説明

セパレータ付き粘着シート

【課題】優れたハンドリング性を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持されたセパレータ付き粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明のセパレータ付き粘着シートは、基材層と粘着剤層とセパレータとをこの順に備え、該粘着剤層を形成する材料と該基材層を形成する材料とを共押し出しし、少なくとも該共押し出しされた粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で該セパレータと貼り合せて得られるセパレータ付き粘着シートであって、該セパレータが剥離剤層を含み、該剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が10%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ付き粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、大径の状態で製造され、表面にパターンを形成された後、裏面を研削により、通常、ウエハの厚さを100μm〜600μm程度まで薄くされ、さらに素子小片に切断分離(ダイシング)され、さらにマウント工程に移される。
【0003】
半導体ウエハの裏面を研削する工程(裏面研削工程)においては、半導体ウエハのパターン面を保護するために粘着シートが用いられている。従来、このような粘着シートとしては、基材上に粘着剤が塗布された粘着シートが用いられ、例えば、ポリエチレン系樹脂を含む基材上に、アクリル系粘着剤が塗布された粘着剤層を設けた粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
通常、粘着シートでは、使用されるまでの間、粘着剤層の保護材としてセパレータが配置され、セパレータ付きの粘着シートの形態で保管されている。セパレータ付き粘着シートにおいて、粘着剤層とセパレータとの間への異物の混入を抑えることができ、かつ、粘着剤層とセパレータとが接する面が平滑な粘着シートが得られることから、共押し出しにより基材層と粘着剤層を形成し、少なくとも共押し出しされた粘着剤層形成材料を溶融した状態でセパレータと貼り合わせる製造方法が検討されている。しかしながら、このようにして得られるセパレータ付き粘着シートは、粘着剤層との融着によりセパレータの剥離が困難となり、ハンドリング性が低下する場合がある。また、このような問題に対し、軽剥離のセパレータを用いると、ハンドリング性は向上するものの、粘着剤層の粘着力が低下する場合がある。このように、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で粘着シートとセパレータとを貼り合せて得られるセパレータ付き粘着シートにおいて、良好なハンドリング性と適度な粘着力とを両立することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/116856号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、優れたハンドリング性を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持されたセパレータ付き粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセパレータ付き粘着シートは、基材層と粘着剤層とセパレータとをこの順に備える。本発明のセパレータ付き粘着シートは、該粘着剤層を形成する材料と該基材層を形成する材料とを共押し出しし、少なくとも該共押し出しされた粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で該セパレータと貼り合せて得られる。該セパレータは剥離剤層を含み、該剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合は、10%以上である。
好ましい実施形態においては、上記セパレータの140℃熱プレス後の剥離力は、4.0N/50mm以下である。
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層はポリオレフィン系樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記ポリオレフィン系樹脂はメタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む。
好ましい実施形態においては、本発明のセパレータ付き粘着シートは半導体ウエハ加工用である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で粘着シートとセパレータとを貼り合せても、優れたハンドリング性を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持されたセパレータ付き粘着シートを提供することができる。このようなセパレータ付き粘着シートは、特に、半導体ウエハ加工用粘着シートとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるセパレータ付き粘着シートの概略断面図である。
【図2】実施例1のセパレータ付き粘着シートから剥離したセパレータのTEM画像である。
【図3】セパレータ剥離後の比較例1のセパレータ付き粘着シートのセパレータ側断面のTEM画像である。
【図4】セパレータ剥離後の比較例1のセパレータ付き粘着シートの粘着シート側断面のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.セパレータ付き粘着シートの全体構成
図1は、本発明の好ましい実施形態によるセパレータ付き粘着シートの概略断面図である。セパレータ付き粘着シート100は、基材層10と粘着剤層20とセパレータ30とをこの順に備える。セパレータ付き粘着シート100では、セパレータ30を剥離後は、基材層10および粘着剤層20が粘着シートとして用いられる。
【0011】
セパレータ付き粘着シート100の厚みは、特に制限はなく、任意の適切な厚みに設定し得る。セパレータ剥離後の粘着シートの厚みは、好ましくは90μm〜285μmであり、より好ましくは105μm〜225μmであり、さらに好ましくは130μm〜210μmである。
【0012】
粘着剤層20の厚みは、好ましくは20μm〜100μmであり、より好ましくは30μm〜65μmである。
【0013】
基材層10の厚みは、好ましくは30μm〜185μmであり、より好ましくは65μm〜175μmである。
【0014】
セパレータ30の厚みは、特に制限はなく、任意の適切な厚みに設定し得る。セパレータ30の厚みは、例えば、25μm〜250μmに設定し得る。
【0015】
本発明のセパレータ付き粘着シートは、粘着シート側にさらに任意の適切な他の層を備え得る。他の層としては、例えば、基材層の粘着剤層とは反対側に備えられ、粘着シートに耐熱性を付与し得る表面層が挙げられる。
【0016】
本発明のセパレータ付き粘着シートは、接着指数が好ましくは85以上、より好ましくは90以上である。接着指数がこのような範囲であれば、粘着シートに要求される粘着力を十分に有しており、例えば、半導体ウエハの裏面研削工程に用いる場合、研削加工中に半導体ウエハを十分に固定し得る。粘着剤層の構成成分の詳細は後述する。
なお、本明細書において、接着指数は従来使用されているセパレータMRF38(三菱樹脂社製)を用いたセパレータ付き粘着シートのエージング後の粘着力を100とした場合の各粘着シートのエージング後の粘着力をいう。また、セパレータ付き粘着シートのエージング後の粘着力は、セパレータ付き粘着シートを50℃で2日間エージングした後に、セパレータを剥離し、半導体ミラーウエハ(シリコン製)を試験板として、JIS Z 0237(2000)に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した粘着力をいう。
【0017】
B.セパレータ
上記セパレータは剥離剤層を有し、該剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が10%以上である。このようなセパレータを用いることにより、共押出成形により粘着シートの粘着剤層および基材層を形成し、少なくとも該粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で粘着シートとセパレータとを貼り合せても、セパレータの剥離力が増加せず、優れたハンドリング性を有する粘着シートが得られ得る。また、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せるため、粘着剤層とセパレータとをより密着させることができ、粘着剤層とセパレータとの間への異物の混入を抑え得る。
【0018】
上記セパレータの剥離剤層には、任意の適切な剥離剤を用いることができ、剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が10%以上であればよい。上記剥離剤としては、好ましくはシリコーン系剥離剤が用いられる。剥離剤に含まれるシリコーンは、1官能性シリコーン(有機置換基を3個有する構成単位)、2官能性シリコーン(有機置換基を2個有する構成単位)、3官能性シリコーン(有機置換基を1個有する構成単位)および4官能性シリコーン(有機置換基を有さない構成単位)を含む。本明細書において、多官能性シリコーンは3官能性以上のシリコーンをいう。
【0019】
上記セパレータの剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合は好ましくは10%〜60%であり、より好ましくは15%〜50%である。剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が上記範囲内であれば、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で粘着シートとセパレータとを貼り合せても、優れたハンドリング性を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持されたセパレータ付き粘着シートが得られる。セパレータの剥離剤層に含まれるシリコーン樹脂における多官能性シリコーンの含有割合は、セパレータの剥離剤層をESCA(X線光電子分光分析装置)で分析することにより求めることができる。
【0020】
剥離剤層中のシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が10%以上である場合、多官能性シリコーンが2官能性シリコーンと粘着剤層を形成する材料(樹脂)との結合を阻害し、易剥離層として機能すると考えられる。そのため、本発明ではセパレータの剥離力の増大が抑えられると考えられる。本発明のセパレータ付き粘着シートでは、多官能性シリコーンが粘着剤層に転写されるが、転写されるシリコーンの量はわずかであるため、粘着剤層の粘着力の低下も抑えられると考えられる。なお、本発明の効果は、シリコーンの各構成単位の官能性の影響が大きく、シリコーンが特定の置換基を有することによる効果は小さいと考えられる。
【0021】
上記剥離剤層中のシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合は、任意の適切な方法で調整することができ、例えば、シリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が上記範囲内である剥離剤の使用、または、任意の剥離剤に多官能性シリコーンを含む剥離調整剤を添加することにより、調整し得る。
【0022】
上記剥離剤層は、上記剥離調整剤以外の任意の他の添加剤を含んでいてもよく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤等が挙げられる。
【0023】
セパレータの基材としては、任意の適切な基材を用いることができ、例えば、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)、不織布または紙などが挙げられる。
【0024】
上記セパレータの基材は、好ましくはプライマー処理が施された基材である。プライマー処理が施された基材を用いることにより、よりハンドリング性に優れた粘着シートが得られる。上記プライマー処理は、任意の適切な手段により行われ得る。具体的には、プライマー処理された基材として、シランカップリング剤処理された基材を用いることができる。
【0025】
セパレータとしては、市販品を用いてもよく、具体的には東山フイルム社製のクリーンセパHYシリーズ(より具体的には、HY−S30、HY−S15、HY−TS11、HY−TS15)等を好適に用いることができる。
【0026】
上記セパレータは140℃プレス後の剥離力が、好ましくは4.0N/50mm以下であり、より好ましくは3.0N/50mm以下であり、さらに好ましくは2.0N/50mm以下である。セパレータの140℃プレス後の剥離力が上記の範囲内であれば、優れた剥離力を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持された粘着シートが得られ得る。なお、本明細書において、140℃プレス後の剥離力はセパレータ付き粘着シートを140℃でプレスした後、室温まで放置し、測定したセパレータの剥離力(剥離速度:300mm/分、剥離角度:180°)をいう。140℃でのプレス条件については、以下の通りである。
<140℃でのプレス条件>
粘着シートの基材を形成する材料と粘着剤層を形成する材料とを共押し出しし、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で製造用セパレータ(三菱樹脂社製、MRF38、厚み38μm)と貼り合せ、セパレータ付き粘着シートを作製する。得られた粘着シートから製造用セパレータを剥離し、該粘着シートの粘着剤層と試験用セパレータとを貼り合せて試験用粘着シートを作製する。
得られた試験用粘着シートをステンレス板(SUS板)/樹脂シート/クッション材/樹脂シート/試験用粘着シート/樹脂シート/クッション材/樹脂シート/ステンレス板の順に積層した後、プレス板で狭持し、プレス機(東洋精機社製、MINI TEST PRESS−10、板面面積:250mm×250mm)を用いて、プレス板面温度140℃、プレス圧力5MPaで、1分間保持する。
なお、樹脂シート(セパレータ)として三菱樹脂社製のMRN38を、クッション材としてゴム板(厚み:1mm、130mm×160mm)を用いる。
【0027】
C.粘着剤層
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤により構成され、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を含む粘着剤等が挙げられる。該粘着剤層は、好ましくはポリオレフィン系樹脂を含み、具体的には、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低結晶ポリプロピレン、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリ酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレン共重合体やポリオレフィン変性ポリマー等が挙げられる。該粘着剤層は、より好ましくは非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む。このような粘着剤層と上記セパレータとを組み合わせて粘着シートにすることにより、優れたハンドリング性を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持されたセパレータ付き粘着シートが得られる。さらに、このような粘着剤層であれば、基材層との共押し出し成形により粘着シートを製造することが可能であり、少ない工程数で、かつ、有機溶剤を使用することなく粘着シートを得ることができる。なお、本明細書において、「非晶質」とは、結晶質のように明確な融点を有さない性質をいう。
【0028】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、好ましくは、メタロセン触媒を用いて、プロピレンと1−ブテンとを重合することにより得ることができる。より詳細には、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、例えば、メタロセン触媒を用いてプロピレンと1−ブテンとを重合させる重合工程を行い、当該重合工程の後、触媒残さ除去工程、異物除去工程等の後処理工程を行うことにより、得ることができる。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、このような工程を経て、例えば、パウダー状、ペレット状等の形状で得られる。メタロセン触媒としては、例えば、メタロセン化合物とアルミノキサンとを含むメタロセン均一混合触媒、微粒子状の担体上にメタロセン化合物が担持されたメタロセン担持型触媒等が挙げられる。
【0029】
上記のようにメタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、狭い分子量分布を示す。上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは3以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.1〜2であり、特に好ましくは1.2〜1.9である。分子量分布が狭い非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は低分子量成分が少ないので、このような非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を用いれば、低分子量成分のブリードによる被着体の汚染を防止し得るセパレータ付き粘着シートを得ることができる。
【0030】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、プロピレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは80モル%〜99モル%であり、より好ましくは85モル%〜99モル%であり、さらに好ましくは90モル%〜99モル%である。
【0031】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における、1−ブテン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは1モル%〜15モル%であり、より好ましくは1モル%〜10モル%である。このような範囲であれば、靭性と柔軟性とのバランスに優れたセパレータ付き粘着シートを得ることができる。
【0032】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0033】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)は好ましくは200,000以上であり、より好ましくは200,000〜500,000であり、さらに好ましくは200,000〜300,000である。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、一般的なスチレン系熱可塑性樹脂、アクリル系熱可塑性樹脂(Mwが100,000以下)と比較して、低分子量成分が少なく、被着体の汚染を防止し得る粘着シートを得ることができる。また、共押し出し成形の際、加工不良なく粘着剤層を形成することができ、かつ、適切な粘着力を得ることができる。
【0034】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の230℃、2.16kfgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは1g/10min〜50g/10minであり、より好ましくは5g/10min〜30g/10minであり、さらに好ましくは5g/10min〜20g/10minである。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体のメルトフローレートがこのような範囲であれば、共押し出し成形により、加工不良なく厚みの均一な粘着剤層を形成することができる。メルトフローレートは、JIS K 7210に準じた方法により測定することができる。
【0035】
上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、エチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0036】
好ましくは、上記粘着剤層は、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない。被着体を当該イオンで汚染することを防止することができるからである。このような粘着剤層を備える粘着シートは、例えば、半導体ウエハ加工用に用いられる場合、回路の断線または短絡等を生じさせることがない。上記イオンを含まない粘着剤層は、例えば、当該粘着剤層に含まれる非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を上記のようにメタロセン触媒を用いて溶液重合することにより得ることができる。当該メタロセン触媒を用いた溶液重合においては、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、重合溶媒とは異なる貧溶媒を用いて析出単離(再沈殿法)を繰り返して、精製することができるので、上記イオンを含まない粘着剤層を得ることができる。なお、本明細書において、「F、Cl、Br、NO、NO、SO2−、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、NHを実質的に含まない」とは、標準的なイオンクロマトグラフ分析(例えば、ダイオネクス社製、商品名「DX−320」、「DX−500」を用いたイオンクロマトグラフ分析)において検出限界未満であることをいう。具体的には、粘着剤層1gに対して、F、Cl、Br、NO、NO、SO2−およびKがそれぞれ0.49μg以下、LiおよびNaがそれぞれ0.20μg以下、Mg2+およびCa2+がそれぞれ0.97μg以下、NHが0.5μg以下である場合をいう。
【0037】
上記粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)は、好ましくは0.5×10Pa〜1.0×10Paであり、より好ましくは0.8×10Pa〜3.0×10Paである。上記粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)がこのような範囲であれば、優れたハンドリング性を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持されたセパレータ付き粘着シートが得られる。また、貯蔵弾性率(G’)がこのような範囲であれば、表面に凹凸を有する被着体に対する十分な粘着力と適度な剥離性とを両立し得る粘着シートを得ることができる。また、このような貯蔵弾性率(G’)の上記粘着剤層を備える粘着シートは、半導体ウエハ加工用に用いられる場合、ウエハの裏面研削における優れた研削精度の達成に寄与し得る。なお、本発明における貯蔵弾性率(G’)は、動的粘弾性スペクトル測定により測定することができる。
【0038】
上記粘着剤層は、優れたハンドリング性を有し、セパレータ剥離後も適度な粘着力が保持されたセパレータ付き粘着シートを提供するために、さらに結晶性ポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、所望とする粘着力および上記貯蔵弾性率に応じて任意の適切な割合に設定され得る。結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、好ましくは、上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体と当該結晶性ポリプロピレン系樹脂との合計重量に対して、好ましくは0重量%〜50重量%であり、より好ましくは0重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは0重量%〜30重量%である。
【0039】
上記結晶性ポリプロピレン系樹脂は、ホモポリプロピレンであってもよく、プロピレンとプロピレンと共重合可能なモノマーとにより得られる共重合体であってもよい。プロピレンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等が挙げられる。
【0040】
上記結晶性ポリプロピレン系樹脂は、好ましくは上記非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体同様、メタロセン触媒を用いて重合することにより得られる。このようにして得られた結晶性ポリプロピレン系樹脂を用いれば、低分子量成分のブリードによる被着体の汚染を防止することができる。
【0041】
上記結晶性ポリプロピレン系樹脂の結晶化度は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上である。結晶化度は、代表的には、示差走査熱量分析(DSC)またはX線回折により求められる。
【0042】
上記粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて適切に選択され得る。
【0043】
D.基材層
上記基材層は、任意の適切な材料を用いて構成することができ、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートなど)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリスチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。好ましくは、上記基材層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む。
【0044】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜200,000であり、より好ましくは30,000〜190,000である。エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、共押し出し成形の際、加工不良なく基材層を形成することができる。
【0045】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の190℃、2.16kgfにおけるメルトフローレートは、好ましくは2g/10min〜20g/10minであり、より好ましくは5g/10min〜15g/10minであり、さらに好ましくは7g/10min〜12g/10minである。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートがこのような範囲であれば、共押し出し成形により、加工不良なく基材層を形成することができる。
【0046】
上記基材層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、上記C項で説明した粘着剤層に含まれ得るその他の成分と同様の成分が用いられ得る。
【0047】
E.その他の層
本発明のセパレータ付き粘着シートに含まれる他の層としては、例えば、粘着シートに耐熱性を付与し得る表面層が挙げられる。該表面層を有することにより、加熱工程に供される半導体ウエハ加工用粘着シートとしても好適に用いることができる。該表面層は耐熱性を有する任意の適切な樹脂を用いることができ、好ましくはポリプロピレン系樹脂を含む。上記ポリプロピレン系樹脂は、好ましくはメタロセン触媒を用いた重合により得られる。より詳細には、ポリプロピレン系樹脂は、例えば、メタロセン触媒を用いてプロピレンを含むモノマー組成物を重合させる重合工程を行い、当該重合工程の後、触媒残さ除去工程、異物除去工程等の後処理工程を行うことにより、得ることができる。ポリプロピレン系樹脂は、このような工程を経て、例えば、パウダー状、ペレット状等の形状で得られる。メタロセン触媒としては、例えば、上記C項で例示したものが挙げられる。
【0048】
上記のようにメタロセン触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂は、狭い分子量分布を示す。具体的には、上記ポリプロピレン系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは3以下であり、より好ましくは1.1〜3であり、さらに好ましくは1.2〜2.9である。分子量分布が狭いポリプロピレン系樹脂は低分子量成分が少ないので、このようなポリプロピレン系樹脂を用いれば、低分子量成分のブリードを防止して、クリーン性に優れる粘着シートを得ることができる。このような粘着シートは、例えば、半導体ウエハ加工用として好適に用いられる。
【0049】
上記ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は好ましくは50,000以上であり、より好ましくは50,000〜500,000であり、さらに好ましくは50,000〜400,000である。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、低分子量成分のブリードを防止して、クリーン性に優れる粘着シートを得ることができる。このような粘着シートは、例えば、半導体ウエハ加工用粘着シートとして好適に用いられる。
【0050】
上記ポリプロピレン系樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、エチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン等が挙げられる。その他のモノマー由来の構成単位を含む場合、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0051】
上記ポリプロピレン系樹脂は市販品を用いてもよい。市販品のポリプロピレン系樹脂の具体例としては、日本ポリプロ(株)製の商品名「WINTEC(ウィンテック)」、「WELNEX(ウェルネックス)」シリーズ等が挙げられる。
【0052】
上記表面層は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、上記C項で例示したその他成分と同じものが挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて適切に選択され得る。
【0053】
F.セパレータ付き粘着シートの製造方法
本発明のセパレータ付き粘着シートの製造方法は、上記粘着剤層を形成する材料と上記基材層を形成する材料とを共押し出しする工程、および、少なくとも該共押し出しされた粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で粘着シートと上記セパレータとを貼り合せる工程を含む。共押し出し成形により、層間の接着性が良好な粘着シートを、少ない工程数で、かつ、有機溶剤を使用することなく製造することができる。さらに、少なくとも共押し出しされた粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で粘着シートとセパレータとを貼り合せることにより、粘着剤層への異物の混入を抑制し、かつ、粘着剤層とセパレータとが接する面を平滑にすることができる。
【0054】
上記共押し出し成形において、上記粘着剤層および上記基材層を形成する材料は、上記の各層の成分を任意の適切な方法で混合した材料が用いられ得る。
【0055】
上記共押し出し成形の具体的方法としては、例えば、ダイスに連結した少なくとも2台の押し出し機のうち、1台に粘着剤層を形成する材料を、別の1台に基材層を形成する材料を、それぞれ供給し、溶融後、押し出し、少なくとも粘着剤層を形成する材料が溶融した状態でセパレータと接触させ、タッチロール成形法により引き取り、積層体を成形する方法が挙げられる。粘着シートがさらに耐熱性を付与し得る表面層を有する場合には、さらに押し出し機を追加し、該押し出し機から表面層を形成する材料を供給することにより、積層体を形成し得る。押し出しの際、各形成材料が合流する部分は、ダイス出口(ダイスリップ)に近いほど好ましい。ダイス内で各形成材料の合流不良が生じ難いからである。したがって、上記ダイスとしては、マルチマニホールド形式のダイスが好ましく用いられる。なお、合流不良が生じた場合、合流ムラ等の外観不良、具体的には押し出された粘着剤層と基材層との間で波状の外観ムラが発生して好ましくない。また、合流不良は、例えば、異種形成材料のダイス内における流動性(溶融粘度)の差が大きいこと、および各層の形成材料のせん断速度の差が大きいことを原因として生じるので、マルチマニホールド形式のダイスを用いれば、流動性の差がある異種形成材料について、他の形式(例えば、フィードブロック形式)よりも、材料選択の範囲が拡がる。各形成材料の溶融に用いる押し出し機のスクリュータイプは単軸または2軸であってもよい。押し出し機は、3台以上であってもよい。また、3台以上の押し出し機を用いて、2層構造(基材層+粘着剤層)の粘着シートを製造する場合、同一の形成材料を隣り合う2台以上の押し出し機に供給すればよく、例えば、3台の押し出し機を用いる場合は、隣り合う2台の押し出し機に同一の形成材料が供給され得る。
【0056】
共押し出しされた基材層を形成する材料と粘着剤層を形成する材料とセパレータとは、任意の適切な手段により接触させることにより、貼り合せることができる。該接触手段としては、例えば、タッチロール等が挙げられる。
【0057】
上記共押し出し成形における成形温度は、好ましくは160℃〜220℃であり、より好ましくは170℃〜200℃である。このような範囲であれば、押出後の粘着剤層形成材料を溶融状態とすることができ、得られる粘着シートの粘着剤層への異物の混入を抑制し、かつ、粘着剤層とセパレータとが接する面を平滑にすることができる。また、このような範囲であれば、成形安定性に優れる。
【0058】
上記粘着剤層を形成する材料と上記基材層を形成する材料との、温度180℃、せん断速度100sec−1におけるせん断粘度の差(粘着剤層を形成する材料−基材層を形成する材料)は、好ましくは−150Pa・s〜600Pa・sであり、より好ましくは−100Pa・s〜550Pa・sであり、さらに好ましくは−50Pa・s〜500Pa・sである。このような範囲であれば、上記粘着剤層を形成する材料および基材層を形成する材料のダイス内での流動性が近く、合流不良の発生を防止することができる。なお、せん断粘度は、ツインキャピラリー型の伸長粘度計により測定することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、部は重量部を意味する。
【0060】
[実施例1]
耐熱性を付与し得る表面層を形成する材料として、メタロセン触媒により重合したポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製、商品名「WELNEX:RFGV4A」;融点130℃、軟化点120℃、Mw/Mn=2.9)を用いた。
基材層を形成する材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポン社製、商品名「エバフレックスP−1007」)を用いた。
粘着剤層を形成する材料として、メタロセン触媒により重合した非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体(住友化学社製、商品名「タフセレンH5002」:プロピレン由来の構成単位90モル%/1−ブテン由来の構成単位10モル%、Mw=230,000、Mw/Mn=1.8)を用いた。
上記表面層を形成する材料100部、上記基材層を形成する材料100部および上記粘着剤層を形成する材料100部をそれぞれの押し出し機に投入し、Tダイ溶融共押し出しした(ダイス温度:180℃)。ダイスから共押し出しされた表面層/基材層/粘着剤層の積層体の粘着剤層にセパレータ1(東山フイルム社製、HY−S30、厚み38μm)をタッチロールにより貼り合せ、表面層(厚み30μm)/基材層(厚み130μm)/粘着剤層(厚み45μm)/セパレータのセパレータ付き粘着シートを得た。なお、表面層、基材層および粘着剤層の厚みは、Tダイ出口の形状により制御した。
【0061】
[実施例2]
セパレータ1に代えて、セパレータ2(東山フイルム社製、HY−TS11、厚み75μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータ付き粘着シートを得た。
【0062】
[実施例3]
セパレータ1に代えて、セパレータ3(東山フイルム社製、HY−TS15、厚み75μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータ付き粘着シートを得た。
【0063】
(比較例1)
セパレータ1に代えて、セパレータC1(三菱樹脂社製、MRF38、厚み38μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータ付き粘着シートを得た。
【0064】
(比較例2)
セパレータ1に代えて、セパレータC2(三菱樹脂社製、MRE38、厚み38μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータ付き粘着シートを得た。
【0065】
(比較例3)
セパレータ1に代えて、セパレータC3(三菱樹脂社製、MRN38、厚み38μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてセパレータ付き粘着シートを得た。
【0066】
[セパレータの評価]
実施例1〜3および比較例1で用いたセパレータ1〜3およびC1の剥離剤層中のシリコーン含有量を測定した。また、実施例1〜3および比較例1〜3のセパレータ付き粘着シートの140℃プレス後の剥離力を以下の方法で評価した。
(1)剥離剤層のシリコーン含有量
各セパレータの剥離剤層をESCA(X線光電子分光分析装置)で分析し、剥離剤層中のシリコーン含有量、剥離剤層中のシリコーンに占める2官能性シリコーンおよび多官能性シリコーン(3官能性以上のシリコーン)の含有割合を測定した。測定したシリコーン含有量および多官能性シリコーンの含有割合から、剥離剤層中の多官能性シリコーン含有量を算出した。剥離剤層中のシリコーン含有量、多官能性シリコーン含有量、2官能性シリコーンおよび多官能性シリコーンの含有割合を表1に示す。
(2)140℃熱プレス後の剥離力試験
比較例1で得られた粘着シートから、セパレータC1を剥離し、該粘着シートの粘着剤層とセパレータ1〜3、または、セパレータC1〜C3とを貼り合せ、140℃熱プレス後の剥離力試験用粘着シートを作製した。
得られた試験用粘着シートをステンレス板(SUS板)/樹脂シート/クッション材/樹脂シート/評価用粘着シート/樹脂シート/クッション材/樹脂シート/ステンレス板の順に積層した後、プレス板で狭持し、プレス機(東洋精機社製、MINI TEST PRESS−10、板面面積:250mm×250mm)を用いてプレスした。樹脂シート(セパレータ)として三菱樹脂社製のMRN38を、クッション材としてゴム板(厚み:1mm、130mm×160mm)を用いた。試験用粘着シートは、プレス板面温度140℃、プレス圧力5MPaで1分間保持した。次いで、粘着シートを室温まで放置し、粘着シートのセパレータの剥離力(剥離速度:300mm/分、剥離角度:180°)を測定した。測定した剥離力を表1に示す。
【0067】
[評価]
実施例および比較例で得られた粘着シートを以下の評価に供した。結果を表1に示す。
(1)セパレータの剥離力
得られた粘着シートにおけるセパレータの剥離力(剥離速度:300mm/min、剥離角度:180°)を測定した。剥離力が2.0N/50mm以下であれば、優れたハンドリング性を有している。
(2)Siウエハ粘着力
得られた粘着シートを50℃にて2日間エージングした後、粘着剤層に貼り合せられたセパレータを剥離し、該粘着剤層の4インチ半導体ウエハのミラー面(シリコン製)に対する粘着力を、JIS Z 0237(2000)に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定した。
(3)接着指数
比較例1のSiウエハ粘着力を100とし、実施例1〜3および比較例1〜3の粘着シートの接着指数を求めた。接着指数が85以上であれば、例えば、半導体ウエハの裏面研削工程用の粘着シートとしても適用可能な十分な粘着力を有している。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1〜3の粘着シートは、粘着剤層形成材料が溶融した状態でセパレータと貼り合せて得られた後であっても、セパレータが優れたハンドリング性を有していた。また、実施例1〜3の粘着シートはセパレータ剥離後の粘着剤層が優れた粘着力を保持していた。
【0070】
実施例1の粘着シートから剥離したセパレータのTEM画像を図2に示す。実施例1の粘着シートでは、粘着剤層とセパレータの剥離剤層とが凝結した層は確認されなかった。また、セパレータ付き粘着シートからセパレータを剥離した後、セパレータと粘着シートのそれぞれの接触面を観察したところ、粘着剤層の破壊は確認されなかった。
【0071】
一方、比較例1の粘着シートはセパレータの剥離力が低く、ハンドリング性に劣っていた。セパレータ剥離後の比較例1のセパレータ付き粘着シートのセパレータ側のTEM画像を図3に、粘着剤層側のTEM画像を図4に示す。図3に示すように、比較例1の粘着シートのセパレータ側では、粘着剤層と剥離剤層のシリコーンとが凝結した層が確認された。比較例1のセパレータ付き粘着シートでは、上記粘着剤層と剥離剤層のシリコーンとが凝結した層を界面とし、粘着剤層が凝集破壊をする形でセパレータと粘着剤層とが剥離していることが確認された。比較例1の粘着シートでは、粘着剤層と剥離剤層のSiとが凝結することにより、ハンドリング性が低下したと考えられた。一方、図4に示すように、比較例1の粘着シートの粘着剤層側には、粘着剤層とシリコーンとが凝結した層は残っておらず、粘着剤層のみが確認された。そのため、比較例1の粘着シートでは、粘着力が保持されたと考えられた。
【0072】
軽剥離性のセパレータを用いた比較例2および3は、優れたハンドリング性を有していた。粘着シートとして適用可能な粘着力は有していたものの、粘着力が低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のセパレータ付き粘着シートは、例えば、半導体装置製造の際のワーク(半導体ウエハ等)の保護に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 基剤層
20 粘着材層
30 セパレータ
100 セパレータ付き粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層とセパレータとをこの順に備え、
該粘着剤層を形成する材料と該基材層を形成する材料とを共押し出しし、
少なくとも該共押し出しされた粘着剤層を形成する材料が溶融した状態で該セパレータと貼り合せて得られるセパレータ付き粘着シートであって、
該セパレータが剥離剤層を含み、該剥離剤層に含まれるシリコーンにおける多官能性シリコーンの含有割合が10%以上である、セパレータ付き粘着シート。
【請求項2】
前記セパレータの140℃熱プレス後の剥離力が4.0N/50mm以下である、請求項1に記載のセパレータ付き粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層がポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1または2に記載のセパレータ付き粘着シート。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂がメタロセン触媒を用いて重合された非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む、請求項3に記載のセパレータ付き粘着シート。
【請求項5】
半導体ウエハ加工用である、請求項1から4のいずれかに記載のセパレータ付き粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100415(P2013−100415A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245245(P2011−245245)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】