説明

セサミン類含有動物用飲食物

【課題】動物の被毛処置方法及び/又は体臭処置方法、並びに、該方法に用いることのできる非ヒト動物用飲食物を提供する。
【解決手段】1重量%以上のセサミン類及び動物用飲食物として許容される添加剤を含有する、非ヒト動物用飲食物を提供する。また、非ヒト動物の被毛処置及び/又は体臭処置に有効な量のセサミン類を含有する非ヒト動物用飲食物を、非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の、被毛処置方法及び/又は体臭処置方法を提供する。前記のセサミン類は、好ましくは油脂に溶解した状態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セサミン類を含有する非ヒト動物用飲食物に関する。本発明はまた、非ヒト動物用飲食物を非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の被毛処置方法及び/又は体臭処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イヌやネコ等のペットは家族の一員として扱われるようになり、ペットの健康状態に関する飼い主の関心が高まっている。ペットの被毛はその変化が外観から判断でき、またペットの体臭はその変化を嗅ぎ分けることができることから、これらは飼い主にとって、ペットの健康状態を推測するための重要な指標となっている。例えば、被毛状態は、動物病院への来院理由として最も多い皮膚の疾患に関係が深いことが知られており、皮膚疾患等によりペットの健康状態が良好でない場合には、毛艶や毛並み等の被毛状態が悪くなる傾向がある。また、ペットの体臭はペットの汗腺から排出されて皮膚に付着した老廃物が主たる原因であり、ペットの健康状態が良好でない場合には体臭が強くなる傾向がある。さらに、最近では、ペットは室内で飼育される場合が多く、この場合、ペットの体臭等が室内に充満するため、室外で飼育される場合と比較して、ペットの臭いを気にする飼い主も多い。こうした理由からも、ペットの臭いを軽減することが求められている。
【0003】
ペットの被毛状態を改善する方法や体臭を軽減する方法として、食餌療法が有効であることが知られており、被毛改善作用や体臭軽減作用を有する飲食物が種々提案されている。例えば、動物の毛艶や毛並み等の被毛状態を改善し得る飲食物として、特許文献1は、植物質を主原料とする餌料にニンジン搾汁液と魚肉蛋白質分解ペプチドを添加した兎の毛艶を改善する兎用餌料を、特許文献2は、まいたけ粉末又は/及びまいたけ抽出物を含有しペットの被毛の輝きを向上するペットフードを、特許文献3は、特定の濃度の亜鉛及びリノール酸を含有し動物の皮膚や被毛の状態を向上・改善する規定食又は食品を記載する。また、ペット用サプリメントによるペットの健康維持も提案されており、特許文献4は、ビール酵母、高度不飽和脂肪酸、コラーゲンペプチド、ケラチン加水分解物、亜鉛、ビタミン類を含有するペースト状のペット用サプリメントが、ペットの毛艶や毛並みの不良といった被毛状態の改善に有効であることを記載する。
【0004】
一方、セサミン類は種々の生理活性を有することが知られている。特許文献5は、セサミン及び/又はエピセサミン含有飲食品について記載する特許文献6は、特定のジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体を有効成分とする体脂肪低減剤について記載し、0.2%セサミン類含有飼料がラットの体脂肪低減作用を有したことを記載する。しかし、これらの文献中には、セサミン類の、動物の被毛や体臭への作用に関する示唆や開示は全くない。
【0005】
さらに、特許文献7は、油脂類が充填されたソフトカプセル飼料について記載するが、該カプセルは油脂を栄養として給与することを目的とし、被毛や体臭への作用に関する示唆や開示は全くない。
【特許文献1】特開平8-38070号公報
【特許文献2】特開平8-38069号公報
【特許文献3】特表2002-504816号公報
【特許文献4】特開2004-357508号公報
【特許文献5】特許第3001589号公報
【特許文献6】特許第3205315号公報
【特許文献7】特開昭60-186253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、動物の被毛改善や体臭軽減に関し、種々の方法が提案されているが、充分に効果的な方法は存在しなかった。また、被毛改善作用や体臭軽減作用を有する飲食物は、その有効成分自体が独特の風味を有するものが多く、動物の嗜好に合わずに動物の摂取(摂食)を損ね、更には便臭や尿臭に影響を及ぼすものも多かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、胡麻種子、胡麻粕及び胡麻油中より単離したセサミン類が、ペットの被毛改善及び体臭軽減に効果的であることを見出した。そして、驚くべきことに、該セサミン類を油脂に溶解した状態で摂取(摂食)すると、その効果が増強することを見出した。また、単離精製されたセサミン及び/又はエピセサミンは、無味無臭であり、白色を呈するため、飲食物への配合に適すること、また、摂取した場合にも便臭や尿臭に影響を及ぼさないことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、1重量%以上のセサミン類及び動物用飲食物として許容される添加剤を含有する、非ヒト動物用飲食物を提供する。本発明はまた、非ヒト動物の被毛処置及び/又は体臭処置のための、非ヒト動物用飲食物であって、該処置に有効な量のセサミン類及び動物用飲食物として許容される添加剤を含有する、前記の非ヒト動物用飲食物を提供する。
【0009】
本発明はまた、前記セサミン類が、セサミン及び/又はエピセサミン、好ましくは、単離精製されたセサミン及び/又はエピセサミンである、前記の非ヒト動物用飲食物を提供する。本発明はまた、更に油脂を含有し、好ましくは、前記セサミン類を該油脂に溶解した状態で含有する、前記の非ヒト動物用飲食物を提供する。
【0010】
本発明はまた、サプリメント、好ましくは、ソフトカプセル、より好ましくは、長径8.5〜14.5mm及び短径6.0〜9.0mmのソフトカプセルの形態である、前記の非ヒト動物用飲食物を提供する。
【0011】
本明細書中において、「セサミン類」は、セサミン及びその類縁体を含み、具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン、エピセサミン、ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体(例えば特開平4−9331号公報に記載)等が挙げられる。なかでも、本発明においては、セサミン及びエピセサミンが好ましい。さらに、「セサミン類」は、セサミン及びその類縁体の配糖体並びにこれらの代謝体を含み、本発明の飲食物及び方法の提供に適する限り、そのいずれを本発明の非ヒト動物用飲食物又は本発明の方法に係る非ヒト動物用飲食物(以下、単に「本発明の飲食物」ということもある。)に含有させてもよく、これらを単独で、又は混合して含有させることができる。また、天然物からの抽出物中に含有される形(セサミン類含有抽出物)で添加してもよい。
【0012】
前記セサミン類又はセサミン類含有抽出物は、その形態や製造方法等に何ら制限されず、例えば、ゴマ油から公知の方法(例えば、特開平4-9331号公報に記載の、ゴマ油に熱メタノールを加えて抽出し、メタノールを除去後、残渣にアセトンを加えて抽出する方法)によって抽出したものを用いることもできるし、市販のゴマ油(液状)(例えば、超臨界抽出によりセサミンが濃縮されたゴマ油等)をそのまま用いることもできるが、後述するセサミン類の含有量に充分注意する。原料となるゴマ油は特に制限されない。なお、ゴマ油自体又はゴマ油のセサミン類含有抽出物が香ばしい胡麻の香りを有する場合、これらを本発明の飲食物に用いれば、胡麻の香りを付加することも可能である。
【0013】
しかしながら、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、ゴマ油から抽出された無味無臭のセサミン類又はセサミン類含有抽出物を用いることが好ましく、より好ましくは、これらを単離精製したものを用いる。また、ゴマ油をそのまま用いた場合、セサミン類の含有量が低いため、例えば被毛処置や体臭処置に有効な、所望の量のセサミン類を配合しようとすると、得られる本発明の飲食物の体積が大きくなり過ぎ、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり摂取に支障が生じる。従って、摂取量が少なくてよいという観点からも、単離精製したセサミン類を用いることが好ましい。
【0014】
本発明において、セサミン類を油脂に溶解した状態で含有する場合に、本発明の飲食物は、被毛改善作用及び/又は体臭軽減作用を顕著に発揮する。従って、ゴマ油、溶解した状態でセサミン類を含有するゴマ油からのセサミン類含有抽出物(ゴマ油濃縮物)等を、本発明の飲食物に含有させることができる。ゴマ抽出物、単離精製したセサミン類等で、粉状や固体状のものを用いる場合には、油脂とともに配合し、セサミン類を溶解した状態で本発明の飲食物に含有させることが好ましい。
【0015】
上記の油脂は、経口摂取可能な食用油で、セサミン類を溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、パーム油、米ぬか油、小麦胚芽油、ヒマワリ油、ベニバナ油、落花生油、鯨油、イワシ油、イカ油等の天然動植物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、炭素数4〜22の脂肪酸のモノ、ジ又はトリグリセリド、あるいはこれらの混合物を用いることができる。また、上記の油脂は常温で液状のものに限定されず、半固体状又は固体状のもの、例えば、ラード、牛脂、水素添加魚油、マーガリン、ショートニング、又はこれらの混合物等を用いることができ、さらに、これらを上記の液状油脂と混合して用いることもできる。セサミン類及びセサミン類含有抽出物は本来油脂中に含まれているものであるため、油脂への溶解は容易で、常温で油脂に混合するだけで溶解させることが可能であるが、必要に応じ加熱等を行ってもよい。
【0016】
セサミン類及び油脂を含有する本発明の飲食物における油脂の配合量は、セサミン類の少なくとも一部、好ましくは全てが溶解し得る状態となるよう配合すればよい。以下の参考例に記載の通り、本出願人らは、各セサミン類の油脂への溶解度が、油脂の種類によって異なることを見出している(参考例、表1参照)。従って、用いるセサミン類の、所望の油脂への溶解度を考慮して、該セサミン類及び油脂の配合量を決定する。例えば、セサミン類の総量に対して、15〜200(好ましくは、50〜100)倍(重量比)程度の油脂を配合する。なお、油脂を栄養として給与することを考慮するならば、セサミン類に対する油脂の配合比率に実質的な上限はない。
【0017】
本明細書中において、動物の「被毛処置」とは、動物の被毛状態が、外観で判断できる程度に改善する処置、該被毛状態の悪化を予防する処置又は該被毛状態が良好な状態を維持する処置をいい、例えば、後述の実施例に記載のように、動物の毛艶や毛並みに注目することで当業者であれば容易に判断できる。
【0018】
また、本明細書中において、動物の「体臭処置」とは、体臭が弱くなる処置、体臭が強くなるのを予防する処置、体臭が弱い状態を維持する処置、体臭が不快臭からそうでない臭いに変化する処置、体臭が不快臭になるのを予防する処置又は不快臭でない体臭を維持する処置をいい、当業者であれば、体臭の変化は容易に判断できる。
【0019】
特に、動物がペットである場合には、その被毛状態や体臭の変化には飼い主が最も敏感であるため、飼い主の判断が、ペットの被毛処置や体臭処置の評価に最も適する。
【0020】
本明細書において、非ヒト動物とは、ヒトを除く動物を指し、好ましくは、被毛状態や体臭が問題となる動物を指し、更に特定すれば産業動物、ペット及び実験動物を指す。産業動物とは、産業上飼養することが必要とされている動物であり、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等の家畜、ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥、ダチョウ等の家禽などが挙げられる。ペットとは、いわゆる愛玩動物、コンパニオンアニマルをいい、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、マーモセット、小鳥、ハムスターなどが挙げられる。実験動物とは医学、生物学、農学、薬学等の分野で研究に供用される動物をいい、例えば、ラット、モルモット、ビーグル犬、ミニブタ、アカゲザル、カニクイザルなどが挙げられる。本発明の飲食物を投与する対象として、最も好ましくは、上記のうち、非ヒト哺乳類である。
【0021】
上記の非ヒト動物のうち、ペットは被毛処置及び体臭処置を最も期待される動物である。特にイヌやネコは、肉や魚等の動物性たんぱく質を主食とするため、胃腸及び口腔内に悪臭ガスが発生しやすく、体臭が比較的顕著に感じられる。従って、本発明の飲食物を与える対象として好ましい。イヌは、具体的には、ビーグル、シェルティー、ポメラニアン、シーズー、柴、スピッツ、キャバリア、ミニチュアダックス、ラブラドールレトリバー、ウェストハイランドホワイトテリア、ミックス等が挙げられるが、これらに限定されない。ネコは、具体的には、チンチラ、スコッティー・ホールド、ペルシャ、アメリカン・ショートヘア、アビシニアン、ミックス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中において、動物用飲食物とは、飼料、ペットフード、動物用菓子(ゼリー、ビスケット等)、ソーセージ、サラミ等の動物用缶詰、ペットサプリメント及び飲料を含み、本明細書中において、これらを「ペット飼料」と称する場合がある。動物用飲食物は、更に経口投与の医薬組成物を含み、その形状は、固形状(例えば、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤等)、半固形状(例えば、ゲル、ペースト等)、液状(例えば、溶液、乳液、分散液等)など、任意の形態を取り得る。
【0023】
本発明は、上記の動物用飲食物を非ヒト動物に投与することを含む、動物の被毛処置方法及び/又は体臭処置方法を提供する。すなわち、本発明の動物用飲食物は、日常的な投与により、被毛状態の悪化の予防や体臭予防にも有効である。更に、本発明の動物用飲食物が含有するセサミン類は、上記処置以外にも種々の生理活性を有することが知られているので、継続して投与することで、動物の健康の維持や増進も期待できる。継続的な投与には、上記の飼料やペットフードのような形態でもよいが、カプセル剤(ソフトカプセル等)や錠剤のようなサプリメントの形態であれば、投与量を調整でき、安定かつ確実な投与を行うことができるので好ましい。
【0024】
また、本発明においては、セサミン類が油脂に溶解した状態で本発明の飲食物に含有されることが好ましいが、油脂は酸化変敗しやすいものであり、これを知らずに動物に与えると、かえって動物の健康を損なう恐れがある。セサミン類は、活性酸素などのラジカルに対する消去活性を有するが、その作用は弱く、油脂の酸化変敗を十分に抑制できない。さらに、セサミン類が油脂の酸化変敗を抑制する、すなわち抗酸化剤として作用してしまうと、生体内において、本発明の効果が低減されてしまう可能性がある。このような観点からも、セサミン類のみ、又はセサミン類と油脂とを含有する、サプリメントの形態(油脂の酸化変敗を防止できる形態)で摂取させることが、本発明の効果を発揮するために、より好ましい。
【0025】
サプリメントのうち、特にカプセル剤は、上記の油脂を配合した場合にその酸化変敗をより防止することができるので、好適な態様である。カプセルの内容物が液状の場合(例えば常温で液状の油脂にセサミン類が溶解している場合等)、通常、ソフトカプセルの形態となる。該カプセル剤は、セサミン類の投与を目的としたサプリメントとして、又は更に他の成分を添加して、栄養補給若しくは栄養補助を目的としたサプリメントとして、あるいは、これらの目的を有する栄養補助食品とすることができる。
【0026】
本発明の飲食物は、動物用飲食物として許容される添加剤を含有する。該添加剤は、動物用飲食物に通常用いられる添加剤であり、例えば、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、糖類、賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤、香料、凝固剤、pH調整剤、増粘剤、エキス粉末、生薬、無機塩等が挙げられるが、セサミン類の所望の効果を損なわない限り、これらに限定されない。特に本発明の飲食物がサプリメントである場合、例えば、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、サプリメントを調製する時に通常配合される乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤等を適宜配合することができる。
【0027】
また、上記添加剤は、非ヒト動物用飲食物として許容されるもの、より特定すれば、非ヒト動物が好んで飲食するものが好ましい。例えば、ヒト用としては精製度が低く、臭いや味がヒトには好まれない添加物であっても、非ヒト動物であれば好んで飲食する場合がある。具体的には、例えば上記添加剤としてゼラチンを用いる場合、精製度の低いもののほうが、イヌやネコ等の非ヒト動物が好む獣臭を有し、かつ低価格であり、好ましい場合がある。動物が自ら好んで摂食するように、本発明の飲食物中又は飲食物の表面に、動物が好む肉風味、魚風味等の香り及び/又は味を付与してもよい。飲食物(特に、サプリメント等の製剤)の表面に動物が好む香料を付与する方法としては、例えば、特開2004−194514号公報に記載の方法等があるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0028】
上記の動物用飲食物は、それぞれ当業者に公知の手法を用いて、製造することができる。例えば、本発明の飲食物がカプセル剤である場合、公知のカプセル化技術によって製造することができる。例えば、ソフトカプセルは、皮膜形成剤としてゼラチン又は多糖類を用いて製造することができる。ゼラチン又は多糖類には、ソルビトール、グリセリン等、通常のソフトカプセルの製造に使用する添加剤を添加することができる。ソフトカプセルの製造方法としては、カプセルの成型と内容液の充填を同時に行う浸漬法、打ち抜き法、滴下法などがある。
【0029】
一般的な打ち抜き法を用いる場合、ゼラチン(又は多糖類)溶液を薄く展延し、次いで冷却、ゲル化した後、ゼラチン(又は多糖類)シートとし、2枚のゼラチン(又は多糖類)シートの間に調製液を入れ、金型で両面からこれを圧し、セサミン類を油脂に加えたものをカプセル内部に注入し、直ちにゼラチン(又は多糖類)シートを加熱接着させ、打ち抜く。その後、乾燥させると、本発明の飲食物であるソフトカプセルを得ることができる。
【0030】
本発明の飲食物において、その形状や大きさに制限はなく、当該技術分野において通常の範囲のものとすることができる。本発明の方法において用いる場合には、本発明の飲食物は、投与対象となる非ヒト動物に投与しやすい形状に設定すればよい。動物は、一般に摂食の際、その対象物を咬む習性がある。液状の油脂を配合したような本発明の飲食物(例えばソフトカプセル)の場合、動物が咬むと液状の油脂が口内よりこぼれて口辺を汚す恐れがある。従って、その形状は咬まなくてもよい大きさとするか、咬んで食した場合にも液状の油脂が口内よりこぼれない大きさとすることが好ましい。具体的には、本発明の飲食物がソフトカプセルであり、投与対象の非ヒト動物がイヌである場合には、長径8.5〜14.5mm及び短径6.0〜9.0mm程度の大きさのソフトカプセルが好ましい。
【0031】
本発明の動物用飲食物は、上記のセサミン類又はセサミン類含有抽出物であって、固体のものをペット飼料とそのまま混和したもの、及び液状のものをペット飼料にスプレーしたものを含み、該ペット飼料は市販品を用いてもよい。本発明の飲食物が、ソフトカプセルのようなサプリメントである場合に、これを飼料、ペットフード等に添加して用いることもできる。
【0032】
なお、本発明の飲食物には、その具体的な用途(例えば、被毛状態(毛艶、毛並み等)の改善、維持及び/又は悪化予防のため、体臭の改善、良好な状態の維持及び/又は悪化予防のため、栄養補給のため、栄養補助のため、健康維持のため、等)及び/又はその具体的な用い方(例えば、投与量、投与回数、投与方法等)を表示することができる。
【0033】
本発明はまた、上記の非ヒト動物用飲食物を、非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の被毛処置方法及び/又は体臭処置方法を提供する。
【0034】
本発明はまた、非ヒト動物の被毛処置及び/又は体臭処置に有効な量のセサミン類を、好ましくは、非ヒト動物用飲食物に含有させて、非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の被毛処置方法及び/又は体臭処置方法を提供する。
【0035】
本発明はまた、前記有効な量が、1日あたり、体重1kgあたり0.15mg、好ましくは、0.19mg以上である、前記の方法を提供する。本発明はまた、前記非ヒト動物がペットである、前記の方法を提供する。
【0036】
本発明の方法において、非ヒト動物の被毛処置及び/又は体臭処置に有効な量のセサミン類は、対象動物の種類、大きさ、被毛及び/又は体臭の状態、健康状態等により異なるが、通常は、1日あたり、非ヒト動物の体重1kgあたり0.1〜10mg、好ましくは0.15〜5mgである。該方法が、被毛状態や体臭の改善を目的とする場合には、被毛状態や体臭状態の良好な状態の維持又は悪化の予防を目的とする場合と比べ、上記の有効な量はより多くなることがある。なお、本発明者らは、ペット(イヌ)に対し、1日あたり、体重1kgあたり0.19mgでセサミン類を摂食させた場合に、被毛改善作用及び体臭軽減作用を確認している(実施例4参照)。本発明の飲食物中におけるセサミン類及び油脂の配合量は、例えば上記の有効量を参考に、当業者であれば、該飲食物の投与形態に応じて、適宜設定することができる。
【0037】
本発明の方法における、本発明の飲食物及びセサミン類の投与は、対象動物の種類、大きさ、被毛及び/又は体臭の状態、健康状態等により、当業者であれば適切な投与期間や投与法を選択することができる。
【0038】
例えば、被毛状態や体臭の改善を目的とする場合、例えば後述の実施例に記載の量を、3日〜8週間、好ましくは1週間〜6週間、より好ましくは2週間〜4週間の期間、確実な投与法(例えば、1日1粒のサプリメントの形態)で投与することができる。
【0039】
例えば、被毛状態や体臭状態の、良好な状態の維持又は悪化の予防を目的とする場合、上記の改善を目的とする場合と比較して、より長期間にわたる継続的な投与が好ましく、例えば本発明の飲食物を飼料、ペットフード等に添加して用いる等、継続的投与に適した投与法を採択することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1 セサミン類の、油脂への溶解試験
セサミン類の、各種油脂への溶解度を調べた。セサミン類として、セサミン、エピセサミン及びセサミン:エピセサミン=51.1:48.2の混合物(竹本油脂株式会社)を用いた。セサミン、エピセサミンは、前記混合物より単離精製して調製したものである。これらのセサミン類を表1に示す5種の油脂各100gに溶解し、溶けきれなくなる限界量(溶解度)を調べた。結果を表1に示す。表1より、セサミン、エピセサミン及びその混合物は、溶解度が異なり、また、油脂の種類によっても溶解度が異なることがわかった。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1 セサミン類含有非ヒト動物用飲食物の調製
セサミン類として、ゴマ油より単離精製された粉末状のセサミン及びエピセサミン混合物(セサミン:エピセサミン=51.1:48.2(重量比)、竹本油脂株式会社) (以下、「セサミン類混合物」ともいう。)を用い、表2に示す配合の錠剤並びにソフトカプセル剤A及びBを調製した。具体的には、錠剤は、所定量の割合で原料を混合した後、単発式打錠機にて打錠して直径11mm、重量330mgの錠剤を製造した。また、カプセル剤は、所定量の割合で原料を混合した後、カプセル皮膜(ゼラチン:74.0%、グリセリン:26.0%、水:適量)の中に常法(ロータリー法)により充填し、長径14.2mm、短径6.6mm、重量360mgのソフトカプセル剤A、及び長径9.5mm、短径6.7mm、重量250mgのソフトカプセル剤Bを製造した。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例2 イヌにおける、セサミン類含有非ヒト動物用飲食物の経口摂取試験(1)
10匹のイヌを5匹ずつ、2群に分け、それぞれの群について、実施例1で調製した錠剤又はソフトカプセル剤Aを、表3に記載の量、4週間摂取させ(錠剤を摂取させた群を「錠剤群」、ソフトカプセル剤を摂取させた群を「カプセル剤群」とする)、通常食で得られなかった変化について評価した。表3に、各イヌの情報(犬種、年齢、体重)、錠剤又はカプセル剤の給与粒数、及び通常食を示す。
【0045】
【表3】

【0046】
体臭、被毛(毛艶、毛並み)について飼い主へのアンケートを実施し、摂取前の状態と4週間摂取後における状態を+2〜-2点の5点法で評価した。具体的な評価方法は、以下のとおりである。
体臭 なし:+2、弱い:+1、 普通:0、やや強い:-1、 強い:-2
毛艶 ある:+2、ややある:+1、普通:0、あまりない:-1、 ない:-2
毛並み 良い:+2、やや良い:+1、普通:0、あまり良くない:-1、悪い:-2
それぞれのイヌについて、体臭、毛艶及び毛並みの変化量(=4週間摂取後の評価点 − 摂取前の評価点)を求め、各群のイヌの合計点を算出し、変化量の合計を各群のポイントとした。図1〜3に、体臭、毛艶及び毛並みのポイントをそれぞれ示す。体臭、毛艶、毛並みの項目全てにおいて、ポイントがプラスであることから、セサミン類含有非ヒト動物用飲食物の摂取により、体臭が軽減され、被毛状態が改善されることが示唆された。また、図1及び図2に示す体臭及び毛艶の結果から、錠剤群よりもカプセル群が良好な効果を得られることがわかった。これは、セサミン類を油脂に溶解させた状態で摂取させた方がその効果が高いことを示唆する。
【0047】
なお、この経口摂取試験中、便の性状(硬さ、臭い、量)について観察したが、通常と変化なかった。これは、錠剤及びカプセル剤の摂取により軟便になったり特有の臭いを帯びたりすることがなかったこと、食事量に変化がなかったことを示唆する。
【0048】
実施例3 イヌにおける、セサミン類含有非ヒト動物用飲食物の経口摂取試験(2)
表4に示す7匹のイヌについて、実施例1で調製したソフトカプセル剤Aを、表4中に記載のイヌの体重に応じた量で4週間摂取させ、通常食で得られなかった変化について評価した。摂取前、摂取2週間後、摂取4週間後における体臭、毛艶及び毛並みを、実施例2と同様に評価し、実施例2と同様の手法でポイントを求めた。
【0049】
【表4】

【0050】
図4〜6に、体臭、毛艶及び毛並みの摂取前後におけるポイントを示す。実施例2と同様に、油脂に溶解させたセサミン類含有非ヒト動物用飲食物(カプセル剤)を経口摂取させることにより、体臭、毛艶、毛並みの項目全てについて経時的に改善することが確認できた。なお、この経口摂取試験中、便の性状(硬さ、臭い、量)について観察したが、通常と変化なかった。
【0051】
実施例4 イヌにおけるセサミン類含有非ヒト動物用飲食物の経口摂取試験(3)
犬種:柴、年齢:3歳、体重:9kgのイヌに、実施例1で調製したソフトカプセル剤Bを1日1粒、4週間摂取させ、通常食で得られなかった変化について評価した。
【0052】
結果を表5に示す。摂取前後における体臭、毛艶及び毛並みの変化について観察したところ、全ての項目について、カプセル剤の摂取により改善した。このことは、セサミン類の一日あたりの摂取量が体重1kgあたり0.19mgという少量であっても、体臭軽減や被毛改善に効果があることを意味する。
【0053】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、実施例2において、本発明の飲食物をイヌに摂取させた後の、体臭の変化を示す棒グラフである。
【図2】図2は、実施例2において、本発明の飲食物をイヌに摂取させた後の、毛艶の変化を示す棒グラフである。
【図3】図3は、実施例2において、本発明の飲食物をイヌに摂取させた後の、毛並みの変化を示す棒グラフである。
【図4】図4は、実施例3において、本発明の飲食物をイヌに摂取させた2週間後及び4週間後の、体臭の変化を示す棒グラフである。
【図5】図5は、実施例3において、本発明の飲食物をイヌに摂取させた2週間後及び4週間後の、毛艶の変化を示す棒グラフである。
【図6】図6は、実施例3において、本発明の飲食物をイヌに摂取させた2週間後及び4週間後の、毛並みの変化を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1重量%以上のセサミン類及び動物用飲食物として許容される添加剤を含有する、非ヒト動物用飲食物。
【請求項2】
非ヒト動物の被毛処置及び/又は体臭処置のための、非ヒト動物用飲食物であって、該処置に有効な量のセサミン類及び動物用飲食物として許容される添加剤を含有する、前記の非ヒト動物用飲食物。
【請求項3】
前記セサミン類が、セサミン及び/又はエピセサミンである、請求項1又は2に記載の非ヒト動物用飲食物。
【請求項4】
更に油脂を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非ヒト動物用飲食物。
【請求項5】
サプリメントの形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト動物用飲食物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に定義した非ヒト動物用飲食物を、非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の被毛処置方法及び/又は体臭処置方法。
【請求項7】
非ヒト動物の被毛処置及び/又は体臭処置に有効な量のセサミン類を、非ヒト動物に投与することを含む、非ヒト動物の被毛処置方法及び/又は体臭処置方法。
【請求項8】
前記有効な量が、1日あたり、体重1kgあたり0.15mg以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非ヒト動物がペットである、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate