説明

セキュリティ媒体及びセキュリティ媒体読取装置

【課題】セキュリティ性が高く、真贋判定を容易に効率よく実施できるセキュリティ媒体及びセキュリティ媒体読取装置を提供する。
【解決手段】シート状基材20と、シート状基材20の少なくとも片面の周縁部の一部又は全部に設けられ、コードパターンが形成され、特定の磁化特性を有し所望の情報を磁気により記憶するアモルファス強磁性体層31と、アモルファス強磁性体層31の上にホログラムを形成するホログラム形成層32と、アモルファス強磁性体層31を隠蔽する着色層33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アモルファス強磁性体層を備えたセキュリティ媒体及びセキュリティ媒体読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品券、ギフト券などの金券は、その価値から偽造防止機能が必要とされており、基材(券)上にさまざまな対策が施されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1は、真贋判定を容易に行なえるように、表面にホログラム層を備えた金券を開示している。このような金券は、真贋判定は容易に行なえるが、偽造対策としては完全ではない。また、金券が多数あるときは、真贋判定を即座に行なうことが困難であるという問題がある。
【特許文献1】特開平07−285286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、セキュリティ性が高く、真贋判定を容易に効率よく実施できるセキュリティ媒体及びセキュリティ媒体読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を括弧内に付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、シート状基材(20)と、前記シート状基材(20)の少なくとも片面に形成され、特定の磁化特性を有し、所望の情報を磁気により記憶するアモルファス強磁性体層(31)とを備えるセキュリティ媒体(10)である。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のセキュリティ媒体(10)において、前記アモルファス強磁性体層(31)は、コードパターンが形成されていることを特徴とするセキュリティ媒体(10)である。
【0006】
請求項3の発明は、請求項2に記載のセキュリティ媒体(10)において、前記コードパターンは、基材情報及び/又は金種情報であることを特徴とするセキュリティ媒体(10)である。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体(10)において、前記アモルファス強磁性体層(31)は、前記シート状基材(20)の周縁部の一部又は全部に形成されていることを特徴とするセキュリティ媒体(10)である。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体(10)において、前記アモルファス強磁性体層(31)は、500〜5000Åの厚みの薄膜であることを特徴とするセキュリティ媒体(10)である。
【0009】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体(10)において、前記アモルファス強磁性体層(31)の上にホログラムを形成するホログラム形成層(32)を備えることを特徴とするセキュリティ媒体(10)である。
【0010】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体(10)において、前記アモルファス強磁性体層(31)を隠蔽する着色層(33)を備えることを特徴とするセキュリティ媒体(10)である。
【0011】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の複数枚のセキュリティ媒体(10)を束ね、前記アモルファス強磁性体層(31)の所望の情報及び/又はコードパターンを前記セキュリティ媒体の側面から読み出す読取手段(41)を備えることを特徴とするセキュリティ媒体読取装置(40)である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
(1)シート状基材は、その片面にアモルファス強磁性体層を備えているので、特定の磁化特性により所望の情報を記憶させることができ、セキュリティ媒体の偽造を防止することができる。
(2)アモルファス強磁性体層は、コードパターンが形成されているので、セキュリティ媒体を、用途に合わせて多彩に活用することができる。
(3)コードパターンは、基材情報及び/又は金種情報を記録するので、高いセキュリティ性を必要とする紙幣などの金券に利用することができる。
(4)アモルファス強磁性体層は、シート状基材の周縁部の一部又は全部に形成されているので、所望の情報及び/又はコードパターンの情報をシート状基材の側面から読み取ることができる。
(5)アモルファス強磁性体層は、500〜5000Åの厚みの薄膜であるので、所望の情報及び/又はコードパターンを最適に読み取ることができる。
(6)アモルファス強磁性体層の上にホログラム形成層を備えているので、セキュリティ媒体は、目視による真贋判定を行なうことができ、セキュリティ性を向上させることができる。
(7)セキュリティ媒体は、着色層を備えているので、アモルファス強磁性体層を隠蔽することができる。
(8)セキュリティ媒体読取装置は、セキュリティ媒体を複数枚束ね、その側面を読み出す読取手段を備えているので、効率よく複数枚のセキュリティ媒体の情報を読み取り、効率よく真贋判定をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、セキュリティ性が高く、真贋判定を容易に効率よく実施できるセキュリティ媒体及びセキュリティ媒体読取装置を提供するという目的を、シート状基材の周縁部にアモルファス強磁性体層を設けることにより実現する。
【実施例】
【0014】
以下、図面等を参照して、本発明の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による実施例のセキュリティ媒体を示す模式図であり、図1(A)は、平面図、図1(B)は、側面図、図1(C)は、図1(B)のA部の詳細図である。また、図2は、セキュリティ媒体及びそれを読み取る磁気ヘッドを示す図であり、図3は、アモルファス合金材及びフェライト材のB−H磁化特性曲線を示す図である。
セキュリティ媒体10は、図1に示すように、シート状基材20の表面に、転写体30を備えている偽造防止機能を有した商品券(○○デパート券、¥5,000)である。
シート状基材20は、上質紙で形成されたセキュリティ媒体10の基材である。
【0015】
転写体30は、アモルファス強磁性体層31、ホログラム形成層32、着色層33、接着層34及び剥離保護層35を備え、シート状基材20の表面に熱転写により形成された層の集合体であり、シート状基材20の長辺部に転写体30−1を、短辺部に転写体30−2を備えている。なお、必要に応じて、長辺部の転写体30−1と関連する部位は、各部位番号の末尾に統一した符号(−1)を付して、また、短辺部の転写体30−2と関する部位は、符号(−2)を付して説明を適宜省略する。例えば、長辺部のアモルファス強磁性体層31は、アモルファス強磁性体層31−1と必要に応じて標記する。
【0016】
アモルファス強磁性体層31は、アモルファス合金材により形成され、真贋判定などに用いる情報を磁気データにして記憶する薄膜層である。アモルファス強磁性体層31の膜厚は、500〜5000Åが好ましく、1500〜3000Åがさらに好ましい。この範囲外であると、磁気の出力不足や転写性及び耐擦性の低下などの問題が発生する。本実施例では、膜厚1500Åの薄膜層を使用している。また、アモルファス強磁性体層31は、図1(C)に示すように、デメタライズ法などによりコードパターンが形成されており、アモルファス強磁性体層31−1のコードパターンにはセキュリティ媒体10の商品券の種類(○○デパート券)の情報を記録し、アモルファス強磁性体層31−2には商品券の金額(¥5,000)の情報が記録されている。
【0017】
アモルファス強磁性体層31に用いられるアモルファス合金材は、加熱、切断などにより、透磁率や飽和磁化特性が変化する性質を有した磁性材料である。また、図3に示すように、磁性材として一般的なフェライト材の磁化特性と比較すると、フェライト材がS字型のヒステリシス曲線(Fe)を示すのに対し、アモルファス合金材は矩形のようなヒステリシス(Am)を示し、低強度の振動磁界により急峻に磁化反転を繰り返す性質(大バルクハウゼン現象)も有している。これらの性質を用いて、アモルファス強磁性体層31に、真贋判定などに用いる情報を記憶し、また、読み出すことができる。更に、アモルファス合金材は、配合する材料を変化させることにより、性質を変更することができる。本実施例では、一般市場の入手が困難である材料を配合し、アモルファス強磁性体層31の形成においても特殊な装置を必要とさせることにより、偽造防止の効果を高めている。
【0018】
ホログラム形成層32は、図1に示すように、レーザ光線を使用して立体画像32Aを記録した層であり、光を当てることにより、立体画像32Aを再生することができ、目視による真贋判定を可能にしている。
着色層33は、アモルファス強磁性体層31を外部から隠蔽するための印刷層であり、図1(A)に示すように、転写体30のホログラム形成層32の立体画像32A−1、32A−2以外の領域を着色層33により隠蔽している。
接着層34は、加熱することにより溶融するヒートシール層であり、転写体30をシート状基材20と貼り合せる。
剥離保護層35は、転写体30の表面を保護する層である。また、転写体30がシート状基材20に転写される前には、剥離保護層35の表面に樹脂基材(図示せず)が貼り付けられており、転写時にその樹脂基材を介して転写体30を加熱してシート状基材20に熱転写し、転写後に樹脂基材を剥離し、剥離保護層35が転写体30の表面を保護する。
【0019】
磁気ヘッド40は、図2に示すように、検出コイル部41、励磁コイル部42、制御部43及び表示部44を備えており、アモルファス強磁性体層31の磁気データ及びパターンコードを読み取る検出器である(セキュリティ媒体読取装置)。
検出コイル部41は、アモルファス強磁性体層31から発生する磁束の変化を検出するソレノイドコイル41−Aと、その検出データを増幅して出力する増幅器41−Bとを備えている(読取手段)。
励磁コイル部42は、アモルファス強磁性体層31に交番励磁磁界を印加するソレノイドコイル42−Aと、ソレノイドコイル42−Aに交番励磁磁界を発生させる交番励磁電流を流すアンプ42−Bとを備えている。
【0020】
制御部43は、励磁コイル部42のソレノイドコイル42−Aに所定の交番励磁電流を流すための指令信号をアンプ42−Bに出力し、アモルファス強磁性体層31から発生する磁束の変化を検出した検出コイル部41のソレノイドコイル41−Aの検出結果を増幅器41−Bを介して入力する磁気ヘッド全体を統括制御する制御回路である。
表示部44は、検出コイル部41により検出した結果を、制御部43を介して表示する表示モニタである。
【0021】
続いて、本実施例の磁気ヘッドによるセキュリティ媒体の読込方法について説明する。図4は、励磁コイル部及び検出コイル部の励磁及び検出データの一例を示す図である。図4(A)は、励磁コイル部により発生する交番励磁磁界の時系列データを示す図であり、図4(B)は、交番励磁磁界によるアモルファス強磁性体層の磁束の変化を検出コイル部により検出した検出結果の時系列データを示す図である。
複数枚のセキュリティ媒体10を、図2に示すように、転写体30の向きを一定にして束ねる。磁気ヘッド40の制御部43は、電源が投入されると、励磁コイル部42のソレノイドコイル42−Aにアンプ42−Bを介して高調波の交番励磁電流を流し、図4(A)に示すように、ソレノイドコイル42−Aに図3に示す限界磁界(Hp、−Hp)を超える交番励磁磁界を発生させる。
【0022】
続いて、セキュリティ媒体10の長辺部のアモルファス強磁性体層31−1の側面に磁気ヘッド40を近づけて、限界磁界(Hp、−Hp)を超える交番励磁磁界により大バルクハウゼン現象を起こさせ、アモルファス強磁性体層31−1から発生する磁束の変化を、図4(B)に示すように、検出コイル部41のソレノイドコイル41−Aに検出させる。制御部43は、検出した結果を増幅器41−Bを介して入力し、表示部44に表示する。
磁気ヘッド40を図2の矢印Bの方向へ移動させることにより、複数枚のセキュリティ媒体10のアモルファス強磁性体層31−1を順次検出して、検出結果を検出した順番で表示部44に表示する。同様にして、短辺部のアモルファス強磁性体層31−2についても検出し、検出結果を表示する。検出されたデータは、アモルファス強磁性体層31に記録された真贋情報及び商品券の情報であり、仮に偽造されたセキュリティ媒体が混入していた場合は、その媒体の検出結果の表示は空欄となり、偽物であることを即座に判明させることができる。また、励磁コイル部42のソレノイドコイル42−Aに流す励磁電流を大きくすることにより、非接触(最大約10mm)でアモルファス強磁性体層31の磁束を検出することができる。
【0023】
以上より、本実施例のセキュリティ媒体又はそれを読み取る磁気ヘッドには以下のような効果がある。
(1)シート状基材20は、その片面にアモルファス強磁性体層31を備えているので、特定の磁化特性により真贋判定の情報を記憶させることができ、セキュリティ媒体10の偽造を防止することができる。
(2)アモルファス強磁性体層31は、コードパターンが形成されているので、セキュリティ媒体10の商品券情報(○○デパート券、¥5,000)を記録させることができる。
(3)アモルファス強磁性体層31は、シート状基材20の周縁部の一部又は全部に形成されているので、真贋判定の情報及びコードパターンの情報をシート状基材20の側面から読み取ることができる。
(4)アモルファス強磁性体層31は、1500Åの厚みの薄膜であるので、所望の情報及び/又はコードパターンを最適に読み取ることができる。
(5)アモルファス強磁性体層31の上にホログラム形成層32を備えているので、セキュリティ媒体10は、目視による真贋判定をすることができ、セキュリティ性を向上させることができる。
(6)セキュリティ媒体10は、着色層33を備えているので、アモルファス強磁性体層31を隠蔽することができる。
(7)磁気ヘッド40は、セキュリティ媒体10を複数枚束ね、その側面を読み出す検出コイル部41を備えているので、複数枚のセキュリティ媒体10の情報を読み取り、効率よく真贋判定をすることができる。
【0024】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)実施例では、転写体30は、シート状基材20の長辺部及び短辺部の2辺に設けられたが、それ以外の場所に設けてもよい。例えば、記録するデータに応じて、シート状基材20の周縁部全てに設けることも可能である。
(2)実施例では、転写体30は、ホログラム形成層32及び着色層33を備えていたが、必要に応じて、両者又はどちらか一方を備えなくてもよい。
(3)実施例では、ホログラム形成層32は、転写体30に形成されたが、それ以外の場所に形成してもよい。例えば、シート状基材20上の転写体30以外の場所に形成することも可能である。
(4)実施例では、磁気ヘッド40はセキュリティ媒体10を1枚ずつ読み取ったが、それ以外の方法で読み取ってもよい。例えば、磁気ヘッドに検出コイル部41及び励磁コイル部42を複数台設けて、複数枚のセキュリティ媒体10を同時に読み込ませることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による実施例のセキュリティ媒体を示す模式図である。
【図2】本発明による実施例のセキュリティ媒体及びそれを読み取る磁気ヘッドを示す図である。
【図3】アモルファス合金材及びフェライト材のB−H磁化特性曲線を示す図である。
【図4】本発明による実施例の励磁コイル部及び検出コイル部の励磁及び検出データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
10 セキュリティ媒体
20 シート状基材
30 転写体
31 アモルファス強磁性体層
32 ホログラム形成層
33 着色層
40 磁気ヘッド
41 検出コイル部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材と、
前記シート状基材の少なくとも片面に形成され、特定の磁化特性を有し、所望の情報を磁気により記憶するアモルファス強磁性体層と、
を備えるセキュリティ媒体。
【請求項2】
請求項1に記載のセキュリティ媒体において、
前記アモルファス強磁性体層は、コードパターンが形成されていること、
を特徴とするセキュリティ媒体。
【請求項3】
請求項2に記載のセキュリティ媒体において、
前記コードパターンは、基材情報及び/又は金種情報であること、
を特徴とするセキュリティ媒体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体において、
前記アモルファス強磁性体層は、前記シート状基材の周縁部の一部又は全部に形成されていること、
を特徴とするセキュリティ媒体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体において、
前記アモルファス強磁性体層は、500〜5000Åの厚みの薄膜であること、
を特徴とするセキュリティ媒体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体において、
前記アモルファス強磁性体層の上にホログラムを形成するホログラム形成層を備えること、
を特徴とするセキュリティ媒体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のセキュリティ媒体において、
前記アモルファス強磁性体層を隠蔽する着色層を備えること、
を特徴とするセキュリティ媒体。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の複数枚のセキュリティ媒体を束ね、前記アモルファス強磁性体層の所望の情報及び/又はコードパターンを前記セキュリティ媒体の側面から読み出す読取手段を備えること、
を特徴とするセキュリティ媒体読取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−299245(P2007−299245A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127249(P2006−127249)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】