説明

セキュリティ媒体の真贋判定方法、およびセキュリティ媒体の製造方法

【課題】真贋判定を短時間で容易に可能な真贋判定方法、及び偽造が困難なセキュリティ媒体を製造することができるセキュリティ媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1のサンプル及び第2のサンプルに含有される元素のピーク強度を蛍光X線分析装置を用いてそれぞれ測定し、測定されたピーク強度と該ピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成する工程と、真贋判定に供するセキュリティ媒体のピーク強度を測定して、該ピークを有する波長を検出することにより該真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別を識別するとともに、測定されたピーク強度と前記検量線とから該識別された元素の含有量を算出し、これを真であるセキュリティ媒体と比較することで真贋判定を行う工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ媒体の真贋判定方法、およびセキュリティ媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金券やID証などのセキュリティ媒体には、パールインキやホログラムなどの偽造防止処理が施されている。しかしながら、近年の印刷技術の急速な発展にともない、真正品であるセキュリティ媒体と極めて類似した媒体を容易に作成することができ、目視により真贋の判定を行うことが極めて困難となってきている。
【0003】
このような状況下、近時、目視による真贋判定が可能なセキュリティ媒体にかわり、蛍光X線を用いて真贋判定が可能なセキュリティ媒体が知られている。特許文献1には、証券の種類毎に差別化が図れる証券類、及び証券類の真偽判別として、真である証券類の図柄の一部分を2種類以上の元素を含有させたインキで印刷し、この元素が含有されているか否かをスペクトル解析により識別することで、真偽判定が可能な証券類、及びこの証券類の識別方法が提案されている。また、特許文献2には、基材上に、ナトリウムからウランまでの特定の元素を少なくとも1種以上含有した組成物を用いて画像情報を付与した後、該画像情報を被覆物で覆い隠し、前記被覆物の上から細く絞ったX線を照射し、励起されて出てくる前記特定元素の蛍光X線スペクトルによりマッピングを行うことにより、隠された画像情報が認識される画像形成物、及び、このマッピングによって隠された画像情報を認識する画像形成物の識別方法が提案されている。また、特許文献3には、冊子の綴じ糸に特定の元素を塗布し、蛍光X線分析装置でX線のビーム径を細く絞って、スペクトル解析をしてマッピングし、基準のマッピング像と比較して真偽を判別する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−260052号公報
【特許文献2】特開2000−218920号公報
【特許文献3】特開2001−305078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案されている証券類によれば、添加する組成物の種類を組み替えることで証券の種類毎に差別化が図れるとされているものの、組成物の種類を組み替えるだけでは、組合せの数は有限であり、例えば、量産品のロット毎に組成の組合せを変えることは出来ない。また特定の元素を大量にインキ中に配合して顔料として使用するため、特定の色が発色し、一見同じような画像を作成するためには、添加する元素の組合せは限られることとなる。また、特許文献2、3に提案されている検出方法は、X線のビーム径を絞ることが可能で蛍光X線のスペクトルからマッピングが出来るような装置を用いなければ真贋判定が出来ず、マッピングにも非常に時間がかかるため、数分〜数十秒で真贋判定ということが出来ない。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、短時間での正確な真贋判定を容易に行うことができるセキュリティ媒体の真贋判定方法、及びこの真贋判定に用いられるセキュリティ媒体の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、セキュリティ媒体の真贋判定方法であって、(1)蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有された真であるセキュリティ媒体と同一のサンプル又は真であるセキュリティ媒体と元素の含有量のみが異なる第1のサンプルと、(2)前記第1のサンプルとは前記元素の含有量のみが異なる第2のサンプルを準備し、前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルに含有される前記元素のピーク強度を蛍光X線分析装置を用いてそれぞれ測定し、前記測定されたピーク強度と該ピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成する検量線作成工程と、前記蛍光X線分析装置を用いて真贋判定に供するセキュリティ媒体のピーク強度を測定して、該ピークを有する波長を検出することにより該真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別を識別するとともに、測定されたピーク強度と前記検量線とから該識別された元素の含有量を算出し、これを前記真であるセキュリティ媒体と比較することで真贋判定を行う判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記真であるセキュリティ媒体には、前記蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が2種以上含有されており、前記検量線作成工程が、前記2種以上の各元素の検量線をそれぞれ作成する工程であって、前記判定工程が、前記真贋判定に供するセキュリティ媒体のピーク強度を測定して、該ピークを有する波長を検出することにより該真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別をそれぞれ識別するとともに、測定されたピーク強度と前記検量線とから該識別された元素の含有量をそれぞれ算出し、これを前記真であるセキュリティ媒体と比較する工程であってもよい。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明は、セキュリティ媒体の製造方法であって、蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有され、該元素の含有量のみが異なる複数のサンプルを準備し、前記蛍光X線分析装置で前記元素の含有量のみが異なるサンプルのピーク強度をそれぞれ測定し、各前記サンプルにおいて測定されたピーク強度と測定されたピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成し、前記検量線に基づいて決定された含有量を、真となるセキュリティ媒体に含有せしめたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法によれば、真贋判定の用に供するセキュリティ媒体に含有される元素のピーク強度を蛍光X線分析装置で測定するだけで、真贋判定の用に供するセキュリティ媒体に含まれる元素の含有量を算出することができる。したがって、この元素の含有量が真であるセキュリティ媒体に含有される元素の含有量と一致するか否かを比較することによって正確な真贋判定を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明のセキュリティ媒体の製造方法によれば、含有せしめる元素の種別をかえることなく、その元素の含有量のみを異ならせるだけで複数の真であるセキュリティ媒体を製造することができる。換言すれば含有量を異ならせることができる数だけ、真であるセキュリティ媒体を製造することができる。したがって、例えば、製造ロット毎、納入先毎に、真であるセキュリティ媒体を変更したい場合には、含有せしめる元素の種別をかえることなく、その含有量を異ならせるだけで変更が可能であり、偽造が困難なセキュリティ媒体を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法のフローチャートである。
【図2】本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法の第1の実施形態の検量線を示す図である。
【図3】本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法の第2の実施形態の検量線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<セキュリティ媒体の真贋判定方法>>
以下に、本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法について図面を用いて具体的に説明する。なお、図1は、本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法のフローチャートである。
【0014】
本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法は、(1)蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有された真であるセキュリティ媒体と同一のサンプル又は真であるセキュリティ媒体と元素の含有量のみが異なる第1のサンプルと、(2)第1のサンプルとは元素の含有量のみが異なる第2のサンプルを準備し、第1のサンプル及び第2のサンプルに含有される元素のピーク強度を蛍光X線分析装置を用いてそれぞれ測定し、測定されたピーク強度と該ピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成する検量線作成工程と、蛍光X線分析装置を用いて真贋判定に供するセキュリティ媒体のピーク強度を測定して、該ピークを有する波長を検出することにより該真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別を識別するとともに、測定されたピーク強度と検量線とから該識別された元素の含有量を算出し、これを真であるセキュリティ媒体と比較することで真贋判定を行う判定工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
なお、本発明おける、セキュリティ媒体には、セキュリティ性が要求されるあらゆる媒体が含まれ、例えば、紙幣、有価証券、IDカード、偽造防止ラベル、転写箔等を挙げることができる。また、真であるセキュリティ媒体とは、蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有されたセキュリティ媒体であって、含有される元素の種別及びその含有量が既知のものを言う。
【0016】
蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素についても特に限定はないが、検出されるピーク強度を考慮すると、ホウ素(B)からウラン(U)のいずれかの元素であることが好ましい。また、ピーク強度を測定する蛍光X線分析装置についても限定されることはなく、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製 SEA1200VX、島津製作所社製 EDX−720、リガク社製 Supermini等を使用可能である。
【0017】
<検量線作成工程>
図1に示すように、検量線作成工程は、(1)蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有された真であるセキュリティ媒体と同一のサンプル又は真であるセキュリティ媒体と元素の含有量のみが異なる第1のサンプルと、(2)第1のサンプルとは元素の含有量のみが異なる第2のサンプルを準備し(S1)、第1のサンプル及び第2のサンプルに含有される元素のピーク強度を蛍光X線分析装置を用いてそれぞれ測定し(S2)、前記測定されたピーク強度と該ピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成する(S3)工程である。
【0018】
(サンプルの準備)
本工程では、蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有された第1のサンプルと、該第1のサンプルと元素の含有量のみが異なる第2のサンプルを準備する(S1)。なお、第1のサンプル及び第2のサンプルは、真贋判定の対象である真であるセキュリティ媒体と同一の元素が含まれたものであり、含有される元素の含有量が既知のサンプルである。同様に、真であるセキュリティ媒体に含有される元素の含有量も既知である。なお、第1のサンプル及び第2のサンプルのいずれか一方は、真であるセキュリティ媒体と同一のものであってもよい。
【0019】
また、本発明においては、後述する検量線の精度を向上させるために、第1のサンプルとは元素の含有量のみが異なり、かつそれぞれのサンプル間において元素の含有量のみが異なる第2のサンプルを複数準備することとしてもよい。すなわち、第2のサンプルは、(a)第1のサンプルと元素の含有量のみが異なる1種類のサンプルであってもよく、(b)この1種類のサンプルに加え、該1種類のサンプルとは更に元素の含有量のみが異なるサンプルを含む2種類以上のサンプルであってもよい。
【0020】
このように、第1のサンプルと、2種類以上の第2のサンプルとに基づいて検量線を作成することで、第1のサンプルと、1つの第2のサンプルによってのみ検量線を作成する場合、換言すれば2点をつないで検量線を作成する場合と比較して、検量線の作成精度を向上させることができる。また、3種類以上のサンプルを用いて検量線を作成する場合には、最小二乗法を用いて検量線を作成することが好ましい。
【0021】
また、上記で準備される各サンプルの群、すなわち第1のサンプル+1種類又は2種類以上の第2のサンプルを1セットとした場合に、準備されるサンプルは2セット以上であることが好ましい。2セット以上のサンプルを準備することで、平均値に基づいて検量線を作成することができ、検量線の作成精度を更に向上させることができる。
【0022】
また、真であるセキュリティ媒体に蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素を2種以上含有させることもできる。この場合、サンプルの準備において(1)含有される元素毎に第1のサンプル、及び第2のサンプルをそれぞれ準備することとしてもよく、(2)全ての元素が含有された第1のサンプル、及び第2のサンプルを準備することとしてもよい。
【0023】
例えば、真であるセキュリティ媒体に、元素A、元素Bを含有せしめる場合にあっては、前者(1)の場合には、元素A,元素B毎にそれぞれ、第1のサンプルと第2のサンプルを準備する。具体的には、元素Aのみが含有された第1のサンプル及び該第1のサンプルとは元素Aの含有量が異なる第2のサンプル、元素Bのみが含有された第1のサンプル及び該第1のサンプルとは元素Bの含有量のみが異なる第2のサンプルをそれぞれ準備する。また、後者(2)の場合には、元素A,Bが含有された第1のサンプルと、該第1のサンプルとは元素A,Bの含有量がそれぞれ異なる第2のサンプルを準備する。
【0024】
(検量線の作成)
次いで、準備された第1のサンプル、及び第2のサンプルに含有される元素のピーク強度を、蛍光X線分析装置を用いてそれぞれ測定する(S2)。ここで、第1のサンプル及び第2のサンプルに含まれる元素の含有量は既知であることから、元素の含有量とピーク強度から検量線を作成することができる(S3)。
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明の真贋判定の理解を容易にするために本発明の第1の実施形態として、真であるセキュリティ媒体に1種の元素が含有されている具体的な例を挙げ説明する。
【0026】
被転写体、ヒートシール層、剥離性保護層をこの順で積層してなる転写箔において、ヒートシール層に酸化イットリウムが1.0質量%含有されてなる転写箔を第1のサンプル、酸化イットリウムの含有量を2.0質量%とした以外は第1のサンプルと全て同様とした転写箔を第2のサンプルとして準備した。なお、第1のサンプルを真であるセキュリティ媒体とした。
【0027】
上記の第1のサンプル、及び第2のサンプルにおけるイットリウムのピーク強度を、蛍光X線分析装置を用いて測定したところ、第1のサンプルのピーク強度は2.23kcps、第2のサンプルのピーク強度は、4.46kcpsであった。第1のサンプル、及び第2のサンプルに含有される酸化イットリウムの含有量は、上記のように既知であることから、酸化イットリウムの含有量とピーク強度とから、図2に示すイットリウムの検量線を作成することができる。なお、このイットリウムの検量線は、以下の式1であらわすことができる。なお、本実施形態においては、第1のサンプル、及び第2のサンプルの群を3セット準備し、各セットのピーク強度をそれぞれ測定し、その平均値をピーク強度としている。以下の第2の実施形態についても同様である。なお、第1のサンプル、及び第2のサンプルからなる群を1セットのみ準備し、各サンプルのピーク強度を複数回測定し、その平均値に基づいて検量線を作成することもできる。
【0028】
y=2.23x・・・(式1)
(式中のxは、イットリウムの添加量(質量%)であり、yはイットリウムKβ1線のピーク強度(kcps)である。)
【0029】
<判定工程>
判定工程は、蛍光X線分析装置を用いて真贋判定に供するセキュリティ媒体から検出されるピーク強度を測定して、該ピークを有する波長を検出することにより(S4)、該真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別を識別し(S5)、識別された元素の種別が真であるセキュリティ媒体に含有された元素と一致するか否かを判別する(S6)。このとき、真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別と、真であるセキュリティ媒体に含有された元素の種別とが一致しないと判別したときには、真贋判定に供するセキュリティ媒体は偽であると判定される。一方、元素の種別が一致したと判別したときには、次いで、真贋判定に供するセキュリティ媒体から検出されたピーク強度と、S3の処理で作成された検量線とから該識別された元素の含有量を算出する(S7)。次いで、算出された元素の含有量が、真であるセキュリティ媒体と一致するか否かを判別する(S8)。このとき、元素の含有量が一致すると判別したときには、真贋判定に供したセキュリティ媒体は真であると判定される。一方、元素の含有量が一致しないと判別したときには、偽であると判定される。
【0030】
なお、真であるセキュリティ媒体に2種以上の元素を含有させた場合には、S6の処理において、真であるセキュリティ媒体に含有されている2種以上の元素の全てが、真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有されているか否かを判別する。また、S8の処理では、全ての元素において、真であるセキュリティ媒体と真贋判定に供するセキュリティ媒体とでその含有量が一致するか否かを判別する。
【0031】
本実施形態においては、第1のサンプルの酸化イットリウムにかえて酸化銅を含有させた第1の判定用サンプル、第1のサンプルの酸化イットリウムが含有されているもののその含有量が不明である第2の判定用サンプルを用意した。
【0032】
第1の判定用サンプルについては、蛍光X線分析装置を用いて蛍光X線分析を行ったところイットリウムのピークは検出されないことから、この時点で第1の判定用サンプルは、偽であると判定することができる。第2の判定用サンプルについては、蛍光X線分析装置を用いて蛍光X線分析を行ったところイットリウムのピークが検出され、そのピーク強度は、6.7kpcsであった。このピーク強度と、上記式1とから、第2の判定用サンプルのイットリウムの含有量を算出したところ、含有量は3.0%であることが確認された。真であるセキュリティ媒体の酸化イットリウムの含有量は1.0%と既知であることから、この場合第2の判定用サンプルは偽であると判定することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、真であるセキュリティ媒体に2種の元素が含有されている具体的な例を挙げ説明する。
【0034】
上記第1の実施形態の第1のサンプルに更に酸化銅が1.0%含有された第1のサンプル、上記第1の実施形態の第2のサンプルに更に酸化銅が2.0%含有された第2のサンプルを準備した。なお、第1のサンプルを真であるセキュリティ媒体とした。
【0035】
上記の第1のサンプル、及び第2のサンプルにおける銅のピーク強度を、蛍光X線分析装置を用いて測定したところ、第1のサンプルにおける銅のピーク強度は12.32kcps、第2のサンプルにおける銅のピーク強度は、24.64kcpsであった。第1のサンプル、及び第2のサンプルに含有される酸化銅の含有量は、上記のように既知であることから、酸化銅の含有量とピーク強度とから、銅の検量線を作成することができる。銅の検量線を図3に示す。この銅の検量線は、以下の式2であらわすことができる。なお、イットリウムの検量線は上記第1の実施形態において作成した検量線と同様である。
【0036】
y=12.32x・・・(式2)
(式中のxは、銅の添加量(質量%)であり、yは銅Kα線のピーク強度(kcps)である。)
【0037】
上記第1のサンプルおいて、酸化イットリウムの含有量を3.0%、酸化銅の含有量を2.0%に変更した第3の判定用サンプルと、第1のサンプルにおいて、酸化銅の含有量のみを2.0%に変更した第4の判定用サンプルを用意した。
【0038】
第3の判定用サンプル、及び第4の判定用サンプルともに、蛍光X線分析を行ったところイットリウム、及び銅のピークが検出された。次いで、各判定用サンプルの各元素のピーク強度を測定し、このピーク強度と、上記式1、式2とから、各元素の含有量を算出した。第3の判定用サンプルは、酸化イットリウム及び酸化銅の含有量がともに真であるセキュリティ媒体と異なることから、第3の判定用サンプルは偽であると判定することができる。一方、第4の判定用サンプルは、酸化イットリウムの含有量は真であるセキュリティ媒体と同一であるものの、酸化銅の含有量が真であるセキュリティ媒体とは異なる。したがって、第4の判定用サンプルも偽であると判定することができる。
【0039】
以上説明した本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法によれば、含有される元素の種別のみならず、検量線からその含有量をも特定することができ、正確な真贋判定を容易に行うことができる。また、マッピング可能な蛍光X線分析装置を用いることなく、汎用の蛍光X線分析装置で真贋判別が可能であり、短時間での真贋判別が可能となる。さらに、真であるセキュリティ媒体に2種以上の元素が含有されている場合には、含有されている元素の種別のみならず、それぞれの元素の含有量を特定することができることから、本発明の一実施形態によれば、更に高度な真贋判別が可能となる。
【0040】
<<セキュリティ媒体の製造方法>>
本発明のセキュリティ媒体の製造方法は、蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有され、該元素の含有量のみが異なる複数のサンプルを準備し、蛍光X線分析装置で前記元素の含有量のみが異なるサンプルのピーク強度をそれぞれ測定し、各サンプルにおいて測定されたピーク強度と測定されたピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成し、検量線に基づいて決定された含有量を、真となるセキュリティ媒体に含有せしめたことを特徴とする。以下、本発明のセキュリティ媒体の製造方法について更に具体的に説明する。
【0041】
本発明のセキュリティ媒体を製造するにあたっては、作製するセキュリティ媒体の層構成、及び各層の膜厚を決定する。作成するセキュリティ媒体の層構成、膜厚は適宜設定することができ、本発明においていかなる限定もされることはない。例えば、セキュリティ媒体としては、単層のセキュリティ媒体であってもよく、2層以上の層からなるセキュリティ媒体であってもよい。2種以上の層からなるセキュリティ媒体としては、例えば、基材/ヒートシール層/保護層から構成される転写箔や、セパレータ/粘着剤層/ホログラム層/基材から構成される体積ホログラム積層ラベル等を挙げることができる。
【0042】
次いで、蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素を少なくとも1種選択し、該選択された元素をセキュリティ媒体の任意の層に含有せしめたサンプルを複数作成する。作成される複数のサンプルは、サンプル間において元素の含有量のみがそれぞれ異なるサンプルであり、各サンプルにおける元素の含有量は既知である。なお、偽物のセキュリティ媒体の製造を困難にする点を考慮すると、真であるセキュリティ媒体には、2種以上の元素が含有されていることが好ましく、したがって、2種以上の元素が含有されたサンプルを作成することが好ましい。また、複数のサンプルに基づいて作成される検量線の精度を考慮すると、複数のサンプルは、各サンプル間における元素の含有量のみがそれぞれ異なる3種以上であることが好ましい。
【0043】
ここで、元素が含有される任意の層とは、表面に位置する層に限定されるものではなく、例えば、セキュリティ媒体が、上記の基材/ヒートシール層/保護層からなる転写箔である場合には、保護層に元素を含有させることとしてもよく、ヒートシール層に元素を含有させることとしてもよい。
【0044】
本発明においては、セキュリティ媒体を構成する任意の層に元素を含有させることができることから、セキュリティ性を付与するための別途の層を設ける必要がなく、該別途の層により、セキュリティ媒体の層厚が増えることもない。また、別途の層を形成する工程を簡略化することができ、製造コストの面でも優れる。
【0045】
次いで、この複数のサンプルに対し、蛍光X線分析を行い元素毎の検量線を作成する。検量線の作製は、上述した本発明の真贋判定方法で説明した方法と同様の方法で作成することができ、ここでの説明は省略する。
【0046】
次いで、検量線に基づいて、真であるセキュリティ媒体に含有せしめる元素の含有量を決定し、当該決定した量を含有せしめることで、真であるセキュリティ媒体を製造することができる。
【0047】
本発明のセキュリティ媒体の製造法によれば、検量線に基づいて決定された元素の含有量を含有せしめることから、製造されたセキュリティ媒体のピーク強度は検量線から明らかである。したがって、製造されたセキュリティ媒体については蛍光X線分析を行うことなく、真贋判定の用に供するセキュリティ媒体との比較が可能となる。また、異なる元素の種類を大量に準備することなく、高いセキュリティ性を備えるセキュリティ媒体を製造することができる。
【0048】
以上、本発明のセキュリティ媒体の真贋判定方法、およびセキュリティ媒体の製造方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の変更を加えてもよい。
【実施例】
【0049】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
【0050】
(実施例1)
(1)体積ホログラム積層体ラベル1の作製(硝酸ランタン六水和物0.125%添加)
厚さ50μmのPETフィルム(ルミラーT50 東レ株式会社製)を準備し、該PETフィルム上に以下の組成からなる体積ホログラム記録材料層1用塗工液を、乾燥膜厚8μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、体積ホログラム記録材料層1を作製した。
【0051】
<体積ホログラム記録材料層1用塗工液>
・硝酸ランタン六水和物(関東化学) 0.271部
・ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000) 50部
・3,9−ジエチル−3'−カルボキシルメチル−2,2'−チアカルボシアニン沃素塩
0.5部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 6部
・2,2−ビス〔4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン 80部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 80部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(重量比) 200部
【0052】
次いで、体積ホログラム記録材料層1上に、以下の組成からなる粘着層溶液を、アプリケータにより乾燥後膜厚20μmとなるように塗布した後、オーブンで乾燥させて粘着層を形成した。
【0053】
<粘着層溶液>
・アクリル系粘着剤(ニッセツPE−118;日本カーバイト工業(株)製))100部
・イソシアネート系架橋剤(ニッセツCK−101;日本カーバイト工業(株)製)2部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン/酢酸エチル=2/1/1(重量比)) 60部
【0054】
粘着層を形成後、粘着層上にセパレータ(SPPET(38μm);東セロ(株)製)をラミネートして、セパレータ/粘着層/体積ホログラム記録材料層/PETフィルムの積層体を得た。次いで、この積層体に、波長532nmのレーザー光を用いてリップマンホログラムを撮影し記録した。記録後、この積層体を100℃の雰囲気中で10分間加熱し、高圧水銀灯を用いて、全面に照射線量;2500mJ/cm2の紫外線を照射して、体積ホログラム記録用材料の層の定着を行い、硝酸ランタン六水和物入り体積ホログラム積層体ラベル1を得た。
【0055】
(2)体積ホログラム積層体ラベル2の作製(硝酸ランタン六水和物0.25%添加)
体積ホログラム記録材料層1用塗工液にかえて、下記組成の体積ホログラム記録材料層2用塗工液を用いた以外は、全て(1)体積ホログラム積層体ラベル1と同様にして、体積ホログラム積層体ラベル2を作製した。
【0056】
<体積ホログラム記録材料層2用塗工液>
・硝酸ランタン六水和物(関東化学) 0.54部
・ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000) 50部
・3,9−ジエチル−3'−カルボキシルメチル−2,2'−チアカルボシアニン沃素塩
0.5部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 6部
・2,2−ビス〔4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン 80部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 80部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(重量比) 200部
【0057】
(3)体積ホログラム積層体ラベル3の作製(硝酸ランタン六水和物0.5%添加)
体積ホログラム記録材料層1用塗工液にかえて、下記組成の体積ホログラム記録材料層3用塗工液を用いた以外は、全て(1)体積ホログラム積層体ラベル1と同様にして、体積ホログラム積層体ラベル3を作製した。
【0058】
<体積ホログラム記録材料層3用塗工液>
・硝酸ランタン六水和物(関東化学) 1.08部
・ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000) 50部
・3,9−ジエチル−3'−カルボキシルメチル−2,2'−チアカルボシアニン沃素塩
0.5部
・ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート 6部
・2,2−ビス〔4−(アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン 80部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル 80部
・溶剤(メチルイソブチルケトン/n−ブタノール=1/1(重量比) 200部
【0059】
(ランタンKα線の検量線の作製)
上記で作成した3種の体積ホログラム記録材料について、蛍光X線分析装置(リガク社製 RIX−3100)を用い、蛍光X線スペクトルの測定を行った。測定結果を表1に示す。なお、蛍光X線スペクトルの測定は、体積ホログラム積層体ラベルのPETフィルム側から行った。次いで、ランタンの添加量と、ランタンKα線のピーク強度とから、検量線を作成した。この検量線は、以下の式3となった。
【0060】
y=0.5913x・・・(式3)
(式中のxは、ランタンの添加量(質量%)であり、yはランタンKα線のピーク強度(kcps)である。)
【0061】
【表1】

【0062】
(真贋判定)
上記で作成した体積ホログラム積層体ラベル2を真の体積ホログラムラベルであると定義し、以下のサンプルが真であるか否かの判定を行った。
【0063】
判定用サンプルの準備
判定用サンプルとして、上記体積ホログラム積層体ラベル2と目視上同一の構成を有するサンプルA,Bを準備した。このサンプルについて上記と同様にして、蛍光X線スペクトルの測定を行ったところ、サンプルAは、ランタンとコバルトのピークが検出された。また、サンプルBは、ランタンのピークが検出されるとともに、そのピーク強度は、0.4102kcpsであった。
【0064】
サンプルAについては、真である体積ホログラムラベルに含有されないコバルトのピークが検出されたことから、偽であると判定することができた。また、サンプルBのピーク強度から式3を用いてランタンの添加量を算出したところ、添加量は約0.7%であり、真である体積ホログラムラベルと添加量が異なる。したがって、サンプルBも偽であると判定することができた。
【0065】
(実施例2)
(1)転写箔1の作製(酸化スズ、酸化イットリウム、酸化銅をヒートシール層にそれぞれ0.5%添加)
厚さ50μmのPETフィルム(ルミラーT50 東レ株式会社製)を準備し、該PETフィルム上に、以下の組成からなる剥離性保護層用塗工液を、乾燥膜厚1μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、剥離性保護層を形成した。
【0066】
<剥離性保護層用塗工液>
・ポリメチルメタクリレート樹脂(分子量;35000) 97部
・ポリエチレンワックス(分子量;10000、平均粒径;5μm) 3部
・溶剤(メチルエチルケトン/トルエン=1/1(質量比)) 400部
【0067】
剥離性保護層上に以下の組成からなるヒートシール層1用塗工液を、乾燥膜厚8μmとなるようにグラビアコートにて塗工し、乾燥温度80℃で乾燥を行いPETフィルム、剥離性保護層、ヒートシール層1とがこの順で積層された積層体1を作成した。
【0068】
<ヒートシール層1用塗工液>
・酸化スズ 0.25部
・酸化イットリウム 0.25部
・酸化銅 0.25部
・ポリエステル樹脂溶液(バイロナールMD1985 TOYOBO社製 Tg:−20℃ 分子量25000) 50部
・溶剤(水/IPA=1/1(質量比)) 50部
【0069】
被転写体として、厚み1mm、サイズが5.5cm×8.5cmのプラスチックカードを準備し、積層体1について、市販の熱ラミネータを用い150℃、転写スピード1m/minでプラスチックカードへ転写を行った。転写後、PETフィルムを手で剥離することにより、転写箔1(剥離性保護層/ヒートシール層/被転写体)を作製した。
【0070】
(2)転写箔2の作製(酸化スズ、酸化イットリウム、酸化銅をヒートシール層にそれぞれ1.0%添加)
ヒートシール層1用塗工液にかえて、下記組成のヒートシール層2用塗工液を用いた積層体2とした以外は、全て(1)の転写箔1と同様にして、転写箔2を作製した。
【0071】
<ヒートシール層2用塗工液>
・酸化スズ 0.5部
・酸化イットリウム 0.5部
・酸化銅 0.5部
・ポリエステル樹脂溶液(バイロナールMD1985 TOYOBO社製 Tg:−20℃ 分子量25000) 50部
・溶剤(水/IPA=1/1(質量比)) 50部
【0072】
(3)転写箔3の作製(酸化スズ、酸化イットリウム、酸化銅をヒートシール層にそれぞれ1.5%添加)
ヒートシール層1用塗工液にかえて、下記組成のヒートシール層3用塗工液を用いた積層体3とした以外は、全て(1)の転写箔1と同様にして、転写箔3を作製した。
【0073】
<ヒートシール層3用塗工液>
・酸化スズ 0.75部
・酸化イットリウム 0.75部
・酸化銅 0.75部
・ポリエステル樹脂溶液(バイロナールMD1985 TOYOBO社製 Tg:−20℃ 分子量25000) 50部
・溶剤(水/IPA=1/1(質量比)) 50部
【0074】
(4)転写箔4の作製(酸化スズ、酸化イットリウム、酸化銅をヒートシール層にそれぞれ2.0%添加)
ヒートシール層1用塗工液にかえて、下記組成のヒートシール層4用塗工液を用いた積層体3とした以外は、全て(1)の転写箔1と同様にして、転写箔4を作製した。
【0075】
<ヒートシール層4用塗工液>
・酸化スズ 1部
・酸化イットリウム 1部
・酸化銅 1部
・ポリエステル樹脂溶液(バイロナールMD1985 TOYOBO社製 Tg:−20℃ 分子量25000) 50部
・溶剤(水/IPA=1/1(質量比)) 50部
【0076】
(検量線の作製)
上記で作成した4種の体積ホログラム記録材料について、蛍光X線分析装置(リガク社製 RIX−3100)を用い、蛍光X線スペクトルの測定を行った。なお、蛍光X線スペクトルの測定は、転写箔の剥離性保護層側から行った。測定結果を表2に示す。次いで、スズの添加量と、添加量に対応するスズKα線のピーク強度とから、スズKα線の検量線を、イットリウムの添加量と、添加量に対応するイットリウムKβ1線のピーク強度とから、イットリウムKβ1線の検量線を、また、銅の添加量と、添加量に対応する銅Kα線のピーク強度とから、銅Kα線の検量線をそれぞれ作成した。なお、スズKα線の検量線を下式4に、イットリウムKβ1線の検量線を下式5に、銅Kα線の検量線を下式6に示す。
【0077】
y=0.9304x・・・(式4)
(式中のxは、スズの添加量(質量%)であり、yはスズKα線のピーク強度(kcps)である。)
y=2.2377x・・・(式5)
(式中のxは、イットリウムの添加量(質量%)であり、yはイットリウムKβ1線のピーク強度(kcps)である。)
y=12.3270x・・・(式6)
(式中のxは、銅の添加量(質量%)であり、yは銅Kα線のピーク強度(kcps)である。)
【0078】
【表2】

【0079】
(真である転写箔の決定)
上記式4、5、6で示される検量線に基づいて、真である転写箔にスズを2%、イットリウム2%、銅1%を添加せしめたものを真である転写箔として定義した。すわなち、上記式4、5、6で示される検量線に照らすと、スズのピーク強度が約1.86kcps、イットリウムのピーク強度が約4.48kcps、銅のピーク強度が約12.33kcpsであるものが真である転写箔となる。
【0080】
(真贋判定)
以下のサンプルが真であるか否かの判定を行った。
【0081】
判定用サンプルの準備
判定用サンプルとして、上記転写箔1〜4と目視上同一の構成を有するサンプルC,Dを準備した。このサンプルについて上記と同様にして、蛍光X線スペクトルの測定を行ったところ、サンプルCは、スズ、銅のピークは検出されたが、イットリウムのピークが検出されなかった。一方、サンプルDは、スズ、イットリウム、銅のピークが検出され、そのピーク強度はそれぞれ、0.9378kcps、2.4815kcps、13.1726kcpsであった。
【0082】
サンプルCについては、真である転写箔に添加されるイットリウムのピークが検出されなかったことから、偽であると判定することができた。また、サンプルDについては、真である転写箔に添加される元素と同一の元素が検出されたものの、ピーク強度と検量線とから算出される元素の含有量は、スズ:約1%、イットリウム:約1%、銅:約1%であり、真であるサンプルと元素の添加量が異なる。したがって、サンプルDについても偽であると判定することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティ媒体の真贋判定方法であって、
(1)蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有された真であるセキュリティ媒体と同一又は前記真であるセキュリティ媒体と前記元素の含有量のみが異なる第1のサンプルと、(2)前記第1のサンプルとは前記元素の含有量のみが異なる第2のサンプルを準備し、
前記第1のサンプル及び前記第2のサンプルに含有される前記元素のピーク強度を蛍光X線分析装置を用いてそれぞれ測定し、測定されたピーク強度と該ピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成する検量線作成工程と、
前記蛍光X線分析装置を用いて真贋判定に供するセキュリティ媒体のピーク強度を測定して、該ピークを有する波長を検出することにより該真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別を識別するとともに、測定されたピーク強度と前記検量線とから該識別された元素の含有量を算出し、これを前記真であるセキュリティ媒体と比較することで真贋判定を行う判定工程と、
を備えることを特徴とするセキュリティ媒体の真贋判定方法。
【請求項2】
前記真であるセキュリティ媒体には、前記蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が2種以上含有されており、
前記検量線作成工程が、前記2種以上の各元素の検量線をそれぞれ作成する工程であって、
前記判定工程が、前記真贋判定に供するセキュリティ媒体のピーク強度を測定して、該ピークを有する波長を検出することにより該真贋判定に供するセキュリティ媒体に含有された元素の種別をそれぞれ識別するとともに、測定されたピーク強度と前記検量線とから該識別された元素の含有量をそれぞれ算出し、これを前記真であるセキュリティ媒体と比較する工程であることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティ媒体の真贋判定方法。
【請求項3】
セキュリティ媒体の製造方法であって、
蛍光X線分析装置でピーク強度を測定可能な元素が含有され、該元素の含有量のみが異なる複数のサンプルを準備し、
前記蛍光X線分析装置で前記元素の含有量のみが異なるサンプルのピーク強度をそれぞれ測定し、
各前記サンプルにおいて測定されたピーク強度と測定されたピーク強度に対応する元素の含有量とから検量線を作成し、
前記検量線に基づいて決定された含有量を、真となるセキュリティ媒体に含有せしめたことを特徴とするセキュリティ媒体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−179759(P2012−179759A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43182(P2011−43182)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】