説明

セグメント式表示器

【課題】極めて簡単な構造であり、小型化に適し、表示をいたづらによって変更される恐れが少なくなり、セグメントが脱落して紛失する恐れもないセグメント式表示器を提供する。
【解決手段】複数のセグメント30を組み合わせて表示するセグメント式表示器において、各セグメント30をその対称軸線32回りに回動可能に保持すると共にその表面が各セグメント30の表裏のいずれかと同色である基板24と、この基板24をその裏面を密着させてセグメント30の回動を規制しかつ着脱可能に保持する保持ケース10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のセグメントによって数字などを表示するセグメント式の表示器に関し、特に表示する数字などを簡単に変更できるようにした表示器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
7セグメントによって数字を表示するセグメント式表示器が広く知られている。この種の表示器は、数字や記号などの表示対象を複数の部分(セグメント)に分割し、この分割した部分(以下セグメントという。)を選択的に目視可能状態にすることによって特定の数字などを表現するものである。例えば商品の陳列棚に取り付けて価格などを表示する棚札に、液晶表示板などを用いた電子式の表示器が提案されている。しかしこのような電子式のものは、液晶表示板を制御するためのコンピュータなどの電気装置が必要であり、全体のシステムが複雑で操作に習熟するのが面倒であり、高価でもある。このため小規模な店舗では導入が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−54831
【特許文献2】特開昭59−100489
【特許文献3】実開昭59−22491
【0004】
特許文献1には、セグメントの長さ方向の中央部で反転自在(回動自在)とし、各セグメントの一端部に磁石を有する吸着固定部を設けてセグメントが反転時に表裏いずれの状態でも基板に吸着して反転状態に保持するものが開示されている。
特許文献2には、セグメントを反転可能に保持し、このセグメントをその回転中心軸上に固定した永久磁石を電磁石の極性を変化させることによって反転させて数字の表示を行う磁気反転式の表示装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、セグメントと、このセグメントを貼着する基板のうち一方を着磁体で形成し他方を磁性板によって形成して着脱自在としたものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のものは各セグメントに磁石を用いるものであるから、各セグメントが大きくなり、またセグメントが反転(回動)するための空間を後方に設けておく必要があるから、ガソリンスタンドの価格表示板などの大型の表示板には適するとしても、マーケットなどの小売店で商品価格を表示するには大きすぎる。また簡単に表示を変更できるのでいたずらにより表示が変更される恐れが有る。
【0007】
特許文献2のものはセグメントの背面に電磁石を配置しておく必要があるため、構造が複雑であり、表示装置が厚くなり、大型になる。特許文献3のものはセグメント自身を着磁体あるいは磁性板により形成するから、セグメントが剥がれやすく、剥がれ落ちるとこれを紛失しやすいという問題がある。
【0008】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、極めて簡単な構造であり、小型化に適し、表示をいたずらによって変更される恐れが少なくなり、セグメントが脱落して紛失する恐れもないセグメント式表示器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によればこの目的は、複数のセグメントを組み合わせて表示するセグメント式表示器において、各セグメントをその対称軸線回りに回動可能に保持すると共にその表面が各セグメントの表裏のいずれかと同色である基板と、この基板をその裏面を密着させて前記セグメントの回動を規制しかつ着脱可能に保持する保持ケースと、を備えることを特徴とするセグメント式表示器、により達成される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、各セグメントをその対称軸線回りに回動自在(反転自在)となるように基板に保持し、セグメントを所定の数字などに表示する状態にした後でこの基板を保持ケースに保持し、基板の裏面を保持ケースに密着あるいは近接して対向させる(この状態をここでは単に密着とも言う)から、セグメントはこの時の表示状態で回動が規制される。このため表示内容を変更する時には基板を保持ケースから外してセグメントを回転し、新しい表示状態にして保持ケースに固定すれば良いから、セグメントを回転させる空間を基板の背面に設ける必要がなくなり、表示板を薄くして小型化が可能になる。また基板はその背面を保持ケースに密着させて固定されているので、セグメントはこの状態では回転できず、簡単にはいたずらにより表示を変更することができなくなる。さらにセグメントは基板に回動自在に保持されていて基板から分離できないから、セグメントが脱落して紛失する恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例の正面図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】基板に形成した開口部と支軸部を示す斜視図である。
【図4】図1におけるIV−IV線断面図である。
【図5】セグメントの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
セグメントの数は数字を表示する場合は通常7であるが、本発明においては7に限定されない。記号をセグメントに分割して表示する場合は分割した数に対応するセグメント数になる。各セグメントを選択的に反転させるための対称軸線は、通常略長板形状のセグメントの長手方向の中央を幅方向に横断する直線であるが、セグメントの形状によっては長手方向と平行な直線であっても良い。またセグメントが正方形の場合はその中央を通りかつ辺に平行な直線や対角線が対称軸線となる。円形のセグメントでは対称軸線は中心を通る任意方向の直線とすることができる。
【0013】
セグメントはその表と裏の一方を基板表面と同じ色とし、他の面を基板表面に対して目立つ色にすることにより、セグメントで表示する数字などを読みやすくすることができる。すなわちセグメントを基板表面と同じ色の面を表面にすれば、このセグメントは見にくくなり、この部分を隠すことができる。反対に他の面を表面にすればセグメントは見やすくなり、数字などを明瞭に読み取ることが可能になる。
【0014】
基板には、セグメントを収容する開口部と、セグメントの対称軸線に沿ってこの開口部を横断する支軸部とを形成しておくことによって、セグメントをこの支軸部に反転可能に保持することができる(請求項2)。
【0015】
各セグメントは、基板と異なる色のセグメント半体と、基板表面と同色のセグメント半体とを、基板の支軸部を挟んで接合したものとすることができる(請求項3)。セグメント半体の接合は、一方に形成した凸部を、他方に成形した凹部に圧入したり嵌合することによって行うことができる。この場合にはそれぞれのセグメント半体を樹脂で一体形成でき、特に対称形状のセグメントを有する場合にはセグメント半体の金型を共用でき、生産性が向上し、コストを下げることができる。各セグメントは通常略長板形状であるから、この場合には基板の支軸部は各セグメントの長手方向の中央付近を直交する位置にさせるのがよい(請求項4)。セグメントを回動(反転)させる時に操作性がよいからである。
【0016】
保持ケースには、基板の収容部に近接して説明表示部を形成することができる(請求項5)。この場合には価格などの表示部分と商品の説明表示部分とが共通の保持ケースに近接して配置できるので便利である。
【0017】
基板は、保持ケースにその厚さ方向に押し付けることによって基板および保持ケースのいずれかに設けた係合爪に係合させることにより固定されるようにするのがよい(請求項6)。基板には多数のセグメントが回動可能(反転可能)に取り付けられているので、これを所定の表示状態に回動させてもセグメントは固定されずに揺動しているから、基板を保持ケースに上方から押し付けるようにして保持すれば、不完全に回動したセグメントを保持ケースに当接させることによって正しい位置に回動させて固定することができるからである。
【実施例1】
【0018】
図1、2、4において符号10は四角形の保持ケースである。この保持ケース10は、その中央付近を水平に横断する仕切り部12によって上下に仕切られた説明表示部14および基板収容部16を有する。説明表示部14は、図2、4に示すように、保持ケース10の上縁に形成された幅方向のスリット18に上方から挿入される二つ折りの透明板20を保持ケース10の前面に開く開口部14aから目視可能にしたものである。商品の説明書22をこの透明板20の間に挟んでスリット18から挿入すれば、説明書22を前面開口部14aから読み取ることができる。
【0019】
基板収容部16には基板24が前面から着脱される。すなわち基板24はその上縁24aを仕切り部12に形成した凹溝12aに下方から係入して、その下縁を24bを基板収容部16に(保持ケース10の厚さ方向に)押し付ける、この時保持ケース10の下縁に設けた係合爪26が、この下縁24bに係合して基板24を固定する。この実施例では基板24には商品の価格を表示するので、保持ケース10にはこの基板24の表示の後方に価格の単位を示す「円」が表示されている(図1)。
【0020】
基板24には、商品の価格を表示する多数の数字を表示するセグメント30が保持されている。すなわちそれぞれの数字は、7つのセグメント30を選択的に目視可能な状態にすることによって、0から9までの数字を表現するものである。各桁の数字は同じ構造であるから、以下最下位の桁である1つの数字を示すセグメント30a〜gの構成を説明する。
【0021】
セグメント30a〜gはそれぞれほぼ長板形状であり、それぞれがその長手方向の中心を直交する対称軸線32を中心にして回動可能(反転可能)である。例えば図1において、右側の縦長のセグメント30a、30bの対称軸線32は、セグメント30a、30bの長手方向の中心を通ってIV−IV線に直交している。
【0022】
基板24にはセグメント30を収納する開口部34が形成されている。すなわちこの開口部34は、7個のセグメント30a〜gが入るように基板24を厚さ方向に横断している。開口部34には、各セグメント30の対称軸線32上に位置する支軸部36が形成されている。セグメント30は、この支軸部36に回動可能に保持されて、表裏を反転することができる。
【0023】
セグメント30は図5に示すように、一対のセグメント半体38、40を組み合わせて接合したものである。各セグメント半体38、40は色が異なる合成樹脂でそれぞれ一体形成されている。すなわち一方のセグメント半体38は、基板24の表面色と異なっていてできるだけ目視しやすい色とする。例えば基板24の表面が黒である時にはセグメント半体38は白とする。他方のセグメント半体40は基板表面色と同じ色とする。この場合黒にする。
【0024】
セグメント半体38、40の対向する面には、前記基板24の支軸部36を挟むための凹溝38a、40aが形成され、この凹溝を挟んで両側に、それぞれ円柱状の凸部38b、40bと、これらの凸部38b、40bが圧入される凹孔を有する円筒部(凹部)38c、40cとが一体に形成されている。すなわち、これらのセグメント半体38、40は、支軸部36を凹溝38a、40aで挟んで、一方の凸部38b、40bを他方の円筒部38c、40cに圧入することにより、基板24の開口部34に保持され収容される。
【0025】
このようにして、各セグメント30a〜gを基板24の開口部34の対応する位置に収容する。そして各桁の数字に対応して、一部のセグメント30はセグメント半体38側が表になるように、他のセグメント30はセグメント半体40側が表になるように回動する。セグメント半体38が表になっている部分か目視可能となり、数字として読み取ることができる。数字を表示する必要がない桁は、全てのセグメント30を裏にしてセグメント半体40を表にする。
【0026】
各桁の数字の設定が済むと、この基板24を前記したようにして保持ケース10の基板収容部16に固定する。この結果各セグメント30は、基板収容部16ので保持ケース10に当たってその回動が規制される。また基板24を保持ケースから外した状態では各セグメント30はその回動位置が不安定であるが、基板24を保持ケース10に固定する際に各セグメント30の裏面が保持ケース10に当たって基板24と平行な位置に保持される。
【0027】
数字を変更する時には、保持ケース10の係合爪26を下方に押して基板24を基板収容部16から取り外す。そして表示する数字に対応する所定のセグメント30を回動(反転)させて所定の数字を表示する状態にして、基板収容部16に固定すれば良い。
【符号の説明】
【0028】
10 保持ケース
12 仕切り部
14 説明表示部
16 基板収容部
22 説明書
24 基板
26 係合爪
30 セグメント
32 対称軸線
34 開口部
36 支軸軸
38、40 セグメント半体
38b、40b 凸部
38c、40c 円筒部(凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントを組み合わせて表示するセグメント式表示器において、
各セグメントをその対称軸線回りに回動可能に保持すると共にその表面が各セグメントの表裏のいずれかと同色である基板と、
この基板をその裏面を密着させて前記セグメントの回動を規制しかつ着脱可能に保持する保持ケースと、
を備えることを特徴とするセグメント式表示器。
【請求項2】
基板は、セグメントを収容する開口部と、セグメントの対称軸線に沿ってこの開口部を横断する支軸部とを有する請求項1のセグメント式表示器。
【請求項3】
各セグメントは、基板と異なる色のセグメント半体と、基板表面と同色のセグメント半体とを、基板の支軸部を挟んで接合したものである請求項2のセグメント式表示器。
【請求項4】
各セグメントは略長板形状であり、基板の支軸部は各セグメントの長手方向の中央付近を直交している請求項2のセグメント式表示器。
【請求項5】
保持ケースには、基板の収容部に近接して説明表示部が形成されている請求項1のセグメント式表示器。
【請求項6】
基板は、保持ケースにその厚さ方向に押し付けることによって基板および保持ケースのいずれかに設けた係合爪に係合させることにより固定されるようにした請求項1のセグメント式表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−98496(P2012−98496A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245866(P2010−245866)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(399117969)株式会社ZOA (2)
【Fターム(参考)】