セグメントの継手構造
【課題】セグメントのコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを防止でき、かつセグメント同士の接合を簡便に行なって工期の短縮を図ることが可能なセグメントの継手構造を提供する。
【解決手段】隣接するセグメント2同士を一体に接合するためのセグメント2の継手構造1であって、雄型継手5は、一方のセグメント2に埋設されたアンカー部7と、アンカー部7と繋がり一方のセグメント2の接合端面2bから外側に突設される略棒状の雄型嵌合ピン8を備え、雌型継手6は、他方のセグメント2の接合端面2aに開口するように他方のセグメント2に埋設され雄型嵌合ピン8が挿入されて嵌合する略筒状の雌型パイプ9と、雌型パイプ9の外面を覆うように設けられ他方のセグメント2と雌型パイプ9の間に介装される弾性体10を備えている。
【解決手段】隣接するセグメント2同士を一体に接合するためのセグメント2の継手構造1であって、雄型継手5は、一方のセグメント2に埋設されたアンカー部7と、アンカー部7と繋がり一方のセグメント2の接合端面2bから外側に突設される略棒状の雄型嵌合ピン8を備え、雌型継手6は、他方のセグメント2の接合端面2aに開口するように他方のセグメント2に埋設され雄型嵌合ピン8が挿入されて嵌合する略筒状の雌型パイプ9と、雌型パイプ9の外面を覆うように設けられ他方のセグメント2と雌型パイプ9の間に介装される弾性体10を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシールド工法等により掘削したトンネル内面に設置される覆工用のセグメント同士を一体に接合するための継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシールド工法等により掘削したトンネル内面には、この掘削内面の曲率半径と略等しい曲率半径を備えた複数の円弧状のセグメントが周方向に連続して設けられ、周方向の掘削内面を被覆して支持する環状のセグメントリング体が形成される。そして、このような周方向の掘削内面を支持するセグメントリング体がトンネル軸方向に連続するように接続されて、掘削内面を被覆支持するトンネルの覆工が形成される。また、この種のセグメントには、一般に、鋼製セグメントやコンクリート製セグメント、これら鋼とコンクリートを複合した合成セグメントが用いられ、隣接するセグメント同士を一体に接合するための継手構造が設けられている。
【0003】
この種の継手構造、特にコンクリート製セグメント同士を一体に接合するための継手構造には、例えば特許文献1に開示されるような、ボルト挿通孔を備えて一方のセグメントの連結端面(接合端面)側に埋設される第1連結金具と、ボルト挿通孔に挿通されるボルトと、ボルト操作のためのボルトボックスとを備えた雄型継手、及びこのボルトと螺合する雌ねじ部を備え他方のセグメントの連結端面(接合端面)側に埋設される第2連結金具からなる雌型継手を備えて構成されたものある(例えば、特許文献1参照)。また、この継手構造では、第2連結金具が、雌ねじ部を備え他方のセグメントの連結端面に沿って露出する袋ナット部と、袋ナット部に連設されて他方のセグメントの内方に配置されるアンカー部とを備えて構成されている。そして、ボルトを第1連結金具のボルト挿通孔に挿通して第2連結金具の雌ねじ部に締結することにより、互いの連結端面を面接触させるようにセグメント同士を接合することができる。
【0004】
さらに、この継手構造においては、第2連結金具に、その外面から軸線直交方向外側に突出しつつ軸線方向に沿って延設する一対の補強リブが形成されており、両セグメントを連結した状態において、この補強リブで両セグメント間に作用するせん断力を受け止め、セグメントのコンクリートにせん断力を分散させつつ伝達して支持できるように構成されている。これにより、この継手構造では、継手構造が埋設されたコンクリートに局部的にせん断力が作用してコンクリートに破壊が生じることを防止している。
【特許文献1】特開2001−98893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のセグメントの継手構造においては、金属製の第2連結金具が直接セグメントのコンクリートと接触して埋設されているため、第2連結金具を介してコンクリートに伝達するせん断力が大きく、補強リブを形成してせん断力を分散させつつ支持するように構成した場合においても、やはりせん断耐力が第2連結金具よりも小さいコンクリートにひび割れが生じてしまうという問題があった。
【0006】
また、上記のセグメントの継手構造では、現場にて、ボルトボックスから複数の第1連結金具のボルト挿入孔にそれぞれボルトを挿通させて第2連結金具に螺合させながらセグメント同士を接合するという煩雑な作業を要するため、作業効率が悪く、セグメント同士の連結に係る労力を軽減し工期の短縮を図ることが強く望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑み、セグメントのコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを防止でき、かつセグメント同士の接合を簡便に行なって工期の短縮を図ることが可能なセグメントの継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明のセグメントの継手構造は、一方のセグメントの接合端面側に設けられた雄型継手と、他方のセグメントの接合端面側に設けられ前記雄型継手が嵌合されて相互の嵌合状態を保持する雌型継手とを備え、隣接するセグメント同士を一体に接合するためのセグメントの継手構造であって、前記雄型継手は、前記一方のセグメントに埋設され前記接合端面から外側に突設される略棒状の雄型嵌合ピンを備え、前記雌型継手は、前記他方のセグメントの接合端面に開口するように前記他方のセグメントに埋設され前記雄型嵌合ピンが挿入されて嵌合する略筒状の雌型パイプと、該雌型パイプの外面を覆うように設けられ前記他方のセグメントと前記雌型パイプの間に介装される弾性体を備えており、前記雄型嵌合ピンは、外面に、外側に突出し周方向に環状に繋がる凸部が軸線方向に複数並設されて形成された鋸目状の係合部を備え、前記雌型パイプは、前記他方のセグメントの接合端面側の先端側が、該先端から軸線に沿って後端側に延びるスリットが形成されて弾性変形可能に分割され、前記スリットにより分割された前記先端側の内面に、前記係合部と係合する鋸目状の係合受部が具備されており、前記スリットにより分割された部分の外面を覆うように前記弾性体が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のセグメントの継手構造においては、前記雄型継手に、前記雌型継手との嵌合状態で前記弾性体を前記他方のセグメントの接合端面内に押圧する弾性体押圧部材が設けられていることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明のセグメントの継手構造においては、前記雄型継手に、先端に開口し軸線に沿って後端側に凹む雌ネジ孔を備えて前記一方のセグメントに埋設されたアンカー部が具備され、前記雄型嵌合ピンが、後端側の外面に形成された雄ネジ部を前記雌ネジ孔に螺合させて保持されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセグメントの継手構造によれば、雄型継手の雄型嵌合ピンが挿入されて嵌合する雌型パイプの外面を覆い、他方のセグメントと雌型パイプの間に弾性体が介装されていることによって、セグメント同士を接合(連結)した状態で、両セグメント間にせん断力が作用した場合においてもこのせん断力を弾性体で吸収することができ、本発明の継手構造が埋設状態で設置されたセグメントに大きなせん断力が伝達されることを防止できる。これにより、セグメントがコンクリート製である場合においてもコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを防止できる。
【0013】
また、本発明のセグメントの継手構造においては、一方のセグメントに設けられた雄型継手の雄型嵌合ピンを、他方のセグメントに設けられた雌型継手の雌型パイプに挿入して嵌合させるという簡易な操作で相互の嵌合状態を保持しつつセグメント同士を一体に接合することができる。特に、雄型嵌合ピンの外面に鋸目状の係合部が形成され、雌型パイプの内面に係合部と係合する鋸目状の係合受部が形成され、かつこの係合受部が形成された雌型パイプの先端側がスリットによって弾性変形可能とされているため、係合部と係合受部の互いの凸部が当接するとともに雌型パイプが拡径されて係合部と係合受部を傷めることなく雄型嵌合ピンを容易に雌型パイプに挿入することができ、係合部と係合受部が係合された際には、雌型パイプが元の状態に縮径されて確実に相互の嵌合状態を保持することが可能になる。また、弾性体が雌型パイプのスリットにより分割された部分の外面を覆うように設けられていることによって、雌型パイプが拡径してセグメントを押圧する力を吸収することができ、セグメント同士の接合時においてもこの押圧力に伴うひび割れなどの損傷がセグメントに生じることを防止できる。
【0014】
さらに、このように雌型パイプが弾性変形しつつセグメント同士を接合することができ、かつ弾性体で接合時の押圧力や接合後のせん断力を吸収できることにより、雄型嵌合ピンの軸線と雌型パイプの軸線が同軸上に配されず若干ずれた状態とされていても、弾性体でそのずれを許容することができ、確実にセグメント同士を一体に接合することができる。これにより、セグメント同士の接合作業をより簡便に行なうことができ、工期短縮を図ることが可能になる。
【0015】
また、本発明のセグメントの継手構造においては、雌型継手との嵌合状態で弾性体を他方のセグメントの接合端面内に押圧する弾性体押圧部材が設けられていることによって、セグメントと雌型パイプの間に介装された弾性体が、接合端面から外側に押し出されてしまうことを防止できる。すなわち、弾性体が雌型パイプの外面を覆うように設けられ、その端部がセグメントの接合端面に露出されている場合には、セグメント同士の接合時に雌型パイプの拡径に伴って作用する押圧力によって弾性体が接合端面から外側に押し出されるように変形してしまうおそれがある。また、接合後にせん断力が作用した場合においても、同様に接合端面から外側に弾性体が押し出されてしまうおそれがある。このような場合には、弾性体の前記せん断力吸収能力と継手の嵌合強度が低下しセグメントに損傷を生じさせてしまう。これに対し、雄型嵌合ピンに弾性体押圧部材が設けられることによって、セグメントの接合とともに接合端面から外側に押し出された弾性体を弾性体押圧部材で押圧し接合端面内の元の位置に押し込むことができ、また、接合後にせん断力が作用した場合にも弾性体の端部を弾性体押圧部材で押さえることができるため、セグメントと雌型パイプの間に介装された弾性体のせん断力吸収能力と継手の嵌合強度を好適な状態で確実に維持することができる。
【0016】
さらに、本発明のセグメントの継手構造においては、雌ネジ孔を備えるアンカー部が具備され、雄型嵌合ピンがこの雌ネジ孔に螺合されて保持されることにより、すなわち、アンカー部と雄型嵌合ピンが着脱可能に形成されていることにより、現場にて、セグメント同士を接合する際に雄型嵌合ピンを簡便に取り付けて雄型継手を形成できるため、セグメントを運搬などする際に、外側に突設する雄型嵌合ピンが形成されていない状態でセグメントを取り扱うことでき、その取扱性を向上させて作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1から図8を参照し、本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造について説明する。本実施形態は、例えばシールド工法等により掘削したトンネル内面に設置される覆工用のセグメント同士を接合するための継手構造に関し、特にコンクリート製のセグメント同士を接合するための継手構造に関するものである。
【0018】
本実施形態の継手構造1が設けられるセグメント2は、図1に示すように、シールドマシンによって掘削したトンネル3の掘削内面の曲率半径と略等しい曲率半径を備える円弧盤状に形成されている。また、セグメント2は、周方向の周長が軸O1方向の幅よりも大きく形成されるとともに、径方向の厚さが周方向に沿って一定に形成されている。そして、このように形成された複数のセグメント2は、トンネル3の掘削内面に沿ってトンネル3の周方向に連続して設けられ、周方向の掘削内面を被覆しつつ支持する環状のセグメントリング体4を形成している。また、トンネル3の軸O2方向に、セグメントリング体4が連続するように隣接されて、シールドマシンで掘削した掘削内面が複数のセグメント2で被覆されつつ支持されトンネル3の覆工が形成される。
【0019】
ここで、各セグメント2は、リング間継手とセグメント間継手によって相互に接合されている。そして、トンネル3の軸O2方向に隣接するセグメント2同士は、軸O2方向を向き対向する端面(接合端面2a、2b)同士が、それぞれの端面2a、2bのセグメント2の厚さ方向(径方向)略中央に設けられ、かつ周方向に所定の間隔をもって複数設けられた本実施形態のリング間継手による継手構造1によって接合される。
【0020】
このトンネル3の軸O1方向に隣接するセグメント2同士を接合する継手構造1は、図1から図4に示すように、先に設置された一方のセグメント2の軸線O2方向先端側を向く一方の端面2b側に設けられた雄型継手5と、この一方のセグメント2に接合される他方のセグメント2の他方の端面2a側に設けられた雌型継手6とから構成されている。
【0021】
雄型継手5は、その軸線O3方向をトンネル3の軸O2方向に一致させつつ一方のセグメント2のコンクリート内に埋設状態で設置された略円柱棒状のアンカー部7と、後端8a側がアンカー部7に保持されつつ先端8b側を一方の端面2bからセグメント2の軸線O1方向外側に突出させて取り付けられた棒状の雄型嵌合ピン8とから構成されている。
【0022】
アンカー部7は、図4に示すように、その先端7a側に、先端7aに開口しつつ軸線O3に沿って後端7b側に向けて凹み、その内面に雌ネジの螺刻が施された雌ネジ孔7cが設けられている。そして、このアンカー部7は、雌ネジ孔7cが外部と連通するように、先端7aを一方の端面2b上に配した状態で一方のセグメント2内に埋設されている。また、アンカー部7の後端7b側は、軸線O3に沿って径方向に割裂されており、分割した双方の半割部分が互いに逆方向に折曲げられて定着部7dを形成している。すなわち、先端7a側の軸線O3に直交する幅寸法よりも定着部7dの幅寸法が大きなものとされ、これにより、アンカー部7に軸線O3方向外側に引き抜かれるような力が作用した場合においても、定着部7がセグメント2のコンクリート内に定着されて、アンカー部7は抜け出ることがないように保持されている。
【0023】
雄型嵌合ピン8は、先端8b側に、軸線O4に直交する幅が後端8a側から先端8bに向かうに従い漸次小となるテーパー部8cが形成されている。また、後端8a側には、外面に前記アンカー部7の雌ネジ孔7cの雌ネジと螺合する雄ネジ部8dが設けられている。さらに、雄型嵌合ピン8は、図4及び図5に示すように、テーパー部8cの後端から雌ネジ部8dの先端よりも僅かに軸線O4方向先端8b側に位置する部分の外面に、外側に突出し周方向に環状に繋がる凸部8eが軸線O4方向に一定のピッチで複数並設されて形成された鋸目状の係合部8fを備えている。この係合部8fを形成する凸部8eは、それぞれ断面視で、外面に対し、鋭角に交差するように傾斜する斜辺とこの斜辺よりも鈍角に交差するように傾斜する斜辺を備えた断面略三角形状に形成されており、鋭角に傾斜する斜辺側を先端8b側に向けて形成されている。
【0024】
そして、上記のように形成された雄型嵌合ピン8は、図3及び図4に示すように、雄ネジ部8dをアンカー部7の雌ネジ孔7cに螺合させるとともに、アンカー部7の軸線O3と軸線O4が同軸上に配されて保持される。また、このようにアンカー部7に取り付けられた雄型嵌合ピン8は、雄ネジ部8dの先端よりも先端8b側のテーパー部8cや係合部8fが形成された部分が、一方のセグメント2の一方の端面2bよりも外側に突出した状態で保持される。
【0025】
一方、他方のセグメント2の軸線O1方向後端側の他方の端面2a側に設けられる雌型継手6は、図2、図3及び図6から図8に示すように、概略円筒状の雌型パイプ9と、雌型パイプ9の先端9a側の外面に密着しつつこの外面を覆う例えば筒状の弾性体10とが主な構成要素とされている。
【0026】
雌型パイプ9は、先端9a側の内面に、前記雄型継手8の係合部8fが係合する係合受部9bが形成されている。すなわち、この係合受部9bは、それぞれ先端9a側の内面に、内側に向けて突出し周方向に延設する凸部9cが軸線O5方向に一定のピッチで複数並設されて鋸目状を呈するように形成されている。また、係合受部9bを形成する複数の凸部9cは、係合部8fの凸部8eとほぼ同様に鋭角に交差するように傾斜する斜辺と鈍角に交差するように傾斜する斜辺を備えた断面略三角形状に形成され、鋭角に傾斜する斜辺側を先端9a側に向けて形成されている。
【0027】
また、雌型パイプ9の先端9a側には、外面から内面に貫通しつつ先端9aから後端9d側に向けて軸線O5に沿うように切欠かれた複数のスリット9eが形成されている。このスリット9eは、それぞれ、先端9aから内面に形成された係合受部9bの後端よりも軸線O5方向後端9d側に位置する範囲で形成されており、本実施形態では、軸線O5に直交する断面視で軸線O5を中心とした周方向に90度毎に4つ設けられている。このようにスリット9eが形成されて周方向に分割された雌型パイプ9の先端9a側の部分は、それぞれ弾性変形可能とされている。
【0028】
さらに、雌型パイプ9の後端9d側には、先端9a側から後端9dに向けて拡径する拡径部9fが設けられて、雌型パイプ9が外側に抜き出ることを防止している。また、この拡径部9fの基端側の内面には、平板状の閉塞部材9gが例えば溶接によって固着されて、雌型パイプ9の後端9d側の開口部分が閉塞されている。
【0029】
一方、弾性体10は、例えば硬質ウレタンゴムとされ、雌型パイプ9のスリット9eが形成されて弾性変形可能に分割された部分の外面を被覆するように設けられている。
【0030】
ちなみに、上記のように構成される雄型継手5と雌型継手6は、例えば適宜配筋した鉄筋に、雄型継手5のアンカー部7を先端7aがセグメント2の一方の端面2bに配されるように支持させ、かつ、雌型継手6の弾性体10を取り付けた雌型パイプ9を先端9aがセグメント2の他方の端面2aに配されるように支持させて、セグメント2の形状に合うように形成された型枠内に設置される。そして、この型枠内にフレッシュコンクリートを打設し、打設したコンクリートが硬化して所定の強度を発現した段階で型枠を取り除き、雄型継手5のアンカー部7と雌型継手6の弾性体10及び雌型パイプ9が、それぞれの先端7a、9aを一方の端面2bと他方の端面2aに露出させつつ埋設されたセグメント2が形成される。なお、雌型パイプ9が、その後端9d側に閉塞部材9gが設けられて閉塞され、有底筒状に形成されていることによって、型枠内に打設したフレッシュコンクリートが雌型パイプ9内に流入することが防止される。
【0031】
ついで、上記の構成からなる継手構造1を備えたセグメント2同士を一体に接合する方法について説明し、本実施形態のセグメント2の継手構造1の作用及び効果について説明する。
【0032】
本実施形態においては、上記のように形成したセグメント2を現場に搬入し、トンネル3の掘削内面に設置する前段で、雄型継手5の雄型嵌合ピン8をアンカー部7の雌ネジ孔7cに取り付け、本実施形態のセグメント2の継手構造1を形成する。そして、リング間継手の接合に際しては、先に設置された一方のセグメント2に他方のセグメント2を近づけてゆくとともに、一方のセグメント2の接合端面2bから外側に突出した複数の雄型嵌合ピン8を、他方のセグメント2の接合端面2aに開口する雌型継手6の複数の雌型パイプ9にそれぞれ挿入する。このとき、雄型嵌合ピン8は、その先端8b側にテーパー部8cが設けられていることによって、比較的容易に雌型パイプ9に挿入することができる。
【0033】
このように雌型パイプ9に雄型嵌合ピン8を挿入すると、互いに凹凸状をなし鋸目状に形成された係合部8fと係合受部9bのそれぞれの凸部8e、9c同士が接触し、雌型パイプ9のスリット9eが形成された先端9a側が外側に弾性変形して雌型パイプ9が拡径される。このように雌型パイプ9が拡径した際には、セグメント2のコンクリートを押圧するような力が作用するが、本実施形態においては、セグメント2と雌型パイプ9の間に弾性体10が介装されているため、この押圧力が弾性体で吸収されてセグメント2のコンクリートが損傷されることがない。また、このように雌型パイプ9の先端9a側が弾性変形するとともに、雄型嵌合ピン8の軸線O4が雌型パイプ9の軸線O5と一致するように案内され、かつ互いの軸線O4、O5が若干ずれた状態であっても弾性体10によってそのずれが許容される。そして、さらに雄型嵌合ピン8を雌型パイプ9の内部に挿入することにより、雄型嵌合ピン8の係合部8fと雌型パイプ9の係合受部9bとが係合され、これとともに拡径した雌型パイプ9が元の形状に縮径されて雄型継手5と雌型継手6が嵌合され、相互の嵌合状態が保持される。すなわち、係合部8fと係合受部9bが、互いの鋭角の斜辺を有する壁面同士と、鈍角の斜辺を有する壁面同士が面接触しつつ係合し、両セグメント2が離れることなく一体に接合されることになる。また、このとき、一方のセグメント2の接合端面2bと他方のセグメント2の接合端面2aが、面接触するように、または図示せぬシール材を介して接合される。
【0034】
このように両セグメント2を一体に接合した本実施形態の継手構造1においては、例えば両セグメント2がトンネル3の軸線O2に直交する方向にずれるような力が作用して、継手構造1にせん断力が作用した場合においても、このせん断力が弾性体10で吸収されて、せん断耐力が小さいコンクリートに大きなせん断力が伝達されることがなく、両セグメント2のコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることがないものとされる。
【0035】
したがって、本実施形態のセグメント2の継手構造1によれば、セグメント2のコンクリートと雌型パイプ9との間に、雌型パイプ9を覆うように弾性体10が介装されているため、継手構造1にせん断力が作用した場合においても、このせん断力を弾性体10で吸収することができ、コンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを防止できる。
【0036】
また、雌型パイプ9にスリット9eが設けられて、雌型パイプ9の先端9a側が弾性変形可能に分割されていることによって、一方のセグメント2に設けられた雄型嵌合ピン8を、他方のセグメント2に設けられた雌型パイプ9に挿入して、係合部8fと係合受部9bとを係合させつつワンタッチで嵌合させるという簡易な操作で相互の嵌合状態を保持しつつセグメント2同士を一体に接合することができる。さらに、このとき、雌型パイプ9が拡径しながら係合部8fと係合受部9bが係合されることにより、係合部8fと係合受部9bのそれぞれの凸部8e、9cを傷めることなく雄型嵌合ピン8を雌型パイプ9に嵌合させることが可能になる。また、雄型嵌合ピン8と雌型パイプ9の互いの軸線O4、O5が若干ずれた場合においても、弾性体10によってこの若干のずれを許容してセグメント2同士を接合することができる。これにより、従来のセグメントの継手構造のように、セグメント2にボルトボックスを設ける必要がなく、また、現場で複数のボルトを螺合させるという煩雑な作業を要することがなく、容易にセグメント2同士を一体に接合することができるため、作業効率を向上させて大幅に工期短縮を図ることが可能になる。
【0037】
さらに、雄型嵌合ピン8が雌ネジ孔7cに螺合されて保持されるように構成され、すなわち、アンカー部7と雄型嵌合ピン8が着脱可能に形成されていることにより、現場にて、セグメント2同士を接合する前段で雄型嵌合ピン8を簡便に取り付けて雄型継手5を形成できるため、セグメント2を運搬などする際の取扱性を向上させることも可能とされ、施工性の向上を図ることができる。
【0038】
なお、本発明は、上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、弾性体10が硬質ウレタンゴムであるものとして説明を行なったが、せん断力を吸収してコンクリートのひび割れを防止することが可能であれば、他の材質の弾性体であってもよいものである。
【0039】
また、本実施形態では、セグメント2の形成時にフレッシュコンクリートが略筒状の雌型パイプ9の内部に流入することを防止するために、雌型パイプ9には、その後端9d側に閉塞部材9gが取り付けられているものとして説明を行なったが、予め雌型パイプ9を後端9d側が閉塞された略有底筒状に形成してもよいものである。さらに、雄型継手5が、アンカー部7と、このアンカー部7の雌ネジ孔7cに着脱可能に保持される雄型嵌合ピン8とから構成されるとともに、アンカー部7が、その後端7b側に半割状態に形成された定着部7dを備えて形成されているものとしたが、アンカー部7は、一方のセグメント2に埋設状態に設置されつつ定着可能な構成とされていれば、その定着部7dの構成が限定される必要はない。また、雄型嵌合ピン8がその後端8a側に形成された雄ネジ部8dをアンカー部7の雌ネジ孔7cに螺合させることにより雄型嵌合ピン8がアンカー部7に一体に保持されるものとしたが、例えば、雄型嵌合ピン8の後端8a側の外面に、先端8b側に設けられた係合部8fと同様の係合部を設け、アンカー部7の雌ネジ孔7cの内面に雌ネジにかえて雌型パイプ9の先端9b側の内面に設けられた係合受部9bと同様の係合受部を設け、この係合部と係合受部を係合させることで雄型嵌合ピン8をアンカー部7に保持させるようにしてもよい。この場合には、雄型嵌合ピン8をより簡便な操作でアンカー部に取り付けることが可能になる。この一方で、アンカー部7と雄型嵌合ピン8が一体形成されていてもよいものである。
【0040】
さらに、雌型継手6が、雌型パイプ9と弾性体10とから構成されているものとしたが、図9に示すように、雌型パイプ9と、この雌型パイプ9の外面を覆うように設けられた弾性体10とをともに内包するように設置され、弾性体10の外面側に介装される略筒状の弾性体保持部材11が設けられてもよいものである。このような弾性体保持部材11が設けられた場合には、弾性体10を確実に雌型パイプ9の外面を覆うように保持できるとともに、セグメント2のコンクリートにせん断力が伝達されることを防止でき、セグメント2にひび割れなどの損傷が生じることをより確実に防止できる。
【0041】
ついで、図10から図12を参照し、本発明の第2実施形態に係るセグメントの継手構造について説明する。本実施形態においては、第1実施形態と同様、コンクリート製のセグメント同士を接合するための継手構造に関するものであり、雄型継手の構成のみが異なり、その他の構成は第1実施形態と同様とされる。よって、ここでは、第1実施形態に共通する構成に対して同一符号を付し、その詳細についての説明を省略する。
【0042】
本実施形態の雄型継手5は、図10及び図11に示すように、一方のセグメント2のコンクリート内に埋設状態で設置された略棒状のアンカー部7と、アンカー部7に保持される略棒状の雄型嵌合ピン8とを備え、本実施形態の雄型嵌合ピン8には、一方のセグメント2の接合端面2bから突出する基端8g側に、雄型嵌合ピン8の外面に接続されつつ軸線O4直交方向外側に突出し周方向に円環状に繋がる弾性体押圧部材12が設けられている。
【0043】
また、雌型継手6が設けられる他方のセグメント2には、その接合端面2aに、内側に凹み、両セグメント2を一体に接合した状態で弾性体押圧部材12が係合する凹部13が形成されている。また、弾性体10の接合端面2a側の端部10aがこの凹部13に露出されている。
【0044】
本実施形態のセグメント2の継手構造1においては、第1実施形態と同様に、雄型嵌合ピン8を雌型パイプ9に挿入し係合部8fと係合受部9bを係合させて嵌合させる。ここで、図4から図8に示した係合部8fの凸部8eが係合受部9bの凸部9cと接触して、雌型パイプ9の先端9a側が拡径するように弾性変形した際には、弾性体10が圧縮するように押圧されることになり、この押圧力が作用した弾性体10が、図12に示すように、接合端面2aから外側に押し出されるように変形してしまうおそれがある。また、接合後にせん断力が作用した場合においても、同様に弾性体10が押し出されてしまうおそれがある。このように接合端面2aから外側に押し出されるように変形した状態で両セグメント2が一体に接合された場合には、セグメント2と雌型パイプ9との間に介装されている弾性体10のせん断力を吸収する弾性能力が低下してしまい、弾性体10の性能を充分に活かすことができなくなってしまう。
【0045】
これに対して、本実施形態の継手構造1においては、雄型嵌合ピン8に弾性体押圧部材12が形成されていることによって、この弾性体押圧部材12が他方のセグメント2の凹部13に係合されるとともに、接合端面2aから外側に押し出された弾性体10を押圧し、接合端面2a内の元の位置に戻すことができる。また、両セグメント2を一体に接合した状態で、弾性体押圧部材12が凹部13に係合されているため、すなわち、弾性体10の接合端面2a側の端部10aを押圧した状態で弾性体押圧部材12が設置されることになるため、接合した両セグメント2にせん断力が作用して接合端面2aから外側に弾性体10が押し出るように変形することを防止できる。これにより、本実施形態においては、弾性体10のせん断力を吸収する能力を充分に活用することができる。よって、セグメント2のコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを確実に防止できる。
【0046】
なお、本発明は、上記の第2実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、弾性体押圧部材12が円環状を呈するように形成されて雄型嵌合ピン8に設けられ、凹部13がこの弾性体押圧部材12が係合するように形成されているものとしたが、両セグメント2を接合した状態で、弾性体10の端部10aを押圧可能であれば、弾性体押圧部材12の形状やこれが係合する凹部13の形状は特に限定を必要とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る継手構造を備えるセグメント同士を接合して構築されるトンネルを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造の雄型継手を示す断面図である。
【図5】図4に示した雄型継手の雄型嵌合ピンに形成される係合部を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造の雌型継手の雌型パイプを示す断面図である。
【図7】図6のX−X線矢視図である。
【図8】図6に示した雌型継手の雌型パイプに形成される係合受部を示す断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るセグメントの継手構造を示す断面図である。
【図11】図10の継手構造を嵌合してセグメント同士を接合した状態を示す断面図である。
【図12】弾性体が外側に押し出された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 継手構造
2 セグメント
2a 端面(接合端面)
2b 端面(接合端面)
3 トンネル
4 セグメントリング体
5 雄型継手
6 雌型継手
7 アンカー部
7c 雌ネジ孔
8 雄型嵌合ピン
8d 雄ネジ部
8f 係合部
9 雌型パイプ
9b 係合受部
9e スリット
10 弾性体
11 弾性体保持部材
12 弾性体押圧部材
13 凹部
O1 セグメントの軸線
O2 トンネルの軸線(軸)
O3 アンカー部の軸線
O4 雄型嵌合ピンの軸線
O5 雌型パイプの軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシールド工法等により掘削したトンネル内面に設置される覆工用のセグメント同士を一体に接合するための継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシールド工法等により掘削したトンネル内面には、この掘削内面の曲率半径と略等しい曲率半径を備えた複数の円弧状のセグメントが周方向に連続して設けられ、周方向の掘削内面を被覆して支持する環状のセグメントリング体が形成される。そして、このような周方向の掘削内面を支持するセグメントリング体がトンネル軸方向に連続するように接続されて、掘削内面を被覆支持するトンネルの覆工が形成される。また、この種のセグメントには、一般に、鋼製セグメントやコンクリート製セグメント、これら鋼とコンクリートを複合した合成セグメントが用いられ、隣接するセグメント同士を一体に接合するための継手構造が設けられている。
【0003】
この種の継手構造、特にコンクリート製セグメント同士を一体に接合するための継手構造には、例えば特許文献1に開示されるような、ボルト挿通孔を備えて一方のセグメントの連結端面(接合端面)側に埋設される第1連結金具と、ボルト挿通孔に挿通されるボルトと、ボルト操作のためのボルトボックスとを備えた雄型継手、及びこのボルトと螺合する雌ねじ部を備え他方のセグメントの連結端面(接合端面)側に埋設される第2連結金具からなる雌型継手を備えて構成されたものある(例えば、特許文献1参照)。また、この継手構造では、第2連結金具が、雌ねじ部を備え他方のセグメントの連結端面に沿って露出する袋ナット部と、袋ナット部に連設されて他方のセグメントの内方に配置されるアンカー部とを備えて構成されている。そして、ボルトを第1連結金具のボルト挿通孔に挿通して第2連結金具の雌ねじ部に締結することにより、互いの連結端面を面接触させるようにセグメント同士を接合することができる。
【0004】
さらに、この継手構造においては、第2連結金具に、その外面から軸線直交方向外側に突出しつつ軸線方向に沿って延設する一対の補強リブが形成されており、両セグメントを連結した状態において、この補強リブで両セグメント間に作用するせん断力を受け止め、セグメントのコンクリートにせん断力を分散させつつ伝達して支持できるように構成されている。これにより、この継手構造では、継手構造が埋設されたコンクリートに局部的にせん断力が作用してコンクリートに破壊が生じることを防止している。
【特許文献1】特開2001−98893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のセグメントの継手構造においては、金属製の第2連結金具が直接セグメントのコンクリートと接触して埋設されているため、第2連結金具を介してコンクリートに伝達するせん断力が大きく、補強リブを形成してせん断力を分散させつつ支持するように構成した場合においても、やはりせん断耐力が第2連結金具よりも小さいコンクリートにひび割れが生じてしまうという問題があった。
【0006】
また、上記のセグメントの継手構造では、現場にて、ボルトボックスから複数の第1連結金具のボルト挿入孔にそれぞれボルトを挿通させて第2連結金具に螺合させながらセグメント同士を接合するという煩雑な作業を要するため、作業効率が悪く、セグメント同士の連結に係る労力を軽減し工期の短縮を図ることが強く望まれていた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑み、セグメントのコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを防止でき、かつセグメント同士の接合を簡便に行なって工期の短縮を図ることが可能なセグメントの継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明のセグメントの継手構造は、一方のセグメントの接合端面側に設けられた雄型継手と、他方のセグメントの接合端面側に設けられ前記雄型継手が嵌合されて相互の嵌合状態を保持する雌型継手とを備え、隣接するセグメント同士を一体に接合するためのセグメントの継手構造であって、前記雄型継手は、前記一方のセグメントに埋設され前記接合端面から外側に突設される略棒状の雄型嵌合ピンを備え、前記雌型継手は、前記他方のセグメントの接合端面に開口するように前記他方のセグメントに埋設され前記雄型嵌合ピンが挿入されて嵌合する略筒状の雌型パイプと、該雌型パイプの外面を覆うように設けられ前記他方のセグメントと前記雌型パイプの間に介装される弾性体を備えており、前記雄型嵌合ピンは、外面に、外側に突出し周方向に環状に繋がる凸部が軸線方向に複数並設されて形成された鋸目状の係合部を備え、前記雌型パイプは、前記他方のセグメントの接合端面側の先端側が、該先端から軸線に沿って後端側に延びるスリットが形成されて弾性変形可能に分割され、前記スリットにより分割された前記先端側の内面に、前記係合部と係合する鋸目状の係合受部が具備されており、前記スリットにより分割された部分の外面を覆うように前記弾性体が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のセグメントの継手構造においては、前記雄型継手に、前記雌型継手との嵌合状態で前記弾性体を前記他方のセグメントの接合端面内に押圧する弾性体押圧部材が設けられていることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明のセグメントの継手構造においては、前記雄型継手に、先端に開口し軸線に沿って後端側に凹む雌ネジ孔を備えて前記一方のセグメントに埋設されたアンカー部が具備され、前記雄型嵌合ピンが、後端側の外面に形成された雄ネジ部を前記雌ネジ孔に螺合させて保持されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセグメントの継手構造によれば、雄型継手の雄型嵌合ピンが挿入されて嵌合する雌型パイプの外面を覆い、他方のセグメントと雌型パイプの間に弾性体が介装されていることによって、セグメント同士を接合(連結)した状態で、両セグメント間にせん断力が作用した場合においてもこのせん断力を弾性体で吸収することができ、本発明の継手構造が埋設状態で設置されたセグメントに大きなせん断力が伝達されることを防止できる。これにより、セグメントがコンクリート製である場合においてもコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを防止できる。
【0013】
また、本発明のセグメントの継手構造においては、一方のセグメントに設けられた雄型継手の雄型嵌合ピンを、他方のセグメントに設けられた雌型継手の雌型パイプに挿入して嵌合させるという簡易な操作で相互の嵌合状態を保持しつつセグメント同士を一体に接合することができる。特に、雄型嵌合ピンの外面に鋸目状の係合部が形成され、雌型パイプの内面に係合部と係合する鋸目状の係合受部が形成され、かつこの係合受部が形成された雌型パイプの先端側がスリットによって弾性変形可能とされているため、係合部と係合受部の互いの凸部が当接するとともに雌型パイプが拡径されて係合部と係合受部を傷めることなく雄型嵌合ピンを容易に雌型パイプに挿入することができ、係合部と係合受部が係合された際には、雌型パイプが元の状態に縮径されて確実に相互の嵌合状態を保持することが可能になる。また、弾性体が雌型パイプのスリットにより分割された部分の外面を覆うように設けられていることによって、雌型パイプが拡径してセグメントを押圧する力を吸収することができ、セグメント同士の接合時においてもこの押圧力に伴うひび割れなどの損傷がセグメントに生じることを防止できる。
【0014】
さらに、このように雌型パイプが弾性変形しつつセグメント同士を接合することができ、かつ弾性体で接合時の押圧力や接合後のせん断力を吸収できることにより、雄型嵌合ピンの軸線と雌型パイプの軸線が同軸上に配されず若干ずれた状態とされていても、弾性体でそのずれを許容することができ、確実にセグメント同士を一体に接合することができる。これにより、セグメント同士の接合作業をより簡便に行なうことができ、工期短縮を図ることが可能になる。
【0015】
また、本発明のセグメントの継手構造においては、雌型継手との嵌合状態で弾性体を他方のセグメントの接合端面内に押圧する弾性体押圧部材が設けられていることによって、セグメントと雌型パイプの間に介装された弾性体が、接合端面から外側に押し出されてしまうことを防止できる。すなわち、弾性体が雌型パイプの外面を覆うように設けられ、その端部がセグメントの接合端面に露出されている場合には、セグメント同士の接合時に雌型パイプの拡径に伴って作用する押圧力によって弾性体が接合端面から外側に押し出されるように変形してしまうおそれがある。また、接合後にせん断力が作用した場合においても、同様に接合端面から外側に弾性体が押し出されてしまうおそれがある。このような場合には、弾性体の前記せん断力吸収能力と継手の嵌合強度が低下しセグメントに損傷を生じさせてしまう。これに対し、雄型嵌合ピンに弾性体押圧部材が設けられることによって、セグメントの接合とともに接合端面から外側に押し出された弾性体を弾性体押圧部材で押圧し接合端面内の元の位置に押し込むことができ、また、接合後にせん断力が作用した場合にも弾性体の端部を弾性体押圧部材で押さえることができるため、セグメントと雌型パイプの間に介装された弾性体のせん断力吸収能力と継手の嵌合強度を好適な状態で確実に維持することができる。
【0016】
さらに、本発明のセグメントの継手構造においては、雌ネジ孔を備えるアンカー部が具備され、雄型嵌合ピンがこの雌ネジ孔に螺合されて保持されることにより、すなわち、アンカー部と雄型嵌合ピンが着脱可能に形成されていることにより、現場にて、セグメント同士を接合する際に雄型嵌合ピンを簡便に取り付けて雄型継手を形成できるため、セグメントを運搬などする際に、外側に突設する雄型嵌合ピンが形成されていない状態でセグメントを取り扱うことでき、その取扱性を向上させて作業効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1から図8を参照し、本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造について説明する。本実施形態は、例えばシールド工法等により掘削したトンネル内面に設置される覆工用のセグメント同士を接合するための継手構造に関し、特にコンクリート製のセグメント同士を接合するための継手構造に関するものである。
【0018】
本実施形態の継手構造1が設けられるセグメント2は、図1に示すように、シールドマシンによって掘削したトンネル3の掘削内面の曲率半径と略等しい曲率半径を備える円弧盤状に形成されている。また、セグメント2は、周方向の周長が軸O1方向の幅よりも大きく形成されるとともに、径方向の厚さが周方向に沿って一定に形成されている。そして、このように形成された複数のセグメント2は、トンネル3の掘削内面に沿ってトンネル3の周方向に連続して設けられ、周方向の掘削内面を被覆しつつ支持する環状のセグメントリング体4を形成している。また、トンネル3の軸O2方向に、セグメントリング体4が連続するように隣接されて、シールドマシンで掘削した掘削内面が複数のセグメント2で被覆されつつ支持されトンネル3の覆工が形成される。
【0019】
ここで、各セグメント2は、リング間継手とセグメント間継手によって相互に接合されている。そして、トンネル3の軸O2方向に隣接するセグメント2同士は、軸O2方向を向き対向する端面(接合端面2a、2b)同士が、それぞれの端面2a、2bのセグメント2の厚さ方向(径方向)略中央に設けられ、かつ周方向に所定の間隔をもって複数設けられた本実施形態のリング間継手による継手構造1によって接合される。
【0020】
このトンネル3の軸O1方向に隣接するセグメント2同士を接合する継手構造1は、図1から図4に示すように、先に設置された一方のセグメント2の軸線O2方向先端側を向く一方の端面2b側に設けられた雄型継手5と、この一方のセグメント2に接合される他方のセグメント2の他方の端面2a側に設けられた雌型継手6とから構成されている。
【0021】
雄型継手5は、その軸線O3方向をトンネル3の軸O2方向に一致させつつ一方のセグメント2のコンクリート内に埋設状態で設置された略円柱棒状のアンカー部7と、後端8a側がアンカー部7に保持されつつ先端8b側を一方の端面2bからセグメント2の軸線O1方向外側に突出させて取り付けられた棒状の雄型嵌合ピン8とから構成されている。
【0022】
アンカー部7は、図4に示すように、その先端7a側に、先端7aに開口しつつ軸線O3に沿って後端7b側に向けて凹み、その内面に雌ネジの螺刻が施された雌ネジ孔7cが設けられている。そして、このアンカー部7は、雌ネジ孔7cが外部と連通するように、先端7aを一方の端面2b上に配した状態で一方のセグメント2内に埋設されている。また、アンカー部7の後端7b側は、軸線O3に沿って径方向に割裂されており、分割した双方の半割部分が互いに逆方向に折曲げられて定着部7dを形成している。すなわち、先端7a側の軸線O3に直交する幅寸法よりも定着部7dの幅寸法が大きなものとされ、これにより、アンカー部7に軸線O3方向外側に引き抜かれるような力が作用した場合においても、定着部7がセグメント2のコンクリート内に定着されて、アンカー部7は抜け出ることがないように保持されている。
【0023】
雄型嵌合ピン8は、先端8b側に、軸線O4に直交する幅が後端8a側から先端8bに向かうに従い漸次小となるテーパー部8cが形成されている。また、後端8a側には、外面に前記アンカー部7の雌ネジ孔7cの雌ネジと螺合する雄ネジ部8dが設けられている。さらに、雄型嵌合ピン8は、図4及び図5に示すように、テーパー部8cの後端から雌ネジ部8dの先端よりも僅かに軸線O4方向先端8b側に位置する部分の外面に、外側に突出し周方向に環状に繋がる凸部8eが軸線O4方向に一定のピッチで複数並設されて形成された鋸目状の係合部8fを備えている。この係合部8fを形成する凸部8eは、それぞれ断面視で、外面に対し、鋭角に交差するように傾斜する斜辺とこの斜辺よりも鈍角に交差するように傾斜する斜辺を備えた断面略三角形状に形成されており、鋭角に傾斜する斜辺側を先端8b側に向けて形成されている。
【0024】
そして、上記のように形成された雄型嵌合ピン8は、図3及び図4に示すように、雄ネジ部8dをアンカー部7の雌ネジ孔7cに螺合させるとともに、アンカー部7の軸線O3と軸線O4が同軸上に配されて保持される。また、このようにアンカー部7に取り付けられた雄型嵌合ピン8は、雄ネジ部8dの先端よりも先端8b側のテーパー部8cや係合部8fが形成された部分が、一方のセグメント2の一方の端面2bよりも外側に突出した状態で保持される。
【0025】
一方、他方のセグメント2の軸線O1方向後端側の他方の端面2a側に設けられる雌型継手6は、図2、図3及び図6から図8に示すように、概略円筒状の雌型パイプ9と、雌型パイプ9の先端9a側の外面に密着しつつこの外面を覆う例えば筒状の弾性体10とが主な構成要素とされている。
【0026】
雌型パイプ9は、先端9a側の内面に、前記雄型継手8の係合部8fが係合する係合受部9bが形成されている。すなわち、この係合受部9bは、それぞれ先端9a側の内面に、内側に向けて突出し周方向に延設する凸部9cが軸線O5方向に一定のピッチで複数並設されて鋸目状を呈するように形成されている。また、係合受部9bを形成する複数の凸部9cは、係合部8fの凸部8eとほぼ同様に鋭角に交差するように傾斜する斜辺と鈍角に交差するように傾斜する斜辺を備えた断面略三角形状に形成され、鋭角に傾斜する斜辺側を先端9a側に向けて形成されている。
【0027】
また、雌型パイプ9の先端9a側には、外面から内面に貫通しつつ先端9aから後端9d側に向けて軸線O5に沿うように切欠かれた複数のスリット9eが形成されている。このスリット9eは、それぞれ、先端9aから内面に形成された係合受部9bの後端よりも軸線O5方向後端9d側に位置する範囲で形成されており、本実施形態では、軸線O5に直交する断面視で軸線O5を中心とした周方向に90度毎に4つ設けられている。このようにスリット9eが形成されて周方向に分割された雌型パイプ9の先端9a側の部分は、それぞれ弾性変形可能とされている。
【0028】
さらに、雌型パイプ9の後端9d側には、先端9a側から後端9dに向けて拡径する拡径部9fが設けられて、雌型パイプ9が外側に抜き出ることを防止している。また、この拡径部9fの基端側の内面には、平板状の閉塞部材9gが例えば溶接によって固着されて、雌型パイプ9の後端9d側の開口部分が閉塞されている。
【0029】
一方、弾性体10は、例えば硬質ウレタンゴムとされ、雌型パイプ9のスリット9eが形成されて弾性変形可能に分割された部分の外面を被覆するように設けられている。
【0030】
ちなみに、上記のように構成される雄型継手5と雌型継手6は、例えば適宜配筋した鉄筋に、雄型継手5のアンカー部7を先端7aがセグメント2の一方の端面2bに配されるように支持させ、かつ、雌型継手6の弾性体10を取り付けた雌型パイプ9を先端9aがセグメント2の他方の端面2aに配されるように支持させて、セグメント2の形状に合うように形成された型枠内に設置される。そして、この型枠内にフレッシュコンクリートを打設し、打設したコンクリートが硬化して所定の強度を発現した段階で型枠を取り除き、雄型継手5のアンカー部7と雌型継手6の弾性体10及び雌型パイプ9が、それぞれの先端7a、9aを一方の端面2bと他方の端面2aに露出させつつ埋設されたセグメント2が形成される。なお、雌型パイプ9が、その後端9d側に閉塞部材9gが設けられて閉塞され、有底筒状に形成されていることによって、型枠内に打設したフレッシュコンクリートが雌型パイプ9内に流入することが防止される。
【0031】
ついで、上記の構成からなる継手構造1を備えたセグメント2同士を一体に接合する方法について説明し、本実施形態のセグメント2の継手構造1の作用及び効果について説明する。
【0032】
本実施形態においては、上記のように形成したセグメント2を現場に搬入し、トンネル3の掘削内面に設置する前段で、雄型継手5の雄型嵌合ピン8をアンカー部7の雌ネジ孔7cに取り付け、本実施形態のセグメント2の継手構造1を形成する。そして、リング間継手の接合に際しては、先に設置された一方のセグメント2に他方のセグメント2を近づけてゆくとともに、一方のセグメント2の接合端面2bから外側に突出した複数の雄型嵌合ピン8を、他方のセグメント2の接合端面2aに開口する雌型継手6の複数の雌型パイプ9にそれぞれ挿入する。このとき、雄型嵌合ピン8は、その先端8b側にテーパー部8cが設けられていることによって、比較的容易に雌型パイプ9に挿入することができる。
【0033】
このように雌型パイプ9に雄型嵌合ピン8を挿入すると、互いに凹凸状をなし鋸目状に形成された係合部8fと係合受部9bのそれぞれの凸部8e、9c同士が接触し、雌型パイプ9のスリット9eが形成された先端9a側が外側に弾性変形して雌型パイプ9が拡径される。このように雌型パイプ9が拡径した際には、セグメント2のコンクリートを押圧するような力が作用するが、本実施形態においては、セグメント2と雌型パイプ9の間に弾性体10が介装されているため、この押圧力が弾性体で吸収されてセグメント2のコンクリートが損傷されることがない。また、このように雌型パイプ9の先端9a側が弾性変形するとともに、雄型嵌合ピン8の軸線O4が雌型パイプ9の軸線O5と一致するように案内され、かつ互いの軸線O4、O5が若干ずれた状態であっても弾性体10によってそのずれが許容される。そして、さらに雄型嵌合ピン8を雌型パイプ9の内部に挿入することにより、雄型嵌合ピン8の係合部8fと雌型パイプ9の係合受部9bとが係合され、これとともに拡径した雌型パイプ9が元の形状に縮径されて雄型継手5と雌型継手6が嵌合され、相互の嵌合状態が保持される。すなわち、係合部8fと係合受部9bが、互いの鋭角の斜辺を有する壁面同士と、鈍角の斜辺を有する壁面同士が面接触しつつ係合し、両セグメント2が離れることなく一体に接合されることになる。また、このとき、一方のセグメント2の接合端面2bと他方のセグメント2の接合端面2aが、面接触するように、または図示せぬシール材を介して接合される。
【0034】
このように両セグメント2を一体に接合した本実施形態の継手構造1においては、例えば両セグメント2がトンネル3の軸線O2に直交する方向にずれるような力が作用して、継手構造1にせん断力が作用した場合においても、このせん断力が弾性体10で吸収されて、せん断耐力が小さいコンクリートに大きなせん断力が伝達されることがなく、両セグメント2のコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることがないものとされる。
【0035】
したがって、本実施形態のセグメント2の継手構造1によれば、セグメント2のコンクリートと雌型パイプ9との間に、雌型パイプ9を覆うように弾性体10が介装されているため、継手構造1にせん断力が作用した場合においても、このせん断力を弾性体10で吸収することができ、コンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを防止できる。
【0036】
また、雌型パイプ9にスリット9eが設けられて、雌型パイプ9の先端9a側が弾性変形可能に分割されていることによって、一方のセグメント2に設けられた雄型嵌合ピン8を、他方のセグメント2に設けられた雌型パイプ9に挿入して、係合部8fと係合受部9bとを係合させつつワンタッチで嵌合させるという簡易な操作で相互の嵌合状態を保持しつつセグメント2同士を一体に接合することができる。さらに、このとき、雌型パイプ9が拡径しながら係合部8fと係合受部9bが係合されることにより、係合部8fと係合受部9bのそれぞれの凸部8e、9cを傷めることなく雄型嵌合ピン8を雌型パイプ9に嵌合させることが可能になる。また、雄型嵌合ピン8と雌型パイプ9の互いの軸線O4、O5が若干ずれた場合においても、弾性体10によってこの若干のずれを許容してセグメント2同士を接合することができる。これにより、従来のセグメントの継手構造のように、セグメント2にボルトボックスを設ける必要がなく、また、現場で複数のボルトを螺合させるという煩雑な作業を要することがなく、容易にセグメント2同士を一体に接合することができるため、作業効率を向上させて大幅に工期短縮を図ることが可能になる。
【0037】
さらに、雄型嵌合ピン8が雌ネジ孔7cに螺合されて保持されるように構成され、すなわち、アンカー部7と雄型嵌合ピン8が着脱可能に形成されていることにより、現場にて、セグメント2同士を接合する前段で雄型嵌合ピン8を簡便に取り付けて雄型継手5を形成できるため、セグメント2を運搬などする際の取扱性を向上させることも可能とされ、施工性の向上を図ることができる。
【0038】
なお、本発明は、上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、弾性体10が硬質ウレタンゴムであるものとして説明を行なったが、せん断力を吸収してコンクリートのひび割れを防止することが可能であれば、他の材質の弾性体であってもよいものである。
【0039】
また、本実施形態では、セグメント2の形成時にフレッシュコンクリートが略筒状の雌型パイプ9の内部に流入することを防止するために、雌型パイプ9には、その後端9d側に閉塞部材9gが取り付けられているものとして説明を行なったが、予め雌型パイプ9を後端9d側が閉塞された略有底筒状に形成してもよいものである。さらに、雄型継手5が、アンカー部7と、このアンカー部7の雌ネジ孔7cに着脱可能に保持される雄型嵌合ピン8とから構成されるとともに、アンカー部7が、その後端7b側に半割状態に形成された定着部7dを備えて形成されているものとしたが、アンカー部7は、一方のセグメント2に埋設状態に設置されつつ定着可能な構成とされていれば、その定着部7dの構成が限定される必要はない。また、雄型嵌合ピン8がその後端8a側に形成された雄ネジ部8dをアンカー部7の雌ネジ孔7cに螺合させることにより雄型嵌合ピン8がアンカー部7に一体に保持されるものとしたが、例えば、雄型嵌合ピン8の後端8a側の外面に、先端8b側に設けられた係合部8fと同様の係合部を設け、アンカー部7の雌ネジ孔7cの内面に雌ネジにかえて雌型パイプ9の先端9b側の内面に設けられた係合受部9bと同様の係合受部を設け、この係合部と係合受部を係合させることで雄型嵌合ピン8をアンカー部7に保持させるようにしてもよい。この場合には、雄型嵌合ピン8をより簡便な操作でアンカー部に取り付けることが可能になる。この一方で、アンカー部7と雄型嵌合ピン8が一体形成されていてもよいものである。
【0040】
さらに、雌型継手6が、雌型パイプ9と弾性体10とから構成されているものとしたが、図9に示すように、雌型パイプ9と、この雌型パイプ9の外面を覆うように設けられた弾性体10とをともに内包するように設置され、弾性体10の外面側に介装される略筒状の弾性体保持部材11が設けられてもよいものである。このような弾性体保持部材11が設けられた場合には、弾性体10を確実に雌型パイプ9の外面を覆うように保持できるとともに、セグメント2のコンクリートにせん断力が伝達されることを防止でき、セグメント2にひび割れなどの損傷が生じることをより確実に防止できる。
【0041】
ついで、図10から図12を参照し、本発明の第2実施形態に係るセグメントの継手構造について説明する。本実施形態においては、第1実施形態と同様、コンクリート製のセグメント同士を接合するための継手構造に関するものであり、雄型継手の構成のみが異なり、その他の構成は第1実施形態と同様とされる。よって、ここでは、第1実施形態に共通する構成に対して同一符号を付し、その詳細についての説明を省略する。
【0042】
本実施形態の雄型継手5は、図10及び図11に示すように、一方のセグメント2のコンクリート内に埋設状態で設置された略棒状のアンカー部7と、アンカー部7に保持される略棒状の雄型嵌合ピン8とを備え、本実施形態の雄型嵌合ピン8には、一方のセグメント2の接合端面2bから突出する基端8g側に、雄型嵌合ピン8の外面に接続されつつ軸線O4直交方向外側に突出し周方向に円環状に繋がる弾性体押圧部材12が設けられている。
【0043】
また、雌型継手6が設けられる他方のセグメント2には、その接合端面2aに、内側に凹み、両セグメント2を一体に接合した状態で弾性体押圧部材12が係合する凹部13が形成されている。また、弾性体10の接合端面2a側の端部10aがこの凹部13に露出されている。
【0044】
本実施形態のセグメント2の継手構造1においては、第1実施形態と同様に、雄型嵌合ピン8を雌型パイプ9に挿入し係合部8fと係合受部9bを係合させて嵌合させる。ここで、図4から図8に示した係合部8fの凸部8eが係合受部9bの凸部9cと接触して、雌型パイプ9の先端9a側が拡径するように弾性変形した際には、弾性体10が圧縮するように押圧されることになり、この押圧力が作用した弾性体10が、図12に示すように、接合端面2aから外側に押し出されるように変形してしまうおそれがある。また、接合後にせん断力が作用した場合においても、同様に弾性体10が押し出されてしまうおそれがある。このように接合端面2aから外側に押し出されるように変形した状態で両セグメント2が一体に接合された場合には、セグメント2と雌型パイプ9との間に介装されている弾性体10のせん断力を吸収する弾性能力が低下してしまい、弾性体10の性能を充分に活かすことができなくなってしまう。
【0045】
これに対して、本実施形態の継手構造1においては、雄型嵌合ピン8に弾性体押圧部材12が形成されていることによって、この弾性体押圧部材12が他方のセグメント2の凹部13に係合されるとともに、接合端面2aから外側に押し出された弾性体10を押圧し、接合端面2a内の元の位置に戻すことができる。また、両セグメント2を一体に接合した状態で、弾性体押圧部材12が凹部13に係合されているため、すなわち、弾性体10の接合端面2a側の端部10aを押圧した状態で弾性体押圧部材12が設置されることになるため、接合した両セグメント2にせん断力が作用して接合端面2aから外側に弾性体10が押し出るように変形することを防止できる。これにより、本実施形態においては、弾性体10のせん断力を吸収する能力を充分に活用することができる。よって、セグメント2のコンクリートにひび割れなどの損傷が生じることを確実に防止できる。
【0046】
なお、本発明は、上記の第2実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、弾性体押圧部材12が円環状を呈するように形成されて雄型嵌合ピン8に設けられ、凹部13がこの弾性体押圧部材12が係合するように形成されているものとしたが、両セグメント2を接合した状態で、弾性体10の端部10aを押圧可能であれば、弾性体押圧部材12の形状やこれが係合する凹部13の形状は特に限定を必要とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る継手構造を備えるセグメント同士を接合して構築されるトンネルを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造の雄型継手を示す断面図である。
【図5】図4に示した雄型継手の雄型嵌合ピンに形成される係合部を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造の雌型継手の雌型パイプを示す断面図である。
【図7】図6のX−X線矢視図である。
【図8】図6に示した雌型継手の雌型パイプに形成される係合受部を示す断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係るセグメントの継手構造の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係るセグメントの継手構造を示す断面図である。
【図11】図10の継手構造を嵌合してセグメント同士を接合した状態を示す断面図である。
【図12】弾性体が外側に押し出された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 継手構造
2 セグメント
2a 端面(接合端面)
2b 端面(接合端面)
3 トンネル
4 セグメントリング体
5 雄型継手
6 雌型継手
7 アンカー部
7c 雌ネジ孔
8 雄型嵌合ピン
8d 雄ネジ部
8f 係合部
9 雌型パイプ
9b 係合受部
9e スリット
10 弾性体
11 弾性体保持部材
12 弾性体押圧部材
13 凹部
O1 セグメントの軸線
O2 トンネルの軸線(軸)
O3 アンカー部の軸線
O4 雄型嵌合ピンの軸線
O5 雌型パイプの軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のセグメントの接合端面側に設けられた雄型継手と、他方のセグメントの接合端面側に設けられ前記雄型継手が嵌合されて相互の嵌合状態を保持する雌型継手とを備え、隣接するセグメント同士を一体に接合するためのセグメントの継手構造であって、
前記雄型継手は、前記一方のセグメントに埋設され前記接合端面から外側に突設される略棒状の雄型嵌合ピンを備え、前記雌型継手は、前記他方のセグメントの接合端面に開口するように前記他方のセグメントに埋設され前記雄型嵌合ピンが挿入されて嵌合する略筒状の雌型パイプと、該雌型パイプの外面を覆うように設けられ前記他方のセグメントと前記雌型パイプの間に介装される弾性体を備えており、
前記雄型嵌合ピンは、外面に、外側に突出し周方向に環状に繋がる凸部が軸線方向に複数並設されて形成された鋸目状の係合部を備え、前記雌型パイプは、前記他方のセグメントの接合端面側の先端側が、該先端から軸線に沿って後端側に延びるスリットが形成されて弾性変形可能に分割され、前記スリットにより分割された前記先端側の内面に、前記係合部と係合する鋸目状の係合受部が具備されており、前記スリットにより分割された部分の外面を覆うように前記弾性体が設けられていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項2】
請求項1記載のセグメントの継手構造において、
前記雄型継手には、前記雌型継手との嵌合状態で前記弾性体を前記他方のセグメントの接合端面内に押圧する弾性体押圧部材が設けられていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセグメントの継手構造において、
前記雄型継手には、先端に開口し軸線に沿って後端側に凹む雌ネジ孔を備えて前記一方のセグメントに埋設されたアンカー部が具備され、前記雄型嵌合ピンが、後端側の外面に形成された雄ネジ部を前記雌ネジ孔に螺合させて保持されることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項1】
一方のセグメントの接合端面側に設けられた雄型継手と、他方のセグメントの接合端面側に設けられ前記雄型継手が嵌合されて相互の嵌合状態を保持する雌型継手とを備え、隣接するセグメント同士を一体に接合するためのセグメントの継手構造であって、
前記雄型継手は、前記一方のセグメントに埋設され前記接合端面から外側に突設される略棒状の雄型嵌合ピンを備え、前記雌型継手は、前記他方のセグメントの接合端面に開口するように前記他方のセグメントに埋設され前記雄型嵌合ピンが挿入されて嵌合する略筒状の雌型パイプと、該雌型パイプの外面を覆うように設けられ前記他方のセグメントと前記雌型パイプの間に介装される弾性体を備えており、
前記雄型嵌合ピンは、外面に、外側に突出し周方向に環状に繋がる凸部が軸線方向に複数並設されて形成された鋸目状の係合部を備え、前記雌型パイプは、前記他方のセグメントの接合端面側の先端側が、該先端から軸線に沿って後端側に延びるスリットが形成されて弾性変形可能に分割され、前記スリットにより分割された前記先端側の内面に、前記係合部と係合する鋸目状の係合受部が具備されており、前記スリットにより分割された部分の外面を覆うように前記弾性体が設けられていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項2】
請求項1記載のセグメントの継手構造において、
前記雄型継手には、前記雌型継手との嵌合状態で前記弾性体を前記他方のセグメントの接合端面内に押圧する弾性体押圧部材が設けられていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセグメントの継手構造において、
前記雄型継手には、先端に開口し軸線に沿って後端側に凹む雌ネジ孔を備えて前記一方のセグメントに埋設されたアンカー部が具備され、前記雄型嵌合ピンが、後端側の外面に形成された雄ネジ部を前記雌ネジ孔に螺合させて保持されることを特徴とするセグメントの継手構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−198099(P2007−198099A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21166(P2006−21166)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(501122850)株式会社アイ・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(501122850)株式会社アイ・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】
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