説明

セキュリティタグ

【課題】 汎用性の高いセキュリティタグを実現する。
【解決手段】 誘電体フィルムとこの誘電体フィルムの両面上に設けられた一対の電極パターンとから構成される共振回路と、この共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部を有するセキュリティタグである。共振部の一部が共振回路と重なるように取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子商品監視システム(EAS:Electronic Article Surveillance)のようなセキュリティシステムで用いるセキュリティタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、万引き防止などを目的として、電子商品監視システムが広く用いられている。電子商品監視システムは、一般に、監視対象物品の各々に取り付けられるセキュリティタグ(以下、単に「タグ」という)と、タグを検出するゲートから構成される。そして、ゲートを例えば店舗の出入り口に配置し、タグがゲートで検出された場合には、音や光などの警報を出力する。タグは、監視システムのユーザ(例えば店員)が無効化できるように構成されている。そのため、正当な手続(例えば購入)を経た物品に取り付けられたタグをユーザが無効化することで、正当な手続を経ていない物品の持ち出しのみをゲートで検出することを可能にしている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−3476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子商品監視システムにおいては、監視対象物品1つ1つにタグを取り付ける必要がある。そのため、例えば、小売店に電子商品監視システムを導入する場合、仕入れた商品にタグを取り付けるために多くの手間が必要となる。このような小売店の負担を軽減する方法として、商品の製造時もしくは出荷時にタグを取り付けて小売店に納入することが考えられる。
【0005】
しかし、このような方法の実施には、タグの互換性に関する問題がある。電子商品監視システムのゲートは、通常、予め定められた特定の周波数を有する電波や磁界(以下、電磁波という)を出力し、タグはこの特定周波数の電磁波に共振するように設計されている(特許文献1)。従って、タグとゲートとは互いに密接な関係を有し、共振周波数や検出原理の異なるタグとゲートの組み合わせでは、電子商品監視システムがその機能を実現できない。
【0006】
そのため、製造時や出荷時にタグを取り付ける場合、商品を納入する小売店が導入している電子商品監視システムに適したタグを取り付けないと、小売店の手間を省くことは出来ない。しかし、商品の納入先が使用している電子商品監視システムに応じて取り付けるタグの種類を変えるとすると、製造者や流通業者側の負担が大幅に増加してしまう。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、取付の手間が少なく、かつ汎用性を有するセキュリティタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的は、誘電体フィルムと、誘電体フィルムの一面上に設けられた導電体薄膜からなる第1の電極パターンと、誘電体フィルムの他面上に設けられた導電体薄膜からなる第2の電極パターンとから構成される共振回路と、共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部とを有し、共振部が、共振部の一部が共振回路と重なるように取り付けられることを特徴とするセキュリティタグによって達成される。
【発明の効果】
【0009】
このような構成により、本発明によれば、取付の手間が少なく、かつ汎用性を有するセキュリティタグを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す上面図、図2は図1のセキュリティタグを矢印Aの方向から見た側面図である。
【0011】
図において、セキュリティタグ(以下、単にタグという)100は、誘電体フィルム130と、誘電体フィルム130の一面(表面)に設けられる、第1の電極パターンとしての第1のコイルパターン110と、誘電体フィルム130の他面(裏面)に設けられる、第2の電極パターンとしての第2のコイルパターン120とから構成される共振回路と、この共振回路の上に設けられた共振部150と、共振回路及び共振部150が一体化した本実施形態のタグ100を搭載する台紙180とを有する。なお、台紙180は本実施形態のタグ100に必須ではなく、タグ100の補強部材や、タグ100を物品への貼り付けるための部材等として必要に応じて設けられる。
【0012】
誘電体フィルム130は例えば樹脂フィルムである。第1及び第2のコイルパターン110及び120は誘電体フィルム130のそれぞれの面の縁部を周回するように設けられている。本実施形態のタグ100は誘電体フィルム130が略矩形状を有するため、第1及び第2のコイルパターン110及び120もまた誘電体フィルム130の形状と同様に直線部が角部で順次接続された形状を有している。
【0013】
また、第1及び第2のコイルパターン110及び120は、誘電体フィルム130を挟んで対向する区間(対向区間)を有するように配置される。図1の例では、第1及び第2のコイルパターン110及び120のほぼ全長が対向区間である。この対向区間は、第1及び第2のコイルパターン110及び120を電極、第1及び第2のコイルパターン110及び120に挟まれた誘電体フィルム130を誘電体とするコンデンサ(C)を形成する。このコンデンサ(C)と、第1及び第2のコイルパターン110及び120が形成するコイル(L)とにより、所望の共振周波数(例えば13.65MHz)を有するLC共振回路が構成されるよう、第1及び第2のコイルパターン110及び120の幅wや対向区間の長さ、コイルの巻数が調整されている。なお、図1の例では、コンデンサの容量をより大きくするため、第1及び第2のコイルパターン110及び120の一端に、他の部分よりも幅広に構成されたコンデンサ部113a,113bが形成されている。また、第1及び第2のコイルパターン110及び120は、他端の導通部112a及び112bで電気的に接続されている。
【0014】
本実施形態のタグ100は、共振回路に必要なコンデンサをコイルパターンの対向区間を利用して形成する構成であるため、後述する第2の実施形態に係るタグの構成(コイルパターンは誘電体フィルムの片面にのみ設け、コンデンサを形成するための電極パターンを別途設ける構成)と比較して、第1及び第2のコイルパターン110及び120の幅wが広く、また巻数(周回数)が少ない(すなわち、全長が短い)。
【0015】
具体的には、第2の実施形態のタグにおけるコイルパターンの幅が1mm前後であるのに対し、本実施形態の第1及び第2のコイルパターン110及び120の幅wはコンデンサ部113a,113b以外の通常部分においても3〜5mm程度ある。また巻数も第2の実施形態では5〜6回であるのに対し、1〜2回程度である。
【0016】
本実施形態のタグ100の構成で、第2の実施形態の構成と同様の周波数特性のタグが得られる原理について説明する。一般に、共振回路の性能を表すQ値は、以下の式で表されることが知られている。
Q=2πfL/R
(Lはインダクタンス、Rは電気抵抗、fは共振周波数である)
【0017】
ここで、コイルパターン110、120の巻数を少なく、すなわちコイルを短くすると、コイルのインダクタンスLは低下する。しかし、幅wを大きくすることにより、コイルパターン110、120の電気抵抗Rもまた低下する。従って、例えばLとRとが同率で低下した場合、(L/R)の値は変化せず、Q値も変化しない。
【0018】
換言すれば、電気抵抗Rを低下させることにより、Q値を維持したままインダクタンスLを小さく(即ちコイルパターンを短く)することが可能であり、また、電気抵抗Rを低下させることにより、コイルパターンを短くすることによるQ値への影響を抑制することができる。
なお、このような特徴的なコイルパターンを有するタグの詳細については、例えば特開2001−84463号公報を参照されたい。
【0019】
一方、本実施形態のタグ100は、誘電体フィルム130と、第1のコイルパターン110と、第2のコイルパターン120とから構成される共振回路とは異なる共振周波数を有する共振部150を有する。後述するように、本実施形態における共振部150は、電気的に共振する共振回路とは異なり、機械的な共振により電磁波を出力する電気機械変換素子を用いている。
【0020】
図3は、共振部150の構成例を示す分解斜視図である。
共振部150は、電気機械変換素子の一例としての磁歪素子152と、磁歪素子152に直流磁界を与える磁石151と、容器153とから構成される。例えば樹脂材料からなる容器153は、収納部153aを有する。そして、シート状の非晶質磁性材料である磁歪素子152は、収納部153aに収納される。容器153の蓋部としても機能する磁石151は、高保磁力材料が板状に形成されたものである。磁石151と容器153とで形成されるケーシングは、磁歪素子がその共振周波数で示す機械的な変位を妨げないよう、収納部の深さ等が定められる。
【0021】
このような、磁歪素子を用いた共振部150は、磁歪素子152の組成、製造時の熱処理温度、時間や、磁石151が磁歪素子152に与えるバイアス磁場の強さによって共振周波数を制御することが可能であるが、大凡10KHzオーダの共振周波数を有する。
【0022】
そして、共振周波数を有する交流磁場を外部から与えると、磁歪素子152が機械的共振を起こし、共振信号を発生する。この共振信号を検出することで、共振部150の存在を検出することができる。共振信号は、磁場の印加と受信を並行して検出することはもちろん、磁場を間欠的に印加し、印加後の残留振動を受信することでも検出可能である。
【0023】
本発明において、共振部150は、共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用い、電気機械変換素子の機械的な共振を利用して外部から存在を検出可能でありさえすれば、その構成についてはいかなるものであっても良い。また、磁歪素子を用いた共振部150の詳細については、例えば特公昭62−14873号公報や特許第3152862号公報に記載されるように公知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0024】
なお、電気機械変換素子としては、機械的共振により外部で検出可能な電磁波を出力しさえすれば、磁歪素子に限らず、他の素子であっても原理的には利用可能である。例えば、電歪素子であってもよい。この場合、共振部150の蓋部は磁石である必要はないであろう。
【0025】
本実施形態においては、もともと共振タグとして単独で動作可能な共振回路に共振部150の一部が重なるようにを取り付けて一体化した構成を有するため、共振タグ単体で使用するものと区別して製造する必要がない。必要な量だけに後から共振部150を取り付けるだけで、複数種の電子商品監視システムに対応したタグを製造することができる。また、共振回路と共振部150とが一体化されているので、2種類のタグを監視対象物品の各々に1回の動作で取り付け可能である。
【0026】
しかしながら、上述の通り、共振タグを構成する第1及び第2のコイルパターン110及び120は、限られた面積内で長さを得るため、共振回路の外縁ぎりぎりまで形成されている。そのため、共振回路に共振部150を取り付けると、例えば図4に示すように、共振部150が共振回路のコイルパターン110及び120上に重なって位置することになる。このように、第1及び第2のコイルパターン110及び120上に共振部150が存在すると、共振部150が用いる電気機械変換素子(例えば磁歪素子(強磁性体))の影響で、共振回路の共振周波数、Q値、タグとしての検出可能距離などが変化する。
【0027】
そのため、本実施形態では、共振部150の共振回路の特性への影響を抑制するため、電気機械変換素子を用いる共振部150の底面全体ではなく、底面の一部が共振回路上に重なるように配置する。これにより、異なる2種類の電子商品監視システムに対応したタグを容易に一体化することと、共振回路の特性に与える影響を抑制することを両立できる。なお、ここでは共振回路上に共振部150が一部重なる配置関係を例示するが、共振部150の一部上に共振回路が重なる配置であっても良い。
【0028】
共振部150の配置例について図4を参照してさらに説明する。
図4は、図1と同様、本実施形態のタグ100の上面図であるが、共振部150と共振回路、特には第1及び第2のコイルパターン110及び120との位置関係の理解を容易にするため、共振部150を透明化して示している。
【0029】
図4に示すように、本実施形態において共振部150はその長さ方向が、共振回路を構成する第1及び第2のコイルパターン110及び120の直線部の長さ方向と平行となるように、かつ底面の一部が第1及び第2のコイルパターン110及び120の上に重なるように配置される。
【0030】
この場合、第1及び第2のコイルパターン110及び120の幅wに対し、共振部150の底面と第1及び第2のコイルパターン110及び120とが重なる幅d1又はd2が大きくなるほど(重なった面積が大きくなるほど)共振部150の影響(共振回路の特性変化)が大きくなる。そのため、共振回路の特性が電子商品監視システムにおいてタグとして利用できる範囲内で共振部150の取り付け位置を決定する。なお、図4の例では示していないが、共振回路の図における上方及び下方に共振部150を取り付けても良い。
【0031】
共振回路の特性変化がどの程度まで許容されるかは電子商品監視システム、具体的には検出ゲートの仕様や、電子商品監視システムの使用環境に依存する事項であるが、検出ゲートの仕様は、検出可能なタグの特性にある程度ばらつきがあることを想定して定められるのが一般的である。そのため、例えば、電気機械変換素子を用いる共振部150の影響により変化する特性である共振周波数、Q値、検出可能距離の変化率が所定の閾値を超えない範囲で共振部150の取り付け位置を決定することができる。
【0032】
これら特性の各々について個別の閾値を設定することも可能であるが、例えば全ての特性について変化率が10%、好ましくは5%を超えないような位置を共振部150の取り付け位置として定めることができる。
【0033】
なお、このような条件を満たす位置であれば、共振部150は共振回路の外縁部に沿う配置に限らず、共振部150’として図4に示すように、より内部に配置しても良いことは言うまでもない。また、上述したように共振部150の一部上に共振回路が重なる配置であっても良い。
【0034】
図5及び図6は、図4のような構成を採用した際の、d1及びd2の大きさと共振回路の特性変化率との関係の具体例を示す図である。
図5及び図6では、コイルパターンの幅wが5mmで、共振周波数8.2MHzの共振回路と、電気機械変換素子として磁歪素子を用いる共振部150とを用い、共振回路の特性変化を測定した結果を示している。
【0035】
図5及び図6に示すように、第1及び第2のコイルパターン110及び120と共振部150の底面との幅方向の重なりd1又はd2が大きいほど、特にQ値及び検出可能範囲の変化率(低下率)が大きい。
【0036】
また、第1及び第2のコイルパターン110及び120のコンデンサ部113側(コイルパターンのコンデンサ部を含む部分の上)に共振部150を配置した場合(図5)の方が、コンデンサ部113から離れた、共振回路におけるコイル部分を形成するコイルパターン側(コイルパターンのコンデンサ部を含まない部分の上)に共振部150”を配置した場合よりも、変化率を抑制できていることがわかる。
【0037】
図5及び図6に示す例に上述の規定を適用した場合、変化率が10%を超えない範囲という規定であればd1,d2とも2mm以下となるように共振部150の位置を決定することができる。また、変化率が5%を超えない範囲とした場合、d1は2mm以下でよいが、d2は1mm以下となるような位置に共振部150を配置するように決定することができる。
【0038】
本実施形態のタグは、どのような方法で製造しても良いが、一例を挙げると以下の通りである。
第1及び第2のコイルパターン110及び120は、アルミ、銅などの導電体の薄膜から構成することができる。上述のように、本実施形態のタグではコイルパターンの幅wが太く、また短いため、従来構成のような細いコイルパターンがエッチングを用いて製造されるのに対し、より容易な打ち抜き加工によりを生成することができる。
【0039】
第1及び第2のコイルパターン110及び120は、粘着剤等によってと誘電体フィルム130表面に取り付けることができる。或いは、誘電体フィルム130が例えばポリエチレンフィルムのように熱接着性を有する素材の場合、粘着剤等を用いずに、第1及び第2のコイルパターン110及び120を誘電体フィルム130に加熱接着することができる。
【0040】
なお、第1及び第2のコイルパターン110及び120は、上述のように、導通部112a,112bで電気的に接続される。電気的接続を取る方法に特に制限はなく、例えば従来から行われているような、圧力により誘電体フィルム130を押しのけて接触させる方法や、一方のコイルパターンから他方のコイルパターンに向かって針状の部材を突き通すことにより、コイルパターン同士を接触させる等の方法を用いることができる。このようにして共振回路を得ることができる。
【0041】
次に、必要に応じて台紙180を粘着剤等により貼り付ける。台紙180は必須でないが、例えば監視対象物品にタグを貼り付ける場合などは、台紙180の裏面(共振回路が貼り付けられない面)に粘着剤と剥離紙を設け、貼り付け時に剥離紙を剥がすことにより容易にタグを物品に貼り付けることができる。
そして、このようにして形成した、共振タグとして単体で機能する共振回路上の予め定めた位置に、底面に粘着剤を塗布した共振部150を取り付ける。
【0042】
なお、特開2001−84463号公報に記載されるように、誘電体フィルム130の代わりに、コイルパターン110及び/又は120の裏面に樹脂や粘着剤を塗布し、コイルパターン同士を貼り合わせて共振回路を形成することもできる。この場合、誘電体フィルム130の代わりに、樹脂や粘着剤を誘電体としてコンデンサが形成される。裏面に熱接着性樹脂等の塗膜121を設けた第1及び第2のコイルパターン110及び120を、巻き方向が互いに異なる方向となるように重ね合わせ、熱溶着する。そして、コイルパターン端部でコイルを電気的に接続して共振回路を形成する。
【0043】
このように構成した共振回路は、コイルパターン110及び120の部分以外、すなわち、金属薄膜部分以外には誘電体フィルム(塗膜)は存在しない。そのため、共振回路全体を支持する支持部材としての台紙180を用いることが好ましい。台紙180は、必ずしも紙である必要はなく、樹脂フィルム、樹脂シート等であっても良い。また、台紙180の大きさは、タグを不必要に大型化することのないよう、コイルパターン110及び120の最外周よりも一回り大きい程度であることが好ましい。
【0044】
なお、共振回路は、粘着剤により台紙180に貼り付けることが可能である。あるいは、台紙180が熱接着性樹脂との接着性を有する場合には、共振回路の台紙180と接着する面に熱接着性樹脂の塗膜を設け、台紙180に熱溶着させても良い。この場合、第1のコイルパターン110の下面と、第2のコイルパターン120の少なくとも下面に熱接着性樹脂の塗膜を設けておくことにより、第1及び第2のコイルパターン110及び120と、台紙180とを重ねて一度に熱溶着させることが可能である。
【0045】
その後、共振部150を上述したような条件を満たす位置に取り付けることで、図1に記載したような構成のタグを得ることができる。ただし、誘電体フィルム130の代わりに台紙180が見えることになる。
【0046】
図7は、本実施形態のタグ100を連続的に生産する場合の方法について模式的に示す図である。
一般に共振タグ200は、連続的な剥離紙300上に一定の間隔pを持って形成され、巻き取られた状態で保存される。このようにして製造された共振タグ200に対し、共振部150が間隔pを跨がず、かつ上述した条件を満たす位置を決定する。そして、その決定した位置に対応した間隔aを持って連続した弱粘着性のテープ400に共振部150を形成しておく。なお、共振部150は底面側に粘着剤を塗布しておき、天面がテープ400に付いた状態である。
【0047】
そして、共振タグ200が形成された剥離紙300と共振部150が形成された剥離紙400とを同速度で移動させながら、テープ400の上方から共振部150を共振タグ200上に押圧する。これにより、粘着剤で共振部150が共振タグ200上の所定位置に取り付けられるとともに、弱粘着性のテープ400から剥がれ、本実施形態の構成を有するタグ100が連続的に形成できる。
なお、ここでは共振回路が共振部150の上に一部重なる配置とする場合には、図7における共振タグ200と共振部150との位置関係を入れ替えればよい。すなわち、共振部150の上から共振タグ200を取り付けるようにすれば良い。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、電気的に共振する共振回路と、機械的に共振する共振部とを一体化したタグを、容易に実現できる。そのため、2つの異なる検出原理(共振周波数)の電子商品監視システムに対応可能な、汎用性を有するタグを容易に実現できる上、1回の動作で物品に取り付けることが可能になるので、取り付けの手間も簡略化できる。
【0049】
また、共振部の取り付け位置を、共振回路の特性に対する影響を考慮して定めることにより、一般的な共振タグを流用して、容易に製造することが可能になる。従って、共振部150を設けることを前提とした専用の共振タグを製造する必要がない。
【0050】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す図である。図8(a)は上面図、図8(b)は下面図である。
本実施形態のタグ500は、誘電体フィルム24と、誘電体フィルム24の表面に設けられた、第1の電極パターンとしてのコイルパターン14と、誘電体フィルム24の裏面に設けられた、第2の電極パターンとしての電極部分15bとから構成される共振回路と、第1の実施形態と同様の共振部150とから構成される。図8において、共振部150’は共振部の別の配置例を示しており、第1の実施形態と同様、共振部150は共振回路1つに対して1つ取り付けられる。
【0051】
コイルパターン14の内側終端部には、コンデンサを形成するための、コイルパターン部分よりも十分に幅広の電極部分15aが設けられる。そして、誘電体フィルム24の裏面に設けられた電極部分15bは、誘電体フィルム24を挟んで電極部分15aと対向する位置に設けられる。また、電極部分15bと、コイルパターン14の外側終端部とは、導通部16により電気的に接続されている。
【0052】
本実施形態のタグ500の共振回路には、コンデンサ部である電極部分15a,15bを除き、コイルパターン14に対向区間が存在しない。つまり、本実施形態のタグは、できるだけ多くの周回数を有するコイルパターンを片面に設けるとともに、コイルパターンとは別に対向区間としての大きな電極対を設け、この電極対と誘電体フィルムとでコンデンサを形成するという思想に基づいている。そのため、コイルパターンのコンデンサ部に相当する電極部分15a,15bは大きく、かつ誘電体フィルム24を挟んで対向するように配置されるが、他の部分はコイルとして機能させることだけを目的として細く形成されている。
【0053】
このような形態の共振回路に共振部150を取り付けてタグ500を構成する場合も、第1の実施形態において述べたように、共振回路の特性への影響を考慮して共振部150の取り付け位置(共振部150と共振回路の重なり量)を決定する必要がある。
【0054】
図9は、図8の構成を有するタグにおける、d1及びd2の大きさと共振回路の特性変化率との関係の具体例を示す図である。
図9では、コイルパターンの幅wが0.5mmで、共振周波数8.2MHzの共振回路と、電気機械変換素子として磁歪素子を用いる共振部150とを用い、共振回路の特性変化を測定した結果を示している。
図9に示すように、コイルパターン14と共振部150の底面との重なりd1又はd2が大きいほど、特にQ値及び検出可能範囲の変化率(低下率)が大きい。
【0055】
また、コイルパターン14における導通部16側(コイルパターン14の導通部を含む部分の上)に共振部150を重ねて配置した場合(図9(a))の方が、導通部16から離れた、共振回路におけるコイル部分を形成するコイルパターン側(コイルパターン14の導通部16を含まない部分の上)に共振部150’を重ねて配置した場合(図9(b))よりも、変化率を抑制できていることがわかる。
【0056】
本実施形態において、第1の実施形態と同様の特性変化率の規定を適用した場合、変化率が10%を超えない範囲という規定であれば、d1は2mm以下、d2は0mm以下となるように共振部150の位置を決定することができる。また、変化率が5%を超えない範囲とした場合、d1は−1mm以下(すなわち、コイルパターン14の最外周よりも1mm以上離間させる)、d2は−2mm以下となるような位置に共振部150を配置するように決定することができる。
【0057】
本実施形態のタグ500も、図7を用いて第1の実施形態で説明したような方法で連続的に製造することが可能である。
以上説明したように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す上面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティタグの共振部150の構成例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティタグにおける共振部150と共振回路との位置関係を説明する図である。
【図5】、
【図6】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティタグにおける、共振部150と第1及び第2のコイルパターン110及び120の位置関係と共振回路の特性変化との関係の具体例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティタグの連続的な製造方法の例を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るセキュリティタグの構成例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るセキュリティタグにおける、共振部150とコイルパターン14の位置関係と共振回路の特性変化との関係の具体例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムと、前記誘電体フィルムの一面上に設けられた導電体薄膜からなる第1の電極パターンと、前記誘電体フィルムの他面上に設けられた導電体薄膜からなる第2の電極パターンとから構成される共振回路と、
前記共振回路と異なる共振周波数を有する電気機械変換素子を用いた共振部とを有し、
前記共振部が、前記共振部の一部が前記共振回路と重なるように取り付けられることを特徴とするセキュリティタグ。
【請求項2】
前記第1の電極パターンと前記第2の電極パターンが前記誘電体フィルムの外縁に沿って周回するように、かつ前記誘電体フィルムを挟んで対向するように配置されるとともに、前記第1の電極パターンと前記第2の電極パターンの対向する一端部に、他の部分よりも幅広に形成されたコンデンサ部を有し、
前記共振部の一部が前記コンデンサ部と重なるように取り付けられることを特徴とする請求項1記載のセキュリティタグ。
【請求項3】
前記第1の電極パターンが、
前記第1の電極パターンの一端部から始まり、前記共振回路を形成するコイルを形成する第1の部分と、
前記第1の電極パターンの他端部を形成し、前記共振回路を構成するコンデンサを形成する第2の部分とから構成され、
前記第2の電極パターンが、
前記第2の電極パターンの一端部を形成し、前記誘電体フィルムを挟んで前記第2の部分と対向する第3の部分と、
前記第2の電極パターンの他端部を形成し、前記第1の電極パターンの一端部と電気的に接続される第4の部分とから構成され、
前記共振部の一部が、前記第1の電極パターンと前記第2の電極パターンとが電気的に導通される部分と重なるように取り付けられることを特徴とする請求項1記載のセキュリティタグ。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図1】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−26732(P2010−26732A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186479(P2008−186479)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000144452)株式会社三宅 (14)
【Fターム(参考)】