説明

セキュリティ構造

【課題】制御基板ケース10に収容された制御基板40に対する不正改造を防止するセキュリティ構造において、ケース開放に伴って基板自体を修復不能に破壊させることにより、基板自体の再利用を困難にし、基板の不正改造を効果的に阻止する。
【解決手段】制御基板ケース10に収容された制御基板40に対する不正改造を防止するセキュリティ構造であって、ケース開放に伴う外力を受けてプリント基板41が修復不能に破壊される脆弱部Zを備える構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のケースに収容された基板に対する不正改造を防止するセキュリティ構造に関し、特に、ケース開放に伴う外力を受けて基板自体が修復不能に破壊するセキュリティ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットマシン、パチンコなどの遊技機では、遊技機の動作を制御するIC、ROMなどの電子部品を実装した制御基板が備えられている。
近年、この種の遊技機の制御基板は、不正行為者によるROMなどの交換や改造、不正部品の追加、接続など、悪質な不正行為の標的となっており、その被害は深刻なものとなっている。
【0003】
このような遊技機の制御基板に対する不正行為を排除する手段として、従来から、制御基板全体を所定の基板ケース内に収納し、この基板ケースを開放不能に封印固定した状態で遊技機側に取り付けるという対策が講じられてきた。
そして、遊技機の制御基板を収納したケースを開放不能に封印固定する方法としては、制御基板を収納した基板ケースの開閉部分に封印シールを貼付するという方法や、連結固定した後は破壊しない限り連結解除不能となる封止ピンで基板ケースの開閉部分を連結固定するという方法が広く用いられていた。
【0004】
しかしながら、上記のような封印固定方法では、制御基板を不正改造した後、偽造された封印シールや封止ピンを用いて再封印すると、基板ケースを開放した痕跡が残らないので、不正行為を発見することがきわめて困難となり、不正防止手段としては不十分であった。
そこで、基板に実装されるICに脆弱部を設け、ケース開放に伴う外力を受けてICが修復不能に破壊されるようにしたセキュリティ構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−173598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されるセキュリティ構造によれば、基板ケースの開放に伴ってICが修復不能に破壊されるので、制御基板の不正改造に対してある程度の抑止効果は得られる。
しかしながら、基板ケースの開放に伴って破壊されるICが偽造された場合、破壊されたICを偽造されたICに交換する程度の簡単な作業で修復が可能となってしまうので、不正防止手段としては不十分であった。
【0007】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、ケース開放に伴って基板自体を修復不能に破壊させることにより、基板自体の再利用を困難にし、基板の不正改造を効果的に阻止できるセキュリティ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のセキュリティ構造は、所定のケースに収容された基板に対する不正改造を防止するセキュリティ構造であって、ケース開放に伴う外力を受けて基板自体が修復不能に破壊される脆弱部を備える構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、ケース開放に伴って基板自体を修復不能に破壊させることにより、基板自体の再利用を困難にし、基板の不正改造を効果的に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケース(分解状態)の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板の要部を示す表面図、断面図及び裏面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板のプリントパターンを示す平面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの作用を示す説明図であり、(a)は、制御基板ケースを閉じる前の状態を示す要部断面図、(b)は、制御基板ケースを閉じた状態を示す要部断面図、(c)は、制御基板ケースを開放した状態を示す要部断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケース(閉じる前の状態)の斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの作用を示す説明図であり、(a)は、制御基板ケースを閉じた状態を示す要部断面図、(b)は、制御基板ケースを開放した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第一実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケース(分解状態)の斜視図である。
この図に示すように、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケース10は、互に開閉可能に嵌合する上ケース20及び下ケース30を備えて構成されている。
【0012】
上ケース20及び下ケース30は、互に開閉可能に嵌合して遊技機用制御基板40の収納ケースを構成するようになっており、全体が透明プラスチックからなる筐体構造となっている。
上ケース20には、ケース内部に収納された制御基板40に外部から配線などが接続可能な配線口21が複数設けられている。
また、上ケース20の一端部には、下ケース30のヒンジ部31と回動自在に係合するヒンジ部(図示せず)が設けられている。
【0013】
下ケース30には、ケース開口に沿って薄板状のガイド部32が突設してあり、このガイド部32が上ケース20の開口内周又は外周に係合して、上ケース20と下ケース30が一体的に嵌合するようになっている。
また、下ケース30には、上ケース20のヒンジ部と回動自在に係合するヒンジ部31が設けられ、このヒンジ部31によって、上ケース20と下ケース30が開閉自在に組み立てられるようになっている。
【0014】
本実施形態の制御基板ケース10では、制御基板40を下ケース30内に固定し、これを上ケース20で覆蓋するようになっている。
そして、この上ケース20及び下ケース30の開閉側(ヒンジ部31と反対側の端部)には、互に上下に重合するように封印固定部22、33が突出形成され、これらの封印固定部22、33同士が、図示しない封止ピンを用いて連結解除不能に連結固定されるようになっている。
【0015】
封止ピンは、上ケース20と下ケース30を連結固定した後は破壊しない限り連結解除不能となるように構成されている。しかしながら、封止ピンを破壊して制御基板ケース10を開放するとともに、制御基板40を不正改造した後、偽造された封止ピンを用いて再封印すると、制御基板ケース10を開放した痕跡が残らないので、不正行為を発見することがきわめて困難になるという問題がある。
【0016】
本発明の実施形態に係るセキュリティ構造は、上記のような不正行為に際し、制御基板ケース10の開放に伴って基板自体(プリント基板41)を修復不能に破壊させることにより、基板自体の再利用を困難にし、制御基板40の不正改造を効果的に阻止するものである。
以下、本発明の実施形態に係るセキュリティ構造について、図2〜図4を参照して説明する。
【0017】
図2は、本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板の要部を示す表面図、断面図及び裏面図、図3は、本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板のプリントパターンを示す平面図、図4は、本発明の第一実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの作用を示す説明図であり、(a)は、制御基板ケースを閉じる前の状態を示す要部断面図、(b)は、制御基板ケースを閉じた状態を示す要部断面図、(c)は、制御基板ケースを開放した状態を示す要部断面図である。
これらの図に示すセキュリティ構造は、制御基板ケース10に収容された制御基板40に対する不正改造を防止するためのものであって、ケース開放に伴う外力を受けてプリント基板41が修復不能に破壊される脆弱部Zを備えることに特徴がある。
【0018】
そして、第一実施形態のセキュリティ構造では、上ケース20と、プリント基板41に接合されたIC(集積回路)42とを前記外力が伝達可能に係合させるとともに、IC42が実装されている基板面側に該IC42と導通されるプリントパターン411を設け、前記脆弱部ZをIC42とプリントパターン411との接合部とし、前記外力を受けてプリントパターン411が剥離及び/又は破断されるように構成してある。
【0019】
具体的に説明すると、制御基板40は、プリント基板41の表側にIC42などの電子部品を実装して構成されている。
プリント基板41は、通常、表裏両面にプリントパターン411を有する両面パターンで構成されるが、脆弱部Zを構成するIC42の実装領域(図2の破線で囲まれた部分)においては、IC42が実装される表面側のみにプリントパターン411を有する片面パターンで構成してある。
【0020】
そして、IC42は、プリント基板41に対する実装に際し、図4の(a)に示すように、ピン421がプリント基板41の接合孔412に挿通され、半田43を介してプリントパターン411と接合されるが、IC42の実装領域においては、プリント基板41の裏面側にプリントパターン411を設けず、プリント基板41の表面側でのみピン421とプリントパターン411が半田43を介して接合されることになる。
【0021】
脆弱部Zを構成するプリントパターン411は、剥離方向の外力を受けたとき、容易に剥離及び/又は破断する形状とすることが好ましい。
例えば、図3に示すように、IC42のピン421と半田43で接合されるランドパターン411aと配線パターン411bとの間に、配線パターン411bよりも幅の狭い幅狭パターン411cを形成し、剥離や破断を容易とする。
【0022】
図1及び図4に示すように、上ケース20は、IC42との対向面部に、ケース開放に伴う外力をIC42に伝達する一対の係合爪23を備えている。
本実施形態の係合爪23は、弾性変形可能なフック形状のものであり、下ケース30に固定された制御基板40を上ケース20で覆蓋する際、先端部の傾斜面231がIC42の上端角部に当接することにより拡開方向に弾性変形するとともに、IC42の側面と摺接しながらプリント基板41に近づき、先端部がIC42とプリント基板41の間隙に到達した時点で弾性復元し、IC42の下端角部に下側から係合する(図4の(b)参照)。
【0023】
このように構成されたセキュリティ構造では、制御基板ケース10が開放されると、図4の(c)に示すように、下ケース30に固定される制御基板40に対し、上ケース20が離間方向に移動する。
このとき、上ケース20に設けられる係合爪23が制御基板40のIC42に引っ掛かっているので、IC42が上方向に引っ張られる。
IC42は、プリント基板41の表面側でのみ半田43で接合されているので、上方向の力に対しては脆弱であり、上ケース20の開放に伴う外力により半田43もろともプリント基板41から外れてしまうと同時に、プリント基板41の表面側に形成されたプリントパターン411も半田43に引張られて剥離及び破断される。
これにより、プリント基板41が修復不能に破壊され、再利用が困難になる。
【0024】
以上のように構成された本実施形態によれば、制御基板ケース10に収容された制御基板40に対する不正改造を防止するセキュリティ構造であって、ケース開放に伴う外力を受けてプリント基板41が修復不能に破壊される脆弱部Zを備えるので、プリント基板41の再利用を困難にし、制御基板40の不正改造を効果的に阻止できる。
【0025】
また、本実施形態では、上ケース20と、プリント基板41に接合されたIC42とを前記外力が伝達可能に係合させるとともに、IC42が実装されている基板面側に該IC42と導通されるプリントパターン411を設け、前記脆弱部ZをIC42とプリントパターン411との接合部とし、前記外力を受けてプリントパターン411が剥離及び/又は破断されるようにしたので、上ケース20にIC42に係合する係合爪23を設けたり、プリント基板41のプリントパターン411を変更する程度の簡単な構成で本発明のセキュリティ構造を実施することが可能になる。
【0026】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るセキュリティ構造について、図5及び図6を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通の構成については、第一実施形態と同じ符号を用いることにより、前記第一実施形態の説明を援用する。
【0027】
図5は、本発明の第二実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケース(閉じる前の状態)の斜視図、図6は、本発明の第二実施形態に係るセキュリティ構造が適用される制御基板ケースの作用を示す説明図であり、(a)は、制御基板ケースを閉じた状態を示す要部断面図、(b)は、制御基板ケースを開放した状態を示す要部断面図である。
これらの図に示すように、本発明の第二実施形態に係るセキュリティ構造は、制御基板ケース10と、プリント基板41(又はこのプリント基板41に接合された電子部品)とをケース開放に伴う外力が伝達可能に係合させるとともに、プリント基板41の一部であってこの係合させた近傍に前記外力を受けて破断される破断領域413を形成し、該破断領域413を前記脆弱部Zとした点が前記実施形態と相違している。
このようにしても、ケース開放に伴ってプリント基板41を修復不能に破壊させるので、プリント基板41の再利用を困難にし、制御基板40の不正改造を効果的に阻止できる。
【0028】
具体的に説明すると、プリント基板41の破断領域413は、V溝414やスリット415(又は所定間隔を存して形成される多数のスルーホール(基板両面を導通させるための孔))で囲まれた破断容易な領域であり、破断領域413とその他の領域との間を跨ぐようにプリントパターン411を形成し、破断領域413の破断により、プリント基板41の再利用を困難にしてある。
また、本実施形態の破断領域413は、前記外力を受ける部分を自由端とする片持ち梁状に形成されており、前記外力による破断が容易となっている。
【0029】
本実施形態では、上ケース20に制御基板40を固定し、その裏面側を下ケース30で覆蓋するように構成し、下ケース30に、ケース開放に伴う外力を前記破断領域413に伝達する係合爪34を設けている。
本実施形態の係合爪34は、弾性変形可能なフック形状のものであり、上ケース20に固定された制御基板40を下ケース30で覆蓋する際、先端部の傾斜面341が破断領域413の端縁部に当接することにより逃げ方向に弾性変形するとともに、先端部がプリント基板41の表面側に到達した時点で弾性復元し、破断領域413の端縁部に表面側から係合するようになっている(図6の(a)参照)。
【0030】
このように構成されたセキュリティ構造では、制御基板ケース10が開放されると、図6の(b)に示すように、上ケース20に固定される制御基板40に対し、下ケース30が離間方向に移動する。
このとき、下ケース30に設けられる係合爪34が制御基板40の破断領域413に引っ掛かっているので、破断領域413が下方向に引っ張られる。
破断領域413は、V溝414やスリット415で囲まれた破断容易な領域なので、下ケース30の開放に伴う外力で破断してしまうと同時に、破断領域413とその他の領域との間を跨ぐように形成されたプリントパターン411も剥離及び破断される。
これにより、プリント基板41が修復不能に破壊され、再利用が困難になる。
【0031】
以上のように構成された本実施形態によれば、制御基板ケース10と、プリント基板41とをケース開放に伴う外力が伝達可能に係合させるとともに、プリント基板41の一部であってこの係合させた近傍に前記外力を受けて破断される破断領域413を形成したので、不正改造に伴うケース開放時にプリント基板41を修復不能に破壊し、プリント基板41の再利用を困難にすることができる。
また、破断領域413は、前記外力を受ける部分を自由端とする片持ち梁状に形成されるので、前記外力によって容易に破断させることができる。
【0032】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、前記第一実施形態では、ケース開放に伴う外力で基板から外す電子部品としてICを例示したが、基板に実装される電子部品であれば、抵抗、コンデンサなどであっても良い。
また、前記第二実施形態では、ケース開放に伴う外力をプリント基板の破断領域に直接伝達するようにしているが、破断領域に実装される電子部品を介して前記外力を伝達するようにしても良い。
また、基板は遊技機用に限らず、遊技場に設置される遊技媒体を計数する計数機、遊技媒体を貸し出す玉貸し機などの遊技場装置に内蔵されている基板にも適用可能であり、これらの遊技場装置が内蔵する基板を覆うようなケース構造を有していれば、本発明のセキュリティ構造を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、所定のケースに収容された基板に対する不正改造を防止するセキュリティ構造に適用できる。特に、スロットマシン、パチンコ機などの遊技機や、計数機、玉貸し機など遊技場に設置される全ての遊技場装置において好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 制御基板ケース
20 上ケース
23 係合爪
30 下ケース
34 係合爪
40 制御基板
41 プリント基板
411 プリントパターン
413 破断領域
42 IC
43 半田
Z 脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のケースに収容された基板に対する不正改造を防止するセキュリティ構造であって、
ケース開放に伴う外力を受けて基板自体が修復不能に破壊される脆弱部を備えることを特徴とするセキュリティ構造。
【請求項2】
前記ケースと前記基板に接合された電子部品とを前記外力が伝達可能に係合させるとともに、前記電子部品が実装されている基板面側に該電子部品と導通されるプリントパターンを設け、前記脆弱部を前記電子部品と前記プリントパターンとの接合部とし、前記外力を受けて前記プリントパターンが剥離及び/又は破断される請求項1記載のセキュリティ構造。
【請求項3】
前記ケースと、前記基板又はこの基板に接合された電子部品とを前記外力が伝達可能に係合させるとともに、前記基板に前記外力を受けて破断される破断領域を形成し、該破断領域を前記脆弱部とした請求項1又は2記載のセキュリティ構造。
【請求項4】
前記破断領域を、前記外力を受ける部分を自由端とする片持ち梁状に形成した請求項3記載のセキュリティ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−189040(P2011−189040A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58856(P2010−58856)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】