説明

セグメント、およびトンネル拡幅部の構築方法

【課題】トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられるコンクリート躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位の強度を確保するとともに、作業性に優れ、溶断作業等の不要なセグメント及びセグメントとコンクリート躯体との接合方法を提供する。
【解決手段】セグメント1の外側スキンプレート3、内側スキンプレート5には、複数の孔21、孔23が設けられる。即ち、孔21、孔23は、セグメント1を貫通して設けられる。外側スキンプレート3の孔21、孔23には、それぞれ蓋9、蓋11が設けられる。孔21、孔23には、コンクリート躯体との接合時に、コンクリート躯体の補強鉄筋等が貫通して設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられる躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位に使用されるセグメント、およびトンネル拡幅部の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルを有する高速道路の合流部等の施工方法としては、シールドトンネルを設けた後、合流部のシールドトンネルに部分的な開口部を設け、当該開口部に別途コンクリート躯体を設けて、コンクリート躯体により形成される空間とトンネルを連結する方法が取られている。このようなコンクリート躯体との接合部位におけるセグメントは、コンクリート躯体との接合施工時に、セグメントの加工を行う必要がある。
【0003】
図7は、従来使用されている鋼製のセグメント70を示す斜視図である。セグメント70は主に、スキンプレート71、側板73、縦リブ75、および継手板79等から構成される。トンネル外周面に相当するスキンプレート71は、トンネル外径に対応して湾曲した形状となっている。スキンプレート71の長辺側の両端には側板73が設けられる。また、スキンプレート71の短辺側の両端には、継手板79が設けられる。すなわち、スキンプレート71と側板73と継手板79により、箱型の形状となる。
【0004】
側板73と垂直方向には、一定間隔で縦リブ75が設けられる。縦リブ75は、トンネルの軸方向に配されたリブであり、シールドジャッキの推力に抵抗するとともに、スキンプレート71に作用する荷重を側板73へ伝達する役割を持つ。また、縦リブ75は、トンネル完成時において、側板73の座屈を抑止するための役割も持つ。
【0005】
側板73には、トンネルの軸方向のセグメント70同士を接合するための継手穴77が設けられる。また、継手板79には、セグメント70を周方向に接合するための接合穴81が設けられる。従って、セグメント70はトンネルの周方向および軸方向にそれぞれ接続される。ここで、各部材は鋼製であり、それぞれ溶接によって接合されている。
【0006】
図8は、セグメント70が隣接するコンクリート躯体と接合される場合の加工状態を示した図である。セグメント70とコンクリート躯体とを接合するためには、まず、セグメント70のスキンプレート71を取り外す。スキンプレート71が取り外されることで、セグメント70は梯子状となり、トンネルの内外部が空間的につながる。
【0007】
また、縦リブ75の中央部(図8の斜線部)が切断される。切断は、コンクリート躯体内に埋め込まれる補強鉄筋等との干渉を避けるためである。また、この際、縦リブ75と側板73との接合部近傍の一部は切断されずに残される。この部位が、コンクリート躯体との接合時に、シアコネクタ83として機能し、コンクリート躯体とセグメント70とのせん断接合強度を保持する。
【0008】
図9は加工後のセグメント70がコンクリート躯体85に埋め込まれて接合された状態を示す図である。図9に示すように、コンクリート躯体85に埋め込まれたセグメント70は、シアコネクタ85により、セグメント70とコンクリート躯体85とのせん断方向のずれが防止され、確実に接合される。このように、コンクリート躯体85との接合部位に使用されるセグメント70は、接合強度を得るため、シアコネクタ85を設けなければならないが、縦リブ75の切断は通常溶断により行われ、シール部材等の可燃物が近傍にあるため危険であり、作業性も悪い。
【0009】
このようなコンクリート躯体とセグメントとの接合部位の構造としては、この他に例えば、セグメント先端とコンクリート打設前の補強鉄筋を交差して配置するとともに、トンネルの頂版の端縁からの張り出し部補強鉄筋が、セグメントリングの頂部とセグメントリング中心を結ぶ垂直線を越えて先端がセグメントリングまで届くまで伸長配置し、セグメントとコンクリートが埋設一体化するセグメントの接合構造がある(特許文献1)。
【0010】
また、鋼殻の中空部に取り付けた鉄筋継手にRC部材を形成するための鉄筋を連結し、コンクリートを打設してRC部材を形成するとともに、鋼殻の中空部にコンクリートを充填することにより、鋼殻の外側にRC部材を一体に接合した鋼殻とRC部材との接合構造がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−188398号公報
【特許文献2】特開2006−97317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の接合構造では、セグメントとコンクリート躯体との接合部位を大きくすることはできるものの、セグメントとコンクリート躯体との接合強度を確保するためには、従来技術と同様に接合部位のセグメントを加工する必要があり、危険であるとともに、作業性が悪いという問題がある。また、トンネル内において補強鉄筋の施工作業等が必要となるが、トンネル内においては作業が制約される場合があるという問題がある。
【0012】
特許文献2の接合構造では、ウェブの内面にフランジ及び補強リブを溶接する必要があり、また、鉄筋継手を所定の間隔で取り付け、鋼殻とRC部材の補強鉄筋とを接続する必要がある。このため、構造が複雑であるとともに、作業工数を要するという問題がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられるコンクリート躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位の強度を確保するとともに、作業性に優れ、溶断作業等の不要なセグメント等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、第1のスキンプレートと、前記第1のスキンプレートの短辺側に設けられた接続部と、前記第1のスキンプレートの長辺側に設けられる側板と、前記第1のスキンプレートにセグメントを貫通するように設けられる孔と、前記孔に設けられた蓋と、を具備することを特徴とするセグメントである。
【0015】
前記接続部は、コンクリート内部に、アンカ材が埋め込まれ、前記アンカ材の内部にはねじが設けられてもよい。
【0016】
前記第1のスキンプレートと向かい合わせて設けられる第2のスキンプレートを更に具備し、前記第2のスキンプレートを貫通するように孔が設けられてもよい。この場合、前記第1のスキンプレートと前記第2のスキンプレートとの間には、コンクリートが打設されてもよい。
【0017】
第1の発明によれば、セグメントを貫通する孔を有し、孔を貫通するように躯体の補強鉄筋等を設けることができるため、セグメントと鉄筋との応力伝達がスムーズに行われ、孔と補強鉄筋等との隙間にコンクリートが打設されるため、別途シアコネクタ等を設けなくてもセグメントと躯体とのせん断ずれを防止することができ、また、孔には蓋が設けられるため、セグメントリング構築時に外部より水の浸入がなく、セグメントとコンクリートとの接合時に縦リブの溶断作業を行う必要が無いため、作業が安全で、かつ、コストが低減でき、また内部にコンクリートが打設されるため、縦リブが不要となり、縦リブの溶接によるセグメントの変形も生じないため寸法精度にも優れ、構造が簡易なセグメントを提供することができる。
【0018】
第2の発明は、トンネル拡幅部の構築方法であって、躯体との接合予定部に請求項1から請求項4のいずれかに記載された第1のセグメントを配置するとともに、他の部位に通常の第2のセグメントを配置してセグメントリングを構築する工程と、前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントの外部の所定の箇所を掘削する工程と、前記第1のセグメントの蓋を撤去し、前記第1のセグメントの孔にコンクリート躯体用の補強部材を配置する工程と、前記掘削された区間へ前記第1のセグメントに端部を有するように躯体を設ける工程と、前記掘削された区間の前記第2のセグメントを撤去する工程と、を具備することを特徴とするトンネル拡幅部の構築方法である。
【0019】
前記補強部材は、鉄筋および/または鉄骨であってもよい。
【0020】
第2の発明によれば、セグメントを貫通する孔に躯体の補強鉄筋等を設けることができるため、セグメントと鉄筋との応力伝達がスムーズに行われ、孔と補強鉄筋等との隙間にコンクリートが打設されるため、別途シアコネクタ等を設けなくてもセグメントと躯体とのせん断ずれを防止することができ、また、孔には蓋が設けられるため、セグメントリング構築時に外部より水の浸入がなく、セグメントとコンクリートとの接合時に縦リブの溶断作業を行う必要が無いため、作業が安全で、かつ、コストが低減できるトンネル拡幅部の構築方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トンネルを拡幅する場合等において、トンネル側方に設けられるコンクリート躯体と、トンネルを構成するセグメントリングとの接合部位に使用されるセグメント等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本実施の形態にかかるセグメント1の斜視図であり、図1(a)は、セグメント1のトンネル内側方向より見た斜視図であり、図1(b)はセグメント1のトンネル外側方向より見た斜視図である。また、図2はセグメント1の平面図である。
【0023】
セグメント1は、主に外側スキンプレート3、内側スキンプレート5、側板7、継手部側板13等から構成される。外側スキンプレート3と内側スキンプレート5は向かい合って設けられ、外側スキンプレート3と内側スキンプレート5とは、側板7、継手部側板13により接合される。外側スキンプレート3は、トンネル外周面に相当する部位であり、内側スキンプレート5は、トンネル内周面に相当する部位である。外側スキンプレート3、内側スキンプレート5は共にトンネル形状に応じた湾曲形状である。側板7は、セグメント1の側壁部で、トンネルに作用する外力に抵抗する主要部分を形成する。継手部側板13はセグメント1同士の周方向の接合部である。
【0024】
外側スキンプレート3、内側スキンプレート5には、複数の孔21、孔23が設けられる。即ち、孔21、孔23は、セグメント1を貫通して設けられる。外側スキンプレート3の孔21、孔23には、それぞれ蓋9、蓋11が設けられる。蓋9、蓋11は、セグメント1の外周部より、水の浸入を防ぐためのものである。なお、蓋9、蓋11は、例えば鋼製、樹脂製などが使用できる。
【0025】
図2に示すように、セグメント1の少なくても一方の端には接続部25が設けられ、接続部25以外の部位は埋設部27となる。埋設部27は、コンクリート躯体との接合時に、コンクリートに埋設される部分である。トンネル周方向のセグメント同士を接合し、隣接するセグメントからの力を伝達する接続部25は、内部にコンクリートが充填されている。なお、接続部25の詳細は後述する。
【0026】
接続部25の端部には、継手部側板13が設けられている。継手部側板13には、貫通穴である接合穴19が設けられる。接合穴19はセグメント1をトンネル周方向に接合する際に、継手ボルト等の接合部材の取り付け時に使用される。接合穴19にはねじ31を有する埋設アンカ29が設けられる。
【0027】
側板7には継手穴15が設けられる。継手穴15は、トンネル軸方向のセグメント同士を接続するためのものである。また、側板5の接続部25近傍の部位には、注入孔17が設けられる。注入孔17は、接続部25等にコンクリートを注入するためのものである。
【0028】
図3は、セグメント1の断面図であり、図3(a)は、図2におけるA−A断面図、図3(b)は図2におけるB−B断面図である。
【0029】
図2のA−A断面は、埋設アンカ29および孔21、孔23が配置されている部位の断面である。図3(a)に示すように、外側スキンプレート3、内側スキンプレート5との間には、孔21、孔23部を除き、接続部25を含めて、コンクリート35が打設されている。外側スキンプレート3、内側スキンプレート5の内面にはジベル33が設けられている。
【0030】
埋設部27には孔21、孔23が設けられている。孔21、孔23はセグメント1を貫通して設けられており、外側スキンプレート3側に蓋9、蓋11が設けられる。蓋9、蓋11は、孔21、孔23の形状に応じた形状であり、孔21、孔23を完全に塞ぐことができる。孔21、孔23には、コンクリート躯体との接合時に、コンクリート躯体の補強鉄筋等が貫通するように配置される。コンクリート躯体の補強鉄筋等が孔21、孔23へ設けられた状態についての詳細は後述する。
【0031】
継手部側板13には、接合穴19が設けられており、接合穴19部位におけるコンクリート35内には、埋設アンカ29が設けられている。埋設アンカ29はコンクリート35とアンカ効果により一体化されている。
【0032】
埋設アンカ29の端部には穴が設けられ、穴の内面には、タップ加工によりねじ31が設けられる。従って、ねじ31により、接合穴19を貫通した継手ボルト等で、隣接するセグメントと接合することができる。
【0033】
図2におけるB−B断面は、孔21、孔23等のない部分の断面である。図3(b)に示すように、孔21、孔23がない部分では、接続部25と埋設部27とは、コンクリート35が打設され、境界はない。このため、接続部25において、隣接するセグメントより伝達される力は、埋設アンカ29を介して、コンクリート35に伝達され、更に外側スキンプレート3、内側スキンプレート5および側板7へ伝達される。
【0034】
図4は、コンクリート躯体との接合部にセグメント1が設けられ、コンクリート躯体の主筋61、補強鉄筋63が設けられた状態を示す図である。コンクリート躯体を構築するには、まず、コンクリート躯体の形状に応じ、必要強度が確保できるよう、主筋61および補強鉄筋63が設けられる。この際、主筋61、補強鉄筋63は、それぞれ孔23、孔21を貫通するように配置される。主筋61、補強鉄筋63を設ける際には、孔21、孔23を塞いでいた蓋9、蓋11は撤去される。
【0035】
孔21、孔23の大きさおよび、孔21、孔23のセグメント1における設置位置は、施工されるコンクリート躯体に使用される主筋61、補強鉄筋63の断面形状および配筋される位置によって予め決定される。例えば、角形の孔23には、コンクリート躯体の主筋61が貫通して設けられ、円形の孔21には、補強鉄筋63が貫通して設けられる。
【0036】
なお、孔21、孔23の大きさは、それぞれ主筋61、補強鉄筋63の外径よりも十分大きいため、コンクリートの打設時には、コンクリートは孔21、孔23と主筋61、補強鉄筋63の隙間にも充填され、固結する。このため、孔21、孔23は、コンクリート躯体とのずれ止めの機能をも果たし、また、貫通する主筋61、補強鉄筋63からの力を受ける機能を有する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態にかかるセグメント1によれば、セグメント1を貫通する孔21、孔23によりコンクリート躯体に使用される主筋61、補強鉄筋63が貫通して設けられるため、主筋61や補強鉄筋63との干渉を防ぐためのセグメント1の加工が不要である。
【0038】
また、孔21、孔23は、貫通する主筋61、補強鉄筋63の外形よりも大きいため、コンクリートの打設時に、コンクリートが孔21、孔23と主筋61、補強鉄筋63の隙間にもコンクリートが充填される。従って、孔21、孔23に充填されたコンクリートによって、コンクリート躯体とセグメント1のせん断ずれが生じにくく、別途シアコネクタ等の設置が不要である。また、蓋9、蓋11を有するため、施工時において、地盤から孔21、孔23への水の浸入を防ぐことができる。
【0039】
また、セグメント1内部にはコンクリート35が打設されており、シールドジャッキによる推力をコンクリート35が受けることができるため、縦リブ等が不要であり、縦リブ設置時の溶接による変形も生じない。
【0040】
また、接続部25にねじ31を有する埋設アンカ29を設け、コンクリート35で一体化したことで、隣接するセグメントからの力は埋設アンカ29およびコンクリート35を介して、外側スキンプレート3、内側スキンプレート5、側板7へ伝達することができる。このため、継手板等が不要となり、また、継手板を外側スキンプレート3、内側スキンプレート5等へ強固に溶接することも不要となる。よって、製造工数が削減でき、溶接に起因する変形を防止することができる。
【0041】
次に、セグメント1を使用した、トンネルの拡幅工事の工程について説明する。図5(a)〜図5(f)は、工事の各工程を示した図である。
【0042】
まず、図5(a)に示すように、トンネル施工部の上部の地面40より、土留壁41を設けるとともに、その内部を掘削する。土留壁41内部には、必要に応じて支保工43を設ける。また、土留壁41の根入れ部には予め地盤改良45を施す。
【0043】
次に、図5(b)に示すように、シールド機によりトンネルを構築し、セグメントリング47a、47bを設ける。この際、コンクリート躯体と接合される部位のセグメントには、セグメント1を配置する。なお、その他の部位のセグメントは通常の鋼製セグメントや合成セグメントなどが使用できる。
【0044】
次に、図5(c)に示すように、セグメントリング47a、47b内に内部支保工49を設け、セグメントリング47の拡幅予定部位に相当するセグメントリング47aの外部(セグメントリング47a、47b間)の地盤を掘削する。掘削部には必要に応じて、支保工43を設ける。
【0045】
次に、図5(d)に示すように、セグメント1を除き、掘削した部位に面した位置(図中A部)に配置されたセグメント(通常の鋼製セグメント等)のスキンプレートを取り外す。スキンプレートを外すことで、当該セグメントは梯子状となり、セグメントリング47a、47b内部と掘削部とが空間的につながる。また、セグメント1からは、蓋9、蓋11が撤去される。
【0046】
この状態で、図4で示したように、セグメント1の孔21、孔23を貫通するように、コンクリート躯体の主筋61、補強鉄筋63を設置する。次いで、セグメント1および主筋61、補強鉄筋63を埋め込むように、図示しない型枠にコンクリートを打設して、下底版51を設ける。なお、この際、必要に応じて、セグメント1の外側スキンプレート3、内側スキンプレート5の表面に、ジベル33を設けても良い。ジベル33を設けることにより、施工するコンクリート躯体とセグメント1とのせん断ずれが更に抑制される。
【0047】
次に、図5(e)に示すように、支保工43、内部支保工49を撤去しながら、図示を省略した主筋61、補強鉄筋63を設置するとともに、図示しない型枠にコンクリートを打設して、側壁55および上底版53を設け、コンクリート躯体59を構築する。この状態で、セグメントリング47内には、舗装57等がなされ、例えば道路等が施工される。
【0048】
次に、図5(f)に示すように、セグメントリング47aとコンクリート躯体59との間の撤去セグメント62を撤去し、また、支保工43及び内部支保工49を全て撤去し、掘削部を埋め戻す。セグメントリング47a、47b内の道路工事等が終了すると、トンネルが完成する。
【0049】
図6は、図5(f)のB部拡大図であり、コンクリート躯体59にセグメント1が埋め込まれた状態を示す図である。セグメント1の上方に配置された一般セグメント60は、セグメント1の接続部25と接続されている。コンクリート躯体59の主筋61、補強鉄筋63は、セグメント1の孔21、孔23を貫通して設けられる。セグメント1の埋設部27は、主筋61、補強鉄筋63とともに、コンクリート躯体59に埋め込まれている。セグメント1の下方には、撤去セグメント62が配置されていたが、前述の通り、コンクリート躯体59施工後に撤去される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係るセグメント1を用いたトンネルの拡幅工事によれば、セグメント1は、シアコネクタ等の施工など特殊な加工や工事をすることなく、容易にコンクリート躯体59と接合することができる。すなわち、孔21、孔23に主筋61、補強鉄筋63が貫通し、孔21、孔23と主筋61、補強鉄筋63との隙間にコンクリートが回りこみ、固結することで、セグメント1とコンクリート躯体59とのせん断ずれを抑制することができる。
【0051】
また、蓋9、蓋11を有するため、地盤から孔21、孔23を介してセグメントリング47内への水の浸入を防ぐことができる。また、孔21、孔23とコンクリート躯体とが応力伝達可能であるため、セグメント1とコンクリート躯体49とは、スムーズに応力伝達することができる。
【0052】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
例えば、トンネル周方向に隣接するセグメントとの接合部としての接続部25には埋設アンカ29を用いたが、通常の継手板をスキンプレートへ強固に溶接して、接合部としても良い。また、接続部25はセグメント1の一方の端のみではなく、両側に設けても良い。なお、接続部25が片側である場合には、他方の接続部は従来の継手板とボルトでの接合で良い。また、蓋9、蓋11は、外側スキンプレート3に設けられたが、外側スキンプレート3に代えて、内側スキンプレート5に設けても良く、また、両方に設けても良い。また、セグメント1内部にはコンクリート35が打設されたが、コンクリート35に代えて、孔21、孔23を塞がないように縦リブなどを配しても良い。また、セグメント1は、外側スキンプレート3、内側スキンプレート5の両方を有したが、いずれか一方のみを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】セグメント1を示す図であり、(a)はトンネル内方向より見た斜視図、(b)はトンネル外方向より見た斜視図。
【図2】セグメント1の平面図。
【図3】セグメント1の断面図であり、(a)は図2におけるA−A断面図、(b)は図2におけるB−B断面図。
【図4】セグメント1とコンクリート躯体の主筋61、補強鉄筋63との設置状態を示す断面図。
【図5(a)】地面40を掘削し、土留壁41および地盤改良45を設けた状態を示す図。
【図5(b)】シールド機によりセグメントリング47が設けられた状態を示す図。
【図5(c)】セグメントリング47内に内部支保工49を設け、セグメントリング47間を掘削した状態を示す図。
【図5(d)】セグメントリング47を構成する一部のセグメントのスキンプレートを取り外し、下底版51を設けた状態を示す図。
【図5(e)】側壁55および上底版53を設け、コンクリート躯体59を施工した状態を示す図。
【図5(f)】支保工を撤去し、掘削部を埋め戻した状態を示す図。
【図6】図5(f)のB部拡大図であり、セグメント1とコンクリート躯体59とが接合された状態を示す図。
【図7】セグメント70を示す斜視図。
【図8】コンクリート躯体と接合する部位におけるセグメント70の加工状態を示す図。
【図9】セグメント70がコンクリート躯体85と接合された状態を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1………セグメント
3………外側スキンプレート
5………内側スキンプレート
7………側板
9、11………蓋
13………継手部側板
15………継手穴
17………注入孔
19………接合穴
21、23………孔
25………接続部
27………埋設部
29………埋設アンカ
31………ねじ
33………ジベル
35………コンクリート
40………地面
41………土留壁
43………支保工
45………地盤改良
47………セグメントリング
49………内部支保工
51………下底版
53………上底版
55………側壁
57………舗装
59………コンクリート躯体
60………一般セグメント
61………主筋
62………撤去セグメント
63………補強鉄筋
70………セグメント
71………スキンプレート
73………側板
75………縦リブ
77………継手穴
79………継手板
81………接合穴
83………シアコネクタ
85………コンクリート躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスキンプレートと、
前記第1のスキンプレートの短辺側に設けられた接続部と、
前記第1のスキンプレートの長辺側に設けられる側板と、
前記第1のスキンプレートにセグメントを貫通するように設けられる孔と、
前記孔に設けられた蓋と、
を具備することを特徴とするセグメント。
【請求項2】
前記接続部は、
コンクリート内部に、アンカ材が埋め込まれ、前記アンカ材の内部にはねじが設けられることを特徴とする請求項1記載のセグメント。
【請求項3】
前記第1のスキンプレートと向かい合わせて設けられる第2のスキンプレートを更に具備し、
前記第2のスキンプレートを貫通するように孔が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2記載のセグメント。
【請求項4】
前記第1のスキンプレートと前記第2のスキンプレートとの間には、コンクリートが打設されていることを特徴とする請求項3記載のセグメント。
【請求項5】
トンネル拡幅部の構築方法であって、
躯体との接合予定部に請求項1から請求項4のいずれかに記載された第1のセグメントを配置するとともに、他の部位に通常の第2のセグメントを配置してセグメントリングを構築する工程と、
前記第1のセグメントおよび前記第2のセグメントの外部の所定の箇所を掘削する工程と、
前記第1のセグメントの蓋を撤去し、前記第1のセグメントの孔にコンクリート躯体用の補強部材を配置する工程と、
前記掘削された区間へ前記第1のセグメントに端部を有するように躯体を設ける工程と、
前記掘削された区間の前記第2のセグメントを撤去する工程と、
を具備することを特徴とするトンネル拡幅部の構築方法。
【請求項6】
前記補強部材は、
鉄筋および/または鉄骨であることを特徴とする請求項5記載のトンネル拡幅部の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図5(e)】
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【図5(f)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−138388(P2009−138388A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314745(P2007−314745)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】