説明

セグメント及びその製造方法

【課題】溶接熱に基づくフランジ部材の面外変形をより安価な構成で抑制するとともに、フランジ部材間の荷重伝達性能を向上させることが可能なセグメントを提供する。
【解決手段】ウェブ部材51とフランジ部材52とを有する主桁5と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレート7とを備えるセグメント1において、ウェブ部材51とフランジ部材52とは、互いに溶接により固着され、ウェブ部材51とフランジ部材52間、又は互いに上下に対向するフランジ部材52間、を接続する接続部材3が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネル内における覆工体等として用いられるセグメントに関し、特に主桁のウェブ部材とフランジ部材とを溶着させることにより構成するセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
地中トンネルを構築する方法として広く知られているシールド工法では、一般的に、構築される閉空間を保持する目的でセグメントが用いられている。このセグメントは、通常、トンネルの周方向及び軸方向に複数個連結され、地中に構築される閉空間を保持する覆工体であり、コンクリート製、鉄製又はこれらを組み合わせた合成構造型のものが知られている。また、鉄製セグメントには、鋼板を所定の寸法形状に切断した後、溶接等により組み立てられる鋼製セグメント、及び鋳型で成型する鋳鉄製セグメントがある。
【0003】
このようなセグメントの例としては、例えば特許文献1に示すように、雄側係合部材のトンネル軸方向の長さを変更することなく耐震性を付与できるセグメント構造が提案されている。この特許文献1の開示技術によれば、フランジ部材とウェブ部材とを互いに溶接により接合することにより主桁を構成している。
【0004】
しかしながら、実際にこのフランジ部材とウェブ部材とを溶接により接合した場合には、その溶接熱により図27(a)に示すように、フランジ部材72がウェブ部材71に対して面外に変形してしまう。このためフランジ部材72のウェブ部材71に対する面外変形を防止して、所定の寸法精度を確保するためには、多大な矯正工程が必要となり、セグメントの製造コストがいきおい増加してしまうという問題点があった。
【0005】
また、他のセグメントの例としては、例えば特許文献2に示すように、両サイドの主桁の断面が、開口部をセグメント内側に有するC型形状の部材とした合成セグメントが開示されている。このC型形状の部材は、図27(b)に示すように、ウェブ部材73の上下端にフランジ部材74を設けて構成されるものである。なお、特許文献2の開示技術では、C型形状の部材として溝形鋼を用いる場合を例にとり説明をしているが、このC型形状の部材を溶接による接合により構成する際には、図27(b)に示す形態で表すことができる。
【0006】
しかしながら、この当該特許文献2の開示技術では、あくまで中詰めコンクリート75を充填することを前提としているところ、特にフランジ部材74間の中詰めコンクリート75を介した図中矢印A方向の荷重伝達性が重要となる。特にセグメントの剛性、耐力の増加を目的にフランジ部材74の断面積を大きくした場合には、上下に向かい合うフランジ部材74間の荷重伝達部材としての中詰めコンクリート75の強度が不足してしまい、更には荷重伝達性能が低下してしまう。その結果、このような特許文献2の開示されている構成では、特にフランジ部材74の断面積を大きくした場合において、所要の構造性能を発揮することができなくなるという問題点があった。
【0007】
更に、このような中詰めコンクリート75の充填を前提としたセグメント構造においては、フランジ部材74と、中詰めコンクリート75とがトンネル周方向にずれてしまう場合もある。このようなずれが生じると、上述したフランジ部材74と中詰めコンクリート75との一体性が損なわれ、セグメントの剛性、耐力が大幅に低下してしまうため、これを抑制する必要があった。
【0008】
更に、トンネル周方向に円弧状に配置される内空側フランジ部材を備えたセグメントでは、内空側フランジ部材にトンネル周方向の引張軸応力が作用した場合に、見かけ上の腹圧力により内空側フランジ部材がトンネル内空側に面外変形する傾向があり、これによりセグメントの剛性、耐力が低下してしまう問題があった。特に、コンクリートが中詰めされている場合には、コンクリートのひび割れ、あるいはフランジ部材とコンクリートとの剥離が発生し、耐久性能が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−264661号公報
【特許文献2】特開2005−351035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、主桁のウェブ部材とフランジ部材とを溶着させることにより構成するセグメントにおいて、かかるフランジ部材とウェブ部材とを溶接により接合する際に発生する溶接熱に基づくフランジ部材の面外変形をより安価な構成で抑制するとともに、特に中詰めコンクリートを充填する際には、フランジ部材間の荷重伝達性能を向上させ、フランジ部材のトンネル法線方向への面外変形によるコンクリートのひび割れ、あるいはフランジ部材とコンクリートとの剥離を防止し、ひいては所要の構造性能および耐久性能を発揮させることが可能なセグメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するために、ウェブ部材とフランジ部材とを互いに溶接により固着した主桁におけるウェブ部材とフランジ部材間、又は互いに上下に対向するフランジ部材間を接続部材により接続したセグメントである。
【0012】
即ち、第1の発明に係るセグメントは、1枚のウェブ部材と少なくとも1枚のフランジ部材とを有する少なくとも一対の主桁と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレートとを備えるセグメントにおいて、上記ウェブ部材と上記フランジ部材とは、互いに溶接により固着され、上記ウェブ部材と上記フランジ部材間、又は互いに上下に対向する上記フランジ部材間、又は互いに上下に対向するフランジ部材とスキンプレート間、を接続する接続部材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明に係るセグメントは、第1の発明において、上記接続部材は、上記トンネル周方向へ間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明に係るセグメントは、第1の発明において、上記接続部材は、上記トンネル周方向へ連続して設けられ、少なくとも開口を有することを特徴とする。
【0015】
第4の発明に係るセグメントは、第1〜3のいずれか1の発明において、上記主桁と継手板とスキンプレートを備えた鋼殻の内側にコンクリートが充填・硬化されていることを特徴とする。
【0016】
第5の発明に係るセグメントは、第4の発明において、上記鋼殻の内側面にずれ止めが設けられていることを特徴とする。
【0017】
第6の発明に係るセグメントは、第5の発明において、上記ずれ止めは、互いにトンネル軸方向に対向する主桁間に取り付けられた棒状部材であることを特徴とする。
【0018】
第7の発明に係るセグメントは、第4〜6の発明において、上記中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋が埋め込み配置されていることを特徴とする。
【0019】
第8の発明に係るセグメントは、第1〜7の発明において、上記接続部材は、相対する主桁間で連結部材により連結されていることを特徴とする。
【0020】
第9の発明に係るセグメントは、第1〜7の発明において、相対する主桁は前記接続部材により連結されていることを特徴とする。
【0021】
第10の発明に係るセグメントは、第8の発明において、上記接続部材は、相対する主桁間で連結部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う上記連結部材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする。
【0022】
第11の発明に係るセグメントは、第9の発明において、相対する主桁は上記接続部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う接続部材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする。
【0023】
第12の発明に係るセグメントの製造方法は、第1〜11のいずれか1のセグメントを製造する方法において、上記ウェブ部材と上記フランジ部材とを互いに本溶接する前に、上記接続部材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るセグメントは、ウェブ部材とフランジ部材とを互いに溶接により固着した主桁におけるウェブ部材とフランジ部材間、又は互いに上下に対向するフランジ部材間を接続部材により接続したセグメントである。
【0025】
このため、本発明を適用したセグメントでは、上述した接続部材を取り付けることにより、地山側からの荷重によってフランジ部材に発生するせん断応力の伝達経路を増やすことが可能となり、主桁における応力伝達性能を向上させ、セグメントの部材性能の向上が期待できる。加えて、上述の接続部材を設けることで、フランジ部材のトンネル法線方向への面外変形が抑制され、特にトンネル周方向に円弧状に配置される内空側フランジ部材を備えたセグメントでは、腹圧力による内空側フランジ部材のトンネル内空側への面外変形が抑制され、セグメントの部材性能が格段に向上する。特に、コンクリートが中詰めされている場合には、上述の接続部材を設けることにより、フランジ部材のトンネル法線方向への面外変形が抑制されるので、コンクリートのひびわれ、あるいはフランジ部材とコンクリートとの剥離を防止することができ、耐久性能が格段に向上する。
【0026】
また、本発明によれば、離散的に配置した接続部材とすることで接続部材の取り付け容易性が向上する。
【0027】
また、本発明によれば、連続した接続部材とすることで上述の応力伝達経路がさらに向上する。
【0028】
さらに、本発明によれば、鋼殻の内側にコンクリートが充填・硬化されることでセグメント部材の耐力および剛性が向上する。また、本発明によれば、フランジ部材並びにウェブ部材により囲まれる主桁の内側において充填・硬化された中詰めコンクリートを外部から拘束し、中詰めコンクリートの強度を向上させることが可能となる。このため、フランジ部材間の中詰めコンクリートによる荷重伝達性能を向上させることが可能となる。また、本発明によれば、上述の接続部材がトンネル周方向に間隔をおいて複数設けられている、もしくは上述の接続部材がトンネル周方向に連続して設けられ、かつ開口を有することで、中詰めコンクリートの充填性が良好になり、セグメントの性能が向上する。また、本発明によれば、上述した接続部材を取り付けることにより、中詰めコンクリートと主桁の界面におけるトンネル周方向のずれの発生を防止し、主桁と中詰めコンクリートの一体性を高めることが可能となる。
【0029】
さらに、本発明によれば、鋼殻の内部にずれ止めを配置することで中詰めコンクリートと鋼殻との一体性が格段に向上し、セグメントの部材性能が一層、向上する。
【0030】
加えて、上述するずれ止めをトンネル軸方向に主桁間に取り付けることで、土水圧が作用した場合における中詰めコンクリートの抜け出し防止に効果を発揮する。
【0031】
また、本発明によれば、中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋を埋め込み配置することで、セグメントのトンネル周方向の部材性能の向上が図られる。
【0032】
また、本発明によれば、上述した接続部材が相対する主桁間で連結部材により連結されている、あるいは相対する主桁が上述した接続部材により連結されているので、トンネル周方向に円弧状に配置される内空側フランジ部材が腹圧力の作用により面外変形しようとしても、内空側フランジ部材がトンネル半径方向内側に変位する鉛直変位を抑制することができると共に、内空側フランジ部材の回転変位も抑制することができる等の効果が得られる。また、トンネル軸方向の圧縮力および引張力を伝達するという鋼製補強リブの機能を兼ねることができるので、鋼製補強リブを省略して部材数を低減することができる等の効果が得られる。
【0033】
また、本発明によれば、上述の接続部材が相対する主桁間で連結部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う上記連結部材に渡って補強鉄筋が挿通されている、あるいは相対する主桁が接続部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う上記接続部材に渡って補強鉄筋が挿通されているので、セグメントにおける内空側フランジ部材および内空側補強鉄筋に引張軸力が作用した場合の腹圧力による内空側フランジ部材及び周方向の補強鉄筋の変位(鉛直変位及び回転変位)を抑制できる等の効果が得られる。また、前記連結部材および前記接続部材は周方向補強鉄筋を有する合成構造部材のせん断補強鋼板の機能も発揮するので、周方向補強鉄筋を多量に配置することが可能となり、合成構造セグメントの耐力を更に一層高めることができる。
【0034】
さらに、本発明を適用したセグメントでは、フランジ部材とウェブ部材の本溶接に伴うフランジ部材の面外変形を防止することが可能となり、フランジ部材のウェブ部材に対する面外変形を防止する観点から従来行われていた多大な矯正工程が不要となり、製造労力の負担を軽減させることが可能となると共に、セグメントの製造コストを大きく低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用したセグメントの斜視図である。
【図2】本発明を適用したセグメントの断面図である。
【図3】(a)は、接続部材をトンネル周方向に対して略垂直方向に設けた図であり、(b)は、この接続部材を斜めに配設した図である。
【図4】接続部材をトンネル周方向へ連続して設けた状態を示す図である。
【図5】本発明を適用した鉄鋼製セグメントの製造方法について説明するための図である。
【図6】本発明を適用した鉄鋼製セグメントの効果について説明するための図である。
【図7】本発明を適用した鉄鋼製セグメントの効果について説明するための他の図である。
【図8】棒状の接続部材をフランジ部材間に設ける例を示す図である。
【図9】接続部材を棒状とする代わりに板状とした場合の例を示す図である。
【図10】板状の接続部材をフランジ部材とウェブ部材に接合した例を示す図である。
【図11】断面H形の主桁に対して接続部材を設ける例を示す図である。
【図12】断面L形の主桁に対して接続部材を設ける例を示す図である。
【図13】鋼板製の接続部材をウェブ部材と上下のフランジ部材に溶接により固定して構成した例を示す図である。
【図14】鋼殻の内側面にズレ止めを設けた例を示す図である。
【図15】鋼殻の内側面にズレ止めを設けた他の例を示す図である。
【図16】中詰めコンクリート内にトンネル周方向に補強鉄筋を埋め込み配置した例を示す図である。
【図17】幅狭の鋼製板からなる接続部材を主桁間に渡って配置して、ウェブ部材とトンネル内空側のフランジ部材に溶接により一体化した形態を示す図である。
【図18】接続部材を主桁間に渡って配置してフランジ部材とウェブ部材に溶接により固定した状態を示す図である。
【図19】接続部材を主桁間に渡って配置してフランジ部材に溶接により固定した状態を示す図である。
【図20】接続部材を主桁間に渡って配置してフランジ部材とウェブ部材とスキンプレートに溶接により固定した状態を示す図である。
【図21】接続部材の長手方向(主桁間方向)の両端側の幅寸法を、フランジ部材間の幅寸法と異ならせた形態を示す図である。
【図22】接続体により主桁相互を連結して構成した例を示す図である。
【図23】周方向補強鉄筋をトンネル周方向に向けて挿通する例について説明するための図である。
【図24】周方向補強鉄筋をトンネル周方向に向けて挿通する例について説明するための他の図である。
【図25】(a)は、ウェブと反対側のフランジ先端部がトンネル半径方向に変形している状態を示す概略側面図であり、(b)は腹圧力によりフランジ部材が変形している状態を示す縦断正面図である。
【図26】(a)は、フランジ部材の鉛直変位を抑制していることを示す図であり、(b)は、トンネル内空側のフランジ部材の鉛直変位及び回転変位を抑制していることを示す図である。
【図27】従来技術の問題点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態として、シールドトンネル内における覆工体等として用いられるセグメントについて詳細に説明する。
【0037】
本発明を適用したセグメント1は、例えば図1に示すように、コンクリートが中詰めされた鉄鋼製セグメント100であり、一対の主桁5が平行に配設され、左右の主桁5の両端部間が継手板6で連結されており、主桁5と継手板6で組まれた矩形のセグメント枠の外端面にスキンプレート7が溶接されて、さらに左右の主桁5の間には、トンネル周方向に所定の間隔をあけて複数の補強用縦リブ16が配設され、その両端が溶接で固定されて鋼殻が形成されている。また、左右の主桁5それぞれについて、後述する接続部材3が設けられている。そして、この鉄鋼製セグメント100の内部には中詰めコンクリート4が充填される。
【0038】
継手板6は、トンネル周方向に隣接する他のセグメント1の継手板6と互いに当接させるための板であり、ピース間継手61が設けられている。このピース間継手61は、一方が雄継手61aとされ、他方が雌継手61bとされ、それぞれ隣接する他のセグメント1における雌継手61b、雄継手61aと嵌合されることになる。なお、このピース間継手61の構成としてはいかなる周知の構成を用いてもよい。
【0039】
主桁5は、セグメントリングをトンネル軸方向に向けて接合するためのボルト孔59が開削されている。即ち、このボルト孔59には、トンネル軸方向に隣接する他のセグメントリングとの間で連結を行うための図示しないリング間継手が設けられる。また、この主桁5は、トンネル周方向に向けて円弧状に構成されている。図2は、セグメント1におけるトンネル周方向断面を示している。主桁5は、少なくともウェブ部材51とフランジ部材52とを有する。ちなみに、この図2の例では、ウェブ部材51の上端においてフランジ部材52aが、また下端においてフランジ部材52bが取り付けられて断面コ字状に構成した例を示している。このウェブ部材51とフランジ部材52とは、互いに溶接により固着されている。より詳細には、このウェブ部材51の内面51aにおいてフランジ部材52の端部が当接された上で、当該内面51aとフランジ部材52の端部とが溶接55により固着されることになる。
【0040】
また、この主桁5における上下に対向するフランジ部材52a、フランジ部材52b間には、接続部材3が設けられている。接続部材3は、鉄鋼製であり、その形状は、棒状で構成されていてもよいし、板状で構成されていてもよい。また、この接続部材3は、フランジ部材52a、フランジ部材52bに対して溶接により固着されている。ちなみに、この図1、2の例においては、この接続部材3を棒状に構成した場合を示している。接続部材3を棒状に構成することにより、鋼材の使用量を低減させることができるとともに、接続部材3の取り付け労力をより軽減させることが可能となる。
【0041】
また、この接続部材3は、例えば図3に示すように、トンネル周方向へ間隔をおいて複数設けられていてもよい。ちなみに、図3(a)は、接続部材3をトンネル周方向に対して略垂直方向に設けた例である。これに対して、図3(b)は、この接続部材3を斜めに配設した例である。この接続部材3を斜めに配設する例では、これをトンネル周方向に対して略垂直方向に設ける場合と比較して、接続部材の取付け角度を調整することが可能となり、接続部材の長さ精度管理がより容易となる。また、この接続部材3は、図4に示すようにトンネル周方向へ連続して設けられた板状として構成されていてもよい。かかる場合には、この接続部材3について、中詰めコンクリート4を充填させるための開口13が少なくとも形成されていることが必要になる。
【0042】
スキンプレート7は、トンネル地山側に設けられ、主として中詰めコンクリート4の外部への流出を防止するとともに、地中の水分が鋼殻内部に浸入するのを防止する役割を担う鉄製の薄板で構成されている。このスキンプレート7は、フランジ部材52aの上面において溶接により固着されてなる。
【0043】
次に、本発明を適用したセグメント1の製造方法について説明をする。
【0044】
先ず、主桁5を製造する。この主桁5の製造においては、図5(a)に示すように最初にウェブ部材51の上下においてフランジ部材52a、フランジ部材52bを溶接56により仮固定する。ちなみに、この仮固定の溶接は、設計上要求される強度に満たない程度の溶接を意味する。なお、この仮固定による溶接は、設計上の要求性能以下のものであれば複数回行うようにしてもよい。即ち、次工程においてウェブ部材51に対してフランジ部材52が動かない程度に仮固定するための溶接を意味するものである。
【0045】
次に図5(b)に示すように、仮固定したフランジ部材52に対して、接続部材3を溶接により固着させる。この図5(b)では、フランジ部材52の端面に対して接続部材3を溶接により取り付けた例を示している。その結果、この互いに上下に対向するフランジ部材52a、フランジ部材52bの先端は、この接続部材3を介して接続されることになる。
【0046】
次に図5(c)に示すように、ウェブ部材51に対してフランジ部材52a、フランジ部材52bを本溶接55により強固に固定する。ここでいう本溶接とは、設計上要求される強度を満たす程度までの溶接を意味する。
【0047】
この本溶接によるウェブ部材51とフランジ部材52との固着を終了させることにより、主桁5が完成することになる。次に、この完成させた主桁5をそのコ字状の内側を対向させた上で継手板6を溶接により固定する。そして、主桁5と継手板6で組まれた矩形のセグメント枠の外端面にスキンプレート7を溶着させ、セグメント枠内には、中詰めコンクリート4を充填する。
【0048】
これにより、本発明を適用したセグメント1の製造が終了することになる。
【0049】
上述したセグメント1の製造方法では、フランジ部材52とウェブ部材51とを溶接により接合する工程が入る。しかしながら、本発明では、最初に溶接56において仮固定を行った後、フランジ部材52間において接続部材3を取り付け、その後に本溶接55を行う。実際に本溶接を行う場合には、仮溶接の場合と比較して溶接量が非常に大きくなり、これに伴ってフランジ部材52がウェブ部材51に対して面外変形しようとするが、本発明では、そのフランジ部材52が接続部材3により拘束されていることから、かかる本溶接55に伴うフランジ部材52の面外変形を防止することが可能となる。
【0050】
このため、本発明を適用したセグメント1では、ウェブ部材51に対してフランジ部材52を略垂直方向に精度よく取り付けることが可能となり、所定の寸法精度を確保することが容易となる。また、本発明を適用したセグメント1では、かかるフランジ部材52のウェブ部材51に対する面外変形を防止する観点から、従来行われていた多大な矯正工程が不要となり、製造労力の負担を軽減させることが可能となると共に、セグメントの製造コストを大きく低減させることも可能となる。
【0051】
なお、上述したセグメント1の鋼殻の製造において、先ず、鋼殻を構成するウェブ部材51、フランジ部材52、接続部材3、継手板6、補強リブ31、およびスキンプレート7の各部材間において仮固定の溶接を行って鋼殻全体を仮組みし、その後に、フランジ部材52と接続部材3の本溶接をウェブ部材51とフランジ部材52との本溶接55に先行させて行っても良く、上述した本溶接55に伴うフランジ部材52の面外変形を防止することが可能となる。この際、ウェブ部材51とフランジ部材52との本溶接55に先立って、主桁5と継手板6との接合部、および主桁5と鋼製補強リブ31との接合部を本溶接することにより、上述した本溶接55に伴うフランジ部材52の面外変形をより一層抑制することが可能となる。
【0052】
また本発明では、鋼殻内において中詰めコンクリート4を充填するが、上述した接続部材3を取り付けることにより、図6に示すようにフランジ部材52並びにウェブ部材51により囲まれる主桁5の内側58において充填された中詰めコンクリート4を、さらに接続部材3により外部から強固に拘束することが可能となる。一般にセグメントは地山側からの外力が負荷された場合において、特にフランジ部材52間の中詰めコンクリート75を介した図中矢印A方向の荷重伝達性が重要となるが、本発明を適用したセグメント1では、特にフランジ部材52について大断面フランジを採用した場合においても、内側58に充填された中詰めコンクリート4の拘束力を強化することにより、中詰めコンクリート4の強度を強化することができるので、中詰めコンクリート4の矢印A方向の荷重伝達性能を向上させることが可能となる。
【0053】
また、本発明によれば、接続部材3によりフランジ部材52a、52bのトンネル法線方向への面外変形が抑制され、セグメント1の部材性能を格段に向上させることが可能となる。
【0054】
更に、本発明によれば、フランジ52a、52b間の荷重伝達性能をより向上させることが可能となる。例えば、図7に示すように、地山側からの荷重は、フランジ部材52a、ウェブ部材51、フランジ部材52bの経路を経て伝達されていくとともに、フランジ部材52a、接続部材3、フランジ部材52bの経路を経て伝達されていくことになる。即ち、せん断応力の伝達経路を増やすことが可能となり、セグメント1における荷重伝達性能を向上させることが可能となる。
【0055】
また、本発明によれば、上述した接続部材3を取り付けることにより、中詰めコンクリート4と主桁5の界面におけるトンネル周方向のずれ発生を防止する機能を発揮させることが可能となる。その結果、中詰めコンクリート4と主桁5との一体性が強化され、セグメントの剛性、耐力を大幅に向上させることが可能となる。
【0056】
また、セグメント1における内空側フランジ部材52bは、トンネル周方向で円弧状とされているため、接続部材3が設けられていない状態で内空側フランジ部材52bに図25(a)に矢印で示す引張軸力Tが作用した場合、同図に点線で示すように内空側へ面外変形しようとするが、この挙動は図25(b)に矢印で示す見かけ上の腹圧力Cが作用した時の内空側フランジ部材52bの面外変形挙動と同じになる。そして、ウェブ部材5がこの腹圧力Cに抵抗するが、トンネル内空側のフランジ部材52bのウェブ部材5から離れた部分は比較的拘束力のない曲面板で腹圧力Cに抵抗することになり、同図に点線で示すように、トンネル内空側に面外変形を生じ、セグメントの構造性能が低下する恐れがある。
【0057】
このようなトンネル内空側のセグメント部材の面外変形が生じると、内空側フランジ部材52bとその変形に追従できない中詰めコンクリート5との間に隙間Gが発生する、あるいはコンクリートにひびわれ等の破損を生ずることになるから、土圧や地下水圧等の外荷重を、地山側のスキンプレート7及び中詰めコンクリート4を介して、内空側フランジ部材52b或いはウェブ部材51等の主桁5等へ荷重伝達する性能が低下する。また、前記隙間Gの部分への水の浸入等により、内空側フランジ部材52bを含むセグメントを構成する鋼材の腐食を生じるようになり、セグメントを構成する鋼材の防食性能の低下を引き起こし、セグメントの耐久性能が低下することになる。
【0058】
これに対して、トンネル内空側のフランジ部材52bが、セグメント1における上下に相対する他の部分に一体に連結するように前記接続部材3により連結されていることにより補剛されている形態では、内空側フランジ部材52bにトンネル周方向の引張軸力Tによる腹圧力Cが作用しても、図26(a)の接続部材3に発生する矢印で示す吊上げ力Dにより抵抗し、点線で示すように内空側フランジ52bがトンネル半径方向内空側に面外変形するのを防止あるいは少なくとも抑制することができる。このため、前記のような荷重伝達性能の低下を防止又は抑制することができ、更にセグメントを構成する鋼材の腐食を防止又は抑制することができ、セグメントの構造性能及び耐久性能が向上する。
【0059】
本実施形態では、上下のフランジ部材52a、52bが接続部材3により連結されていることにより、内空側フランジ部材52bに腹圧力Cが作用しても、接続部材3に発生する吊上げ力により抵抗し、内空側フランジ52bが内空側に面外変形するのを抑制することができる。
【0060】
次に、本発明を適用したセグメント1の他の実施形態について説明をする。
【0061】
図8(a)は、棒状の接続部材3をフランジ部材52aの底面並びにフランジ部材52bの上面において上下に架設する構成を示している。このとき、棒状の接続部材3の上下端をフランジ部材52により溶接により固定することになる。その結果、フランジ部材52の溶接による面外変形を防止することが可能となり、中詰めコンクリート4の拘束力の強化、フランジ部材52間のせん断応力の伝達性能の向上、主桁5と中詰めコンクリート4間のずれ発生防止性能の向上、腹圧力を受ける際の内空側フランジ52bの面外変形の抑制を実現することが可能となる。
【0062】
図8(b)は、棒状の接続部材3をフランジ部材52とウェブ部材51間に設ける例を示している。この場合、接続部材3は、両端がフランジ部材52aの底面とウェブ部材51に対して、又はフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して、溶接により取り付けられることになる。
【0063】
特に、この図8(b)の構成では、溶接55が施された箇所の近傍において接続部材3を設けている。本溶接によるフランジ部材52の面外変形は、かかる溶接55の箇所において局所的に生じるものである。このため、かかる溶接55の近傍において接続部材3を設けることにより、溶接変形の抑制をより強固に実現することが可能となる。また、本発明では、接続部材3をフランジ部材52間において設ける場合のみならず、ウェブ部材51とフランジ部材52間において設ける場合であっても、上述と同様の効果を奏することになる。また、内空側フランジ部材52bが腹圧力を受ける場合も、接続部材3に発生する斜め上方への吊上げ力により抵抗し、内空側フランジ52bが内空側に面外変形するのをある程度抑制することができる。
【0064】
図9は、接続部材3を棒状とする代わりに板状とした場合の例を示している。図9(a)
は、かかる板状の接続部材3を溶接55の近傍に設けた例であり、図9(b)は、板状の接続部材3をフランジ部材52の先端近傍に配設した例を示している。これらの接続部材3は、何れもフランジ部材52に対して溶接により取り付けられた例を示している。これらの例では、接続部材が棒状部材である場合と比較して、中詰めコンクリート4をトンネル周方向からも拘束することができ、またフランジ部材52間におけるせん断応力の伝達性能をさらに向上させることが可能となる。また、図9(a)に示すように、板状の接続部材3を溶接55の近傍に設けることにより、フランジ部材52の溶接による面外変形をより強固に抑制することが可能となる。また、図9(b)に示すように、フランジ部材52の先端近傍において接続部材3を設けた場合には、中詰めコンクリート4を外側からも拘束させることが可能となる。なお、この図9(b)において、接続部材3は、フランジ部材52aの底面、並びにフランジ部材52bの上面において溶接により固着されている場合に限定される場合に加えて、フランジ部材52の端面において溶接により固着されていてもよい。フランジ部材52の先端近傍において接続部材3を設けることにより、内空側フランジ部材52bが腹圧力を受ける場合も、接続部材3に発生する吊上げ力により抵抗し、内空側フランジ52bが内空側に面外変形するのをより強固に抑制することができる。
【0065】
図10(a)は、板状に構成した接続部材3a、3bを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51、並びにフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させた例を示している。この例では、接続部材3a、3bを上下に分離して設けることから、せん断応力の伝達性能の向上の効果が薄くなるものの、また、腹圧力を受ける際の内空側フランジ52bの面外変形抑制効果が薄くなるものの、溶接55の近傍に接続部材3a、3bを設けることができるため、フランジ部材52の溶接による面外変形をより効果的に抑制することが可能となる。特にこの接続部材3a、3bを板状に構成することにより、トンネル周方向から中詰めコンクリート4を拘束することが可能となり、フランジ部材52間の応力伝達性能をより向上させることが可能となる。
【0066】
図10(b)は、この板状に構成した接続部材3a、3bが配設された主桁5の斜視図を示している。接続部材3aは、トンネル軸方向に向けて間隔をおいて複数に亘り配設されている。このような板状の接続部材3a、3bを取り付ける場合には、取り付け容易性をより向上させることが可能となる。
【0067】
図10(c)は、この接続部材3a、3bに加えて、更に棒状の接続部材3cを、フランジ部材52の先端において上下に架設させた例を示している。この接続部材3cは、棒状で構成されていてもよいし、板状に構成されていてもよい。この接続部材3cを別途設けることにより、上述したフランジ部材52の溶接による面外変形の防止に加え、腹圧力を受ける際の内空側フランジ52bの面外変形を効果的に抑制することができ、更にはフランジ部材52並びにウェブ部材51により囲まれる主桁5の内側において充填された中詰めコンクリート4を外部から拘束することができ、当該中詰めコンクリート4の強度を向上し、中詰めコンクリート4の矢印A方向の荷重伝達性能を向上させることが可能となる。ちなみに、この接続部材3cは、フランジ部材52の上下面において架設させるようにして設けられていてもよい。
【0068】
図11(a)は、主桁5について、断面H形となるようにフランジ部材52a、52b並びにウェブ部材51を溶接により接合した例を示している。このような主桁5の断面形状においても同様に、上述した接続部材3a、3bを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51、並びにフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させる。特に、この接続部材3a、3bは、溶接55の箇所の近傍において配設されているため、フランジ部材52の溶接による面外変形をより効果的に抑制することが可能となる。
【0069】
図11(b)は、上述した断面H形状の主桁5において、接続部材3a、3bに加え、更に接続部材3cをフランジ部材52a、52b間において配設した例を示している。この接続部材3cは、図11(b)に示すようにフランジ部材52のトンネル軸方向のセグメント外側において架設されるものであってもよいし、トンネル軸方向のセグメント内側において架設されるものであってもよい。この接続部材3cをフランジ部材52の外側に配置した場合には、せん断応力の伝達経路を増やすことができる。また、この接続部材3cをフランジ部材52の内側に配置した場合には、せん断応力の伝達経路の増大に加えて、中詰めコンクリート4を外部から拘束することが可能となる。
【0070】
図12(a)は、主桁5について、断面L形となるようにフランジ部材52b並びにウェブ部材51を溶接により接合した例を示している。このような主桁5の断面形状においても同様に、上述した接続部材3bを、フランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させる。特に、この接続部材3bは、溶接55の箇所の近傍において配設されているため、フランジ部材52の面外変形をより効果的に抑制することが可能となる。
【0071】
図12(b)は、主桁5について、断面逆L形となるようにフランジ部材52a並びにウェブ部材51を溶接により接合した例を示している。このような主桁5の断面形状においても同様に、上述した接続部材3aを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51に対して溶接により固着させる。特に、この接続部材3aは、溶接55の箇所の近傍において配設されているため、フランジ部材52の溶接による面外変形をより効果的に抑制することが可能となる。
【0072】
図12(c)は、図12(a)の断面L形の主桁5において、接続部材3bに加え、更に接続部材3cをフランジ部材52bとスキンプレート7との間において配設した例を示している。フランジ部材52bの溶接による面外変形がより一層抑制されることに加え、中詰めコンクリート4の拘束力の強化、フランジ部材52間のせん断応力の伝達性能の向上、主桁5と中詰めコンクリート4間のずれ発生防止性能の向上、腹圧力を受ける際の内空側フランジ52bの面外変形の抑制を実現することが可能となる。
【0073】
図13は、ウェブ部材51と上下のフランジ部材52a、52bにわたる鋼板製の接続部材3をウェブ部材51と上下のフランジ部材52a、52bに溶接により固定して構成される例を示している。主桁5のセグメント内側の3辺が接続部材3により強固に連結されるので、フランジ部材52a、52bの溶接による面外変形が格段に抑制されることに加え、フランジ部材52間のせん断応力の伝達性能の向上、主桁5と中詰めコンクリート4間のずれ発生防止性能の向上、腹圧力を受ける際の内空側フランジ52bの面外変形の抑制をきわめて高いレベルで実現することが可能となる。なお、接続部材3のコーナー部には、適宜、隅部にスカラップ(切り欠き)を設けて、内隅部の溶接が連続するようにしてもよい。
【0074】
なお、上述した図1〜13に示す形態は、何れの構成を自由に組み合わせて実現するようにしてもよい。また、上述した例では、あくまで中詰めコンクリート4が充填された形態を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなく、中詰めコンクリート4が充填されていない、鋼殻のみのセグメントとして構成されていてもよいことは勿論である。
【0075】
図14(a)は、鋼殻の内側面にずれ止め36を設けた例を示している。ずれ止め51は、ジベルで構成されており、それぞれスキンプレート7や主桁5に溶着されている。このずれ止め36を設けることにより、鋼殻内に充填した中詰めコンクリート4がスキンプレート7や主桁5に対してずれてしまうのを防止することが可能となる。
【0076】
図14(b)は、ずれ止め36に加えて、更に上述した接続部材3aを、フランジ部材52aの底面とウェブ部材51に対して、また接続部材3bをフランジ部材52bの上面とウェブ部材51に対して溶接により固着させた例を示している。この形態では、ウェブ部材51とフランジ部材52とを、溶接により仮止めた段階で、ウェブ部材51とフランジ部材52とを接続部材3で固定し、ウェブ部材51とフランジ部材52の本溶接時における変形を防止した主桁5を有するセグメントを前提としている。そして、この形態では、ウェブ部材51又はフランジ部材52或いはスキンプレート7のセグメント内側面に、トンネル軸方向及び/又はトンネル半径方向に間隔をおいて複数または多数のずれ止め36を設けてもよいことを示している。また、この形態では、ずれ止め36として、頭付きスタッドの基端部が溶接により固定された場合を示している。接続部材3は、板状で構成されており、主桁5と中詰めコンクリート4とのずれ止めとしての機能も有する。
【0077】
このように接続部材3及びずれ止め36を設けることにより、中詰めコンクリート4のトンネル周方向あるいはトンネル半径方向のずれ止めを図り、主桁5或いは鋼殻若しくはセグメント1と中詰めコンクリート4との付着一体化をより一層高めた合成構造とすることが可能となる。
【0078】
図15は、鋼殻の内側にずれ止め37を設けた例を示している。このずれ止め37は、互いにトンネル軸方向に対向する主桁5間に取り付けられた棒状部材である。このずれ止め37を設けることにより、鋼殻内に充填した中詰めコンクリート4が内空側フランジ52bに対してずれてしまうのを防止できるようになることに加えて、土水圧が作用した場合における中詰めコンクリートのトンネル内空側への抜け出しを効果的に防止することが可能となる。ちなみに、これらずれ止め36、37は、上述した構成の何れに対しても適用することが可能である。
【0079】
図16は、中詰めコンクリート4内においてトンネル周方向に延長する周方向補強鉄筋87を埋設して補強した例を示している。このような周方向補強鉄筋87を設けることにより、合成セグメントの剛性、耐力をさらに強化することが可能となる。
【0080】
図17〜図22は、間隔をおいて対向するように隣り合う各主桁5相互を、曲げ剛性の高い鋼板等よりなるトンネル周方向に間隔をおいて配置された接続部材3又は接続体3bにより連結一体化してもよいことを示した実施形態を示したものである。これら実施形態においては、主桁5において、ウェブ部材51とフランジ部材52a又はフランジ部材52b間、もしくは互いに上下に対向するフランジ部材52間、もしくは互いに上下に対向するフランジ部材7とスキンプレート間を、接続部材3で連結させた上で、各主桁5間で相対する接続部材3を同一の接続部材3あるいは接続体3bで連結させている。これらの実施形態のように、主桁5相互が一体成形された1枚ものの接続部材3又は複数の鋼材の組み立て体からなる接続体3bにより連結一体化されていることで、接続体3bと主桁からなる全体構造の曲げ剛性を高めることができ、前記の腹圧力による内空側のフランジ部材52bの変形抑制効果を向上させることができる。
【0081】
図26(a)に示すように、内空側フランジ部材52bと地山側フランジ部材52a(又は地山側スキンプレート7あるいはウェブ部材51等)を接続部材3で連結一体化した場合には、点線で示す、トンネル内空側のフランジ部材52bの鉛直変位に対して矢印で示す吊上げ力Dにより抵抗可能になるが、さらに主桁5相互を曲げ剛性の高い接続部材3あるいは接続体3bにより連結すると、図26(b)に矢印で示す抵抗曲げモーメントEによって、トンネル内空側のフランジ部材52bを含む主桁5のトンネル内空側への回転変位に対して、抵抗可能な構造になるので望ましい。
【0082】
また、本実施形態は、基本的に接続部材3が主桁5を構成する部材間を連結しているので、主桁5の溶接による変形を抑制することができ、コンクリートが中詰めされている場合には鋼殻とコンクリートとの一体化が図られて合成構造としての構造性能を発揮でき、接続体3bによりトンネル軸方向圧縮力および引張力の伝達性能が向上する。
以下、図17〜図22に示す形態を簡単に説明する。
【0083】
図17に示す形態では、内空側のフランジ部材52bに寄せて、幅狭の鋼製板からなる接続部材3を、ウェブ部材51とトンネル内空側のフランジ部材52bに渡って配置して、溶接により、主桁5相互を連結一体化した形態である。なお、接続部材3は、中詰めコンクリート4を設けてこれに埋め込み配置する形態では、防食性能としての所要のコンクリート被りを確保できない場合は接続部材3の防錆を図るようにする。接続部材3としては鋼板等の鋼製部材を用いると安価な部材を用いて補剛することができる。接続部材3と補強用縦リブ16とは、トンネル周方向に位置をずらして設けるようにした形態である。なお、中詰めコンクリート5を設ける形態では、補強用縦リブ16の代わりに接続部材3を用いて、全て接続部材3により主桁2相互を連結一体化しても良い。
【0084】
図18に示す実施形態では、トンネル内空側のフランジ部材52bと地山側のフランジ部材52a間の幅寸法の鋼板製の接続部材3を、主桁5間に渡って配置して、トンネル内空側のフランジ部材52bと地山側のフランジ部材52aとウェブ部材51に溶接により固定して、主桁5相互を接続部材3により連結一体化した形態である。この形態では、接続部材3の剛性が前記形態より格段に大きくなるから、フランジ部材52a、52b等の面外変形および回転変形を格段に防止することができる。本形態では、接続部材3が前記形態の補強用縦リブ16の機能を兼ねるので、補強用縦リブ16は全て接続部材3に置き換えることが可能である。
【0085】
図19に示す実施形態では、トンネル内空側のフランジ部材52bと地山側のフランジ部材52a間の幅寸法の鋼板製の接続部材3で、ウェブ部材51間より長さ寸法の短い接続部材3を、主桁5間に渡って配置して、トンネル内空側のフランジ部材52bと地山側のフランジ部材52aに溶接により固定して、主桁5相互を接続部材3により連結一体化した形態である。この形態では、接続部材3を短くより安価にすると共に内隅部の溶接を容易にし、中詰めコンクリート4が接続部材3の長手方向の両端部における主桁5内においてトンネル周方向に接続一体化できるようにし、コンクリート充填作業性を向上させることが可能である。
【0086】
図20に示す実施形態では、接続部材3のトンネル軸方向(主桁間方向)の両端側の幅寸法が、トンネル内空側のフランジ部材52bと地山側のフランジ部材52a間の幅寸法である。またその中間部がスキンプレート7に溶接可能な広幅とされた鋼板製の接続部材3を、主桁5間に渡って配置して、トンネル内空側のフランジ部材52bと地山側のフランジ部材52aとウェブ部材51及びスキンプレート7に隅肉溶接により固定して、主桁5相互を接続部材3により連結一体化した形態である。図18および図19に示す実施形態に比べ、接続部材3の剛性が更に大きくなるから、フランジ部材52等の面外変形および回転変形を一層防止することができる。また、接続部材3は、スキンプレートの面外変形を抑えるとともに、スキンプレートとコンクリートとの間のずれ止めとなるので、スキンプレートと中詰めコンクリートとの一体性が向上し、合成構造セグメントの剛性および耐力を一層高めることができる。また、接続部材3とスキンプレートが連結されているので、地山からの荷重を主桁に伝達する性能が向上する。
【0087】
図21に示す実施形態では、接続部材3のトンネル軸方向(主桁間方向)の両端側の幅寸法が、トンネル内空側のフランジ部材52bと地山側のフランジ部材52a間の幅寸法より狭く、かつ対向する主桁5におけるウェブ部材51間の幅寸法より長さを短くフランジ部材間より幅を狭くした形態で、中間部がスキンプレート7に溶接可能な広幅とされた鋼板製の接続部材3を、主桁5間に渡って配置している。そして、トンネル内空側のフランジ部材52bとスキンプレート7とに溶接により固定して、主桁5相互を接続部材3により連結一体化した形態である。この形態では、腹圧力による内空側フランジ部材8の面外変形および回転変形を抑制するとともに、スキンプレートと中詰めコンクリートとの一体性が向上し、合成構造セグメントとしての剛性および耐力を高めることができる。また、主桁2内へのコンクリート充填が容易になる。また、接続部材3とスキンプレートが連結されているので、地山からの荷重を主桁に伝達する性能が向上する。
【0088】
図22に示す実施形態では、各主桁5におけるトンネル内空側のフランジ部材52bを補剛する接続部材3相互に渡って、鋼板等よりなる連結部材3aを配置して、溶接(又はボルト・ナット)等により固定することにより、接続部材3相互を連結一体化した接続体3bとすることで、主桁5相互を連結してもよいことを示す代表形態である。前記の接続部材3と前記の連結部材3aの固定形態として、図示のように溶接により一体化するほうが、工場では製作が容易であるが、溶接以外にも、図示を省略するが、ボルト・ナットによる場合には、適宜接続部材3及び連結部材3aにそれぞれボルト挿通孔を設けて、これらにボルト軸部を挿通し、ボルトにナットをねじ込んで、接続部材3と連結部材3aを固定し、主桁5相互を連結一体化する。
【0089】
なお、各トンネル内空側のフランジ部材52bを補剛する形態は、前記実施形態(例えば、図8(a)、図9、図13に示す形態)の接続部材3相互を、前記の連結部材3aにより連結する形態でもよい。
【0090】
図23、24に示す実施形態では、セグメント1内に、トンネル周方向に延長するように、周方向補強鉄筋17を中詰めコンクリート4に埋め込み配置する。この場合には、腹圧力による変形は、内空側のフランジ部材52bの変形のみならず、前記の内空側の周方向補強鉄筋17も同様に変形するため、前記のような内空側周方向補強鉄筋17の変形を防止するために、主桁5間を連結する接続部材3(又は接続部材3相互を連結する連結部材3a)に、トンネル周方向の中心軸線を有する挿通孔を、トンネル軸方向及び又トンネル半径方向に間隔をおいて設けて、各接続部材3に渡って周方向補強鉄筋17を挿通配置することで、腹圧力によるトンネル内空側のフランジ部材52bの変形を防止又は抑制すると共に、内空側周方向補強鉄筋17のトンネル内周側への変形を、接続部材3を利用して、防止又は抑制することができる。また、接続部材3は周方向補強鉄筋を有する合成構造体のせん断補強鋼板の機能および配力筋の機能を有するので、腹圧力による変形防止効果と相まって、周方向補強鉄筋を多量に配置することが可能となり、合成構造セグメントの耐力を格段に増加させることができる。
なお、前記の周方向補強鉄筋17を、接続部材3に挿通すると共に、接続部材3に溶接等により固定するようにしてもよい。
【0091】
なお、前記のように主桁5間を連結する接続部材3は、補強用縦リブ16の機能と同様にトンネル軸方向のジャッキ推力による圧縮力および地震時等に作用するトンネル軸方向引張力も伝達可能な部材となっている。
【0092】
以上、図17〜図24に示した実施形態において、各主桁2相互をトンネル周方向に間隔をおいて連結一体化するように配置された接続部材3あるいは接続体3bは、(1)主桁5の溶接変形抑制機能、(2)腹圧力によるトンネル内空側フランジ部材52bの変形抑制機能、(3)コンクリートが中詰めされている場合の鋼殻とコンクリートとの一体化機能に加えて、(4)補強用縦リブ16の有するトンネル軸方向圧縮力および引張力の伝達機能等を有している。したがって、全ての補強用縦リブ16を前記接続部材3あるいは接続体3bに置き換え、更に、前記(1)(2)(3)の性能を十分に発揮するように、前記接続部材3あるいは接続体3bを追加しても良い。ただし、前記接続部材3あるいは接続体3bは材料使用量も多く、製造コストも高いので、前記(4)の機能が不要な接続部材3あるいは接続体3bは、図1〜図13に示す接続部材3のいずれかの形態を選択して置き換え、適材適所に併用することにより必要な性能を低い製造コストで実現することが好ましい。 また、上述した図17〜22の形態、図23〜24の形態において具体化される技術的思想は、図1〜16の実施形態において適宜用いられるようにしてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
1 セグメント
3 接続部材
3a 連結部材
3b 接続体
4 中詰めコンクリート
5 主桁
6 継手板
7 スキンプレート
16 補強用縦リブ
17 周方向補強鉄筋
36、37 ズレ止め
51 ウェブ部材
52 フランジ部材
59 ボルト孔
61 ピース間継手
100 セグメント






【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のウェブ部材と少なくとも1枚のフランジ部材とを有する少なくとも一対の主桁と、地山側または内空側のいずれか一方あるいは両方にスキンプレートとを備えるセグメントにおいて、
上記ウェブ部材と上記フランジ部材とは、互いに溶接により固着され、
上記ウェブ部材と上記フランジ部材間、又は互いに上下に対向する上記フランジ部材間、又は互いに上下に対向するフランジ部材とスキンプレート間、を接続する接続部材が設けられていること
を特徴とするセグメント。
【請求項2】
上記接続部材は、上記トンネル周方向へ間隔をおいて複数設けられていること
を特徴とする請求項1記載のセグメント。
【請求項3】
上記接続部材は、上記トンネル周方向へ連続して設けられ、少なくとも開口を有すること
を特徴とする請求項1記載のセグメント。
【請求項4】
上記主桁と継手板とスキンプレートを備えた鋼殻の内側にコンクリートが充填・硬化されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項5】
上記鋼殻の内側面にずれ止めが設けられていること
を特徴とする請求項4記載のセグメント。
【請求項6】
上記ずれ止めは、互いにトンネル軸方向に対向する主桁間に取り付けられた棒状部材であること
を特徴とする請求項5記載のセグメント。
【請求項7】
上記中詰めコンクリート内にトンネル周方向に向けて補強鉄筋が埋設されていること
を特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項8】
上記接続部材は、相対する主桁間で連結部材により連結されていること
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項9】
相対する主桁は上記接続部材により連結されていること
を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセグメント。
【請求項10】
上記接続部材は、相対する主桁間で連結部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う上記連結部材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする請求項8記載のセグメント。
【請求項11】
相対する主桁は上記接続部材により連結され、トンネル周方向に向けて間隔をおいて隣り合う接続部材に渡って周方向補強鉄筋が挿通されていることを特徴とする請求項9記載のセグメント。
【請求項12】
請求項1〜11のうち何れか1項記載のセグメントを製造する方法において、
上記ウェブ部材と上記フランジ部材とを互いに本溶接する前に、上記接続部材を設けること
を特徴とするセグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−47267(P2011−47267A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172693(P2010−172693)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】