説明

セキュリティ構造

【課題】所定の工具を用いて連結ピンを裏側から不正に破壊する行為が行われた場合に、その痕跡を容易に目視確認することができる。
【解決手段】分離不能に連結された上ケース20と下ケース30に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造であって、上ケース20の表側から行われる押し込み操作に応じて、上ケース20及び下ケース30に形成された孔部を貫通するとともに、下ケース30に裏側から係合することによって上ケース20と下ケース30を連結する連結ピン40を備え、この連結ピン40は、下ケース30に係合された状態で各孔部内を回転可能に形成されるとともに、外部から加わる回転力による連結ピン40の回転位置変動を、上ケース20の表側から目視確認可能とする指針部45を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機の基板ケースなどに適用されるセキュリティ構造に関し、特に、連結ピンを用いて分離不能に連結された二つの部材に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットマシン、パチンコなどの遊技機では、遊技機の動作を制御するIC、ROMなどの電子部品を実装した制御基板が備えられている。
近年、この種の遊技機の制御基板は、不正行為者によるROMなどの交換や改造、不正部品の追加、接続など、悪質な不正行為の標的となっており、その被害は深刻なものとなっている。
【0003】
このような遊技機の制御基板に対する不正行為を排除する手段として、従来から、制御基板全体を所定の基板ケース内に収納し、この基板ケースを開放不能に封印固定した状態で遊技機側に取り付けるという対策が講じられてきた。
そして、遊技機の制御基板を収納した基板ケースを開放不能に封印固定する方法としては、連結ピンを用いて二つの部材を分離不能に連結する連結構造が広く用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、上ケース及び下ケースで構成される基板ケースを連結ピンで開放不能に封印固定する場合、連結ピンは、上ケースの表側から行われる押し込み操作に応じて、上ケース及び下ケースに形成された孔部を貫通するとともに、下ケースに裏側から係合することによって上ケースと下ケースを連結する。
そして、連結ピンと下ケースの係合部分をケース外部から触ることができないようにしておけば、上ケースと下ケースが分離不能に連結されるので、基板ケースの一部(以下、開封部という。)を切断又は破壊しない限り、基板ケースを開放することが困難になる。
【0005】
このような基板ケースの封印固定方法によれば、基板ケースの開放時に開封部の切断や破壊が要求され、この切断跡や破壊跡が開放の痕跡として残るので、不正な開放の隠蔽が困難になるとともに、不正行為が行われても、切断跡や破壊跡などの痕跡の確認により、その事実を発見することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−65792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような連結ピンを用いる基板ケースの封印固定方法では、所定の工具(例えば、ドリル)など用いて下ケースの裏側に孔を開け、さらに、工具の先端を押し進めて連結ピンの係合部分を破壊するという不正な破壊行為が行われた場合、基板ケースの開封部に切断跡や破壊跡を残すことなく、基板ケースを不正に開放することが可能となってしまう。
【0008】
また、このような不正を行う不正行為者は、通常、制御基板の不正改造を行った後、制御基板を元通りに基板ケースに収めるとともに、開放の痕跡が残らないように偽装工作を行う。
例えば、連結ピンの押し込み孔に接着剤を垂らし、あたかも連結ピンで上ケースと下ケースが連結されているかのように見せる偽装工作や、破壊した連結ピンを別の連結ピン(例えば、偽造された連結ピン)に交換して再度封印する偽装工作が行われるので、不正行為の発見がさらに困難になるという問題があった。
【0009】
なお、特許文献1には、赤外線レーザの照射により各種の色に発色する燐光性粉末を連結ピンに施すことにより、不正行為に伴う連結ピンの交換や移し替えを判定可能にする技術が開示されている。
しかしながら、上記の技術では、不正の確認作業に際し、遊技機毎に基板ケースに対して赤外線レーザを照射する必要があるので、確認作業に多くの手間がかかり、実用的ではない。また、燐光性粉末は、比較的簡単に入手できるので、連結ピンが偽造される可能性もある。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、所定の工具を用いて連結ピンを裏側から不正に破壊する行為が行われた場合に、その痕跡を容易に目視確認(識別)することができるセキュリティ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明のセキュリティ構造は、分離不能に連結された二つの部材に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造であって、一方の前記部材側から行われる押し込み操作に応じて、一方の前記部材及び他方の前記部材に形成された孔部を貫通するとともに、他方の前記部材に係合することによって二つの前記部材を連結する連結ピンを備え、前記連結ピンは、前記他方の部材に係合された状態で前記各孔部内を回転可能に形成されるとともに、外力による回転位置変動を目視確認可能とする指針部を備える構成としてある。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、連結ピンを用いて二つの部材を分離不能に連結する連結構造において、外部から連結ピンに回転力が加えられた場合に、その痕跡を容易に目視確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの斜視図である。
【図3】(a)は、封印状態の封印固定部を示す平面図、(b)は、封印状態の封印固定部を示す断面図である。
【図4】(a)は、不正破壊行為が行われる前の状態を示す封印固定部の要部概略平面図、(b)は、不正破壊行為が行われる前の状態を示す封印固定部の要部概略断面図、(c)は、不正破壊行為が行われた後の状態を示す封印固定部の要部概略平面図、(d)は、不正破壊行為が行われた後の状態を示す封印固定部の要部概略断面図である。
【図5】不正破壊行為が行われる前の状態を示す封印固定部のA−A概略断面図である。
【図6】(a)は、触診棒による触診方法を示す要部概略断面図、(b)は、触診用係合部の他例を示す要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの分解斜視図、図2は、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの斜視図、図3の(a)は、封印状態の封印固定部を示す平面図、図3の(b)は、封印状態の封印固定部を示す断面図である。
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケース10は、互に開閉可能に嵌合する上ケース20及び下ケース30を備えて構成されている。
【0015】
上ケース20及び下ケース30は、互に開閉可能に嵌合して遊技機用制御基板(図示せず)の収納ケースを構成するようになっており、全体が透明プラスチックからなる筐体構造となっている。
上ケース20には、内部に収納された制御基板に外部から配線などが接続可能な配線口20aが複数設けられるとともに、制御基板から発生する熱を放熱するための放熱孔20bが多数形成されている。
また、上ケース20には、下ケース30のヒンジ部(図示せず)と回動自在に係合するヒンジ部(図示せず)が設けられている。
【0016】
下ケース30には、ケース開口に沿って薄板状のガイド部30aが突設してあり、このガイド部30aが上ケース20の開口内周に係合して、上ケース20と下ケース30が一体的に嵌合するようになっている。
また、下ケース30には、上ケース20のヒンジ部と回動自在に係合するヒンジ部が設けられ、このヒンジ部によって、上ケース20と下ケース30が開閉自在に組み立てられるようになっている。
【0017】
そして、この上ケース20及び下ケース30の開閉側(ヒンジ部と反対側の端部)には、互に上下に重合するように複数の封印固定部21、31(A、F)が突出形成され、これらの封印固定部21、31同士が、連結ピン40を介して分離不能に連結されるようになっている。
【0018】
また、上ケース20には、ケース側面側にも、複数の封印固定部21(B〜E)が形成されている。
このケース側面側の封印固定部21は、制御基板ケース10が図示しない遊技機側に取り付けられた場合に、遊技機側に備えられる封印固定部(図示せず)と対応する位置に形成されており、これらの封印固定部同士を連結ピン40を用いて連結させることで、制御基板ケース10と遊技機とを分離不能に連結固定することができる。
以下、本実施形態に係る制御基板ケース10の連結構造について説明する。
【0019】
本実施形態に係る制御基板ケース10の連結構造では、上ケース20及び下ケース30に形成される封印固定部21、31同士が互に連結されるとともに、開封時に開封部の切断を要求し、この切断跡が開封の痕跡として残るように構成されている。
上ケース20は、第一封印手段及び第二封印手段を備えている。第一封印手段は、封印固定部21、31同士の連結部を封印し、第二封印手段は、第一封印手段の開封部を封印するようになっている。
【0020】
具体的に説明すると、本実施形態の第一封印手段は、上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31同士を分離不能に連結する連結ピン40と、上ケース20と封印固定部21を結合する開封部22とを備えており、開封時に、開封部22の切断を要求するように構成されている。
【0021】
開封部22は、意識的に切断を容易にした部分で、ここを切断することにより、封印固定部21が上ケース20から分離され、制御基板ケース10の開閉が可能になる。開封部22の切断跡は、開封の痕跡として残り、これを確認することで開封の有無が判定される。
【0022】
本実施形態では、封印固定部21が、二つの開封部22を介して上ケース20に結合されている。
これにより、第一封印手段の開封に際し、一つの封印固定部21につき、二つの開封部22を切断することが要求され、痕跡を残さない開封や、痕跡の隠蔽が更に困難になる。
【0023】
連結ピン40は、押し込み操作される頭部41と、この頭部41に一体的に連続する軸部42と、この軸部42の先端外周部に一体的に形成される係合爪部43とを有する樹脂製のもので、係合爪部43は、先端側ほど細くなるテーパー形状になっている。
また、軸部42(係合爪部43)には、先端部から基端部にわたって切り込み状の溝部44が形成されている。そのため、側方から押圧力を受けたとき、弾性変形によって係合爪部43の径が縮小するようになっている。
【0024】
上ケース20の封印固定部21は、上下方向を向く円筒形状に形成され、その内側に、連結ピン40の頭部41よりも僅かに径寸法が大きい丸孔21aを有している。丸孔21aの下側には、壁部21bを有しており、ここに挿通孔21cが形成されている。
挿通孔21cの径寸法は、連結ピン40の頭部41よりも小さく、軸部42よりも僅かに大きく、また、係合爪部43よりも僅かに小さく設定されている。
【0025】
下ケース30の封印固定部31も、上下方向を向く円筒形状に形成され、その内側に丸孔31aを有している。丸孔31aの下側には、壁部31bを有しており、ここに係止孔31cが形成されている。
係止孔31cの径寸法は、連結ピン40の軸部42よりも僅かに大きく、また、係合爪部43よりも僅かに小さく設定されている。
【0026】
そして、上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31が重合した状態で、上ケース20の封印固定部21(丸孔21a)に連結ピン40を押し込むと、先端部のテーパーガイドにより係合爪部43が縮径状態で挿通孔21c及び係止孔31cを通過する。このとき、頭部41は、挿通孔21cの通過が規制され、また、係合爪部43は、係止孔31cを通過後、弾性復元して下ケース30の封印固定部31に裏側から係合する。
これにより、上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31が連結ピン40を介して一体的に連結固定される。
【0027】
また、丸孔21aの径寸法は、連結ピン40の頭部41よりも僅かに大きく、挿通孔21cと係止孔31cの径寸法は、連結ピン40の軸部42よりも僅かに大きく形成されている。さらに、係合爪部43は、下ケース30の封印固定部31に裏側からのみ係合するように形成されている。すなわち、連結ピン40は、封印固定部21、31が連結した係合状態において外部から連結ピン40に回転力を加えると、回転するように形成されている。
【0028】
なお、本実施形態では、型成形が容易なことから、封印固定部31の丸孔31aが貫通状に形成されている。この場合、丸孔31aの裏側開口部から連結ピン40の係合爪部43を操作し、連結ピン40の連結を解除することが可能となってしまうので、封印固定部31の裏側に裏蓋50を接着し、丸孔31aの裏側開口部を覆蓋している。この裏蓋50は、隣接する封印固定部31(A,F)の裏側開口部に嵌入される一対の凸部51と、これを連結する連結部52とを備えるように樹脂で形成されている。
【0029】
本実施形態の第二封印手段は、第一封印手段の開封部22を表側から覆う封印カバー60を備えており、開封時に、封印カバー60の除去を要求するように構成されている。
つまり、封印カバー60は、第一封印手段の開封部22を表側から覆うカバー部61と、上ケース20に対して固定される左右一対の固定部62と、この固定部62とカバー部61とを結合する左右一対の開封部63とを備えるように樹脂で形成されている。
【0030】
開封部63は、意識的に切断を容易にした部分で、ここを切断することにより、カバー部61が固定部62から分離され、カバー部61を除去することが可能になる。
そして、カバー部61を除去すると、第一封印手段の開封部22が露呈し、その開封操作が可能になるとともに、固定部62及び開封部63の一部が上ケース20側に残り、カバー部61を除去したことが強調される。
これにより、開封の痕跡が更に明確になり、開封の判別を確実かつ容易に行うことができる。
【0031】
固定部62は、上ケース20に突出形成されるカバー取付部23に対して、裏側からネジ70を用いて固定されるようになっている。また、接着を併用すれば、その固定を強固にすることができる。
また、カバー取付部23の下面及びネジ70の頭部は、制御基板ケース10が閉じられたとき、下ケース30に突出形成される固定具カバー32によって覆われるようになっている。
これにより、裏側からネジ70を操作して封印カバー60を取り外すという不正行為が困難になる。
【0032】
カバー部61は、第一封印手段の開封部22を覆うばかりでなく、封印固定部21の表側開口部も覆うように形成されている。
これにより、連結ピン40の不正な取り外し行為が封印カバー60によって阻止されることになる。
また、カバー部61は、封印固定部21の対応位置に、連結ピン40の押し込み操作具が通過可能で、かつ、連結ピン40が通過不能な押し込み孔61aを有している。
これにより、連結ピン40を押し込み操作する以前、すなわち、制御基板ケース10を閉じる以前に、封印カバー60を上ケース20のカバー取付部23に取り付けて、カバー取付部23の下面及びネジ70の頭部を下ケース30の固定具カバー32で覆うことが可能になる。
【0033】
次に、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造について、図4〜図6を参照して説明する。
図4の(a)は、不正破壊行為が行われる前の状態を示す封印固定部の要部概略平面図、(b)は、不正破壊行為が行われる前の状態を示す封印固定部の要部概略断面図、(c)は、不正破壊行為が行われた後の状態を示す封印固定部の要部概略平面図、(d)は、不正破壊行為が行われた後の状態を示す封印固定部の要部概略断面図、図5は、図4の(a)における不正破壊行為が行われる前の状態を示す封印固定部のA−A概略断面図、図6の(a)は、触診棒による触診方法を示す要部概略断面図、(b)は、触診用係合部の他例を示す要部概略断面図である。
これらの図に示すように、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造は、上述した制御基板ケース10の第一封印手段に適用されている。
【0034】
図4に示すように、制御基板ケース10の第一封印手段では、回転力の作用により孔を開ける所定の工具D(例えば、錐、ドリルなど)を用いて下ケース30(裏蓋50)の裏側に孔を開け、さらに、工具Dの刃を押し進めて連結ピン40の係合爪部43を破壊するという不正な破壊行為が行われた場合、開封部22、63に切断跡や破壊跡を残すことなく、制御基板ケース10を不正に開放することが可能となってしまう。
【0035】
また、このような不正を行う不正行為者は、通常、制御基板の不正改造を行った後、制御基板を元通りに制御基板ケース10に収めるとともに、開放の痕跡が残らないように偽装工作を行う。
例えば、連結ピン40の押し込み孔61aに接着剤を垂らし、あたかも連結ピン40で上ケース20と下ケース30が連結されているかのように見せる偽装工作や、破壊した連結ピン40を別の連結ピン(例えば、偽造された連結ピン)に交換して再度封印する偽装工作が行われると、不正行為の発見がさらに困難になる。
【0036】
そこで、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造は、連結ピン40を裏側から不正に破壊する行為が行われた場合に、その痕跡を容易に目視確認可能とする機能を有している。
具体的には、前記不正破壊行為に伴う外部からの回転力(外力)が連結ピン40に加わると、連結ピン40の回転位置変動を上ケース20の表側から目視確認可能とする指針部45を連結ピン40の頭部41に備えている。
つまり、工具Dを用いて連結ピン40を裏側から不正に破壊する行為が行われた場合に、工具Dの回転に伴って連結ピン40の回転位置が変動することに着目し、この回転位置変動を指針部45で目視可能に明示することによって、前記不正破壊行為の有無を容易に判定できるようにしてある。
【0037】
指針部45は、連結ピン40の回転位置変動を目視可能に示すものであれば、形状などは任意に設定可能であるが、頭部41の上面の中心を通る直径線45aを備えることが好ましい。
このようにすると、頭部41の上面の中心を通る直径線45aの角度変化にもとづいて、連結ピン40の回転位置変動を明確に示すことができる。
すなわち、封印固定部21、31の連結固定時における、直径線45aの初期角度(位置)を予め規定しておき(例えば、図4の(a)に示すように、直径線45aが制御基板ケース10に対して平行になるように連結ピン40の初期の回転位置を規定)、直径線45aがその角度と異なる角度になったならば、連結ピン40に回転力を加える前記不正破壊行為が行われたものと判定できる。つまり、連結ピン40の回転位置変動は、封印固定部21、31の連結が解除された痕跡となる。
なお、この場合の連結ピン40は、挿通孔21cと係止孔31c内において回転可能に形成されているものの、下ケース30の封印固定部31裏側との係合による引張力を受けることで、僅かに加わる回転力(外力)に対して回転不能な程度に仮止めされていることが好ましい。
【0038】
また、指針部45は、直径線45aで区切られた頭部41の上面の二つの領域であって、異なる色(例えば、青色と赤色)で着色された二つの着色部45b、45cを備えることが好ましい。
このようにすると、着色部45b、45cによって直径線45aの角度変化を明確に示すことができるので、連結ピン40の回転位置変動を容易に確認することができる。
【0039】
さらに、本実施形態のセキュリティ構造は、回転位置規定部Kを備えている。この回転位置規定部Kは、押し込み操作に際して連結ピン40の回転位置を規定するとともに、前記不正破壊行為による連結ピン40の回転位置変動に応じて破損するように構成されている。
このような回転位置規定部Kによれば、連結ピン40の初期の回転位置を定めることができるので、前記不正破壊行為に伴う連結ピン40の回転位置変動をより簡単に判定することが可能になる。
【0040】
例えば、本実施形態の回転位置規定部Kは、図4の(a)に示すように、指針部45の直径線45aが制御基板ケース10に対して平行になるように連結ピン40の初期の回転位置を規定しているので、図4の(c)に示すように、指針部45の直径線45aが制御基板ケース10に対して傾いていることにもとづいて、前記不正破壊行為に伴う連結ピン40の回転位置変動を簡単に判定することが可能になる。
【0041】
本実施形態の回転位置規定部Kは、上ケース20の丸孔21aの内周部に形成される凸部21dと、連結ピン40の頭部41の外周部に形成され、所定の回転位置で凸部21dに係合する凹部41aとを備えて構成されている。
そして、凸部21dは、前記不正破壊行為による連結ピン40の回転位置変動に応じて折損するように強度設定がなされている。
このようにすると、凸部21dと凹部41aを追加する程度の簡単な変更で回転位置規定部Kを構成することができる。
【0042】
凸部21dは、上ケース20の表側から目視確認可能な位置に形成することが好ましい。より好ましくは、凸部21dを、その周辺とは異なる色(例えば、黄色)で着色する。
このようにすると、凸部21dが折損しているか否かを目視確認することでも、前記不正破壊行為の有無を判定することが可能になる。
しかも、本実施形態では、凸部21dを上ケース20側に形成しているので、制御基板の不正改造後に、偽造された連結ピンで再度封印固定しても、凸部21dの消失にもとづいて、不正行為を判定することができる。
【0043】
さらに、本実施形態の連結ピン40は、当該連結ピン40が動くか否かを触診する触診棒Sの先端と係合する触診用係合部46を備えている。触診用係合部46は、例えば、図6の(a)に示すように、頭部41の上面に形成される凹部であってもよいし、図6の(b)に示すように、頭部41の上面に形成される凸部であってもよい。
このようにすると、制御基板の不正改造後に連結ピン40に対して偽装工作が行われた場合に、押し込み孔61aから触診棒Sを差し込み、触診によって連結ピン40に対する偽装工作を判定することができる。
【0044】
具体的には、押し込み孔61aから触診棒Sを差し込み、触診棒Sの先端を触診用係合部46に引っ掛け、連結ピン40が動く(ガタついたり、回転する)か否かを診断し、まったく動かないときは、不正改造後に接着剤を用いた偽装工作が行われたと判定することができる。
逆に、連結ピン40が回転方向に自由に動く場合は、凸部21dが折損しているので、不正改造後に偽造連結ピンなどで再封印する偽装工作が行われたと判定することができる。
【0045】
次に、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造の作用について、図4〜図6を参照して説明する。
上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31が重合した状態で、上ケース20の封印固定部21に連結ピン40を押し込むと、先端部のテーパーガイドにより係合爪部43が縮径状態で挿通孔21c及び係止孔31cを通過する。このとき、頭部41は、挿通孔21cの通過が規制され、また、係合爪部43は、係止孔31cを通過後、弾性復元して下ケース30の封印固定部31に裏側から係合する。
これにより、上ケース20及び下ケース30の封印固定部21、31が連結ピン40を介して一体的に封印固定される。
また、この係合状態にある連結ピン40は、回転位置規定部Kによる回転規制を除き、外部からの回転力に対して回転可能に形成されている。
【0046】
また、連結ピン40の押し込み操作に際しては、回転位置規定部Kによって連結ピン40の回転位置が規定される。つまり、上ケース20側に形成される凸部21dと、連結ピン40側に形成される凹部41aが係合するように押し込み操作を行う。
これにより、連結ピン40の頭部41が備える指針部45の直径線45aは、図4の(a)に示すように、制御基板ケース10と平行な方向を向く状態となる。
【0047】
不正行為者は、回転力の作用により孔を開ける工具Dを用いて下ケース30(裏蓋50)の裏側に孔を開け、さらに、工具Dの刃を押し進めて連結ピン40の係合爪部43を破壊する。このとき、工具Dの回転力が連結ピン40に加わると凸部21dが折損し、連結ピン40の回転が許容される。
これにより、例えば、図4の(c)に示すように、指針部45の直径線45aが制御基板ケース10に対して傾いた状態となる。
【0048】
不正行為者は、連結ピン40の係合爪部43を破壊した後、制御基板ケース10を開放し、制御基板上のROMを不正なROMに入れ替えた後、制御基板ケース10を元のように閉じるとともに、破壊した連結ピン40を巧妙に押し込み位置に戻す。その後、連結ピン40の押し込み孔61aに接着剤を垂らし、あたかも連結ピン40で上ケース20と下ケース30が連結されているかのように見せる偽装工作を行う。
【0049】
ホール責任者は、これらの不正行為を素早く見つけるために、機会あるごとに、遊技機毎に連結ピン40の指針部45を見ながら、指針部45の直径線45aが所定の回転位置(初期角度)にあるかどうかを目視確認し、不正行為の有無を判定する。
そして、図4の(c)に示すように、連結ピン40に回転位置変動があるときは、不正行為があったものと判断する。
【0050】
目視確認で確信がもてないときは、押し込み孔61aから触診棒Sを差し込み、触診棒Sの先端を触診用係合部46に引っ掛け、連結ピン40が動くか否かを診断する。ここで、連結ピン40がまったく動かないときは、不正改造後に接着剤を用いた偽装工作が行われたと判定することができる。
【0051】
また、不正行為後に、偽造の連結ピンを使用して再封印(連結)されている場合は、凸部21dが折損しているので、凸部21dの目視確認により不正行為の有無を判定することができる。また、凸部21dが折損していると、連結ピン40が回転方向に自由に動くので、触診棒Sによる診断も可能となる。
【0052】
以上のように構成された本実施形態によれば、分離不能に連結された上ケース20と下ケース30に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造であって、上ケース20の表側から行われる押し込み操作に応じて、上ケース20及び下ケース30に形成された孔部を貫通するとともに、下ケース30に裏側から係合することによって上ケース20と下ケース30を連結する連結ピン40を備え、この連結ピン40は、係合状態において各孔部内を回転可能に形成されるとともに、不正破壊行為に伴う外部から加わる回転力(外力)による連結ピン40の回転位置変動を、上ケース20の表側から目視確認可能とする指針部45を備えるので、回転力の作用により孔を開ける工具などを用いて連結ピン40を裏側から不正に破壊する行為が行われた場合に、その連結ピン40の回転位置変動が連結解除の痕跡となるため、容易に不正行為を発見することができる。
【0053】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、回転位置規定部を構成する凸部を連結ピン側に形成し、これに係合する凹部を上ケース側に形成してもよい。
また、連結ピンの回転位置の保持は、凹凸係合によらず、連結ピンの頭部外周と上ケース20の間に生じる摩擦抵抗などで行うようにしてもよい。
【0054】
また、本発明のセキュリティ構造は、本実施形態のように、所定の基板を収納する上ケース20と下ケース30を分離不能に連結する連結構造だけでなく、例えば、孔部を有する所定の基板を、孔部を有する所定の固定部材に連結ピンを介して直接固定する連結構造にも適用可能である。つまり、本発明のセキュリティ構造は、連結ピンを介して二つの部材を分離不能に連結する連結構造であれば、全てに適用できる。
【0055】
また、このような連結構造は、遊技機に限らず、遊技場に設置される遊技媒体を計数する計数機、遊技媒体を貸し出す玉貸し機などその他の遊技場装置にも多く採用されていることから、これらの遊技場装置に内蔵されている基板を、装置内の固定部材に連結ピンを介して分離不能(取り外し不能)に連結(固定)する連結構造にも、本発明のセキュリティ構造を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、二つの部材を分離不能に連結する連結構造に適用される。特に、高いセキュリティが要求される遊技機、計数機、玉貸機などの制御基板ケースの封印固定や基板の固定に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 制御基板ケース
20 上ケース
21d 凸部
30 下ケース
40 連結ピン
41 頭部
41a 凹部
42 軸部
43 係合爪部
45 指針部
45a 直径線
45b、45c 着色部
46 触診用係合部
60 封印カバー
D 工具
K 回転位置規定部
S 触診棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離不能に連結された二つの部材に対する連結解除の痕跡を識別可能に残すセキュリティ構造であって、
一方の前記部材側から行われる押し込み操作に応じて、一方の前記部材及び他方の前記部材に形成された孔部を貫通するとともに、他方の前記部材に係合することによって二つの前記部材を連結する連結ピンを備え、
前記連結ピンは、前記他方の部材に係合された状態で前記各孔部内を回転可能に形成されるとともに、外力による回転位置変動を目視確認可能とする指針部を備えることを特徴とするセキュリティ構造。
【請求項2】
前記連結ピンは、押し込み操作される円形の頭部と、前記各孔部を貫通する軸部と、他方の前記部材に裏側から係合する係合爪部と、を備え、
前記指針部は、前記頭部上面の中心を通る直径線を備える請求項1記載のセキュリティ構造。
【請求項3】
前記指針部は、前記直径線で区切られた前記頭部上面の二つの領域であって、異なる色で着色された二つの着色部を備える請求項2記載のセキュリティ構造。
【請求項4】
前記押し込み操作に際して前記連結ピンの回転位置を規定するとともに、外力による前記連結ピンの回転位置変動に応じて破損する回転位置規定部を備える請求項1〜3のいずれか一項に記載のセキュリティ構造。
【請求項5】
前記回転位置規定部は、一方の前記部材側又は前記連結ピン側に形成される凸部と、前記連結ピン側又は一方の前記部材側に形成され、所定の回転位置で前記凸部に係合する凹部と、を備え、外力による前記連結ピンの回転位置変動に応じて前記凸部が折損する請求項4記載のセキュリティ構造。
【請求項6】
前記凸部は、一方の前記部材の表側から目視確認可能な位置に形成される請求項5記載のセキュリティ構造。
【請求項7】
前記凸部は、その周辺とは異なる色で着色される請求項6記載のセキュリティ構造。
【請求項8】
前記連結ピンは、当該連結ピンが動くか否かを触診する触診棒の先端と係合する触診用係合部を備える請求項1〜7のいずれか一項に記載のセキュリティ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate