説明

セグメントの製造方法

【課題】ネジ穴の形成や先端部の切削などの機械加工を要することなく、雌型継手を所定位置に精度よく設置することができ、雌型継手ひいてはセグメントの製作コストを低減可能なセグメントの製造方法を提供する。
【解決手段】嵌合空間6にT型治具30を係合させた状態で雌型継手20を配置し、螺合部材32をT型治具30に形成したネジ孔30hに螺合させ、螺合部材32の先端32cで嵌合空間6の底面22aを押圧して雌型継手20を型枠31の内面31bから離れるように移動させるとともに、T型治具30を型枠31の内面31bに近づけるように移動させ、T型治具30の端部30iを型枠31の内面31bに当接させることによりT型治具30の位置決めを行なうとともに、T型治具30の外面30fに嵌合空間6を形成する内面20pが当接して雌型継手20を係止することによって雌型継手20を型枠31内の所定位置に位置決めして設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシールド工法などによって掘削したトンネル内に設置されて覆工を形成するセグメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシールド工法などで掘削したトンネルT内面には、図21に示すように、掘削内面の曲率半径と略等しい曲率半径を備えた複数の円弧盤状のセグメント1が周方向に連続して設けられ、周方向の掘削内面を被覆して支持する環状のセグメントリング体2が形成される。そして、このような周方向の掘削内面を支持するセグメントリング体2がトンネルTの軸線O1方向に連続するように接続されて、掘削内面を被覆支持するトンネルTの覆工が形成される。このとき、隣接するセグメント1同士は、雄型継手と雌型継手からなる継手構造3、4を用いて一体に接合される。
【0003】
特にトンネルT周方向に隣接するセグメント1同士を接合するための継手構造(セグメント間継手)4には、トンネルT半径方向の負荷に対して大きな強度を確保することができ、且つセグメント1の内面に凹凸が形成されないなどの利点から、いわゆる水平コッターと称される継手構造が用いられている。この水平コッター式の継手構造4は、図22に示すように、隣り合うセグメント1のそれぞれの接合端面1aの対向位置に、断面略C型状のC型金具(雌型継手、C型継手)5が、嵌合空間6を接合端面1aに開口させ、且つトンネルT軸線O1方向に延設させて、各セグメント1(コンクリート)に埋設される。そして、隣り合うセグメント1のそれぞれのC型金具5の嵌合空間6に、断面略H型状のH型金具(雄型継手、H型継手)7の両端部側(両フランジ部側)7aのそれぞれを嵌め込むことによって、H型金具7を介してC型金具5同士が連結され、セグメント1の接合端面1a同士が接合される。
【0004】
一方で、水平コッター式の継手構造を用いたセグメント1を製造する際には、図23に示すように、円弧盤状の内空(コンクリートを打設する内空)を形成するように型枠8を組み立て、この型枠8内の所定位置に、C型金具5を型枠8の内面8aと嵌合空間6が開口する先端部5aを当接させるようにボルト9で固定して設置する(例えば、特許文献1参照)。このため、C型金具5には、嵌合空間6を形成する底面5bに開口して凹み、型枠8の外側から嵌合空間6に挿通したボルト9を螺着するためのネジ穴10が形成されている。
【0005】
また、C型金具5は、図23に示すように、先端部5aに係止片部5cを有する鉤形に形成された一対の係止部5dが互いに対向するように配置され、一対の係止部5dの係止片部5cに対し反対側同士が連結部5eで連結して形成され、これら一対の係止部5dと連結部5eの内面で囲まれた嵌合空間6が形成されている。そして、このような嵌合空間6にH型金具7を嵌合させてセグメント1同士を接合する関係上、係止片部5cのセグメント1内方側(連結部5e側)を向く面5fから先端部5a(接合端面1a)までの寸法d1、すなわち係止片部5cの厚さd1寸法を精度よく形成し、好適にH型金具7を嵌合させてセグメント1同士を所定位置で確実に連結できるようにすることが重要である。このため、一般に鋳物として製作されるC型金具5は、予め係止片部5cの厚さd1寸法を大きく形成しておき、C型金具5毎に先端部5aを機械加工によって切削することで、係止片部5cの寸法精度を確保している。
【特許文献1】特開2001−300930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のセグメント1の製造方法においては、型枠8内の所定位置にC型金具5を固定して設置するために、C型金具5にネジ穴10を加工する必要があり、また、大量のC型金具5に対し、係止片部5cの厚さd1寸法精度を確保するためにそれぞれ個別に先端部5aを機械加工で切削する必要があるため、C型金具5のコストひいてはセグメント1の製造コストが高コストになるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑み、ネジ穴の形成や先端部の切削などの機械加工を要することなく、雌型継手を所定位置に精度よく設置することができ、雌型継手ひいてはセグメントの製作コストを低減可能なセグメントの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明のセグメントの製造方法は、隣り合うセグメント同士を接合するための雄型継手が嵌合するT型状の嵌合空間を前記セグメントの接合端面に開口させてコンクリート内に埋設状態で配置した雌型継手を備えるセグメントの製造方法であって、前記嵌合空間にT型状のT型治具を係合させた状態で、前記嵌合空間が開口する先端部を型枠の内面に対向させて前記雌型継手を配置し、螺合部材を前記型枠の外側から前記型枠の孔部及び前記嵌合空間内に挿通して、前記T型治具に形成したネジ孔に螺合させ、前記螺合部材のさらなる螺入によって、前記T型治具を挿通した該螺合部材の先端で前記嵌合空間の底面を押圧して前記雌型継手を前記型枠の内面から離れるように移動させるとともに、前記T型治具を前記型枠の内面に近づけるように移動させ、前記雌型継手の先端部から外側に突出した前記T型治具の端部を前記型枠の内面に当接させることにより、前記T型治具の位置決めを行なうとともに、該位置決めされた前記T型治具の外面に前記嵌合空間を形成する内面が当接して前記雌型継手を係止することにより、前記雌型継手を前記型枠内の所定位置に位置決めして設置することを特徴とする。
【0010】
この発明においては、T型治具及び螺合部材の寸法を高精度で形成しておくことによって、雌型継手を精度よく所定位置に設置することができる。また、このとき、雌型継手の先端部から外側に突出したT型治具の端部が型枠の内面に当接して、雌型継手を所定位置に設置するため、雌型継手の先端部と型枠の内面との間に必然的に隙間が形成される。このため、T型治具の外面に当接して雌型継手を係止する雌型継手の内面から先端部までの距離、すなわち図23における連結部5e側を向く面5fから先端部5aまでの係止片部5cの厚さd1寸法が異なる場合においても、確実にT型治具の外面に当接して雌型継手を係止する雌型継手の内面から型枠の内面(セグメントの接合端面)までの距離を高精度で確保して雌型継手を設置することができる。これにより、従来のセグメントの製造方法のように、雌型継手(C型金具)の先端部を機械加工で切削する必要がない。
【0011】
また、従来のセグメントの製造方法のように、型枠内の所定位置に設置するためのネジ穴を雌型継手に形成することなく、ネジ孔を形成したT型治具と螺合部材とで雌型継手を精度よく設置することができ、このようなT型治具は、雌型継手を設置した型枠内に打設したコンクリートが硬化して螺合部材を取り除くとともに型枠を取り外した段階で、雌型継手の嵌合空間から回収することができるため、ネジ孔を形成したT型治具をセグメントの製造毎に使い回すことができる。
【0012】
また、本発明のセグメントの製造方法において、前記雌型継手には、前記嵌合空間を形成する内面に前記螺合部材の先端が嵌合する嵌合孔が形成されていることが望ましい。
【0013】
この発明においては、型枠内に雌型継手を設置する際に、螺合部材の先端が嵌合孔に嵌合するとともに、型枠の内面(セグメントの接合端面)の延設方向に対する雌型継手の位置決めを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセグメントの製造方法によれば、雌型継手に対し、ネジ穴の形成や先端部の切削などの機械加工を要することなく、型枠内の所定位置に精度よく雌型継手を設置できるため、雌型継手ひいてはセグメントの製作コストを低減させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1から図17を参照し、本発明の一実施形態に係るセグメントの製造方法について説明する。本実施形態は、例えばシールド工法等により掘削したトンネル内面に設置される覆工用のセグメントの製造方法に関し、特に水平コッター式の継手構造を備えるコンクリート製のセグメントの製造方法に関するものである。
【0016】
本実施形態のセグメント1のセグメント間継手4は、図1に示すように、隣り合うセグメント1のそれぞれの接合端面1a側のコンクリート1b内に埋設された一対の雌型継手20と、隣り合うセグメント1の対向する一対の雌型継手20同士を連結する雄型継手21とで構成されている。
【0017】
一対の雌型継手20は、それぞれ、例えば鋳物などを断面略C型状に形成したC型継手であり、一方の雌型継手が先付け側雌型継手20aとされ、他方の雌型継手が嵌合側雌型継手20bとされている。各雌型継手20(20a、20b)は、図2から図7に示すように(先付け側雌型継手20aを図2から図4に、嵌合側雌型継手20bを図5から図7に示す)、先端部20cに係止片部20dを有する鉤形に形成された一対の係止部20eが互いに対向するように配置され、一対の係止部20eの係止片部20dに対し反対側同士が連結部20fで連結されて形成されている。そして、このような雌型継手20には、一対の係止部20eと連結部20fの内面で囲まれた断面T型状の嵌合空間6が形成されている。
【0018】
また、雌型継手20には、連結部20fに、嵌合空間6の先端部20c側を向く底面20gに開口しこの底面20gから外面に向けて凹む嵌合孔22が、嵌合空間6の延設方向、すなわち雌型継手20の軸線O2方向に所定の間隔をあけて2つ形成されている。さらに、連結部20fには、前記延設方向O2の略中央に外面から外側に延出する略矩形板状の延出部20hが設けられ、この延出部20hには、延設方向O2に直交する雌型継手20の側面視で、中心を挟む両側のそれぞれに貫通孔20iが形成されている。なお、この延出部20h及び貫通孔20iは、雌型継手20とセグメント1のコンクリート1bとの接合強度を確保するためのものである。
【0019】
さらに、本実施形態においては、一対の雌型継手20のうち、図2から図4に示す先付け側雌型継手20aには、一方の側端部20jに嵌合空間6と連通する収容空間を備え、嵌合空間6の一方の側端部20j側を閉塞させるように形成されたバックアップ部材20kが設けられている。これにより、先付け側雌型継手20aは、両側端部20j、20mのうち他方の側端部20m側にのみ嵌合空間6が開口するように形成されている。また、図5から図7に示す嵌合側雌型継手20bは、一方の側端部20jに嵌合空間6を閉塞させる閉塞部20nが設けられ、先付け側雌型継手20aと同様に、両側端部20j、20mのうち他方の側端部20m側にのみ嵌合空間6が開口するように形成されている。
【0020】
そして、上記のように形成した雌型継手20は、図1に示すように、先端部20cをセグメント1の接合端面1a側に配し嵌合空間6をこの接合端面1aに開口させて、コンクリート1b内に埋設されている。また、このとき、本実施形態においては、同一のセグメント1に設置された先付け側雌型継手20aと嵌合側雌型継手20bがそれぞれの軸線O2を接合端面1bに対して傾斜させ、且つ互いの軸線O2がセグメント1内で交差するように、斜めに設けられている。これは、詳細は後述するテーパー面を備えた雄型継手21のフランジ部21aを嵌合空間6に嵌合させた際に、隣り合うセグメント1の対向する一対の雌型継手20のそれぞれと雄型継手21とを強固に連結するための構成である。さらに、本実施形態では、雌型継手20の先端部20cと接合端面1aとの間に隙間を設けた状態で、雌型継手20がコンクリート1内の所定位置、すなわち係止片部20dの連結部20f側を向く面20pから接合端面1aまでの距離d2が所定の寸法となるように精度よく埋設されている。
【0021】
また、このように雌型継手20が埋設されたセグメント1には、雄型継手21を挿入するための挿入口24が雌型継手20の他方の側端部20m側の側近に形成され、この挿入口24と嵌合空間6が他方の側端部20m側で連通している。
【0022】
一方、雄型継手21は、図8から図10に示すように、互いに平行な一対のフランジ部21aを連結部21bにより連結して断面略H型状に形成されている。また、一対のフランジ部20aの互いに対向する内面が一方の側端21cから他方の側端21dに向かうに従い漸次近づくように傾斜するテーパー状に形成されている。
【0023】
そして、隣り合うセグメント1同士を接合する際には、図1に示すように、雄型継手21の一方のフランジ部21aを挿入口24に挿入しつつ、一方のセグメント1の雌型継手20の嵌合空間6に側端部20m側から嵌合させる。本実施形態において、このとき、一方のセグメント1のみに嵌合させた状態の雄型継手21は、雌型継手20が係止片部20dの連結部20f側を向く面20pから接合端面1aまでの距離d2が所定の寸法となるように精度よく埋設されているため、一方のセグメント1の接合端面1aから予め定められた所定の寸法分が精度よく外側に突出する。ついで、このように一方のセグメント1の接合端面1aから外側に突出した部分の雄型継手21の他方のフランジ部21aを、他方のセグメント1の挿入口24に挿入し、図21に示したトンネル軸線O1方向に移動させて、他方のセグメント1の雌型継手20の側端部20m側から嵌合させる。これにより、雄型継手21を介して、両雌型継手20が連結されるとともに、隣り合うセグメント1同士が接合される。このとき、一方のセグメント1の接合端面1aから雄型継手21が精度よく外側に突出した状態で、雌型継手20と雄型継手21が連結するため、セグメント1同士が確実に所定の位置に配されて接合される。
【0024】
ついで、上記の構成からなるセグメント1の製造方法を説明し、本実施形態のセグメント1の製造方法の作用及び効果について説明する。
【0025】
はじめに、セグメント1のコンクリート1bを打設する型枠内の所定位置に雌型継手20を固定設置する際に、本実施形態では、例えば機械加工で高精度の寸法をもって形成したT型治具30を用いる。このT型治具30は、図11から図13に示すように、それぞれ略矩形平板状に形成された頭部30aと軸部30bが互いに直交するように繋がって、側面視T型状に形成されている。また、頭部30aは、雌型継手20の両側端部20j、20mを結ぶ長さ、すなわち嵌合空間6の延設方向O2の長さと略同等の長さを備えて形成されている。さらに、頭部30aには、長さ方向両側端30c、30d側のそれぞれに、軸部30bの一端30eが繋がる一面(外面)30fから他面30gに貫通するネジ孔30hが形成されている。一方、軸部30bは、頭部30aよりも小さな幅と長さをもって形成され、頭部30aの幅方向略中央で且つ長さ方向両側端30c、30d側に設けられた一対のネジ孔30hの間の一面30fに一端30eを繋げて突設されている。これにより、本実施形態のT型治具30は、側面視に加え、正面視においてもT型状を呈するように形成されている。また、軸部30bは、他端(T型治具30の端部)30iが一側端30c側から他側端30d側に向かうに従い漸次頭部30aの一面30fに近づくように傾斜して形成されている。なお、軸部30bの他端30iの傾斜角は、図1に示すようにセグメント1に設置される雌型継手20の軸線O2とセグメント1の接合端面1aの傾斜角と同等とされている。
【0026】
そして、上記のT型治具30を用いてセグメント1を製造する際には、まず、円弧盤状の内空を形成するように型枠31を組み立てる。この型枠31は、図14に示すように、セグメント1の接合端面1aを形成する部分の端板31aが平面状の内面(型枠31の内面)31bを備えて形成されている。また、この端板31aの所定位置には、複数の孔部31cが形成されている。
【0027】
ついで、雌型継手20を型枠31内の所定位置に設置する際には、はじめに、図14に示すように、雌型継手20の嵌合空間6に、頭部30aを連結部30f側に、軸部30bを先端部20c側に配して係合させる。ついで、このようにT型治具30が係合した状態の雌型継手20を型枠31の内面31bと先端部20cを対向させるように配置する。ついで、ボルト(螺合部材)32を、ボルト32の頭部32aと型枠31との間にスプリングワッシャー33を介装させて、型枠31の外側から孔部31cに挿通させるとともに、嵌合空間6のT型治具30の軸部30bが係合していない部分に先端部20c側から挿通させ、T型治具30の頭部30aに形成したネジ孔30hにボルト32の雄ネジ部32bを螺合させる。
【0028】
そして、さらにボルト32を螺入させて、図15に示すように、雄ネジ部32bをT型治具30の頭部30aから貫通させ、その先端32cを雌型継手20の連結部20fに形成した嵌合孔22に嵌合させる。このようにボルト32をT型治具30の頭部30aに形成した一対のネジ孔30hにそれぞれ螺合させ、雌型継手20の一対の嵌合孔22にそれぞれボルト32の先端32cを嵌合させることによって、型枠31の内面31bに沿う方向、すなわちセグメント1の接合端面1aに沿う方向に対する雌型継手20の位置決めがなされる。
【0029】
ついで、さらにボルト32を螺入させると、図16に示すように、嵌合孔22の底面(嵌合空間6の底面)22aにボルト32の先端32cが当接し、このボルト32の先端32cが雌型継手(嵌合孔22の底面22a)20を押圧して、雌型継手20を型枠31の内面31bから離れるように移動させる。これとともに、ボルト32が螺合したT型治具30が、雌型継手20の先端部20cから軸部30bの端部(他端30i)を外側に突出させつつ型枠31の内面31bに近づくように移動する。そして、この雌型継手20の先端部20cから外側に突出したT型治具30の端部30iが型枠31の内面31bに当接した段階で、T型治具30の移動が停止しその位置決めがなされる。また、これとともに、位置決めされたT型治具30の頭部30aの一面30f、すなわちT型治具30の頭部30aの型枠31側を向く外面に、雌型継手20の係止片部20dの連結部20f側を向く面(嵌合空間6を形成する内面)20pが当接して密着し、雌型継手20が係止される。これにより、雌型継手20が型枠31内の所定位置に位置決めされる。
【0030】
このとき、ボルト32の長さを精度よく形成するとともに、T型治具30の軸部30bの長さを精度よく形成しておくことで、上記のように係止されて移動が停止した雌型継手20は、雌型継手20の係止片部20dの連結部20f側を向く面20pから型枠31の内面31b、すなわちセグメント1の接合端面1aまでの距離d2がT型治具30の軸部30bの長さによって決められ、この軸部30bの長さ寸法を精度よく形成しておくことで、確実に精度よく所定位置に配置されることになる。よって、雌型継手20が、雄型継手21と好適に嵌合し、好適にセグメント1同士を接合可能な型枠31内の所定位置に設置される。
【0031】
また、この状態で、雌型継手20の係止部20eの先端部20cと型枠31の内面(セグメント1の接合端面1a)31bとの間には、T型治具30の軸部30bが雌型継手20の先端部20cから外側に突出しているため、必然的に隙間Hが形成される。このため、T型治具30の外面に当接して雌型継手20を係止する雌型継手20の内面20pから先端部20cまでの距離d1、すなわち係止片部20dの厚さd1寸法が異なる場合においても、確実にT型治具30の外面に当接して雌型継手20を係止する雌型継手20の内面20pからセグメント1の接合端面1aまでの距離d2を高精度で確保して雌型継手20が設置される。よって、従来のセグメントの製造方法のように、雌型継手20の先端部20cを機械加工で切削する必要がなく、係止片部20dの厚さd1寸法にばらつきが生じた複数の雌型継手20を、同一のT型治具30を用いて精度よく設置することができる。なお、この隙間Hは、例えば型枠31の内面31b(端板31aの内面31b)や雌型継手20の先端部20cに、予めOリングやシート状の弾性部材などを取り付けておくことで、閉塞するように構成してもよい。
【0032】
さらに、ネジ孔30hを形成したT型治具30とボルト(螺合部材)32とを用いることで雌型継手20が精度よく設置されるため、従来のセグメントの製造方法のように、型枠31内の所定位置に設置するためのネジ穴を雌型継手20に形成する必要はない。また、本実施形態において、ボルト32の先端32cを嵌合させる嵌合孔22を雌型継手20に形成する必要はあるが、この嵌合孔22は、ネジ孔ではないため、鋳物の雌型継手20を形成するための金型の製作時に嵌合孔22に対応する凸部を形成しておけばよく、大量の雌型継手20に対して機械加工で嵌合孔22を形成する必要はない。
【0033】
また、本実施形態では、上記のようにT型治具30の端部(軸部30bの他端)30iを型枠31の内面31bに当接させて所定位置に雌型継手20を設置する際に、この軸部30bの他端30iが、その傾斜角を、図1に示すようにセグメント1に設置される雌型継手20の軸線O2とセグメント1の接合端面1aの傾斜角と同等として形成されている。このため、図17に示すように、2本のボルト32をそれぞれ雌型継手20の2つの嵌合孔22に嵌合させて螺入した際に、軸部30bの他端30iが型枠31の内面31bに密着するように当接するとともに、ボル
ト32がその軸線を斜めに傾斜させながら締結されてゆき、且つ雌型継手20が自動的にその軸線O2をセグメント1の接合端面1aに対して所定の傾斜角で交差させるように設置される。よって、T型治具30の端部31iを予め所定の傾斜角で形成しておくことで、確実に雌型継手20を所望の角度で設置することが可能になる。
【0034】
そして、上記のように雌型継手20を設置した段階で、雄型継手21を雌型継手20の側端部20m側に挿入する挿入口24を形成するために、図17に示すように、雌型継手20の側近に例えば断面略矩形の抜き型34を設置する。この抜き型34は、型枠31の外側から孔部31cに挿通したボルト35が螺着するネジ穴34aを備えており、ボルト35とネジ穴34aを螺着させることによって、型枠31内の所定位置に固定して設置される。また、ボルト35の螺着とともに、セグメント1の接合端面1aと同方向を向く一面34bが型枠31の内面31bに密着する。さらに、このとき、孔部31cを適正な位置に形成しておくことで、ボルト35をネジ孔34aに螺着させるとともに、抜き型34の一側面が雌型継手20の他方の側端部20mと密着するように設置される。
【0035】
雌型継手20及び抜き型34を設置した段階で、型枠31内に鉄筋を配筋するとともにコンクリート1bを打設し、コンクリート1bが硬化した段階で、雌型継手20や抜き型34を固定しているボルト32、35を取り除くとともに型枠31を取り外す。そして、抜き型34をコンクリート1bから取り除いて挿入口24を開口させるとともに、雌型継手20の側端部20m側から嵌合空間6に係合したT型治具30を挿入口24に引き出して取り除く。このように、T型治具30は、型枠31を取り外した段階で、雌型継手20の嵌合空間6から回収することができるため、セグメント1の製造毎に使い回すことができる。
【0036】
したがって、本実施形態のセグメントの製造方法においては、T型治具30及び螺合部材(ボルト)32の寸法を高精度で形成しておくことによって、雌型継手20を精度よく所定位置に設置することができる。また、雌型継手20の係止片部20dの厚さd1寸法が異なる場合においても、確実にT型治具30によって、雌型継手20を係止する雌型継手20の内面20pから型枠31の内面31b(セグメント1の接合端面1a)までの距離を高精度で確保して雌型継手20を設置することができる。また、ネジ孔30hを形成したT型治具30と螺合部材32とで雌型継手20を精度よく設置することができ、このようなT型治具30をセグメント1の製造毎に使い回すことができる。よって、従来のセグメントの製造方法のように、雌型継手20の先端部20cを機械加工で切削する必要がなく、且つ型枠31内の所定位置に設置するためのネジ穴を雌型継手20に形成する必要がないため、雌型継手20ひいてはセグメント1の製作コストを低減させることが可能になる。
【0037】
また、本実施形態のように、雌型継手20をセグメント1の接合端面1aに対して傾斜して設置するような場合においても、端部30iを所定の傾斜角度で形成したT型治具30を用いることで、容易に且つ確実に所望の傾斜角度で雌型継手20を設置することが可能になる。
【0038】
さらに、雌型継手20に、螺合部材32の先端32cが嵌合する嵌合孔22を形成しておくことによって、セグメント1の接合端面1aの延設方向に対する雌型継手20の位置決めを行うことが可能になる。
【0039】
なお、本発明は、上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、雌型継手20がその軸線O2をセグメント1の接合端面1aに対して斜めに配するように設けられるものとし、このように雌型継手20を設置するためにT型治具30の端部30iが傾斜して形成されているものとしたが、雌型継手20をセグメント1の接合端面1aに平行に設置する場合や、型枠31の内面31bに所定の傾斜角度を有する傾斜面を予め形成した場合には、T型治具30の端部30iを傾斜して形成する必要はない。
【0040】
また、本実施形態において、T型治具30は、軸部30bが、頭部30aよりも小さな幅と長さをもって形成され、頭部30aの幅方向略中央で且つ長さ方向両側端30c、30d側に設けられた一対のネジ孔30hの間の一面30fに一端30eを繋げて突設さされて、側面視に加え正面視においてもT型状を呈するように形成されているものとしたが、T型治具30は、例えば図18から図20に示すように、軸部30bが頭部30aの長さ方向両側端30c、30d側に一端30eを一面30fに繋げてそれぞれ突設され、ネジ孔30hが頭部30aの他面30gから頭部30a及び軸部30bを貫通して軸部30bの端部30iに開口するように形成されて、側面視でT型状を呈し、正面視でコ字状を呈するように形成されてもよい。この場合においても、嵌合空間6の先端部20c側に配されて雌型継手20に係合したそれぞれの軸部30bが、各ネジ孔30hに螺合部材32を螺合させるとともに、端部30iを型枠31の内面31bに当接させて、雌型継手20を所定位置に設置することが可能である。また、本実施形態と同様に、雌型継手20をセグメント1の接合端面1aに対して傾斜して設置する場合には、各軸部30bの端部30iを傾斜して形成してもよい。
【0041】
さらに、T型治具30には、2つのネジ孔30hが形成されているものとしたが、特にネジ孔30hの数を限定する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】セグメント同士を接合する雄型継手と雌型継手からなる継手構造を示す断面図である。
【図2】先付け側雌型継手を示す正面図である。
【図3】図2のX1−X1線矢視図である。
【図4】図2のX2−X2線矢視図である。
【図5】嵌合側雌型継手を示す正面図である。
【図6】図5のX1−X1線矢視図である。
【図7】図5のX2−X2線矢視図である。
【図8】雄型継手を示す正面図である。
【図9】図8のX1−X1線矢視図である。
【図10】図8のX2−X2線矢視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るセグメントの製造方法に用いるT型治具を示す正面図である。
【図12】図11のX1−X1線矢視図である。
【図13】図11のX2−X2線矢視図である。
【図14】本発明の一実施形態に係るセグメントの製造方法において、T型治具を係合させた雌型継手を型枠に対向配置した状態を示す側面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係るセグメントの製造方法において、T型治具の雌ネジ部に螺合部材を螺合させるとともに、螺合部材の先端を嵌合孔に嵌合させた状態を示す側面図である。
【図16】本発明の一実施形態に係るセグメントの製造方法において、T型治具の先端部を型枠の内面に当接させるとともに、T型治具の外面と雌型継手の内面を当接させて、雌型継手を所定の位置に設置した状態を示す側面図である。
【図17】本発明の一実施形態に係るセグメントの製造方法において、T型治具の先端部を型枠の内面に当接させるとともに、T型治具の外面と雌型継手の内面を当接させて、雌型継手を所定の位置に設置するとともに、抜き型を設置した状態を示す図である。
【図18】本発明の一実施形態に係るセグメントの製造方法に用いるT型治具の変形例を示す正面図である。
【図19】図18のX1−X1線矢視図である。
【図20】図18のX2−X2線矢視図である。
【図21】トンネル内にセグメントを設置した状態を示す斜視図である。
【図22】従来のセグメントの製造方法を用いて製造したセグメント同士を接合させる継手構造を示す側断面図である。
【図23】従来のセグメントの製造方法において、雌型継手を型枠内に設置した状態を示す図である。を用いて製造したセグメント同士を接合させる継手構造を示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 セグメント
1a 接合端面
2 セグメントリング体
3 リング間継手
4 セグメント間継手
6 嵌合空間
20 雌型継手
20a 先付け側雌型継手
20b 嵌合側雌型継手
20c 先端部
20d 係止片部
20e 係止部
20f 連結部
20g 内面(底面)
20j 側端部
20m 側端部
20p 係止片部の連結部側を向く面(内面)
21 雄型継手
21a フランジ部
21b 連結部
22 嵌合孔
22a 嵌合孔の底面
24 挿入口
30 T型治具
30a 頭部
30b 軸部
30f 一面(外面)
30g 他面
30h ネジ孔
30i 端部
32 ボルト(螺合部材)
32a 頭部
32b 雄ネジ部
32c 先端
33 スプリングワッシャー
34 抜き型
d1 係止片部の厚さ
d2 係止片部の連結部側を向く面から型枠の内面までの距離
H 隙間
O1 トンネルの軸線
O2 雌型継手の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うセグメント同士を接合するための雄型継手が嵌合するT型状の嵌合空間を前記セグメントの接合端面に開口させてコンクリート内に埋設状態で配置した雌型継手を備えるセグメントの製造方法であって、
前記嵌合空間にT型状のT型治具を係合させた状態で、前記嵌合空間が開口する先端部を型枠の内面に対向させて前記雌型継手を配置し、
螺合部材を前記型枠の外側から前記型枠の孔部及び前記嵌合空間内に挿通して、前記T型治具に形成したネジ孔に螺合させ、
前記螺合部材のさらなる螺入によって、前記T型治具を挿通した該螺合部材の先端で前記嵌合空間の底面を押圧して前記雌型継手を前記型枠の内面から離れるように移動させるとともに、前記T型治具を前記型枠の内面に近づけるように移動させ、
前記雌型継手の先端部から外側に突出した前記T型治具の端部を前記型枠の内面に当接させることにより、前記T型治具の位置決めを行なうとともに、該位置決めされた前記T型治具の外面に前記嵌合空間を形成する内面が当接して前記雌型継手を係止することにより、前記雌型継手を前記型枠内の所定位置に位置決めして設置することを特徴とするセグメントの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のセグメントの製造方法において、
前記雌型継手には、前記嵌合空間を形成する内面に前記螺合部材の先端が嵌合する嵌合孔が形成されていることを特徴とするセグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−207412(P2008−207412A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44963(P2007−44963)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】