説明

セキュリティ装置及びセキュリティ装置の製造方法

セキュリティ装置は少なくとも二つのレンチキュラー装置(A、B)を具備し、各々のレンチキュラー装置は、画像ストリップのそれぞれの組の上に配設された細長いレンチキュラー合焦要素(200、210)の配列を有し、二つのレンチキュラー装置のレンチキュラー合焦要素(200、210)が延在する細長い方向は異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ装置に関し、例えば、紙幣、小切手、パスポート、IDカード、内容証明書(certificate of authenticity)、収入印紙、及び価値を保護するための他の文書、又は個人IDのような貴重品における使用のためのセキュリティ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種々の光学セキュリティ装置が公知であり、最も一般的な光学セキュリティ装置はホログラム及び他の回折型装置であり、これらはクレジットカード及びその均等物において見られることが多い。例えば欧州特許出願公開第1695121号明細書及び国際公開第94/27254号において記述されるようなモアレ拡大レンズ(moire magnifier)の形態においてセキュリティ装置を提供することも公知である。モアレ拡大レンズの欠点はアートワークがより制限されることであり、例えばアニメーション効果はモアレ拡大レンズでは不可能であるだろう。
【0003】
例えば米国特許出願公開第4892336号明細書において記述されるように、いわゆるレンチキュラー装置がセキュリティ装置として使用されうることも知られてきた。この仕様は二種類のレンチキュラー効果すなわち傾き画像効果(tilt image effect)及び動画効果を記述し、傾き画像効果では装置が傾けられると色が変化し又は画像が観察され、動画効果では観察角度が変化すると画像が装置に沿って動くように見える。二つの効果は例えば一つのセキュリティスレッド(security thread)上において互いに組み合わされることができ、このため、観察角度が変化すると、二つの異なる効果が観察されうる。しかしながら、これら装置は未熟な観察者による検証が困難であった。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1態様によれば、セキュリティ装置が少なくとも二つのレンチキュラー装置を具備し、各レンチキュラー装置は、画像ストリップ(image strip)のそれぞれの組の上に配設された細長いレンチキュラー合焦要素の配列(array)を有し、二つのレンチキュラー装置のレンチキュラー合焦要素が延在する細長い方向は異なる。
【0005】
本発明の第2態様によれば、セキュリティ装置を製造する方法が少なくとも二つのレンチキュラー装置を提供することを含み、各レンチキュラー装置は、画像ストリップのそれぞれの組の上に配設された細長いレンチキュラー合焦要素の配列を有し、二つのレンチキュラー装置のレンチキュラー合焦要素が延在する細長い方向は異なる。
【0006】
本発明は、使用者によって容易に検証されうるが製造するのが困難である単純だが安全な装置を提供する。レンチキュラー合焦要素の二つの配列の細長い方向が異なる方向に延在するので、装置が一方の方向と平行な軸線回りに傾けられると、レンチキュラー効果が対応するレンチキュラー装置から観察されるであろうが、他方からは効果が観察されず又は異なる効果が観察されるであろう。
【0007】
このことは、二つの細長い方向が直交している場合に特に好都合である。この場合、装置が一方の装置の細長い軸線回りに傾けられると、他方の装置からレンチキュラー効果は観察されないであろう。
【0008】
二つのレンチキュラー装置は、原理上セキュリティ装置上の任意の位置において配設されることができるが、好ましくは互いに近接して構成され、最も好ましくは互いと当接する。このことによって、レンチキュラー装置を配設することと、装置が異なる方向に傾けられるときにレンチキュラー装置が生じさせる効果を比較することとが容易になる。
【0009】
この場合、特に好ましい例では、セキュリティ装置は二つのレンチキュラー装置を有し、二つのレンチキュラー装置は、垂直に観察されるとき、各レンチキュラー装置からの画像部分によって作り上げられた認識可能な画像を観察者の肉眼に与え、画像ストリップはそれぞれの画像部分の種々のビューを画成し、このことによって、セキュリティ装置がレンチキュラー装置のうちのいずれかの細長い方向に対して平行な軸線回りに傾けられると、それぞれの画像部分が横方向に動くように見え、一方、他の画像部分は静止したままである。
【0010】
以下により詳細に説明されるように、この装置は、装置を検証すべく容易に観察可能であるが製造するのが困難であるという独特な効果を与える。
【0011】
レンチキュラー合焦要素についての周期性ひいては最大基準直径(maximum base diameter)は、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜60μm、更により好ましくは20〜40μmの範囲内である。レンチキュラー合焦要素についてのFナンバーは、好ましくは0.25〜16、より好ましくは0.5〜2の範囲内である。
【0012】
典型的にはレンチキュラー合焦要素はシリンドリカルレンズを具備する。しかしながら、マイクロミラーが使用されてもよい。
【0013】
画像ストリップは基材上に単純に印刷されうるが、レリーフ構造(relief structure)を使用して画像ストリップを画成することも可能である。このことによって非常に薄い装置が構築されることができ、このことは、セキュリティ文書と共に使用されるときに特に有益である。
【0014】
レリーフ構造はエンボス加工又は鋳型硬化(cast-curing)によって形成されうる。述べられた二つのプロセスのうち、鋳型硬化は複製のより高い忠実性を提供する。
【0015】
多様な種々のレリーフ構造が、以下により詳細に記述されるように使用されうる。しかしながら、画像ストリップは単純に回折格子領域として画像をエンボス加工し/鋳型硬化させることによって生成されうる。画像の異なる部分が、異なる回折色を備えた領域を提供する格子の異なるピッチ又は異なる方向の使用によって識別されうる。代替的な(且つ/又は追加の識別化)画像構造が、モスアイ(moth-eye)のような反射防止構造(例えば国際公開第2005/106601号参照)、0次回折構造、アステカ構造(Aztec structure)として知られている段状表面のレリーフ光学構造(例えば国際公開第2005/115119号参照)又は単純な散乱構造である。最も多くの用途について、これら構造は明るさ及びコントラストを高めるべく部分的に又は完全に金属化されうる。
【0016】
典型的には、各画像ストリップの幅は、50μm未満、好ましくは20μm未満、最も好ましくは5〜10μmの範囲内である。
【0017】
本発明に係るセキュリティ装置の典型的な厚みは、2〜100μm、より好ましくは1〜50μmのレンズ高さと共に20〜50μm、最も好ましくは5〜25μmである。レンチキュラー合焦要素についての周期性ひいては最大基準直径は、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜60μm、更により好ましくは20〜40μmの範囲内である。レンチキュラー合焦要素についてのFナンバーは、好ましくは0.25〜16、より好ましくは0.5〜2の範囲内である。レリーフ深さはレリーフを形成するのに使用される方法に依存し、ここで、レリーフが回折格子によって提供される場合、その深さは典型的には0.05〜1μmの範囲内であり、粗い非回折レリーフ構造が使用される場合、レリーフ深さは、好ましくは0.5〜10μm、更により好ましくは1〜5μmの範囲内である。
【0018】
セキュリティ装置は画像構造の一部又は追加層として金属化層を具備することができる。好ましくは、斯かる層は多数の場所において選択的に脱金属化される。加えて、装置は金属化層上にレジスト層を更に具備することができる。金属化層及び/又はレジスト層は好ましくは認証部(indicia)として構成される。
【0019】
装置が機械可読であるように構成されることも好ましい。このことは多数の態様において実現されうる。例えば装置の少なくとも一つの層が(光学的に別個の層として)機械可読材料を更に含むことができる。好ましくは、機械可読材料はマグネタイトのような磁気材料である。機械可読材料は外的刺激に対して反応しうる。さらに、機械可読材料が層内に形成されるとき、この層は透明であってもよい。
【0020】
セキュリティ装置は、多くの異なる用途において、例えば価値ある物への取付けによって使用されうる。好ましくは、セキュリティ装置はセキュリティ文書に付着され又はセキュリティ文書内に実質的に含まれる。このため、セキュリティ装置は斯かる文書の表面に取り付けられ又は文書内に部分的に埋め込まれてもよい。セキュリティ装置はセキュリティ文書との使用のために様々な種々の形態をとることができ、これらは、限定されるものではない例として、セキュリティスレッド、セキュリティ繊維、セキュリティパッチ、セキュリティストリップ、セキュリティストライプ又はセキュリティ箔を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、公知のレンチキュラー装置を通した概略的な断面である。
【図2】図2は、図1の公知のレンチキュラー装置の修正形態の上からの斜視図である。
【図3】図3は、異なる傾き角度における図2の装置の外観を示す。
【図4】図4は、ホログラフィック装置と組み合わされたレンチキュラー装置の例を示す。
【図5】図5は、ホログラフィック装置と組み合わされたレンチキュラー装置の例を示す。
【図6】図6は、本発明に係る別の例を通した断面である。
【図7】図7は、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7A】図7Aは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7B】図7Bは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7C】図7Cは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7D】図7Dは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7E】図7Eは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7F】図7Fは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7G】図7Gは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図7H】図7Hは、種々の観察角度における本発明に係る装置の別の例の外観を示す。
【図8】図8A〜Iは、本発明に係る画像ストリップを画成するレリーフ構造の種々の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るセキュリティ装置及び方法のいくつかの例が、以下、添付の図面を参照して記述され且つ公知の装置と対比される。公知のレンチキュラー装置が図1〜3において示される。図1は、画像A〜Gを観察するのに使用される公知のレンチキュラー装置を通した断面を示す。シリンドリカルレンズ2の配列が透明基材4上に構成される。各画像が多数の(例えば10個の)ストリップ内にセグメント化され、画像A〜Gの特定のセグメント化された領域に対応する一組の画像ストリップがレンチキュラー配列の各レンズ2の下に存在する。第1レンズの下のストリップは各々画像A〜Gの第1セグメントに対応し、次のレンズの下のストリップは各々画像A〜Gの第2セグメントに対応し、その後も同様である。各レンズ2は、一つのみのストリップが一つの観察位置から各レンズ2を通して観察されうるようにストリップの平面内に焦点を合わせるように構成される。任意の観察角度において、画像(A、B、C等)のうちの一つに対応するストリップのみが、対応するレンズを通して見られるであろう。示されるように、画像Dの各ストリップが直線上から見られるのに対して、画像C又はEからのストリップは、軸線から数度ずらされて傾けられたときに見られるであろう。
【0023】
ストリップは画像の薄片として構成され、すなわちストリップAは全て一つの画像からの薄片であり、B、C等についても同様である。結果として、装置が傾けられると、一連の画像が見られるであろう。一連の画像は関連付けられ又は関連付けられなくてもよい。最も単純な装置は、装置が傾けられると互いの間で反転する二つの画像を有するであろう。代替的に、画像は、画像が動くように見えるようにレンチキュラーアニメーション効果を発生させるべくストリップからストリップへ横方向にずらされる一連の画像であってもよい。同様に画像から画像への変化はより複雑なアニメーション(画像の一部が準連続形態において変化する)、モーフィング(一つの画像が小ステップにおいて別の画像に変形する)又はズーミング(画像がステップにおいて大きくなり又は小さくなる)を生じさせうる。
【0024】
図2は斜視図におけるレンチキュラー装置を示すが、単純化のためにレンズに付き二つの画像ストリップのみが示され且つそれぞれA、Bが付される。図2において示される装置の観察者に対する外観が図3において示される。このとき、装置がその頂部が前方に傾けられた状態(ビューTTF)で構成されると、画像ストリップAが見られ、一方、装置がその底部が前方に傾けられた状態(ビューBTF)で構成されると、その後画像ストリップBが見られるであろう。
【0025】
図4は、互いに対して90°に向けられ且つ(図1及び2と同様の態様において)それぞれの画像ストリップの上に配設される二組のシリンドリカルマイクロレンズ配列が存在する本発明に係る第1の例を示す。この実施形態では、レンチキュラー装置Aは、軸線B−B回りに東西方向に傾けられると、線A−Aに沿って動くV字模様の画像を作り出すべくその画像ストリップと結合するように、南北方向に延在するマイクロレンズ200を有し、各装置は、矢印221A、221Bによって示される相互に反対の方向に動くV字模様を生成する。レンチキュラー装置Bは、軸線A−A回りに南北方向に傾けられると、線B−Bに沿って動くV字模様の画像を生成すべくその画像ストリップと結合するように、東西方向に延在するマイクロレンズ210を有し、各装置は、相互に反対の方向に動くV字模様を生成する。この例では、軸線A−Aに沿って離間された2つのレンチキュラー装置Aと、軸線B−Bに沿って離間された2つのレンチキュラー装置Bとが存在する。一対のレンチキュラー装置A、Bはそれぞれのコーナーにおいて当接する。加えて、5つのホログラフィック発生構造(holographic generating structure)220、222、224、226、228がレンチキュラー装置AとBとの間に画成された空間において配設される。
【0026】
図4における例では、セキュリティ装置が、小型シリンドリカルレンズ200、210の曲率が周期的に変動する方向に対して垂直な軸線の周りで傾けられるときにのみそれぞれのレンチキュラーアニメーションが生じることが理解されるべきである。この場合、装置を水平方向に横切るV字模様のレンチキュラーアニメーションは、装置が線B−Bの周りで傾けられるときに線A−Aに沿って生じるであろう。逆に、装置を鉛直方向に横切るV字模様のレンチキュラーアニメーションは、装置が線A−Aの周りで傾けられるときに線B−Bに沿って生じるであろう。アニメーション自体は任意の方向において起こることができ且つ純粋にアートワークに依存する。
【0027】
図4におけるホログラフィック発生構造220〜228はホログラム又はDOVID画像要素の形態でありうる。示されるラベル構成(label construction)では、ホログラフィック装置及びレンチキュラー装置は別個の領域に存在するが、この例は単に説明のためにあり、例えばホログラフィック発生構造220〜228が中央の帯又はストリップにおいて配設され、レンチキュラー装置A、Bが両側の一つ以上の領域において配設されうることが理解されるべきである。代替的に、レンチキュラー装置によって提供される画像と、ホログラフィック発生構造によって提供される画像とは、各々単一画像の構成要素を提供することによって単一画像に統合されてもよい。
【0028】
好ましい実施形態では、シリンドリカルマイクロレンズ配列及びマイクロ画像ストリップは、少なくとも一つのレンチキュラー装置について、小型シリンドリカルレンズの曲率が周期的に変動する方向がx軸(図4における線A−A)若しくはy軸(図4における線B−B)に対して45°に位置し又は有利とみなされうる角度の間の任意の角度に位置するように構成される。いくつかの装置では、文書が南北方向又は東西方向にのみ傾けられがちであり、装置が全ての傾きで動くように見えうるので、45°の角度が特に有利である。斯かる装置が図5において示され、ここでは、二組のシリンドリカルマイクロレンズ配列200、210は、互いに対して90°に向けられるが、両方ともセキュリティ装置のx軸及びy軸に対して45°にも向けられる。x軸又はy軸の周りで装置を傾けると、両方のレンチキュラー装置はアニメーションを呈し、この場合、各々の装置からのV字模様は装置の中心に向かって動くように見えるであろう。
【0029】
図6は、4つの画像ストリップA〜Dを具備する本発明における使用に適切なレンチキュラー装置の例を示し、4つの画像ストリップA〜Dは、レンチキュラーアニメーション効果を生成すべく同一画像の異なるビューである。この例では、ストリップの画像領域は、透明なPETスペーサ層24上に設けられた樹脂層26において一連の隆起領域又は隆起部を生成することによって生成される。シリンドリカルレンズ配列20は層24上の樹脂層21内に鋳型硬化せしめられ又はエンボス加工される。その後、着色されたインクが、典型的にはリソグラフィックプロセス、フレキソ印刷プロセス又はグラビア印刷プロセスを使用して隆起領域上に転写される。図6において示される例では、画像ストリップA及びBは第1の色27で印刷され、画像ストリップC及びDは第2の色28で印刷される。また、この態様では、装置がレンチキュラーアニメーション効果を生成すべく傾けられるとき、観察者がビューBからビューCに動くと、色が変化する画像が見られるであろう。異なる例では、全てのストリップA〜Dが、装置の第1領域において第1の色であり、その後、装置の第2領域において異なる色である。
【0030】
更なる実施形態では、ストリップの画像要素が回折格子から形成されるとき、このとき、一つのストリップ又は異なるストリップ内の異なる画像要素が異なる格子によって形成されうる。格子のピッチ又は回転において違いがあってもよい。このことは、複数の色の回折画像を実現するのに使用されることができ、複数の色の回折画像はアニメーションのようなレンチキュラー光学効果も呈するであろう。例えば、図4において示される例においてレンチキュラー装置AについてV字模様を生成する画像ストリップが、各ストリップについて異なる回折トラック(diffraction track)を書くことによって生成される場合、その後、図4における装置が線B−Bの周りで傾けられると、V字模様の色が種々の回折格子によって徐々に変化する間、V字模様のレンチキュラーアニメーションが生じるであろう。斯かる格子を書くための好ましい方法が電子ビーム書き込み技術又はドットマトリックス技術(dot matrix technique)を使用することであるだろう。
【0031】
図7及び図7A〜7Hは、本発明に係る別の例を示す。この例では、二つのレンチキュラー装置30、40は互いに当接して設けられ、各々は、図1〜3において示された形態と同様の形態を有する。レンチキュラー装置30は、図7において水平方向に延在するシリンドリカルレンズ32を有し、一方、レンチキュラー装置40は、鉛直方向に延在しひいてはレンズ32に直交するシリンドリカルレンズを有する。
【0032】
レンズ32の下の画像ストリップは、レンチキュラー装置30がレンズ32に対して平行な軸線回りに傾けられると記号「10」の半部分34が上下に又はレンチキュラー装置間の当接点から離れて若しくは当接点に向かって動くように見えるような態様において、数字「10」の上側半部分34を画成する。これら動きは図7A及び図7Bにおいてそれぞれ示される。
【0033】
レンチキュラーレンズ42の下では、画像ストリップは、装置がレンズ42の軸線回りに傾けられると下部44が左右にそれぞれ動く(図7C及び7D)ように、44で示されるような記号「10」の下側半部分を表すように画成される。
【0034】
概して、画像ストリップがレンズに登録される(registered)が、このことは必須ではない。
【0035】
図7は、図7E〜7Hそれぞれにおいて、上及び左又は右に傾く効果、並びに下及び左又は右に傾く効果も示す。
【0036】
装置を単純に傾けることと、予め定められた単純な態様において記号「10」であるように見えるものがその後分割されることを観察することによってセキュリティ効果の存在を判別することが容易であることが図7及び図7A〜7Hから容易に分かるであろう。
【0037】
図7において示される例では、記号「10」は装置が垂直に観察されるときに完全である。しかしながら、画像とレンズとの間の登録(registration)は、装置が傾けられるときに別の観察条件において記号「10」が完全であるように調整されうる。
【0038】
典型的には、画像ストリップは公知の方法で印刷され、一方、シリンドリカルレンズは適切な樹脂層内にエンボス加工され又は鋳型硬化せしめられる。しかしながら、画像ストリップはレリーフ構造として形成されることもでき、画像ストリップに適切な多様な種々のレリーフ構造が図8において示される。
【0039】
このため、図8Aはエンボス加工された線又は凹み線の形態におけるストリップの画像領域(IM)を示し、一方、エンボス加工されていない線はストリップの非画像領域(NI)に対応する。図8Bは、デボス加工された線又は隆起部の形態におけるストリップの画像領域を示す。
【0040】
別のアプローチでは、レリーフ構造は回折格子(図8C)又はモスアイ格子(moth-eye grating)/ファインピッチ格子(図8D)の形態であってもよい。
【0041】
図8Aの凹部及び図8Bの隆起部には、図8E及び8Fにおいてそれぞれ示されるように、格子が更に設けられうる。
【0042】
図8Gは、色消し効果(achromatic effect)を提供する単純な散乱構造の使用を示す。
【0043】
さらに、上記に説明されるように、いくつかの場合、図8Aの凹部にはインクが提供され、又はデボス加工された領域若しくは隆起部にはインクが提供されうる。後者は図8Hにおいて示され、図8Hではインク層100が隆起部110上に設けられる。
【0044】
図8Iはアステカ構造の使用を示す。
【0045】
代替的に、画像領域及び非画像領域が種々の要素タイプの組合せによって画成され、例えば画像領域がモスアイ構造から形成され、一方、非画像領域が格子から形成されてもよい。また更には、画像領域及び非画像領域は異なるピッチ又は方向の格子によって形成されてもよい。
【0046】
隆起部/凹部の高さ又は深さは、好ましくは0.5〜10μmの範囲内であり、より好ましくは1〜5μmの範囲内である。隆起部/凹部の典型的な幅は、アートワークの性質によって定義されるであろうが、典型的には100μm未満であり、より好ましくは50μm未満であり、更により好ましくは25μm未満である。画像ストリップの幅ひいては隆起部又は凹部の幅は必要とされる光学効果のタイプに依存し、例えば合焦要素の直径が30μmである場合、このとき、二つのビューAとBとの間の単純な切り換え効果が15μm幅の画像ストリップを使用して実現されうる。代替的に、滑らかなアニメーション効果のために、典型的には少なくとも3個であるが理想的には30個のできるだけ多くのビューを有することが好ましく、この場合、画像ストリップ(及び関連付けられた隆起部又は凹部)の幅は0.1〜6μmの範囲内であるべきである。
【0047】
レリーフ構造の場合、これらは、シリンドリカルレンズとは反対側の基材上の適切な樹脂層内にエンボス加工され又は鋳型硬化せしめられるであろう。
【0048】
レンチキュラー合焦要素がシリンドリカルレンズを参照して記述されるが、他の適切な要素がマイクロミラーを含む。
【0049】
いくつかの層における検出可能材料の導入又は別個の機械可読層(machine-readable layer)の導入によって、本発明のセキュリティ装置は機械可読にされうる。外的刺激に反応する検出可能材料は、限定されるものではないが、蛍光材料、燐光材料、赤外線吸収材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、磁気材料、エレクトロクロミック材料、導電性材料及びピエゾクロミック材料を含む。
【0050】
本発明のセキュリティ装置は任意の所望の印刷画像又は金属層のような追加のセキュリティ要素も具備することができ、これら追加のセキュリティ要素は不透明であり、半透明であり又は遮蔽されうる。斯かる金属層は、公知の脱金属プロセスによって生成される負又は正の認証部を含むことができる。
【0051】
追加の光学可変材料が、薄いフィルム干渉要素(film interference element)、液晶材料及びフォトニック結晶材料のようなセキュリティ装置において含まれうる。斯かる材料は、フィルム層の形態であり、又は印刷による用途に適切な色素材料として存在しうる。
【0052】
金属層の存在は機械可読な暗い磁気層の存在を隠すのに使用されうる。磁気材料が装置内に組み込まれるとき、磁気材料が任意の設計において適用されうるが、通常の例はコード構造を形成すべく磁気トラムライン(magnetic tramline)又は磁気ブロック(magnetic block)の使用を含む。適切な磁気材料は、酸化鉄顔料(Fe23又はFe34)、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉄、ニッケル、コバルト及びこれらの合金を含む。この文脈では、「合金」との用語は、ニッケル・コバルト、鉄・アルミニウム・ニッケル・コバルト及びこれらの均等物のような材料を含む。フレークニッケル材料が使用されることができ、加えて鉄フレーク材料が適切である。典型的なニッケルフレークは5〜50μmの範囲内の横寸法及び2μm未満の厚みを有する。典型的な鉄フレークは10〜30μmの範囲内の横寸法及び2μm未満の厚みを有する。
【0053】
代替的な機械可読の実施形態では、透明な磁気層が装置構造内の任意の位置において組み込まれうる。適切な透明な磁気層は、所定の大きさの磁気材料の粒子の分布を含み、磁気層が透明のままである濃度において分配され、国際公開第03091953号及び国際公開第03091952号において記述される。
【0054】
更なる例では、本発明のセキュリティ装置は、装置が文書の透明領域において組み込まれるように、セキュリティ文書において組み込まれうる。セキュリティ文書は、紙及びポリマーを含む任意の従来の材料から形成された基材を有することができる。これらタイプの基材の各々において透明領域を形成するための技術が当該技術分野において公知である。例えば国際公開第8300659号は、基材の両側に不透明化コーティング(opacifying coating)を具備する透明基材から形成されたポリマー紙幣を記述する。不透明化コーティングは、透明領域を形成すべく基材両側の局所的な領域において省かれる。
【0055】
欧州特許第114180号明細書は、紙の基材において透明領域を作る方法を記述する。紙の基材において透明領域を形成するための他の方法が、欧州特許第0723501号明細書、欧州特許第0724519号明細書、欧州特許第1398174号明細書及び国際公開第03054297号において記述される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つのレンチキュラー装置を具備するセキュリティ装置であって、
各々のレンチキュラー装置が、画像ストリップのそれぞれの組の上に配設された細長いレンチキュラー合焦要素の配列を有し、前記二つのレンチキュラー装置のレンチキュラー合焦要素が延在する細長い方向が異なる、セキュリティ装置。
【請求項2】
前記細長い方向が直交している、請求項1に記載のセキュリティ装置。
【請求項3】
前記二つのレンチキュラー装置が、互いに近接して構成され、好ましくは互いと当接する、請求項1又は2に記載のセキュリティ装置。
【請求項4】
当該セキュリティ装置が前記レンチキュラー装置の細長い方向に対して平行な軸線回りに傾けられると、一つ以上の前記レンチキュラー装置が一連の異なる画像を与える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項5】
当該セキュリティ装置が前記レンチキュラー装置の細長い方向に対して平行な軸線回りに傾けられると、一つ以上の前記レンチキュラー装置が動画の外観を与える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項6】
当該セキュリティ装置が二つのレンチキュラー装置を有し、該二つのレンチキュラー装置は、少なくとも一つの観察条件において観察されるとき、例えば垂直に観察されるとき、各レンチキュラー装置からの画像部分によって作り上げられた認識可能な画像を観察者の肉眼に与え、画像ストリップがそれぞれの画像部分の種々のビューを画成し、このことによって、当該セキュリティ装置が前記レンチキュラー装置のうちのいずれかの細長い方向に対して平行な軸線回りに傾けられると、前記それぞれの画像部分が横方向に動くように見え、一方、他の画像部分が静止したままである、少なくとも請求項2に記載のセキュリティ装置。
【請求項7】
前記認識可能な画像が、記号、図形又は文字のうちの一つを含む、請求項6に記載のセキュリティ装置。
【請求項8】
前記画像ストリップが前記レンチキュラー合焦要素に登録される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項9】
前記画像ストリップがインクによって画成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項10】
前記画像ストリップがレリーフ構造によって画成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項11】
前記レリーフ構造が基材内にエンボス加工され又は鋳型硬化せしめられる、請求項10に記載のセキュリティ装置。
【請求項12】
前記レリーフ構造が回折格子構造を含む、請求項10又は11に記載のセキュリティ装置。
【請求項13】
各画像ストリップの幅が、50μm未満であり、好ましくは20μm未満であり、最も好ましくは5〜10μmの範囲内である、請求項1〜12のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項14】
前記レンチキュラー合焦要素がシリンドリカルレンズ又はマイクロミラーを具備する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項15】
前記レンチキュラー合焦要素配列が、5〜200μm、好ましくは10〜60μm、最も好ましくは20〜40μmの範囲内の周期性を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項16】
前記レンチキュラー合焦要素が熱エンボス加工又は鋳造硬化の複製プロセスによって形成されてきた、請求項1〜15のいずれか1項に記載のセキュリティ装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のセキュリティ装置が提供された物品。
【請求項18】
前記物品が、紙幣、小切手、パスポート、IDカード、内容証明書、収入印紙、及び価値を保護するための他の文書、又は個人IDから選択される、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記物品が、前記レンチキュラー合焦要素及び画像ストリップがそれぞれ設けられる基材の反対側に、透明部分を備えた基材を具備する、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
セキュリティ装置を製造する方法において、
当該方法が少なくとも二つのレンチキュラー装置を提供することを含み、各レンチキュラー装置が、画像ストリップのそれぞれの組の上に配設された細長いレンチキュラー合焦要素の配列を有し、前記二つのレンチキュラー装置のレンチキュラー合焦要素が延在する細長い方向が異なる、方法。
【請求項21】
前記細長い方向が直交している、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記セキュリティ装置が二つのレンチキュラー装置を有し、該二つのレンチキュラー装置は、少なくとも一つの観察条件において観察されるとき、例えば垂直に観察されるとき、各レンチキュラー装置からの画像部分によって作り上げられた認識可能な画像を観察者の肉眼に与え、画像ストリップがそれぞれの画像部分の種々のビューを画成し、このことによって、前記セキュリティ装置が前記レンチキュラー装置のうちのいずれかの細長い方向に対して平行な軸線回りに傾けられると、前記それぞれの画像部分が横方向に動くように見え、一方、他の画像部分が静止したままである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記二つのレンチキュラー装置が、互いに近接して構成され、好ましくは互いと当接する、請求項20〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のセキュリティ装置を製造するための請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−509313(P2013−509313A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535918(P2012−535918)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001994
【国際公開番号】WO2011/051669
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(598151304)ドゥ ラ リュ インターナショナル リミティド (20)
【Fターム(参考)】