説明

セキュリティ製品

【課題】多重的な検証特徴を有する繊維、撚糸及び繊維セクション(「ドット」)を含む新規のセキュリティ製品を提供する。
【解決手段】その繊維は、複雑な横断面、成分、及び多重的な発光応答から成るユニークで複製し難い組合せを有する。セキュリティ繊維、セキュリティ撚糸及びセキュリティドットの多くの検証可能な特徴は、それらが組み込まれる製品の不正な複製に対する高いレベルの防護。その多種多様なセキュリティ態様により、特定の使用及びユーザーに対して特定の同一性特徴を個別に付与する手段。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、多重的な検証特徴(verification characteristics)を有する繊維、撚糸(thread)及び繊維セクション(「ドット(dot)」)を含む新規のセキュリティ製品に関
する。繊維は、複雑な横断面、成分、及び多重的な発光応答から成るユニークで複製し難い組合せを有する。セキュリティ繊維、セキュリティ撚糸、及びセキュリティドットの多くの検証可能な特徴は、それらが組み込まれる製品の不正な複製に対して高いレベルの防護を提供する。多種多様なセキュリティ態様(security features)により、特定の使用
及びユーザーのために、特定の同一性特徴(identity characteristics)を個別に付与する手段が提供される。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
セキュリティ繊維は、同一性、認証を保証する目的、及び文書偽造(forgery)、模造
(imitation)又は改ざん(falsification)に対する防護を保証する目的で、信託文書又は他の製品中に組み込まれる繊維である。「セキュリティ撚糸」という用語は、同じ目的のための撚り合せられた若しくは編まれた繊維又はフィルムのストリップを指している。
【0003】
独国特許19802588には、セキュリティ目的用の発光添加剤を含むセルロース繊維が記載されている。
欧州特許066854 B1には、酢酸セルロースセキュリティ繊維、及びその繊維を
含むセキュリティ紙が記載されている。そのセキュリティ繊維は、ランタノイドキレートを含むアセトン溶液から紡糸される。その繊維は、通常の光の下では無色であるが、紫外光(UV)で励起されると、可視又は赤外(IR)において狭帯域発光を示す。異なる蛍光物質を有する繊維から撚り合せられたセキュリティ撚糸が記載されており、その撚糸にはコードされた情報が刻印されている。
【0004】
米国特許第4,655,788号及び第4,921,280号には、太陽光又は人工光で不可視であるセキュリティ繊維が記載されており、IR,UV又はX線による励起下で発光する。セキュリティ繊維は、ポリエステル、ポリアミド及びセルロース繊維のような従来の織物繊維を、希土類キレートで染色する方法によって調製される。
【0005】
独国特許DE−A 14 46 851には、いくつかの色のマイクロプリントを有する
セキュリティ撚糸が記載されている。
米国特許第4,897,300号には、通常の光では不可視であるが、その色が励起されると、裸眼で認識できる長さを有し、且つ重なっている領域において特徴的な混合発光を有する連続していて重なっている部分の撚糸に沿って提供される発光色を有するセキュリティ撚糸が記載されている。そのセキュリティ撚糸は、フラットシート上にストリップ形状にしてプリントし、次に切断することによって製造される。
【0006】
米国特許第6,068,895号では、ポリエステルドープに対して無機蛍光物質を約20重量%加え、次に、そのドープからフィラメントを紡糸することによって作製される識別可能なフィラメントを組み込んでいる織セキュリティラベルが記載されている。
【0007】
米国特許第4,183,989号では、少なくとも2つの機械による検証が可能なセキュリティ態様を有するセキュリティ紙が記載されており、その1つは磁気材料であり、もう1つは発光材料であることができる。発光材料は、ラッカー中に分散され、フィルム上にコートされる。そのフィルムは分割されて直径約1mmのプランシェット(planchette
)にされ、紙の中に組み込まれる。
【0008】
韓国特許 KR 9611906及びWO 9945200には、染色によって発光繊維
を調製する方法が記載されている。韓国特許 KR 9611906には、紙材料中への発光繊維の組み込みが記載されている。
【0009】
UK Res.Discl. (1998), 411 (7月), P.877−P.878では、セキュリ
ティ紙中に組み込むための示差染色可能な領域を有する異相構造繊維が開示されている。
中国特許CN 1092119には、顔料、染料及び蛍光材料を含む長さ1 〜 10m
mのポリビニルアルコール繊維が記載されている。
【0010】
米国特許第5,876,068号、第5,990,197号、第5,990,930号及び第6,099,930号には、発光物質を含むセキュリティ要素を提供するもう一つ他の手段が記載されている。
【0011】
関連領域では、英国特許第1,569,283号において、蛍光物質でコードされた文書の真贋を検証するための装置が記載されている。
これらの各特許は、それらの各技術状態における改良を象徴的に示している。しかしながら、セキュリティ技術が進化すると、それと並行してセキュリティから逃れようとする者たちも自分達の技術に改良を施してきた。而して、検証可能なセキュリティ特徴のユニークで複製し難い組合せを有するセルロース繊維に関するニーズが存在する。更に、特定のユーザーのための特定の同一性特徴を個別に付与する手段に関するニーズも存在する。
【0012】
セキュリティ用途とは無関係の目的のために又は非特定目的のためにも、発光物質は繊維中に組み込まれてきた。
米国特許第4,781,647号では、押出し、人形の髪用の繊維へと紡糸する前に、カップリング剤と一緒に、硫化燐、好ましくは硫化亜鉛、硫化カドミウム又は硫化カルシウムをポリマー中に混合することによって、燐光フィラメントを製造する方法が記載されている。
【0013】
米国特許第5,321,069号では、溶融紡糸によって、織物用途のための熱可塑性ポリマーの燐光嵩高連続フィラメント(BCF)ヤーンを製造する方法が記載されている。その方法は、ポリマーペレットを湿潤剤、好ましくは鉱油と混合する工程、硫化亜鉛のような燐光粉末を加えて、前記ペレットを実質的に均一にコートする工程、及び押出機中で加熱して、溶融液を形成させ且つ押出して、それによって、おそらく燐光顔料がフィラメント全体に均一に分散される工程を含む。
【0014】
米国特許第5,674,437号では、押出機において、熱可塑性ポリマーを燐光金属アルミネート顔料と混合する工程、加熱し混合して前記ポリマーを溶融させる工程、及びその溶融液を押出して繊維を形成させる工程を含む発光繊維を調製する方法が記載されている。
【0015】
米国特許第3,668,189号では、少なくとも3つの縮合環を有する縮合環多核芳香族炭化水素基を共重合させることによって調製される繊維形成性蛍光ポリカーボンアミドが記載されている。
【0016】
日本国特許7300722 A2及び2000096349 A2では、発光物質を含む芯を有する鞘芯繊維を記載している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
本発明は、複雑な横断面、成分及び多重的な発光応答から成る組合せを含むユニークで
複製し難い多重的な検証特徴を有する、セキュリティ用途のためのセキュリティ繊維、セキュリティ撚糸及びセキュリティドットを含むセキュリティ製品を提供する。多重的なセキュリティ態様により、特定のユーザーのために、特定の同一性特徴を個別に付与する手段が提供される。
【0018】
本発明のセキュリティ繊維は:少なくとも5つの複雑性ファクター(complexity factor)を有するフィラメント横断面と、少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも一つ
の成分とを含む多重的なセキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントから成っていて、前記発光物質は、200 〜 2000ナノメートルから選択された少なくとも1つの波長によって励起されたときに、少なくとも2つの発光スペクトル応答ピークを示す。
【0019】
セキュリティドットは、セキュリティ繊維のフィラメントを横に切断することによって調製される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、ユニークで複製し難い複雑な横断面形状、成分、及び多重的な発光応答から成る組合せを有するセキュリティ繊維、セキュリティ撚糸及びセキュリティドットを提供する。本発明のセキュリティ繊維は、単一フィラメント(モノフィラメント)、又はモノフィラメントのアセンブリである。繊維横断面について以下で考察するとき、特に断りがない場合は、モノフィラメントの横断面について言及していることが理解される。本発明の繊維、撚糸及びドットは、セキュリティレベルを強化する適当な方法によって、紙、文書及び他の製品の中に挿入される。
【0021】
本発明のセキュリティ繊維は、溶融紡糸、湿式防止、乾式紡糸、及びゲル紡糸などのような連続法によって、合成ポリマーから形成される。合成繊維は、典型的には、伝統的に丸い断面を有するように紡糸されるが、三角形、四角形、三裂片、四裂片、及び他の形状が知られている。繊維の横断面は、様々に接続することができ、すなわち、繊維の全長にわたって延びているホール、好ましくは円筒を含むことができる。繊維横断面の複雑さの程度が大きくなると、同じ物を製造するための紡糸口金の設計もより難しくなり、また詐欺グループによるその設計の複製が難しくなる。
【0022】
本発明の目的のために、繊維横断面の「複雑性ファクター」は、下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定される。曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示される。
【0023】
例えば、従来の固体の丸い繊維横断面は、裂片無し(L=0)、結節点無し又は分岐点無し(N=0)、一成分(C=1)、ホール無し(H=0)であり、而して、ホール内において表面曲率の反転が無く(R=0)、完全に対称である。その結果、この単純な繊維の複雑性ファクターは、上記の式から(0+0+1)x[1]=1と求められる。
【0024】
図1に示してある繊維横断面は、5つの裂片(L=5)、その中心に1つの結節点(N=1)、一成分(C=1)、ホール無し、而してホール内において表面曲率の反転が無い
(R=0)。而して、この繊維の複雑性ファクターは、(5+1+1)x[1]=7x1=7である。
【0025】
図2Bに示してある四裂片繊維は、4つの裂片(L=4)、その中心に1つの結節点及び各裂片に1つ(N=5)、一成分(C=1)、ホール無し(H=0)、而してホール内において曲率の反転が無い(R=0)。而して、この繊維の複雑性ファクターは、(4+5+1)x[1]=10x1=10である。
【0026】
図3に示してある三裂片繊維は、3つの裂片(L=3)、その中心に1つの結節点(N=1)、一成分(C=1)、3つのホール(H=3)、及びホール内において曲率の反転が無い(R=0)。この繊維の複雑性ファクターは、(3+1+1)x[3]=5x3=15である。
【0027】
図4に示してある繊維は、8の字型形状の中空裂片を有する横断面を有する。裂片の数は3である(L=3)。その中心に分岐点が存在する(N=3)。一成分である(C=1)。その横断面中に3つのホールが存在している(H=3)。ホールの内面を一周して一つの方向に通り抜け、ホールの各側上にあるくびれを通り抜けるときに曲率の中心が2回反転するので、全部で曲率の反転は4回である(R=4)。而して、図4の繊維の複雑性ファクターは(3+1+1)x[2+1]=5x27=135である。
【0028】
同様に、図5及び図6に示してある繊維横断面はそれぞれ30及び70の複雑性ファクターを有する。
最後の図7に示してある異相構造繊維(bi-component fiber)は、4つの裂片(L=4)、その中心に1つの結節点(N=1)、二成分(C=2)、4つのホール(H=4)、及びホール内において曲率の反転が無い(R=0)。而して、図7の繊維の複雑性ファクターは、(4+1+2)x[2+1]=13x3=39である。
【0029】
本発明の繊維は、一般的に、その長さにわたって一定の横断面を有することが理解される。
本発明のセキュリティ要素の検証可能な態様の一つは、繊維横断面である。横断面の複雑性ファクター(上で規定した)は、好ましくは少なくとも5、更に好ましくは少なくとも10、なお更に好ましくは少なくとも15、更に好ましくは少なくとも20、及び最も好ましくは少なくとも25である。米国特許第5,057,368号及び第4,770,938号には、それぞれ図2及び図3に示されている複雑な横断面を有する繊維を紡糸する方法が記載されており、本発明と矛盾しない程度までその内容を本明細書に引用したものとする。
【0030】
本発明の繊維が有するセキュリティ態様の第二群は、成分の数、配置、組成及び物理的性質である。組成(例えば、ポリエステル対ナイロン)において又は物理的性質(例えば、色)において互いに区別される2つの異なるポリマータイプの2つの異なる横断面領域を有する異相構造繊維は公知である。異相構造繊維及びそれらの製造法は、例えば米国特許第4,552,603号、第4,601,949号及び第6,158,204号で説明されている。これらの特許の開示は、本発明と矛盾しない程度までその内容を本明細書に引用したものとする。成分は、並列関係又は鞘芯関係であることができる。
【0031】
一つの具体例では、本発明のセキュリティ繊維における成分の数は、少なくとも2つである。多成分繊維における成分は互いに並列関係であることが好ましい。図7には、米国特許第6,158,204号に記載されている1つの異相構造繊維の横断面が図示してある。A及びBで示されている横断面の部分は、異なる成分である。
【0032】
成分は、異なるポリマー組成物であることができる。しかしながら、成分は、同じ基礎ポリマーから成っているが、普通の照明条件下で異なる色を有し、またUV又はIR照明に対して異なる発光応答を有することが好ましい。本発明のセキュリティ繊維のポリマー構成としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリル酸、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリスルフィド、ポリウレタン、及びセルロース誘導体とポリビニル誘導体から成る群より選択される。好ましくはポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミドである。最も好ましいポリマーは、ポリプロピレン、 ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6及
びナイロン66である。
【0033】
本発明のセキュリティ繊維は、約0.01mm 〜 約3mmの「有効径」を有する。本発明の目的のための有効径は、繊維横断面に外接できる最小円の直径である。
本発明の一つの具体例では、繊維を横に切断して、厚さ0.005mm 〜 0.5mmの横断面スライスにする。その得られた「ドット」を紙又は他の製品の中に組み込む。その場合、そのユニークな横断面、成分及び発光応答は、肉眼又は中程度の拡大下で容易に確認される。
【0034】
本発明の繊維の第三のセキュリティ態様は多重的な発光応答である。その発光応答は、燐光又は蛍光から成る群より選択される。発光応答は、スペクトルの赤外領域、可視領域及び紫外領域の波長を含む。赤外スペクトルは、700ナノメートル(nm)を超える波長から、本発明の目的のためには2000nmまでとみなすことができる。可視スペクトルは400 〜 700nmの波長領域とみなし、紫外スペクトルは200 〜 400nmの領域とみなす。
【0035】
発光物質は、本発明のセキュリティ繊維の成分の1つ以上の中に組み込まれる。1つの発光物質は、その発光スペクトルにおいて多重強度ピークによって示されるように、多重発光応答を有することができる。本発明の目的のために、最大ピーク強度の約1/5未満の強度を有するスペクトルピークは無視される。
【0036】
一つの具体例では、セキュリティ繊維は1つの成分を有し、その成分は、同じ又は異なる波長の照明に対して異なる発光応答を示す1種類以上の発光物質を含む。別の具体例では、セキュリティ繊維は、多相構造繊維(multi-component fiber)であって、そのそれぞ
れが単一の発光物質を含むが、同じ又は異なる波長の照明に対して異なる発光応答を有する。もう一つ別の具体例では、セキュリティ繊維は、多相構造繊維であって、そのそれぞれが、同じ又は異なる波長の照明に対して異なる発光応答を有する複数の発光物質を含む。
【0037】
本発明のセキュリティ繊維の発光は、紡糸前又は紡糸中に、発光コポリマー、発光顔料もしくは発光染料を組み込むことによって、又は発光染料で紡糸繊維を染色することによって得られる。好ましくは、発光コポリマー、発光顔料又は発光染料は、繊維紡糸作業前又は繊維紡糸作業中に混合することによって、繊維中に一体的に組み込む。最も好ましくは、発光物質は、ミキサー中でポリマーと混合し、次に、混合要素を有する二軸スクリュー押出機を用いて押出且つ紡糸することによって組み込む。
【0038】
多重発光応答は、スペクトルの赤外、可視及び紫外の領域の1つ以上に存在する。本発明のセキュリティ繊維の多重発光応答のピーク強度は、好ましくは少なくとも20nmだけ、更に好ましくは少なくとも50nm、なお更に好ましくは少なくとも100nmだけ波長が分離される。最も好ましくは、多重発光応答は、スペクトルの少なくとも2つの異なる領域においてピーク波長を有する。最も好ましくは、多重発光応答は、スペクトルの赤外領域及び可視領域に存在する。
【0039】
本発明のセキュリティ繊維の多重発光応答は、スペクトルの赤外領域、可視領域及び紫外領域から選択される1つ以上の照明波長によって励起される。好ましくは発光応答は、赤外領域及び紫外領域の1つ以上の波長によって励起される。
【0040】
発光顔料又は発光染料は、有機又は無機の物質であることができる。本発明のセキュリティ繊維において有用な熱的に安定な有機物質は、例えば、4,4’−ビス(2−メトキシスチリル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(ベンゾアキサゾール−2−イル)スチルベン、及び2,5−チオフェネジルビス(5−tert−ブチル−1,3−ベンゾオキサゾール)である。これらの化合物は、 それぞれUVITEX(登録商標) FP、 UVITEX OB−ONE、及びUVITEX OBという商標名でCiba Specialty Chemicals Inc.から市販されている。それらは、紫外線で励起され、スペクトルの紫外領域及び可視領域で蛍光を発する。
【0041】
本発明のセキュリティ繊維において有用な無機物質は、例えば、 LaOS:Eu, ZnSiO:Mn,及びYVO:Ndである。これらの材料は、それぞれ、 LUMILUX(登録商標)Red CD 168,LUMILUX Green CD 145及び LUMILUX IR−DC 139という商標名で
、Honeywell Specialty Chemicals から市販されている。 図8 〜 10には、それらの
励起と蛍光スペクトルが示してある。それぞれ紫外線によって励起される。LUMILUX Red CD 168及び LUMILUX Green CD 145 は可視領域で蛍光を発する。LUMILUX IR−DC
139は赤外領域で蛍光を発する。
【0042】
本発明のセキュリティ繊維において有用な別の物質は、LUMILUX Red UC 6という商標
名でHoneywell Specialty Chemicals から市販されている希土類オキシ硫化物固体である。この材料は、赤外線で励起され、可視領域で蛍光を発する。その励起及び蛍光スペクトルは図11に示してある。
【0043】
本発明のセキュリティ繊維において有用な発光ポリマーの例は、米国特許第3,668,189号及び第5,292,855号及び第5,461,136号に記載されている。前記特許では、共重合された発蛍光団化合物(fluorophoric compounds)を有する耐熱性のコポリアミド、コポリエステル及びコポリエステルアミドが記載されている。米国特許第5,292,855号のコポリマーは、励起され、スペクトルの近赤外領域の波長で蛍光を発する。
【0044】
米国特許第5,424,006号及び第5,674,437号では、本発明のセキュリティ繊維で有用な燐光物質及びそれらの製造法が記載されている。蛍光物質は、励起中止時に、約千分の1秒未満で実質的に直ちに蛍光が止まる。燐光物質は、励起中止後から何
十秒又は何百秒の間、発光放射を継続できる。米国特許第5,424,006号に記載されている材料例はSrAIO:Eu Dyである。発光の減衰率は、本発明の繊維の検証可能な特徴の一つである。
【0045】
本発明のセキュリティ繊維は、撚り合せ、ケーブリング、編み、織り及び熱硬化のような従来の繊維加工によって、セキュリティ撚糸を形成する。同じ又は異なるセキュリティ繊維をセキュリティ撚糸中に組み込むことができる。
【0046】
本発明のセキュリティ製品は、セキュリティ撚糸又は他のアイテム、例えばパスポート、通貨、又は他の重要な文書であることができる。その撚糸を用いて、織物又は布において発光ロゴを再現でき、又は複雑な横断面のようなロゴを含むことができる。ケーブルセキュリティ撚糸(cabled security thread)は、色及び横断面の任意の組合せによって、特定の最終用途に対して個別に仕立てることができる。例として、セキュリティ撚糸は、赤色の発光応答を有する星型横断面(図1)を有することができると考えられる。そのよ
うなセキュリティ撚糸の用途として、中国国旗のナショナルカラーが赤であり、その国旗には5つの星があることから、中国のパスポートを製品の対象とすることができると考えられる。イタリア向けには、セキュリティ撚糸は、イタリア国旗のナショナルカラーを目標として、白色繊維と、赤色及び緑色の発光応答を有するセキュリティ繊維の組合せであることができる考えられる。
【0047】
以下、実施例を掲げて、本発明をより完全に説明する。本発明の原理を説明するために記載される特定の技術、条件、材料、割合及び報告データは例示であって、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0048】
添付の実施例において、蟻酸粘度(FAV)は、以下の事項を変更した以外はASTM−D789−97にしたがって測定される。指定された較正ピペットタイプ粘度計の代わりに、改良オストワルド粘度計とも呼ばれているCannon−Fenske粘度計を用いた。指定量の90%蟻酸100mLあたり11.00gという指定量の代わりに、90%蟻酸50.0mLあたり5.5gを用いた。
【0049】
(実施例1)
ツインシェル形(twin shell)乾燥ミキサー中において、Honeywell International Inc
.のナイロン6(グレードMBM,55FAV)を、無機発光顔料LaS:Eu2.5重量%及び第二無機発光顔料YVO:Nd2.5重量%とタンブルブレンドする。前記顔料はHoneywell Specialty Chemicals製造のものであり、それぞれLUMILUX Red CD 168及びLUMILUX IR−CD 139と呼ばれている。LaS:Eu(LUMILUX Red CD 168)顔料の95重量%は8.0マイクロメートル未満の粒径である。YVO:Nd(LUMILUX IR−CD 139)顔料の95重量%は11.0マイクロメートル未
満の粒径である。
【0050】
その配合混合物を、直径18mm及びL/D40:1のLeistritz二軸スクリュー押出
機に供給した。その押出機スクリューは、混合要素及び混練要素ならびに運搬要素を有する。押出機バレル領域温度を250℃ 〜 255℃に設定する。ポリマー溶融液をゼニスギヤーポンプに送り、次に、20 〜 325メッシュ(44マイクロメートルの開口)の17枚のスクリーンから成るグレーデッドスクリーンパック(graded screen pack)を通過させる。スクリーンパック通過後、ポリマー溶融液は、14孔紡糸口金から吐出して、図1に示してあるフィラメント横断面を生成する。吐出している溶融フィラメントは、19.5℃の並流冷却空気流によって凝固させる。押出速度は、9.46g/分であり、初期繊維巻取り遠心速度は500メートル/分である。繊維は、紡糸しながらインラインで2.8:1で延伸する。最終繊維の寸法特性及び引張特性(ASTM D2256で測定
した)は以下の通りである:
【0051】
【表1】

【0052】
この実施例のフィラメントは、図1に示してある複雑な横断面(複雑性ファクター7)(一成分)を有し、紫外線水銀ランプで照明すると、622ナノメートル(赤)においてて、また赤外領域の880及び1060ナノメートルにおいてピークを有する多重蛍光応答を有する。このフィラメントは、通常の照明下では、実質的に無色である。
【0053】
(実施例2)
5%Lumilux(登録商標)red CD 740を有するBHSグレード、90 FAV ナイロン6ポリマー;押出機バレル領域温度310℃;及び図2Aに示してあるフィラメント横断面である以外は、実施例1を繰り返した。第一繊維(実施例2X)は延伸比3.6:1でオフラインで延伸した。第二繊維(実施例2Y)は延伸比5.6:1でオフラインで延伸した。最終繊維の寸法特性及び引張特性(ASTM D2256で測定した)は以下の
通りである:
【0054】
【表2】

【0055】
この実施例のフィラメントは、図2Aに示してある複雑な横断面を有し、紫外線水銀ランプで照明すると、赤色可視光を有する。このフィラメントは、通常の照明下では、実質的に無色である。
【0056】
(実施例3)
実施例1の繊維を0.2mmの間隔で横に切断して、実施例1におけるような複雑性ファクター及び多重蛍光応答を有する「ドット」を製造する。
【0057】
(実施例4)
ツインシェル形乾燥ミキサー中において、Honeywell International Inc.のナイロン
6(グレードMBM,55FAV)を、無機発光顔料LaS:Eu(LUMILUX Red CD 168)5.0重量%とタンブルブレンドする。同じナイロン6の第二バッチを、 LUMILUX Green CD 145 という名称の異なる無機顔料 ZnSiO:Mn 5.0重量%とタンブルブレンドする。ZnSiO:Mn(LUMILUX Green CD 145)の95重量%は、7.0マイクロメートル未満の粒径である。
【0058】
その配合混合物のそれぞれを、バレル領域温度が250℃ 〜 255℃である二軸スクリュー押出機に供給する。その各ポリマー溶融液を別々のゼニスギヤーポンプ及びスクリーンパックに送り、次に、共通の紡糸ブロック中に送る。その溶融液流を米国特許第6,158,204号に記載されているように混合し、図7に示してあるフィラメント横断面を有する異相構造繊維を製造する。14本のフィラメントを、実施例1と同じ混合押出速度(combined extrusion rate)及び巻取り速度で紡糸する。その繊維を、インラインで
2.8:1で延伸する。最終繊維の寸法特性及び引張特性(ASTM D2256で測定
した)は以下の通りである:
【0059】
【表3】

【0060】
本発明のフィラメントは、図7に示してある複雑な横断面(複雑性ファクター39)(二成分)を有し、紫外線水銀ランプで照明すると、一つの成分で622ナノメートル(赤)において、また他の成分で525ナノメートル(緑)においてピークを有する並列した蛍光応答を示す。このフィラメントは、通常の照明下では、実質的に無色である。
【0061】
(実施例5)
実施例4の繊維を0.2mm間隔で横に切断して、実施例4におけるような複雑性ファクター及び多重蛍光応答を有する「ドット」を製造する。
【0062】
(実施例6)
一つの成分がLaS:Eu(LUMILUX Red CD 168)を5.0重量%含む以外
は、実施例4のようにして、図7に示してある複雑な横断面を有する異相構造繊維を調製する。第二成分は、YVO:Nd(LUMILUX IR−CD 139)顔料を2.5重量%
及びZnSiO:Mn(LUMILUX Green CD 145)顔料を2.5重量%含む。本発明のフィラメントは、図7に示してある複雑な横断面を有し(複雑性ファクター39)(二成分)、紫外線水銀ランプで照明すると、一つの成分で622ナノメートル(赤)において、また第二成分で525ナノメートル(緑)においてピークを有する並列した蛍光応答を示す。更に、第二成分は、880及び1060ナノメートルの赤外領域においても蛍光を発する。このフィラメントは、通常の照明下では、実質的に無色である。
【0063】
(実施例7)
一つの成分がLaS:Eu(LUMILUX Red CD 168)顔料を5.0重量%含む
以外は、実施例4のようにして、図7に示してある複雑な横断面を有する異相構造繊維を調製する。第二成分は、本発明と矛盾しない限りにおいてその内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,424,006号で調製されたCaAl:Eu,Sm燐光性蛍光体を5.0重量%含む。本発明のフィラメントは、図7に示してある複雑な横断面を有し(複雑性ファクター39)(二成分)、紫外線水銀ランプで照明すると、一つの成分で622ナノメートル(赤)において、また第二成分で450ナノメートル(青)においてピークを有する並列した蛍光応答を示す。更に、第二成分は、照明を中止した後でも、何十秒間にわたって、青色の燐光を放ちつづける。このフィラメントは、通常の照明下では、実質的に無色である。
【0064】
(実施例8)
ツインシェル形乾燥ミキサー中において、Honeywell International Inc.製のナイロ
ン6(グレードMBM,55FAV)を、燐光性蛍光体CaAl:Eu,Sm(実施例7を参照されたい)5.0重量%とタンブルブレンドする。Honeywell International製のポリエチレンテレフタレート(PET)(固有粘度0.85)の第二バッチを、ツ
インシェル形乾燥ミキサー中において、異なる無機発光顔料LaS:Eu(LUMILUX Red CD 168)5.0重量%とタンブルブレンドする。その配合された混合物のそれ
ぞれを、バレル領域温度がナイロン6用に250℃ 〜 255℃及びPET用に285℃
〜 300℃である二軸スクリュー押出機に供給する。その各ポリマー溶融液を別々のゼニスギヤーポンプ及びスクリーンパックに送り、次に、共通の紡糸ブロック中に送る。その溶融液流を米国特許第6,158,204号に記載されているように混合して、異相構造繊維を製造する。14本のフィラメントを、実施例1と同じ押出速度及び巻取り速度で紡糸する。その繊維は、更に延伸しない。最終繊維は、12デニール/フィラメントであり、0.070mmの有効径を有する異相構造繊維である。その繊維は、図7に示してある複雑な横断面を有する。その繊維を、Burlington Chemical Incによって製造されたBurconyl Yellow M-R 250%の酸性染料を用いる染浴中で染色する。普通の照明下では、その繊維の半分のナイロン6は黄色であるが、もう半分であるPETは実質的に無色である。紫外線水銀ランプで照明すると、繊維のPET部分は赤色の蛍光を発し、ナイロン6の部分は緑色の燐光を発する。
【0065】
(実施例9 〜 14)
以下の表Iに記載してある構造を有する本発明の他のセキュリティ繊維を調製する。
かなり詳細に本発明を説明してきたが、その詳細に厳密に固執する必要は無く、当業者に対して更なる変更又は改良が提案され得る。そのすべての更なる変更又は改良は、添付の請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
【表4−1】

【0067】
【表4−2】

【0068】
本発明の各種態様は以下の通りである。
1.a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つの成分
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントを含むセキュリティ繊維であって、該発光物質が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの波長によって励起されるとき、少なくとも2つの発光スペ
クトル応答ピークを示す前記繊維。
2.該フィラメント横断面が、少なくとも10の複雑性ファクターを有する上記1記載のセキュリティ繊維。
3.該フィラメント横断面が、少なくとも15の複雑性ファクターを有する上記1記載のセキュリティ繊維。
4.該フィラメント横断面が、少なくとも20の複雑性ファクターを有する上記1記載のセキュリティ繊維。
5.該フィラメント横断面が、少なくとも25の複雑性ファクターを有する上記1記載のセキュリティ繊維。
6.該フィラメント横断面が、図1,2,3,4,5,6及び7に図示されている群から選択される横断面である上記1記載のセキュリティ繊維。
7.成分の数が、少なくとも2つである上記1記載のセキュリティ繊維。
8.該成分が、並列関係にある上記7記載のセキュリティ繊維。
9.該成分が、異なる発光物質を含む同じポリマーから成る上記7記載のセキュリティ繊維。
10.発光応答を生起させる該波長が、赤外領域の波長である上記1記載のセキュリティ繊維。
11.発光応答を生起させる該波長が、可視領域の波長である上記1記載のセキュリティ繊維。
12.発光応答を生起させる該波長が、紫外領域の波長である上記1記載のセキュリティ繊維。
13.該発光応答の少なくとも1つが可視領域にあって、少なくとも1つの発光応答が赤外領域にある上記1記載のセキュリティ繊維。
14.発光応答を生起させる2つ以上の励起波長が存在していて、該励起波長が、該赤外領域、該可視領域及び該紫外領域から成る群の少なくとも2つの異なる領域内にある上記1記載のセキュリティ繊維。
15.該発光応答の少なくとも1つが蛍光であり、及び該発光応答の少なくとも1つが燐光である上記1記載のセキュリティ繊維。
16.該フィラメント(単数又は複数)の有効径が、0.01 〜 3mmである上記1記載のセキュリティ繊維。
17.a.乾燥状態のミキサー中でポリマー及び発光物質を混合する工程;
b.混合要素及び混練要素を有する二軸スクリュー押出機を用いて、該混合物を押出し且つ紡糸する工程;及び
c.該溶融フィラメントを冷却して凝固させる工程
から成る方法によって調製される上記1記載のセキュリティ繊維。
18.a.少なくとも5の横断面複雑性ファクター;及び
b.少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つの成分
を含む多重セキュリティ要素を有する合成ポリマーセキュリティドットであって、該発光物質が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの励起波
長によって励起されるとき、少なくとも2つの発光スペクトル応答ピークを示すことを特徴とする前記ドット。
19. 0.005 〜 0.5mmの厚さ及び0.01 〜 3mmの有効径を有する上記18記載のセキュリティドット。
20.繊維を横に切断する方法によって調製される上記18記載のセキュリティドット。
21.上記18記載のセキュリティドットを含む製品。
22.上記1記載のセキュリティ繊維を含む製品。
23.上記1記載の繊維を複数含むセキュリティ撚糸。
24.少なくとも1本の他の繊維を含む上記21記載のセキュリティ撚糸。
25.上記23記載のセキュリティ撚糸を含む製品。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】五角星型形状を有する繊維横断面図である。
【図2A】米国特許第5,057,368号に記載されている、それぞれT字型裂片を有する三裂片繊維及び四裂片繊維の横断面図である。
【図2B】米国特許第5,057,368号に記載されている、それぞれT字型裂片を有する三裂片繊維及び四裂片繊維の横断面図である。
【図3】各裂片中に軸方向に延びている(円筒状の)ホールを有する米国特許第4,770,938号に既に記載されている三裂片繊維の横断面図である。
【図4】8の字型形状の中空裂片を有する三裂片繊維の横断面図である。
【図5】各裂片の遠位末端に半円の円筒状のホールと、各裂片中に楕円形で円筒状のホールを有する四裂片繊維の横断面図である。
【図6】各裂片中に円筒状のホールが横に2つ並んでいて、それが3つあり、且つ横断面の中心に円筒状ホールが3つある三裂片繊維の横断面図である。
【図7】4つの円筒状のホールを有する異相構造四裂片繊維の横断面図である(米国特許第6,158,204号を参照されたい)。
【図8】LUMILUX(登録商標)Red CD 168という名称で市販されている無機発光顔料LaS:Euの励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示している図である。
【図9】LUMILUX Green CD 145という名称でHoneywell International Inc.から市販されているZnSiO:Mnの励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示している図である。
【図10】LUMILUX IR−DC 139という名称でHoneywell International Inc.から市販されているYVO:Ndの励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示している図である。
【図11】LUMILUX Red UC 6という名称でHoneywell International Inc.から市販されている希土類オキシ硫化物の励起スペクトル及び蛍光スペクトルを示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つの該フィラメント
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントを含むセキュリティ繊維であって、
該繊維が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの波長
によって励起されるとき、少なくとも2つの発光スペクトル応答ピークを示し;かつ
複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示される、
前記繊維。
【請求項2】
該フィラメント横断面が、少なくとも10の複雑性ファクターを有する請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項3】
該フィラメント横断面が、少なくとも15の複雑性ファクターを有する請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項4】
該フィラメント横断面が、少なくとも20の複雑性ファクターを有する請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項5】
該フィラメント横断面が、少なくとも25の複雑性ファクターを有する請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項6】
該フィラメント横断面が、図1,2,3,4,5,6及び7に図示されている群から選択される横断面である請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項7】
該フィラメントの数が、少なくとも2つである請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項8】
該フィラメントが、並列関係にある請求項7記載のセキュリティ繊維。
【請求項9】
該フィラメントが、異なる発光物質を含む同じポリマーから成る請求項7記載のセキュリティ繊維。
【請求項10】
発光応答を生起させる該波長が、赤外領域の波長である請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項11】
発光応答を生起させる該波長が、可視領域の波長である請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項12】
発光応答を生起させる該波長が、紫外領域の波長である請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項13】
該発光応答の少なくとも1つが可視領域にあって、少なくとも1つの発光応答が赤外領域にある請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項14】
発光応答を生起させる2つ以上の励起波長が存在していて、該励起波長が、該赤外領域、該可視領域及び該紫外領域から成る群の少なくとも2つの異なる領域内にある請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項15】
該発光応答の少なくとも1つが蛍光であり、及び該発光応答の少なくとも1つが燐光である請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項16】
該フィラメント(単数又は複数)の有効径が、0.01 〜 3mmである請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項17】
a.乾燥状態のミキサー中でポリマー及び発光物質を混合する工程;
b.混合要素及び混練要素を有する二軸スクリュー押出機を用いて、該混合物を押出し且つ紡糸して溶融フィラメントを生成する工程;及び
c.該溶融フィラメントを冷却して凝固させる工程
を含む方法によって調製される請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項18】
請求項1記載のセキュリティ繊維を含むセキュリティ製品。
【請求項19】
請求項1記載の繊維を複数含むセキュリティ撚糸。
【請求項20】
少なくとも1つの他の繊維を含む請求項19記載のセキュリティ撚糸。
【請求項21】
請求項19記載のセキュリティ撚糸を含むセキュリティ製品。
【請求項22】
該繊維が異なる発光物質を含む請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項23】
該繊維が単一の発光物質を含む請求項1記載のセキュリティ繊維。
【請求項24】
a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つのフィラメント
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントを含むセキュリティ繊維をその中に組み込むことによって、不正な複製から文書または製品を保護する方法であって、
該発光物質が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの
波長によって励起されるとき、少なくとも2つの発光スペクトル応答ピークを示し;かつ複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示される、該方法。
【請求項25】
a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つのフィラメント
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントを含むセキュリティ繊維を製造する方法であって、
該発光物質が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの
波長によって励起されるとき、少なくとも2つの発光スペクトル応答ピークを示し、
以下の工程を含む方法によって製造され:
a.ミキサー中でポリマーと発光物質を混合する工程;
b.混合および混練要素を有する二軸スクリュー押出機を用いて該混合物を押出しかつ紡糸して溶融フィラメントを生成する工程;および
c.該溶融フィラメントを凝固させるために冷却する工程;および
複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示される、
該方法。
【請求項26】
a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つのフィラメント
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントを含むセキュリティ繊維であって、
該フィラメントが、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの波長によって励起されるとき、少なくとも1つの発光スペクトル応答ピークを示し;かつ複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示され、ここでC=1である、
前記繊維。
【請求項27】
a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つのフィラメント
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントを含むセキュリティ繊維を製造する方法であって、
該発光物質が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの
波長によって励起されるとき、少なくとも1つの発光スペクトル応答ピークを示し、
以下の工程を含む方法によって製造され:
a.ミキサー中でポリマーと発光物質を混合する工程;
b.混合および混練要素を有する二軸スクリュー押出機を用いて該混合物を押出しかつ紡糸して溶融フィラメントを生成する工程;および
c.該溶融フィラメントを凝固させるために冷却する工程;および
複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示され、
ここでC=1である
該方法。
【請求項28】
a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つのフィラ
メント
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントを含むセキュリティ繊維をその中に組み込むことによって、不正な複製から文書または製品を保護する方法であって、
該発光物質が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの
波長によって励起されるとき、少なくとも1つの発光スペクトル応答ピークを示し;かつ複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示され、ここでC=1である
該方法。
【請求項29】
合成ポリマー繊維またはフィラメントの横断面を含むセキュリティドットであって、該繊維またはフィラメントが、
a.少なくとも5の横断面複雑性ファクター;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つの繊維またはフィラメント
を含む多重セキュリティ要素を含み;
該ドットが、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの励起波長によって励起されるとき、少なくとも2つの発光スペクトル応答ピークを示し;および複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示される、
該セキュリティドット。
【請求項30】
0.005 〜 0.5mmの厚さ及び0.01 〜 3mmの有効径を有する請求項29記載のセキュリティドット。
【請求項31】
多重セキュリティ要素を含むセキュリティフィラメントまたは繊維を形成する工程および該フィラメントまたは繊維を横に切断する工程からなる方法によって調製される請求項29記載のセキュリティドット。
【請求項32】
請求項29記載のセキュリティドットを含む製品。
【請求項33】
合成ポリマー繊維またはフィラメントの横断面を含むセキュリティドットであって、該繊
維またはフィラメントが、
a.少なくとも5の横断面複雑性ファクター;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つの繊維またはフィラメント
を含む多重セキュリティ要素を含み;
該ドットが、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの励起波長によって励起されるとき、少なくとも1つの発光スペクトル応答ピークを示し;および複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示される、
該セキュリティドット。
【請求項34】
a.少なくとも5の複雑性ファクターを有するフィラメント横断面;及び
b.その中に分散している少なくとも1種類の発光物質を含む少なくとも1つのフィラメント
を含む多重セキュリティ要素を有する少なくとも1種類の合成ポリマーフィラメントの横断面を含むセキュリティドットをその中に組み込むことによって、不正な複製から文書または製品を保護する方法であって、
該発光物質が、200 〜 2000ナノメートルの領域から選択される少なくとも1つの
波長によって励起されるとき、少なくとも1つの発光スペクトル応答ピークを示し;かつ複雑性ファクターが繊維横断面を引用し、および下式:
CF = (L+N+C)[2H/L+1](R+2/2)
(上記式中、CFは繊維横断面の「複雑性ファクター」であり;
Lは横断面の裂片又は突起の数であり;
Nは結節点又は分岐点の数であり;
Cは繊維の成分の数であり;
Hは横断面におけるホールの数であり;及び
Rは繊維横断面におけるホールの内面を一周して一つの方向に通り抜ける場合における曲率の反転数である)によって定量的に規定され、曲率の反転は、繊維横断面におけるホールの内面に対する接線の一つの側から他の側への曲率中心の位置の変化によって示される、
該方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−30224(P2009−30224A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215421(P2008−215421)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2002−568824(P2002−568824)の分割
【原出願日】平成14年2月19日(2002.2.19)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】