説明

セグメントのローリング修正方法

【課題】シールドトンネルなどの掘削壁面を六角形セグメントで覆工する際に生ずるローリングやセグメントの傾きを簡単に且つ計画的に修正できる方法を提供する。
【解決手段】六角形セグメント1〜54が互いに接する3個のセグメントからなるセグメント継ぎ手の交差部61の変位量を測定し、リング間継ぎ手とピース間継ぎ手に薄い板状の挙動コントロール材59を設置することによって、セグメントの挙動をコントロールして、ローリングや傾きなどを修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル築造時の覆工材として六角形セグメントを使用する場合に生じるローリングやセグメントの変位などを計画的にコントロールする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル築造時の覆工材として使用される六角形セグメントは、セグメント同士が凸凹に組み立てられるため、トンネル周囲の土や地下水などから、セグメントが受ける力に対し、セグメント自体が持つ強度で抵抗できる。さらに、真円に近い覆工ができることなど多くの利点があり採用が増えている。しかし、六角形セグメントは、すべてのセグメント同士が正確にかみ合ってこそ、その利点を十分に発揮するので、精密に製作、施工されなければならないのであるが、微小な製作、施工誤差は防げない。その製作誤差や施工誤差が積み重なってセグメントのローリングが大きくなり、セグメントが破損したり、漏水が発生したり、シールド掘進工法などの施工時に、掘進ジャッキの靴の部分(スプレッダー)が、セグメントの垂直継ぎ手(リング間継ぎ手)面から外れてしまい掘進不能になる危険性がある。そこで、ローリングを修正する方法として、セグメントの組み立て順番を変えたり、無理やり修正方向に力を加えたり、傾斜端(ピース間継ぎ手)面にシート材を設置する方法(特許文献1参照)が知られている。
また、セグメントが傾いた場合に対する修正方法は明確でない。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2001−59396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ローリング修正のために、組み立て順番を変えたり、無理やり修正方向に力を加えたりして施工しても簡単に修正できない。特許文献1のように、ピース間継ぎ手にシート材を設置する方法では、リング間に隙間ができ、掘進時のジャッキ圧力によってセグメントに曲げモーメントがかかりセグメントが破損する危険性がある。ジャッキ圧力によって、セグメントが、「くさび」のように食い込んだ場合は、既設のセグメントの間隔が強制的に広げられてしまい、リングの径が大きくなるだけであり、セグメントに異常な応力を加えずに、計画的にローリングを修正する方法がない。また、何らかの理由によって発生するセグメントの掘進方向への傾きを、早めに察知し修正する方法がない。
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
互いに接する3個のセグメントで構成される継ぎ手の交差部は、正常ならY字形または逆Y字形になるが、ローリングや傾きが生じた場合はY字形が微妙に変形する。このY字形の変形量を測定しながら正常のY字形になるようにセグメントの挙動をコントロールしてローリングの進行を止め、逆にローリングさせることによってローリングを修正すると同時にY字形の変形を正常に戻すという、例えば、車のハンドルのようにセグメントの挙動を自由にコントロールする方法である。その手段は、止水シールと同等な材質などの、劣化しない不透水性の薄い板状の材料で、セグメントの厚さより多少小さい幅で、リング間継ぎ手面やピース間継ぎ手面と同様な形状の、リング間挙動コントロール材とピース間挙動コントロール材を予め製作する。
現場で測定した、セグメントの継ぎ手の交差部の変位測定結果に基づき、掘進方向に対し、遅れている新たに組み立てるセグメントの既設側のリング間継ぎ手に、リング間挙動コントロール材を接着剤で設置してから組立てて、セグメントを進めて、リング間継ぎ手を正常な位置に修正する。進んでいるセグメントには、極力、リング間挙動コントロール材を使用しない。次のセグメントのリング間継ぎ手の隙間を大きくさせないように、隣接するセグメントのピース間継ぎ手に、ピース間挙動コントロール材を設置して組み立てる。次のリングで、リング間継ぎ手と片側のピース間継ぎ手に、挙動コントロール材を設置し、セグメントを逆回転させる。こうすることによって、リング間に隙間を作らないで、かつ、リング径を変えない。変形量が大きい場合は、同様な作業を繰り返してローリングを修正する。
セグメントの掘進方向への傾きを修正する方法は、リング間継ぎ手の長さの半分以下のリング間挙動コントロール材を傾きが直る側に設置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、互いに接する3個のセグメントで構成される継ぎ手の交差部のY字形の変形量を測定し、薄い板状のコントロール材を計画的に使用することによって、継ぎ手の交差部が正確なY字形になるようにセグメントの挙動をコントロールし、ローリングを計画的に確実に修正することができる。さらに、故意にローリングを進行させたり、停止させたりできる。
また、常に、継ぎ手の交差部の変位を測定することによって、セグメントの掘進方向への傾きを早期に発見でき、早期にローリング防止や、セグメントの破損防止措置ができる。
このように、誰でも計画的に簡単にセグメントの挙動をコントロールできる方法を提供することにより、品質の良いトンネルを築造できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のローリング修正方法図
【図2】本発明で測定しなければならない六角形セグメントの継ぎ手の交差部の変形図
【図3】本発明のセグメントが傾いた場合の修正方法図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、既設六角形セグメント(1〜42)は、6ピース(1〜6)で1リングとし、掘進方向(65)に掘進するものとして、新設六角形セグメント(43〜54)でローリングを修正する場合において説明する。
2リング(7〜12)目のセグメント(9)に、製作誤差や施工誤差などのローリング原因物(55)によって下向きの、セグメント変位方向(60)に変位が生じ、3リング(13〜18)目で下向きのローリング(56)が発生する。4リング(19〜24)目で、すでに提案されているローリング修正シート材(57)によって、ローリング(56)を修正する場合、リング間に隙間が生じ、セグメントの破損や漏水が生じる危険性がある。それらを許せば、5リング(25〜30)目でローリングは修正できることにはなるが、セグメントの破損や漏水の危険を冒しながらの修正では、真の修正方法とは言えない。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
六角形セグメントのセグメント継ぎ手の交差部(61)が正常なら、六角形セグメントの3ピース(2、4、8)の交差部のようにきれいなY字形になる。セグメントが変位した場合は、六角形セグメントの3ピース(7、10、13)の交差部や、六角形セグメントの3ピース(15、17、21)の交差部ように変形する。
6リング(31〜36)目のセグメント(33)に、ローリング原因物(55)が発生し、7リング(37〜42)目にローリング(56)が発生した時の修正方法を説明する。
(イ)六角形セグメントのセグメント継ぎ手の交差部(61)の、三角形の頂点になるセ グメント(4、10、17)の頂点が掘進側のセグメント(8、13、21)に対 しどれだけ変位しているかを測定する。
(ロ)六角形セグメント(4)は、六角形セグメント(8)に対し、変位はゼロであるが 、六角形セグメント(10)は、六角形セグメント(13)に対し、遅れており、 さらに、上に変位している。六角形セグメント(17)は、六角形セグメント(2 1)に対し、遅れており、さらに、下に変位している。
(ハ)(イ)(ロ)に従い、新設セグメント(44)を組み立てる直前の既設セグメント (34,38,40)の交差部と、既設セグメント(35、38、41)の交差部 の変位量を0.1ミリメートル単位程度で測定記録する。
(ニ)(ハ)で測定した結果、既設セグメント(40)と比べ、掘進方向(65)に遅れ ているセグメント(38)の遅れを取り戻すように、新規セグメント(44)の既 設セグメント(38)側にリング間挙動コントロール材(58)を接着剤で設置し 組み立てる。
(ホ)(ニ)で、既設セグメントとなったセグメント(44)が、セグメント(41,4 4,47)の交差部の変位量測定結果で、既設セグメント(38)に比べて下方向 に変位していることを確認し、新設セグメント(50)を上方向に回転させるため に、セグメント(47)側に、ピース間挙動コントロール材(59)を設置する。 このとき、ピース間挙動コントロール材を設置し、掘進力を与えた時、セグメント (46)とセグメント(47)の間隔を広げてリングの周長を変えたり、セグメン ト(46)とセグメント(47)が支点になって、セグメント(50)に曲げモー メントを与えたりしないように、セグメント(44)との間に、リング間挙動コン トロール材を設置して組み立てることが重要である。
(ヘ)ローリングが修正するまで(ハ)(ニ)(ホ)を繰り返す。
(ト)正常六角形セグメント(62)が、ローリング原因物(55)によって、傾いた六 角形セグメント(63)になった場合は、リング間継ぎ手の半分以下の長さにした リング間挙動コントロール材(58)を、傾きが直る側に設置して修正六角形セグ メント(64)のように修正する。
【符号の説明】
【0009】
1〜42既設六角形セグメント、43〜54新設六角形セグメント、55ローリング原因物、56ローリング量、57ローリング修正用シート材、58リング間挙動コントロール材、59ピース間挙動コントロール材、60セグメント変位方向、61セグメント継ぎ手の交差部、62正常六角形セグメント、63傾いた六角形セグメント、64修正六角形セグメント、65掘進方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六角形セグメントが互いに接する3個のセグメントの継ぎ手の変位量を測定しながら、リング間継ぎ手とピース間継ぎ手に薄い板状の挙動コントロール材を設置してセグメントの挙動をコントロールしてローリングやセグメントの傾きなどを修正する方法。
【請求項2】
材質が、止水シールと同程度、あるいは、不透水性で、変形、劣化が少なく、水膨張しないもので、リング間継ぎ手面やピース間継ぎ手面と同じような形状で、セグメントの厚さより少し小さい幅に加工した、薄い板状の挙動コントロール材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−247065(P2011−247065A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131443(P2010−131443)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(709003643)
【Fターム(参考)】