タグの大きさは共振部150を設けない場合と変わらない。従って、共振回路のみで構成されるタグをそのまま流用することができるので、コスト面においても有利である。また、監視対象物品に取り付けた場合、大きなタグは目障りであり、好ましくないが、その点においても有利である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、簡単な構成で、汎用性の高いセキュリティタグを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す上面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す側面図である。
【図3】従来の典型的なセキュリティタグの構成例を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るセキュリティタグの共振部150の構成例を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るセキュリティタグの製造方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係るセキュリティタグの別の製造方法を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの両面周縁部上に設けられた、略均一の幅を有する導電体薄膜からなる一対のコイルパターンとから構成される共振回路と、
前記誘電体フィルムの一面上の、前記コイルパターンが形成されていない領域に取り付けられ、前記共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部とを有するセキュリティタグ。
【請求項2】
略均一の幅を有する導電体薄膜からなる一対のコイルパターンが、樹脂塗膜により張り合わされた構成を有する共振回路と、
前記共振回路全体が取り付けられる支持部材と、
前記支持部材上の、前記コイルパターンよりも内側の領域に取り付けられ、前記共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部とを有するセキュリティタグ。
【請求項3】
前記電気機械変換素子が磁歪素子であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のセキュリティタグ。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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