説明

セグメントの継手構造

【課題】安価なアングル材を使用して製造できるセグメントの構造を提供する。
【解決手段】1枚のセグメントにおいてその一端面にはV型溝と、対応する他端面にはV型突起を形成する。V型溝とV型突起の表面は、2枚のリブにより形成した断面がV字状である鋼製のアングル材で構成する。V型溝のアングル材、V型突起の表面には、その長手方向に沿って、薄板よりなるスペーサーを取り付ける。スペーサーの厚さは、2枚のアングル材を重ねたときに、アングル材の各リブがほぼ並行に位置することができる厚さとして構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来でもセグメントとセグメントとの継手部分をV型突起とV型溝とによって構成し、1枚のセグメントのV型突起を、隣接するセグメントのV型溝に嵌合させて連結する構成が知られている。
【特許文献1】特許第3773216号公報。
【特許文献2】実開昭51−69437号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のセグメントの継手構造にあっては、次のような問題点がある。
<1> 図5に示すように、特許文献1には、典型的なアングル材の組み合わせが記載されている。
<2> このような組み合わせは、特別に注文して製作したアングル材を使用すれば実施が不可能ではない。
<3> しかし実際には市販の安価なアングル材を使用すると、このような組み合わせは不可能である。
<4> なぜなら、市販の安価なアングル材は、図6に示すようにリブaとリブbとによって形成した2片の断面がV字状の部材であるが、V字状断面の外側の出隅cが直角に形成してあるが、その内側の入隅dは円弧で形成してある鋼製の長尺材だからである。
<5> したがって2枚のアングル材を重ね合わせると、図6に示すように出隅cの直角部分が、他のアングル材の入隅dの曲面に当たってしまい、アングル材の2辺のリブa、aは並行に位置しないからである。
<6> アングル材の2辺のリブa、aが並行に位置しないと、アングル材を取り付けた2枚のセグメントの形状がその接合部分で設計通りの曲面を描かず、変形してしまう。このような接合部分での変形が累積すると、セグメントで組み立てるトンネルなどの形状は真円から程遠い形状を形成することになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のセグメントの継手構造は、
トンネルや立坑の構築に用いるセグメントの構造であって、1枚のセグメントの一端面にはV型溝と、対応する他端面にはV型突起を形成してあり、V型溝とV型突起の表面は、2枚のリブより形成した断面がV字状である鋼製のアングル材で構成し、このアングル材は、V字状断面の外側の出隅が直角に形成してあり、かつ、その内側の入隅は円弧状に形成してある鋼製の長尺材であり、V型溝のアングル材の表面には、その長手方向に沿って、薄板よりなるスペーサーを備え、スペーサーの厚さは、2枚のアングル材を重ねたときに、アングル材の各リブが並行に重ねあわせることができる厚さとして構成したことを特徴としたものである。
また本発明のセグメントの継手構造は、トンネルや立坑の構築に用いるセグメントの構造であって、1枚のセグメントの一端面にはV型溝と、対応する他端面にはV型突起を形成してあり、V型溝とV型突起の表面は、2枚のリブより形成した断面がV字状であるアングル材で構成し、このアングル材は、V字状断面の外側の出隅が直角に形成してあり、かつ、その内側の入隅は円弧状に形成してある鋼製の長尺材であり、V型突起のアングル材の表面には、その長手方向に沿って、薄板よりなるスペーサーを備え、スペーサーの厚さは、2枚のアングル材を重ねたときに、アングル材の各リブが並行に重ねあわせることができる厚さとして構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセグメントの継手構造は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> トンネル工事や立坑工事において、使用するセグメント費の占める比率がきわめて大きい。その点で、本発明の構造を備えたセグメントは、市販の安価なアングル材を大量に使用することによって、セグメントの価格を低減させることができ、その結果、シールドトンネルの工事費を減額させることができる。
<2> 安価アングル材を使用していても、V型突起のアングル材と、V型溝のアングル材とは、すべての連結部においてほぼ並行の状態に維持されるから、セグメントが連結部において変形することがなく、設計図通りの形状を維持し確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>全体の構成。
本発明の対象は、トンネルや立坑の構築に用いるセグメント1の継手部分の構造である。
ここでトンネルとは、シールド掘進機で掘進したシールドトンネルだけに限らず、トンネル掘削機で掘削したトンネルなども含めたものである。
セグメント1本体は、コンクリート製のものでも、鋼製のものでも、あるいは両者を組み合わせた合成セグメントでも本発明の構成を採用することができる。
【0008】
<2>V型突起とV型溝。
セグメント1は、トンネルや立坑の壁面を複数に分割した円弧状の板体である。
このようなセグメント1を複数枚、組み合わせて、1本のトンネルや立坑が構築されることになる。
この1枚のセグメント1の一端面にはV型溝2を形成する。
すなわち「V型溝2」とは断面がV字状に切り込まれた溝を意味する。
さらにそのV型溝2と対応する他端面は、V型突起3を形成する。
「V型突起」3とは、断面がV字状に突出した突起を意味する。
V型突起3とV型溝2の形状は合同の形状である。
【0009】
<3>アングル材。
このV型溝2とV型突起3の表面は、アングル材4によって構成する。
コンクリート製のセグメント1の場合は、アングル材4には、その裏側からアンカー棒41をコンクリート内部に埋め込んだアングル材4を位置させる。
鋼製のセグメント1ならば、その端面(主桁)にアングル材4を溶接して取り付ける。
アングル材4は、2枚のリブで構成した断面がV字状である鋼製の長尺材であり、多数の寸法違いの製品が市販されているから、市場で安価に、容易に入手することができる。
ただし、市販のアングル材4は、このようなセグメント1の端面に使用する場合に、前記したような問題がある。
すなわち、V字状断面の外側の出隅aが直角に形成してあり、かつ、その内側の入隅bは円弧で形成してあることである。
したがって市販品をそのまま、本発明のセグメント1に転用することはできない。
【0010】
<4>スペーサーの取り付け。
そこで、本発明の構造では、特にV型溝2のアングル材4の表面には、その長手方向に沿って、薄板よりなるスペーサー42を取り付ける。
このスペーサー42は、単なる鋼製の帯板であるから、これもさらに安価に入手することができる。
このスペーサー42に加わる外力は圧縮力と微小なせん断力だけであるから、アングル材4への取り付けは単純な溶接作業で済み、それも点状の間隔を飛ばした溶接で十分であるから、その取り付け作業も簡単で安価である。
ただしこのスペーサー42の厚さは薄すぎては目的を達成せず、一定の厚さが必要である。
その厚さとは、2枚のアングル材4を重ねたときに、V字状のアングル材4の各リブがほぼ並行に位置することができる厚さとして構成する。
すなわち1枚のアングル材4の出隅aの直角部分が、他のアングル材4の入隅bの曲線部分に接触しないか、あるいは点接触して、両アングル材4の各リブが、断面図的に並行移動した状態を維持できるように構成する。
【0011】
<5>V型突起への取り付け。
上記の実施例では、スペーサー42をV型溝2の表面に取り付けた場合を説明した。
しかし図2に示すように、スペーサー42をV型突起3の表面に取り付けることも可能である。
すなわちスペーサー42は、V型溝2か、V型突起3のいずれか、あるいは双方に取り付ければよい。
V型溝2にスペーサー42を取り付けても、あるいはV型突起3にスペーサー42を取り付けても、2枚のアングル材4を重ね合わせたときに、スペーサー42の存在によって、1枚のアングル材4の出隅aの直角部分が、他のアングル材4の入隅bの曲線部分に接触しないか、あるいは点接触して、両アングル材4の各辺が、断面図的にほぼ並行移動した状態を維持できるように構成することができる。
【0012】
<6>シール材の取り付け。
アングル材4の長手方向に沿って取り付けたスペーサー42と並行に、止水性の高いシール材43を取り付けて構成することも可能である。
このシール材43は、従来からセグメント1の端部に取り付けられていた材料であり、このシール材43によってセグメント1トンネルの外部からの地下水の流入の阻止、裏込めモルタルの流入の阻止などの役目を果たすものである。
しかし従来のセグメント1において、その端面にシール材43を取り付けたものは、セグメント1を引きずる際に剥離してしまうような問題があった。
しかし本発明のセグメント1では、シール材43は鋼製の帯板であるスペーサー42に隣接して設けてあるから、スペーサー42によって保護されており、セグメント1を引きづった程度で剥離することがない。
帯状の鋼板であるスペーサー42を1本取り付けた場合には、そのスペーサー42に沿わせてシール材43を取り付ける。
帯状の鋼板であるスペーサー42を2本、並行に取り付け、その2本のスペーサー42の間にシール材43を取り付けておけば、破損の危険を避けることができ、密封の原理(パッキン理論)により高い止水性を確保することができる。
【0013】
<7>セグメントの組み立て状態。
上記のように構成したセグメント1を組み立てる。
その場合に、すべての接合部分において、端面のアングル材4は、ほぼ並行移動した状態で配置することができる。
実際にはセグメント1とセグメント1とを直線状態で接続するのではなく、全体で円形トンネルや立坑を構築するのであるから、正確な並行移動図形ではないが、実質的にほぼ並行移動ということができ、図6に示すような不明確な角度での組み合わせが発生することはない。
したがって、セグメント1の接合部にガタつきが生じることがなく、設計図通りの正確なトンネル形状、立坑の形状を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の継手構造を備えたセグメントの実施例の説明図。
【図2】継手部分の構造の実施例の説明図。
【図3】本発明のセグメント連結部におけるアングル材とアングル材の組み合わせ状態の説明図。
【図4】本発明の他の実施例に説明図。
【図5】従来のセグメントのアングル材の配置の実施例の説明図。
【図6】アングル材のみ組み合わせた状態の継手部の説明図。
【符号の説明】
【0015】
1:セグメント
2:V型溝
3:V型突起
4:アングル材
42:スペーサー
43:シール材
a:出隅
b:入隅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルや立坑の構築に用いるセグメントの構造であって、
1枚のセグメントにおいてその一端面にはV型溝と、対応する他端面にはV型突起を形成してあり、
V型溝とV型突起の表面は、2枚のリブにより形成した断面がV字状である鋼製のアングル材で構成し、
このアングル材は、V字状断面の外側の出隅が直角に形成してあり、
かつ、その内側の入隅は円弧状に形成してある鋼製の長尺材であり、

V型溝のアングル材の表面には、その長手方向に沿って、薄板よりなるスペーサーを備え、
スペーサーの厚さは、2枚のアングル材を重ねたときに、
アングル材の各リブがほぼ並行に位置することができる厚さとして構成した、
セグメントの継手構造。
【請求項2】
トンネルや立坑の構築に用いるセグメントの構造であって、
1枚のセグメントの一端面にはV型溝と、対応する他端面にはV型突起を形成してあり、
V型溝とV型突起の表面は、2枚のリブにより形成した断面がV字状であるアングル材で構成し、
このアングル材は、V字状断面の外側の出隅が直角に形成してあり、
かつ、その内側の入隅は円弧状に形成してある鋼製の長尺材であり、

V型突起のアングル材の表面には、その長手方向に沿って、薄板よりなるスペーサーを備え、
スペーサーの厚さは、2枚のアングル材を重ねたときに、
アングル材の各リブがほぼ並行に位置することができる厚さとして構成した、
セグメントの継手構造。
【請求項3】
アングル材の長手方向に沿って取り付けたスペーサー間に、
止水性の高いシール材を取り付けて構成した、
請求項1または2のいずれか1項に記載のセグメントの継手構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−167765(P2009−167765A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10287(P2008−10287)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(507328782)株式会社ダニエル総合研究所 (8)
【Fターム(参考)】