セグメント用継手
【課題】セグメント同士をワンタッチで強固に結合することができ、また、セグメントに大きな衝撃や振動が作用しても、セグメント同士の結合が行えなくなるといった問題がなく、しかも、安価に製造することができる。
【解決手段】シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手1と、雄継手1が挿入される雌継手4とからなるセグメント用継手において、雄継手1は、棒状をなし、1つの段部4が形成されたくびれ部2と、先細りテーパー状の先端部3とを有し、雌継手5は、切り込み6が形成された管状本体7と、切り込み6内に嵌め込まれるキー部材8と、キー部材8に、これを切り込み6内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段としての弾性体9とを備え、段部4は、雄継手1の先端部3側に形成され、くびれ部2は、上流側くびれ部2Aと下流側くびれ部2Bとからなっている。
【解決手段】シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手1と、雄継手1が挿入される雌継手4とからなるセグメント用継手において、雄継手1は、棒状をなし、1つの段部4が形成されたくびれ部2と、先細りテーパー状の先端部3とを有し、雌継手5は、切り込み6が形成された管状本体7と、切り込み6内に嵌め込まれるキー部材8と、キー部材8に、これを切り込み6内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段としての弾性体9とを備え、段部4は、雄継手1の先端部3側に形成され、くびれ部2は、上流側くびれ部2Aと下流側くびれ部2Bとからなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セグメント用継手、特に、トンネルをシールド工法により掘進する際に使用する覆工用セグメント同士をワンタッチで結合することができるセグメント用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル工事用のセグメント同士をワンタッチで結合することができるワンタッチ式継手の一例が特許文献1(特開2003−155896号公報)に開示されている。以下、このワンタッチ式継手を従来継手といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図10は、結合前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図、図11は、結合完了直前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図、図12は、従来継手の環状弾性部材を示す部分切り欠き斜視図である。
【0004】
図10から図12において、11は、棒状雄継手であり、軸方向に間隔をあけて形成された前方および後方くびれ部12A、12Bと、前方および後方くびれ部12A、12Bにより形成された、先細りテーパー状の前方および後方突出部13A、13Bとからなっている。
【0005】
14は、雄継手11が挿入される円筒状雌継手であり、その内周部に軸方向に間隔をあけて形成された前方および後方環状溝15A、15Bと、前方および後方環状溝15A、15B内に嵌め込まれる前方および後方環状弾性部材16A、16Bと、前方および後方環状弾性部材16A、16B内に装着され、前方および後方環状弾性部材16A、16Bの拡径を保持する前方および後方拡径保持具17A、17Bとからなっている。前方および後方拡径保持具17A、17Bは、雄継手11の挿入により、押し込まれて、前方および後方環状弾性部材16A、16Bから外れるようになっている。この際、後方拡径保持具17Bは、前方拡径保持具17A内に嵌まり込む。
【0006】
前方および後方環状弾性部材16A、16Bは、図12に示すように、複数個に分割された、太径の鉄線等からなる環状芯材18と、芯材18の周囲に巻かれた、ばね鋼等からなるコイルスプリング19とからなっている。
【0007】
このように構成されている従来継手によりセグメント同士を、その軸方向に結合するには、図13に示すように、セグメント20の一方の軸方向結合面(S1)に雄継手11を、その突出部13A、13Bを突出させて固定し、他方の軸方向結合面(S2)に雌継手14を固定する。
【0008】
そして、図11に示すように、雄継手11を雌継手14内に挿入する。この際、雄継手11の前方突出部13Aは、後方拡径保持具17Bを押し込み、続いて、前方拡径保持具17Aを押し込む。この際、後方拡径保持具17Bは、前方拡径保持具17A内に嵌まり込む。このようにして、前方および後方拡径保持具17A、17Bが前方および後方環状弾性部材16A、16Bから外れると、前方および後方環状弾性部材16A、16Bは、縮径して雌継手14の前方および後方環状溝15A、15B内に嵌まり込む。この結果、継手部に引き抜き力が作用しても、環状弾性部材16A、16Bがせん断力を受けるので、雄継手11は、雌継手14内から抜け出ず、セグメント20同士が結合される。
【0009】
また、雄継手11のくびれ部と雌継手14の環状溝を、12A、12B、15A、15Bのようにそれぞれ2段設け、雄継手11のくびれ部の間隔と、雌継手14の環状溝の間隔にギャップを設けることによって、製作誤差や施工誤差によりセグメント間に間隔(目開き)が生じても、弾性部材が何れかのくびれ部と環状溝とに係合して、引張りに抗するせん断力が生じるので、セグメント同士を確実に結合することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2003−155896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来継手によれば、セグメント20同士をワンタッチで結合することができるが、以下のような問題があった。
【0012】
(1)前方および後方拡径保持具17A、17Bは、雄継手11の挿入前においては、前方および後方環状弾性部材16A、16Bの収縮力により保持されているので、大きな衝撃や振動がセグメントに作用した場合、前方および後方拡径保持具17A、17Bが外れ、前方および後方環状弾性部材16A、16Bが雌継手14の前方および後方環状溝15A、15Bから脱落する恐れがある。前方および後方環状弾性部材16A、16Bが一旦、脱落すると、その後の雄継手11と雌継手14との結合が行えない。
【0013】
(2)雌継手は、構造上の複雑さから鋳造あるいは鍛造により製造するか、棒鋼等から旋盤加工および切削加工を施すことにより製造される。鋳造あるいは鍛造により製造する場合には、専用の金型が必要となる。棒鋼から製造する場合には、旋盤等で外形を形成し、内周部の孔明け加工、さらに、内周部に設けられる前方および後方の環状溝加工が必要となり、製造工程が煩雑となる。前方および後方の環状溝は、鋳造により鋳抜く他、切削加工により形成する方法もあるが、全周に亘って環状弾性部材より大きい幅で精度良く形成しなければならない。このように、雌継手を鋳造あるいは鍛造により製造する場合には、金型にコストがかかり、棒鋼から製造する場合にも加工が煩雑となり製造コストがかかる。
【0014】
(3)環状弾性部材16A、16Bの製造にコストがかかる。すなわち、環状弾性部材16A、16Bは、図12に示すように、コイルスプリング19内に複数個の芯材18を通し、コイルスプリング19の端部同士を連結することによって製造される。そして、コイルスプリング19の端部同士の連結は、コイルスプリング19の片側端部を絞り込み、所要量だけねじ戻した状態で他方の端部に挿入し、ねじ戻し量だけ解放してねじ込むことによって行われるが、芯材18がある関係で、この作業は、煩雑であり、結果的に環状弾性部材16A、16Bの製造にコストがかかる。
【0015】
従って、この発明の目的は、セグメント同士をワンタッチで強固に結合することができ、また、セグメントに大きな衝撃や振動が作用しても、セグメント同士の結合が行えなくなるといった問題がなく、しかも、安価に製造することができるセグメント用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、上述の目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0017】
請求項1記載の発明は、シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、前記雄継手は、棒状をなし、1つの段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部は、前記雄継手の前記先端部側に形成されていることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項2記載の発明は、シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、前記雄継手は、棒状をなし、複数個の段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部の高さは、前記雄継手の前記先端部側に向かうに従って高く形成されていることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記雌継手の前記切り込みは、対向して一対形成されていることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、前記キー部材は、棒状部材からなっていることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1から4の何れか1つに記載の発明において、前記押し付け力付与手段は、弾性体からなっていることに特徴を有するものである。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において前記弾性体は、コイルばね、板ばねまたはゴムバンドからなっていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、セグメント同士をワンタッチで強固に結合することができ、また、従来継手のように、セグメントに大きな衝撃や振動が作用しても、セグメント同士の結合が行えなくなるといった問題がなく、しかも、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、この発明のセグメント用継手の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、この発明のセグメント用継手を示す斜視図、図2は、他の形状の雄継手を示す斜視図、図3は、この発明の継手が取り付けられたセグメントを示す斜視図、図4は、この発明のセグメント用継手による結合工程を示す断面図であり、同図(A)は、結合前の状態を示す断面図、同図(B)は、くびれ部の段部にキー部材が入り込んだ状態を示す断面図、同図(C)は、結合が完了した状態を示す断面図である。
【0026】
図1において、1は、棒状雄継手であり、くびれ部2と、先細りテーパー状の先端部3とからなっている。くびれ部2は、この中の先端部側3に形成された1つの段部4によって、2段に形成されている。雄継手1の挿入方向上流側のくびれ部を2A、下流側のくびれ部を2Bで示す。なお、段部4を複数個、形成しても良い。これについては後述する。雄継手1は、丸棒鋼を旋盤加工することによって容易に製造することができる。雄継手1の段部2Aが形成されたくびれ部2は、雄継手1の全周に形成しなくても、図2に示すように、雄継手1の一部に形成しても良い。
【0027】
5は、雄継手1が挿入される雌継手であり、外周部に切り込み6が形成された鋼管製本体7と、切り込み6内に嵌め込まれるキー部材8と、キー部材8に、これを切り込み6に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段としての弾性体9とからなっている。弾性体9は、コイルばね、板ばねまたはゴムバンド等であっても良い。この例では、弾性体9は、キー部材8の両端に固定された引っ張りコイルばねからなっている。
【0028】
切り込み6は、本体7に対向して2つ形成されている。切り込み6は、雄継手1が挿入される前は、キー部材8を所定間隔に保持し、雄継手挿入時には、キー部材8を雄継手1に弾性体9により押さえ付け、雄継手1の形状に応じたキー部材8の接近、離間移動のガイドの役目を有している。従って、切り込み6の深さは、この役目が発揮されるように適宜設定する。
【0029】
キー部材8は、棒鋼からなっていて、この棒鋼に、継手部に引張り力が作用したときのせん断力がかかる。従って、棒鋼は、このせん断力に十分に対抗できる強度を有している。棒鋼は、せん断力に応じて適宜、その材質、断面積等により設計することができる。キー部材8は、本体7のキー部材8内に、弾性力9の押し付け力により本体7の内側に向けてお互いに引き付けられることによって互いの間隔が保持される。
【0030】
このように、雌継手5は、切り込み6を形成した鋼管製本体7と、これらの切り込み6に入り込み、継手部に引張り力が作用したときのせん断力を受ける棒鋼からなるキー部材8と、このキー部材8に設ける弾性体9とによる簡単な構造からなるので、安価に製造することができる。すなわち、本体7には、継手部に引張り力が作用したとき、キー部材8にせん断力が働くのと同時に切り込み6にキー部材8により支圧応力がかかるので、本体7としては、支圧応力に抵抗できる材質および板厚を有する市販の鋼管等を用いることができる。
【0031】
本体7に形成する切り込みは、外周部の一部に設けるだけで良く、加工が簡単である。キー部材8は、継手部に引張り力が作用したときのせん断力に抵抗できる材質および断面であれば良く、市販材の棒鋼を長手方向に必要な長さで切断することによって製造することができる。弾性体9は、所定の押し込み力を付与できるものであれば良く、市販材のコイルばね等を使用することができ、複雑な加工を必要としない。
【0032】
このように、鋼管製本体、キー部材および弾性体は、市販材をベースにして製造することができ、加工が少ないので、安価に製造することができる。
【0033】
このように構成されている、この発明のセグメント継手によれば、以下のようにして、セグメント同士が結合される。
【0034】
図3に示すように、セグメント10の一方の軸方向結合面(S1)に雄継手1を、その先端部3を突出させて固定し、他方の軸方向結合面(S2)に雌継手5を固定する。この例のように鋼製セグメントの場合には、両継手1および5は、継手板(P)に固定する(図4参照)。この場合、雌継手5側の継手板(P)には、雄継手1の挿入口を設けることは勿論である。
【0035】
そして、図4(A)に示すように、一方のセグメント10Aに他方のセグメント10Bを接近させて、雄継手1の雌継手5内への挿入を開始する。挿入開始後、同図(B)に示すように、キー部材8が雄継手1の先端部3によって、弾性体9としての引っ張りコイルばねの弾性力に抗して押し広げられた後、弾性力により元の状態に復帰して、上流側くびれ部2Aに入り込む。この状態で雄継手1の雌継手5内への挿入が終わっても、キー部材8が上流側くびれ部2Aに入り込んで、先端部3と係合するので、継手間に引張力が作用しても、セグメント10A、10Bの結合が解除される恐れはない。なお、この場合には、セグメント10A、10B間に若干の隙間があく。
【0036】
さらに挿入が進むと、同図(C)に示すように、キー部材8は、下流側くびれ部2Bに入り込んで、セグメント10A、10Bが完全に結合される。キー部材8が下流側くびれ部2Bに入り込むと、キー部材8は、段部4と係合するので、継手間に引張力が作用しても、セグメント10A、10Bの結合が解除される恐れはない。
【0037】
上記結合工程を、図4の一部拡大図である図5を参照してさらに説明する。
【0038】
図5(A)は、キー部材8が段部4と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材8が段部4の上流側くびれ部2Aに入り込んで係合した状態であり、この状態では、矢印方向の引張り力が作用しても、セグメント10A、10B間の隙間(g)は、更に広がることなく、すなわち、目開きすることなくセグメント同士が結合される。
【0039】
隙間(g)は、例えば、芯ずれ、砂等の介在による施工誤差、あるいは、セグメントの製作誤差により生じ、これ以上セグメントを押し込めない。
【0040】
セグメント10A、10B間が施工誤差や製作誤差等により隙間(g)が生じない場合には、同図(C)に示すように、キー部材8が上流側くびれ部2Bに入り込んで係合し、図中、矢印方向の引張り力が作用しても、セグメント10A、10Bは、目開きすることなく結合される。
【0041】
次に、雄継手1に段部4を設けない場合の結合工程について、図6を参照しながら説明する。
【0042】
施工誤差や製作誤差等により隙間(g)を設定し、セグメント同士が結合できるようにくびれ部2を形成する。図6(A)は、キー部材8がくびれ部2と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材8がくびれ部2に入り込んで係合した状態であり、この状態では、図中、矢印方向の引張り力が作用しても、セグメント10A、10B間の隙間(g)は、更に広がることなく、すなわち、目開きすることなくセグメント同士が結合される。この場合は、この発明のように、段部を設けた場合と同じ作用をする。
【0043】
しかし、施工誤差や製作誤差等による隙間(g)が生じない場合には、同図(C)に示すように、図中、矢印方向の引張り力が作用すると、同図(D)に示すように、目開きが生じる。
【0044】
上記隙間(g)は、現場の状況(土圧、土質、線形等)やセグメントの形状および材質等から適宜、設定し、くびれ部および段部を設計する。後述する、複数個の段部を設ける場合も同様に、数段階の設計誤差や製作誤差に基づいて設計する。
【0045】
このように、製作誤差や施工誤差によりセグメント間に隙間(目開き)が生じた場合であっても、キー部材8には、引っ張りによるせん断力が生じ、セグメント同士を確実に結合することができる。
【0046】
この発明の継手によれば、このようにして、セグメント10A、10B同士が結合されるが、上述したように、雌継手5は、切り込み6を形成した鋼管製本体7と、これらの切り込みに6に入り込み、継手部に引張り力が作用したときのせん断力を受ける棒鋼からなるキー部材8と、このキー部材8に設けるコイルばね等からなる弾性体9とによる簡単な構造からなるので、複雑な構造の上記従来継手に比べて、継手の製造コストを低減させることができる。しかも、上記従来継手のように、セグメントに大きな衝撃や振動が作用しても、キー部材8は、これらが弾性体9により鋼管製本体7の切り込み6に強く押し付けられているので、本体7から脱落する恐れはなく、この結果、セグメント同士の結合が行えなくなるといった問題は起こらない。なお、本体7の内面と雄継手1の最大外径とにより形成される空隙により、セグメント結合時の芯ずれを吸収することができる。この空隙は、適宜、設定することができる。
【0047】
以上は、この発明を鋼製セグメントに適用した場合であるが、コンクリートセグメント、あるいは、鋼材とコンクリートとの合成セグメントに適用することができる。コンクリートセグメントの場合には、図7に示すように、雌継手5の周囲をボックス21で覆う必要がある。
【0048】
この発明の継手により、矩形セグメントを結合する場合には、図8に示すように、雄継手1を角形棒鋼により構成し、雌継手5を角鋼管により構成すると良い。
【0049】
以上は、雄継手1のくびれ部2を1つの段部4によって2段に形成した場合であるが、段部4を複数個設けても良い。図9に、段部4を2つ設けた例を示す。この場合、くびれ部2は、3つのくびれ部に形成される。くびれ部の数が多くなるほど、セグメント同士の結合間隔の微調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明のセグメント用継手を示す斜視図である。
【図2】他の形状の雄継手を示す斜視図である。
【図3】この発明の継手が取り付けられたセグメントを示す斜視図である。
【図4】この発明のセグメント用継手による結合工程を示す断面図であり、同図(A)は、結合前の状態を示す断面図、同図(B)は、くびれ部の段部にキー部材が入り込んだ状態を示す断面図、同図(C)は、結合が完了した状態を示す断面図である。この発明のセグメント用継手を示す斜視図である。
【図5】図4の一部拡大図であり、同図(A)は、キー部材が段部と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材が段部の上流側くびれ部に入り込んで係合した状態であり、同図(C)は、キー部材が段部の下流側くびれ部に入り込んで係合した状態である。
【図6】雄継手に段部を設けない場合の結合工程を示す図であり、同図(A)は、キー部材がくびれ部と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材がくびれ部に入り込んで係合した状態であり、同図(C)は、施工誤差や製作誤差等による隙間(g)が生じない場合の結合状態であり、同図(D)は、目開きが生じた状態である。
【図7】この発明のセグメント用継手をコンクリートセグメントに適用した場合の断面図である。
【図8】この発明の継手を矩形セグメントに適用した場合の雄継手および雌継手を示す斜視図である。
【図9】くびれ部に2つの段部を設けた、この発明の雄継手を示す断面図である。
【図10】結合前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図である。
【図11】結合完了直前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図である。
【図12】従来継手の環状弾性部材を示す部分切り欠き斜視図である。
【図13】従来継手が取り付けられたセグメントを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1:雄継手
2:くびれ部
2A:上流側くびれ部
2B:下流側くびれ部
3:先端部
4:段部
5:雌継手
6:切り込み
7:本体
8:キー部材
9:弾性体
10:セグメント
10A:一方のセグメント
10B:他方のセグメント
21:ボックス
11:雄継手
12A:前方くびれ部
12B:後方くびれ部
13A:前方突出部
13B:後方突出部
14:雌継手
15A:前方環状溝
15B:後方環状溝
16A:前方環状弾性部材
16B:後方環状弾性部材
17A:前方拡径保持具
17B:後方拡径保持具
18:芯材
19:コイルスプリング
20:セグメント
21:ボックス
【技術分野】
【0001】
この発明は、セグメント用継手、特に、トンネルをシールド工法により掘進する際に使用する覆工用セグメント同士をワンタッチで結合することができるセグメント用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル工事用のセグメント同士をワンタッチで結合することができるワンタッチ式継手の一例が特許文献1(特開2003−155896号公報)に開示されている。以下、このワンタッチ式継手を従来継手といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図10は、結合前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図、図11は、結合完了直前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図、図12は、従来継手の環状弾性部材を示す部分切り欠き斜視図である。
【0004】
図10から図12において、11は、棒状雄継手であり、軸方向に間隔をあけて形成された前方および後方くびれ部12A、12Bと、前方および後方くびれ部12A、12Bにより形成された、先細りテーパー状の前方および後方突出部13A、13Bとからなっている。
【0005】
14は、雄継手11が挿入される円筒状雌継手であり、その内周部に軸方向に間隔をあけて形成された前方および後方環状溝15A、15Bと、前方および後方環状溝15A、15B内に嵌め込まれる前方および後方環状弾性部材16A、16Bと、前方および後方環状弾性部材16A、16B内に装着され、前方および後方環状弾性部材16A、16Bの拡径を保持する前方および後方拡径保持具17A、17Bとからなっている。前方および後方拡径保持具17A、17Bは、雄継手11の挿入により、押し込まれて、前方および後方環状弾性部材16A、16Bから外れるようになっている。この際、後方拡径保持具17Bは、前方拡径保持具17A内に嵌まり込む。
【0006】
前方および後方環状弾性部材16A、16Bは、図12に示すように、複数個に分割された、太径の鉄線等からなる環状芯材18と、芯材18の周囲に巻かれた、ばね鋼等からなるコイルスプリング19とからなっている。
【0007】
このように構成されている従来継手によりセグメント同士を、その軸方向に結合するには、図13に示すように、セグメント20の一方の軸方向結合面(S1)に雄継手11を、その突出部13A、13Bを突出させて固定し、他方の軸方向結合面(S2)に雌継手14を固定する。
【0008】
そして、図11に示すように、雄継手11を雌継手14内に挿入する。この際、雄継手11の前方突出部13Aは、後方拡径保持具17Bを押し込み、続いて、前方拡径保持具17Aを押し込む。この際、後方拡径保持具17Bは、前方拡径保持具17A内に嵌まり込む。このようにして、前方および後方拡径保持具17A、17Bが前方および後方環状弾性部材16A、16Bから外れると、前方および後方環状弾性部材16A、16Bは、縮径して雌継手14の前方および後方環状溝15A、15B内に嵌まり込む。この結果、継手部に引き抜き力が作用しても、環状弾性部材16A、16Bがせん断力を受けるので、雄継手11は、雌継手14内から抜け出ず、セグメント20同士が結合される。
【0009】
また、雄継手11のくびれ部と雌継手14の環状溝を、12A、12B、15A、15Bのようにそれぞれ2段設け、雄継手11のくびれ部の間隔と、雌継手14の環状溝の間隔にギャップを設けることによって、製作誤差や施工誤差によりセグメント間に間隔(目開き)が生じても、弾性部材が何れかのくびれ部と環状溝とに係合して、引張りに抗するせん断力が生じるので、セグメント同士を確実に結合することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2003−155896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来継手によれば、セグメント20同士をワンタッチで結合することができるが、以下のような問題があった。
【0012】
(1)前方および後方拡径保持具17A、17Bは、雄継手11の挿入前においては、前方および後方環状弾性部材16A、16Bの収縮力により保持されているので、大きな衝撃や振動がセグメントに作用した場合、前方および後方拡径保持具17A、17Bが外れ、前方および後方環状弾性部材16A、16Bが雌継手14の前方および後方環状溝15A、15Bから脱落する恐れがある。前方および後方環状弾性部材16A、16Bが一旦、脱落すると、その後の雄継手11と雌継手14との結合が行えない。
【0013】
(2)雌継手は、構造上の複雑さから鋳造あるいは鍛造により製造するか、棒鋼等から旋盤加工および切削加工を施すことにより製造される。鋳造あるいは鍛造により製造する場合には、専用の金型が必要となる。棒鋼から製造する場合には、旋盤等で外形を形成し、内周部の孔明け加工、さらに、内周部に設けられる前方および後方の環状溝加工が必要となり、製造工程が煩雑となる。前方および後方の環状溝は、鋳造により鋳抜く他、切削加工により形成する方法もあるが、全周に亘って環状弾性部材より大きい幅で精度良く形成しなければならない。このように、雌継手を鋳造あるいは鍛造により製造する場合には、金型にコストがかかり、棒鋼から製造する場合にも加工が煩雑となり製造コストがかかる。
【0014】
(3)環状弾性部材16A、16Bの製造にコストがかかる。すなわち、環状弾性部材16A、16Bは、図12に示すように、コイルスプリング19内に複数個の芯材18を通し、コイルスプリング19の端部同士を連結することによって製造される。そして、コイルスプリング19の端部同士の連結は、コイルスプリング19の片側端部を絞り込み、所要量だけねじ戻した状態で他方の端部に挿入し、ねじ戻し量だけ解放してねじ込むことによって行われるが、芯材18がある関係で、この作業は、煩雑であり、結果的に環状弾性部材16A、16Bの製造にコストがかかる。
【0015】
従って、この発明の目的は、セグメント同士をワンタッチで強固に結合することができ、また、セグメントに大きな衝撃や振動が作用しても、セグメント同士の結合が行えなくなるといった問題がなく、しかも、安価に製造することができるセグメント用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、上述の目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0017】
請求項1記載の発明は、シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、前記雄継手は、棒状をなし、1つの段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部は、前記雄継手の前記先端部側に形成されていることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項2記載の発明は、シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、前記雄継手は、棒状をなし、複数個の段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部の高さは、前記雄継手の前記先端部側に向かうに従って高く形成されていることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記雌継手の前記切り込みは、対向して一対形成されていることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、前記キー部材は、棒状部材からなっていることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1から4の何れか1つに記載の発明において、前記押し付け力付与手段は、弾性体からなっていることに特徴を有するものである。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において前記弾性体は、コイルばね、板ばねまたはゴムバンドからなっていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、セグメント同士をワンタッチで強固に結合することができ、また、従来継手のように、セグメントに大きな衝撃や振動が作用しても、セグメント同士の結合が行えなくなるといった問題がなく、しかも、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、この発明のセグメント用継手の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、この発明のセグメント用継手を示す斜視図、図2は、他の形状の雄継手を示す斜視図、図3は、この発明の継手が取り付けられたセグメントを示す斜視図、図4は、この発明のセグメント用継手による結合工程を示す断面図であり、同図(A)は、結合前の状態を示す断面図、同図(B)は、くびれ部の段部にキー部材が入り込んだ状態を示す断面図、同図(C)は、結合が完了した状態を示す断面図である。
【0026】
図1において、1は、棒状雄継手であり、くびれ部2と、先細りテーパー状の先端部3とからなっている。くびれ部2は、この中の先端部側3に形成された1つの段部4によって、2段に形成されている。雄継手1の挿入方向上流側のくびれ部を2A、下流側のくびれ部を2Bで示す。なお、段部4を複数個、形成しても良い。これについては後述する。雄継手1は、丸棒鋼を旋盤加工することによって容易に製造することができる。雄継手1の段部2Aが形成されたくびれ部2は、雄継手1の全周に形成しなくても、図2に示すように、雄継手1の一部に形成しても良い。
【0027】
5は、雄継手1が挿入される雌継手であり、外周部に切り込み6が形成された鋼管製本体7と、切り込み6内に嵌め込まれるキー部材8と、キー部材8に、これを切り込み6に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段としての弾性体9とからなっている。弾性体9は、コイルばね、板ばねまたはゴムバンド等であっても良い。この例では、弾性体9は、キー部材8の両端に固定された引っ張りコイルばねからなっている。
【0028】
切り込み6は、本体7に対向して2つ形成されている。切り込み6は、雄継手1が挿入される前は、キー部材8を所定間隔に保持し、雄継手挿入時には、キー部材8を雄継手1に弾性体9により押さえ付け、雄継手1の形状に応じたキー部材8の接近、離間移動のガイドの役目を有している。従って、切り込み6の深さは、この役目が発揮されるように適宜設定する。
【0029】
キー部材8は、棒鋼からなっていて、この棒鋼に、継手部に引張り力が作用したときのせん断力がかかる。従って、棒鋼は、このせん断力に十分に対抗できる強度を有している。棒鋼は、せん断力に応じて適宜、その材質、断面積等により設計することができる。キー部材8は、本体7のキー部材8内に、弾性力9の押し付け力により本体7の内側に向けてお互いに引き付けられることによって互いの間隔が保持される。
【0030】
このように、雌継手5は、切り込み6を形成した鋼管製本体7と、これらの切り込み6に入り込み、継手部に引張り力が作用したときのせん断力を受ける棒鋼からなるキー部材8と、このキー部材8に設ける弾性体9とによる簡単な構造からなるので、安価に製造することができる。すなわち、本体7には、継手部に引張り力が作用したとき、キー部材8にせん断力が働くのと同時に切り込み6にキー部材8により支圧応力がかかるので、本体7としては、支圧応力に抵抗できる材質および板厚を有する市販の鋼管等を用いることができる。
【0031】
本体7に形成する切り込みは、外周部の一部に設けるだけで良く、加工が簡単である。キー部材8は、継手部に引張り力が作用したときのせん断力に抵抗できる材質および断面であれば良く、市販材の棒鋼を長手方向に必要な長さで切断することによって製造することができる。弾性体9は、所定の押し込み力を付与できるものであれば良く、市販材のコイルばね等を使用することができ、複雑な加工を必要としない。
【0032】
このように、鋼管製本体、キー部材および弾性体は、市販材をベースにして製造することができ、加工が少ないので、安価に製造することができる。
【0033】
このように構成されている、この発明のセグメント継手によれば、以下のようにして、セグメント同士が結合される。
【0034】
図3に示すように、セグメント10の一方の軸方向結合面(S1)に雄継手1を、その先端部3を突出させて固定し、他方の軸方向結合面(S2)に雌継手5を固定する。この例のように鋼製セグメントの場合には、両継手1および5は、継手板(P)に固定する(図4参照)。この場合、雌継手5側の継手板(P)には、雄継手1の挿入口を設けることは勿論である。
【0035】
そして、図4(A)に示すように、一方のセグメント10Aに他方のセグメント10Bを接近させて、雄継手1の雌継手5内への挿入を開始する。挿入開始後、同図(B)に示すように、キー部材8が雄継手1の先端部3によって、弾性体9としての引っ張りコイルばねの弾性力に抗して押し広げられた後、弾性力により元の状態に復帰して、上流側くびれ部2Aに入り込む。この状態で雄継手1の雌継手5内への挿入が終わっても、キー部材8が上流側くびれ部2Aに入り込んで、先端部3と係合するので、継手間に引張力が作用しても、セグメント10A、10Bの結合が解除される恐れはない。なお、この場合には、セグメント10A、10B間に若干の隙間があく。
【0036】
さらに挿入が進むと、同図(C)に示すように、キー部材8は、下流側くびれ部2Bに入り込んで、セグメント10A、10Bが完全に結合される。キー部材8が下流側くびれ部2Bに入り込むと、キー部材8は、段部4と係合するので、継手間に引張力が作用しても、セグメント10A、10Bの結合が解除される恐れはない。
【0037】
上記結合工程を、図4の一部拡大図である図5を参照してさらに説明する。
【0038】
図5(A)は、キー部材8が段部4と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材8が段部4の上流側くびれ部2Aに入り込んで係合した状態であり、この状態では、矢印方向の引張り力が作用しても、セグメント10A、10B間の隙間(g)は、更に広がることなく、すなわち、目開きすることなくセグメント同士が結合される。
【0039】
隙間(g)は、例えば、芯ずれ、砂等の介在による施工誤差、あるいは、セグメントの製作誤差により生じ、これ以上セグメントを押し込めない。
【0040】
セグメント10A、10B間が施工誤差や製作誤差等により隙間(g)が生じない場合には、同図(C)に示すように、キー部材8が上流側くびれ部2Bに入り込んで係合し、図中、矢印方向の引張り力が作用しても、セグメント10A、10Bは、目開きすることなく結合される。
【0041】
次に、雄継手1に段部4を設けない場合の結合工程について、図6を参照しながら説明する。
【0042】
施工誤差や製作誤差等により隙間(g)を設定し、セグメント同士が結合できるようにくびれ部2を形成する。図6(A)は、キー部材8がくびれ部2と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材8がくびれ部2に入り込んで係合した状態であり、この状態では、図中、矢印方向の引張り力が作用しても、セグメント10A、10B間の隙間(g)は、更に広がることなく、すなわち、目開きすることなくセグメント同士が結合される。この場合は、この発明のように、段部を設けた場合と同じ作用をする。
【0043】
しかし、施工誤差や製作誤差等による隙間(g)が生じない場合には、同図(C)に示すように、図中、矢印方向の引張り力が作用すると、同図(D)に示すように、目開きが生じる。
【0044】
上記隙間(g)は、現場の状況(土圧、土質、線形等)やセグメントの形状および材質等から適宜、設定し、くびれ部および段部を設計する。後述する、複数個の段部を設ける場合も同様に、数段階の設計誤差や製作誤差に基づいて設計する。
【0045】
このように、製作誤差や施工誤差によりセグメント間に隙間(目開き)が生じた場合であっても、キー部材8には、引っ張りによるせん断力が生じ、セグメント同士を確実に結合することができる。
【0046】
この発明の継手によれば、このようにして、セグメント10A、10B同士が結合されるが、上述したように、雌継手5は、切り込み6を形成した鋼管製本体7と、これらの切り込みに6に入り込み、継手部に引張り力が作用したときのせん断力を受ける棒鋼からなるキー部材8と、このキー部材8に設けるコイルばね等からなる弾性体9とによる簡単な構造からなるので、複雑な構造の上記従来継手に比べて、継手の製造コストを低減させることができる。しかも、上記従来継手のように、セグメントに大きな衝撃や振動が作用しても、キー部材8は、これらが弾性体9により鋼管製本体7の切り込み6に強く押し付けられているので、本体7から脱落する恐れはなく、この結果、セグメント同士の結合が行えなくなるといった問題は起こらない。なお、本体7の内面と雄継手1の最大外径とにより形成される空隙により、セグメント結合時の芯ずれを吸収することができる。この空隙は、適宜、設定することができる。
【0047】
以上は、この発明を鋼製セグメントに適用した場合であるが、コンクリートセグメント、あるいは、鋼材とコンクリートとの合成セグメントに適用することができる。コンクリートセグメントの場合には、図7に示すように、雌継手5の周囲をボックス21で覆う必要がある。
【0048】
この発明の継手により、矩形セグメントを結合する場合には、図8に示すように、雄継手1を角形棒鋼により構成し、雌継手5を角鋼管により構成すると良い。
【0049】
以上は、雄継手1のくびれ部2を1つの段部4によって2段に形成した場合であるが、段部4を複数個設けても良い。図9に、段部4を2つ設けた例を示す。この場合、くびれ部2は、3つのくびれ部に形成される。くびれ部の数が多くなるほど、セグメント同士の結合間隔の微調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明のセグメント用継手を示す斜視図である。
【図2】他の形状の雄継手を示す斜視図である。
【図3】この発明の継手が取り付けられたセグメントを示す斜視図である。
【図4】この発明のセグメント用継手による結合工程を示す断面図であり、同図(A)は、結合前の状態を示す断面図、同図(B)は、くびれ部の段部にキー部材が入り込んだ状態を示す断面図、同図(C)は、結合が完了した状態を示す断面図である。この発明のセグメント用継手を示す斜視図である。
【図5】図4の一部拡大図であり、同図(A)は、キー部材が段部と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材が段部の上流側くびれ部に入り込んで係合した状態であり、同図(C)は、キー部材が段部の下流側くびれ部に入り込んで係合した状態である。
【図6】雄継手に段部を設けない場合の結合工程を示す図であり、同図(A)は、キー部材がくびれ部と係合していない状態であり、同図(B)は、キー部材がくびれ部に入り込んで係合した状態であり、同図(C)は、施工誤差や製作誤差等による隙間(g)が生じない場合の結合状態であり、同図(D)は、目開きが生じた状態である。
【図7】この発明のセグメント用継手をコンクリートセグメントに適用した場合の断面図である。
【図8】この発明の継手を矩形セグメントに適用した場合の雄継手および雌継手を示す斜視図である。
【図9】くびれ部に2つの段部を設けた、この発明の雄継手を示す断面図である。
【図10】結合前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図である。
【図11】結合完了直前の従来継手を示す部分切り欠き斜視図である。
【図12】従来継手の環状弾性部材を示す部分切り欠き斜視図である。
【図13】従来継手が取り付けられたセグメントを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1:雄継手
2:くびれ部
2A:上流側くびれ部
2B:下流側くびれ部
3:先端部
4:段部
5:雌継手
6:切り込み
7:本体
8:キー部材
9:弾性体
10:セグメント
10A:一方のセグメント
10B:他方のセグメント
21:ボックス
11:雄継手
12A:前方くびれ部
12B:後方くびれ部
13A:前方突出部
13B:後方突出部
14:雌継手
15A:前方環状溝
15B:後方環状溝
16A:前方環状弾性部材
16B:後方環状弾性部材
17A:前方拡径保持具
17B:後方拡径保持具
18:芯材
19:コイルスプリング
20:セグメント
21:ボックス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、
前記雄継手は、棒状をなし、1つの段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部は、前記雄継手の前記先端部側に形成されていることを特徴とするセグメント用継手。
【請求項2】
シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、
前記雄継手は、棒状をなし、複数個の段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部の高さは、前記雄継手の前記先端部側に向かうに従って高く形成されていることを特徴とするセグメント用継手。
【請求項3】
前記雌継手の前記切り込みは、対向して一対形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のセグメント用継手。
【請求項4】
前記キー部材は、棒状部材からなっていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載のセグメント用継手。
【請求項5】
前記押し付け力付与手段は、弾性体からなっていることを特徴とする、請求項1から4の何れか1つに記載のセグメント用継手。
【請求項6】
前記弾性体は、コイルばね、板ばねまたはゴムバンドからなっていることを特徴とする、請求項5記載のセグメント用継手。
【請求項1】
シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、
前記雄継手は、棒状をなし、1つの段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部は、前記雄継手の前記先端部側に形成されていることを特徴とするセグメント用継手。
【請求項2】
シールドトンネル工事用のセグメント同士を結合する、雄継手と、前記雄継手が挿入される雌継手とからなるセグメント用継手において、
前記雄継手は、棒状をなし、複数個の段部が形成されたくびれ部と、先細りテーパー状の先端部とを有し、前記雌継手は、切り込みが形成された管状本体と、前記切り込み内に嵌め込まれるキー部材と、前記キー部材に、これを前記切り込み内に入り込ませる押し付け力を付与する押し付け力付与手段とを備え、前記段部の高さは、前記雄継手の前記先端部側に向かうに従って高く形成されていることを特徴とするセグメント用継手。
【請求項3】
前記雌継手の前記切り込みは、対向して一対形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のセグメント用継手。
【請求項4】
前記キー部材は、棒状部材からなっていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載のセグメント用継手。
【請求項5】
前記押し付け力付与手段は、弾性体からなっていることを特徴とする、請求項1から4の何れか1つに記載のセグメント用継手。
【請求項6】
前記弾性体は、コイルばね、板ばねまたはゴムバンドからなっていることを特徴とする、請求項5記載のセグメント用継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−57225(P2008−57225A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235455(P2006−235455)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
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