説明

セシウムを除去する土壌改良方法と、土壌中のセシウム除去装置

【課題】より確実かつ安全に土壌10中からセシウムを除去することができ、且つセシウムを除去した後の土砂を再度耕作地等に利用することのできるセシウムを除去する土壌改良方法と、土壌10中のセシウム除去装置20を提供すること。
【解決手段】 土壌中に含まれるセシウムを除去する土壌改良方法であって、当該土壌改良方法は、少なくとも土壌10の表面から1cmまでの深さの表層土12を掬い取る表層土採取ステップと、掬い取って採取した表層土12からセシウムを除去するセシウム除去ステップとを含み、更に前記表層土採取ステップの実施に先立ち、表層土12を掬い取る範囲に水を散水する散水ステップを含み、当該散水ステップでは、表層土採取ステップに際して砂埃の巻上がりを阻止する程度の含水量となる様に散水を実施するセシウムを除去する土壌改良方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセシウムが混入した土壌からセシウムを除去する方法と、土壌中のセシウムを除去するための装置に関し、特にセシウムを除去した後の土壌を再利用することができ、且つ二次汚染の問題を解消したセシウムを除去する土壌改良方法と、土壌中のセシウム除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の放射性物質取扱い施設では、使用済み核燃料(リサイクル原子燃料)等、種々の放射性廃棄物が発生する。そしてこの使用済み核燃料は、通常、再処理施設への搬入前に原子力発電所の敷地内外のリサイクル原子燃料貯蔵建屋内に一時的に保管される。
【0003】
しかしながら、偶発的な天災や、予期しない放射性廃棄物のこぼれ、漏れ事故、杜撰な処理等が原因で、給水系や土壌中の重金属レベルが上昇することも否定できず、近年では危機意識が高まっている。
【0004】
特にセシウム137(以下、本明細書では単に「セシウム」とする)は、体内に入ると体中に分配され、ベータ線による内部被ばくを起こし、DNAの破壊等を生じさせることが懸念されている。このようなセシウム等の放射性物質の土壌に対する混入を考えた場合には、土壌粒子の表面は有機物や粘土鉱物に由来して負に帯電しており、一方でセシウムは土壌中で1価の陽イオンとしてふるまうことから、当該セシウムは、カリウム(K)やカルシウム(Ca)などの陽イオンと同様に、土壌粒子表面の負電荷を中和するかたちで土壌表面にとどまる性質を持っている。
【0005】
特にセシウムが混入した土壌(以下、「汚染土壌」とも云う)が農地である場合には、その土壌処理は、放射性セシウムや放射性ストロンチウムの植物への吸収を低下させる為に、鋤きおこし、追いまき、窒素・燐酸・カリの施肥、石灰の散布等の土壌処理方法が考えられる。鋤きおこしは、根が栄養を吸収する土地表層(地表)の放射性汚染を薄める役割を果たし、また表層を剥ぎ取りこれを埋める鋤きおこしも有効である。化学肥料の施肥は植物の成長を促進し、これにより植物内の放射能を薄める役目をすると共に、土壌水中のCs−K比を低め、したがって放射能の吸収を低下させることができる。
【0006】
しかしながらこのような方法は、根本的な解決にはならないことから、従来、種々検討されている。例えば土壌中のセシウム等を除去する方法として特許文献1(特開平6−51096号公報)が提案されている。この文献は、1種以上のアクチニドもしくはその放射性崩壊生成物もしくは核分裂生成物又は他の重金属又はその化合物で汚染しているか又は汚染している疑いのある土壌の処理方法を提供するものであり、使用前には重金属イオンを含まず且つ熱もしくは紫外線のような温和な物理的補助手段の存在下又は不在下で非毒性生成物に自然に分解可能な成分を含有する液体媒体と土壌とを接触させるものであり、水溶液が炭酸水、コンディショニング剤及び2〜6個の炭素原子を有するカルボン酸のアニオンを含む錯生成剤とを含有し、汚染サイトから土壌を採取する段階と、土壌を処理サイトに輸送する段階と、土壌を液体媒体で洗浄し、汚染物質を錯体として液体媒体に溶解させる段階とを含むものとして提案されている。
【0007】
また、特許文献2(特表平10−505903号公報)では、核廃棄物、元素水銀又は有害有機化合物との混合廃棄物で汚染された砂及び粘土を含む土壌を、無水液体アンモニア単独又は溶媒和電子と併用して処理することにより除染することが提案されており、その方法は、プルトニウム及びウラン等の放射性核種を土壌及び粘土の細粒に濃縮し、再生できるように汚染物質を十分に除去した残留土壌生成物を生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−51096号公報
【特許文献2】特表平10−505903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のとおり、放射性セシウムは体内に入ると体中に分配され、ベータ線による内部被ばくを起こし、DNAの破壊等を生じさせ、しかもこの放射性セシウムは、半減期が約30年と長期にわたることから、土壌中に混入した場合には、これを迅速に除去することが必要である。
【0010】
従前においては、上記の特許文献で提案されているように、化学剤を使用して除去する方法も提案されているが、この方法を実施する為には、放射性物質を溶解させた溶媒の処理の問題が生じる。また処理後の土壌を再利用する際に、当該薬剤の残留等の問題も生じる。更に処理すべき汚染領域から汚染物質を残らず除去することはコストの点から考えても実現不能か、または非実用的である。
【0011】
そこで本発明では、より確実かつ安全に土壌中からセシウムを除去することができ、且つセシウムを除去した後の土砂を再度耕作地等に利用することのできるセシウムを除去する土壌改良方法と、土壌中のセシウム除去装置を提供することを第一の課題とする。
【0012】
また、従前において提案されているセシウムを含有する土壌の処理方法でも、セシウムを含有する土壌の採取が必要であるが、当該土壌の採取に際しては特段の工夫が施されていないのが実情である。
【0013】
そこで本発明では、土壌の表層部を採取する際に、セシウムが結合した土砂が埃となって空気中に舞い上がることがないように、かつ当該土砂が河川等に流出等することがないようにしたセシウムを除去する土壌改良方法と、土壌中のセシウム除去装置を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の少なくともいずれかを解決するべく、本発明では放射性セシウムで汚染された土壌から表層の土砂だけを、周囲を二次汚染することなく採取し、これを高温環境下に一定時間さらすことにより、汚染された土砂からセシウムを除去するセシウムを除去する土壌改良方法と、土壌中のセシウム除去装置を提供するものである。
【0015】
即ち本発明では、土壌中に含まれるセシウムを除去する土壌改良方法であって、当該土壌改良方法は、少なくとも土壌表面から1cmまでの深さの表層土を掬い取る表層土採取ステップと、掬い取って採取した表層土からセシウムを除去するセシウム除去ステップとを含み、更に前記表層土採取ステップの実施に先立ち、表層土を掬い取る範囲に水を散水する散水ステップを含み、当該散水ステップでは、表層土採取ステップに際して砂埃の巻上がりを阻止する程度の含水量となる様に散水を実施することを特徴とする、セシウムを除去する土壌改良方法を提供する。
【0016】
上記散水ステップは、セシウムを含有する土壌から表層土を掬い取る際に、掬い取った土砂が周囲に巻き散ることのないようにすることを目的とするものであり、特にセシウムを含有する土壌であるからこそ、実施されるものである。即ち、セシウムは土壌中で1価の陽イオンとして存在することから、実質的には負に帯電している土壌粒子等と結合して存在する。この為、セシウムは土壌表面側、特に表面から1〜2cm程度の深さまでの土壌に存在することになり、よってこの表層土を掬い取ることが重要である。しかしながら、多くの場合、この表層土は天候次第では乾燥状態である事が多く、依って表層土の掬い取り作業に際しては、当該表層土が周囲に、撒き上がってしまうことが考えられる。そして表層土が巻き上がってしまうと、これが周囲に堆積してしまい、結局、表層土を掬い取る前の状態に戻ってしまうことから、このような土砂の撒き上がりを無くすために、砂埃の巻上がりを阻止する程度の含水量となる様に散水を実施する散水ステップを行うものである。
【0017】
ここで、散水ステップにおける散水量は、掬い取る土壌の水分や、粘土質かそうでないか等の土質によって適宜変更することが望ましい。即ち、ローム層などの様に粘土質の土壌の場合には、水分含有量を50%未満、望ましくは40%以上50%未満となるようにし、粘土質でない黒ぼく土等の場合には、水分含有量を5%以上20%未満、望ましくは10%以上15%未満となるように実施することが望ましい。ここで、粘土質の土壌とは、粘土やシルトを多く含有する性質の土壌であり、本明細書では粒径が2mm未満の粒子のみならず、2mm以上の粒子を含む礫や粗大有機物などを含む意味である。
【0018】
そして前記した散水ステップで達成すべき水分含有量の規定については、例えば、土壌に含まれる粘土が12.5%未満の砂土、土壌に含まれる粘土が12.5〜25%の砂壌土、土壌に含まれる粘土が25〜37.5%の壌土、および土壌に含まれる粘土が37.5〜50%の埴壌土の場合には、水分含有量が5%以上20%未満、望ましくは10%以上15%未満となるよう散水ステップを実施し、土壌に含まれる粘土が50%を超える埴土の場合には、水分含有量が50%未満、望ましくは40%以上50%未満となるよう散水ステップを実施するのが望ましい。
【0019】
また、土壌に含まれるセシウムは1価の陽イオンとして存在することから、NHやK等の競合イオン(1価の陽イオン)を土壌に高い濃度で添加することにより、土壌中に保持されたセシウムイオンを追い出することができる。そこで本発明は、望ましくは前記散水ステップの前及び後の何れかの行程において、土壌において1価の陽イオンとして存在する競合イオン成分を添加する競合イオン成分の散布又は添加ステップを実施することが望ましい。
【0020】
また、上記散水ステップの後には、少なくとも土壌表面から1cmまでの深さの表層土を掬い取る表層土採取ステップが実施される。この表層土採取ステップで掬い取る表層土を、少なくとも土壌表面から1cmまでの深さ、望ましくは2cmまでの深さとしている事により、土壌を汚染しているセシウムを効果的に掬い取ることができる。このことは、セシウムが土壌の下方へ進む速度はおおよそ年間1cm以下と考えられ、これは過去における核燃料施設事故後の観測結果においても、事故から7年後におけるセシウムの存在割合は、土壌表層から10cm以内に78〜99%が残っていることや、降水量の多い日本の土壌においても1960年代に沈着した大気圏核実験由来のセシウムは表層土壌に蓄積しており、土壌表層から30cmよりも深いところでは、セシウムはほとんど検出されていないことからも明らかである。
【0021】
そして本発明においては、掬い取る表層土を上記のようにしていることから、表層土の掬い取り作業の労力を大幅に減じることができ、且つ掬い取った表層土を処理施設に搬送する輸送コストを大幅に削減し、更に処理施設における処理対象を大幅に減じ、処理効率を高めることができる。ただし、セシウムが降下した後に耕起された農地等の土壌の場合には、セシウムは耕作土層にほぼ均一な濃度で分布すると考えられることから、前記表層土採取ステップは、土壌表面から1cmまでの深さの表層土に限らず、耕作土層全体を掬い取ることが望ましい。
【0022】
かかる表層土採取ステップは、例えばローダーバケットやバックホーを備える建設機械や排土板を具備するブルドーザーなどの建設機械を使用することができる他、レーキやスコップなどの器具を使用することもできる。
【0023】
上記掬い取り工程で掬い取られた表層土は、セシウム除去ステップにおいて、表層土中に混入しているセシウムが除去されることになる。このセシウム除去ステップでは、土壌、特に掬い取った表層土に含まれているセシウムを除去できる限りにおいて、種々の方法を実施することができるが、望ましくはこの掬い取った表層土を高温環境下、特にセシウムが気化する環境下で過熱処理することが望ましい。
【0024】
即ち、前記セシウム除去ステップでは、掬い取って採取した表層土を、700℃以上で約1時間以上、特に2時間以上加熱することが望ましく、同時に気化したセシウムを補足手段に吸着することが望ましい。セシウムの沸点は690℃であることから、掬い取った表層土を700℃以上に加熱することで、その中のセシウムは気化し、処理対象の表層土から分離することができる。そしてこの気化したセシウムが大気中に放出されることのないように、これを補足手段に吸着することが望ましい。よって、この補足手段の下流側は、掬い取った表層土を加熱する加熱領域よりも負圧となるようにすることが望ましい。更に、この補足手段の下流側は、このセシウム除去ステップを実施する場所の大気圧よりも負圧とすることにより、気化したセシウムが大気中に流出することを確実に阻止することができる。
【0025】
かかるセシウム除去ステップは、上記の温度に加熱することのできる機械器具であれば種々使用することができるが、例えばロータリーキルンを利用したセシウム除去装置を使用するのが望ましい。
【0026】
即ち、上記の土壌改質方法におけるセシウム除去ステップを実施する土壌中のセシウム除去装置であって、当該セシウム除去装置は、ロータリーキルンを用いて形成されており、少なくとも筒状に形成された燃焼筒内の気体を排出する排気口と、この排気口から排出される気体を吸着する補足手段とを具備する、土壌中のセシウム除去装置で行うのが望ましい。特に、前記燃焼筒は、ロータリーキルンにおけるスチールシェル及びファイヤーブリックライニングが該当する。
【0027】
一般的にロータリーキルンは、主としてセメント製造などの窯業に使用される回転式の窯として提供されており、流動性のある泥状物や粉体、プラスチック等の廃棄物を適切に焼却処理する為にも使用されている。かかるロータリーキルンは、軸周りに回転する筒状の燃焼筒を具備し、当該燃焼筒の回転により処理対象物を軸方向に移送するように構成されたものであり、燃焼筒の一端部側からバーナーなどにより燃焼筒内を加熱し、当該一端部又は一端部とは反対側に存在する他端部側から処理対象を投入するように構成されており、バーナーが設置されている一端部側からは燃焼の為の高温の空気を供給するように構成されている。そして係るロータリーキルンは、原料の投入と処理を随時、かつ連続的に行えるという利点の他、燃焼筒内を1000℃以上にまで加熱できるといった利点を有する。
【0028】
そこで本発明では、このロータリーキルンを使用し、一般的なロータリーキルンに対して、筒状に形成された燃焼筒内の気体を排出する排気口と、この排気口から排出される気体を吸着する補足手段とを設置し、本発明に係る土壌中のセシウム除去装置とするものである。
【0029】
本発明のセシウム除去装置において、燃焼筒内の気体を排出する排気口は、燃焼筒内のガスを燃焼筒から排出する為の開口部である。そしてこの排気口は、この燃焼筒の何れの場所に形成されていても良いが、望ましくは燃焼用の空気が供給される部分の下流側に形成される。即ち、上記した一般的なロータリーキルンの例においては、バーナーが設置されている一端部側から燃焼の為の高温の空気が供給されていることから、この排気口は、バーナーが設置されている一端部側の反対側に存在する他端部側、即ち処理対象となる表層土を投入する側に形成されることが望ましい。また、ロータリーキルンの燃焼筒は軸方向に回転することから、当該排気口は燃焼筒の端面に形成されることが望ましい。
【0030】
上記の様に排気口を形成することにより、加熱処理された表層土中から気化したセシウムは、バーナーの燃焼圧力や燃焼の為に供給された高温の空気の流れに従って、排気口から燃焼筒外に排出することができる。
【0031】
ここで、燃焼筒内で気化したセシウムは、そのまま大気中に放出すれば二次的な汚染が生じてしまう。そこで本発明では、この排気口に補足手段を設置し、気化したセシウムを補足し、大気中への放出を阻止している。かかる補足手段としては、例えばバグフィルター等を使用することができる。
【0032】
また、この補足手段ではより確実にセシウムを補足するように、気化しているセシウムを冷却して液化又は固化させて、大気中への放出を阻止することもできる。即ち、前記補足手段は排気口内に設置されており、排気口内における補足手段の設置領域には、600℃以下、望ましくは500℃以下に冷却する冷却部が設けられているセシウム除去装置とすることもできる。
【0033】
なお、本明細書における補足手段とは、気化したセシウムを補足することのできる機械器具であり、フィルターの他、蒸留塔における冷却部分の構成要素を含む。特に、補足手段としてフィルターを使用する場合には、バグフィルターを使用することが望ましい。またゼオライトや層状珪酸塩等の粘土を含有するフィルターも望ましい。特にゼオライトや層状珪酸塩等の粘土を含有するフィルターを使用した場合、セシウムをきわめて強く「固定」することができる為、望ましい。更に、ケイ素と酸素からなるシート(ケイ素四面体シート)が、アルミニウムと酸素からなるシート(アルミニウム八面体シート)をはさんだ構造を一単位の層とし、この層を積み重ねて製造した1型層状ケイ酸塩鉱物を使用したフィルターである場合には、層と層の間に負電荷を持ち、しかもこの層間の負電荷がある場所は、セシウム陽イオンを閉じ込めるのにちょうどいい大きさの穴のようになっていることから、より確実にセシウムを補足することができる。
【0034】
ここで、補足手段としてフィルターを使用した場合には、処理した表層土の量に応じて、当該フィルターが補足したセシウムの量も増加する。そこで、所定のタイミングで、し止したフィルターを交換する必要がある。一方、ロータリーキルンを用いて形成されたセシウム除去装置にあっては、燃料等の運転効率を考えれば連続運転を行うことが望ましい。そこで連続運転を行いながら、燃焼筒内のガスを大気中に放出することなくフィルターを交換することが望ましい。そこで本発明では、前記排気口を2つ以上形成し、燃焼筒内に対して交互に開口するセシウム除去装置とすることが望ましい。なお、燃焼筒に開口する排気口を1つとし、途中で分岐して夫々の流路にフィルターを設けても良い。このように形成することにより、何れか一方のフィルターでセシウムを吸着している時に、他方のフィルターを交換することができ、これにより連続運転を実現しながらも大気中への放出を阻止することができる。
【0035】
そして上記排気口における補足手段よりも下流側には、放射線又はセシウムを測定する測定装置が設置されていることが望ましい。かかる測定装置を設けた場合には、処理対象である表層土から分離したセシウムが補足手段を通過して大気中に放出されることのないように、常に監視することができ、これにより二次汚染等の問題を解消することができる。
【0036】
なお、上記したセシウム除去装置は、必ずしも汚染された土壌の表層土からセシウム除去する場合に限らず、その他の土壌成分、例えば農業用水場やダム等の水中に含まれるセシウムを粘土で吸着し、このセシウムを吸着した粘土からセシウムを除去するためにも使用することができる。
【0037】
依って本発明にかかる土壌改良方法と土壌中のセシウム除去装置は、水中のセシウムを除去する水質改良方法と、水中のセシウム除去装置としても使用することができる。
【0038】
即ち本発明では、水中に含まれるセシウムを除去する水質改良方法であって、当該水質改良方法は、水中に粘土成分を投入する粘土成分投入工程と、投入した粘土成分がセシウムを吸着した後において、当該年度成分を取り出して、取出した粘土成分からセシウムを除去するセシウム除去ステップとを含む、セシウムを除去する水質改良方法とすることができる。
【0039】
係る方法において、粘土成分は固形状にしたものを水中に設置し、所定期間報知することにより、セシウムを粘土成分に吸着させることができる。
【発明の効果】
【0040】
上記本発明の汚染土壌からセシウムを除去する土壌改良方法によれば、汚染冴えた土壌の掬い取りステップに先立って散水ステップを実施していることから、汚染土壌の表層部を採取する際に、セシウムが結合した土砂が埃となって空気中に舞い上がることがなく、かつ当該土砂が河川等に流出等することがないようにしたセシウムを除去する土壌改良方法とすることができる。
【0041】
また、本発明に係るセシウムを除去する土壌改良方法と、土壌中のセシウム除去装置によれば、汚染された表層土は、特別な化学剤を使用することなく、単に加熱することによりセシウムを分離し、除去できることから、より確実かつ安全に土壌中からセシウムを除去することができ、且つセシウムを除去した後の土砂を再度耕作地等に利用することのできるセシウムを除去する土壌改良方法と、土壌中のセシウム除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)はセシウムを含有する土壌に対する散水ステップを示す略図であり、(B)散水ステップ後にセシウムを含有する土壌の表層土を掬い取る表層土採取ステップを示す略図である。
【図2】(A)セシウム除去ステップを実施するセシウム除去装置を示す部分透視斜視図であり、(B)燃焼筒の軸方向に沿う縦断面図である。
【図3】セシウム除去ステップを示す略図である。
【図4】他の実施の形態に係るセシウム除去ステップを示す略図である。
【図5】他の実施の形態に係るセシウム除去装置を示す要部断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本実施の形態に係る、土壌10中からセシウムを除去する土壌改良方法と土壌10中のセシウム除去装置20を図面を参照しながら説明する。
【0044】
先ず、この実施の形態に係る土壌改良方法では、図1(A)に示すように、表層土12を掬い取る範囲に水を散水する散水ステップを実施し、図1(B)に示すように、少なくとも土壌10表面から1〜2cmまでの深さの表層土12を掬い取る表層土採取ステップを実施し、そして図2(A)(B)に示すようなセシウム除去装置20を使用して、図3に示すように、掬い取って採取した表層土12からセシウムを除去するセシウム除去ステップを実施するものである。なおセシウム除去装置20は、図4及び5に示すような形態とすることもできる。以下、各図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0045】
本実施の形態において、前記散水ステップでは、図1(A)に示すように、表層土12を掬い取る領域、即ちセシウムを含有する土壌10に対して水を散布することになるが、これはホース2などを使用して、作業者が水道水や河川水、地下水などの水4を散布することができる。ただし、この散水ステップは、相当に広い範囲に実施する場合には、散水車等を使用して実施することができる。また、この散水ステップは、その後の表層土採取ステップで表層土12を掬い取る時に、後述する所定の水分含有量となるように実施するべきであり、表層土採取ステップを実施しながら、適宜この散水ステップを実施することもできる。
【0046】
この散水ステップで散水する水の量は、採取する部分の土壌10の含水量が、ローム層などの様に粘土質の土壌10の場合には、水分含有量を50%未満、望ましくは40%以上50%未満となるようにし、粘土質でない黒ぼく土等の場合には、水分含有量を5%以上20%未満、望ましくは10%以上15%未満となるように実施する。即ちこの散水量は土壌10の性質によって適宜調整することができる。例えば、汚染された土壌10が粘土質である場合には、後に続く表層土採取ステップで表層土12を掬い取る際にも砂埃などは撒き上がりにくいことから散水量を少なくすることができる。即ち、粘土質自体がもともと含水量が多いことから、散水した水と合わせて、水分含有量を50%未満、望ましくは40%以上50%未満となる様に散水ステップを実施することができる。
【0047】
むしろ土壌10が粘土質である場合には、散水した水が土壌10に吸収されにくく、流出してしまい、河川等を汚染する恐れもあることから、散水ステップではより少ない散水量となる様に実施する。また、汚染された土壌10が砂埃が巻き上がりやすい砂地や黒土の土壌10である場合には、後に続く表層土採取ステップで表層土12を掬い取る際に砂埃などが撒き上がることのないように、例えば水分含有量が5%以上20%未満、望ましくは10%以上15%未満となる様に散水ステップを実施することが望ましい。この水分含有量は、少なくとも掬い取る深さ全体においてこの範囲の水分含水量となる様にし、表層土12の流出が無い範囲において十分な量の水を散水することができる。なお、この散水ステップは、砂埃が舞い上がるのを阻止するために実施するものであり、土壌10を湿らす程度に水を撒くことにより達成できる。ただし、降雨などにより採取する土壌10が既に濡れているあるいは湿っている場合には、この降雨により散水ステップが実施されたものと見ることができる。
【0048】
上記散水ステップにより採取する土壌10を湿らせることにより、砂埃が舞い上がるのを阻止することができることから、続いて図1(B)に示すような表層土採取ステップを実施する。この実施の形態ではブルドーザーなどの建設機械6を使用して、土壌10の表面部分、即ち表面から1cmまで、望ましくば2cmまでの土壌(表層土12)を掬い取る様にしている。この範囲の表層土12を採取することにより、採取後の土壌10に残留するセシウムの量を限りなくゼロに近い値にすることができる。かかる表層土採取ステップは、この実施の形態に示すように建設機械6を使用して実施する他、レーキやスコップなどの手持ち具を用いて実施することができる。掬い取る表層土12の深さを前記の範囲とすることにより、特に建設機械6を使用しなくとも実施することができる。よって、十分な人数の作業者を確保できた場合には、安価なレーキ等を使用して表層土12を一か所に集める等、効率的に当該表層土採取ステップを実施することができる。
【0049】
そして掬い取った表層土12は、次に除去するセシウム除去ステップが実施され、このステップにより汚染された土壌10(表層土12)からセシウムを分離・除去することができる。このセシウム除去ステップでは、図2に示すようなセシウム除去装置20を使用することができる。かかるセシウム除去装置20は、本実施の形態ではロータリーキルンを使用して製造されたものであり、これは筒状で軸周りに回転する燃焼筒21と、この燃焼筒21内で燃焼するバーナー22と、バーナー側から燃焼用の空気を供給する空気供給口23と、この燃焼筒21内に、採取した表層土12を投入する処理対象物投入口24と、前記空気供給口23とは反対側の端面に形成され、ロータリーキルンにおける加熱処理により気化したセシウムを排出する排気口25と、この排気口25に設置されて気化したセシウムを補足する補足手段としてのフィルター26(バグフィルターなど)とを備えて構成されている。この燃焼筒21の周りには、これを軸周りに回転させる為のギヤ27と、この燃焼筒21の回転を支持するタイヤ28とが設けられている。特にこの実施の形態に示すセシウム除去装置20においては、図2(B)に示すように、表層土12を投入する処理対象物投入口24は開閉自在に構成することができ、処理対象となる表層土12を投入した後においては、当該処理対象物投入口24を閉じておくことができる。即ち、処理対象物投入口24には開閉自在な蓋部29を形成することができる。ただしこの処理対象物投入口24は、連続処理を実施する場合には、開口した状態で運用することも考えられる。
【0050】
次に図3を参照しながら、このセシウム除去装置20を使用して汚染土壌10(掬い取って採取した表層土12)からセシウムを除去するセシウム除去ステップを説明する。このセシウム除去ステップでは、汚染された土壌10の表層土12を700℃以上、望ましくは800℃、特に望ましくは900℃以上に加熱し、汚染土壌10(表層土12)に含まれるセシウムを気化させ、そして気化させたセシウムを、空気供給口23から燃焼室内に供給される燃焼用の空気の圧力、及びバーナー22の燃焼圧力によって排気口側に導いて、排気口内のフィルター26で補足するものである。この排気口25に設置されたフィルター26で、確実にセシウムを補足する為には、当該フィルター26の通過時において、気化したセシウムが液状または固形状になっている事が望ましい。依って本実施の形態では、このフィルター26の近傍を冷却水などで冷却しておくことが望ましい。
【0051】
このセシウム除去ステップにおいて、燃焼室内に供給する汚染土壌10(掬い取った表層土12)は、処理対象物投入口24から供給されることになるが、この処理対象物投入口24は本実施の形態に示すように、バーナー22が設置された側の端面とは反対側の端面に形成する他、バーナー22が設置された側の端面に形成することもできる。特に連続運転を実施する場合には、処理対象物投入口24の領域を燃焼筒21内よりも高い圧力にしておくことで、処理対象物投入時におけるセシウムの大気中への放出を阻止することができる。
【0052】
掬い取って採取した表層土12を上記の燃焼筒21で加熱する場合には、加熱温度にもよるが、上記700℃以上であれば、おおよそ2時間実施することが望ましい。この加熱時間は長ければ長いほど望ましいが、処理効率を考えれば、この時間とすることが望ましい。更に、燃焼筒21内に放射線量測定装置(ガイガー・カウンター等)のセンサ部分31を設置し、その測定結果に基づいてセシウムが除去されたか否かを判断することも望ましい(図5参照)。汚染の程度、即ちセシウムの含有量は、採取する土壌によっても異なることから、その除去を最適化するためである。更に、処理対象となる汚染土壌10における放射線量を燃焼筒21内に投入する前に測定し、その測定結果に基づいて加熱温度や加熱時間を設定することも望ましい。これにより確実にセシウムを除去しながらも作業効率を高めることができる為である。
【0053】
そして上記のセシウム除去ステップにおいて、フィルター26が十分にセシウムを吸着した後において、適宜、このフィルター26を交換する必要がある。そこで、例えば図3に示すように、1つの燃焼筒21に1つのフィルター26を設置した場合には、このフィルター26の交換時においてセシウムが大気中に放出することがないように、一旦、セシウム除去装置20の運転を停止してから行うことが望ましい。
【0054】
一方、ロータリーキルンの運転に際しては、一旦停止して温度を下げてしまうと運転再開時に再度温度を上昇させるのに多くの時間や燃料を使用するため、出来る限り避けるべきである。そこで例えば図4に示すように、排気口25を2つ以上形成すると共に、各排気口25にフィルター26を設置すると共に、各排気口におけるフィルター26の上流側に開閉弁33を設置し、交互に交換するように形成することも望ましい。このように形成すれば、交換が必要なフィルター26側の排気口25を、当該フィルター26の上流側で閉じることにより、大気中へのセシウムの放出の問題を無くしてフィルター26を交換することができる。
【0055】
図5は、このフィルター26の交換タイミングやセシウム除去装置20の運転を中央処理装置32で管理するものであり、この図5に示す実施の形態では、排気口25のフィルター26よりも下流側に放射線量を測定するセンサを設置し、その測定結果に基づいて、フィルター26の交換タイミングや、セシウム除去装置20の運転状態を管理するものである。即ち、何れか一方のフィルター26が目詰まりなどにより十分な性能を発揮できなくなった状態、あるいはフィルター26部分に補足したセシウムの量に起因して放射線量が上昇した場合には、そのフィルター26が設置されている側の排気口25を、フィルター26の上流側に設置した弁33で閉塞して、他のフィルター26に対して燃焼筒21内のガスを流すように構成している。また、センサの測定結果において、放射線濃度が高い等の異常が発生した場合には、直ちにセシウム除去装置20の運転を停止することができ、これにより安全性を確保している。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係るセシウムを除去する土壌改良方法は、原子力発電所等の核燃料施設から発生した土砂、冷却水などを浄化するのに最適であり、事故等によりこれら施設からセシウム放出された場合であっても、汚染された土壌や水を、周囲への二次被害を無くして処理することができる。
【符号の説明】
【0057】
2 ホース
4 水
6 建設機械
10 土壌(汚染土壌)
12 表層土
20 セシウム除去装置
21 燃焼筒
22 バーナー
23 空気供給口
24 処理対象物投入口
25 排気口
26 フィルター
27 ギヤ
28 タイヤ
29 蓋部
31 放射線量測定装置のセンサ部分
32 中央処理装置
33 開閉弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中に含まれるセシウムを除去する土壌改良方法であって、
当該土壌改良方法は、少なくとも土壌表面から1cmまでの深さの表層土を掬い取る表層土採取ステップと、掬い取って採取した表層土からセシウムを除去するセシウム除去ステップとを含み、
更に前記表層土採取ステップの実施に先立ち、表層土を掬い取る範囲に水を散水する散水ステップを含み、
当該散水ステップでは、表層土採取ステップに際して砂埃の巻上がりを阻止する程度の含水量となる様に散水を実施することを特徴とする、セシウムを除去する土壌改良方法。
【請求項2】
前記セシウム除去ステップでは、掬い取って採取した表層土を、700℃以上で1時間以上加熱し、気化したセシウムを補足手段に吸着することを特徴とする、請求項1に記載の土壌改良方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の土壌改質方法におけるセシウム除去ステップを実施する土壌中のセシウム除去装置であって、
当該セシウム除去装置は、ロータリーキルンを用いて形成されており、
少なくとも筒状に形成された燃焼筒内の気体を排出する排気口と、この排気口から排出される気体を吸着する補足手段とを具備することを特徴とする、土壌中のセシウム除去装置。
【請求項4】
前記排気口は2つ以上形成されており、燃焼筒内に対して交互に開口する、請求項3に記載の土壌中のセシウム除去装置。
【請求項5】
前記補足手段は排気口内に設置されており、排気口内における補足手段の設置領域には、600℃以下に冷却する冷却部が設けられている請求項3又は4に記載の土壌中のセシウム除去装置。
【請求項6】
前記排気口における補足手段よりも下流側には、放射線を測定する測定装置が設置されている、請求項3〜5の何れか一項に記載の土壌中のセシウム除去装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−47611(P2013−47611A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185399(P2011−185399)
【出願日】平成23年8月28日(2011.8.28)
【出願人】(511210143)
【出願人】(508160819)ITカーズ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】