説明

セグメントの周方向継手構造、このセグメントの周方向継手構造を用いたセグメント結合方法、及びセグメントの周方向継手金具

【課題】セグメントの結合時に周方向の遊びによるセグメント間の目開きの発生を抑制可能なセグメントの周方向継手構造を提供すること。
【解決手段】トンネルの外殻を形成するセグメント1の端面11に設けられ、係合頭部23を有した雄継手部材20と、セグメント1の端面12に設けられ、収容状態の係合頭部23と周方向に係合可能であると共に非収容状態の係合頭部23と非係合状態となる頭部収容凹部32aを備えた雌継手部材30と、から構成され、係合頭部23は、渦巻ばね50により退避するように付勢されつつ、その退避方向への移動を規制部材60により規制され、頭部収容凹部32a内における非収容状態から収容状態となる移動に伴って、規制部材60による退避方向への移動の規制が解除されて頭部収容凹部32aと周方向に係合可能となることを特徴とするセグメントの周方向継手構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの覆工に使用されるセグメントどうしを周方向に結合させるセグメントの周方向継手構造、このセグメントの周方向継手構造を用いたセグメント結合方法、及びセグメントの周方向継手金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の円弧板状のセグメントを周方向に接合していくことで円筒状のトンネルの覆工を組み立てるに際して、嵌合方式の連結具が使用されることが知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
この特許文献1には、セグメントの周方向の一方の端面に設けられた円柱状の雄継手部材と、周方向の他方の端面に設けられたC字状断面の雌継手部材とを備え、セグメントどうしを周方向に結合させる場合、一方のセグメントの雄継手部材を、もう一方のセグメントの雌継手部材に挿入させて、結合させるようにしたセグメントの周方向継手構造について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−173374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のセグメントの周方向継手構造にあっては、雄継手部材と雌継手部材とに寸法誤差が存在するため、両継手部材の嵌合部分には、最大寸法誤差を許容できる余裕を持たせた設計となっている。この余裕のため、組み立てたセグメント間に周方向に遊びが発生し、セグメントどうしの結合後に、引張力や曲げモーメントが作用した場合に、目開きが生じてトンネル全体の変形を招くおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述の従来の問題点に着目して成されたもので、セグメントの結合時に周方向の遊びによるセグメント間の目開きの発生を抑制可能なセグメントの周方向継手構造、このセグメントの周方向継手構造を用いたセグメント結合方法、及びセグメントの周方向継手金具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため本発明のセグメントの周方向継手構造は、トンネルの外殻を形成するセグメントの周方向の一方の端面である第1の端面に設けられ、前記周方向に突出した係合頭部を有した雄継手部材と、前記セグメントの周方向の他方の端面である第2の端面に設けられ、収容状態で前記係合頭部と前記周方向に係合可能であると共に非収容状態で前記係合頭部と前記周方向に非係合状態となる頭部収容凹部を備えた雌継手部材と、から構成され、前記係合頭部は、付勢部材により前記雄継手部材に対して前記第1の端面方向に退避するように付勢されつつ、その退避方向への移動を規制部材により規制され、前記頭部収容凹部内における非収容状態から収容状態となる移動に伴って、前記規制部材による前記退避方向への移動の規制が解除されて前記頭部収容凹部と前記周方向に係合可能となることを特徴とするセグメントの周方向継手構造とした。
【0008】
また、本発明のセグメント結合方法は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のセグメント継手構造を用いてセグメントの周方向の端面どうしを結合させる結合方法であって、前記雄継手部材において、前記係合頭部を、前記付勢部材により前記雄継手部材に対して前記退避方向へ移動するように付勢しつつ、その退避方向への移動を前記規制部材により規制した状態とする工程と、前記セグメントの前記第1の端面と結合相手の前記セグメントの前記第2の端面とを対面させ、さらに、前記第1の端面の前記雄継手部材の前記係合頭部を、前記第2の端面の前記雌継手部材の前記頭部収容凹部に対し非収容状態から収容状態となる方向に移動させるように両端面を相対移動させるのに伴って前記規制部材による規制を解除し、前記係合頭部を前記付勢部材の付勢力により退避方向へ移動させて前記頭部収容凹部に対して前記周方向に係合させる工程と、を備えていることを特徴とするセグメント結合方法とした。
【0009】
また、本発明のセグメントの周方向継手金具は、トンネルの外殻を形成するセグメントの周方向端面の一方に固定される雄継手部材と、前記周方向端面の他方に固定される雌継手部材とからなるセグメントの周方向継手金具において、前記雄継手部材は、前記セグメントの周方向端面の一方に固定されるベース部材と、付勢部材により前記ベース部材方向に退避するように付勢された係合頭部と、該係合頭部の退避方向への移動を規制する規制部材と、を備え、前記雌継手部材は、前記セグメントの周方向端面の他方に固定されるベース部材と、収容状態で前記係合頭部と周方向に係合可能であると共に非収容状態で前記係合頭部と非係合状態になる頭部収容凹部と、を備え、前記係合頭部の前記頭部収容凹部内における前記非収容状態から前記収容状態とする移動に伴って、前記規制部材による前記係合頭部の退避方向への規制が解除されて前記係合頭部と前記頭部収容凹部とを周方向に係合可能としたことを特徴とするセグメントの周方向継手金具とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、係合頭部を付勢部材により雄継手部材に対して第1の端面方向に退避するように付勢しつつ、その退避方向への移動を規制部材により規制した状態とした上で、結合させるセグメントの第1の端面と第2の端面とを対面させ、さらに、第1の端面の雄継手部材の係合頭部を、第2の端面の雌継手部材の頭部収容凹部に対し非収容状態から収容状態となる方向に移動させるように両端面を相対移動させ、これに伴って、規制部材による規制を解除する。
【0011】
したがって、係合頭部は、付勢手段の付勢力で退避方向へ移動し頭部収容凹部に対し周方向に遊びのない状態で係合する。このように、係合頭部が退避方向へ移動して頭部収容凹部との間の周方向の遊びが無くなり、セグメント間の周方向の目開きが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態のセグメントの周方向継手構造及びセグメントの周方向継手金具を示す断面図であって、セグメントの結合前の状態であって係合頭部が頭部収容凹部に対して非収容状態となった状態を示している。
【図2】実施の形態のセグメントの周方向継手構造及びセグメントの周方向継手金具を示す断面図であって、セグメントの結合時に、係合頭部を受凹部に挿入した状態であって、頭部収容凹部に対し非収容状態から収容状態とする過程を示している。
【図3】実施の形態のセグメントの周方向継手構造及びセグメントの周方向継手金具を示す断面図であって、セグメントの結合時に、係合頭部を頭部収容凹部に対し非収容状態から収容状態とする過程を示している。
【図4】実施の形態のセグメント継手を示す断面図であって、セグメントの結合時に、係合頭部を頭部収容凹部に対し非収容状態から収容状態とする過程で係合頭部の退避方向への移動を規制する規制部材が脱落した状態を示している。
【図5】実施の形態のセグメントの周方向継手構造及びセグメントの周方向継手金具を示す断面図であって、セグメントの結合時に、係合頭部を頭部収容凹部に対し収容状態として周方向に係合させた状態を示している。
【図6】実施の形態のセグメントの周方向継手金具の雄継手部材の要部を示す拡大断面図である。
【図7】実施の形態のセグメントの周方向継手金具の雄継手部材の要部を示す拡大断面図であって、(a)は図6のSa線の位置の断面を示し、(b)は図6のSb線の位置の断面を示し、(c)は図6のSc線の位置の断面を示し、(d)は図6のSd線の位置の断面を示し、(e)は規制部材の変形例を示している。
【図8】実施の形態のセグメントの周方向継手金具の雌継手部材の要部を示す拡大図であって、(a)は図1のS8a線の位置で矢印方向から見た図であり、(b)は図1のS8b線の位置の断面を示している。
【図9】実施の形態のセグメントの周方向継手金具の雌継手部材を示す平面図であって、雌継手部材を図1において上方から見た状態を示している。
【図10】実施の形態のセグメントの周方向継手構造及びセグメントの周方向継手金具を備えたセグメントを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図10は、本実施の形態のセグメントの周方向継手構造及びセグメントの周方向継手金具を備えたセグメント1を示す斜視図である。このセグメント1は円弧板状の部材で、複数のセグメント1,・・・を組み合わせることによってトンネルの円筒状の覆工(外殻)が形成される。なお、本実施の形態では、セグメント1として鋼材とコンクリートとが一体になるように予め工場等で製作される合成セグメントを用いているものとする。
【0015】
以下、トンネルが延伸される方向(セグメント1に対して矢印Zの方向)をトンネルの軸方向といい、円筒状のトンネルの円弧方向(セグメント1に対して矢印CFの方向)をトンネルの周方向といい、覆工の地山側(セグメント1に対して矢印Yoの方向)をトンネルの外周面といい、覆工の内空側(セグメント1に対して矢印Yiの方向)をトンネルの内周面という。なお、トンネルの軸方向に関しては、以下、トンネル軸方向という。
【0016】
実施の形態のセグメントの周方向継手金具としてのセグメント継手2は、セグメント1どうしを周方向に結合させるもので、雄継手部材20と雌継手部材30とを備えている。
【0017】
詳細にはセグメント1の周方向の一方の端面11に、雄継手部材20と雌継手部材30とがトンネル軸方向に並んで設けられ、セグメント1の周方向のもう一方の端面12に、各継手部材20,30と対となる雌継手部材30と雄継手部材20とが、トンネル軸方向に並んで設けられている。
【0018】
すなわち、複数のセグメント1によりトンネルの円弧を形成するべく周方向に端面11と端面12とを対向させて配置させた際に、端面11の雄継手部材20と端面12の雌継手部材30とが対向し、端面11の雌継手部材30と端面12の雄継手部材20とが対向するように設置されている。そして、雄継手部材20と雌継手部材30との結合により、周方向に隣り合うセグメント1,1どうしが、周方向に結合される構造となっている。したがって、図10において手前側に配置された雄継手部材20と雌継手部材30との組合せにとっては、端面11が第1の端面に相当し、端面12が第2の端面に相当するが、図10において奥側に配置された雌継手部材30と雄継手部材20との組合せにとっては、端面11が第2の端面に相当し、端面12が第1の端面に相当する。
【0019】
また、セグメント1のトンネルの軸方向の側面13には、トンネルの周方向に一定の間隔でリング間継手棒40がトンネル軸方向に突出して設けられている。
【0020】
なお、セグメント1のトンネル軸方向のもう一方の側面(図示省略)には、リング間継手棒40と同軸にリング間継手口(図示省略)が設けられている。したがって、セグメント1をトンネル軸方向に隣り合うセグメント1に対してトンネル軸方向に移動させて側面13をもう一方の側面と当接させた際に、リング間継手棒40がリング間継手口(図示省略)に挿入されてトンネル軸方向の結合が成される構造となっている。
【0021】
次に、実施の形態のセグメント継手2について説明する。
【0022】
セグメント継手2の雄継手部材20は、図1の断面図に示すように、雄側ベース部材21と軸部材22と係合頭部23と渦巻ばね(付勢部材)50と規制部材60とを備えている。
【0023】
雄側ベース部材21は、金属製で棒状に形成されており、中心軸を端面11に直交する方向に向けて、端面11からセグメント1の内部に差し込むように設置されている。また、雄側ベース部材21の端面11側の端部には、図6の拡大断面図に示すように、端面11に開口された支持孔21aが形成されており、その内周には、雌螺子21bが切られている。
【0024】
軸部材22は、金属製で棒状に形成されており、軸方向中央部の大径部22aを挟んで、第1の雄螺子22bと第2の雄螺子22cとが形成され、さらに、第2の雄螺子22c側の先端には、小径となったばね支持軸22dが形成されている。そして、この軸部材22は、第1の雄螺子22bを、支持孔21aの雌螺子21bに噛み合わせることで雄側ベース部材21と同軸に結合されて片持ち支持されている。
【0025】
係合頭部23は、内周に軸部材22の第2の雄螺子22cに噛み合う雌螺子23aが形成されたナット状のものであり、軸部材22を中心に回転させることにより、軸部材22に沿って端面11の直交方向に移動する。
【0026】
本実施の形態では、係合頭部23に、矢印Ys方向から視て時計回り方向に回転させると端面11及び雄側ベース部材21に近付く退避方向への軸方向移動が生じ、矢印YS方向から視て反時計回り方向に回転させると端面11及び雄側ベース部材21から遠ざかる軸方向移動が生じるものとする。
【0027】
そして本実施の形態では、雄側ベース部材21の雌螺子21bと第1の雄螺子22bを逆螺子とし、軸部材22の第2の雄螺子22cと雌螺子23aを正螺子としている。これは、渦巻ばね50の付勢力で係合頭部23を回転させようとした際に、係合頭部23が正常に回転しなかった場合に、渦巻ばね50の反力で軸部材22が雄側ベース部材21に対して回転して抜け出すことを防止するためである。
【0028】
加えて、第2の雄螺子22cは、2条あるいは多条螺子としている。これにより係合頭部23を回転させた際の回転量に対する矢印Ys方向への移動距離が1条螺子の場合よりも大きくなる。
【0029】
さらに、係合頭部23には、ばね支持軸22dとの間に収容空間24を形成する円筒部23bが一体に形成されている。
【0030】
渦巻ばね50は、収容空間24において、ばね支持軸22dの外周に巻き付けられて、内周側の端部がばね支持軸22dに係合される一方、外周側の端部が係合頭部23の円筒部23bに係合されている。この係合は、渦巻ばね50の外周端部50aが、円筒部23bを横断して係合され、一方、内周端部は、ばね支持軸22dの端面に開口して軸方向に延在された係合溝22eに挿入された係合構造となっている。
【0031】
そして、渦巻ばね50は、係合頭部23に対して雄側ベース部材21から遠ざかる軸方向移動を生じさせる回転(矢印YS方向から視て反時計回り方向の回転)を与えた場合に巻きが縮まって弾性力が蓄えられる。したがって、渦巻ばね50は、その復元力により、係合頭部23を雄側ベース部材21に近付ける退避方向の軸方向移動を生じさせる回転(矢印YS方向から視て時計回り方向の回転)を与える。
【0032】
なお、本実施の形態では、係合頭部23を大径部22aに当接させてから渦巻ばね50を収容空間24にセットし、この時点で、渦巻ばね50は、自然長の初期状態となるようにしている。
【0033】
規制部材60は、合成樹脂製、木製、あるいは金属製のもので、図7(b)に示すU字断面形状に形成されており、軸部材22の大径部22aに軸直交方向(図7(b)において上下方向に)に着脱可能に形成されている。なお、規制部材は、図7(e)に示す規制部材600のような断面形状に形成することもできる。
【0034】
次に、前記セグメント継手2の雌継手部材30について説明する。
【0035】
雌継手部材30は、図1に示すように、セグメント1において端面12から周方向に凹んで形成された端面凹部12aのトンネル軸方向の一端に設置されている。この端面凹部12aは、図8に示すように、端面12の正面方向から見てトンネル軸方向に長く、トンネル軸方向の両端部が円弧形状に形成されている。
【0036】
図1に戻り、雌継手部材30は、金属製の棒状に形成され、雌側ベース部31と受部32とが一体に形成されている。
【0037】
雌側ベース部31は、円柱状に形成され、中心軸を端面12に対し直交方向に向けて、端面凹部12aに接してセグメント1の内部に設置されている。
【0038】
受部32は、図1において端面凹部12aの下半分に設置されている。
【0039】
また、受部32は、図8(a)に示すように、U字の空間である頭部収容凹部32aを備え、かつ、図1及び図9に示すように、頭部収容凹部32aの端部に係合フランジ32fを備えている。また、係合フランジ32fは、図8(b)に示すようにU字状に形成され、その内側には、端面凹部12aの他端側に開口したU字状の長溝32bが形成されている。なお、長溝32bは、その開口端では、徐々に拡幅されている。
【0040】
端面凹部12a及び頭部収容凹部32aは、連続する1つの凹状の空間である受凹部70を形成している。この受凹部70は、図1及び図8(b)に示すように、端面12に開口されて係合頭部23を周方向に挿入可能な挿入口71を備え、また、係合頭部23をトンネル軸方向に移動可能な幅及び深さに形成されている。
【0041】
また、長溝32bは、その幅が、軸部材22の大径部22aを挿通可能であるが、規制部材60は挿通することができず、かつ、係合頭部23と周方向に係合可能な寸法に形成されている。そして、係合フランジ32fの板厚は、軸部材22の大径部22aの軸方向寸法よりも大きな寸法に形成されている。
【0042】
さらに、規制部材60は、図1のトンネルの周方向(矢印CF方向)の寸法は、係合頭部23を、頭部収容凹部32a内に収容して係合フランジ32fに周方向に係合させる際に、確実に係合頭部23と端面11との間に、係合フランジ32fを差し込むことができる間隔を確保可能な寸法に形成されている。この寸法は、従来の最大公差に相当する寸法に形成されている。
【0043】
次に、実施の形態の作用について説明する。
【0044】
セグメント1は、シールドマシン(図示省略)内で周方向及びトンネル軸方向に結合されて組み立てられる。このとき、実施の形態のセグメント継手2を用いてセグメント1とセグメント1とを周方向に結合させてセグメントリングを形成する場合の作業手順を説明する。
【0045】
この場合、まず、各雄継手部材20では、あらかじめ係合頭部23を、大径部22aに当接する初期位置から、軸部材22に対して反時計回り方向に回転させ大径部22a(雄側ベース部材21)から離した位置に配置させる。このような係合頭部23の時計回り方向の回転によって、渦巻ばね50に、短縮方向に巻かれる弾性変形が生じ、復元力(付勢力)が蓄えられる。
【0046】
そして、規制部材60を、図1に示すように雄側ベース部材21と係合頭部23との間に介在させて、図7(b)に示すように、軸部材22の外周に装着する。これにより、係合頭部23が、渦巻ばね50の復元力により時計回り方向に回転して軸部材22に対して雄側ベース部材21に近付く退避方向に軸方向移動するのが、規制部材60により規制された状態に維持される。
【0047】
なお、このとき規制部材60は、U字の開口方向を、セグメント1の軸方向中央方向に向けておく。
【0048】
次に、セグメント1,1どうしの結合作業に移る。
【0049】
この場合、一方のセグメント1の端面11に、もう一方のセグメント1の端面12を対向させ、さらに、図10において一点鎖線の矢印に示すように、雄継手部材20の係合頭部23を各端面11,12に開口された挿入口71からセグメント1,1の内部(受凹部70内)に挿入する。すなわち、図1に示すように、両セグメント1,1の端面11,12の位置をトンネル軸方向にずらした状態で、一方のセグメント1を他方のセグメント1に対して矢印Y1方向に移動させ、図2に示すように、係合頭部23を受凹部70内に挿入した状態とする。
【0050】
そして、この状態から、一方のセグメント1を他方のセグメント1に対して、図2の矢印Y2で示す方向(トンネル軸方向)にスライドさせる。
【0051】
このスライドにより、図3に示す位置で、規制部材60が雌継手部材30の係合フランジ32fに当接し、これ以上の矢印Y2方向の移動が規制されるのに対し、図4に示すように、軸部材22が長溝32bに沿って長溝32b内を移動し、これにより、規制部材60が軸部材22から脱落する。
【0052】
このように規制部材60が軸部材22から脱落することにより、係合頭部23の軸方向の移動規制が解除され、係合頭部23が渦巻ばね50の復元力により時計回り方向に回転して、軸部材22に対して雄側ベース部材21に近付く退避方向に移動する。
【0053】
これにより、雄継手部材20と雌継手部材30との軸方向の隙間が無くなり、両セグメント1,1の端面11と端面12とが密着状態となり、両セグメント1,1間の周方向の遊びによる目開きの発生を抑制することができる。これによって、上記目開きを原因とするトンネルの変形を防止できる。
【0054】
さらに、本実施の形態のセグメント継手2では、係合フランジ32fの板厚が大径部22aの軸方向寸法よりも大きいことで、セグメント1,1どうしの結合完了後も、渦巻ばね50に復元力が蓄えられている。
【0055】
これにより、以下のような作用が得られる。
【0056】
すなわち、シールドマシン(図示省略)内でセグメント1,1・・・を組み立てた後、セグメント1が地山に押し出され、そのときセグメントリングが外界の土水圧などで圧縮力を受け、セグメント1,1の間で周方向の間隔を狭める相対移動が生じる場合がある。
【0057】
このような場合、渦巻ばね50に残っている復元力により、係合頭部23が時計回り方向に回転し、この相対移動による係合頭部23の緩みの発生を軽減し、この緩みによる目開きの発生を抑制できる。
【0058】
以上説明した実施の形態のセグメント継手にあっては、以下に列挙する効果を有する。
【0059】
a)セグメント1,1どうしの周方向の結合時に、セグメント1,1どうしを端面11,12に沿って相対移動させて係合頭部23を頭部収容凹部32aに収容させるのに伴い、係合頭部23が渦巻ばね50の復元力により端面11及び雄側ベース部材21に近付く退避方向へ移動するようにした。
【0060】
このため、係合頭部23と端面11との間隔を、規制部材60により従来の最大公差に相当する寸法だけ確保していても、規制部材60の脱落後は雌継手部材30との間の周方向の遊びを削減し、この遊びによる目開きの発生を抑制できる。
【0061】
また、セグメント1,1どうしの結合作業時に係合頭部23を手動により移動させる作業が不要であり、作業性に優れる。
【0062】
b)係合頭部23は、係合頭部23とベース部材21との間に介在された金属製の渦巻ばね50による付勢力で雄側ベース部材21に対して回転するのに伴って退避方向に移動するようにした。
【0063】
したがって、付勢部材として、係合頭部23を直接退避方向へ付勢して移動させるものと比較して、付勢部材の設置が容易となる。
【0064】
また、金属製の渦巻ばね50は、狭い収容空間24内に配置可能であり、雄継手部材20及び係合頭部23のコンパクト化が可能であり、しかも、狭いスペースで、復元力の維持が長時間可能であり、周方向の遊び削減性能に優れる。
【0065】
c)係合頭部23は、軸部材22に対して雌雄螺子22c,23aによる噛み合い構造とした。このため、セグメント1,1どうしの結合後に、周方向で渦巻ばね50の付勢力による移動方向(退避方向)とは反対方向の入力があっても、係合頭部23が反退避方向の軸方向へ移動するのを雌雄螺子22c,23aによる噛み合い構造部分で規制し、遊びのない結合状態を維持できる。
【0066】
さらに、係合頭部23は、ベース部材21から突出された軸部材22に対して螺子の噛み合い構造としたため、係合頭部にボルト状の軸部材を設け、これをベース部材側に噛み合わせた構造と比較して、付勢力を与えるのが容易であると共に、安定した回転が得られる。
【0067】
d)セグメント1,1どうしの結合後も、渦巻ばね50には復元力が蓄積されているため、セグメントリングが外界の土水圧などで圧縮力を受けて、セグメント1,1の周方向間隔を狭める相対移動が生じた場合、渦巻ばね50に残っている復元力により、係合頭部23を回転させて、係合頭部23の緩みの発生を軽減し、この緩みによる目開きの発生を抑制できる。
【0068】
e)係合頭部23を軸部材22に対して雌雄螺子22c,23aによる螺子構造により回転可能とし、付勢部材としての渦巻ばね50の復元力で回転させるようにした。このため、例えば、軸部材22全体を回転させて係合頭部23を回転させるものと比較して、係合頭部23の質量を小さく抑えることができ、回転作動性能が良好である。
【0069】
f)結合時に係合頭部23を受け入れる受凹部70を、セグメント1の端面11,12を形成する部材と、雌継手部材30の受部32とで形成するようにした。
【0070】
このため、受部32のみで形成するものと比較して、受部32をコンパクトに形成することが可能となり、セグメント継手の重量及びコストを低減可能である。
【0071】
g)雄継手部材20では、ベース部材21と軸部材22とを別体に形成し、螺子により結合させた構造とした。したがって、ベース部材21に対する軸部材22の突出量を可変設定でき、雌継手部材30の個体差あるいは仕様変更などにより頭部収容凹部32aなどの寸法が変化しても、係合頭部23を軸方向で最適位置に配置させることが可能である。
【0072】
h)上記g)のように別体のベース部材21と軸部材22とを螺子により結合させるのにあたり、雄側ベース部材21の雌螺子21bを逆螺子とし、軸部材22の第2の雄螺子22cを正螺子とした。これにより、渦巻ばね50の付勢力で係合頭部23を回転させようとした際に、係合頭部23が正常に回転しなかった場合に、渦巻ばね50の反力で軸部材22が雄側ベース部材21に対して回転して抜け出すことを防止できる。
【0073】
i)第2の雄螺子22cは、2条あるいは多条螺子とした。これにより係合頭部23を回転させた際の回転量に対する矢印Ys方向への移動距離が1条螺子の場合よりも大きくなり、係合頭部23の軸方向の移動確実性が高くなる。
【0074】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
例えば、実施の形態では、鋼材とコンクリートとが一体になるように予め工場等で製作される合成セグメントに本発明のセグメント継手を設けた例を説明したが、セグメントの形態は、これに限定されるものではなく、コンクリート製のセグメント又は鋼製のセグメントに本発明を適用してもよい。また、鋼製のセグメントを使用する場合は、組み付け後にコンクリートを充填することもできる。
【0076】
また、実施の形態では、係合頭部が第1の端面から突出し、頭部収容凹部が第2の端面から凹んだ端面凹部内に設けられた例を示したが、これに限定されず、頭部収容凹部を備えた雌継手部材が、第2の端面から突出し、雄継手部材の係合凸部が第1の端面に形成した凹部に埋没した構造としてもよい。
【0077】
また、前記実施の形態では、セグメントの端面のそれぞれに雄継手部材と雌継手部材とを1つずつ設けたが、これに限定されるものではなく、その設置数を実施の形態のものよりも増やしてもよい。あるいは、一方の端面に一つ又は複数の雄継手部材を設け、他方の端面に一つ又は複数の雌継手部材を設けるという構成であってもよい。
【0078】
また、実施の形態では、付勢部材として金属製の渦巻ばねを示したが、これに限定されず、付勢力で係合頭部を退避方向へ移動させることが可能なものであれば、ゴム、樹脂などの弾性材を用いてもよい。
【0079】
また、実施の形態では、付勢部材を、支持軸と係合頭部との間に設け、付勢力により係合頭部を回転させる例を示したが、付勢部材を設ける位置はこの位置に限定されない。例えば、係合頭部と軸部材の一部あるいは全部とを一体に形成したものを回転可能な部材とし、これをベース部材側の部材に対して回転させるように、この回転可能な部材とベース部材あるいはベース部材側の軸部材の一部との間に設けてもよい。
【0080】
さらに、実施の形態では、係合頭部の退避方向への移動は、ベース部材に対して回転することにより退避方向に移動可能としたが、例えば、ベース部材に対してスライドして退避方向に移動する構造を用いることもできる。この場合、付勢部材も、係合頭部を回転方向に付勢するのではなく、スライド方向に付勢するものを用いる。
【0081】
また、実施の形態では、規制部材は、軸部材に着脱可能に取り付けものを示したが、係合頭部を頭部収容凹部に対して非収容状態から収容状態とする移動に伴って規制を解除するものであればこれに限られず、例えば、軸部材に取り付けられて、雌継手部材と衝突して軸部材の内部に収容されて規制解除状態となるものなど、着脱以外の構造のものを用いてもよい。また、この場合、取り付け位置は、雄継手部材であれば、軸部材などのベース部材側に限らず、係合頭部側に取り付けることも可能である。
【0082】
また、実施の形態では、雄継手部材において、軸部材は、ベース部材に螺子により結合させた例を示したが、軸部材とベース部材とを一体に形成してもよい。
【0083】
また、軸部材に設ける2か所の螺子の向きは、実施例で示した場合と正逆を反対にした組み合わせでもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 セグメント
2 セグメント継手(セグメントの周方向継手金具)
11 端面(第1の端面、第2の端面)
12 端面(第2の端面、第1の端面)
20 雄継手部材
21 雄側ベース部材(ベース部材)
22 軸部材
22c 第2の雄螺子(螺子構造)
23 係合頭部
23a 雌螺子(螺子構造)
23b 円筒部(筒状部)
24 収容空間
30 雌継手部材
32a 頭部収容凹部
32b 長溝
50 渦巻ばね(付勢部材)
60 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの外殻を形成するセグメントの周方向の一方の端面である第1の端面に設けられ、前記周方向に突出した係合頭部を有した雄継手部材と、
前記セグメントの周方向の他方の端面である第2の端面に設けられ、収容状態で前記係合頭部と前記周方向に係合可能であると共に非収容状態で前記係合頭部と前記周方向に非係合状態となる頭部収容凹部を備えた雌継手部材と、
から構成され、
前記係合頭部は、付勢部材により前記雄継手部材に対して前記第1の端面方向に退避するように付勢されつつ、その退避方向への移動を規制部材により規制され、前記頭部収容凹部内における非収容状態から収容状態となる移動に伴って、前記規制部材による前記退避方向への移動の規制が解除されて前記頭部収容凹部と前記周方向に係合可能となることを特徴とするセグメントの周方向継手構造。
【請求項2】
前記係合頭部は、前記セグメントに固定されたベース部材に対し、前記第1の端面に交差する方向を中心軸として回転するのに伴って軸方向に移動可能に支持され、
前記付勢部材は、前記係合頭部の内周と前記ベース部材の外周との間に介在された金属製の渦巻ばねであることを特徴とする請求項1に記載のセグメントの周方向継手構造。
【請求項3】
前記ベース部材から、突出された軸部材を備え、
前記係合頭部は、前記軸部材の外周に前記螺子の噛み合い構造を介して装着された係合頭部本体と、この係合頭部本体に一体に形成されて前記ベース部材との間に収容空間を形成した筒状部とを備え、
前記付勢部材は、前記収容空間に収容されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセグメントの周方向継手構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のセグメント継手構造を用いてセグメントの周方向の端面どうしを結合させる結合方法であって、
前記雄継手部材において、前記係合頭部を、前記付勢部材により前記雄継手部材に対して前記退避方向へ移動するように付勢しつつ、その退避方向への移動を前記規制部材により規制した状態とする工程と、
前記セグメントの前記第1の端面と結合相手の前記セグメントの前記第2の端面とを対面させ、さらに、前記第1の端面の前記雄継手部材の前記係合頭部を、前記第2の端面の前記雌継手部材の前記頭部収容凹部に対し非収容状態から収容状態となる方向に移動させるように両端面を相対移動させるのに伴って前記規制部材による規制を解除し、前記係合頭部を前記付勢部材の付勢力により退避方向へ移動させて前記頭部収容凹部に対して前記周方向に係合させる工程と、
を備えていることを特徴とするセグメント結合方法。
【請求項5】
トンネルの外殻を形成するセグメントの周方向端面の一方に固定される雄継手部材と、前記周方向端面の他方に固定される雌継手部材とからなるセグメントの周方向継手金具において、
前記雄継手部材は、前記セグメントの周方向端面の一方に固定されるベース部材と、付勢部材により前記ベース部材方向に退避するように付勢された係合頭部と、該係合頭部の退避方向への移動を規制する規制部材と、を備え、
前記雌継手部材は、前記セグメントの周方向端面の他方に固定されるベース部材と、収容状態で前記係合頭部と周方向に係合可能であると共に非収容状態で前記係合頭部と非係合状態になる頭部収容凹部と、を備え、
前記係合頭部の前記頭部収容凹部内における前記非収容状態から前記収容状態とする移動に伴って、前記規制部材による前記係合頭部の退避方向への規制が解除されて前記係合頭部と前記頭部収容凹部とを周方向に係合可能としたことを特徴とするセグメントの周方向継手金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87548(P2013−87548A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230803(P2011−230803)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】