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セフェム化合物の無機酸塩の結晶
説明

セフェム化合物の無機酸塩の結晶

式:


で示される化合物(I)の2塩酸、2臭化水素酸、および2硝酸からなる群から選択される酸の付加塩またはそれらの溶媒和物の、結晶は、注射剤等の医薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、医薬として有用なセフェム化合物の種々の無機酸塩の結晶、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
一般に抗菌剤として有用なセフェム化合物は、医薬、特に注射剤として開発する上で極めて高品質のものが要求され、好ましくは結晶として単離する必要があった。特に注射剤として開発する場合には、できるだけ水溶解性、保存安定性等に優れた結晶が求められていた。
本発明に係るセフェム化合物は式:

で示される(以下、化合物(I)という)。その対応1塩酸塩は公知であるが、非結晶としてしか単離されていない(特許文献1参照)。また化合物(I)の結晶としては、対応の硫酸塩結晶が単離されているだけである(非特許文献1、特許文献4参照)。また化合物(I)以外のセフェム化合物の無機酸塩結晶の例としては、2硫酸塩、2硝酸塩、2塩酸塩、リン酸塩の各結晶が公知である(特許文献2、3参照)。
(特許文献1) WO00/32606号(実施例6−2)
(特許文献2) 特開昭62−103090号公報
(特許文献3) 特開平2−9885号公報
(特許文献4) WO02/088147号
(非特許文献1)第41回、ICAACプログラム集(2001年12月16日〜19日、アメリカ合衆国、シカゴ,講演No.F−370)
【発明の開示】
化合物(I)を医薬、特に注射剤として開発するために、さらに水溶解性および/または保存安定性等に優れた結晶が求められていた。
本発明者らは鋭意検討した結果、化合物(I)の硫酸塩をその他の無機酸塩の結晶に変換することに成功し、以下に示す本発明を完成した。
(1)式:

で示される化合物(I)の、2塩酸、2臭化水素酸、および2硝酸からなる群から選択される酸の付加塩またはそれらの溶媒和物の、結晶。
(2)2塩酸塩またはその水和物である、上記(1)記載の結晶。
(3)2塩酸塩の0.5〜5水和物である、上記(1)記載の結晶。
(4)2塩酸塩の5水和物である、上記(1)記載の結晶。
(5)粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、4.99,4.89,4.67,4.57,4.45,4.18,3.70,3.58,3.43,3.39および3.34(単位:Å)付近に主なピークを示す、上記(1)記載の2塩酸塩またはその水和物の結晶。
(6)2塩酸塩の5水和物である、上記(5)記載の結晶。
(7)2塩酸塩の0.5水和物である、上記(1)記載の結晶。
(8)粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、9.52,5.10,4.49,3.87,3.66,3.56,3.47,3.40,3.37,3.30,3.24,3.18,3.11,および2.79(単位:Å)付近に主なピークを示す、上記(1)記載の2塩酸塩またはその水和物の結晶。
(9)2塩酸塩の0.5水和物である、上記(8)記載の結晶。
(10)2臭化水素酸塩またはその水和物である、上記(1)記載の結晶。
(11)2臭化水素酸塩の0.5〜5水和物である、上記(1)記載の結晶。
(12)2臭化水素酸塩の4水和物である、上記(1)記載の結晶。
(13)粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、5.29,4.45,4.28,3.65,3.52,3.42,3.35および3.12(単位:Å)付近に主なピークを示す、上記(1)記載の2臭化水素酸塩またはその水和物の結晶。
(14)2臭化水素酸塩の4水和物である、上記(13)記載の結晶。
(15)2臭化水素酸塩の0.5水和物である、上記(1)記載の結晶。
(16)2硝酸塩またはその水和物である、上記(1)記載の結晶。
(17)2硝酸塩の0.5〜5水和物である、上記(1)記載の結晶。
(18)2硝酸塩の3水和物である、上記(1)記載の結晶。
(19)粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、5.34,5.13,5.01,4.83,4.64,4.57,4.43,4.16,4.06,3.71,3.40,3.39,3.33(単位:Å)付近に主なピークを示す、上記(1)記載の2硝酸塩またはその水和物の結晶。
(20)2硝酸塩の3水和物である、上記(19)記載の結晶。
(21)2硝酸塩の0.5水和物である、上記(1)記載の結晶。
(22)粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、9.60,9.24,6.89,5.15,5.05,4.52,4.05,3.98,3.94,3.68,3.51,3.33,3.25,2.89,および2.88(単位:Å)付近に主なピークを示す、上記(1)記載の2硝酸塩またはその水和物の結晶。
(23)2硝酸塩の0.5水和物である、上記(22)記載の結晶。
(24)上記(1)〜(23)のいずれかに記載の結晶を含有する医薬組成物。
(25)抗菌剤および/または注射剤である上記(24)記載の医薬組成物。
(26)上記(1)〜(23)のいずれかに記載の結晶を投与することを特徴とする、細菌性感染症の予防または治療方法。
(27)細菌性感染症の予防または治療剤を製造するための、上記(1)〜(23)のいずれかに記載の結晶の使用。
(28)化合物(I)の1硫酸塩と酸を混合後、アルコールを加えて析出させることを特徴とする、上記(1)記載の化合物(I)の酸付加塩またはそれらの溶媒和物の結晶の製造方法。
(29)化合物(I)の1硫酸塩水溶液に、塩化バリウム、硝酸バリウム、臭化バリウム、または水酸化バリウムを、所望により酸存在下で、加えて硫酸バリウムを析出および除去した後、残留物にアルコールを加えることを特徴とする、上記(1)に記載の化合物(I)の酸付加塩またはそれらの溶媒和物の結晶の製造方法。
【図面の簡単な説明】
(図1)実施例1で得られた2塩酸塩結晶の粉末X線回折のグラフである。縦軸はピーク強度(単位:cps)、横軸は回折角2θ(単位:°)を表わす。
(図2)実施例2で得られた2臭化水素酸塩結晶の粉末X線回折のグラフである。
(図3)実施例3で得られた2硝酸塩結晶の粉末X線回折のグラフである。
(図4)実施例4(2)で得られた2塩酸塩結晶の粉末X線回折のグラフである。
(図5)実施例6(2)で得られた2硝酸塩結晶の粉末X線回折のグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の化合物(I)の酸付加塩としては、2塩酸塩、2臭化水素酸塩、および2硝酸塩が例示される。本発明は、これら無機酸塩またはその溶媒和物の結晶、より好ましくは水和物結晶を提供する。
溶媒和物の溶媒としては、水、アルコール(例:メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサンまたはその混合物等が挙げられる。溶媒和数は、製造方法、保存条件等により異なり必ずしも限定されないが、医薬品として使用する場合には有機溶媒の含量は少ない方が好ましい。該溶媒和物は、好ましくは水和物である。水和数は、好ましくは0.5〜6、より好ましくは0.5〜5である。
以下、各塩ごとに説明する。
(1)2塩酸塩結晶
2塩酸塩結晶は、好ましくは水和物である。水分含量は、化合物(I)に対して好ましくは0.5〜6当量、より好ましくは0.5〜5当量、さらに好ましくは0.5〜4当量、または0.5〜3当量である。
該結晶としては、粉末X線回折パターンが、以下に示す付近に代表的ピークを含む結晶が例示される。本発明の結晶は、好ましくは単一の結晶であるが、その混合物であってもよい。
1−A型:
面間隔(d)=4.99,4.89,4.67,4.57,4.45,4.18,3.70,3.58,3.43,3.39および3.34(単位:Å)
1−A型結晶は、好ましくは5水和物である。
1−B型:
面間隔(d)=9.52,5.10,4.49,3.87,3.66,3.56,3.47,3.40,3.37,3.30,3.24,3.18,3.11,および2.79(単位:Å)
1−B型結晶は、好ましくは0.5水和物である。
化合物(I)は、従来、1塩酸塩としては非結晶状態で単離されていたが、今回、2塩酸塩とすることで結晶化できた。
(2)2臭化水素酸塩結晶
2臭化水素酸塩結晶は、好ましくは水和物である。水分含量は、化合物(I)に対して好ましくは0.5〜6当量、より好ましくは0.5〜5当量、さらに好ましくは0.5〜4当量または0.5〜3当量である。
該結晶としては、粉末X線回折パターンが、以下に示す付近に代表的ピークを含む結晶が例示される。本発明の結晶は、好ましくは単一の結晶であるが、その混合物であってもよい。
2−A型:
面間隔(d)=が、5.29,4.45,4.28,3.65,3.52,3.42,3.35および3.12(単位:Å)。
2−A型結晶は、好ましくは4水和物である。
また別の結晶として0.5水和物結晶も好ましい。
(3)2硝酸塩結晶
2硝酸塩結晶は、好ましくは水和物である。水分含量は、化合物(I)に対して好ましくは0.5〜6当量、より好ましくは0.5〜5当量、さらに好ましくは0.5〜4当量である。
該結晶としては、粉末X線回折パターンが、以下に示す付近に代表的ピークを含む結晶が例示される。本発明の結晶は、好ましくは単一の結晶であるが、その混合物であってもよい。
3−A型:
面間隔(d)=5.34,5.13,5.01,4.83,4.64,4.57,4.43,4.16,4.06,3.71,3.40,3.39,3.33(単位:Å)
3−A型結晶は、好ましくは3水和物である。
3−B型:
面間隔(d)=9.60,9.24,6.89,5.15,5.05,4.52,4.05,3.98,3.94,3.68,3.51,3.33,3.25,2.89,および2.88(単位:Å)
3−B型結晶は、好ましくは0.5水和物である。
なお上記面間隔(d)値は、各結晶のX線ピークのうち代表的なピークを選択したものであり、各結晶構造は必ずしもこれらの値だけによって限定されるものではない。即ち、これら以外のピークが含まれていてもよい。また一般に結晶をX線回折により測定した場合、そのピークは、測定機器、測定条件、付着溶媒の存在等により、多少の測定誤差を生じることがある。よって、実質的に上記同様のX線パターンによって特徴付けられる結晶はすべて本発明の範囲内である。
化合物(I)の無機酸塩またはその溶媒和物の結晶の製造方法は特に限定されないが、好ましくは以下に示す方法に準じて製造すればよい。
(方法1)
化合物(I)の硫酸塩(例:1硫酸塩)と酸を混合後、アルコール(例:メタノール、エタノール、イソプロパノール等)等の有機溶媒を加えることにより、硫酸塩以外の無機酸塩の結晶が析出する。
酸の量は、通常、1硫酸塩に対して約2モル当量以上、好ましくは約5モル当量以上、より好ましくは約10モル当量以上である。
晶析は、好ましくは、種晶を加えて行われ、約0℃〜室温、好ましくは約10℃前後で静置することにより行われる。
酸の濃度は好ましくは約1〜10%である。特に塩酸の場合には約1〜5%が好ましい。臭化水素酸の場合には約1〜5%が好ましい。硝酸の場合は約1〜5%が好ましい。
1硫酸塩と酸の混合方法、順序は特に制限されないが、酸の種類等に応じて適宜され得る。
(方法2)
化合物(I)の硫酸塩(例:1硫酸塩)水溶液に、塩化バリウム、硝酸バリウム、臭化バリウム、または水酸化バリウム等のバリウム塩を、所望により前記酸存在下で、加えて硫酸バリウムを析出させ、濾過等によりこれを除去する。次に、濾液、洗液等の残留物にアルコールおよび所望により水を加えることにより、硫酸塩以外の無機酸塩の結晶が析出する。
ここで「酸存在下」における酸の添加は、バリウム塩を加えるのと同時でもまたその前後でもよい。また析出した硫酸バリウムを濾過して、酸で洗浄してもよい。またバリウム塩の水溶液をあらかじめ調製しておいてから、化合物(I)の1硫酸塩を投入してもよい。
バリウム塩は、化合物(I)の1硫酸塩に対して好ましくは約1〜2モル当量、より好ましくは約1〜1.5モル当量使用される。
酸を使用する場合、酸は化合物(I)の1硫酸塩に対して好ましくは約2モル当量以上、より好ましくは約5モル当量以上使用される。
なお好ましくは、上記(1)または(2)の各結晶化方法を繰り返すことにより、より純度の高い結晶が得られる。原料に使用する化合物(I)の硫酸塩は、結晶でも非結晶でもよく、また水和物でも無水和物でもよい。
上記製法により得られた結晶は、定法により室温での乾燥や減圧乾燥を行うことにより、溶媒数を調節することができ、所望の水和物等を得ることができる。
本発明の化合物(I)の前記無機酸塩の結晶は、水溶解性、保存安定性、乾燥の容易性、製剤化上の取扱い性等に優れており、それ自体医薬活性成分として有用である。また化合物(I)の硫酸塩の製造中間体としても使用可能である。
本発明はさらに、前記化合物(I)の無機酸塩またはその溶媒和物の結晶を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。該医薬組成物は好ましくは抗菌剤である。また医薬組成物の剤形としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤等が例示されるが、好ましくは注射剤である。本発明の結晶が高い水溶解性を有することは、医療現場で注射剤を用時調製する上で、濁りを生じる恐れもなく非常に有利である。また注射する上で弱酸性〜中性付近(例:pH4〜7)にpH調整する場合、所望により塩基等のpH調整剤(例:NaOH、NaHCO、NaCO、アミノ酸等)を併用し得るが、例えば本発明の塩酸塩の中和によって生成するNaClは、対応の硫酸塩を中和した場合に生じるNaSOに比べて生体への影響が緩和である。よって、本発明の塩酸塩結晶は特に注射剤として好適である。
上記注射剤は、粉末充填製剤または凍結乾燥製剤として調製できる。
上記医薬組成物は適宜、医薬品用添加剤(例:賦形剤、崩壊剤、溶解剤、乳化剤、安定化剤等)を含有していてもよい。特に注射剤として使用する場合には、蒸留水や生理食塩水等と共に、pH調節剤(例:NaOH、NaHCO、NaCO、アミノ酸等)を配合してもよい。
化合物(I)の無機酸塩またはその溶媒和物の結晶の投与量は、患者の年齢や疾患の種類・状態等により異なるが、通常、患者の体重1kg当たり、約0.1〜100mg/日、好ましくは約0.5〜50mg/日を、所望により1日2〜4回に分割して投与すればよい。
さらに本発明は、本発明結晶を、人を含む動物に投与することを特徴とする、細菌性感染症の予防または治療方法を提供する。
また、細菌性感染症の予防または治療剤を製造するための、本発明結晶の使用方法も提供する。この場合、本発明結晶自体が、医薬活性成分であってもよく、また硫酸塩等の他の塩を含む医薬製剤の中間体としても使用してもよい。
以下に実施例、試験例を示す。X線測定条件は:CuKα線(波長λ=1.54Å)、管電圧40kV、管電流30mA、スキャンスピード:4.000°/min、サンプリング幅:0.020°である。
実施例1(2塩酸塩・5水和物)
(1)種晶の調製
WO02/088147号に記載の方法に準じて得られた化合物(I)の1硫酸塩・2水和物(2g,2.72mmole)を1N塩酸30ml(11モル当量)に溶解後、エタノール70mlを加えて10℃で静置した。一夜後、析出した結晶をスパーテルで採取し、風乾し、以後、2塩酸塩の種晶として使用した。
(2)塩交換法
化合物(I)の1硫酸塩・3水和物(10g,13.3mmole)を2N塩酸85ml(12.8mole当量)に溶解、氷冷下、エタノール510mlを加え、(1)で得た2塩酸塩の種晶を加え、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、90%エタノール25mlで2回、エタノール25mlで2回、順次洗浄後、室温で風乾すると、6.35gの結晶が得られた。この結晶の組成は元素分析値より2塩酸塩/2硫酸塩=75/25(5水和物)であった。得られた結晶6gを同法で再結晶すると2塩酸塩/1硫酸塩=95/5(5水和物)の結晶が4.14g得られた。更に、この結晶3.1gを同法で再結晶すると2塩酸塩/1硫酸塩=100/0(5水和物)の結晶が4.14g得られた。
(3)BaCl
化合物(I)の1硫酸塩(9.1%含水)(60g,78mmole)を6N塩酸130ml(10mole当量)に溶解、氷冷下、塩化バリウム2水和物19.07g(1mole当量)の水55ml溶液を滴下した。室温にて30分間攪拌した後、析出した硫酸バリウムを濾過、水60ml洗浄によって除いた。濾液、洗液を集めて氷冷下、エタノール875mlと水15mlを加えた後、(1)で得た2塩酸塩の種晶を加え、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、85%エタノール100mlで2回、エタノール100mlで2回、順次洗浄後、室温で風乾すると、40.29gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2塩酸塩・5水和物であった。

2塩酸塩5水和物結晶の粉末X線回折パターンを図1および表1に示す。

実施例2(2臭化水素酸塩・4水和物)
(1)Ba(OH)
化合物(I)の1硫酸塩(3水和物)2g(2.66mmole)の水3ml溶液に47%臭化水素酸1.54ml(5mole当量)を加えた後、水酸化バリウム(8水和物)0.838g(1mole当量)の水4ml溶液を注入した。析出した硫酸バリウムを濾過、水2mlで洗浄して除いた。濾液、洗液を集めて氷冷下、イソプロパノール24mlを加えた後、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%イソプロパノール10ml、イソプロパノール10mlで順次洗浄後、室温で風乾すると、1.50gの結晶が得られた。
この内、0.50g(0.59mmole)を水1.6mlと47%臭化水素酸0.4ml(5mole当量)の混液に溶解、極微量の不溶物を濾過後、水1mlで洗浄した。濾液、洗液を集めて氷冷下、イソプロパノール6mlを加え、上で得た結晶を種晶として加えた後、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%イソプロパノール6ml、イソプロパノール6mlで順次洗浄後、室温で風乾すると、0.28gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2臭化水素酸塩・4水和物であった。


実施例3(2硝酸塩・3水和物)
(1)種晶の調製
化合物(I)の1硫酸塩・3水和物(2g,2.66mmole)を水8mlに溶解、室温にて硝酸バリウム695mg(1モル当量)の水8ml溶液を滴下した後、室温にて30分間攪拌した。析出した硫酸バリウムの沈殿物を濾別、水2mlで洗浄した。濾液、洗液を集めて氷冷下エタノール50mlを加えた。調製液がやや濁ったため、水2mlを更に加えて透明溶液とした。調製液を10℃で一夜攪拌したが結晶の析出は確認されなかった。更に60%硝酸2.02ml(10モル当量)とエタノール40mlを氷冷下に加えて10℃で7日間、攪拌と静置を繰り返した。析出晶を濾取、80%エタノール水5mlで2回洗浄し、結晶0.30gを得た。本結晶は元素分析値より2硝酸塩・3.1水和物に一致した。

(2)Ba(NO
硝酸バリウム20.83g(1mole当量)の水240ml溶液に、室温下、化合物(I)の1硫酸塩・3水和物(60g,78mmole)を5分間で投入した。室温にて30分間攪拌した後、析出した硫酸バリウムを濾過、水29.7mlと60%硝酸30.3ml(5mole当量)の混液で洗浄して除いた。濾液、洗液を集めて氷冷下、エタノール510mlを加えた後、(1)で得た硝酸塩の種晶を加え、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%エタノール60mlで2回、エタノール60mlで2回、順次洗浄後、室温で風乾すると、28.95gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2硝酸塩・3水和物であった。

この結晶の粉末X線回折パターンを図3および表3に示す。

実施例4(2塩酸塩・0.5水和物)
(1) 実施例1(3)で得られた2塩酸塩・5水和物の結晶40g(52.4mmole)を2N塩酸100mlに溶解、濾過後、2N塩酸31ml(計131ml,5モル当量)で洗浄した。濾液、洗液を集めて氷冷下、エタノール435mlを加え、種晶を加えた後、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、85%エタノール50mlで2回、エタノール50mlで2回、順次洗浄後、室温で風乾すると、30.59gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2塩酸塩・5水和物であった。

上記の2塩酸塩・5水和物8.00gを室温下、5時間、減圧乾燥し、化合物(I)の2塩酸塩・0.5水和物結晶7.17gを得た。

(2)化合物(I)の1硫酸塩・4水和物の結晶60g(78.0mmole)を6N塩酸130ml(10モル当量)に溶解、氷冷下、2塩化バリウム・2水和物19.07g(1モル当量)の水55ml溶液を少量ずつ加え、室温下、30分攪拌した。析出した硫酸バリウムを濾過、水60mlで洗浄して除去した。濾液、洗液を集めて氷冷下、エタノール875mlと水15mlを加えた後、先に得た種晶を加えて10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、85%エタノール100mlで2回、エタノール100mlで2回洗浄後、室温で風乾すると、40.29gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2塩酸塩・5水和物であった。

上記の2塩酸塩・5水和物1.00gを室温下、10時間、減圧乾燥し、化合物(I)の2塩酸塩・0.5水和物0.90gを得た。粉末X線回折パターン(相対湿度5%中測定)を図4および表4に示す。


実施例5(2臭化水素酸塩・0.5水和物)
(1)2臭化バリウム・2水和物8.86g(1モル当量)の水50ml溶液に化合物(I)の1硫酸塩,3水和物20g(26.6mmole)を少量ずつ投入し、室温下、30分攪拌した。析出した硫酸バリウムを濾過、47%臭化水素酸15.4ml(5モル当量)の水55ml溶液で洗浄して除去した。濾液、洗液を集めて氷冷下、イソプロパノール210mlを加えた後、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%イソプロパノール60ml、イソプロパノール60mlで順次洗浄後、室温で風乾すると、12.50gの結晶が得られた。この結晶12.50g(14.98mmole)を水29mlと47%臭化水素酸8.71ml(5モル当量)の混液に溶解、極微量の不溶物を濾過後、水25mlで洗浄した。濾液、洗液を集めて氷冷下、イソプロパノール125mlを加え、上で得た結晶を種晶として加えた後、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%イソプロパノール60ml、イソプロパノール60mlで順次洗浄後、室温で風乾すると、9.14gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2臭化水素酸塩・4水和物であった。

上記の2臭化水素酸塩・4水和物8.14gを室温下、4時間、減圧乾燥し、化合物(I)の2臭化水素塩・0.5水和物結晶7.51gを得た。

実施例6(2硝酸塩・0.5水和物)
(1)実施例3(2)で得られた2硝酸塩・3水和物の結晶28.5g(36.5mmole)を8.4%硝酸80mlに溶解、濾過後、8.4%硝酸19.4ml(計99.4ml,5モル当量)で洗浄した。濾液、洗液を集めて氷冷下、エタノール168mlを加え、先に得た結晶を種晶として加えた後、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%エタノール30mlで2回、エタノール30mlで2回、順次洗浄後、室温で風乾すると、23.03gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2硝酸塩・3水和物であった。

上記の2硝酸塩・3水和物8.00gを室温下、5時間、減圧乾燥し、化合物(I)の2硝酸塩・0.5水和物結晶7.51gを得た。

(2)2硝酸バリウム20.83g(1モル当量)の水240ml溶液に1硫酸塩・3水和物の結晶60g(79.7mmole)を少量ずつ加え、室温下、30分攪拌した。析出した硫酸バリウムを濾過、60%硝酸30.3ml(5モル当量)と水29.7mlの混液で洗浄して除去した。濾液、洗液を集めて氷冷下、エタノール510mlを加えた後、先に得た種晶を加えて10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%エタノール60mlで2回、エタノール60mlで2回洗浄後、室温で風乾すると、28.95gの結晶が得られた。この結晶28.5g(36.5mmole)を8.4%硝酸80mlに溶解、濾過後、8.4%硝酸19.4ml(計99.4ml,5モル当量)で洗浄した。濾液、洗液を集めて氷冷下、エタノール168mlを加え、先に得た結晶を種晶として加えた後、10℃で一夜攪拌した。析出した結晶を濾取、80%エタノール30mlで2回、エタノール30mlで2回、順次洗浄後、室温で風乾すると、23.03gの結晶が得られた。この結晶は元素分析値より2硝酸塩・3水和物であった。

上記の2硝酸塩・3水和物1.00gを室温下、10時間、減圧乾燥し、化合物(I)の2硝酸塩・0.5水和物0.94gを得た。粉末X線回折パターン(相対湿度5%中測定)を図5および表5に示す。


試験例1(溶解度)
前記実施例で得られた化合物(I)の各無機酸塩結晶の溶解性を調べた。溶媒に過剰量の結晶を投入して室温(25℃)で3時間攪拌した後、溶液部をHPLC定量する方法で調べた。対照として対応の1硫酸塩結晶(2水和物)を使用した。

化合物(I)の2塩酸塩および2硝酸塩の各結晶は、いずれも対応の1硫酸塩結晶よりも、水または生理食塩水中で高い溶解性を示した。
試験例2(保存安定性)
本発明の化合物(I)の各結晶について50℃における安定性試験を行った。対照として対応の1硫酸塩結晶(0.5および1水和物)を使用した。
(試験方法)
1.原末を封入するBVK−14号バイアルおよびCB−9ゴム栓を精秤する。
2.原末約100mg(力価)ずつを、RH5%以下に調湿したドライボックス内でバイアルに秤量し、栓をする。
3.原末を封入したバイアルを精秤し、原末量を算出する。
4.検量線に凍結乾燥品を用い、初期含量測定を行う。
定量はHPLCにより行う。
カラム:YMC−Pack ODS−AM−302(4.6mmID×150mmL),移動相:0.1%TFA/アセトニトリル=93/7,流速:1ml/min,検出波長:240nm,注入量:15ul
原末は、まず10ml生理食塩水をバイアルに添加して溶解させ、注射用蒸留水で10倍希釈を2回行って定量に供する。
5.10mlの生理食塩水に溶解させた状態で1時間室温放置し、濁度測定を行う。測定は600nmで行う。
6.原末を封入したバイアルを所定温度の保管庫にて保存し、所定期間保存後に取り出す。上記と同様の手順で含量測定、濁度測定を行う。含量測定には凍結乾燥品を検量線に用い、初期含量を100%として残存率を算出する。
(結果)

本発明の結晶、特に2塩酸塩や2臭化水素酸塩は、硫酸塩結晶に比べて高い安定性を示した。
製剤例1
実施例1で得られた化合物(I)の2塩酸塩とpH調整用の塩基を蒸留水に溶解させることにより、注射液を調製する。
製剤例2
実施例2で得られた化合物(I)の2臭化水素酸塩とpH調整用の塩基をバイアル中で蒸留水に溶解し、凍結乾燥して、注射剤を調製する。
製剤例3
実施例3で得られた化合物(I)の2硝酸塩とpH調整用の塩基を粉末充填して注射剤を調製する。
【産業上の利用可能性】
本発明のセフェム化合物(I)の各種無機酸塩またはその溶媒和物の結晶は、溶解性、保存安定性、製剤化する際の取扱い性等に優れ、特に注射剤の活性成分として使用され得る。また本発明の製造方法によれば、これら結晶を高収率、高純度で効率よく工業的に製造することが可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:

で示される化合物(I)の、2塩酸、2臭化水素酸、および2硝酸からなる群から選択される酸の付加塩またはそれらの溶媒和物の、結晶。
【請求項2】
2塩酸塩またはその水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項3】
2塩酸塩の0.5〜5水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項4】
2塩酸塩の5水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項5】
粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、4.99,4.89,4.67,4.57,4.45,4.18,3.70,3.58,3.43,3.39および3.34(単位:Å)付近に主なピークを示す、請求項1記載の2塩酸塩またはその水和物の結晶。
【請求項6】
2塩酸塩の5水和物である、請求項5記載の結晶。
【請求項7】
2塩酸塩の0.5水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項8】
粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、9.52,5.10,4.49,3.87,3.66,3.56,3.47,3.40,3.37,3.30,3.24,3.18,3.11,および2.79(単位:Å)付近に主なピークを示す、請求項1記載の2塩酸塩またはその水和物の結晶。
【請求項9】
2塩酸塩の0.5水和物である、請求項8記載の結晶。
【請求項10】
2臭化水素酸塩またはその水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項11】
2臭化水素酸塩の0.5〜5水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項12】
2臭化水素酸塩の4水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項13】
紛末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、5.29,4.45,4.28,3.65,3.52,3.42,3.35および3.12(単位:Å)付近に主なピークを示す、請求項1記載の2臭化水素酸塩またはその水和物の結晶。
【請求項14】
2臭化水素酸塩の4水和物である、請求項13記載の結晶。
【請求項15】
2臭化水素酸塩の0.5水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項16】
2硝酸塩またはその水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項17】
2硝酸塩の0.5〜5水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項18】
2硝酸塩の3水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項19】
粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、5.34,5.13,5.01,4.83,4.64,4.57,4.43,4.16,4.06,3.71,3.40,3.39,3.33(単位:Å)付近に主なピークを示す、請求項1記載の2硝酸塩またはその水和物の結晶。
【請求項20】
2硝酸塩の3水和物である、請求項19記載の結晶。
【請求項21】
2硝酸塩の0.5水和物である、請求項1記載の結晶。
【請求項22】
粉末X線回折パターンにおいて、面間隔(d)が、9.60,9.24,6.89,5.15,5.05,4.52,4.05,3.98,3.94,3.68,3.51,3.33,3.25,2.89,および2.88(単位:Å)付近に主なピークを示す、請求項1記載の2硝酸塩またはその水和物の結晶。
【請求項23】
2硝酸塩の0.5水和物である、請求項22記載の結晶。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載の結晶を含有する医薬組成物。
【請求項25】
抗菌剤および/または注射剤である請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれかに記載の結晶を投与することを特徴とする、細菌性感染症の予防または治療方法。
【請求項27】
細菌性感染症の予防または治療剤を製造するための、請求項1〜23のいずれかに記載の結晶の使用。
【請求項28】
化合物(I)の1硫酸塩と酸を混合後、アルコールを加えて析出させることを特徴とする、請求項1記載の化合物(I)の酸付加塩またはそれらの溶媒和物の結晶の製造方法。
【請求項29】
化合物(I)の1硫酸塩水溶液に、塩化バリウム、硝酸バリウム、臭化バリウム、または水酸化バリウムを、所望により酸存在下で、加えて硫酸バリウムを析出および除去した後、残留物にアルコールを加えることを特徴とする、請求項1に記載の化合物(I)の酸付加塩またはそれらの溶媒和物の結晶の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/039816
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548042(P2004−548042)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013712
【国際出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】