セグメント形立坑ケーシングの製造方法
【課題】内面の寸法精度が高く、且つ内面がきれいに仕上がるセグメント形立坑ケーシングを安価に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】分割形状に成形されたコンクリートと、コンクリートの外周を覆う鋼板と、鋼板のそれぞれ端部から内方に延びる接合用ブラケットとが一体化されたセグメント形立坑ケーシングを製造する方法であって、内枠Bを配置し、鋼板3及び接合用ブラケット4を含んで構成される構造物を外枠Aとし、複数の外枠Aを内枠Bを取り囲むようにして接合し、複数の外枠A,Aの内面と内枠Bの外面との間に形成される環状空間Fにコンクリートを注入し、コンクリートを乾燥、固化させ、複数の外枠A,A同士の接合を解除し、それぞれ外枠Aを内枠Bから分離し、分離された外枠Aにコンクリート2が一体化したものをセグメント形立坑ケーシング1とする。
【解決手段】分割形状に成形されたコンクリートと、コンクリートの外周を覆う鋼板と、鋼板のそれぞれ端部から内方に延びる接合用ブラケットとが一体化されたセグメント形立坑ケーシングを製造する方法であって、内枠Bを配置し、鋼板3及び接合用ブラケット4を含んで構成される構造物を外枠Aとし、複数の外枠Aを内枠Bを取り囲むようにして接合し、複数の外枠A,Aの内面と内枠Bの外面との間に形成される環状空間Fにコンクリートを注入し、コンクリートを乾燥、固化させ、複数の外枠A,A同士の接合を解除し、それぞれ外枠Aを内枠Bから分離し、分離された外枠Aにコンクリート2が一体化したものをセグメント形立坑ケーシング1とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にマンホール等を構築する際に用いられるコンクリート製の立坑ケーシングの製造方法に関し、特に、分割可能に構成されたセグメント形立坑ケーシングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立坑ケーシングの大型化に伴い、セグメント形立坑ケーシングの需要が高まってきている(特許文献1)。図9、図10及び図11(a)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1は、半円筒体であり、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1の端部同士を接合することで、円筒体が形成される。そして、この円筒体を高さ方向(軸方向)に適宜個数だけ連続して接合することで、立坑ケーシングが形成される。各セグメント形立坑ケーシング1は、半円筒状に成形されたコンクリート2と、該コンクリート2の外周を覆う鋼板3とを備える。
【0003】
鋼板3のそれぞれ端部(周方向における円弧の端部)には、鋼製のブラケット4が(例えば溶接により)接合されている。該ブラケット4は、所定幅を有し、鋼板3のそれぞれ端部から径内方向に延び、コンクリート2の端部(周方向における円弧の端部)に埋設状態で固着されている。また、コンクリート2の各端部には、高さ方向の例えば上中下の3箇所に、内面側で開口する空間部5が形成されている。該空間部5は、ブラケット4と接しており、該ブラケット4の空間部5に面する箇所に、ボルトとナットからなる締結具6のボルトを挿通させるための貫通穴が形成されている。
【0004】
従って、一方のセグメント形立坑ケーシング1のブラケット4の貫通穴と他方のセグメント形立坑ケーシング1のブラケット4の貫通穴とが合致するように、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1を円筒状に合わせ、この状態で、重なり合ったブラケット4,4の貫通穴にボルトを通し、ボルトにナットを螺合して締め付けることで、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1は、締結具6で接合された円筒体となる。
【0005】
ところで、セグメント形立坑ケーシング1は、図11(b)を参酌しつつ、以下のように製造される。まず、セグメント形立坑ケーシング1からコンクリート2を除いた構造物、即ち、鋼板3、ブラケット4(そして、図示しないが、必要に応じて、鋼板3の内面側に該内面と所定間隔を有して配筋される鉄筋や、鋼板3の内面側の複数の所定位置にそれぞれ位置決めされるインサート要素)で構成される構造物を外枠Aとし、上記の要領で、二つの外枠A,Aを接合して円筒体にする。
【0006】
次に、半円筒状に湾曲させた鋼板15、外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の内側端面に当接するよう、鋼板15の外面に高さ方向に沿って取り付けられた突条16(そして、図示しないが、必要に応じて、鋼板15の外面側の複数の所定位置にそれぞれ位置決めされるインサート要素)で構成される構造物を内枠Bとし、これを二つ、外枠A,Aの円筒体内に挿入する。内枠B(の鋼板15)の径は、外枠A(の鋼板3)の径よりも小さくなっている。そのため、外枠A,Aの円筒体内で二つの内枠B,Bを円筒状に合わせ、外枠A,Aの円筒体と同心に配置すると、外枠Aの内面と内枠Bの外面が一定の間隔で離間し、外枠A,A及び内枠B,B間に円環状空間が形成される。
【0007】
そこで、円環状空間の上下開放端を閉鎖した状態で、当該空間内にコンクリートを打設する(コンクリートを流し込む)。コンクリートが固まれば、内枠B,Bを取り去り、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が完成する。セグメント形立坑ケーシング1の製造現場と施工現場とが離れている場合は、各所の締結具6,…を緩めて取り外し、セグメント毎に分割して運搬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−320702号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたセグメント形立坑ケーシング1には、以下のような問題がある。
【0010】
外枠Aは、上述のとおり、鋼板3の内面側に該内面と所定間隔を有して鉄筋が配筋され、一方、内枠Bは、上述のとおり、鋼板15の外面側の複数の所定位置にそれぞれインサート要素が位置決めされている。従って、内枠Bを外枠A,Aの円筒体内に挿入するにあたり、内枠Bを吊り上げ、そのまま外枠A,Aの円筒体内に降ろそうとしても、内枠Bのインサート要素が外枠A,Aの鉄筋と干渉し、内枠Bを外枠A,Aの円筒体内に挿入することができない。そのため、内枠Bの両端部間が狭まるように内枠Bを変形させて径を小さくした状態で、内枠Bを吊り上げ、外枠A,Aの円筒体内に降ろし、外枠A,Aの円筒体内で内枠Bの変形を解除するようにしている。
【0011】
内枠Bはこのようにして使われるため、少ない力で変形させることができるよう(可撓性が高くなるよう)、内枠Bの鋼板15の厚みは小さくなっている。従って、内枠Bの上記した変形、解除が繰り返されると、内枠Bは歪み(塑性変形し)、内枠Bの真円度が悪くなる。内枠Bは、セグメント形立坑ケーシング1の内面を形成するためのものであるから、内枠Bの真円度が悪くなると、セグメント形立坑ケーシング1の内面の寸法精度に影響が出る。立坑ケーシングは、最終形態として、その内面の寸法精度が要求されるため、内面の寸法精度が悪くなったセグメント形立坑ケーシング1は不適合とされる。そうならないようにするためには、内枠Bの変形が進行する前に、内枠Bを改修しておく必要が生じる。
【0012】
また、セグメント形立坑ケーシング1のコンクリート2は、上述のとおり、内面側で開口する空間部5が形成されている。施工現場でセグメント形立坑ケーシング1の接合作業が完了すると、この空間部5にモルタル等の充填剤が詰められるが、コンクリート2の内面とこの充填剤が固化した後の外面とを完全に面一とすることは難しい。また、コンクリート2の内面と固化した充填剤の外面との境界が目立ち、見た目が悪い。見た目の悪さは、コンクリート2の内面と固化した充填剤の外面とに跨って化粧処理を施すことで、解消できるが、そのために、時間とコストがかかる。
【0013】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、これらの問題を一回的に解決することができるセグメント形立坑ケーシングの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るセグメント形立坑ケーシングの製造方法は、分割形状に成形されたコンクリートと、該コンクリートの外周を覆う鋼板と、該鋼板のそれぞれ端部から内方に延びる接合用ブラケットとが一体化されたセグメント形立坑ケーシングを製造する方法であって、内枠を配置する工程と、前記鋼板及び前記接合用ブラケットを含んで構成される構造物を外枠とし、複数の外枠を、前記内枠を取り囲むようにして接合する工程と、前記複数の外枠の内面と前記内枠の外面との間に形成される環状空間に前記コンクリートを注入する工程と、該コンクリートを乾燥、固化させる工程と、前記複数の外枠同士の接合を解除し、それぞれ外枠を前記内枠から分離する工程とを備え、分離された外枠にコンクリートが一体化したものをセグメント形立坑ケーシングとする。
【0015】
かかる構成によれば、内枠を縮めたり、元に戻したりを繰り返して使用する従来の方法とは異なり、内枠が固定となっている。従って、内枠は変形しにくい。そのため、セグメント形立坑ケーシングの内面の寸法精度が悪くなることはない。また、内枠が変形しにくいため、内枠の改修工事も不要となる。
【0016】
また、本発明においては、前記外枠の端部に、外面側に開口する空間部が形成され、前記複数の外枠同士を接合する際、空間部を介して締結具を操作する構成を採用することができる。
【0017】
かかる構成によれば、締結具の締結作業あるいは緩め作業を行うためのアクセス空間を構成する空間部は、外枠の外面側で開口するようになっている。即ち、空間部が外枠の内面側で開口する従来の外枠と異なり、空間部が外枠の内面側で開口していない。従って、空間部を充填剤で充填するとした場合、それがセグメント形立坑ケーシングの内面側に表れることはない。そのため、セグメント形立坑ケーシングの内面は、化粧処理を施さずともきれいな仕上がり面(真円度が高い内枠の表面形状を転写した表面)となる。従って、化粧処理に要する時間、コストを削減することができる。従来の外枠は、空間部が外枠の内面側で開口するものであるため、コンクリートが固化した後、内枠を取り外さずして、外枠を分解することはできない。これに対し、空間部が外枠の外面側で開口する構成を採用すれば、内枠を取り外さずとも、外枠を分解することができる。このため、内枠を固定式にすることができて、上記問題を解決することができるのである。
【0018】
また、本発明においては、前記コンクリートを注入する工程に先立ち、前記環状空間の上側開放端及び下側開放端を閉鎖するステップをさらに備えるようにするのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、セグメント形立坑ケーシングを高さ方向に積み重ねていく際の接合面を所期の形状に仕上げることができる。
【0020】
また、本発明においては、前記内枠は、円筒状あるいは円柱状であり、前記外枠は、円筒体を所定数に分割した形状である構成を採用することができる。
【0021】
かかる構成によれば、円筒体を分割した形状のセグメント形立坑ケーシングを製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の如く、本発明によれば、内面の寸法精度が高く、且つ内面がきれいに仕上がるセグメント形立坑ケーシングを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを二つ円筒状に接合した状態の該接合部の拡大平面断面図、(b)は、同接合部のうち、ノックピンがある箇所の拡大平面断面図、を示す。
【図2】(a)は、同接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、(b)は、同正面図、を示す。
【図3】(a)は、空間部の開口を塞ぐ蓋板の正面図、(b)は、空間部が蓋板で塞がれた状態の拡大平面断面図、を示す。
【図4】(a)は、同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングの高さ方向における接合部の拡大正面図、(b)は、同接合部のうち、ノックピンがある箇所の拡大正面断面図、を示す。
【図5】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、ベース上に内枠及び下側端面枠が配置された状態、(b)は、二つの外枠をベース上に配置しようとする状態、を示す。
【図6】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、ベース上に二つの外枠が内枠を取り囲むようにして円筒状に合わされ、外枠と内枠との間に円環状空間が形成された状態、(b)は、二つの上側端面枠を円環状空間の上側開放端を塞ぐように配置しようとする状態、を示す。
【図7】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、円環状空間の上側開放端を塞ぐようにして二つの上側端面枠が円環状に合わされた状態、(b)は、外枠の周方向における接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、を示す。
【図8】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、円環状空間内にコンクリートが打設されて完成した二つのセグメント形立坑ケーシングを内枠から外した状態、(b)は、完成した二つのセグメント形立坑ケーシングを円筒状に接合し、これを高さ方向に接合していく状態、を示す。
【図9】(a)は、従来のセグメント形立坑ケーシングを二つ円筒状に接合した状態の平面図、(b)は、(a)のX−X線断面図、を示す。
【図10】(a)は、同従来のセグメント形立坑ケーシングの平面図、(b)は、正面図、を示す。
【図11】(a)は、同従来のセグメント形立坑ケーシングの周方向における接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、(b)は、同従来のセグメント形立坑ケーシングを製造する工程における、外枠の周方向における接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングについて、図1〜図4を参酌して説明する。尚、従来のセグメント形立坑ケーシングと同一もしくは関連する構成については、同じ符号を用いている。
【0025】
本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1は、半円筒体であり、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1の端部同士を接合することで、円筒体が形成される。そして、この円筒体を高さ方向(軸方向)に適宜個数だけ連続して接合することで、立坑ケーシングが形成される。各セグメント形立坑ケーシング1は、図1(a)に示す如く、半円筒状に成形されたコンクリート2と、該コンクリート2の外周を覆う鋼板3とを備える。
【0026】
鋼板3のそれぞれ端部(周方向における円弧の端部)には、鋼製のブラケット4が(例えば溶接により)接合されている。該ブラケット4は、所定幅を有し、鋼板3のそれぞれ端部から径内方向に延び、コンクリート2の端部(周方向における円弧の端部)を覆っている。
【0027】
また、図1(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の端部には、高さ方向の例えば上下の2箇所に、スリーブ7が埋設(インサート)されている。スリーブ7の一端部は、ブラケット4に形成された穴に挿入され、ブラケット4の表面(接合面)と面一になっている。従って、スリーブ7は、ブラケット4に対して直交に配置されている。二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が高さを揃えて円筒状に合わさった状態で、一方のセグメント形立坑ケーシング1のスリーブ7と、他方のセグメント形立坑ケーシング1のスリーブ7は、同軸となる。そこで、両スリーブ7,7内に跨ってノックピン8を挿入することで、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1は、周方向及び高さ方向で正確に位置決めされる。
【0028】
また、図2(a),(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の一端部には、高さ方向の例えば上中下の3箇所に、外面側で開口する空間部5が形成されている。具体的には、コンクリート2の一端部に、外面側で開口する空間部5が形成され、該空間部5の位置、形状に対応して、鋼板3に切欠窓3aが形成されている。
【0029】
空間部5は、一端部がブラケット4の裏面に接続された上壁5a及び下壁5bと、該上壁5a及び下壁5bの他端部同士を接続する側壁5cと、上壁5a、下壁5b及び側壁5cのそれぞれ奥側端部を接続する奥壁5dとによって箱型に区画されている。切欠窓3aは、上壁5a、下壁5b及び側壁5cの手前側端部に沿った形状となっている。
【0030】
また、空間部5は、ブラケット4(の裏面)と接しており、該ブラケット4の空間部5に面する箇所に、ボルトからなる締結具6を挿通させるための貫通穴が形成されている。一方、セグメント形立坑ケーシング1の他端部には、当該貫通穴に対応した箇所に、同じく貫通穴が形成されると共に、ネジ穴付きスリーブ9が埋設(インサート)されている。従って、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が複数のノックピン8,…により位置合わせされた状態で、一方のセグメント形立坑ケーシング1の一端部の貫通穴、他方のセグメント形立坑ケーシング1の他端部の貫通穴及びネジ穴付きスリーブ9は、同軸となる。そこで、一方のセグメント形立坑ケーシング1の外面側から空間部5内にボルト6を挿入し、該ボルト6を二つの貫通孔に通し、ネジ穴付きスリーブ9の雌ネジに螺入させて締め付けることで、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1は、複数の締結具6,…で接合された円筒体となる。
【0031】
尚、空間部5を区画する上壁5a、下壁5b、側壁5c及び奥壁5dは、セグメント形立坑ケーシング1の一端部において、鋼板3の内面とブラケット4の裏面とに跨って接続されることで、鋼板3に対するブラケット4の取り付け強度を高めている。そこで、セグメント形立坑ケーシング1の他端部において、鋼板3に対するブラケット4の取り付け強度を高めるために、鋼板3の内面とブラケット4の裏面とに跨ってリブ10が接続されている。
【0032】
空間部5は、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が円筒状に接合された後、不要となるため、図3(a)に示される蓋板11で塞がれる。蓋板11は、切欠窓3aよりも僅かに小さい形状とされ、切欠窓3a内に挿入された状態(空間部5の開口が塞がれた状態)で、鋼板3と面一になる。
【0033】
蓋板11には、充填穴11aが形成されている。本実施形態においては、充填穴11aは、2箇所に形成されている。空間部5が蓋板11で塞がれ、密閉空間になった状態で、蓋板11の充填穴11aから充填剤が注入され、図3(b)に示す如く、空間部5内を充填剤で充填する。これは液漏れ対策の一環である。
【0034】
図4(a),(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の上端面及び下端面には、それぞれ周方向に沿ってシール溝2aが形成されている。セグメント形立坑ケーシング1,1が上下に重なり、下側のセグメント形立坑ケーシング1の上端面と、上側のセグメント形立坑ケーシング1の下端面とが対向した状態で、下側のセグメント形立坑ケーシング1の上端面のシール溝2aと上側のセグメント形立坑ケーシング1の下端面のシール溝2aが一つの溝を構成する。ここにパッキン(図示しない)を配置することで、上下のセグメント形立坑ケーシング1,1間にシール作用が得られる。
【0035】
また、図4(a)に示す如く、ブラケット4の表面(接合面)にも、高さ方向に沿ってシール溝4aが形成されている。ここにパッキン(図示しない)を配置することで、周方向におけるセグメント形立坑ケーシング1,1の分割面(接合面)間にシール作用が得られる。
【0036】
また、図4(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の上端部及び下端部には、周方向の例えば等分4箇所に、スリーブ12が埋設(インサート)されている。スリーブ12の一端部は、セグメント形立坑ケーシング1の上端面及び下端面(接合面)、より詳しくは、コンクリート2の上端面及び下端面(接合面)と面一になっている。従って、スリーブ12は、高さ方向に沿って配置されている。二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が上下に重なった状態で、下側のセグメント形立坑ケーシング1の上端部のスリーブ12と、上側のセグメント形立坑ケーシング1の下側のスリーブ12は、同軸となる。そこで、両スリーブ12,12内に跨ってノックピン13を挿入することで、上下のセグメント形立坑ケーシング1,1は、互いに周方向で正確に位置決めされると共に、周方向において強固に連結される。
【0037】
本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1は以上の構成からなり、次に、このセグメント形立坑ケーシング1の製造方法について、図5〜図8を参酌して説明する。まず、図5(a)に示す如く、ベースC上に内枠B及び下側端面枠Dが配置された状態にする。あるいは、ベースC上に内枠B及び下側端面枠Dが固定され、一体化されたものを用意する。
【0038】
本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法が従来のものと異なる最大のポイントは、内枠Bが固定枠となっているか、分割式になっているかの違いである。本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法は、内枠Bとして固定枠を使用する。固定枠とは、従来のセグメント形立坑ケーシング1の製造方法のように、内枠Bを変形させることがない形態の枠である。本実施形態においては、内枠Bが初めから円筒状となっている。また、内枠Bの真円度を維持させるため、内枠Bを構成する鋼板15の内面には、適宜、縦方向のリブ及び横方向のリブ(例えば、環状リブ)が配設され、剛性が高い内枠Bとなっている。尚、内枠Bが分割式になっていても、それが円筒状に接合された状態で使用されるならば、それも固定枠である。
【0039】
下側端面枠Dは、その内径が内枠Bの外径と一致ないし略一致する円環体からなり、セグメント形立坑ケーシング1の下端面(より詳しくは、コンクリート2の下端面)を形成するためのものである。従って、下側端面枠Dの上面には、セグメント形立坑ケーシング1の下端面のシール溝2aを形成するための環状突条(図示しない)が形成され、また、インサート要素の一つとして、必要数のスリーブ12,…が位置決めされている。
【0040】
次に、図5(b)に示す如く、二つの外枠A,Aを用意する。外枠Aは、セグメント形立坑ケーシング1からコンクリート2を除いた構造物、即ち、鋼板3、ブラケット4(そして、図示しないが、必要に応じて、鋼板3の内面側に該内面と所定間隔を有して配筋される鉄筋や、鋼板3の内面側の複数の所定位置にそれぞれ位置決めされるインサート要素)で構成される構造物である。
【0041】
そして、図6(a)に示す如く、二つの外枠A、AをベースC上に配置する。この際、一方の外枠Aのブラケット4の貫通穴と他方の外枠Aのブラケット4の貫通穴とが合致するように、且つ、二つの外枠A,Aが内枠Bを取り囲むように、二つの外枠A,Aを円筒状に合わせ、この状態で、外枠Aの外面側から各空間部5内にボルト6を挿入し、重なり合ったブラケット4,4の貫通穴にボルト6を通し、ネジ穴付きスリーブ9の雌ネジにボルト6を螺入させて締め付け、二つの外枠A,Aを複数の締結具6,…で接合して円筒体にする。尚、空間部5が外枠Aの外面側で開口しており、締結具6の締結作業は、外枠Aの外面側から行うことになる。従って、外枠A,Aの円筒体内に内枠Bがあっても、締結作業に支障は生じない。
【0042】
内枠Bの径は、外枠Aの径よりも小さくなっている。そのため、二つの外枠A,Aを、内枠Bを取り囲むようにして円筒状に合わせ、内枠Bと同心に配置することで、外枠Aの内周面と内枠Bの外周面が一定の間隔で離間し、外枠A,A及び内枠B間に円環状空間が形成される。
【0043】
次に、図6(b)に示す如く、半割にされた上側端面枠E,Eを用意する。そして、図7(a)に示す如く、二つの上側端面枠E,Eを円環状に合わせ、円環状空間の上側開放端を塞ぐようにして外枠A,A上に配置する。組み合わされた上側端面枠E,Eは、下側端面枠Dと同様、内径が内枠Bの外径と一致ないし略一致する円環体からなり、セグメント形立坑ケーシング1の上端面(より詳しくは、コンクリート2の上端面)を形成するためのものである。従って、上側端面枠E,Eの下面には、セグメント形立坑ケーシング1の上端面のシール溝2aを形成するための環状突条(図示しない)が形成され、また、インサート要素の一つとして、必要数のスリーブ12,…が位置決めされている。尚、上側端面枠E,Eは、分割式ではなく、一つの円環体であってもよい。
【0044】
図7(b)は、外枠Aの周方向における接合部のうち、空間部5がある箇所の拡大平面断面図である。内枠Bの回りに外枠A,Aが同心に配置された状態では、上述のとおり、外枠A,Aの内周面と内枠Bの外周面が一定の間隔で離間し、外枠A,A及び内枠B間に円環状空間Fが形成される。円環状空間Fは、外方が外枠A,Aにより閉止され、内方が内枠Bにより閉止され、下方が下側端面枠Dにより閉止され、上方が上側端面枠Eにより閉止された密閉空間である。そこで、当該空間内にコンクリートを打設する(コンクリートを流し込む)。
【0045】
尚、空間部5においては、該空間部5を区画する上壁5a、下壁5b、側壁5c及び奥壁5dは、互いに隙間なく接続され、また、外枠Aの鋼板3やブラケット4とも隙間なく接続されている。即ち、上壁5a、下壁5b、側壁5c及び奥壁5dは、円環状空間と空間部5とを完全に(液密に)仕切っている。従って、円環状空間に流し込まれたコンクリートあるいはその水成分が空間部5から外部に漏れ出ることはない。
【0046】
そして、コンクリートが固まれば、外枠A,Aの各所の締結具6,…を緩めて取り外す。コンクリートは、それぞれ外枠Aの内面に固着しているので、これがセグメント形立坑ケーシング1,1となる。図8(a)に示す如く、外枠A,Aを左右に開けば、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が完成する。
【0047】
そして、セグメント形立坑ケーシング1はそのまま分割された状態で施工現場に運搬され、図8(b)に示す如く、組み合わせて立坑ケーシングを形成する。
【0048】
以上、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、内枠Bを縮めたり、元に戻したりを繰り返して使用する従来の方法とは異なり、内枠Bが固定となっている。従って、内枠Bの剛性が高いことと相まって、内枠Bは変形しにくい。そのため、セグメント形立坑ケーシング1の内面の寸法精度が悪くなる要因は基本的にはない。また、内枠Bが変形しにくいため、内枠Bの改修工事も不要である。
【0049】
また、締結具6の締結作業及び緩め作業を行うためのアクセス空間を構成する空間部5は、外枠Aの外面側で開口するようになっている。即ち、空間部5が外枠Aの内面側で開口する従来の外枠Aと異なり、本実施形態に係る外枠Aでは、空間部5が外枠Aの内面側で開口していない。従って、空間部5を充填剤で充填するにしても、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1では、それが内面側に表れることはない。そのため、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の内面は、化粧処理を施さずともきれいな仕上がり面(真円度が高い内枠Aの表面形状を転写した表面)となる。従って、化粧処理に要する時間、コストを削減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、上述の如く、内枠Bは変形しにくい。従って、内枠Bを構成する鋼板15の外面に高さ方向に沿って取り付けられた突条16(図7(b)参照)は、外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の内側端面に確実に当接する。従来の内枠Bは変形しやすく、そうなると、突条16と外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の内側端面との間に隙間が形成され、ここからコンクリートが漏れ出ることがあった。しかし、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、このような隙間が形成されることはないため、コンクリートが漏れ出るおそれはない。
【0051】
また、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、内枠Bを組み合わせ、また、分解する必要がないため、製造にかかる時間及びコストを削減することができ、量産に対応できる。また、内枠Bの改修工事を含むメンテナンス費用が削減されるため、従来に比べ、セグメント形立坑ケーシング1を安価に製造することができる。
【0052】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、外枠Aは二分割式であったが、分割数は特にこれに限定されるものではなく、外枠Aは、例えば、三分割式、四分割式であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、締結具として、ボルト6と、外枠Aのブラケット4に固定されてコンクリート注入後にインサートされるネジ穴付きスリーブ9(一種のナット)との組み合わせが用いられているが、従来と同様、ボルトとナットの組み合わせによる締結具6を採用することも可能である。但し、この場合、ナットも作業上、操作対象となるため、空間部5は、セグメント形立坑ケーシング1の一端部だけでなく、他端部にも形成されなければならない(図11(a),(b)参照)。
【0055】
また、上記実施形態においては、空間部5は、箱形、即ち、四角体形状に形成されているが、その形状は特に限定されない。要は、外枠Aあるいはセグメント形立坑ケーシング1の外面側から工具あるいは手がアクセス可能であれば、いかなる形状であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、空間部5は、最終的に充填剤により埋められるが、そうしなくてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、内枠Bの外面に設けた突条16は、外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の厚みと同等の幅を有するものであったが(図7(b)参照)、上述のとおり、当該ブラケット4,4の内側端面に確実に当接するものであるため、その幅をより小さくしてもよい。そうなると、例えば図1(a)に示されるような、セグメント形立坑ケーシング1,1の接合部における内面側のスリット痕1aをより細くすることができ、内面仕上がりをさらに向上させることができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、外枠Aあるいはセグメント形立坑ケーシング1、そして、内枠Bは、円筒形であったが、断面形状は円筒形に限定されず、例えば、楕円形の断面形状、四角乃至略四角形状の断面形状、多角形の断面形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…セグメント形立坑ケーシング、1a…スリット痕、2…コンクリート、2a…シール溝、3…鋼板、3a…切欠窓、4…ブラケット、4a…シール溝、5…空間部、5a…上壁、5b…下壁、5c…側壁、5d…奥壁、6…締結具、7…スリーブ、8…ノックピン、9…ネジ穴付きスリーブ、10…リブ、11…蓋板、11a…充填穴、12…スリーブ、13…ノックピン、15…鋼板、16…突条、A…外枠、B…内枠、C…ベース、D…下側端面枠、E…上側端面枠、F…円環状空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にマンホール等を構築する際に用いられるコンクリート製の立坑ケーシングの製造方法に関し、特に、分割可能に構成されたセグメント形立坑ケーシングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立坑ケーシングの大型化に伴い、セグメント形立坑ケーシングの需要が高まってきている(特許文献1)。図9、図10及び図11(a)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1は、半円筒体であり、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1の端部同士を接合することで、円筒体が形成される。そして、この円筒体を高さ方向(軸方向)に適宜個数だけ連続して接合することで、立坑ケーシングが形成される。各セグメント形立坑ケーシング1は、半円筒状に成形されたコンクリート2と、該コンクリート2の外周を覆う鋼板3とを備える。
【0003】
鋼板3のそれぞれ端部(周方向における円弧の端部)には、鋼製のブラケット4が(例えば溶接により)接合されている。該ブラケット4は、所定幅を有し、鋼板3のそれぞれ端部から径内方向に延び、コンクリート2の端部(周方向における円弧の端部)に埋設状態で固着されている。また、コンクリート2の各端部には、高さ方向の例えば上中下の3箇所に、内面側で開口する空間部5が形成されている。該空間部5は、ブラケット4と接しており、該ブラケット4の空間部5に面する箇所に、ボルトとナットからなる締結具6のボルトを挿通させるための貫通穴が形成されている。
【0004】
従って、一方のセグメント形立坑ケーシング1のブラケット4の貫通穴と他方のセグメント形立坑ケーシング1のブラケット4の貫通穴とが合致するように、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1を円筒状に合わせ、この状態で、重なり合ったブラケット4,4の貫通穴にボルトを通し、ボルトにナットを螺合して締め付けることで、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1は、締結具6で接合された円筒体となる。
【0005】
ところで、セグメント形立坑ケーシング1は、図11(b)を参酌しつつ、以下のように製造される。まず、セグメント形立坑ケーシング1からコンクリート2を除いた構造物、即ち、鋼板3、ブラケット4(そして、図示しないが、必要に応じて、鋼板3の内面側に該内面と所定間隔を有して配筋される鉄筋や、鋼板3の内面側の複数の所定位置にそれぞれ位置決めされるインサート要素)で構成される構造物を外枠Aとし、上記の要領で、二つの外枠A,Aを接合して円筒体にする。
【0006】
次に、半円筒状に湾曲させた鋼板15、外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の内側端面に当接するよう、鋼板15の外面に高さ方向に沿って取り付けられた突条16(そして、図示しないが、必要に応じて、鋼板15の外面側の複数の所定位置にそれぞれ位置決めされるインサート要素)で構成される構造物を内枠Bとし、これを二つ、外枠A,Aの円筒体内に挿入する。内枠B(の鋼板15)の径は、外枠A(の鋼板3)の径よりも小さくなっている。そのため、外枠A,Aの円筒体内で二つの内枠B,Bを円筒状に合わせ、外枠A,Aの円筒体と同心に配置すると、外枠Aの内面と内枠Bの外面が一定の間隔で離間し、外枠A,A及び内枠B,B間に円環状空間が形成される。
【0007】
そこで、円環状空間の上下開放端を閉鎖した状態で、当該空間内にコンクリートを打設する(コンクリートを流し込む)。コンクリートが固まれば、内枠B,Bを取り去り、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が完成する。セグメント形立坑ケーシング1の製造現場と施工現場とが離れている場合は、各所の締結具6,…を緩めて取り外し、セグメント毎に分割して運搬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−320702号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたセグメント形立坑ケーシング1には、以下のような問題がある。
【0010】
外枠Aは、上述のとおり、鋼板3の内面側に該内面と所定間隔を有して鉄筋が配筋され、一方、内枠Bは、上述のとおり、鋼板15の外面側の複数の所定位置にそれぞれインサート要素が位置決めされている。従って、内枠Bを外枠A,Aの円筒体内に挿入するにあたり、内枠Bを吊り上げ、そのまま外枠A,Aの円筒体内に降ろそうとしても、内枠Bのインサート要素が外枠A,Aの鉄筋と干渉し、内枠Bを外枠A,Aの円筒体内に挿入することができない。そのため、内枠Bの両端部間が狭まるように内枠Bを変形させて径を小さくした状態で、内枠Bを吊り上げ、外枠A,Aの円筒体内に降ろし、外枠A,Aの円筒体内で内枠Bの変形を解除するようにしている。
【0011】
内枠Bはこのようにして使われるため、少ない力で変形させることができるよう(可撓性が高くなるよう)、内枠Bの鋼板15の厚みは小さくなっている。従って、内枠Bの上記した変形、解除が繰り返されると、内枠Bは歪み(塑性変形し)、内枠Bの真円度が悪くなる。内枠Bは、セグメント形立坑ケーシング1の内面を形成するためのものであるから、内枠Bの真円度が悪くなると、セグメント形立坑ケーシング1の内面の寸法精度に影響が出る。立坑ケーシングは、最終形態として、その内面の寸法精度が要求されるため、内面の寸法精度が悪くなったセグメント形立坑ケーシング1は不適合とされる。そうならないようにするためには、内枠Bの変形が進行する前に、内枠Bを改修しておく必要が生じる。
【0012】
また、セグメント形立坑ケーシング1のコンクリート2は、上述のとおり、内面側で開口する空間部5が形成されている。施工現場でセグメント形立坑ケーシング1の接合作業が完了すると、この空間部5にモルタル等の充填剤が詰められるが、コンクリート2の内面とこの充填剤が固化した後の外面とを完全に面一とすることは難しい。また、コンクリート2の内面と固化した充填剤の外面との境界が目立ち、見た目が悪い。見た目の悪さは、コンクリート2の内面と固化した充填剤の外面とに跨って化粧処理を施すことで、解消できるが、そのために、時間とコストがかかる。
【0013】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、これらの問題を一回的に解決することができるセグメント形立坑ケーシングの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るセグメント形立坑ケーシングの製造方法は、分割形状に成形されたコンクリートと、該コンクリートの外周を覆う鋼板と、該鋼板のそれぞれ端部から内方に延びる接合用ブラケットとが一体化されたセグメント形立坑ケーシングを製造する方法であって、内枠を配置する工程と、前記鋼板及び前記接合用ブラケットを含んで構成される構造物を外枠とし、複数の外枠を、前記内枠を取り囲むようにして接合する工程と、前記複数の外枠の内面と前記内枠の外面との間に形成される環状空間に前記コンクリートを注入する工程と、該コンクリートを乾燥、固化させる工程と、前記複数の外枠同士の接合を解除し、それぞれ外枠を前記内枠から分離する工程とを備え、分離された外枠にコンクリートが一体化したものをセグメント形立坑ケーシングとする。
【0015】
かかる構成によれば、内枠を縮めたり、元に戻したりを繰り返して使用する従来の方法とは異なり、内枠が固定となっている。従って、内枠は変形しにくい。そのため、セグメント形立坑ケーシングの内面の寸法精度が悪くなることはない。また、内枠が変形しにくいため、内枠の改修工事も不要となる。
【0016】
また、本発明においては、前記外枠の端部に、外面側に開口する空間部が形成され、前記複数の外枠同士を接合する際、空間部を介して締結具を操作する構成を採用することができる。
【0017】
かかる構成によれば、締結具の締結作業あるいは緩め作業を行うためのアクセス空間を構成する空間部は、外枠の外面側で開口するようになっている。即ち、空間部が外枠の内面側で開口する従来の外枠と異なり、空間部が外枠の内面側で開口していない。従って、空間部を充填剤で充填するとした場合、それがセグメント形立坑ケーシングの内面側に表れることはない。そのため、セグメント形立坑ケーシングの内面は、化粧処理を施さずともきれいな仕上がり面(真円度が高い内枠の表面形状を転写した表面)となる。従って、化粧処理に要する時間、コストを削減することができる。従来の外枠は、空間部が外枠の内面側で開口するものであるため、コンクリートが固化した後、内枠を取り外さずして、外枠を分解することはできない。これに対し、空間部が外枠の外面側で開口する構成を採用すれば、内枠を取り外さずとも、外枠を分解することができる。このため、内枠を固定式にすることができて、上記問題を解決することができるのである。
【0018】
また、本発明においては、前記コンクリートを注入する工程に先立ち、前記環状空間の上側開放端及び下側開放端を閉鎖するステップをさらに備えるようにするのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、セグメント形立坑ケーシングを高さ方向に積み重ねていく際の接合面を所期の形状に仕上げることができる。
【0020】
また、本発明においては、前記内枠は、円筒状あるいは円柱状であり、前記外枠は、円筒体を所定数に分割した形状である構成を採用することができる。
【0021】
かかる構成によれば、円筒体を分割した形状のセグメント形立坑ケーシングを製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上の如く、本発明によれば、内面の寸法精度が高く、且つ内面がきれいに仕上がるセグメント形立坑ケーシングを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを二つ円筒状に接合した状態の該接合部の拡大平面断面図、(b)は、同接合部のうち、ノックピンがある箇所の拡大平面断面図、を示す。
【図2】(a)は、同接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、(b)は、同正面図、を示す。
【図3】(a)は、空間部の開口を塞ぐ蓋板の正面図、(b)は、空間部が蓋板で塞がれた状態の拡大平面断面図、を示す。
【図4】(a)は、同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングの高さ方向における接合部の拡大正面図、(b)は、同接合部のうち、ノックピンがある箇所の拡大正面断面図、を示す。
【図5】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、ベース上に内枠及び下側端面枠が配置された状態、(b)は、二つの外枠をベース上に配置しようとする状態、を示す。
【図6】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、ベース上に二つの外枠が内枠を取り囲むようにして円筒状に合わされ、外枠と内枠との間に円環状空間が形成された状態、(b)は、二つの上側端面枠を円環状空間の上側開放端を塞ぐように配置しようとする状態、を示す。
【図7】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、円環状空間の上側開放端を塞ぐようにして二つの上側端面枠が円環状に合わされた状態、(b)は、外枠の周方向における接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、を示す。
【図8】同実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングを製造する工程を説明するための図であって、(a)は、円環状空間内にコンクリートが打設されて完成した二つのセグメント形立坑ケーシングを内枠から外した状態、(b)は、完成した二つのセグメント形立坑ケーシングを円筒状に接合し、これを高さ方向に接合していく状態、を示す。
【図9】(a)は、従来のセグメント形立坑ケーシングを二つ円筒状に接合した状態の平面図、(b)は、(a)のX−X線断面図、を示す。
【図10】(a)は、同従来のセグメント形立坑ケーシングの平面図、(b)は、正面図、を示す。
【図11】(a)は、同従来のセグメント形立坑ケーシングの周方向における接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、(b)は、同従来のセグメント形立坑ケーシングを製造する工程における、外枠の周方向における接合部のうち、空間部がある箇所の拡大平面断面図、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシングについて、図1〜図4を参酌して説明する。尚、従来のセグメント形立坑ケーシングと同一もしくは関連する構成については、同じ符号を用いている。
【0025】
本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1は、半円筒体であり、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1の端部同士を接合することで、円筒体が形成される。そして、この円筒体を高さ方向(軸方向)に適宜個数だけ連続して接合することで、立坑ケーシングが形成される。各セグメント形立坑ケーシング1は、図1(a)に示す如く、半円筒状に成形されたコンクリート2と、該コンクリート2の外周を覆う鋼板3とを備える。
【0026】
鋼板3のそれぞれ端部(周方向における円弧の端部)には、鋼製のブラケット4が(例えば溶接により)接合されている。該ブラケット4は、所定幅を有し、鋼板3のそれぞれ端部から径内方向に延び、コンクリート2の端部(周方向における円弧の端部)を覆っている。
【0027】
また、図1(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の端部には、高さ方向の例えば上下の2箇所に、スリーブ7が埋設(インサート)されている。スリーブ7の一端部は、ブラケット4に形成された穴に挿入され、ブラケット4の表面(接合面)と面一になっている。従って、スリーブ7は、ブラケット4に対して直交に配置されている。二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が高さを揃えて円筒状に合わさった状態で、一方のセグメント形立坑ケーシング1のスリーブ7と、他方のセグメント形立坑ケーシング1のスリーブ7は、同軸となる。そこで、両スリーブ7,7内に跨ってノックピン8を挿入することで、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1は、周方向及び高さ方向で正確に位置決めされる。
【0028】
また、図2(a),(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の一端部には、高さ方向の例えば上中下の3箇所に、外面側で開口する空間部5が形成されている。具体的には、コンクリート2の一端部に、外面側で開口する空間部5が形成され、該空間部5の位置、形状に対応して、鋼板3に切欠窓3aが形成されている。
【0029】
空間部5は、一端部がブラケット4の裏面に接続された上壁5a及び下壁5bと、該上壁5a及び下壁5bの他端部同士を接続する側壁5cと、上壁5a、下壁5b及び側壁5cのそれぞれ奥側端部を接続する奥壁5dとによって箱型に区画されている。切欠窓3aは、上壁5a、下壁5b及び側壁5cの手前側端部に沿った形状となっている。
【0030】
また、空間部5は、ブラケット4(の裏面)と接しており、該ブラケット4の空間部5に面する箇所に、ボルトからなる締結具6を挿通させるための貫通穴が形成されている。一方、セグメント形立坑ケーシング1の他端部には、当該貫通穴に対応した箇所に、同じく貫通穴が形成されると共に、ネジ穴付きスリーブ9が埋設(インサート)されている。従って、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が複数のノックピン8,…により位置合わせされた状態で、一方のセグメント形立坑ケーシング1の一端部の貫通穴、他方のセグメント形立坑ケーシング1の他端部の貫通穴及びネジ穴付きスリーブ9は、同軸となる。そこで、一方のセグメント形立坑ケーシング1の外面側から空間部5内にボルト6を挿入し、該ボルト6を二つの貫通孔に通し、ネジ穴付きスリーブ9の雌ネジに螺入させて締め付けることで、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1は、複数の締結具6,…で接合された円筒体となる。
【0031】
尚、空間部5を区画する上壁5a、下壁5b、側壁5c及び奥壁5dは、セグメント形立坑ケーシング1の一端部において、鋼板3の内面とブラケット4の裏面とに跨って接続されることで、鋼板3に対するブラケット4の取り付け強度を高めている。そこで、セグメント形立坑ケーシング1の他端部において、鋼板3に対するブラケット4の取り付け強度を高めるために、鋼板3の内面とブラケット4の裏面とに跨ってリブ10が接続されている。
【0032】
空間部5は、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が円筒状に接合された後、不要となるため、図3(a)に示される蓋板11で塞がれる。蓋板11は、切欠窓3aよりも僅かに小さい形状とされ、切欠窓3a内に挿入された状態(空間部5の開口が塞がれた状態)で、鋼板3と面一になる。
【0033】
蓋板11には、充填穴11aが形成されている。本実施形態においては、充填穴11aは、2箇所に形成されている。空間部5が蓋板11で塞がれ、密閉空間になった状態で、蓋板11の充填穴11aから充填剤が注入され、図3(b)に示す如く、空間部5内を充填剤で充填する。これは液漏れ対策の一環である。
【0034】
図4(a),(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の上端面及び下端面には、それぞれ周方向に沿ってシール溝2aが形成されている。セグメント形立坑ケーシング1,1が上下に重なり、下側のセグメント形立坑ケーシング1の上端面と、上側のセグメント形立坑ケーシング1の下端面とが対向した状態で、下側のセグメント形立坑ケーシング1の上端面のシール溝2aと上側のセグメント形立坑ケーシング1の下端面のシール溝2aが一つの溝を構成する。ここにパッキン(図示しない)を配置することで、上下のセグメント形立坑ケーシング1,1間にシール作用が得られる。
【0035】
また、図4(a)に示す如く、ブラケット4の表面(接合面)にも、高さ方向に沿ってシール溝4aが形成されている。ここにパッキン(図示しない)を配置することで、周方向におけるセグメント形立坑ケーシング1,1の分割面(接合面)間にシール作用が得られる。
【0036】
また、図4(b)に示す如く、セグメント形立坑ケーシング1の上端部及び下端部には、周方向の例えば等分4箇所に、スリーブ12が埋設(インサート)されている。スリーブ12の一端部は、セグメント形立坑ケーシング1の上端面及び下端面(接合面)、より詳しくは、コンクリート2の上端面及び下端面(接合面)と面一になっている。従って、スリーブ12は、高さ方向に沿って配置されている。二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が上下に重なった状態で、下側のセグメント形立坑ケーシング1の上端部のスリーブ12と、上側のセグメント形立坑ケーシング1の下側のスリーブ12は、同軸となる。そこで、両スリーブ12,12内に跨ってノックピン13を挿入することで、上下のセグメント形立坑ケーシング1,1は、互いに周方向で正確に位置決めされると共に、周方向において強固に連結される。
【0037】
本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1は以上の構成からなり、次に、このセグメント形立坑ケーシング1の製造方法について、図5〜図8を参酌して説明する。まず、図5(a)に示す如く、ベースC上に内枠B及び下側端面枠Dが配置された状態にする。あるいは、ベースC上に内枠B及び下側端面枠Dが固定され、一体化されたものを用意する。
【0038】
本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法が従来のものと異なる最大のポイントは、内枠Bが固定枠となっているか、分割式になっているかの違いである。本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法は、内枠Bとして固定枠を使用する。固定枠とは、従来のセグメント形立坑ケーシング1の製造方法のように、内枠Bを変形させることがない形態の枠である。本実施形態においては、内枠Bが初めから円筒状となっている。また、内枠Bの真円度を維持させるため、内枠Bを構成する鋼板15の内面には、適宜、縦方向のリブ及び横方向のリブ(例えば、環状リブ)が配設され、剛性が高い内枠Bとなっている。尚、内枠Bが分割式になっていても、それが円筒状に接合された状態で使用されるならば、それも固定枠である。
【0039】
下側端面枠Dは、その内径が内枠Bの外径と一致ないし略一致する円環体からなり、セグメント形立坑ケーシング1の下端面(より詳しくは、コンクリート2の下端面)を形成するためのものである。従って、下側端面枠Dの上面には、セグメント形立坑ケーシング1の下端面のシール溝2aを形成するための環状突条(図示しない)が形成され、また、インサート要素の一つとして、必要数のスリーブ12,…が位置決めされている。
【0040】
次に、図5(b)に示す如く、二つの外枠A,Aを用意する。外枠Aは、セグメント形立坑ケーシング1からコンクリート2を除いた構造物、即ち、鋼板3、ブラケット4(そして、図示しないが、必要に応じて、鋼板3の内面側に該内面と所定間隔を有して配筋される鉄筋や、鋼板3の内面側の複数の所定位置にそれぞれ位置決めされるインサート要素)で構成される構造物である。
【0041】
そして、図6(a)に示す如く、二つの外枠A、AをベースC上に配置する。この際、一方の外枠Aのブラケット4の貫通穴と他方の外枠Aのブラケット4の貫通穴とが合致するように、且つ、二つの外枠A,Aが内枠Bを取り囲むように、二つの外枠A,Aを円筒状に合わせ、この状態で、外枠Aの外面側から各空間部5内にボルト6を挿入し、重なり合ったブラケット4,4の貫通穴にボルト6を通し、ネジ穴付きスリーブ9の雌ネジにボルト6を螺入させて締め付け、二つの外枠A,Aを複数の締結具6,…で接合して円筒体にする。尚、空間部5が外枠Aの外面側で開口しており、締結具6の締結作業は、外枠Aの外面側から行うことになる。従って、外枠A,Aの円筒体内に内枠Bがあっても、締結作業に支障は生じない。
【0042】
内枠Bの径は、外枠Aの径よりも小さくなっている。そのため、二つの外枠A,Aを、内枠Bを取り囲むようにして円筒状に合わせ、内枠Bと同心に配置することで、外枠Aの内周面と内枠Bの外周面が一定の間隔で離間し、外枠A,A及び内枠B間に円環状空間が形成される。
【0043】
次に、図6(b)に示す如く、半割にされた上側端面枠E,Eを用意する。そして、図7(a)に示す如く、二つの上側端面枠E,Eを円環状に合わせ、円環状空間の上側開放端を塞ぐようにして外枠A,A上に配置する。組み合わされた上側端面枠E,Eは、下側端面枠Dと同様、内径が内枠Bの外径と一致ないし略一致する円環体からなり、セグメント形立坑ケーシング1の上端面(より詳しくは、コンクリート2の上端面)を形成するためのものである。従って、上側端面枠E,Eの下面には、セグメント形立坑ケーシング1の上端面のシール溝2aを形成するための環状突条(図示しない)が形成され、また、インサート要素の一つとして、必要数のスリーブ12,…が位置決めされている。尚、上側端面枠E,Eは、分割式ではなく、一つの円環体であってもよい。
【0044】
図7(b)は、外枠Aの周方向における接合部のうち、空間部5がある箇所の拡大平面断面図である。内枠Bの回りに外枠A,Aが同心に配置された状態では、上述のとおり、外枠A,Aの内周面と内枠Bの外周面が一定の間隔で離間し、外枠A,A及び内枠B間に円環状空間Fが形成される。円環状空間Fは、外方が外枠A,Aにより閉止され、内方が内枠Bにより閉止され、下方が下側端面枠Dにより閉止され、上方が上側端面枠Eにより閉止された密閉空間である。そこで、当該空間内にコンクリートを打設する(コンクリートを流し込む)。
【0045】
尚、空間部5においては、該空間部5を区画する上壁5a、下壁5b、側壁5c及び奥壁5dは、互いに隙間なく接続され、また、外枠Aの鋼板3やブラケット4とも隙間なく接続されている。即ち、上壁5a、下壁5b、側壁5c及び奥壁5dは、円環状空間と空間部5とを完全に(液密に)仕切っている。従って、円環状空間に流し込まれたコンクリートあるいはその水成分が空間部5から外部に漏れ出ることはない。
【0046】
そして、コンクリートが固まれば、外枠A,Aの各所の締結具6,…を緩めて取り外す。コンクリートは、それぞれ外枠Aの内面に固着しているので、これがセグメント形立坑ケーシング1,1となる。図8(a)に示す如く、外枠A,Aを左右に開けば、二つのセグメント形立坑ケーシング1,1が完成する。
【0047】
そして、セグメント形立坑ケーシング1はそのまま分割された状態で施工現場に運搬され、図8(b)に示す如く、組み合わせて立坑ケーシングを形成する。
【0048】
以上、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、内枠Bを縮めたり、元に戻したりを繰り返して使用する従来の方法とは異なり、内枠Bが固定となっている。従って、内枠Bの剛性が高いことと相まって、内枠Bは変形しにくい。そのため、セグメント形立坑ケーシング1の内面の寸法精度が悪くなる要因は基本的にはない。また、内枠Bが変形しにくいため、内枠Bの改修工事も不要である。
【0049】
また、締結具6の締結作業及び緩め作業を行うためのアクセス空間を構成する空間部5は、外枠Aの外面側で開口するようになっている。即ち、空間部5が外枠Aの内面側で開口する従来の外枠Aと異なり、本実施形態に係る外枠Aでは、空間部5が外枠Aの内面側で開口していない。従って、空間部5を充填剤で充填するにしても、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1では、それが内面側に表れることはない。そのため、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の内面は、化粧処理を施さずともきれいな仕上がり面(真円度が高い内枠Aの表面形状を転写した表面)となる。従って、化粧処理に要する時間、コストを削減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、上述の如く、内枠Bは変形しにくい。従って、内枠Bを構成する鋼板15の外面に高さ方向に沿って取り付けられた突条16(図7(b)参照)は、外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の内側端面に確実に当接する。従来の内枠Bは変形しやすく、そうなると、突条16と外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の内側端面との間に隙間が形成され、ここからコンクリートが漏れ出ることがあった。しかし、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、このような隙間が形成されることはないため、コンクリートが漏れ出るおそれはない。
【0051】
また、本実施形態に係るセグメント形立坑ケーシング1の製造方法によれば、内枠Bを組み合わせ、また、分解する必要がないため、製造にかかる時間及びコストを削減することができ、量産に対応できる。また、内枠Bの改修工事を含むメンテナンス費用が削減されるため、従来に比べ、セグメント形立坑ケーシング1を安価に製造することができる。
【0052】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、外枠Aは二分割式であったが、分割数は特にこれに限定されるものではなく、外枠Aは、例えば、三分割式、四分割式であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、締結具として、ボルト6と、外枠Aのブラケット4に固定されてコンクリート注入後にインサートされるネジ穴付きスリーブ9(一種のナット)との組み合わせが用いられているが、従来と同様、ボルトとナットの組み合わせによる締結具6を採用することも可能である。但し、この場合、ナットも作業上、操作対象となるため、空間部5は、セグメント形立坑ケーシング1の一端部だけでなく、他端部にも形成されなければならない(図11(a),(b)参照)。
【0055】
また、上記実施形態においては、空間部5は、箱形、即ち、四角体形状に形成されているが、その形状は特に限定されない。要は、外枠Aあるいはセグメント形立坑ケーシング1の外面側から工具あるいは手がアクセス可能であれば、いかなる形状であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、空間部5は、最終的に充填剤により埋められるが、そうしなくてもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、内枠Bの外面に設けた突条16は、外枠A,Aの重なり合ったブラケット4,4の厚みと同等の幅を有するものであったが(図7(b)参照)、上述のとおり、当該ブラケット4,4の内側端面に確実に当接するものであるため、その幅をより小さくしてもよい。そうなると、例えば図1(a)に示されるような、セグメント形立坑ケーシング1,1の接合部における内面側のスリット痕1aをより細くすることができ、内面仕上がりをさらに向上させることができる。
【0058】
また、上記実施形態においては、外枠Aあるいはセグメント形立坑ケーシング1、そして、内枠Bは、円筒形であったが、断面形状は円筒形に限定されず、例えば、楕円形の断面形状、四角乃至略四角形状の断面形状、多角形の断面形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…セグメント形立坑ケーシング、1a…スリット痕、2…コンクリート、2a…シール溝、3…鋼板、3a…切欠窓、4…ブラケット、4a…シール溝、5…空間部、5a…上壁、5b…下壁、5c…側壁、5d…奥壁、6…締結具、7…スリーブ、8…ノックピン、9…ネジ穴付きスリーブ、10…リブ、11…蓋板、11a…充填穴、12…スリーブ、13…ノックピン、15…鋼板、16…突条、A…外枠、B…内枠、C…ベース、D…下側端面枠、E…上側端面枠、F…円環状空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割形状に成形されたコンクリートと、該コンクリートの外周を覆う鋼板と、該鋼板のそれぞれ端部から内方に延びる接合用ブラケットとが一体化されたセグメント形立坑ケーシングを製造する方法であって、
内枠を配置する工程と、
前記鋼板及び前記接合用ブラケットを含んで構成される構造物を外枠とし、複数の外枠を、前記内枠を取り囲むようにして接合する工程と、
前記複数の外枠の内面と前記内枠の外面との間に形成される環状空間に前記コンクリートを注入する工程と、
該コンクリートを乾燥、固化させる工程と、
前記複数の外枠同士の接合を解除し、それぞれ外枠を前記内枠から分離する工程とを備え、
分離された外枠にコンクリートが一体化したものをセグメント形立坑ケーシングとする
セグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【請求項2】
前記外枠の端部に、外面側に開口する空間部が形成され、前記複数の外枠同士を接合する際、空間部を介して締結具を操作する請求項1に記載のセグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【請求項3】
前記コンクリートを注入する工程に先立ち、前記環状空間の上側開放端及び下側開放端を閉鎖するステップをさらに備える請求項1又は請求項2に記載のセグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【請求項4】
前記内枠は、円筒状あるいは円柱状であり、前記外枠は、円筒体を所定数に分割した形状である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のセグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【請求項1】
分割形状に成形されたコンクリートと、該コンクリートの外周を覆う鋼板と、該鋼板のそれぞれ端部から内方に延びる接合用ブラケットとが一体化されたセグメント形立坑ケーシングを製造する方法であって、
内枠を配置する工程と、
前記鋼板及び前記接合用ブラケットを含んで構成される構造物を外枠とし、複数の外枠を、前記内枠を取り囲むようにして接合する工程と、
前記複数の外枠の内面と前記内枠の外面との間に形成される環状空間に前記コンクリートを注入する工程と、
該コンクリートを乾燥、固化させる工程と、
前記複数の外枠同士の接合を解除し、それぞれ外枠を前記内枠から分離する工程とを備え、
分離された外枠にコンクリートが一体化したものをセグメント形立坑ケーシングとする
セグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【請求項2】
前記外枠の端部に、外面側に開口する空間部が形成され、前記複数の外枠同士を接合する際、空間部を介して締結具を操作する請求項1に記載のセグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【請求項3】
前記コンクリートを注入する工程に先立ち、前記環状空間の上側開放端及び下側開放端を閉鎖するステップをさらに備える請求項1又は請求項2に記載のセグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【請求項4】
前記内枠は、円筒状あるいは円柱状であり、前記外枠は、円筒体を所定数に分割した形状である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のセグメント形立坑ケーシングの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−64270(P2013−64270A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203482(P2011−203482)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(390000332)栗本コンクリート工業株式会社 (29)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(390000332)栗本コンクリート工業株式会社 (29)
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