説明

セキュリティー素子

本発明は光を直線偏光する少なくとも1つの液晶材料を有するセキュリティー素子を備えた有価物に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶材料を有して成り、有価物の保護に用いられるセキュリティー素子に関するものである。また、本発明は有価物、転写材料、およびこのようなセキュリティー素子および有価物の製造方法、並びにこのようなセキュリティー素子または有価物のチェック方法に関するものでもある。
【0002】
本発明において、有価物とは、例えば、商標品または有価証書のような任意の保護対象物であってよい。本発明において、有価物とは、特に銀行紙幣のようなセキュリティー・ドキュメントを意味するが、株券、証書、スタンプ、小切手、小切手保証カード、クレジットカード、身分証明書、パスポート、入場券、切符、航空券、ラベル、シール、包装、セキュリティー・ペーパー、その他の製品保護素子等を含む。従って、以下単に“有価物”または“セキュリティー素子”と言った場合、常に前記種類のドキュメントを含んでいるものとする。
【背景技術】
【0003】
サーモクロミック特性を有する液晶材料を有して成るセキュリティー素子が特許文献1によって知られている。サーモクロミック液晶材料を加熱すると色彩が変化するかまたは透明になるためセキュリティー素子が視認できる。
【0004】
このようなサーモクロミック液晶材料の1つの問題は、サーモクロミック特性を得るためには一定の温度差が必要なことである。しかし、充分な温度差が常に得られるとは限らず、そのために期待通りの色彩変化が得られない場合がある。
【特許文献1】独国特許出願公開第199 41 295号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は温度に関係なく容易に目視および機械検査が可能な有価物、転写素子、およびセキュリティー素子を作製することである。また、有価物、転写素子、およびセキュリティー素子は製造が特に簡単であると同時に高い偽造防止効果を保証するものでなければならない。
【0006】
本発明の別の課題はこのようなセキュリティー素子および有価物の製造方法、並びにこのようなセキュリティー素子または有価物のチェック方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これ等の課題は独立請求項の特徴によって解決される。開発成果は従属請求項の主題である。
【0008】
本発明によれば、セキュリティー素子が光を直線偏光する少なくとも1つの液晶材料を有している。
【0009】
セキュリティー素子で乱反射した光および/またはセキュリティー素子を透過した光が偏光されるか否かをチェックすることにより、周囲温度または生じた温度差とは無関係にセキュリティー素子の真正が確実にチェックできる。特に、偏光液晶材料を用いることにより偽造防止効果が改善される。この理由は、このような材料は製造が複雑であり、容易に購入できず、また通常の場合と異なり、厚く硬い偏光箔または保護対象物に順応すると共に、セキュリティー印刷を施す既存の方法と同様の方法によって処理できるからである。
【0010】
液晶材料としてリオトロピック液晶を用いることが好ましい。この場合、厚さ数マイクロメートルの層を塗布し、溶媒が蒸発した後に厚さ100〜1000ナノメートルの層が残ることが好ましい。従来の偏光箔は少なくとも0.1ミリメートルの厚さを有している。
【0011】
本発明の液晶材料は本発明の範囲において臨機応変に使用できる。液晶材料を全体に配することができるが、特定の領域に、特に文字またはパターンを成すように配することが好ましい。
【0012】
セキュリティー素子は有価物に直接形成することも、別の基体に形成することもできる。セキュリティー素子が配される有価物または別の基体の材料に制限はない。しかし、箔状の紙またはプラスチックが好ましい。別の基体の場合には、セキュリティー素子を好ましくはプラスチック製の基体に、例えば、自立ラベルとして形成できる。特に、セキュリティー素子はセキュリティー・スレッド、取り分けウィンドウ・スレッドの形態を成していることが好ましい。特にウィンドウ・スレッドの場合には、偏光領域と非偏光領域との差異が顕著になり目視検査が容易になる。
【0013】
一連の層を有価物上に直接形成することが困難な場合がある。そのような場合には、セキュリティー素子の層構造の少なくとも一部を転写材料に形成できる。
【0014】
セキュリティー素子の一連の層を転写材料に形成する場合、それぞれの図に示す層の順序を逆にして転写材料の担体テープ上に形成する必要がある。セキュリティー素子の層構造体は担体テープ上に際限なく形成できる。セキュリティー素子を保護すべき有価物に固定する場合、有価物または転写材料の最上部に配される接着層を用いることができる。この場合、ホットメルト接着剤を用いることが好ましい。転写領域にのみ接着層を配するか、または転写領域接着剤、例えば、ホットメルト接着剤のみを活性化させることによりセキュリティー素子の輪郭を決定できる。転写後、転写材料の担体テープを剥離することにより、図示のセキュリティー素子の層構造体のみが保護すべき有価物上に残る。
【0015】
セキュリティー素子が適用される有価物は、例えば、セキュリティー・ペーパー、セキュリティー・ドキュメント、あるいは製品包装であってよい。本発明のセキュリティー素子をセキュリティー上の観点から保護を必要とする別の有価物にも適用できることは勿論である。
【0016】
セキュリティー素子の全体を保護対象物の表面に配することが好ましい。セキュリティー素子全体が保護対象物の表面に配される場合には、セキュリティー素子の表面を充分大きく設計でき、それによって液晶材料の視覚効果が顕著になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図を参照して本発明の更なる効果および実施の形態について詳細に説明する。図を分かり易くするため、図示の寸法(特に層厚)は必ずしも実際の寸法に対応していない。
【0018】
説明を分かり易くするため、銀行紙幣を例に挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明を前記有価物に問題なく適用できることは言うまでもない。
【0019】
図1は幅全体に亘って延びるストリップ状のセキュリティー素子2を備えた紙またはプラスチック製の銀行紙幣1を示す図である。透かし、スチール・グラビア印刷、セキュリティー・スレッド、発光および/または磁気印刷等、別のセキュリティー機能を更に備え得ることは言うまでもない。
【0020】
セキュリティー素子2は液晶層を有している。セキュリティー素子2の液晶層は光を直線偏光する少なくとも1つの液晶材料を有している。セキュリティー素子2の全体が銀行紙幣1の表面に配されているため、パターンおよび/または文字を成す液晶層の偏光効果が顕著に現れる。パターンおよび/または文字により方向が異なる直線偏光をもたらすことができる。即ちセキュリティー素子2の偏光方向が局部的に異なる。セキュリティー素子2で乱反射した光および/またはセキュリティー素子2を透過した光が偏光されるか否かおよび偏光方向をチェックすることにより、セキュリティー素子2の真正を確実にチェックできる。
【0021】
液晶材料としてリオトロピック液晶を用いることが好ましい。リオトロピック液晶は有機材料から成る液晶であり、例えば、水溶液中および溶媒除去後のいずれにおいても液晶特性を示す。剪断力を加えながらリオトロピック液晶を含む溶液をセキュリティー素子の少なくとも1つの表面に塗布することが有益である。厚さ数マイクロメートルの層を塗布し、溶媒が蒸発した後に厚さ100〜1000ナノメートルの層が残ることが好ましい。溶媒が蒸発した後に残った層が、例えば、ポリマーのような超分子錯体を成す多数の有機材料を含んでいる。分子の表面および光透過時における分子の双極子モーメントが残留層の巨視的方向軸に直交する方向に向いている。従って、残留層の偏光方向はリオトロピック液晶を含む溶液の塗布時に加えられた剪断力の方向に一致する。
【0022】
このようなリオトロピック液晶は部分的に偏光しない偏光スペクトルを有し、液晶の偏光方向に関連して交差検光子を用いても一部のスペクトルが透過する。このため、セキュリティー素子2に照射され、リオトロピック液晶層を透過した光は直線偏光されると共に、例えば、赤、紫または青のような特定の色を呈する。別の色も可能であり、例えば、可視領域以外の色も可能である。特に、赤外光または紫外光の偏光も可能である。従って、特定の波長領域(色)の偏光または非偏光を選択的に行うことができる。交差偏光子を用いて偏光および残留色を分析することにより、セキュリティー素子を確実に判定できる。
【0023】
リオトロピック液晶の生成および適用に関わる詳細な仕様は米国特許第5739269号明細書、米国特許第6049428号明細書、および国際公開第02/087782号パンフレットから推測できる。
【0024】
前記セキュリティー素子2を透過した光の色彩効果は観察検光子として直線検光子を用い、偏光方向をセキュリティー素子2の液晶層の偏光方向に対し90度回転させて観察することにより特に良く見える。セキュリティー素子に照射される光が偏光方向をセキュリティー素子2の液晶層の偏光方向に対し90度回転させた直線偏光子によって既に偏光されている場合も同様の効果が得られる。セキュリティー素子2に用いられるリオトロピック液晶を用いて前記検証に使用する偏光子も作製できる。
【0025】
前記色彩効果はセキュリティー素子から検光子に届いた特定のスペクトル領域が直線偏光された光の吸収に基づいている。従って、セキュリティー素子を銀行紙幣のような光を散乱する基体に埋め込むか、または基体の裏面に配すると光の偏光が解消され色彩効果も現れない。所謂ウィンドウ・セキュリティー・スレッドのように、セキュリティー素子の一部を基体に埋め込んだ場合、偏光子の偏光方向を並行にするとセキュリティー素子の埋め込み領域と露出領域における明度および色彩の差異が小さく、偏光方向を90度回転させると差異が顕著になる。
【0026】
セキュリティー素子2は前記液晶層の他に別の層を有することができ、単独または他の層との組合せにより別の顕著な視覚効果をもたらすことができる。
【0027】
図2および3を参照して、幾つかの好ましい実施の形態について詳細に説明する。図2および3は銀行紙幣1のA−A線断面図であり、セキュリティー素子2の層構造を示している。
【0028】
図2において、白色または特有の明色を有する銀行紙幣1の紙またはプラスチックから成る基体3上に文字またはパターンを成すリオトロピック液晶層4が配されている。特に紙から成る基体3の場合、リオトロピック液晶層4の接着力を強化するため、所謂下地層を設けることができる。下地層は、例えば、表面が滑らかな無色のプラスチック層またはインク層であってよい。
【0029】
使用時に大きな機械的または化学的負荷がかかる一部の実施の形態において、液晶材料が保護層5によって覆われる。保護層5はセキュリティー素子2に積層された箔または保護ラッカー層であってよい。保護ラッカー層は一面に施すことも部分領域に施すこともできる。この場合、例えば、UVラッカー、合成ラッカー、油性ラッカー、または一液型もしくは二液型分散ラッカーを用いることができる。保護ラッカー層は、例えば、フレキソ印刷またはオフセット印刷のような印刷によって施されることが好ましい。
【0030】
同様に、セキュリティー素子2は銀行紙幣に貼付可能に構成された独立素子であってよい。独立したセキュリティー素子2は図2に関連して説明した構造に対応する構造を有することができる。この場合、例えば、透明プラスチック箔から成るセキュリティー素子2の基体3が銀行紙幣1に接着される。この場合、基体3を成すプラスチックがホットメルト接着剤であってよい。
【0031】
図3は独立したセキュリティー素子2の別の実施の形態を示す図である。例えば、透明プラスチック箔、およびリオトロピック液晶層4が基体3に形成される。次いでセキュリティー素子2を銀行紙幣1に固定するための接着層6が液晶層4に形成される。接着層6に用いる接着剤はホットメルト接着剤であってよい。セキュリティー素子2を銀行紙幣1に固定する場合、セキュリティー素子2の代わりに銀行紙幣1に接着剤を塗布することもできる。
【0032】
箔3が右配向および所定の位相シフト(例えば、1/4波長または1/2波長板)を有する複屈折材料(例えば、発泡ポリマー箔)から成る場合、図2または3の複合体は層配列順序に応じ透過光に対し直線または円(一般に楕円)偏光子として作用する。(例えば、ルックスルー・レジスターとして使用した場合)2つの透過または観察方向において異なる偏光および検査が可能である。
【0033】
図4〜6は更に別の好ましい実施の形態を示す図であり、図4はセキュリティー素子2の平面図、図5および6はA−A線断面図であって、セキュリティー素子2の層構成を示している。
【0034】
図4は情報8を有するセキュリティー素子2を示す図である。この情報は、例えば、英数字のようなプレーン・テキスト形式で表示できる。
【0035】
図5から明らかなように、セキュリティー素子2は、例えば、透明プラスチック箔から成る基体3、例えば、スパッタリング、蒸着、または接着等によって情報8の領域を除く基体3に配された金属層7、および金属層7の上部に配されたリオトロピック液晶層4を有している。透明プラスチック材料のような充填材を金属層7に形成された情報8のギャップに充填できる。
【0036】
図6は図5のセキュリティー素子2の別の実施の形態を示す図であり、まずリオトロピック液晶層4が基体3に形成され、その上部に金属層7が配されている。
【0037】
図5および6に示すセキュリティー素子2の実施の形態には前記保護層、接着層などの別の層を付加できる。同様に、セキュリティー素子2を銀行紙幣1に直接形成することもできる。その場合には、銀行紙幣1の基体がセキュリティー素子2の基体となる。
【0038】
図5のセキュリティー素子2において、前記視覚効果は情報8の領域を透過した光にのみ現れる。図6のセキュリティー素子2において、前記視覚効果は情報8の領域を透過した光およびそこで乱反射した光の両方に現れる。
【0039】
セキュリティー素子2を備えた銀行紙幣の別の実施の形態を図7に示す。セキュリティー素子2は少なくとも一部が銀行紙幣1の基体に埋め込まれ、例えば、セキュリティー・スレッドであるセキュリティー素子2が“ウィンドウ”と呼ばれる特定の領域2aにおいてのみ見える。従って、前記視覚効果は領域2aにのみ現れる。
【0040】
セキュリティー素子を図1〜6に示すような構造を有する転写材料として設計することもできる。この場合、層構成を逆にして転写材料上に形成する。転写材料によってセキュリティー素子が銀行紙幣に固定され、その後転写材料は完全にまたは部分的に除去される。
【0041】
既に述べたように、別の層または素子をセキュリティー素子に付加できる。付加層は単独または組み合せて用いることができ、セキュリティー素子の全体または部分を覆うことができる。
【0042】
例えば、偏光液晶層の下部に蛍光層または蛍光領域を配することができる。これにより、発せられた蛍光が直線偏光される。
【0043】
同様に、偏光液晶層の上部または下部に干渉層を配することができる。
【0044】
干渉顔料を生成することもできる。この場合、干渉層の片面または両面に液晶層を形成する。このようにして形成した複合層を細かく砕いて偏光性を有する顔料を生成する。生成した偏光干渉顔料、またはそれに非干渉顔料混合したものを用いて、例えば、印刷を施すことによってセキュリティー素子を作製できる。このようなセキュリティー素子は方向に依存する色彩効果に加えて後方散乱光を偏光する。
【0045】
更に別の偏光層および、例えば、ホログラムを形成する回折構造体をセキュリティー素子に付加できる。
【0046】
同様に、位相板による位相シフト層を付加することもできる。
【0047】
セキュリティー素子を所謂硬貨地板として形成することもできる。硬貨地板を銀行紙幣の基体表面に組み込み、片面または両面に偏光層を配することが好ましい。
【0048】
本発明によれば、少なくとも1つのリオトロピック液晶層をルックスルー・レジスターに付加できる。本発明において、ルックスルー・レジスターとは銀行紙幣の透明領域を意味する。ルックスルー・レジスターは、例えば、プラスチック製であれば銀行紙幣の基体そのものに形成できる。また、例えば、プラスチック箔から成る個々に設計したルックスルー・レジスターを銀行紙幣の紙製の基体に組み込むこともできる。この場合、ルックスルー・レジスターの両面に偏光方向が90度回転するようリオトロピック液晶層を配することが特に有益である。これにより、前記色彩効果が最大限に発揮される。
【0049】
別の実施の形態において、ルックスルー・レジスター箔を複屈折箔とすることができる。そうすると、光を層側および箔側のいずれから照射したかに応じ、透過光が方向に依存する直線偏光または円偏光される。
【0050】
また、ルックスルー・レジスターは、例えば、半透明なホログラムを形成する回折構造体を有することができる。
【0051】
前記のように、セキュリティー素子2は銀行紙幣1に直接形成することも、個別に作製して銀行紙幣1に固定することもできる。また、セキュリティー素子2は銀行紙幣1に固定されるまで層構成が完成しない、例えば、固定後に偏光層または保護層が形成されるようにすることもできる。
【0052】
図8〜10は本発明のセキュリティー素子を有する銀行紙幣をチェックするための装置を示す図である。
【0053】
図8は銀行紙幣1で乱反射した光によって銀行紙幣1をチェックするための構成を示す図であり、光源10、検出器11、およびセキュリティー素子2を有する銀行紙幣1から成っている。光源10からの光がセキュリティー素子2の直線偏光層を透過することにより直線偏光される。この偏光光が銀行紙幣1の基体によって乱反射されることにより偏光が解消される。この散乱光がセキュリティー素子の直線偏光層を透過することにより再度偏光される。検出器11によって検出された光が直線偏光されている場合には、セキュリティー素子2の存在が立証される。セキュリティー素子2に異なる偏光領域がある場合には、ライト/ダーク・コントラストが現れる。光の偏光の代わりに、またはそれに加え、使用リオトロピック液晶の種類によって決まるセキュリティー素子2からの光の前記色彩効果を検出器11によって評価できる。光源10および/または検出器11の前にセキュリティー素子2の直線偏光方向に対し90度回転した方向に直線偏光する偏光子12または12’を配すると、セキュリティー素子2からの光の色彩効果、またはライト/ダーク・コントラストがより鮮明になる。偏光子12または12’がセキュリティー素子2の偏光層と同じリオトロピック液晶から成る直線偏光層を有していることが理想である。
【0054】
図9aは銀行紙幣1を透過した光によって銀行紙幣1をチェックするための構成を示す図であり、光源10、検出器11、およびセキュリティー素子2を有する銀行紙幣1から成っている。光源10からの光が銀行紙幣1の基体およびセキュリティー素子2の直線偏光層を透過することにより直線偏光される。検出器11によって検出された光が直線偏光されている場合には、セキュリティー素子2の存在が立証される。光の偏光の代わりに、またはそれに加え、使用リオトロピック液晶の種類によって決まるセキュリティー素子2からの光の前記色彩効果を検出器11によって評価できる。検出器11の前にセキュリティー素子2の直線偏光方向に対し90度回転した方向に直線偏光する偏光子12を配すると、セキュリティー素子2からの光の色彩効果がより鮮明になる。偏光子12がセキュリティー素子2の偏光層と同じリオトロピック液晶から成る直線偏光層を有していることが理想である。
【0055】
図9bにおいて、セキュリティー素子2が銀行紙幣1の光源10に対向する側に位置している。透過光が銀行紙幣1の基体の散乱により偏光が解消され、検出器11において偏光および色彩効果が観察されない。これは、例えば、ウィンドウ・セキュリティー・スレッドにおいて、スレッドが基体に埋め込まれている領域の場合である。
【0056】
図10の構成は図9と比較すると光源10と検出器11とが入れ替わっている。図10aはセキュリティー素子2に偏光光が照射され、光を散乱する銀行紙幣1を通して少なくとも色彩効果が観察できる一方、透過光が銀行紙幣の基体で散乱することにより偏光が解消される場合を示している。図10bはセキュリティー素子2に照射される光が非偏光光であり、偏光層による直線偏光効果が銀行紙幣の基体の散乱により解消されるため透過光に何の効果も生じない場合を示している。
【0057】
検出器11を用いる代わりに、セキュリティー素子2の乱反射光および透過光における前記色彩効果の有無を目視によりチェックすることもできる。
【0058】
照明または観察方法よって偏光子12または12’、または銀行紙幣の偏光方向を変えることにより、前記色彩効果の増減を観察できる。ウィンドウ・セキュリティー・スレッドまたは一部が銀行紙幣の基体に埋め込まれている別のセキュリティー素子を目視した場合、空白効果、即ち、前記効果が生じない箇所が常に存在する。
【0059】
本発明による前記ルックスルー・レジスターに偏光液晶層が配されている場合には、特に目視検査が有益かつ容易である。この場合、ルックスルー・レジスターを偏光子12または12’の代わりとして使用できる。例えば、ルックスルー・レジスターが別のセキュリティー素子に重なるよう銀行紙幣を折り曲げることにより、同一銀行紙幣上の別のセキュリティー素子をチェックできる。また、ルックスルー・レジスターを用いて別の銀行紙幣のセキュリティー素子をチェックすることもできる。
【0060】
偏光子12または12’を回転させることにより、偏光干渉顔料に関連して説明した色彩の変化も良好に観察できる。
【0061】
偏光子を図9および10の光源および検出器11の前に検光子として配することも勿論できる。この場合、セキュリティー素子2の位置とは無関係に少なくとも色彩効果が常に観察できる。
【0062】
図9および10を参照して説明した本発明によるセキュリティー素子のチェック方法は、銀行紙幣の表面に適用されたセキュリティー素子のチェック方法であったが、別の設計も可能であることは自明である。例えば、プラスチックように光を散乱しない基体を銀行紙幣に用いることができる。同様に、セキュリティー素子を前記のようなルックスルー・レジスターとして形成できる。このような場合、図9および10に関連して説明した基体による偏光の解消は生じない。
【0063】
光源10は白熱灯または放電灯のような白色光を発する光源であってよい。光源10は直線偏光子を有していてもよい。また、光源10が、例えば、発光ダイオードから成る場合には、一定の限定スペクトルを有する光を発してもよい。光を予め偏光する場合には、光源として低出力の偏光レーザー・ダイオード、また目視用としてレーザー・ポインターを用いることができる。
【0064】
図9および10を参照して説明した本発明によるセキュリティー素子2を備えた銀行紙幣をチェックするための装置によるチェック、または前記目視検査を行うと、図8に関連して説明したライト/ダーク効果も視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のセキュリティー素子を有する銀行紙幣を示す図。
【図2】図1のセキュリティー素子の1つの実施の形態を示す断面図。
【図3】図1のセキュリティー素子の1つの実施の形態を示す断面図。
【図4】図1のセキュリティー素子の1つの実施の形態を示す平面図。
【図5】図4のセキュリティー素子の1つの実施の形態を示す断面図。
【図6】図4のセキュリティー素子の1つの実施の形態を示す断面図。
【図7】本発明のセキュリティー素子を有する銀行紙幣の1つの実施の形態を示す図。
【図8】本発明のセキュリティー素子を有する銀行紙幣をチェックするための装置を示す図。
【図9】図9aおよび9bは本発明のセキュリティー素子を有する銀行紙幣をチェックするための装置を示す図。
【図10】図10aおよび10bは本発明のセキュリティー素子を有する銀行紙幣をチェックするための装置を示す図。
【符号の説明】
【0066】
1 銀行紙幣
2 セキュリティー素子
3 基体
4 リオトロピック液晶層
5 保護層
6 接着層
7 金属層
8 情報
10 光源
11 検出器
12、12’ 偏光子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティー素子を備えた有価物であって、該素子が光を直線偏光する少なくとも1つの液晶材料を有して成ることを特徴とする有価物。
【請求項2】
前記液晶材料がリオトロピック液晶から成ることを特徴とする請求項1記載の有価物。
【請求項3】
前記液晶材料の層厚が100〜1000ナノメートルであることを特徴とする請求項1または2記載の有価物。
【請求項4】
前記液晶材料が一面に配されているか、または特定の領域に、特に英数字および/またはパターンを成して配され、該材料によって特に局部的に異なる偏光が生じることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の有価物。
【請求項5】
前記液晶材料がパターンおよび/または文字を有する背景に配されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の有価物。
【請求項6】
前記背景が印刷されているか、基体にインク描きされているか、またはレーザーによって形成されていることを特徴とする請求項5記載の有価物。
【請求項7】
前記液晶材料、前記背景、および/または別の層が、機械検査および/または目視検査可能な特性を有していることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の有価物。
【請求項8】
前記セキュリティー素子がラベルであることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の有価物。
【請求項9】
セキュリティー・ペーパー、セキュリティー・ドキュメント、または製品包装であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の有価物。
【請求項10】
前記セキュリティー素子が視覚効果をもたらす少なくとも1つの層および/または少なくとも該セキュリティー素子の一部を覆う保護層を更に有して成ることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の有価物。
【請求項11】
有価物を保護するためのセキュリティー素子であって、光を直線偏光する少なくとも1つの液晶材料を有して成ることを特徴とする素子。
【請求項12】
前記液晶材料がリオトロピック液晶から成ることを特徴とする請求項11記載の素子。
【請求項13】
前記液晶材料の層厚が100〜1000ナノメートルであることを特徴とする請求項11または12記載の素子。
【請求項14】
前記液晶材料が一面に配されているか、または特定の領域に、特に英数字および/またはパターンを成して配されていることを特徴とする請求項11〜13いずれか1項記載の素子。
【請求項15】
前記液晶材料の担体が所定の、特に1/4波長または1/2波長の位相シフトを有する複屈折箔であることを特徴とする請求項11〜14いずれか1項記載の素子。
【請求項16】
視覚効果をもたらす少なくとも1つの層および/または少なくとも一部を覆う保護層を更に有して成ることを特徴とする請求項11〜15いずれか1項記載の素子。
【請求項17】
セキュリティー・スレッド、ルックスルー・レジスター、または硬貨地板であることを特徴とする請求項11〜16いずれか1項記載の素子。
【請求項18】
セキュリティー素子を作製するための転写材料であって、リオトロピック液晶から成る少なくとも1つの液晶材料を上部に配した担体材料を有して成ることを特徴とする材料。
【請求項19】
前記担体材料が押箔として形成されていることを特徴とする請求項18記載の材料。
【請求項20】
有価物またはセキュリティー素子を作製する方法であって、
基体を供給するステップ、
前記基体の上部に少なくとも1つのリオトロピック液晶材料を塗布するステップ
の各ステップを有して成ることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのリオトロピック液晶材料が溶液中に存在し、有向剪断力を加えながら該溶液を前記基体に塗布し、該溶液を構成する溶媒を除去することを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
有価物を検査する方法であって、
光が直線偏光されているか否かおよび/または
前記光が色彩効果を有しているか否かおよび/または
前記光が銀行紙幣の基体を透過したとき、前記偏光光の偏光が解消されるか否か、および/または前記色彩効果が消えるか否か
をチェックすることを特徴とする方法。
【請求項23】
前記有価物で乱反射した光および/または該有価物を透過した光をチェックすることを特徴とする請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−527051(P2007−527051A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519855(P2006−519855)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007680
【国際公開番号】WO2005/005727
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(596007511)ギーゼッケ ウント デフリエント ゲーエムベーハー (47)
【氏名又は名称原語表記】Giesecke & Devrient GmbH
【Fターム(参考)】